説明

ゴミ袋用筒編体

【課題】本発明は、水切りが良好で生ゴミ等が引っ掛かることを抑止することができるとともに簡単な構成で無駄なく使用することが可能なゴミ袋用筒編体を提供することを目的とするものである。
【解決手段】ゴミ袋用筒編体1は、捲縮糸を用いて丸編で編成された長尺状の筒編地であって、編成された編地を経方向に引張るとともに緯方向に拡げた状態で熱セットすることで経方向及び緯方向の伸長率を熱セット前の60%〜80%に減少させている。使用する場合には、筒編体を所定長さだけ引き出して切断し、一端開口部を結んで袋状のゴミ袋に形成する。形成されたゴミ袋は、調理場等の排水口にセットして、排水とともに生ゴミを投入し、ゴミ袋内に生ゴミを堆積する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食店や住宅等の調理場において、調理の際に発生する生ゴミや残飯等を収容するゴミ容器に取り付けられる水切り用ゴミ袋として使用されるゴミ袋用筒編体に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食店の調理場や住宅の台所等では、調理する際に生じる生ゴミや食後の後片付けの際に出る残飯を回収して廃棄する必要がある。そのため、調理場に回収容器を設置したり、排水口に水切り用ゴミ袋をセットして排水とともに流れ込む生ゴミや残飯を回収するようにしている。
【0003】
こうした水切り用ゴミ袋として筒編地を用いたものが提案されている。例えば、特許文献1では、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂からなる極細の合成繊維を緯編した状態でヒートセットした後解いたちぢれ編み糸を用いて筒状体を編成し、筒状体の一端を閉塞して袋体とした水切り用ゴミ袋が記載されている。また、特許文献2では、表糸として伸縮性を有する弾性糸を用い、裏糸として伸縮性のない非弾性糸を用い、表糸を緯方向へ1目おきにもしくは2目以上とばして順次編立てるスパイラル編とし、経方向へも1目おきにもしくは2目以上とばして順次編立てるスパイラル編とすることにより表裏二重編の丸編地を形成し、丸編地の一端開口部を閉塞してゴミ袋とした点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平3−30321号公報
【特許文献2】実開平7−2301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した先行文献では、ゴミ袋を筒編地で形成することで、ゴミを確実に回収するとともに伸縮性を持たせて水抜けを良くすることができ、また排水口の取付かご等にセットしやすくなる、といったメリットを有している。
【0006】
しかしながら、先行文献に記載されているような仮撚加工(ウーリー加工)を施した捲縮糸を使用したゴミ袋の場合、伸縮性は良好であるものの生ゴミ等が引っ掛かりやすい欠点がある。そして、ゴミ袋に生ゴミ等が引っ掛かった部分に後から投入された生ゴミ等が積み重なるように滞留するようになり、滞留した生ゴミ等の重さによりゴミ袋が破けてしまうといった問題がある。
【0007】
また、先行文献に記載されたゴミ袋では、筒編地の一端開口を縫製等により閉じて所定の大きさの袋状にしているが、予め決められた長さに設定されているため、設置場所に合わせて大きさを設定することが難しく、設置場所よりも大きいサイズのゴミ袋を取り付けなければならず、設置場所からはみ出したゴミ袋の部分が無駄になることが避けられない。
【0008】
そこで、本発明は、水切りが良好で生ゴミ等が引っ掛かることを抑止することができるとともに簡単な構成で無駄なく使用することが可能なゴミ袋用筒編体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るゴミ袋用筒編体は、捲縮糸を用いて丸編で編成された長尺状のゴミ袋用筒編体であって、編成された編地を経方向に引張るとともに緯方向に拡げた状態で熱セットすることで経方向及び緯方向の伸長率を熱セット前の60%〜80%に減少させていることを特徴とする。さらに、前記捲縮糸は、捲縮伸長率が100%〜400%の仮撚加工糸であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る水切り用ゴミ袋は、上記のゴミ袋用筒編体を任意の長さで切断して一端開口部を結ぶことで袋状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るゴミ袋用筒編体の製造方法は、捲縮糸を丸編で編地に編成し、編成された編地を経方向に引張るとともに緯方向に拡げた状態で熱セットして経方向及び緯方向の伸長率を熱セット前の60%〜80%に減少させることを特徴とする。さらに、前記捲縮糸として、捲縮伸長率が100%〜400%の仮撚加工糸を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記のような構成を有することで、捲縮糸を用いて丸編で編成された編地を経方向に引張るとともに緯方向に拡げた状態で熱セットしているので、編成された捲縮糸が経方向及び緯糸方向に伸長した状態で熱セットされるようになる。そして、熱セット前に比べて伸長率が60%〜80%に減少するように設定することで、編目が拡がって水切りが良好になるとともに捲縮糸が伸長してばらつくことなくまとまった状態となって生ゴミ等が引っ掛かりにくくなる。
