説明

コールセンターシステム

【課題】在宅等の分散したオペレータ群に対しても、自動接続により顧客との対話を可能にし、かつ、最適なオペレータを自動選択させることが可能で、しかも、オペレータの専門教育を実質的に不要化可能なコールセンターシステムを提供する。
【解決手段】顧客からの受電をサーバーを介してオペレータの端末コンピュータに接続し、顧客とオペレータとの対話を可能にするシステムであって、サーバーが、少なくとも、顧客からの受電時にサーバーに接続中のオペレータを検出する接続中オペレータ検出手段と、実際に接続すべき最適なオペレータを事前に準備されたデータベースに基づいて選択する最適オペレータ選択手段とを有することを特徴とするコールセンターシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コールセンターシステムに関し、とくに、実質的にオペレータの専門教育無しに、かつ、在宅等の分散したオペレータ群に対して管理者無しにコールセンターを構築可能な、コールセンターシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
サーバーを介した電話/端末コンピュータ対話を主業務とするコールセンター(システム)は、とくに、
(1)顧客サポートのための情報サービスは、顧客満足度(CS)重視のマーケティングの重要な武器であること、
(2)情報を中核とする無店舗販売は、今後も成長が期待できる販売手段であること、
から、そのニーズは今後も確実に成長すると考えられている。
【0003】
しかし、
(A)コールセンターを大規模化する場合、通常、交換機の制約からオペレータを一箇所に集約して配置する必要があり、固定費の負担が大きくなる、
(B)集約・配置されたオペレータ群に対しては、通常、何人かのオペレータに対して管理者(スーパーバイザー)が必要となり、この面からも固定費の負担が大きくなる、
(C)情報が多様化する中で、オペレータの教育コストが負担となる、
(D)顧客との対話の簡略化を目指したプッシュ型コールセンターでは、オペレータの定着率が低い、
(E)コールセンター間の競合により、人材募集に要する経費負担が大きくなる、
等の問題が指摘されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明の課題は、上記のような現状に鑑み、一箇所に集約・配置されたオペレータ群ではなく在宅等の分散したオペレータ群に対しても、自動接続により顧客との対話を可能にし、かつ、分散したオペレータの中から最適なオペレータを自動選択させることにより実質的にオペレータ群毎の管理者を不要化でき、しかも、オペレータの専門教育を実質的に不要化可能なコールセンターシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係るコールセンターシステムは、顧客からの受電をサーバーを介してオペレータの端末コンピュータに接続し、顧客とオペレータとの対話を可能にするコールセンターシステムであって、前記サーバーが、少なくとも、顧客からの受電時に前記サーバーに接続中のオペレータを検出する接続中オペレータ検出手段と、接続中のオペレータの中から実際に接続すべき最適なオペレータを、事前に準備されたデータベースに基づいて選択する最適オペレータ選択手段とを有することを特徴とするものからなる。
【0006】
このコールセンターシステムにおいては、前記サーバーが、顧客からの受電の着信初期の顧客通話の音声内容を自動認識し、該認識から、これから顧客がオペレータと対話すべき分野を特定する分野特定手段を有する構成とすることができる。この場合、前記サーバーが、顧客からの受電の着信初期の顧客通話の音声内容を、最初に受電したオペレータが問い返した音声内容から自動認識するようにすることができる。また、分野特定手段により特定された分野に登録されているオペレータの中から実際に接続すべき最適なオペレータが、前記最適オペレータ選択手段により選択されるようにすることができる。
【0007】
また、前記データベースとしては、各オペレータの個人属性および/または過去実績を記録したものとすることもできる。
【0008】
また、前記データベースには、顧客についての過去情報に関するデータベースが含められていてもよい。
【0009】
また、前記サーバーには、予想される顧客からの問い合わせと該問い合わせに対するオペレータの返答とのテキストデータが記憶されており、選択されたオペレータが顧客からの問い合わせを繰り返し確認したときの対話内容が自動認識され、該認識に基づいて、前記テキストデータから、顧客からの問い合わせに対する最適な返答が抽出され、抽出された返答がオペレータの端末コンピュータに自動表示されるようにすることができる。この場合、自動認識された対話内容が、前記テキストデータに基づいて最適な返答を抽出するには困難なものであると判断されたときには(例えば、極めて専門的な知識が要求されると判断されたときには)、顧客との接続が、特定の処理専門のオペレータに転送されるようにすることが好ましい。この判断、転送も、自動で行うことが可能である。例えば、分野特定手段により分野は特定されたものの、前記テキストデータ中に、予め準備された返答が無いと判断された場合には、特定された分野における処理専門のオペレータに自動転送されればよい。
【0010】
上述したデータベースにおける各オペレータの個人属性は、たとえば次のように推定することができる。すなわち、前記データベースにおける各オペレータの個人属性を、
(a)各個人が使用した言語群の中の単語をコンピュータにより予め設定されたテキストに照合することによってそれぞれ形態素として抽出し、該抽出した形態素を予め設定した群からなる複数の要因に分類するとともに、要因別に設定された因子得点を集計して要因別に重み付けを行い、その個人が基本的に有している内的価値観を、前記重み付けされた各要因の線型モデルとして求め、
(b)その個人に特定の評価対象が与えられたときの該評価対象に対するその個人の言語活動から、使用された単語をコンピュータにより予め設定されたテキストに照合することによってそれぞれ形態素として抽出し、該抽出した形態素を予め設定した群からなる複数の要因に分類するとともに、要因別に設定された因子得点を集計して要因別に重み付けを行い、その個人がその時に有している対象評価価値観を、前記重み付けされた各要因の線型モデルとして求め、
(c)前記内的価値観および対象評価価値観の各線型モデルを、各々単独で表記することにより各価値観を個別に推定し、または/および、実質的に同一の次元領域に表記することにより各価値観を含む総合的な個人特性を推定する、
個人特性推定システムにより推定することができる。
【0011】
あるいは、前記データベースにおける各オペレータの個人属性を、
(d)各個人が使用した言語群の中の単語をコンピュータにより予め設定されたテキストに照合することによってそれぞれ形態素として抽出し、該抽出した形態素を予め設定した群からなる複数の要因に分類するとともに、要因別に設定された因子得点を集計して要因別に重み付けを行い、その個人が基本的に有している内的価値観を、前記重み付けされた各要因の線型モデルとして求め、
