説明

ゴム状弾性体用コーティング剤

【課題】固着や粘着の防止、ブロッキングの防止、耐摩耗性の向上などといったゴム状弾性体用コーティング剤に従来から要求されている性能を損なうことなく、高温圧縮時の粘着や高面圧での摩擦・摩耗による塗膜の剥がれを生じないゴム状弾性体用コーティング剤を提供する。
【解決手段】粉末状フッ素系樹脂、ポリカーボネート樹脂およびイソシアネート基含有物1,2-ポリブタジエンを含有してなり、好ましくはさらに軟化点40〜160℃のワックスを含有せしめたゴム状弾性体用コーティング剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム状弾性体用コーティング剤に関する。さらに詳しくは、高温圧縮時の粘着や高面圧での摩擦・摩耗による塗膜の剥がれを生じないゴム状弾性体用コーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴム被覆金属製ガスケットやベアリングシール、オイルシール等の一部を構成するゴム状弾性体の表面には、固着防止、ブロッキング防止、耐摩耗性の向上などの目的で、グラファイトのコーティング膜や脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、パラフィン等のワックス、シリコーンオイル等のコーティング膜あるいはバインダーとしてエチルセルロース、フェノール樹脂等を含むコーティング膜などを形成させることが行われているが、これらのコーティング膜にエンジンガスケット等の高面圧や高温度使用条件下でさらにエンジンの振動が加わると、ガスケット等の表面ゴム被覆層が摩耗し、ガス洩れを発生させることがある。また、ベアリングシールやオイルシール等のゴム状弾性体摺動部のゴム被覆層が、くり返しの摺動により摩耗し、オイル洩れを発生させることがある。
【0003】
そこで、本出願人は先に、エンジンヘッドガスケットの使用環境である高面圧、高温度にさらに振動が加わるような苛酷な条件下においても、ガスケット表面のゴム被覆層に摩耗や破壊を生ずるといった現象が殆どみられず、ガスシールに有効なガスケット等を形成し得るゴム状弾性体用コーティング剤として、液状1,2-ポリブタジエンの水酸基含有物および1,2-ポリブタジエンイソシアネート化物硬化剤にポリオレフィン樹脂の水性分散液を添加した加硫ゴム用表面処理剤を提案している。
【特許文献1】特開平3−252442号公報
【0004】
ここで提案されたゴム状弾性体用コーティング剤は、ゴム被覆層の耐摩耗性の向上という所期の目的は達成させるものの、水性分散液が用いられているため、水が1,2-ポリブタジエンの水酸基と架橋剤のイソシアネート基との間の反応を促進し、また水自身もイソシアネート基とも反応するため、表面処理分散液の粘度上昇およびゲル化を招き、塗布加工時の作業性が悪いという問題がみられた。さらに、水とイソシアネート基との反応の結果、1,2-ポリブタジエンの高分子量化が妨げられ、表面処理層の耐摩耗・耐剥離性および滑り性の点で、なお改善されるべき問題がみられた。
【0005】
かかる問題を解決するため、本出願人はさらに、ポリオレフィンの水性分散液を有機溶媒分散液に変更した加硫ゴム用表面処理剤を提案している。しかしながら、この提案されたゴム状弾性体用コーティング剤においても、高温圧縮時の粘着や高面圧での摩擦・摩耗により塗膜に剥がれを生ずるという問題が依然みられた。
【特許文献2】特開平7−165953号公報
【0006】
さらに本出願人は、イソシアネート基含有1,2-ポリブタジエンまたはこれに水酸基含有1,2-ポリブタジエンがブレンドされた1,2-ポリブタジエン混合物に軟化点が40〜160℃のワックスおよびフッ素樹脂を含有させた有機溶媒溶液よりなる加硫ゴム用表面処理剤を提案しているが、この提案されたゴム状弾性体用コーティング剤ではワックスとポリブタジエン樹脂とが高温で粘着する場合のあることも認められた。
