説明

ゴムシート材料の防着剤塗布方法

【課題】防着剤の塗布量のバラツキがなく、防着剤の装置周辺への飛散がなく、ゴムシート材料に異物が付着せず、後工程での密着トラブルのないゴムシート材料の防着剤塗布方法を提供する。
【解決手段】混練り工程から搬送されてきたゴムシート材料に防着剤を塗布し、これを乾燥させた後、平積みするか、または巻き取るゴムシート材料の防着剤塗布方法である。本発明においては、防着剤の塗布をスプレーにて行う。防着剤はゴムシート材料を巻き取る場合は上面のみに、平積みにする場合は両面に場合は塗布することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムシート材料の防着剤塗布方法に関し、詳しくは、防着剤の塗布量のバラツキがなく、また、防着剤の装置周辺への飛散がなく、更に、ゴムシート材料に異物が付着せずに、更にまた、後工程で密着トラブルを生ずることのなくゴムシート材料に対し防着剤を塗布する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムシート材料には、保管時の密着防止を目的として、防着剤が塗布されるのが通常である。従来の技術として、例えば、特許文献1および特許文献2では、図2に示す様に、混練機101から供給されるゴム材料は、ロール102或いは押出機で所定の幅のシート材料に成形される。この成形されたゴムシート材料は搬送コンベヤ103によって、防着剤タンク109に搬送され、回転ロール110によりどぶ漬され、両面に防着剤を塗布される。その後、ゴムシート材料は搬送コンベヤ105によって、乾燥装置106に搬送され、乾燥させられる。最終的に、このゴムシート材料はパレット111上に順次折りたたんで積載され、または、巻き取り機107にて巻き取られ、後工程へ搬送される。
【0003】
また、特許文献3には、図3に示す様に、混練機201から供給されるゴム材料は、ロール202或いは押出機で所定の幅のシート材料に成形される。この成形されたゴムシート材料は搬送コンベヤ203によって、防着剤タンク209に搬送され、防着剤が塗布された回転ロール210により、片面に防着剤を塗布される。その後、ゴムシート材料は搬送コンベヤ205によって、乾燥装置206に搬送され、乾燥させられる。最終的に、このゴムシート材料は、巻き取り機207にて巻き取られ、後工程へ搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭64−2041号公報
【特許文献2】特公平2−41402号公報
【特許文献3】特開平5−31449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および2に記載された、どぶ漬塗布方法やシャワーかけ方法では、乾燥装置106(バッチオフマシン)のラックバー108、にゴムシートが吊されて搬送される際、ゴムシートの折り返し部分に防着剤が溜まる場合がある。この場合、防着剤の乾燥不足が生じ、その結果、パレット111、に積まれたときにシート密着が生じることになる。また、特許文献3に記載されているように、塗布ロール210を用いてゴムシート材料の片面に防着剤を塗布する方法では、防着剤の塗布面が乾燥前に搬送コンベヤ205や乾燥装置206内のラックバー208と接触するため、防着剤が剥がれ、その結果、やはりシート密着が発生する場合がある。ゴムシート材料の密着が生じると、後工程において、搬送トラブルや、混練り機の投入口に詰まりの原因となり、作業性を著しく阻害する。
【0006】
このように、特許文献1〜3記載の防着剤の塗布方法では、密着防止においては、一定の効果はみられるものの、ゴムシート材料に、十分に防着効果を与えることができるとは言い難く、さらなる改良が望まれているのが現状である。
【0007】
そこで本発明の目的は、防着剤の塗布量のバラツキや、防着剤の装置周辺への飛散がなく、ゴムシート材料に異物が付着せず、しかも、後工程での密着トラブルのないゴムシート材料の防着剤塗布方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、下記構成とすることにより、上記課題を解消し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のゴムシート材料の防着剤塗布方法は、混練り工程から搬送されてきたゴムシート材料に防着剤を塗布し、これを乾燥させた後、平積みするまたは巻き取るゴムシート材料の防着剤塗布方法において、
前記防着剤の塗布をスプレーにて行うことを特徴とするものである。
【0010】
本発明においては、前記防着剤をゴムシート材料の上面のみに塗布することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、防着剤がスプレーによりゴムシート材料に均一に塗布されるため、防着剤の塗布量にバラツキが発生したり、防着剤が装置周辺へ飛散したりすることがなく、また、乾燥不足部が発生しない。特に、乾燥装置(バッチオフマシン)のラックバーにゴムシートが吊されて搬送される場合でも、ゴムシートの折り返し部分に防着剤が溜まることがなく、均一に乾燥される。従って、後工程の熱入れ作業時にロール等のスリップ発生による練り不良や再練りするときの投入トラブルがなくなり作業性を向上させることができる。また、スプレー塗布であるため、防着剤が塊のままゴムシート材料に噴霧されることはないため、異物混入をなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の防着剤の塗布方法を示す一好適実施の形態の概略図である。
