説明

ゴムアスファルト組成物

【課題】常温よりも高温(例えば、真夏の炎天下)に曝された場合であっても、良好な引張り強度を有し、かつ、べたつきが解消されていることに加え、常温よりも低温(例えば、氷点下)に曝された場合であっても、優れた伸び性を有するゴムアスファルト組成物を提供する。
【解決手段】(イ)(イ−1)重合体ラテックス、及び(イ−2)アスファルト、を含むゴムアスファルトエマルジョンと、(ロ)加硫剤と、(ハ)加硫助剤と、を含有し、前記(イ)ゴムアスファルトエマルジョン(固形分換算)100質量部に対して、前記(ロ)加硫剤と前記(ハ)加硫助剤の合計の含有量が0.1〜8.0質量部であるゴムアスファルト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムアスファルト組成物に関し、更に詳しくは、各種建造物の防水、止水材等を含む幅広い用途に利用されるゴムアスファルト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物の防水、止水、遮水を目的として屋上、屋根、ベランダ等には、防水層が広く施工されている。この防水層は、一般に、ゴムアスファルト層とポリエステル製の不織布又はアスファルト改質シートとから構成される。例えば、ゴムアスファルト層、ポリエステル製の不織布、ゴムアスファルト層の順序で積層した三層構造を有する防水層が知られている。
【0003】
上記ゴムアスファルト層は、ゴムアスファルト組成物を塗工後、乾燥させて形成されるものである。上記ゴムアスファルト組成物は、その構成成分に、重合体ラテックス、アスファルト、無機充填剤などを有しているものが知られている。例えば、上記重合体ラテックスとしては、ブタジエンゴムラテックス、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体ラテックス等が挙げられ、この中から適宜選択して用いられる。このようなゴムアスファルト組成物としては、高低温特性に乏しいアスファルトに、重合体ラテックスを配合することによって高低温特性不足を改質しているものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかし、上記ゴムアスファルト組成物によって形成されるゴムアスファルト層の高温特性は十分ではないため、例えば、真夏の炎天下では、引張り強度が弱く、更に施工時にべたつきが生じるという問題があった。このような問題に対して、ゴムアスファルト組成物にガラス転移温度(Tg)の高い重合体ラテックスを配合することにより、ゴムアスファルト層の引張り強度不足、及びべたつきを解消することが一般的に行われている。
【0005】
【特許文献1】特開昭58−201822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記ゴムアスファルト層は、ガラス転移温度(Tg)の高い重合体ラテックスを配合することによって、高温下における引張り強度不足、及びべたつきは解消されるが、常温よりも低温(例えば、氷点下)に曝されると、塗膜(ゴムアスファルト層)の伸びが悪くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、常温よりも高温(例えば、真夏の炎天下)に曝された場合であっても、良好な引張り強度を有し、かつ、べたつきが解消されていることに加え、常温よりも低温(例えば、氷点下)に曝された場合であっても、優れた伸び性(伸び)を有するゴムアスファルト層を形成することが可能なゴムアスファルト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、(イ)ゴムアスファルトエマルジョンと(ロ)加硫剤と、(ハ)加硫助剤と、を含有し、(イ)ゴムアスファルトエマルジョン(固形分換算)に対して、(ロ)加硫剤と(ハ)加硫助剤の混合物を所定量添加したゴムアスファルト組成物によって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明によれば、以下に示すゴムアスファルト組成物が提供される。
【0010】
[1] (イ)(イ−1)重合体ラテックス、及び(イ−2)アスファルトを含むゴムアスファルトエマルジョンと、(ロ)加硫剤と、(ハ)加硫助剤と、を含有し、前記(イ)ゴムアスファルトエマルジョン(固形分換算)100質量部に対して、前記(ロ)加硫剤と前記(ハ)加硫助剤の合計の含有量が0.1〜8.0質量部であるゴムアスファルト組成物。
【0011】
[2] 前記(イ)ゴムアスファルトエマルジョンの全固形分が60〜90質量%である前記[1]に記載のゴムアスファルト組成物。
【0012】
[3] 前記(イ)ゴムアスファルトエマルジョン(固形分換算)中の、前記(イ−1)重合体ラテックスの含有量が10〜75質量%であり、前記(イ−2)アスファルトの含有量が25〜90質量%である前記[1]又は[2]に記載のアスファルト組成物。
【0013】
[4] 前記(イ−1)重合体ラテックスに含有される少なくとも一部が、共役ジエン系重合体ラテックスであり、その含有量が重合体ラテックス(固形分換算)の25〜100質量%を占める前記[1]〜[3]のいずれかに記載のアスファルト組成物。
【0014】
[5] 前記共役ジエン系重合体ラテックスは、ガラス転移温度−80〜0℃、ゲル含量が0〜60%である前記[4]に記載のアスファルト組成物。
【0015】
[6]前記(ロ)加硫剤は、硫黄系加硫剤であり、前記(ロ)加硫剤の含有量が前記(イ)ゴムアスファルトエマルジョン(固形分換算)100質量部に対して、0.05〜7.95質量部である前記[1]〜[5]のいずれかに記載のアスファルト組成物。
【0016】
[7] 前記(ハ)加硫助剤の含有量が前記(イ)ゴムアスファルトエマルジョン(固形分換算)100質量部に対して、0.05〜7.95質量部である前記[1]〜[6]のいずれかに記載のアスファルト組成物。
