説明

コーン配合膨化食品

【課題】コーングリッツを主要原料とせずとも、コーングリッツを主原料としたものと同等に良好な食感の、コーン配合膨化食品を得る。
【解決手段】エクストルーダで膨化処理するコーン配合膨化食品において、スイートコーンパウダーを生地粉体換算で20%以上配合し、澱粉を生地粉体換算で20%以上配合することを特徴とするコーン配合膨化食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食感が良好なコーン配合膨化食品に関する。
【背景技術】
【0002】
コーンを配合し、エクストルーダで膨化させた食品は、香ばしい風味と軽い食感で人気を博している。膨化食品に用いるコーンとしては、良好な食感が得られることからコーングリッツが一般的に用いられる。
【0003】
コーングリッツはコーンを粒状で乾燥する製造工程を経るため、乾燥までに時間を要する。気象の悪条件にさらされたコーンが本工程で処理された場合、黴の繁殖と黴毒生成の懸念がある。特に乳幼児に与える食品では、安全性に加え、徹底した安心感の追及が最大の課題となるため、これらへのコーングリッツの配合には大きな抵抗感が存在する。
【0004】
しかし、コーングリッツを配合しない、又は削減したコーン配合膨化食品はさくさくとした良好な噛み応えと良好な口解けが失われやすいという課題があり、コーングリッツを主要原料とせずとも良好な食感を有するコーン配合膨化食品が求められている。
【0005】
コーングリッツを主原料としないコーン配合膨化食品の製造方法として、コーンと米からなる混合原料に蛋白質を混合した後、加水し、膨化処理する方法(特許文献1)が提案されているが、本方法で得られる膨化食品は、噛み応えは良好なものの、口中で付着性を有して口解けを損ない好ましくなかった。また、ハイラー層を有する粒状コーンを真空下でフライし膨化する方法(特許文献2)が提案されている。本方法で得られる膨化食品は、黴毒の懸念は払拭されるものの、コーングリッツを用いる膨化菓子とは異なり硬い噛み応えで、乳幼児に与える食品として適さなかった。
【0006】
【特許文献1】特開平7−115907号公報
【特許文献2】特開平10−327784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、コーングリッツを主要原料とせずとも、コーングリッツを主原料としたものと同等に良好な食感の、コーン配合膨化食品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、スイートコーンパウダー及び澱粉を特定量以上配合し、エクストルーダで膨化処理することにより、意外にも、コーングリッツを主原料としたものと同等に良好な食感が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)エクストルーダで膨化処理するコーン配合膨化食品において、生地にはスイートコーンパウダーを生地粉体換算で20%以上配合し、澱粉を生地粉体換算で20%以上配合するコーン配合膨化食品、
(2)澱粉が、リン含有量が180ppm以上、かつカルシウム含有量が80ppm以下の澱粉である(1)のコーン配合膨化食品、
(3)生地には、食塩を生地粉体換算で0〜0.5%配合する(1)又は(2)のコーン配合膨化食品、
(4)生地には、雑穀(コーンを除く)粉を生地粉体換算で20%以上配合する(1)乃至(3)のいずれかのコーン配合膨化食品、
(5)コーン配合膨化食品が、乳幼児用である(1)乃至(4)のいずれかのコーン配合膨化食品、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コーングリッツを用いず、または削減しても良好な食感のコーン配合膨化食品を提供することができる。これにより、黴毒の不安を持つことなくコーン配合膨化食品を摂取できるようになるため、幅広い年代の人々を対象とすることができ、中でも徹底した安全性と安心感が求められる乳幼児用の食品に用いることができ、食品市場の更なる拡大が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