【図2】従来の防着剤の塗布方法の一例を示す概略図である。
【図3】従来の防着剤の塗布方法の他の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明のゴムシート材料の防着剤塗布方法を示す一好適実施の形態の概略図である。図示するように、混練機1から排出されるゴム材料は、ローラ2または押出機によって一定の厚みのゴムシート材料に圧延される。圧延成型されたゴムシート材料は、搬送コンベヤ3によって、スプレー塗布装置4に搬送され、スプレー塗布装置4により、防着剤がゴムシート材料に塗布される。その後、搬送コンベヤ5によってバッチオフマシン、すなわち乾燥装置6を通って、巻き取り機7によって巻取られる。その後、工程に順次送達され使用される。
【0014】
本発明においては、防着剤の塗布において、ゴムシート材料にスプレーにて防着剤を塗布することが重要である。これにより、防着剤がゴムシート材料に均一に無駄なく塗布されるため、防着剤の塗布量にバラツキが発生したり、防着剤が装置周辺へ飛散したりすることなく、また、防着剤の塊等の異物混入も抑えることができ、さらに、防着剤が均一に塗布される結果、乾燥不足部が発生しないという効果を得ることができる。特に、スプレーで適正量を噴霧することにより、乾燥装置6内で、ゴムシートが吊るされるまでにゴムシート材料が乾燥するため、後工程の熱入れ作業時にロール等のスリップ発生による練り不良や再練りするときの投入トラブルがなくなり、作業性が向上する。さらにまた、塗布量を最適化することで、防着剤の使用量を低減でき、コストの低減も可能となるという効果も有している。
【0015】
本発明においては、スプレーにより防着剤をゴムシート材料の両面に塗布してもよいが、ゴムシート材料の上面のみに塗布することが好ましい。上述のとおり、ゴムシート材料の下面に防着剤を塗布しても、搬送コンベヤ5で搬送される際や、乾燥装置6のラックバー8に吊るされる際、防着剤が剥がれてしまい、防着剤の一部に無駄が生じてしまうためである。かかる観点から、ゴムシート材料を巻き取る場合は上面のみに、平積みする場合は両面に防着剤を塗布することが好ましい。
【0016】
本発明においては、防着剤の溶媒としては、水を用いることができる。また、防着剤としては、公知の防着剤を使用することができ、例えば、ベントナイト等の無機化合物および高級脂肪酸等の有機化合物を使用することができる。この際、防着剤の濃度としては、その種類にもよるが、10〜20g/Lとすることが好ましい。防着剤濃度が上記範囲より小さいと、十分な防着効果が得られない場合がある。一方、防着剤の濃度が上記範囲より大きいと、防着剤の粘度が高くなるため、均一な塗布が困難となる場合がある。
【0017】
また、本発明においては、スプレー塗布装置4による防着剤の塗布量は、好適には0.2〜0.3L/mである。防着剤の塗布量が上記範囲より少ないと、ゴムシート材料に十分な防着効果与えることができない場合がある。一方、防着剤の塗布量が上記範囲より多いと、後に続く乾燥工程において、乾燥不足になるおそれがあり、また、コストの観点からも好ましくない。
【0018】
本発明においては、混練り工程から搬送されてきたゴムシート材料に、スプレーで防着剤を塗布し、これを乾燥させた後、平積みにするか、または巻き取ることのみが重要であり、それ以外に特に制限はない。防着剤をスプレーする方法としては、公知のスプレー塗布装置を用いることができる。また、使用される混練機、ロール、押出機、搬送コンベヤ、乾燥装置、巻取機も従来使用されているものを使用することができる。
【0019】
図1に示すタイプのラインにて、本発明の方法を実施した。混練り工程から搬送されてきたゴムシート材料の上面のみに、濃度20g/Lのベントナイト系粉末防着剤の水溶液をスプレーで、塗布量0.2L/mとなるように塗布した。その結果、防着剤が周辺に飛散することなく、また、異物が混入することもなく、防着剤を均一に塗布することができた。また、得られたゴムシート材料は、後工程で密着トラブルを生ずることもなかった。
【符号の説明】
【0020】
1、101、201 混練機
2、102、202 ロール
3、103、203 搬送コンベヤ
4 スプレー塗布装置
5、105、205 搬送コンベア
6、106、206 乾燥装置
7、107、207 巻取機
8、108、208 ラックバー
109、209 防着剤タンク
110、210 塗布ロール
111 パレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混練り工程から搬送されてきたゴムシート材料に防着剤を塗布し、これを乾燥させた後、平積みするか、または巻き取るゴムシート材料の防着剤塗布方法において、
前記防着剤の塗布をスプレーにて行うことを特徴とするゴムシート材料の防着剤塗布方法。
【請求項2】
前記防着剤をゴムシート材料の上面のみに塗布する請求項1記載のゴムシート材料の防着剤塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−131189(P2011−131189A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295536(P2009−295536)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】