【0017】
[8] 前記(イ)ゴムアスファルトエマルジョンは、(イ−1)重合体ラテックスに、溶融された(イ−2)アスファルトを混合してなるものである前記[1]〜[7]のいずれかに記載のアスファルト組成物。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、常温よりも高温(例えば、真夏の炎天下)に曝された場合であっても、良好な引張り強度を有し、かつ、べたつきが解消されていることに加え、常温よりも低温(例えば、氷点下)に曝された場合であっても、優れた伸び性を有するゴムアスファルト層を形成することができるゴムアスファルト組成物を提供ことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0020】
[1]ゴムアスファルト組成物:
本発明のゴムアスファルト組成物は、(イ)(イ−1)重合体ラテックス(「(イ−1)成分」ともいう)、及び(イ−2)アスファルト(「(イ−2)成分」ともいう)を含むゴムアスファルトエマルジョン(「(イ)成分」ともいう)と、(ロ)加硫剤(「(ロ)成分」ともいう)と(ハ)加硫助剤(「(ハ)成分」ともいう)を含有し、(イ)ゴムアスファルトエマルジョン(固形分換算)に対して、(ロ)加硫剤と(ハ)加硫助剤の混合物を所定量添加したものである。
【0021】
[1−1](イ)ゴムアスファルトエマルジョン:
(イ)成分は、(イ−1)成分、及び(イ−2)成分を含有し、これらの成分が液体の分散媒中に分散している乳濁液である。分散媒としては、特に制限はないが、例えば、水、有機溶剤等が挙げられる。
【0022】
[1−1A](イ−1)重合体ラテックス:
重合体ラテックスとは、重合体が液体の分散媒中に分散している乳濁液をいう。(イ−1)成分は、アスファルトの高低温特性不足を改質する作用を有するものである。なお、本明細書において、「低温」というときは、−20〜5℃の範囲をいうものとする。また、「高温」というときは、30〜80℃の範囲をいうものとする。
【0023】
(イ−1)成分としては、例えば、天然ゴムラテックス、ポリブタジエンゴムラテックス、イソプレンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)ラテックス、ブタジエン・イソプレン共重合体ラテックス、ブタジエン・スチレン・イソプレン共重合体ラテックス、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体ラテックス(NBR)、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体ラテックス(SBS)、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体ラテックス(SIS)、エチレン・酢酸ビニル共重合体ラテックス、アクリレート・酢酸ビニル共重合体ラテックス、アクリレート・スチレン共重合体ラテックス、アクリレート・エチレン共重合体ラテックス、シリコーン・アクリレート共重合体ラテックス、オレフィン系重合体ラテックス、ポリウレタンラテックスなどのゴムラテックス、又は樹脂重合体ラテックスを挙げることができる。また、これら重合体ラテックスは、カルボキシル基、アミド基、N−メチロール基、グリシジル基、水酸基、スルホン酸基などの官能基を有するものであってもよい。
【0024】
但し、本発明のゴムアスファルト組成物において、(イ−1)重合体ラテックスに含有される少なくとも一部は、共役ジエン系重合体ラテックスであることが好ましく、共役ジエン系重合体ラテックスの中でも、SBRラテックス、イソプレンゴムラテックス、及びクロロプレンゴムラテックスが好ましい。これらは一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
共役ジエン系重合体ラテックスは、その含有量が(イ−1)重合体ラテックス(固形分換算)の25〜100質量%を占めることが好ましい。更に好ましくは、40〜100質量%であり、特に好ましくは50〜100質量%である。25質量%未満であると、低温に曝された場合の伸び性が確保できなくなる傾向にある。
【0026】
また、上記共役ジエン系重合体ラテックスは、ガラス転移温度(Tg)が−80〜0℃であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)は、更に好ましくは−75〜−10℃であり、特に好ましくは、−70〜−30℃である。ガラス転移温度(Tg)が−80℃未満であると、得られるゴムアスファルト組成物により形成される塗膜の高温時における強度が低下し、また耐汚染性も不十分となる傾向がある。一方、0℃超であると、ゴムアスファルト組成物により形成されるゴムアスファルト層が硬くなり、低温に曝された場合の伸び性が低下する傾向がある。
【0027】
なお、ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析計(DSC)により、例えば、下記の方法で測定することができる。まず、重合体ラテックスを約5gガラス板に薄く引き伸ばし、25℃で24時間乾燥させ、重合体のフィルムを得る。次に、得られたフィルムを以下の条件で測定する。
昇温速度 :20℃/分、
雰囲気 :チッ素ガス、
サンプル量:20mg
【0028】
更に、共役ジエン系重合体ラテックスは、ゲル含量が0〜60%であることが好ましい。この含量は、更に好ましくは、0〜55%であり、特に好ましくは0〜50%である。60%超であると、高低温特性低温に曝された場合の伸び性が確保できなくなる傾向にある。「ゲル含量」とは、重合体ラテックス中のトルエン不溶分をいう。
【0029】