(e)その個人に特定の評価対象が与えられたときの該評価対象に対するその個人の言語活動から、使用された単語をコンピュータにより予め設定されたテキストに照合することによってそれぞれ形態素として抽出し、該抽出した形態素を予め設定した群からなる複数の要因に分類するとともに、要因別に設定された因子得点を集計して要因別に重み付けを行い、その個人がその時に有している対象評価価値観を、前記重み付けされた各要因の線型モデルとして求め、
(f)個人の五感の少なくとも一つの感覚に対する刺激をランダムに付与し、付与された刺激に対する反応を検知し、反応結果と反応時間からその個人の処理能力を含むその時の処理適性を線型モデルとして求め、
(g)前記内的価値観、対象評価価値観および処理適性の各線型モデルを、各々単独で表記することにより各価値観および処理適性を個別に推定し、または/および、実質的に同一の次元領域に表記することにより各価値観および処理適性を含む総合的な個人特性・能力を推定する、
個人特性推定システムにより推定することができる。
【0012】
また、上記コールセンターシステムにおいては、選択されたオペレータが顧客からの問い合わせを繰り返し確認したときの対話内容が自動認識され、自動認識された対話内容の文章から、各形態素に分けられる形態素解析にかけられることにより各形態素が抽出され、抽出された各形態素に対して、主成分分析により必要な語彙のみが抽出されて、返答対象とすべき顧客の対話内容が、判別対象文章として再構築されるようにすることができる。
【0013】
また、この再構築された判別対象文章中の、前記主成分分析により抽出された必要な語彙の全部または一部が、予め定められたカテゴリ別に分類されるとともに、各カテゴリ中において予め定められた意味領域に分類され、各意味領域に分類された語彙毎に判別係数が求められ、該判別係数を用いて、各カテゴリ毎に、または/および、各判別対象文章毎に、判別得点が求められるようにすることができる。
【0014】
そして、前記各意味領域に分類された語彙の判別係数と、各意味領域毎に予め設定された重心との差異の程度から、主たる意味領域が特定され、特定された主たる意味領域における判別対象となった語彙が抽出されて、判別対象文章の意味が求められ、それに基づいて、前述のテキストデータから、顧客からの問い合わせに対する最適な返答が抽出されるようにすることができる。
【0015】
さらにこの場合、求められた判別対象文章の意味、または/および、特定された主たる意味領域における判別対象となった語彙が、予め設定された危険文章または/および危険語彙のリスト(たとえば、猥褻等の非合法的な危険文章または/および危険語彙が設定されているリスト)と照合され、リスト中の文章または/および語彙に相当する場合には、その旨の表示がオペレータの端末コンピュータに送信されるとともに、オペレータの返答対象から外されるようにすることもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るコールセンターシステムによれば、顧客からの受電をオペレータの端末コンピュータに接続するサーバーが、顧客からの受電時に現在サーバーに接続中のオペレータを検出する接続中オペレータ検出手段を有するので、まず、実際に接続可能なオペレータ群が検出され、さらに、接続中のオペレータの中から実際に接続すべき最適なオペレータを、事前に準備されたデータベースに基づいて選択する最適オペレータ選択手段を有するので、接続される最適なオペレータが自動的に選択された後、実際の接続が行われる。したがって、一箇所に集約・配置されたオペレータ群ではなく在宅等の分散したオペレータ群であっても、容易に、自動接続により顧客との対話が可能になる。また、このように分散したオペレータの中から最適なオペレータが自動選択されるので、オペレータ群毎の管理者は不要になる。
【0017】
また、対話内容から、とくに、解析、分類した対話内容から、テキストデータとの照合により、最適な返答の自動表示が可能になるので、オペレータの専門教育を実質的に不要化しつつ、顧客とオペレータとの的確な対話が可能になり、極めて安価にかつ規模を自由に設定可能なコールセンターシステムの構築が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明に係るコールセンターシステムの望ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
本発明に係るコールセンターシステムの概要は、たとえば図1のように示すことができる。図1に示すコールセンターシステム100は、顧客101からの受電をサーバー102を介してオペレータ103の端末コンピュータ104に接続し、顧客とオペレータとの対話を可能にするシステムからなる。サーバー102は、少なくとも、顧客からの受電時にサーバー102に接続中のオペレータを検出する接続中オペレータ検出手段と、接続中のオペレータの中から実際に接続すべき最適なオペレータを、事前に準備されたデータベースに基づいて選択する最適オペレータ選択手段とを有するが、その他にも、たとえば、発信・受電管理手段、顧客との対話におけるQA応答文生成手段(顧客からの問い合わせ等に対する返答生成手段)、オペレータの不正発現管理手段等を設定することができる。また、オペレータ103は、個人宅等の在宅オペレータ、小規模集合オペレータ等を含む概念である。
【0019】
上記サーバー102には、例えば図2に示すようなシステムが組み込まれている。111は、ハード的な発信・受電管理手段を示しており、顧客101からの受電をハード的に管理するとともに、各オペレータ103への発信、顧客101への発信をハード的に管理するものである。この発信・受電管理手段101には、市販の機器やソフトを使用可能である。
【0020】
上記サーバー102には、現在サーバー102に接続中のオペレータを検出する接続中オペレータ検出手段112と、接続中のオペレータの中から実際に接続すべき最適なオペレータを、事前に準備されたデータベース114に基づいて選択する最適オペレータ選択手段113が設けられている。最適なオペレータを選択するに際しては、たとえば、顧客101からの受電の着信初期の顧客通話の音声内容を自動認識する音声内容自動認識手段115を設けておき、該音声内容自動認識手段115による認識から、分野特定手段116により、これから(今から)顧客がオペレータと対話すべき分野を特定し、特定された分野に登録されているオペレータの中から実際に接続すべき最適なオペレータが、上記最適オペレータ選択手段113により選択されるようにすることができる。顧客からの受電の着信初期の顧客通話の音声内容は、たとえば、最初に受電したオペレータが問い返した音声内容から自動認識するようにすることができる。
【0021】
上記データベース114には、後述の如き各オペレータの個人属性および/または過去実績117を記録したものとすることができ、さらに加えて、顧客についての過去情報118に関するデータベースが含められていてもよい。
【0022】