【0013】
また、伸長率を減少させることで、長尺状の編地をロール状にしっかりと巻き取ることができ、ゴミ袋に使用する場合には、必要な長さだけ引き出して鋏等により切断し、一端開口部を結んで水切り用ゴミ袋として使用すればよい。このように使用することで、ゴミ袋の設置場所に合わせて水切り用ゴミ袋を作成することができ、ゴミ袋用筒編体を無駄なく使用することが可能となる。
【0014】
そして、一端開口部を結ぶだけの極めて簡単な構成で水切り用ゴミ袋として使用することができる。編地の伸長率を減少させているので、一端開口部をしっかりと結ぶことができ、結んだ部分の強度を高めることが可能となる。そのため、結んだ部分をゴミ袋の底の部分とすれば生ゴミ等が堆積しても十分な耐久性を有し、破れることがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る実施形態に関する外観斜視図である。
【図2】筒編体を使用する場合の説明図である。
【図3】ゴミ袋をセットした状態に関する説明図である。
【図4】熱セット工程に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するにあたって好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に本発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明に係る実施形態に関する外観斜視図である。ゴミ袋用筒編体1は、筒編地の内部を密着させて所定幅で長尺のシート状に形成され、巻き芯2にロール状に巻き取られている。ゴミ袋用筒編体1は、一部拡大図で示すように、糸3を丸編により編成した筒編地で構成されている。
【0018】
糸3には捲縮糸が用いられる。捲縮糸としては、仮撚加工糸、ニットデニット糸、押し込み加工糸等が挙げられるが、特に仮撚加工糸が好ましい。繊維の種類としては、ポリエステル系繊維の仮撚加工糸がより好ましい。このような捲縮糸の捲縮伸長率は、100〜400%であることが好ましく、より好ましくは120〜400%、最も好ましくは150〜400%である。また、捲縮糸を構成する単糸の繊度は、0.5〜10dtexが好ましく、より好ましくは1〜8dtexであり、捲縮糸全体の繊度(総繊度)は、11〜330dtexが好ましく、より好ましくは22〜330dtexであるが、こうした範囲に限定されるものではない。
【0019】
編成された筒編地は、後述するように、丸編による編成後に筒編地を経方向に均等に引張るとともに緯方向に均等に拡げた状態で熱セットして経方向及び緯方向の伸長率を熱セット前の60%〜80%に減少させる。図1の筒編地に関する一部拡大図に示すように、筒編地の熱セット後の状態は、網目Aが経方向及び緯方向に拡がって矩形状に形成され、網目Aの間において経方向に編成された編目列Bは、引き締められた状態になる。
【0020】
そのため、捲縮糸は、ある程度伸長した状態で熱セットされるようになり、熱セット前の状態に比べて生ゴミ等が引っ掛かりにくくなる。また、網目が筒編地全体において均等に拡大されるので、水切り用ゴミ袋に用いた際の水抜けがよくなる。
【0021】
図2は、筒編体1を使用する場合の説明図である。筒編体1を使用する場合には、巻き芯2を適当な支持手段に回動可能に支持して使用するとよい。そして、筒編体1の端部1aを引いて筒編体1を適当な長さだけ繰り出す(図2(a))。次に、使用する長さで鋏等の切断手段により切断する(図2(b))。切断することにより、両端に開口部1a及び1bを有する筒状体が得られる。一方の開口部1a側の端部を窄めるようにまとめて細長い紐状にし(図2(c))、紐状部分を折り返すように湾曲させてリング状に形成し、末端をリング内に引き込んで片結びにする(図2(d))。こうして一端開口部1aが閉じた状態で他端開口部1bが開いた状態の袋状に形成した水切り用ゴミ袋Pが得られる(図2(e))。
【0022】
得られた水切り用ゴミ袋Pは、図3に示すように、調理場等の排水口Tに開口部1bを開いた状態でセットして使用する。排水に含まれる生ゴミは、水切り用ゴミ袋Pに捕集されて袋内に堆積していく。袋の網目が大きく形成されているので、水抜けが良好であり、糸3が伸長した状態となっているので、生ゴミが引っ掛かりにくく、袋内の底の部分に生ゴミが堆積するようになる。袋の底の部分は、筒編地を結んで糸が結束した状態となっているので、高強度となっており、生ゴミの重量で破れることはない。
【0023】