ゲル含量は、例えば、以下のように測定することができる。まず、(イ−1)重合体ラテックスを約5gガラス板に薄く引き伸ばし、25℃で24時間乾燥させ、フィルムを得る。このフィルムを細かく切り、質量が約0.250〜0.350gとなるように1mg単位で秤量する(質量A)。次に、フラスコにトルエンを100ml計量し、上記フィルムを加え完全に密封状態にする。この状態で、室温において14〜18時間静置させた後、マグネチックスターラで1時間撹拌する。この溶液をNO.2濾紙で濾過する。予め、質量を測定しておいたアルミ皿(質量B)に上記濾液を20ml量り採る。その後、アルミ皿を乾燥させ、乾燥後のアルミ皿の質量を1mg単位で秤量する(質量C)。なお、測定回数は、3回とする。ゲル含量(トルエン不溶分)は、下記式により計算される。
トルエン不溶分(%)=100−[(質量C−質量B)×5/質量A]×100
【0030】
[1−1A−1](イ−1)重合体ラテックスの含有量:
(イ)成分(固形分換算)に占める(イ−1)成分の含有量は、10〜75質量%であることが好ましく、15〜65質量%であることが更に好ましく、20〜60質量%であることが特に好ましい。10質量%未満であると、低温に曝された場合の伸び性が確保できない傾向にあり、75質量%超であると、ゴムアスファルト組成物より形成するゴムアスファルト層の防水、止水性が低下する傾向にある。
【0031】
[1−1A−2](イ−1)重合体ラテックスの製造方法:
(イ−1)成分は、の製造方法に制限はないが、例えば、以下の方法によって製造することができる。ラジカル重合開始剤の存在下で各単量体を共重合することにより合成することができる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、及びこれら過酸化物と硫酸第一鉄とを組み合わせたレドックス系触媒等を挙げることができる。これらのラジカル重合開始剤は、一種を単独で、又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
重合方法としては塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の方法を採用することができる。これらの中でも乳化重合が特に好ましい。
【0033】
乳化重合に使用する乳化剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等を挙げることができる。また、フッ素系の界面活性剤を使用することもできる。これらの乳化剤は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用することもできる。これらの中でも、アニオン系界面活性剤が好ましい。
【0034】
重合反応を行うことによって得られる(イ−1)成分の分子量を調節するために、連鎖移動剤を使用することもできる。この連鎖移動剤としては、アルキルメルカプタン、四塩化炭素、チオグリコール類、ジテルペン、ターピノーレン、γ−テルピネン類等を使用することができる。
【0035】
各種単量体、乳化剤、ラジカル重合開始剤、及び連鎖移動剤等は、反応容器に全量を一括投入してから重合を開始してもよいし、反応継続中に連続的又は間欠的に追加・添加してもよい。重合反応は、酸素を除去した反応器を用いて行うことが好ましい。重合反応途中で、原料の添加法、温度、撹拌等の条件等を適宜変更してもよい。重合方式は、連続式であっても回分式であってもよい。所定の重合転化率に達した時点で、重合停止剤を添加する等によって重合反応を停止する。重合停止剤としては、アミン化合物、キノン化合物等を用いることができる。重合反応停止後、得られた乳化液を(イ−1)成分とすることができる。なお、上記作製法にて作製された(イ−1)成分には、更に、乳化剤を配合しても良い。この乳化剤により、アスファルトの乳化安定性を付与することができる。
【0036】
乳化剤としては、例えば、アニオン性、ノニオン性、カチオン性又は両性のものを挙げることができる。アニオン性乳化剤としては、脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ロジン酸塩等を挙げることができる。ノニオン性系乳化剤としては、アルキルエーテル型、アルキルエステル型、多環フェニルエーテル型、ソルビタン誘導体、グリセリン脂肪酸エステル型、アルキルアミン型、アルキルアミド型等を挙げることができる。カチオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレン、アルキルアミン第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アミンオキサイド、アルキルアミン塩等を挙げることができる。両性乳化剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド等を挙げることができる。上記乳化剤のうち、脂肪酸塩、アルキルアミン型が好ましい。なお乳化剤は単独、又は二種以上を混合して使用することができる。
【0037】
[1−1B](イ−2)アスファルト:
(イ−2)成分は、防水、止水のための作用を有するものである。(イ−2)成分としては、特に限定されるものではなく、例えば、天然アスファルト、石油アスファルト等を挙げることができる。天然アスファルトとしては、例えば、ギルソナイト、グランスピッチ、グラハマイト、トリニダッドレークアスファルト等を挙げることができ、これらの天然アスファルトの二種以上を混合して用いることもできる。
【0038】
石油アスファルトとしては、例えば、アスファルテン、パラフィン、ナフテン、芳香族レジン等を主成分とするストレ−トアスファルト、ブローンアスファルト、セミブローンアスファルト等を挙げることができる。これらのうち、ストレートアスファルトが好ましい。なお、これらのうちの二種以上を組み合わせて用いることもできる。また、この(イ−2)成分には、粘着付与のための樹脂(石油樹脂、ロジン等)、低温流動性付与のための可塑剤(オイル等)等を配合することもできる。
【0039】
[1−1B−1](イ−2)アスファルトの含有量:
(イ)成分(固形分換算)に占める(イ−2)成分の含有量は、25〜90質量%であることが好ましく、30〜85質量%であることが更に好ましく、40〜85質量%であることが特に好ましい。25質量%未満であると、ゴムアスファルト組成物より形成するゴムアスファルト層の防水、止水性が低下する傾向にある。一方、90質量%超であると、ゴムアスファルト層が低温に曝された場合の伸びが低下し、脆くなる傾向にある。
【0040】
[1−1B−2](イ−2)アスファルトの物性:
(イ−2)成分の針入度(25℃)は、40〜200であるものが好ましく、更に好ましくは60〜200である。40未満であると、ゴムアスファルト組成物中の(イ−2)アスファルトの分散が悪く乳化安定性が悪化する傾向がある。一方、200超であると、ゴムアスファルト組成物のベタツキ性が高くなる傾向がある。
【0041】
[1−1C](イ)ゴムアスファルトエマルジョンの製造方法:
(イ)成分は、(イ−1)重合体ラテックスと溶融された(イ−2)アスファルトとを混合して製造することが好ましい。このように製造することにより、予め調整されたアスファルトエマルジョン中に重合体ラテックスを添加、混合して製造する場合に比べて、高濃度の(イ)成分を得ることができ、かつ、低温時の伸びを確保することができる。具体的には、(イ−1)成分に、90〜150℃で加熱溶融して液状にした(イ−2)成分を投入し、4枚羽根撹拌翼を付けた撹拌機等によって混合した後、冷却することにより得られる混合物を(イ)成分とする。
【0042】
(イ)成分の別な製造方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
まず、(イ−1)成分を第一の流体とし、(イ−2)成分を含有する第二の流体とを所定の流路内部を、その流通方向に振動を加えながら撹拌するとともに流通させて混合する。得られた混合物を(イ)成分とすることができる。以下、本製造方法を更に説明する。
【0043】
第一の流体は、((イ−1)成分或いは(イ−1)成分に上記乳化剤を配合した液状体である。また、第二の流体は、(イ−2)成分を含有する液状体である。この第二の流体は、(イ−2)成分を加熱溶融して液状化させることによって得ることができる。なお、第一の流体には、(イ−1)成分及び上記乳化剤以外の成分を添加することもでき、第二の流体には、(イ−2)成分以外の成分を添加することもできる。
【0044】
第一の流体と第二の流体は、所定の流路内部に流通させることによって混合流体とする。「所定の流路」は、第一の流体と第二の流体を流通させることによって混合させることができる流路であれば、特に制限はない。例えば、図1に示す(イ)ゴムアスファルトエマルジョンの製造装置は、所定の流路として導管10及び枝管11〜13を備えている例である。導管10は、例えば、ポリ塩化ビニル等のプラスチックス、ステンレス等の材質からなる円筒管である。枝管11は、一方から第一の流体を、他方から第二の流体をそれぞれポンプによる圧送によって流通させることができる。枝管11を流通した第一の流体と第二の流体は、導管10に導入され、この導管10内を流れながら混合される。なお、枝管12は、第一の流体と第二の流体を導入するための流路であり、枝管13は、導管10で混合された混合流体を取り出す流路である。
【0045】
更に、第一の流体と第二の流体は、所定の流路内部で流通方向に振動を加えられながら撹拌される。「流通方向に振動を加えながら撹拌」するものとしては、特に制限はない。例えば、図1に示すアスファルト組成物の製造装置は、導管10内に撹拌体(プラスチックス製又はステンレス製等)24、及び撹拌体24を駆動する振動源28が設けられている例である。撹拌体24は、撹拌体軸24aとこの撹拌体軸24aに固定された複数の撹拌羽根22とを有しており、導管10内で軸方向(流通方向)任意に細かい振動をすることができるように支持されている。図2に示すように、各撹拌羽根22は半月形状であり、その固定位置において撹拌体軸24aの両側に対称的に配置され、また隣接する各撹拌羽根22は60度の位相差で整列されている。振動源28は、例えば、電磁駆動型振動源とすることができ、所望の交番電流を供給することによって撹拌体24に振動を与えることができる。
【0046】
このような構成にすることによって、撹拌体24が所定の振動幅で細動運動すると、隣接する撹拌羽根22で分割された混合流体は、導管10内を流通しながら、その流通方向の振動を受ける。この振動は、互いに干渉し合うため、細かい撹拌作用を混合流体に与えることができる。
【0047】
なお、図3に示す(イ)ゴムアスファルトエマルジョンの製造装置の撹拌体24は、螺旋状に形成した撹拌羽根22を有している例である。撹拌体24は、軸方向(流路方向)に振動しつつ、撹拌体軸24aを中心として回転運動をすることができる。このような構成にすることによって、撹拌体24が所定の振動幅dで細動運動すると、隣接する撹拌羽根22で分割された混合流体は、導管10内を流通しながら、その流通方向の振動を受ける。更に、撹拌体24の回転方向にねじられるため、より細かい撹拌作用を混合流体に与えることができる。
【0048】
[1−1D]その他の成分:
(イ)成分は、(イ−1)成分、及び(イ−2)成分に加え、安定剤、消泡剤、充填剤、分散剤、増粘剤、防腐剤、繊維性物質等の添加剤を含有するものとすることができる。
【0049】
安定剤としては、例えば、アニオン性、ノニオン性、カチオン性又は両性のものを挙げることができる。アニオン性安定剤としては、脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ロジン酸塩等を挙げることができる。ノニオン性安定剤としては、アルキルエーテル型、アルキルエステル型、多環フェニルエーテル型、ソルビタン誘導体、グリセリン脂肪酸エステル型、アルキルアミン型、アルキルアミド型等を挙げることができる。
【0050】