【特許文献3】特開2003−213122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、固着や粘着の防止、ブロッキングの防止、耐摩耗性の向上などといったゴム状弾性体用コーティング剤に従来から要求されている性能を損なうことなく、高温圧縮時の粘着や高面圧での摩擦・摩耗による塗膜の剥がれを生じないゴム状弾性体用コーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる本発明の目的は、粉末状フッ素系樹脂、ポリカーボネート樹脂およびイソシアネート基含有物1,2-ポリブタジエンを含有してなり、好ましくはさらに軟化点40〜160℃のワックスを含有せしめたゴム状弾性体用コーティング剤によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るゴム状弾性体用コーティング剤は、固着や粘着の防止、ブロッキングの防止、耐摩耗性の向上といった従来から要求されている性能を損なうことなく、高温圧縮時の粘着や高面圧での摩擦・摩耗による塗膜の剥がれを生じないという効果を奏するが、より詳細には他に次のような効果が挙げられる。
(1) コーティング剤の塗布性にすぐれている。
(2) 塗布厚みを、例えば5μm以下と薄くしても、塗布むらがなく、低コストで処理が可能であり、表面処理されたゴム状弾性体は滑性や非粘着性に劣ることなく柔軟性があり、ゴム本来の物性が損なわれないので、シール部品の場合にはシール性にすぐれている。
(3) 表面処理されたゴム状弾性体同士のブロッキングがない。
(4) 表面処理されたゴム状弾性体の表面は、低摩擦、低摺動となり、装着作業性にすぐれている。
(5) 表面処理されたゴム状弾性体の表面では、ゴム状弾性体の官能基とコーティング剤成分との間に多くの化学的結合が形成されるため、低摩擦、低摺動といった性能に持続性があり、またゴム状弾性体の摩耗を低減できる。
(6) 多くの化学的結合が形成された結果、表面処理されたゴム状弾性体の耐久性や高温での非粘着性が発揮されることとなり、金属との粘着性や固着性が少なく、高温においても同様の効果がみられる。
(7) コーティング剤は、フッ素系樹脂、ポリブタジエン誘導体(およびワックス)よりなるため、アウトガスや汚染性のおそれがなく、IT関連部品にも使用可能である。
(8) シリコーン樹脂、シリコーンゴム、シリコーンオイル等のシリコーン系ポリマーを含まないため、電気接点不具合のおそれがある部位にも使用できる。
(9) イソシアネート基含有1,2-ポリブタジエンを含有させることにより、フッ素系樹脂やワックスとの密着性がよく、フッ素系樹脂粒子やワックス粒子の脱落によるパーティクル汚染がない。
(10) 従来のフッ素系樹脂を含有する処理被膜は硬く、シール部品にあってはシール性能の低下や圧縮−解放のくり返しによる被膜のクラックや剥がれの発生という問題がみられたが、本発明のゴム状弾性体用コーティング剤にあっては、ポリブタジエン誘導体(およびワックス)を含有せしめることにより、被膜に柔軟性が付与され、こうした問題が有効に解決される。
【0010】
かかる性質を有する本発明のゴム状弾性体用コーティング剤は、Oリング、角リング、Dリング、Vパッキン、オイルシール、ガスケット、パッキン等のゴム状弾性体製シール材、等速ジョイント等のダストブーツ、各種バルブ、ダイアフラム、ワイパーブレード等のゴム製品、エンジン、モータ、ハードディスク等の記憶装置、光ディスク等の各種防振ゴム、ハードディスク等の記憶装置用ヘッド、プリンタヘッド等の衝撃吸収ストッパ部品などに対して有効に適用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体などが挙げられ、好ましくはPTFEが用いられる。
【0012】