上記サーバー102には、予想される顧客からの問い合わせと該問い合わせに対するオペレータの返答とのテキストデータ119が記憶されており、選択されたオペレータが顧客からの問い合わせを繰り返し確認したときの対話内容が対話内容認識手段120により自動認識され、該認識に基づいて、テキストデータ119から、顧客からの問い合わせに対する最適な返答が最適返答抽出手段121によって抽出され、抽出された返答が、表示返答送信手段122を介して、オペレータ103の端末コンピュータ104に自動表示されるようにすることができる。この場合、自動認識された対話内容が、テキストデータ119に基づいて最適な返答を抽出するには困難なものであると判断されたときには(例えば、極めて専門的な知識が要求されると判断されたときには)、顧客との接続が、特定処理専門オペレータ転送手段123を介して、予め準備されている特定の処理専門のオペレータに転送されるようにすればよい。
【0023】
対話内容認識手段120により認識された対話内容に基づいてテキストデータ119から最適な返答を抽出するに際しては、後述の如き判別プログラム124を用いることにより、対話内容の意味を解析し、より精度良く最適な返答を抽出することが可能になる。
【0024】
このようなコールセンターシステム100においては、交換機機能として、外線から着信した時、接続中のオペレーターを検出し、事前に収集された個人属性推定プログラムによる個人属性や過去の実績に基づき最適なオペレータが選択され、選択されたオペレータに回線が接続される。また、顧客データベースに基づき、現在接続中の最適なオペレーターを検出し接続することもできる。さらに、同時に架電実績、通話時間等を記録することもできる。通話内容からたとえば成約した場合には、成約実績として記録することもできる。この記録に基づきオペレータへの給与算出を行うこともできる。
【0025】
最適な返答の抽出においては、たとえば、まず、顧客の問い合わせは、オペレーターが鸚鵡返しで確認した通話内容から自動認識される。対話内容がリアルタイムで認識され、テキストとしてサーバーに送信される。テキストデータから、顧客の質問に対する最適な返答が、前述の如く、端末コンピュータに送信され、表示される。このため、技術的な応答のトレーニングが不要となる。同時に一人で多様な顧客への対応も可能になる。サーバー側で認識される対話内容が、高度な内容、もしくは高度なクレーム等と判別された場合には、オペレータから通話が戻され、戻された通話は前述の如く専門のオペレータに転送されて、該専門のオペレータが対応するようにすればよい。
【0026】
取扱商品に適した最適なオペレータは後述のYRMから判断可能である。接続中のオペレータの中で、最適なオペレータをサーバーが判別し、データベースに基づきオペレータと顧客の回線が接続される。顧客・オペレーターのQ&A(質問と返答)がリアルタイムで認識され、顧客のQに対する返答がオペレータ端末に表示される。ここで、過去のQ&Aから抽出されたパターンマッチングを行い、成約確率が算出され、これ以上の対話が無駄と判断された場合には、「通話中止」がオペレータ端末にされ、オペレータ判断で無駄な対話を大幅に短縮することもできる。また、オペレータ端末からサーバーに送られた対話テキストから、オペレータの不正発言を抽出して注意を与える等の、不正発言管理を行うことも可能である。
【0027】
このように、オペレータの音声はリアルタイムで認識され、サーバーにテキストで送信される。顧客の発語内容はオペレータの繰り返し発現から認識できる。
【0028】
最適なオペレータの選択に際し、オペレータの個人属性を客観的に推定し、その推定データを使用できる。このような個人の特性や能力を推定するプログラムとして、たとえば以下のようなプログラムを採用できる(以下のプログラムを本明細書ではYRMと呼ぶ)。このYRMによる検査は、たとえば応募サイトで行われ、採用者に対して個人属性データとしてデータベースに登録しておくことができる。応募者はネットワークを使用してYRMを受けることができる。このYRM(個人特性・能力推定)の手法について以下に説明する。
【0029】
上記YRMは、コンピュータを用いて、
(a)各個人が使用した言語群の中の単語をコンピュータにより予め設定されたテキストに照合することによってそれぞれ形態素として抽出し、該抽出した形態素を予め設定した群からなる複数の要因に分類するとともに、要因別に設定された因子得点を集計して要因別に重み付けを行い、その個人が基本的に有している内的価値観を、前記重み付けされた各要因の線型モデルとして求め、
(b)その個人に特定の評価対象が与えられたときの該評価対象に対するその個人の言語活動から、使用された単語をコンピュータにより予め設定されたテキストに照合することによってそれぞれ形態素として抽出し、該抽出した形態素を予め設定した群からなる複数の要因に分類するとともに、要因別に設定された因子得点を集計して要因別に重み付けを行い、その個人がその時に有している対象評価価値観を、前記重み付けされた各要因の線型モデルとして求め、
(c)前記内的価値観および対象評価価値観の各線型モデルを、各々単独で表記することにより各価値観を個別に推定し、または/および、実質的に同一の次元領域に表記することにより各価値観を含む総合的な個人特性を推定するプログラムである。
【0030】
あるいは、コンピュータを用いて、
(d)各個人が使用した言語群の中の単語をコンピュータにより予め設定されたテキストに照合することによってそれぞれ形態素として抽出し、該抽出した形態素を予め設定した群からなる複数の要因に分類するとともに、要因別に設定された因子得点を集計して要因別に重み付けを行い、その個人が基本的に有している内的価値観を、前記重み付けされた各要因の線型モデルとして求め、
(e)その個人に特定の評価対象が与えられたときの該評価対象に対するその個人の言語活動から、使用された単語をコンピュータにより予め設定されたテキストに照合することによってそれぞれ形態素として抽出し、該抽出した形態素を予め設定した群からなる複数の要因に分類するとともに、要因別に設定された因子得点を集計して要因別に重み付けを行い、その個人がその時に有している対象評価価値観を、前記重み付けされた各要因の線型モデルとして求め、
(f)個人の五感の少なくとも一つの感覚に対する刺激をランダムに付与し、付与された刺激に対する反応を検知し、反応結果と反応時間からその個人の処理能力を含むその時の処理適性を線型モデルとして求め、
(g)前記内的価値観、対象評価価値観および処理適性の各線型モデルを、各々単独で表記することにより各価値観および処理適性を個別に推定し、または/および、実質的に同一の次元領域に表記することにより各価値観および処理適性を含む総合的な個人特性・能力を推定するプログラムである。
【0031】
この個人特性・能力推定方法においては、まず、個人が有している内的価値観を線型モデルとして求めることができ、たとえば、自己表現している単語(形態素)の分析から、心理学的な表記要素を含む線型モデルとして求めることができ、それに基づいてその個人の行動プロセスの推定まで可能となる。また、与えられた対象を表記していると考えられる単語(形態素)の分析から、対象評価価値観を線型モデルとして求めることができ、それに基づいてその個人の行動の動機を推定することが可能となる。また、付与された刺激、たとえば与えられた情報に対する処理の物理的属性(たとえば、処理の速さ)から、処理能力を含む処理適性を、とくにその個人の処理パターンを線型モデルとして求めることができ、さらに、加算能力等の単純負荷に対する処理能力を線型モデルとして求めることにより、そこからたとえば、ストレスや情報処理に関する安定性等を抽出することまで可能となる。