カチオン性安定剤としては、ポリオキシエチレン、アルキルアミン第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アミンオキサイド、アルキルアミン塩等を挙げることができる。両性安定剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド等を挙げることができる。
【0051】
消泡剤は、アスファルト組成物の製造時における泡立ち防止、及び加工(塗布)時における泡立ち防止という役目を果たすものである。消泡剤としては、鉱物油ノニオン系界面活性剤、ポリジメチルシロキサンオイル、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド変性の、ジメチルシリコーン又はジメチルシリコーンエマルジョンなどのシリコン系消泡剤、鉱物油、アセチレンアルコールなどのアルコール系消泡剤等が挙げられる。
【0052】
充填剤としては、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、硫酸バリウム、硅砂、雲母粉、ゴム粉、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン、シリカ、ゼオライト等が挙げられる。
【0053】
分散剤としては、無機系及び有機系のものがあり、無機系分散剤としてはトリポリリン酸塩、ピロリン酸塩等が挙げられる。有機系分散剤としては、ポリスルホン酸塩、ホルマリン縮合ナフタレンスルホン酸塩、アセチレン系等が挙げられる。
【0054】
増粘剤は、材料の分離防止、下地への塗布性を良くする役目を果たすものである。増粘剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、非イオン系界面活性剤、ポリエーテルポリオール系等が挙げられる。この中でも、非イオン系界面活性剤、ポリエーテルポリオール系が好ましい。
【0055】
防腐剤としては、ベンゾイソチアゾリン(BIT)系、メチルイソチアゾリン(MIT)系等が挙げられる。これらの防腐剤は、一種単独で又は二種以上組み合わせて用いることができる。繊維性物質としては、ガラス繊維、パルプフロック、コットンリンター等が挙げられる。
【0056】
[1−1E](イ)ゴムアスファルトエマルジョンの物性:
(イ)成分の固形分濃度(全固形分)は、60〜90質量%であることが好ましい。更に好ましくは、65〜87質量%である。60質量%未満であると、得られるゴムアスファルト組成物の全固形分が低くなるため、乾燥硬化性が低下し、積層塗膜を形成するための施工作業効率が悪くなる傾向がある。一方、90質量%超であると、経時的な粘度変化を生じやすく、また粘度が高くなるため、得られるゴムアスファルト組成物の塗工適性が低下する傾向がある。
【0057】
[1−2](ロ)加硫剤:
本発明のゴムアスファルト組成物は、(ロ)加硫剤を含有していることが必要である。(ロ)成分は、(イ)成分を加硫することにより加硫ゴムとし、高温下であっても強度に優れたゴムアスファルト組成物の塗膜を形成するための作用を有するものである。(ロ)成分としては、例えば、有機過酸化物系加硫剤、及び硫黄系加硫剤を挙げることができこれらの中でも、硫黄系加硫剤が好ましい。
【0058】
硫黄系加硫剤としては、硫黄、塩化硫黄、二塩化硫黄、三酸化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレンなどを挙げることができる。これらの中でも、硫黄が好ましい。
【0059】
硫黄系加硫剤((ロ)成分)の含有量は、(イ)成分(固形分換算)100質量部に対して、0.05〜7.95質量部であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜4.0質量部である。0.05質量部未満であると、加硫効果が得られず高温での強度が不足する傾向がある。一方、7.95質量部超であると、ゴムアスファルト組成物により形成されるゴムアスファルト層が低温に曝された場合、伸び性が確保できなくなる傾向がある。
【0060】
[1−3](ハ)加硫助剤:
本発明のゴムアスファルト組成物は、(ハ)加硫助剤を含有していることが必要である。(ハ)成分は、加硫剤の加硫促進効果に作用を有するものをいう。この(ハ)成分は、有機系、又は無機系のものが挙げられ、有機系加硫助剤としては、脂肪酸、アミン系(弱いアミン、ジブチルアミンなど)、これらの複合物、ポリアルコール等が挙げられる。無機系加硫助剤としては、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等が挙げられる。これらの中でも、無機系加硫助剤が好ましく、酸化亜鉛が更に好ましい。
【0061】
(ハ)成分の含有量は、(イ)成分(固形分換算)100質量部に対して、0.05〜7.95質量部であることが好ましく、更に好ましく0.1〜4.0質量部である。0.05質量部未満であると、加硫促進効果が得られなくなる傾向がある。一方、7.95質量部超であると、ゴムアスファルト組成物により形成されるゴムアスファルト層が低温に曝された場合、伸び性が確保できず、また、添加量に見合った加硫促進効果が得られなくなる傾向がある。
【0062】
なお、更に、本発明のゴムアスファルト組成物は、加硫促進剤を加えることが好ましい。即ち、加硫剤及び加硫助剤に加硫促進剤を併用することが望ましい。この加硫促進剤により、低温において更に迅速に加硫させることができる。加硫促進剤としては、ジチオカルバミン酸系化合物、チウラム系促進剤、チアゾール系促進剤等を挙げることができる。これらの中でも、ジチオカルバミン酸系化合物が好ましい。
【0063】