これらのフッ素系樹脂の粒子は、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合などで得られたフッ素樹脂を粒子径0.1〜5μm程度に分級したものや、懸濁重合、溶液重合、乳化重合などで得られた分散液をせん断攪拌などにより、0.1〜5μm程度に微粒子分散させたもの、上記重合で得られたものを凝析・乾操後、乾式粉砕や冷却粉砕により、10μm以下に微粒子化したものが用いられる。0.1〜10μmに設定される粒子径において、粒子径がより小さい場合には、塗布厚みを小さく出来るメリットがあるが、塗布表面の凹凸が小さくなることにより接触面積が小さくなり、低面圧では摩擦係数が大きくなる傾向があり、一方粒子径がより大きい場合には、塗布厚みが大きくなり、塗布の際のコストがかかるが、凹凸が大きくなり、低面圧では相手材との接触面積が小さくなり、摩擦係数が下がるようになる。したがって、粒子径は使用要求によって適宜調整され、例えばシール部品などではこれら長所、短所を考慮して決定され、好ましくは0.5〜2μm程度のものが用いられる。
【0013】
ポリカーボネート樹脂としては、融点が約220〜230℃で、ガラス転移温度Tgが約150℃程度の市販樹脂、例えば4,4′-ジヒドロキシジフェニル-2,2-プロパン〔ビスフェノールA〕から導かれた芳香族ポリカーボネートが用いられる。これと併用されるフッ素系樹脂
(およびワックス)は約150〜200℃の高温で粘着力が高くなるが、融点が約220〜230℃のポリカーボネート樹脂は約150〜200℃の高温条件下では粘着力が高くならない。
【0014】
イソシアネート基含有1,2-ポリブタジエンとしては、末端基としてイソシアネート基が付加された分子量1,000〜3,000程度のものが用いられ、これは市販品、例えば日本曹達製品日曹TP-1001(酢酸ブチル50重量%含有溶液)などをそのまま用いることが出来る。このポリブタジエン樹脂は、同様のイソシアネート基で反応高分子化するポリイソシアネート樹脂よりも、ゴムとの相性、相溶性が良いため、ゴムとの密着性が良く、特に耐摩擦摩耗特性が良いのが特徴である。
【0015】
また、このイソシアネート基含有1,2-ポリブタジエンは、末端基にイソシアネート基が付加されているため、ゴム状弾性体表面の官能基や水酸基および/またはカルボキシル基含有1,2-ポリブタジエンと反応させることで高分子化し、また水酸基および/またはカルボキシル基含有1,2-ポリブタジエンの硬化剤としても使用することもできる。この際用いられる末端基として水酸基および/またはカルボキシル基が付加された水酸基および/またはカルボキシル基含有1,2-ポリブタジエンとしては、分子量l,000〜3,000程度ものが用いられ、市販品、例えば日本曹達製品日曹G-1000等のGシリーズ(水酸基含有)、C-1000等のCシリーズ(カルボキシル基含有)、GQ-1000、GQ-2000等のGQシリーズ(水酸基およびカルボキシル基含有)などをそのまま用いることが出来る。
【0016】
イソシアネート基含有1,2-ポリブタジエンと水酸基および/またはカルボキシル基含有1,2-ポリブタジエンが混合して用いられる場合には、イソシアネート基含有1,2-ポリブタジエンが25重量%以上、好ましくは40重量%以上、水酸基および/またはカルボキシル基含有1,2-ポリブタジエンが75重量%以下、好ましくは60重量%以下の割合で用いられる。イソシアネート基含有1,2−ポリブタジエンがこれより少ない場合には、ゴムとの密着性が低下することになり、ひいては滑り性、非粘着性能が低下し、耐摩擦摩耗特性が低下するようになる。
【0017】
ワックスとしては、軟化点40〜160℃、好ましくは60〜120℃の植物系ワックス、石油系ワックス、合成ワックスなどが用いられる。植物系ワックスとしてはカルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックスなどが、石油系ワックスとしてはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどが、また合成ワックスとしてはポリエチレンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、脂肪酸アミド、各種変性ワックスなどが挙げられ、通常は市販されているワックスや樹脂をそのまま用いることが出来る。軟化点がこれより高いものを用いると、滑り性、非粘着性能が低下するようになる。一方、これよりも軟化点の低いものを用いると、ゴムと処理剤との密着性や耐摩擦摩耗性が低下するようになる。
【0018】
以上の各成分は、これら各成分よりなるコーティング剤組成物中、次のような重量割合で用いられる。