【0032】
そして、これら個人の内的価値観、対象評価価値観、処理適性をすべて線型モデルとして表記することが可能であるから、各特性を個別に分析、表記できることは勿論のこと、とくに、同一の次元領域に、たとえば、一つの個人特性図として、すべてを含めて総合的に表記することが可能となる。つまり、個人に対して、行動パターン、行動の動機、処理パターン、ストレスや安定性等を含めた、心理的な行動開始から実際の行動に至るまでのプロセスを総合的にかつ的確に推定可能となり、各個人に対する属性や能力判断に現実に活用できる有効な情報が提供される。
【0033】
以下に、内的価値観、対象評価価値観および処理適性の各線型モデルを、各々個別に求める方法の実施態様について説明し、続いて、これらの特性を実質的に同一の次元領域に表記することにより各価値観および処理適性を含む総合的な個人特性を推定する方法について説明する。
【0034】
図3は、コンピュータに入力設定されている、自分を表現する語彙を羅列したアンケート表の一例を示している。図3に示したアンケート表H1は、長年の試行錯誤の繰り返しにより抽出した語彙を選択、羅列したものであり、実際に数万人規模で個人の内的価値観の抽出に使用したアンケート表である。
【0035】
この表H1における各語彙は、内的価値観を代表的に表記する複数の要因に分類されるとともに、各語彙には各要因別に因子得点が付与されている。この複数の要因への分類、要因別の因子得点の付与は、全国的母集団から、統計処理されて演算されている。
【0036】
各要因は、たとえば、図4にも示すように、次の6つに設定される。
yp1:野心的要因
yp2:真面目要因
yp3:きさく要因
yp4:大人しい要因
yp5:優しい世話好き要因
yp6:明るい外交要因
【0037】
上記のようなアンケート表に対する各個人毎のアンケート採取結果から、前記因子得点により各語彙を各要因別に重み付けしたテーブルを作成し、個人別に、その重み付けテーブルにおける因子得点を集計することにより、各要因別に重み付けを行うことができる。すなわち、その個人の内的価値観YPを、
YP=yp1+yp2+yp3+yp4+yp5+yp6
で表し、線型モデルとして求めることが可能になる。この実施態様では、内的価値観YPをyp1〜yp6の6次元の因子得点による線型モデルとして求めているが、これに限定されない。このように、まず、個人の内的価値観YPに関する個人特性が、コンピュータを用いて抽出可能となる。
【0038】
また、同様に、与えられた対象に対する対象評価価値観OVAに関する個人特性が、コンピュータを用いて抽出可能となる。
たとえば、図5に、コンピュータに入力設定されている、ある対象が与えられた場合にその対象を表現する語彙を羅列したアンケート表の一例を示す。図5に示したアンケート表H2は、長年の試行錯誤の繰り返しにより抽出した語彙を選択、羅列したものであり、実際に数万人規模で個人の対象評価価値観の抽出に使用したアンケート表である。
【0039】
この表H2における各語彙は、対象評価価値観を代表的に表記する複数の要因に分類されるとともに、各語彙には各要因別に因子得点が付与されている。この複数の要因への分類、要因別の因子得点の付与は、全国的母集団から、統計処理されて演算されている。
【0040】
各要因は、たとえば、図6にも示すように、次の7つに設定される。
ova1:Decorative(装飾的意味合いの強い価値要因)
ova2:Fun (即時的な”Fun”追求要因)
ova3:Pragmatics(実用主義的要因)
ova4:Heartful(ものに所属する思い出・愛情要因)
ova5:Healthy (家庭を中心に相反するくつろぎ要因)
ova6:Self Saving (自分自身をSaveする要因)
ova7:Feed(食要因)
【0041】
上記のようなアンケート表に対する各個人毎のアンケート採取結果から、前記因子得点により各語彙を各要因別に重み付けしたテーブルを作成し、個人別に、その重み付けテーブルにおける因子得点を集計することにより、各要因別に重み付けを行うことができる。すなわち、その個人の対象評価価値観OVAを、
OVA=ova1+ova2+ova3+ova4+ova5+ova6
+ova7
で表し、線型モデルとして求めることが可能になる。この実施態様では、対象評価価値観OVAをova1〜ova7の7次元の因子得点による線型モデルとして求めているが、これに限定されない。このように、個人の対象評価価値観OVAに関する個性も、コンピュータを用いて抽出可能となる。
【0042】
上記においては、各個人毎のアンケート採取結果からのみ、個人の内的価値観YP、対象評価価値観OVAに関する個性を抽出するようにしたが、インターネット等の情報伝達手段を介して入手した情報から、各個人の個性を抽出することも可能である。たとえば、情報伝達手段(たとえば、インターネット)を介して個人情報を入手し、入手した個人からのランダムな情報を形態素解析し(つまり、得られた情報中の語彙を、各々、各語句が意味をなす最小単位である形態素に変換し)、得られた各形態素を予め設定しておいた意味辞書に照合して、個人別の使用言語に関する意味テーブルを作成する。そして、作成した個人の意味テーブルと、既に求めておいた上述した内的価値観抽出方法または対象評価価値観抽出方法における他人の線型モデルおよびその線型モデルを作成するための重み付けテーブルにおける集計結果の相関関係とを比較照合する。ぴったりのものがあれば、その相関関係からその個人の線型モデルを、アンケート集計結果がなくても抽出することが可能になり、類似のものがあれば、その類似の相関関係からその個人の線型モデルを推定することが可能になる。この抽出あるいは推定結果から、その個人の内的価値観あるいは対象評価価値観を、線型モデルとして推定、抽出することが可能になる。
【0043】
上記のように線型モデルとして求められた内的価値観に関する個人特性から、対象に対する個人の行動プロセスを推定し、線型モデルとして求められた対象評価価値観に関する個人特性から、対象に対する個人の行動動機を推定することが可能になり、その個人に対する好適な手法の自動提示することが可能になる。このような推定内的価値観、対象評価価値観から求められた好適な手法の自動提示は、それら各々のみでも、カウンセリングに適用できる。
【0044】
上記YRMにおいては、上記のような内的価値観、対象評価価値観の推定に加え、個人の処理適性が線型モデルとして求められ、これら特性が含む総合的な個人特性(情報処理能力)まで推定され得る。
【0045】
上記YRMにおいて処理適性は、個人の五感の少なくとも一つの感覚に対する刺激をランダムに付与し、付与された刺激に対する反応を検知し、反応結果と反応時間からその個人の処理能力を含むその時の処理適性を線型モデルとして求められる。このような処理適性を線型モデルは、たとえば次のような処理能力を検査するための処理能力検査装置によって求めることができる。図7は、コンピュータを用いた処理能力検査装置の基本構成の一例を示している。図8は、上記処理能力検査を、単純負荷試験としての、クレペリン検査に適用した場合の刺激付与手段部および反応検知手段部の一構成例を示している。