ジチオカルバミン酸系化合物は、例えば、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン、メチルペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペコリン、ジエチルチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸セレン等の化合物が挙げられる。これらの中でも、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルチオカルバミン酸亜鉛が好ましい。
【0064】
加硫促進剤としてジチオカルバミン酸系化合物を用いる場合、ジチオカルバミン酸系化合物の含有量は、(イ)成分(固形分換算)100質量部に対して、0.05〜4.0質量部であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜2.5質量部である。0.05質量部未満であると、加硫促進効果が得られなくなる傾向がある。一方、4.0質量部超であると、ゴムアスファルト組成物により形成されるゴムアスファルト層が低温に曝された場合、伸び性が確保できなくなる傾向がある。
【0065】
加硫促進剤の含有量は、(イ)成分(固形分換算)100質量部に対して、0.05〜4.0質量部であることが好ましく、更に好ましく0.1〜2.5質量部である。0.05質量部未満であると、加硫促進効果が得られない傾向がある。一方、4.0質量部超であると、ゴムアスファルト組成物により形成されるゴムアスファルト層が低温に曝された場合、伸び性が確保できなくなる傾向がある。
【0066】
本発明のゴムアスファルト組成物は、(イ)成分(固形分換算)100質量部に対して、上記(ロ)成分と(ハ)成分の合計の含有量が0.1〜8.0質量部であることが必要である。好ましくは0.3〜5.0質量部であり、更に好ましくは0.5〜3.0質量部である。含有量が、0.1質量部未満であると、加硫効果が得られなくなる傾向がある。一方、8.0質量部超であると、ゴムアスファルト組成物により形成されるゴムアスファルト層が低温に曝された場合、伸び性が確保できなくなる傾向がある。
【0067】
[1−4]その他の成分:
また、本発明のゴムアスファルト組成物には、必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、架橋剤、セメント等が挙げられる。
【0068】
架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート、エポキシ架橋剤、オキサゾリン架橋剤等を挙げることができる。この中でも、ポリイソシアネート、エポキシ架橋剤が好ましい。
【0069】
ポリイソシアネート化合物としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート;1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,2−シクロサキサンジイソシアネートなどの脂肪族環式イソシアネート;キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチルなどの脂環族イソシアネート;これらのヌレート体;などの多量体及び混合物を用いることができる。
【0070】
また、前記ポリイソシアネート化合物とポリアミン化合物、多価アルコール、ポリオール化合物等との反応により得られる末端にイソシアネート基を有するプレポリマーの形態で用いることもできる。
【0071】
エポキシ架橋剤としては、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、脂肪酸変性エポキシ、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0072】
架橋剤の含有量は、(イ)成分(固形分換算)100質量部に対して、0〜40質量部であることが好ましく、更に好ましくは0〜35質量部である。40質量部超であると、粘度が経時的に変化しやすくなり、塗工適性が低下する傾向がある。
【0073】
セメントは、ゴムアスファルト組成物の水分処理を目的として用いられる。セメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメントなどの各種ポルトランドセメント;高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント、ソリジット、ケイ酸カルシウムなどの公知のセメント;又はこれらを二種以上組み合わせてなる混合セメントが挙げられる。この中でも普通ポルトランドセメント、アルミナセメントが好ましい。
【0074】
セメントの含有量は、(イ)成分(固形分換算)100質量部に対して、0〜100質量部であることが好ましく、更に好ましくは、5〜50質量部である。100質量部超であると、ゴムアスファルト組成物により形成されるゴムアスファルト層が低温に曝された場合、伸び性が確保できなくなる傾向がある。
【0075】
[2]ゴムアスファルト組成物の物性:
ゴムアスファルト組成物の固形分濃度(全固形分)は、60〜90質量%であることが好ましい。更に好ましくは、65〜87質量%である。60質量%未満であると、得られるゴムアスファルト組成物の全固形分が低くなるため、乾燥硬化性が低下し、積層塗膜を形成するための施工作業効率が悪くなる傾向がある。一方、90質量%超であると、(イ)アスファルトエマルジョンが経時的に粘度変化を生じやすく、また(イ)アスファルトエマルジョンの粘度が高くなるため、得られるゴムアスファルト組成物の塗工適性が低下する傾向がある。
【0076】
[3]ゴムアスファルト組成物の製造方法:
本発明のゴムアスファルト組成物は、例えば、上述した方法で(イ)成分を製造し、得られた(イ)成分に(ロ)成分、(ハ)成分、及び必要に応じて加硫促進剤などの添加剤を添加し、例えば、ブレンダー等の混合機によって混合することによって製造することができる。
【0077】