粉末状フッ素系樹脂:約10〜70%、好ましくは約15〜60%
ポリカーボネート樹脂:約5〜60%、好ましくは約10〜50%
イソシアネート基含有1,2-ポリブタジエン(または水酸基および/
またはカルボキシル基含有1,2-ポリブタジエンとの混合物):
約20〜70%、好ましくは約30〜60%
ワックス:0〜約50%、好ましくは約5〜20%
【0019】
粉末状フッ素系樹脂の割合がこれよりも多く用いられると、ゴム状弾性体との密着性、耐摩擦・摩耗特性、シール性などが低下し、また被膜の柔軟性が損なわれ、硬化被膜にひび割れが発生し、外観が損なわれるようになる。一方、これよりも少ない割合で用いられると、滑り性、非粘着性が低下するようになる。
【0020】
ポリカーボネート樹脂については、その割合が多くなる程高温での粘着力は低下するが、耐摩耗性やシール性が低下するため、好ましくは約10〜50重量%の割合で用いられる。
【0021】
イソシアネート基含有1,2-ポリブタジエンの割合がこれよりも多く用いられると、ゴム状弾性体との密着性は良好となるが、滑り性や粘着力が高くなるようになる。一方、これよりも少ない割合で用いられると、ゴム状弾性体との密着性が低下するようになり、ひいては剥がれや摩耗により、滑り性が低下するようになる。
【0022】
ワックスについては、これを配合することにより高温での金属との粘着力をさらに低下させることができるなどの効果が得られるが、これ以上の割合で用いられるとゴム状弾性体との密着性が低下し、ひいては剥がれや摩擦により滑り性が低下するようになる。
【0023】
以上の各成分よりなるコーティング剤は、有機溶剤の分散液乃至溶液あるいは水性分散液として用いられる。有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ-n-プロピルケトン、シクロヘキサノン、ホロン(ジイソプロピリデンアセトン)、イソホロン(3,5,5-トリメチル-2-シクロへキセノン)等のケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のエーテルなどが用いられる。
【0024】
有機溶剤による希釈量は、塗布厚み、塗布方法に応じて、適宜選択されるが、一般にはその固形分濃度が約2〜20重量%の範囲に設定される。なお、塗布厚みは、通常1〜10μm、好ましくは2〜5μmであり、塗布厚みがこれより小さい場合には、ゴム状弾性体表面をすべて被覆することが出来ず、滑り性、非粘着性を損なうことがある。一方、塗布厚みがこれより大きいと、塗布表面の剛性が高くなり、シール性、柔軟性を損なうことがある。シール部品などの使用用途では、1〜5μm程度が好ましい。
【0025】
かかる表面処理剤により処理が可能なゴム状弾性体としては、フッ素ゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、エチレン−プロピレン(-ジエン)ゴム、ステレン−ブタジエンゴム、アクリルゴム、クロロブレンゴム、ブチルゴム、天然ゴムなどの一般的なゴム材料が挙げられ、この内好ましくは、ゴムに配合している老化防止剤、オイルなどのゴム状弾性体表面層へのブルームミングが少ないゴム状弾性体材料が用いられる。なお、ゴム材質、目的に応じて、上記各成分の配合比率および有機溶剤の種類、有機溶剤量、有機溶剤混合比率は適宜選択される。
【0026】
ゴム状弾性体用コーティング剤のゴム状弾性体表面への塗布方法としては、浸せき、スプレー、ロールコータ、フローコータ、インクジェットなどの塗布方法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。この際、あらかじめ表面処理剤塗布前にゴム状弾性体表面の汚れ等を洗浄などにより除去することが好ましい。特に、ゴム状弾性体からブルーム物、ブリード物が表面に析出している場合には、水、洗剤、溶剤などによる洗浄および乾燥が行われる。
【0027】