【0046】
図7に示す、個人の被検者の付与刺激に対する処理能力を検査するための処理能力検査装置1には、被検者の五感のうちたとえば視覚、聴覚、触覚の少なくとも一つの感覚に対する刺激をランダムに繰り返して被検者に付与する刺激付与手段2と、繰り返し付与された刺激に対する被検者の反応を検知する反応検知手段3と、繰り返し付与された刺激に対する被検者の反応に要する時間を計測する反応時間計測手段4と、被検者の反応結果および反応時間計測手段4による計測結果を記録する記録手段5と、記録手段5による記録結果を、付与された刺激と関連付けて、被検者の反応特性を分析する分析手段6とが設けられている。また、必要に応じて、記録手段5からの記録情報、および分析手段6からの分析結果情報を、画面表示またはプリントアウトする表示手段7が設けられている。分析手段6からの分析結果情報は、表示手段7を介して、あるいは直接的に、たとえば転送手段8を介してホストコンピュータ9に送ることも可能になっている。
【0047】
刺激付与手段2は、被検者の視覚、聴覚、触覚に訴える刺激を発生したり課題を提示したりする。この刺激付与手段2による刺激の付与は、たとえば、被検者が反応するまで続行し、被検者の反応後、次の刺激を付与し、この動作を連続的に繰り返し行うことにより実行することができる。刺激の種類は、ランダムに変化させ、付与された刺激に対し被検者の反応特性を把握できるようにする。
【0048】
反応検知手段3は、繰り返し付与された刺激に対する被検者の反応を、適当な反応入力装置(たとえば、ペンタッチ入力装置)により入力させ、入力された反応を読み取る。たとえば、単純負荷試験として、本発明における処理能力検査、推定をクレペリン検査に適用した例を図10に示すが、画面11に刺激提示領域12(課題提示領域)を設定し、この領域12に、クレペリン検査における乱数列の隣接する2つの数字を表示する。刺激提示領域12の下部には、反応入力領域13、たとえば感圧センサ付きの反応入力領域13を設定し、この領域13に、付与された刺激(課題)に対する反応(解答)を、たとえばペン入力装置からなる反応入力装置14を用いて被検者が入力する。被検者による入力開始後、あるいは入力途中で若しくは入力完了後、2つの数字のうち右側の数字を左側に移動し、右側の数字提示領域には次の新たな数字を提示して、クレペリン検査における数列の組み合わせを一つ右側に移動し、次の課題を提示する。この操作を順次繰り返すことにより、従来の用紙を用いて行っていたクレペリン検査と同等の課題提示を行うことが可能になる。
【0049】
反応時間計測手段4では、繰り返し付与された刺激に対する被検者の反応に要する時間を計測するが、上記のようなクレペリン検査における、2つの数字の和を計算する単純な課題では、被検者は計算が終わってから解答するので、いわゆる「書きながら考える」ことはしないと考えられるから、解答(反応)の開始時点までの時間を計測するのが妥当である。したがって、反応が開始されれば、数列を次の課題に移行させればよい。
【0050】
記録手段5では、被検者の反応結果(解答結果)を記録するとともに、各刺激付与毎に反応に要した時間、つまり、反応時間計測手段4による計測結果を記録する。本実施態様では、この記録手段5による記録情報を、そのままの生データの形でも表示手段7により表示あるいはプリントアウト可能となっている。実際には、上記反応検知手段3による検知、反応時間計測手段4による計測、および記録手段5による記録は、実質的に同時といってもよいほど極短時間に行われるので、この記録手段5による記録完了と同時に次の刺激への移行を行えばよい。
【0051】
分析手段6では、記録手段5による記録結果を、付与された刺激と関連付けて、被検者の反応特性を分析する。たとえば上記クレペリン検査においては、解答の正否を判断するとともに、各所定時間毎に提示された数列に対する解答の総量を分析し、かつ、各数列毎の(各所定時間毎の)処理速度の分布や分散、つまり、所定の短い時間内において処理速度がどのように変化したか、また、その変化の度合いはどのような大きさであったかが、分析される。分析手段6による分析結果は、表示手段7により表示あるいはプリントアウト可能となっている。分析手段6による分析結果の情報を転送手段8を介してホストコンピュータ9に送れば、複数人の検査データをホストコンピュータ9でまとめてさらに詳しい分析を行うことが可能になる。また、分析手段6による分析結果の情報を刺激付与手段2にフィードバックするようにすれば、たとえば、分析手段6による分析結果に応じて刺激付与手段2による刺激付与方法を適切に変化させるようにすれば、目標とする検査をさらに精度を高めた条件で行うことも可能になる。
【0052】
上記のような構成を有する処理能力検査装置においては、従来の装置では得ることができなかった、短い時間的要素の入った検査情報が、精度良く得られ、得られた情報に基づいて、従来成し得なかった能率や能力の変化特性を分析することができる。
【0053】
たとえば従来の作業能率検査では、主として紙の上に印刷された課題を順次解いていく方法が用いられており、被験者の反応は、一定の時間、たとえば一分間の間隔毎にまとめて分析されていた。もちろんこの従来方法でも、被験者の作業能率特性をある程度評価することは可能であったが、次のような点が問題点として指摘される。
(1)課題毎の処理時間を正確に捉えることはできず、ある時間、たとえば1分間における平均処理時間としてしか捉えることができない。そのため、課題の種類に応じた反応特性等を把握することはできなかった。
(2)各課題を解くために必要な時間の分散を推定することができない。
(3)持続的な注意力が途切れる様子や時間、周期等を判断することができない。
(4)持続的な注意力が途切れる場合、どのぐらいの時間で注意力が回復するのかを判断することができない。
(5)注意力を持続している時と注意力が途切れた時との間にどの程度の処理能力差があるのか推定できない。
【0054】
しかし上記のような処理能力検査装置では、これらの問題をすべて解消可能となる。すなわち、上記(1)については、たとえばクレペリン検査では、すべての課題が均質であるという保証はなく、3+6と8+4とでは繰り上がりの有無によって計算時間が若干異なると考えられ、平均処理時間を推定するためには個々の課題を処理する時間を正確に測定しなければ判断できず、従来の方法では判断できないが、本実施態様に係る処理能力検査装置では、個々の課題処理時間が各々正確に測定されるので平均処理時間は正確に演算され、しかも個人差や課題の種類に関連付けて個々の課題処理時間の変化の程度まで正確に測定される。
【0055】
また、上記(2)については、たとえば2人の人が一定時間に同じ処理量をこなしたとしても、それぞれの課題をほぼ同じ処理時間で処理時間の分散の小さい人と、処理時間の分散の大きい人とでは、処理能力の特性が異なると考えられる。このような差異は、従来の方法では判断できないが、本実施態様に係る処理能力検査装置では、課題の種類や一定の時間内における課題処理速度の変化に関連付けて、分布や分散が正確に測定される。