【0012】
本発明のコーン配合膨化食品は、スイート種のコーンを原料とするスイートコーンパウダー及び澱粉をそれぞれ生地粉体換算で20%以上配合することを特徴としており、これにより、コーングリッツを主原料としたものと同等の良好な食感を呈する。また、スイート種のコーンを用いることで、コーン配合膨化食品特有の香ばしい風味を得ることができる。
【0013】
本発明のコーン配合膨化食品に用いるスイートコーンパウダーは、スイート種のコーンをペースト化した後に乾燥して得られるものであれば、特に限定されない。例えば、コーン軸から分離して得られたコーン粒をミキサー等により粉砕してコーンペーストを調製し、得られたコーンペーストを適宜加熱処理した後、任意の乾燥処理を行う方法が挙げられる。コーンを粒状で乾燥した後、挽き割りするコーングリッツやコーンフラワー、コーンミールとは異なる。
【0014】
本発明のコーン配合膨化食品に用いるスイートコーンパウダーの配合量は、粉体換算した生地全体の20%以上であり、好ましくは30%以上である。スイートコーンパウダーの配合量が上記値よりも少ない場合、コーン配合膨化食品特有の香ばしい風味が得られない。スイートコーンパウダーの配合量の上限は特に規定していないが、噛み応えが硬くなりコーングリッツを主原料としたものと同等な食感が得られない場合があることから50%以下が好ましい。
【0015】
本発明のコーン配合膨化食品に用いる澱粉は、特に限定されないが、例えば、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、さつまいも澱粉、キャッサバ澱粉、米澱粉等の澱粉を1種又は2種以上を組み合せて用いればよい。コーンの風味が損なわれるため、化学的処理を施した加工澱粉を用いずに、生澱粉や、これらに物理的処理を施した湿熱処理澱粉やアルファ化澱粉等を用いることが好ましい。加工澱粉としては、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、リン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉があげられる。
【0016】
本発明のコーン配合膨化食品に用いる澱粉の配合量は、粉体換算した生地全体の20%以上であり、好ましくは30%以上である。澱粉の配合量が上記値よりも少ない場合、噛み応えが硬くなりコーングリッツを主原料としたものと同等な食感が得られない。澱粉の配合量の上限は特に規定していないが、噛み応えが脆くなる場合があることから80%以下が好ましい。
【0017】
本発明のコーン配合膨化食品に用いる澱粉は、リンを180ppm以上及びカルシウムを80ppm以下含有することが好ましく、リンを190ppm以上又はカルシウムを70ppm以下含有することがより好ましい。リンの含有量の上限及びカルシウムの含有量の下限は特に規定していないが、コーングリッツを主原料としたものと同等な食感が得られやすいことからリンを300ppm以下又はカルシウムを45ppm以上含有することがより好ましい。
【0018】
本発明のコーン配合膨化食品に用いる澱粉のリン含有量の測定は、五訂食品成分表記載の測定法に基づき、乾式灰化法にて試料を調製した後、バナドモリブデン酸吸光光度法にて行った。
【0019】
本発明のコーン配合膨化食品に用いる澱粉のカルシウム含有量の測定は、五訂食品成分表記載の測定法に基づき、乾式灰化法にて試料を調製した後、干渉抑制剤−原子吸光法にて行った。
【0020】
本発明のコーン配合膨化食品に用いる食塩は、粉体換算した生地全体の0〜0.5%が好ましく、0〜0.3%がより好ましく、特に配合しないことがさらに好ましい。食塩の配合量が上記値よりも多い場合、噛み応えが硬くなりコーングリッツを主原料としたものと同等な食感が得られない場合がある。
【0021】