ゴム状弾性体用コーティング剤をゴム状弾性体表面へ塗布した後、約150〜250℃で約10分〜24時間程度熱処理される。加熱温度がこれより低く、加熱時間がこれより短い場合には、被膜の硬化およびゴム状弾性体との密着性が不十分で、非粘着性、滑り性が悪くなる。一方、加熱温度がこれより高く、加熱時間がこれより長い場合には、ゴム状弾性体の熱老化が起こるようになる。従って、各種ゴム状弾性体の耐熱性に応じて、加熱温度、加熱時間を適宜設定する必要がある。
【0028】
また、アウトガス量の低減が要求される品目の場合には、熱処理、減圧処理、抽出処理などを単独または組み合わせて行うことができるが、経済的には熱処理が最も良く、アウトガス量を減らすには、約150〜250℃で1〜24時間程度熱処理することが好ましく、ゴム状弾性体中の低分子成分および被膜中のワックス、ポリブタジエンに含まれる低分子成分をガス化させるために、温度は高いほど、また時間は長い程有効である。
【実施例】
【0029】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0030】
実施例1〜5、比較例1〜5
以下の各成分を混合し、ここで分散または溶解させる各成分を直接トルエン中に添加すると、添加時に発熱し、コーティング剤中で反応したり、凝集し易くなるため、予め有機溶媒に個々の成分に分散または溶解させた上で用いられ、
粒子状ポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕:粒子径1μm、トルエン85重量%含有
ポリカーボネート樹脂〔PC〕:三菱化学製品S-3000R
トルエン30重量%、キシレン53重量%、シクロヘキサノ ン重量10%含有
イソシアネート基含有1,2−ポリブタジエン〔PB-NCO〕:日本曹達製品TP1001
酢酸ブチル50重量%含有
水酸基・カルボキシル基含有1,2−ポリブタジエン〔PB-OH,-COOH〕:
同社製品GQ1000、キシレン55重量%含有
ポリエチレンワックス〔PE Wax〕:分子量約2000、融点110℃、粒子径1μm
トルエン85重量%含有
トルエン
その固形分濃度を5重量%としたトルエン溶液を、圧縮成形した加硫フッ素ゴムにスプレーを用いて4μmの厚さに塗布し、230℃で3時間熱処理した後、次の項目の測定を行った。
【0031】
動摩擦測定試験:上記の如く表面処理された2mmのフッ素ゴム製シートについて、JIS K7125、P8147に準じ、表面試験機(新東科学製)を用いて、相手材として直径10mmのクロム鋼球摩擦子を用い、移動速度50mm/分、荷重50gの条件下で動摩擦係数を測定
静動摩擦係数試験:加硫フッ素ゴム製Oリング(寸法:内径7.8mm、太さ1.9mm径、呼び番号P8)に上記表面処理を施し、JIS P8147に準じてOリングをアルミニウム板上にのせ、アルミニウム板を傾け、Oリングが動き始めた角度θを測定し、静摩擦係数をtanθとして評価
ゴム同士の粘着試験:加硫フッ素ゴム製シート(60×25×2mm)に、上記表面加工を施し、ゴム同士を40℃、湿度95%の恒温恒湿槽において、面圧0.15kg/cm2で24時間圧着した後、室温下でJIS K6850の引張せん断接着強さ試験法に従い、引張せん断接着強さ試験片の引張強さを測定し、表面の粘着力を評価
金属との高温粘着試験:加硫フッ素ゴム製Oリング(内径7.8mm、太さ1.9mm径、呼び番号P8)に、上記表面処理を施し、OリングをJIS K6301圧縮装置(圧縮面がステンレスバフ研磨されているもの)で25%圧縮し、120℃の恒温槽に24時間放置後、室温に戻して3時間冷却し、圧縮面との粘着力を測定
高面圧摩耗試験:上記の如く表面処理された2mmのフッ素ゴム製シートについて、JIS K7125、P8147に準じ、表面試験機(新東科学製)を用いて、相手材としてステンレス鋼製直径0.4mmの引っ掻き針を用い、移動速度400mm/分、往復動移動幅30mm、荷重300gの条件下での高荷重往復動試験により、高面圧での摩擦摩耗評価を行ない、試験後のゴム表面の摩耗状態を顕微鏡観察により、下記の3段階で判定
○:表面にゴム基材の露出がみられない
△:表面処理剤が摩耗し、摩耗面のゴム基材が一部露出
×:表面処理剤が摩耗し、摩耗面のゴム基材が全面露出、
またはゴム基材の摩耗がみられる