【0056】
また、上記(3)、(4)、(5)についても、本実施態様に係る処理能力検査装置では、課題に対する正否、課題処理速度の時間的変化が正確に測定されるので、注意力の持続時間、注意力の途切れる時、その回復状態が、精度良く、個々の被検者に応じた特性として正確に測定される。
【0057】
上記のような、従来の方法では把握できなかった詳細な分析情報まで正確に測定できる上記処理能力検査装置は、視覚刺激のみならず、聴覚や触覚まで含めた複合的な刺激付与に対しても適用できる。すなわち、図9に示すように、視覚刺激提示手段21、聴覚刺激付与手段22、触覚刺激付与手段23を備え、これら手段21、22、23から付与される刺激を任意に組み合わせて、複合刺激付与24を行うことができる。各刺激付与手段21、22、23からの刺激は、実質的に同時に付与してもよく、順次付与してもよく、それらをランダムに組み合わせてもよい。また、一つの感覚刺激付与手段内で、複合的な刺激、つまり複数種の刺激を実質的に同時にあるいは順次付与してもよい。
【0058】
さらに、複数種の刺激を付与し、被検者の注意力がどのように分散されるかの特性等も測定可能である。たとえば車の運転行為を考えた場合、種々の感覚情報に囲まれながら、刻々変化する状況に対処して適切な行動をとる必要がある。このような状況下における作業能力を評価するためには、単純な作業課題を遂行している際に、他の情報課題を検知、処理できるか否かを調べればよい。たとえば図10に複数の視覚刺激を付与する場合の例を示す。この例は、前述のクレペリン検査に加え、クレペリン検査における課題提示領域12の上部に、複数の発光領域31を設け、被検者は、課題提示領域12に提示された2つの数字の和を計算している間に、点滅した発光部の位置を答えるようにしたものである。発光部の位置、発光時間、強度を変化させることで注意を分散しなければならない状況での情報処理能力を評価することができる。図10(A)に示した構成は、反応領域13にクレペリン検査の答えと、発光領域31の発光位置との両方を反応入力装置14によって入力するようにしたものであり、図10(B)に示した構成は、画面下部に、発光領域31における発光部の個数と同数の解答領域32を設け、発光領域31における発光位置と同じ位置にクレペリン検査の答えを入力させるようにしたものである。いずれも、複数の視覚刺激に対し実質的に同時に反応しなければならないようにしたものであり、注意力の分散に関する被験者の特性を測定できる。
【0059】
このように、上記処理能力検査装置では、従来の方法では測定し得なかった、とくに時間的要素を加味した個々の被験者の処理能力特性を精度良く、かつ、正確に測定できるようになる。したがって、上記処理能力検査装置は、前記例示したクレペリン検査に限らず、視覚刺激、聴覚刺激、触覚刺激が個々にあるいは複合的に付与されるあらゆる分野の処理能力特性の評価に幅広く応用できる。
【0060】
上記のような処理能力検査装置を用いて、たとえば、単純負荷試験として、単純反応作業1分間、加算作業を3分間を3回行い、それぞれの問の回答時間や解をテキストファイルとして記憶し、それからたとえば、次のように単純統計量、ミス率、基本指標を算出して、個人別の変数を求め、それら変数を使用して個人別の処理適性に関する主成分を線型モデルとして表記することが可能である。
【0061】
たとえば上記のように3回行われた単純負荷試験の作業から、単純統計量、ミス率および基本指標を求める。単純統計量、ミス率としては、たとえば次のように求める。
・回答間平均時間
・同上標準偏差
・同上変動係数
・同上最大値と最小値
・回答数
さらに、
・ミス回答数
・ミス回答率
などを求める。
【0062】
また、基本指標は、たとえば次のように求める。
・第1回目加算平均時間−単純反応平均時間
・第2回目加算平均時間−単純反応平均時間
・第3回目加算平均時間−単純反応平均時間
・第2回目加算平均時間÷第1回目加算平均時間
・第3回目加算平均時間÷第1回目加算平均時間
・(第2回目加算平均時間−単純反応平均時間)÷(第1回目加算平均時間−単純反応平均時間)
・(第3回目加算平均時間−単純反応平均時間)÷(第1回目加算平均時間−単純反応平均時間)
【0063】
以上の処理により、個人別の変数を求め、それら変数を使用して個人別の処理適性に関する主成分分析を行う。分析には、たとえば次の7つの成分を抽出する。このような手法により、個人別に、主成分得点として線型モデルとして表記可能となる。
・第1成分:情報処理能力
・第2成分:正確性
・第3成分:演算ミス
・第4成分:演算力
・第5成分:学習能力
・第6成分:単純反応安定性
・第7成分:総合能力
【0064】
上記YRMにおいては、図11に基本構成を示すように、上記のように求められた個人の処理適性(TC)と、前述した内的価値観に関する個人特性(YP)と、対象評価価値観に関する個人特性(OVA)とを、それぞれ線型モデルとして表記でき、判断対象に応じて適切に選択した成分に対して、とくに同一次元領域ARに表記することが可能である。これによって、従来の手法ではなし得なかった、より適切な、総合的な個人の特性、能力の推定が可能となる。
【0065】
上記のようなYRMによる検査結果から、適正判別とモラル維持のための、各オペレータの個人別の対応手法を導くことも可能である。たとえば、各オペレータのスキルチェックとして、自然文章で、自分が持っている「知識・技術」の「一般・専門」を登録し、その文章を言語解析し、オペレータのスキルを判別することも可能である。
【0066】
また、オペレータ採用の際の面接支援システムとして、危険な人材を判別するために、応募者のYRM及びスキルチェック検査から、応募者のうち事故を起こす可能性のある人材は自動的に採用不可として判断することが可能である。また、前述のYP・OVAにおいて矛盾を内在する応募者に関しては、別途準備した、質問すべき内容を出力するようにすることも可能である。たとえば、「この応募者は職場に対してモラルが低下しています。能力からは本人に起因している可能性は低いですが、なぜモラル低下しているのか、現状の職場もしくは環境について問う必要があります。」等の内容を出力するようにすることも可能である。
【0067】
面接もしくは問い合わせ内容と判断結果を登録する場合には、たとえば、まず、面接者もしくは問合わせ担当者の氏名と、判断結果を登録する。事前に登録された判断担当者のYRMから、その判断の可否をシステムに問あわせることができる。
【0068】
また、職務配分支援システムとして、依頼業務から最適なオペレータを自動的に判別させることもできる。また、登録者に適正の偏りがある場合には、必要な人材をシステムに問い合わせることもできる。
【0069】
在宅オペレータ支援システムとして、たとえば、双方向コミュニケーションツールを用いることができる。たとえば、デスクトップキャラクターを使用して、オペレータとの対話や指示を行うことができる。さらに、オペレータの健康管理等の支援システムを付加することも可能である。たとえば、インターネットを利用した血液検診での生活習慣病等の管理を行うことができる。さらに、オペレータの生活習慣等の支援システムを付加することも可能である。たとえば、若年者用等に、ダイエットを中心とした生活習慣の登録やアドバイスを受けることができるようにすることもできる。中高年者用等には、生活習慣病予防を主とした目的の自己管理の支援システムを加えることも可能であり、管理栄養士による電話でのカンウンセリングも可能である。