図4は、筒編体1の製造過程に関する説明図である。まず、伸縮性を有する捲縮糸を用いて公知の複針床タイプの丸編機により筒編地を編成する。編成された筒編地には、精錬、漂白等の後処理を行ってもよい。また、必要に応じて抗菌剤等を付与するようにしてもよい。
【0024】
次に、編成された筒編地を熱セットする。図4は、熱セット工程に関する説明図である。筒編地Kは、引き出されて拡幅部材10の周囲を取り囲むように拡げられていく。拡幅部材10は、筒編地が引き出されていく方向の上流側の幅が狭くなっており、下流に行くに従い幅が拡がるように形成されている。上流側の先端部の幅に対して下流側の後端部の幅は1.5倍〜2.0倍に設定するとよい。なお、ここで言う拡幅部材10の幅は、図4では、紙面と直交する方向の幅である。
【0025】
筒編地Kは、幅が拡げられることで緯方向に拡げられた状態となる。拡幅部材10は、筒編地Kの内部に収容された状態で支持棒10aに支持されており、下流側後端部がフィードローラ11に当接することで、筒編地Kが連続走行される際にも水平に安定した状態に保持されるようになる。
【0026】
緯方向に拡げられた筒編地Kは、そのままフィードローラ11に把持されて搬送される。フィードローラ11から繰り出されたた筒編地Kはフィードローラ12に把持されて搬送される。その際にフィードローラ12の搬送速度をフィードローラ11よりもわずかに速く設定することで、筒編地Kに対して経方向の引張力を付与し、筒編地Kの編目が経方向及び緯方向に拡げられた状態に設定する。フィードローラ11及び12の間には加熱装置13が設けられており、編目が経方向及び緯方向に拡げられた状態の筒編地Kを加熱して熱セットする。筒編地Kに対する加熱温度は、200℃〜250℃に設定するとよい。そして、熱セットされた筒編地Kは、巻取りロール14に巻き取られて筒編体が製造される。なお、熱セットする場合には、加熱した平板を接触させたり、蒸気加熱を用いてもよく、公知の熱セット装置を使用することができる。
【実施例】
【0027】
捲縮糸として、150dtexのポリエステル繊維からなる仮撚加工糸(東レ株式会社製)を用いた。
【0028】
仮撚加工糸を丸編機(英光産業株式会社製)により24コース/インチ及び24ウエール/インチで、ニードルループ数240個で筒編地を編成した。目付けは10g/m2であった。
【0029】
編成した筒編地を図4に示す装置を用いて拡幅及び引き伸ばしを行いながら熱セットした。拡幅部材により2倍に拡げて加熱温度210℃で行った。熱セットした筒編地をロール状に巻き取り筒編体を製造した。筒編体の幅は約14cmであった。
【0030】
製造された筒編体の捲縮伸長率は、約140%であった。これに対して、熱セット前の筒編地の捲縮伸長率は約200%であり、熱セットにより捲縮伸長率が70%に減少していた。
【0031】
製造した筒編体を引き出して適当な長さで切断し、一端開口部を結び袋状の水切り用ゴミ袋に形成した。形成した水切り用ゴミ袋を調理場の排水口にセットして、生ゴミと排水とともにゴミ袋内に投入した。
【0032】
ゴミ袋内に投入された生ゴミは編目にほとんど引っ掛かることなく底の部分に堆積していき、堆積した生ゴミは水切りがされて内部に水が滞留することはなかった。また、ゴミ袋内に堆積した生ゴミの重量により袋が破れることもなかった。
【符号の説明】
【0033】
1 筒編体
2 巻芯
3 糸
10 拡幅部材
11 フィードローラ
12 フィードローラ
13 加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
捲縮糸を用いて丸編で編成された長尺状のゴミ袋用筒編体であって、編成された編地を経方向に引張るとともに緯方向に拡げた状態で熱セットすることで経方向及び緯方向の伸長率を熱セット前の60%〜80%に減少させていることを特徴とするゴミ袋用筒編体。
【請求項2】
前記捲縮糸は、捲縮伸長率が100%〜400%の仮撚加工糸であることを特徴とする請求項1に記載のゴミ袋用筒編体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゴミ袋用筒編体を任意の長さで切断して一端開口部を結ぶことで袋状に形成されていることを特徴とする水切り用ゴミ袋。
【請求項4】
捲縮糸を丸編で編地に編成し、編成された編地を経方向に引張るとともに緯方向に拡げた状態で熱セットして経方向及び緯方向の伸長率を熱セット前の60%〜80%に減少させることを特徴とするゴミ袋用筒編体の製造方法。
【請求項5】
前記捲縮糸として、捲縮伸長率が100%〜400%の仮撚加工糸を用いることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−91904(P2012−91904A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239939(P2010−239939)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(591109049)岡本レース株式会社 (6)
【Fターム(参考)】