なお、(ハ)成分、及び加硫促進剤などの添加剤は、予め、(イ)ゴムアスファルトエマルジョンの製造時に添加しておくこともできる。この方法によると、各成分を分散して投入することができるため、ゴムアスファルト組成物の製造時における作業が容易になり作業効率が向上するという利点がある。
【0078】
[4]ゴムアスファルト組成物の使用方法:
本発明のゴムアスファルト組成物は、常温よりも高温(例えば、真夏の炎天下)に曝された場合であっても、良好な引張り強度を有し、べたつきが解消されていることに加え、常温よりも低温(例えば、氷点下)に曝された場合であっても、優れた伸び性を有するため、例えば、氷点下に曝される冬の北海道や夏の沖縄の炎天下に曝される各種建造物の防水、止水材や道路舗装、植生、法面保護、モルタル保護材、制振材、防音材、緩衝材、目地充填材、接着剤、パッキング材、成形シート原料等を製造する組成物として用いることが特に有効である。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
【0080】
[固形分濃度測定]:
ホットプレート法により算出した。試料1gをアルミ皿に取り160〜180℃で水分を気化させ気化前後の質量変化を測定した。
【0081】
[粘度測定]:
BM型粘時計(型番「BM型」、東京計器社製)の3号ローターに、30rpmで25℃、1分間供した。
【0082】
[引張り試験]:
引張り試験は、JISA6021「建築用塗膜防水材」のゴムアスファルト系に準じて行い、強度及び伸び性を評価した。引張り試験は、オートグラフ(型番「AG500A」、島津製作所製)を用いて、試験片のつかみ間隔60mm、引張り速度500mm/minで行った。
【0083】
強度(引張強さ):引張り強さは、試験片の破断に至るまでの最大引張力を求め、次の式によって算出した。なお、評価結果は、試験片3個の平均値を示す。また、評価は、0.3N/mm以上を合格とした。
=P/A
但し、
:引張り強さ(N/mm
:最大引張力(N)
A:試験片の断面積(mm
【0084】
伸び性:破断時の塗膜伸び率(「伸び」ともいう)は、破断時のつかみ間隔を測定し、次の式によって算出した。なお、評価結果は、試験片3個の平均値を示す。また、評価は、70%以上を合格とした。
E=[(L−20)/20]×100
但し、
E:破断時の塗膜伸び率(%)
L:破断時のつかみ間隔(mm)
【0085】
[べたつき試験]:
高温(60℃)におけるゴムアスファルト層のべたつきを、ゴムアスファルト組成物を塗布した下地を60℃恒温槽内に入れ、その試験体に紙を圧着してその剥がしやすさによって評価した。評価は以下の基準に従って行った。
○:紙が剥がれる
×:紙が破れる
【0086】
(実施例1)
[ゴムアスファルト組成物の調製]:
まず、(イ−1)重合体ラテックスとしてスチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(商品名「JSR0561」、JSR社製、表1、2中「R−1」と示す)33部を8部と25部とに分ける。分けたスチレン・ブタジエン共重合体ラテックス8部に、オレイン酸カリウム(「OSソープ」、花王社製)5部を添加して第一の流体を得た。一方、アスファルトとしてストレートアスファルトコスモアスファルト社製)67部を加熱溶融させて液状体の第二の流体を得た。これらの第一の流体と第二の流体をゴムアスファルトエマルジョン製造装置(商品名「VM−SH」、冷化工業株式会社製)に、混合温度80℃、導管内の滞留時間が3〜10秒となるように供し、得られた混合流体に、残りのスチレン・ブタジエン共重合体ラテックス25部を添加して(イ)ゴムアスファルトエマルジョンを得た。
【0087】
このようにして得られた(イ)ゴムアスファルトエマルジョンに、この(イ)ゴムアスファルトエマルジョン(固形分換算)100部に対して、(ロ)加硫剤として60%にスラリー化させた硫黄(商品名「微粉末硫黄200メッシュ」、細井化学工業社製)0.3部、(ハ)加硫助剤として50%にスラリー化させた酸化亜鉛(商品名「亜鉛華1号」、本荘ケミカル社製)0.2部をブレンダー(型番「LR−41D」、ヤマト化学社製)によって混合してゴムアスファルト組成物を得た。このゴムアスファルト組成物は、固形分濃度75.0%、粘度600mPa・s、pH12.0であった。ゴムアスファルト組成物の配合処方(部)、及び物性値を表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
[試験サンプル(試験片)の作製]:
試験片の乾燥後の塗膜厚さが2mmとなるように、上記ゴムアスファルト組成物を型枠に均一充填する。このとき、気泡が入らないようにする。充填後、標準状態(23℃±2℃×50±10%R.H)にて120時間養生し、脱型する。脱型後、塗膜を裏返して40±2℃で48時間放置し、更に標準状態で4時間以上養生する。なお、型枠は、反りがなく、かつ平滑面で、成膜後の塗膜が、容易に脱型できるように処理されたものとすることが好ましい。なお、試験体の形状は、JISK6251に規定するダンベル状2号形とする。
【0090】
引張り試験の評価結果は、60℃における強度が0.3N/mm以上であり、伸びが460%以上であった。また、−20℃における強度が3.0N/mm以上であり、伸びが460%以上であった。更に、23℃における強度が0.4N/mm以上であり、伸びが1,000%以上であった。なお、80℃で7日間養生したゴムアスファルト層の23℃における強度は、0.7N/mm以上であり、伸びは1,000%以上であった。また、評価温度60℃におけるべたつき試験は、紙が容易に剥がれ、良好な結果が得られた。
【0091】
(実施例2〜13、比較例1〜11)