本発明のコーン配合膨化食品は、コーングリッツを主原料としたものと同等な食感がより得られやすいことから、雑穀粉を配合することが好ましい。一般に雑穀とは、穀類のうち米、大麦、小麦、および大豆を除いた、あわ、ひえ、四国びえ、きび、たかきび、コーン、えんばく、ライ麦、ライ小麦、はと麦、テフ、そば、アマランサス等の総称である。本発明のコーン配合膨化食品に用いる雑穀粉は、コーンを除くこれらの雑穀の1種又は2種以上の粉であれば良いが、食感改善の観点から、たかきび粉、あわ粉、ひえ粉、きび粉、アマランサス粉、ライ麦粉が好ましく、白たかきび粉がより好ましい。
【0022】
本発明のコーン配合膨化食品に用いる雑穀粉の配合量は、特に限定されないが、噛み応えが硬くなりコーングリッツを主原料としたものと同等な食感が得られない場合があることから、粉体換算した生地全体の20〜50%であることが好ましく、30〜50%であることがより好ましい。
【0023】
本発明のコーン配合膨化食品は、特に限定されないが、乳幼児に適する軽い食感が得られやすいことから、生地への油脂の配合や油脂によるフライ調理、油脂の吹き付けを行わないことが好ましい。上記油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、パーム油、ココナツ油、バター、ラード、これらの粉末化品や水素添加物等の加工品などがあげられる。
【0024】
本発明のコーン配合膨化食品は、上記スイートコーンパウダー及び澱粉、食塩、雑穀、油脂の他、本発明の効果を損わない範囲で適宜選択し配合することができる。具体的には、例えば、トマト、ニンジン、カボチャ、タマネギ、ほうれん草、ネギ、サツマイモ、昆布等の野菜類、小麦、米、大麦等の穀類、大豆、小豆、いんげん豆、ひよこ豆等の豆類、鶏肉、豚肉、牛肉等の畜肉類、魚肉、甲殻類、貝類等の魚介類、牛乳、脱脂粉乳、チーズ等の乳製品等、煮干、椎茸、鶏肉、牛肉、豚肉、魚、野菜等を使用した出汁又はエキス類、酒、糖類、醤油、みりん、酢、グルタミン酸ソーダ等の調味料、生姜、唐辛子、胡椒等の香辛料、炭酸カルシウム、卵殻粉、ビタミン類等を配合することができる。
【0025】
本発明のコーン配合膨化食品の製造方法は、スイートコーンパウダー及び澱粉をそれぞれ生地粉体換算で20%以上配合した原料をエクストルーダーで膨化処理することを特徴とする。膨化処理は、常法により加水量、温度、圧力等の膨化処理条件を調節して行えばよい。なお、エクストルーダーとしては、公知の1軸型エクストルーダー、2軸型エクストルーダー等を用いることができる。エクストルーダーで膨化処理して得られた膨化物は、適宜好ましい長さにカッティングし、必要に応じてオーブン等で乾燥処理を施すことにより、本発明のコーン配合膨化食品を製造することができる。
【実施例】
【0026】
以下に本発明のコーン配合膨化食品を実施例及び試験例に基づき詳述する。なお、本発明はこれに限定するものではない。
【0027】
〔実施例1〕
スイートコーンパウダー30部並びにコーンスターチ及び馬鈴薯澱粉を3:1の比率で混合した澱粉(リン含量198ppm、カルシウム含量48ppm)35部、白たかきび粉35部をミキサーで粉体混合して混合して生地粉末を得た。この生地粉末と、生地粉末に対して0.4倍量の清水を連続的に二軸型エクストルーダー(スクリュー回転数200rpm、バレル温度160℃)へ投入し、圧力40kg/cmで投入原料を加熱・混練した後、混練原料をエクストルーダーのダイ部に設けた直径5mmの孔部から大空中に押し出し、更に、押し出した膨化物を長さ3mmにカッティングして本発明のコーン配合膨化食品を得た。得られたコーン配合膨化食品はさくさくとした噛み応えを有し、噛み砕いた後の付着性は低く、特に乳幼児用に適した食感だった。
【0028】
〔試験例1〕
スイートコーンパウダー及び澱粉、食塩の配合量による食感への影響を確認した。実施例1の生地粉末に変えて、表1の原料をミキサーで粉体混合して調製した生地粉末を用い、実施例1に準じてコーン配合膨化食品を得た。
【0029】