【0070】
また、オペレータの研修支援システムとして、たとえば、オペレータのYRMに基づき、最適な「言語トレーニング」として「チームワーキング」を行うようにすることが可能である。「言語化」のトレーニングにより、仕事と所属法人に対する、モラルの向上や改善を行うことができる。
【0071】
さらに、スキル向上支援システムとして、たとえば、登録時に行った「スキルチェック」から、業務毎にオペレータに不足するスキルを自動的に出力するようにすることが可能である。また、受注した業務に最適な人材リスト出力と、受注業務量から、新規募集の必要性をシュミレーションすることも可能である。登録人材の「研修」を選ぶ場合と、「新規採用」する場合のコスト比較も可能である。
【0072】
さて、本発明に係るコールセンターシステムにおいては、図2に示したように、顧客の対話内容を判別プログラム124を用いて解析し、より最適な返答を出力、表示することが可能である。たとえば、前述の如く選択されたオペレータが顧客からの問い合わせを繰り返し確認したときの対話内容が自動認識され、自動認識された対話内容の文章から、各形態素に分けられる形態素解析にかけられることにより各形態素が抽出され、抽出された各形態素に対して、主成分分析により必要な語彙のみが抽出されて、返答対象とすべき顧客の対話内容が、判別対象文章として再構築されるようにすることができる。
【0073】
再構築された判別対象文章中の、上記主成分分析により抽出された必要な語彙の全部または一部が、予め定められたカテゴリ別に分類されるとともに、各カテゴリ中において予め定められた意味領域に分類され、各意味領域に分類された語彙毎に判別係数が求められ、該判別係数を用いて、各カテゴリ毎に、または/および、各判別対象文章毎に、判別得点が求められるようにすることができる。主成分分析により抽出された語彙が、たとえば、図12に示すように予め定められた各カテゴリ(図示例では、カテゴリ1、2、3)中における予め定められた意味領域毎に分類され(カテゴリ分類201)、各意味領域に分類された語彙毎に判別係数が求められ、該判別係数を用いて、たとえば、図13に示すような式によって判別得点が求められる(判別得点演算式202)。このとき、上記各意味領域に分類された語彙の判別係数と、各意味領域毎に予め設定された重心との差異の程度から、主たる意味領域を特定することもでき、特定された主たる意味領域における判別対象となった語彙が抽出されて、判別対象文章の意味が、不要な語彙が除かれた状態で求められ、それに基づいて、前述のテキストデータから、顧客からの問い合わせに対する最適な返答を抽出するようにすることができる。このようにすれば、実質的に、オペレータの教育を行うことなく、最適な返答の抽出、その実行が可能となり、従来のコールセンターシステムにおける問題点であったオペレータの教育、訓練が省略可能となる。
【0074】
さらに、前述したように、求められた判別対象文章の意味、または/および、特定された主たる意味領域における判別対象となった語彙が、予め設定された危険文章または/および危険語彙のリスト(たとえば、猥褻等の非合法的な危険文章または/および危険語彙が設定されているリスト)と照合されることにより、その危険リスト中の文章または/および語彙に相当する場合には、その旨の表示がオペレータの端末コンピュータに送信されるとともに、オペレータの返答対象から外されるようにすることも可能となる。したがって、健全なコールセンターシステムの運用が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明に係るコールセンターシステムは、情報を中核とした無店舗販売等は勿論のこと、一般の商品販売システムや顧客サポートシステム等にも広く展開可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施態様に係るコールセンターシステムの概要を示す概略構成図である。
【図2】図1のコールセンターシステムにおけるサーバーの機能例を示すブロック図である。
【図3】YRMに用いる内的価値観に関するアンケートの一例を示す、コンピュータに入力設定される表を表した図である。
【図4】YRMにおける内的価値観に関する要因例を表した図である。
【図5】YRMに用いる対象評価価値観に関するアンケートの一例を示す、コンピュータに入力設定される表を表した図である。
【図6】YRMにおける対象評価価値観に関する要因例を表した図である。
【図7】YRMにおける処理適性の推定に用いる処理能力検査装置の一例を示す概略構成図である。
【図8】YRMにおける処理適性の推定をクレペリン検査に適用した場合の一例を示す、処理能力検査装置の画面の正面図である。
【図9】処理能力検査装置において複合刺激付与手段を用いる場合の概略構成図である。
【図10】処理能力検査装置をクレペリン検査に適用し、かつ、複数の刺激を付与する場合の画面の正面図である。
【図11】YRMの基本構成を示すブロック図である。
【図12】図2の判別プロブラム中の各カテゴリへの分類例を示す説明図である。
【図13】判別得点演算式の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0077】
H1 内的価値観に関するアンケート表
H2 対象評価価値観に関するアンケート表
YP 内的価値観
OVA 対象評価価値観
TC 処理適性
AR 同一次元領域
yp1〜yp6 内的価値観に関する要因
ova1〜ova7 対象評価価値観に関する要因
1 処理能力検査装置
2 刺激付与手段
3 反応検知手段
4 反応時間計測手段
5 記録手段
6 分析手段
7 表示手段
8 転送手段
9 ホストコンピュータ
11 画面
12 刺激提示領域
13 反応入力領域
14 反応入力装置
21 視覚刺激提示手段
22 聴覚刺激付与手段
23 触覚刺激付与手段
24 複合刺激付与(手段)
31 発光領域
32 解答領域
100 コールセンターシステム
101 顧客
102 サーバー
103 オペレータ
104 端末コンピュータ
111 発信・受電管理手段
112 接続中オペレータ検出手段
113 最適オペレータ選択手段
114 データベース
115 音声内容自動認識手段
116 分野特定手段
117 個人属性・過去実績
118 顧客過去情報
119 テキストデータ
120 対話内容認識手段
121 最適返答抽出手段
122 表示返答送信手段
123 特定処理専門オペレータ転送手段
124 判別プログラム
201 カテゴリ分類
202 判別得点演算式

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客からの受電をサーバーを介してオペレータの端末コンピュータに接続し、顧客とオペレータとの対話を可能にするコールセンターシステムであって、前記サーバーが、少なくとも、顧客からの受電時に前記サーバーに接続中のオペレータを検出する接続中オペレータ検出手段と、接続中のオペレータの中から実際に接続すべき最適なオペレータを、事前に準備されたデータベースに基づいて選択する最適オペレータ選択手段とを有することを特徴とするコールセンターシステム。