表1に示す配合処方とすること以外は、上述した実施例1と同様にして実施例2〜13の試験サンプルを作製し、また、表2に示す配合処方とすること以外は、上述した実施例1と同様にして比較例1、3〜11の試験サンプルを作製して各種評価を行った。なお、比較例2については、オレイン酸カリウム(「OSソープ」、花王社製)1部を第一の流体、ストレートアスファルト(コスモアスファルト社製)67部を加熱溶融させて液状体の第二の流体とし、同調製方法にて得られた混合流体に、スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス33部を添加して(イ)ゴムアスファルトエマルジョンとした。試験サンプルは、実施例1と同様にして作製した。これらの評価結果を表1及び表2に示す。
【0092】
なお、表1、2中の「イ−1−a」は、液状態のアスファルトと混合させる重合体ラテックスの量を示し、「イ−1−b」は、ゴムアスファルトエマルジョン製造装置にて混合した流体に添加する重合体ラテックスの量を示す。また、表1、2中、「R−2」はカルボキシル基変性スチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(商品名「JSR0545」、JSR社製、Tg;−23℃)を示し、「R−3」はスチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(商品名「JSR0589」、JSR社製、Tg;5.5)を示し、「R−4」はスチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(商品名「JSR0602」、JSR社製、Tg;62)を示し、「A−1」はアクリル系重合体ラテックス(商品名「AE981A」、JSR社製、Tg;−10℃)を示し、「C−1」はクロロプレンゴムラテックス(商品名「ディスパコールC84」、住友バイエルウレタン社製、Tg;−45℃)示す。
【0093】
【表2】

【0094】
表1及び表2に示すように、実施例1〜13のゴムアスファルト組成物により形成された塗膜(ゴムアスファルト層)は、比較例1〜10のゴムアスファルト層に比べて、常温よりも高温(60℃)に曝された場合であっても、良好な引張り強度を有し、べたつきが解消されていることに加え、常温よりも低温(−20℃)に曝された場合であっても、優れた伸び性を有していることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明のゴムアスファルト組成物は、使用温度領域の広い、例えば、氷点下に曝される冬の北海道や夏の沖縄の炎天下に曝されて使用される各種建造物の防水、止水材や道路舗装、植生、法面保護、モルタル保護材、制振材、防音材、緩衝材、目地充填材、接着剤、パッキング材、成形シート原料等を製造する組成物として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明のゴムアスファルト組成物を製造するための製造装置の一の実施形態を示す一部断面図であり、撹拌体の軸直交方向から見た状態を示す図である。
【図2】図1に示す製造装置の撹拌体の軸直交方向の断面図であり、軸方向から見た状態を示す図である。
【図3】本発明のゴムアスファルト組成物を製造するための製造装置の別の実施形態を示す一部断面図であり、撹拌体の軸直交方向から見た状態を示す図である。
【符号の説明】
【0097】
10:導管、11、12、13:枝管、22:撹拌羽根、24:撹拌体、24a:撹拌体軸、28:振動源、d:振動幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)(イ−1)重合体ラテックス、及び(イ−2)アスファルトを含むゴムアスファルトエマルジョンと、
(ロ)加硫剤と、
(ハ)加硫助剤と、
を含有し、
前記(イ)ゴムアスファルトエマルジョン(固形分換算)100質量部に対して、前記(ロ)加硫剤と前記(ハ)加硫助剤の合計の含有量が0.1〜8.0質量部であるゴムアスファルト組成物。
【請求項2】
前記(イ)ゴムアスファルトエマルジョンの全固形分が60〜90質量%である請求項1に記載のゴムアスファルト組成物。
【請求項3】
前記(イ)ゴムアスファルトエマルジョン(固形分換算)中の、前記(イ−1)重合体ラテックスの含有量が10〜75質量%であり、前記(イ−2)アスファルトの含有量が25〜90質量%である請求項1又は2に記載のゴムアスファルト組成物。
【請求項4】
前記(イ−1)重合体ラテックスに含有される少なくとも一部が、共役ジエン系重合体ラテックスであり、その含有量が重合体ラテックス(固形分換算)の25〜100質量%を占める請求項1〜3のいずれか一項に記載のゴムアスファルト組成物。
【請求項5】
前記共役ジエン系重合体ラテックスは、ガラス転移温度−80〜0℃、ゲル含量が0〜60%である請求項4に記載のゴムアスファルト組成物。
【請求項6】
前記(ロ)加硫剤は、硫黄系加硫剤であり、前記(ロ)加硫剤の含有量が前記(イ)ゴムアスファルトエマルジョン(固形分換算)100質量部に対して、0.05〜7.95質量部である請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴムアスファルト組成物。
【請求項7】
前記(ハ)加硫助剤の含有量が前記(イ)ゴムアスファルトエマルジョン(固形分換算)100質量部に対して、0.05〜7.95質量部である請求項1〜6のいずれか一項に記載のゴムアスファルト組成物。
【請求項8】
前記(イ)ゴムアスファルトエマルジョンは、(イ−1)重合体ラテックスに、溶融された(イ−2)アスファルトを混合してなるものである請求項1〜7のいずれか一項に記載のゴムアスファルト組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−332202(P2007−332202A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163336(P2006−163336)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000230397)株式会社イーテック (49)
【Fターム(参考)】