対照を調製するにあたっては、実施例1のスイートコーンパウダー(30部)及び澱粉(35部)、白たかきび粉(35部)を、コーングリッツ(100部)に変更した以外は実施例1に準じ、コーン配合膨化食品を得た。実施例1−3及び比較例1−2と下記の評価基準に沿って官能評価で比較した。結果を表1に示す。
【0030】
<噛み応えの評価基準>
3:対照と同等にさくさくとした噛み応えだった。
2−1:対照よりもやや脆いものの、さくさくとした噛み応えだった。
2−2:対照よりもやや硬いものの、さくさくとした噛み応えだった。
1−1:脆く、対照のような噛み応えを呈さなかった。
1−2:硬く、対照のような噛み応えを呈さなかった。
<付着性の評価基準>
3:対照と同等に付着性が低かった。
2:対照よりもやや付着性が高かった。
1:対照よりも付着性が高かった。
【0031】
【表1】

【0032】
表1の結果から、スイートコーンパウダー及び澱粉を20%以上配合した場合、さくさくとした噛み応えで好ましかった(実施例1〜5)。一方、スイートコーンパウダーの配合量が20%よりも少ない場合、脆く、対照のようなさくさくとした噛み応えを呈さず、付着性も高く好ましくなかった(比較例1)。澱粉の配合量が20%よりも少ない場合は、硬く、対照のようなさくさくとした噛み応えを呈さず好ましくなかった(比較例2)。また、食塩の配合量が0.5%以下の場合、さくさくとした噛み応えと低い付着性で好ましかった(実施例1〜4)。一方、食塩の配合量が0.5%よりも多い場合、さくさくとした噛み応えで好ましいものの、やや硬かった(実施例5)。
【0033】
〔試験例2〕
澱粉中のリンとカルシウムの含有量による食感への影響を確認した。実施例1の澱粉(35部)を表2の澱粉(35部)に変更した以外は、実施例1に準じてコーン配合膨化食品を得た。試験例1に準じ、官能評価で対照と比較した。結果を表2に示す。
【0034】
【表2】

【0035】
表2の結果から、リン含有量が180ppm以上及びカルシウム含有量が80ppm以下の範囲の澱粉を配合した場合、対照と同等にさくさくとした噛み応えで好ましかった(実施例1、6〜7)。特に、リン含有量が190−300ppm及びカルシウム含有量が45−70ppmの範囲の澱粉を配合した場合、対照と同等に付着性が低く好ましかった(実施例1、6)。一方、リンの含有量が180ppmよりも低い又はカルシウムの含有量が80ppmよりも高い範囲の澱粉を配合した場合、さくさくとした噛み応えで好ましいものの、対照に比べてやや硬く、また付着性が高かった(実施例8〜9)。
【0036】
〔試験例3〕
雑穀粉による食感への影響を確認した。実施例1の白たかきび粉35部を表3の原料35部に変更した以外は、実施例1に準じてコーン配合膨化食品を得た。試験例1に準じ、官能評価で対照と比較した。結果を表3に示す。
【0037】
【表3】

【0038】
表3の結果から、雑穀粉を配合した場合、さくさくとした噛み応えと低い付着性で好ましく(実施例1、10〜11、13)、特に雑穀粉として白たかきび粉を用いたときに対照と同等にさくさくとした噛み応えで好ましかった(実施例1)。また、雑穀粉を生地粉体換算で20%以上配合した場合に付着性がより低くなり好ましかった(実施例1、10〜11)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エクストルーダで膨化処理するコーン配合膨化食品において、生地にはスイートコーンパウダーを生地粉体換算で20%以上配合し、澱粉を生地粉体換算で20%以上配合することを特徴とするコーン配合膨化食品。
【請求項2】
澱粉が、リン含有量が180ppm以上、かつカルシウム含有量が80ppm以下の澱粉である請求項1記載のコーン配合膨化食品。
【請求項3】
生地には、食塩を生地粉体換算で0〜0.5%配合する請求項1又は2記載のコーン配合膨化食品。
【請求項4】
生地には、雑穀(コーンを除く)粉を生地粉体換算で20%以上配合する請求項1乃至3のいずれかに記載のコーン配合膨化食品。
【請求項5】
コーン配合膨化食品が、乳幼児用である請求項1乃至4のいずれかに記載のコーン配合膨化食品。