【請求項2】
前記サーバーが、顧客からの受電の着信初期の顧客通話の音声内容を自動認識し、該認識から、これから顧客がオペレータと対話すべき分野を特定する分野特定手段を有する、請求項1に記載のコールセンターシステム。
【請求項3】
前記サーバーが、顧客からの受電の着信初期の顧客通話の音声内容を、最初に受電したオペレータが問い返した音声内容から自動認識する、請求項2に記載のコールセンターシステム。
【請求項4】
前記分野特定手段により特定された分野に登録されているオペレータの中から実際に接続すべき最適なオペレータが、前記最適オペレータ選択手段により選択される、請求項2または3に記載のコールセンターシステム。
【請求項5】
前記データベースが、各オペレータの個人属性および/または過去実績を記録したものからなる、請求項1〜4のいずれかに記載のコールセンターシステム。
【請求項6】
前記データベースが、顧客についての過去情報に関するデータベースを含む、請求項1〜5のいずれかに記載のコールセンターシステム。
【請求項7】
前記サーバーには、予想される顧客からの問い合わせと該問い合わせに対するオペレータの返答とのテキストデータが記憶されており、選択されたオペレータが顧客からの問い合わせを繰り返し確認したときの対話内容が自動認識され、該認識に基づいて、前記テキストデータから、顧客からの問い合わせに対する最適な返答が抽出され、抽出された返答がオペレータの端末コンピュータに自動表示される、請求項1〜6のいずれかに記載のコールセンターシステム。
【請求項8】
前記自動認識された対話内容が、前記テキストデータに基づいて最適な返答を抽出するには困難なものであると判断されたときには、顧客との接続が、特定の処理専門のオペレータに転送される、請求項7に記載のコールセンターシステム。
【請求項9】
前記データベースにおける各オペレータの個人属性が、
(a)各個人が使用した言語群の中の単語をコンピュータにより予め設定されたテキストに照合することによってそれぞれ形態素として抽出し、該抽出した形態素を予め設定した群からなる複数の要因に分類するとともに、要因別に設定された因子得点を集計して要因別に重み付けを行い、その個人が基本的に有している内的価値観を、前記重み付けされた各要因の線型モデルとして求め、
(b)その個人に特定の評価対象が与えられたときの該評価対象に対するその個人の言語活動から、使用された単語をコンピュータにより予め設定されたテキストに照合することによってそれぞれ形態素として抽出し、該抽出した形態素を予め設定した群からなる複数の要因に分類するとともに、要因別に設定された因子得点を集計して要因別に重み付けを行い、その個人がその時に有している対象評価価値観を、前記重み付けされた各要因の線型モデルとして求め、
(c)前記内的価値観および対象評価価値観の各線型モデルを、各々単独で表記することにより各価値観を個別に推定し、または/および、実質的に同一の次元領域に表記することにより各価値観を含む総合的な個人特性を推定する、
個人特性推定システムにより推定される、請求項5〜8のいずれかに記載のコールセンターシステム。
【請求項10】
前記データベースにおける各オペレータの個人属性が、
(d)各個人が使用した言語群の中の単語をコンピュータにより予め設定されたテキストに照合することによってそれぞれ形態素として抽出し、該抽出した形態素を予め設定した群からなる複数の要因に分類するとともに、要因別に設定された因子得点を集計して要因別に重み付けを行い、その個人が基本的に有している内的価値観を、前記重み付けされた各要因の線型モデルとして求め、
(e)その個人に特定の評価対象が与えられたときの該評価対象に対するその個人の言語活動から、使用された単語をコンピュータにより予め設定されたテキストに照合することによってそれぞれ形態素として抽出し、該抽出した形態素を予め設定した群からなる複数の要因に分類するとともに、要因別に設定された因子得点を集計して要因別に重み付けを行い、その個人がその時に有している対象評価価値観を、前記重み付けされた各要因の線型モデルとして求め、
(f)個人の五感の少なくとも一つの感覚に対する刺激をランダムに付与し、付与された刺激に対する反応を検知し、反応結果と反応時間からその個人の処理能力を含むその時の処理適性を線型モデルとして求め、
(g)前記内的価値観、対象評価価値観および処理適性の各線型モデルを、各々単独で表記することにより各価値観および処理適性を個別に推定し、または/および、実質的に同一の次元領域に表記することにより各価値観および処理適性を含む総合的な個人特性・能力を推定する、
個人特性推定システムにより推定される、請求項5〜8のいずれかに記載のコールセンターシステム。
【請求項11】
選択されたオペレータが顧客からの問い合わせを繰り返し確認したときの対話内容が自動認識され、自動認識された対話内容の文章から、各形態素に分けられる形態素解析にかけられることにより各形態素が抽出され、抽出された各形態素に対して、主成分分析により必要な語彙のみが抽出されて、返答対象とすべき顧客の対話内容が、判別対象文章として再構築される、請求項7〜10のいずれかに記載のコールセンターシステム。
【請求項12】
再構築された判別対象文章中の、前記主成分分析により抽出された必要な語彙の全部または一部が、予め定められたカテゴリ別に分類されるとともに、各カテゴリ中において予め定められた意味領域に分類され、各意味領域に分類された語彙毎に判別係数が求められ、該判別係数を用いて、各カテゴリ毎に、または/および、各判別対象文章毎に、判別得点が求められる、請求項11に記載のコールセンターシステム。
【請求項13】
前記各意味領域に分類された語彙の判別係数と、各意味領域毎に予め設定された重心との差異の程度から、主たる意味領域が特定され、特定された主たる意味領域における判別対象となった語彙が抽出されて、判別対象文章の意味が求められ、それに基づいて、前記テキストデータから、顧客からの問い合わせに対する最適な返答が抽出される、請求項12に記載のコールセンターシステム。
【請求項14】
求められた判別対象文章の意味、または/および、特定された主たる意味領域における判別対象となった語彙が、予め設定された危険文章または/および危険語彙のリストと照合され、リスト中の文章または/および語彙に相当する場合には、その旨の表示がオペレータの端末コンピュータに送信されるとともに、オペレータの返答対象から外される、請求項13に記載のコールセンターシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−200198(P2007−200198A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20582(P2006−20582)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(501247588)
【Fターム(参考)】