シール材のリーク試験:加硫フッ素ゴム製Oリング(内径119.6mm、太さ7mm径、呼び番号P120)に、上記表面処理を施し、Oリングを5%圧縮し、ヘリウムリークディテクタにて、ヘリウムガス投入3分後のヘリウム漏れ量を測定
【0032】
得られた結果は、各成分の組成と共に、次の表1(実施例)および表2(比較例)に示される。
表1
実施例

〔コーティング剤成分;重量部〕
PTFE 150 150 150 85 60
PC 110 110 110 285 60
PB-NCO 50 27.5 50 50 50
PB-OH,-COOH − 25 − − −
PE Wax − − 60 40 25
トルエン 800 800 920 820 640
合計 1100 1112.5 1290 1280 835
〔同固形分量;重量部〕
PTFE 22.5 22.5 22.5 12.75 9
PC 7.7 7.7 7.7 19.95 4.2
PB-NCO 25 13.75 25 25 25
PB-OH,-COOH − 11.25 − − −
PE Wax − − 9 6 3.75
合計 55.2 55.2 64.2 63.7 41.95
〔同固形分重量比;%〕
PTFE 40.8 40.8 35.0 20.0 21.5
PC 13.9 13.9 12.0 31.3 10.0
PB-NCO 45.3 24.9 38.9 39.2 59.6
PB-OH,-COOH − 20.4 − − −
PE Wax − − 14.0 9.4 8.9
〔測定・評価結果〕
動摩擦係数 0.2 0.2 0.2 0.2 0.4
静摩擦係数 0.2 0.2 0.2 0.2 0.5
ゴム同士の粘着力 (kg/cm2) 0 0 0 0 0
高温での金属との粘着力(kg) 8 8 6 4 12
高面圧摩耗試験 ○ ○ ○ ○ ○
洩れ量 (Pa・m3/秒) 5×10-11 5×10-11 5×10-11 5×10-10 5×10-10

表2
比較例

〔コーティング剤成分;重量部〕
PTFE 125 15 30 250 −
PC − − − − 240
PB-NCO 50 50 50 50 50
PE Wax 125 15 200 − −
トルエン 950 500 950 1000 1000
合計 1250 590 1250 1250 840
〔同固形分量;重量部〕
PTFE 18.75 2.25 4.5 37.5 −
PC − − − − 16.8
PB-NCO 25 25 25 25 25
PE Wax 18.75 2.25 33 − −
合計 62.5 29.5 62.5 62.5 41.8
〔同固形分重量比;%〕
PTFE 30.0 7.6 7.2 60.0 −
PC − − − − 40.2
PB-NCO 40.0 84.7 40.0 40.0 59.8
PE Wax 30.0 7.6 52.8 − −
〔測定・評価結果〕
動摩擦係数 0.2 0.7 0.7 0.2 0.5
静摩擦係数 0.2 0.8 0.8 0.2 0.4
ゴム同士の粘着力 (kg/cm2) 0 5.0 3.0 0 0
高温での金属との粘着力(kg) 20 40 30 15 17
高面圧摩耗試験 ○ × × △ ×
洩れ量 (Pa・m3/秒) 5×10-11 1×10-9 5×10-11 1×10-7 1×10-8


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状フッ素系樹脂、ポリカーボネート樹脂およびイソシアネート基含有1,2-ポリブタジエンを含有してなるゴム状弾性体用コーティング剤。。
【請求項2】
粉末状フッ素系樹脂が粒子径0.1〜10μmのポリテトラフルオロエチレン粒子である請求項1記載のゴム状弾性体用コーティング剤。
【請求項3】
粉末状フッ素系樹脂10〜70重量%、ポリカーボネート樹脂5〜60重量%およびイソシアネート基含有1,2-ポリブタジエン20〜70重量%よりなる請求項1または2記載のゴム状弾性体用コーティング剤。
【請求項4】
さらに50重量%以下の割合で、軟化点40〜160℃のワックスを含有せしめた請求項3記載のゴム状弾性体用コーティング剤。
【請求項5】
イソシアネート基含有1,2-ポリブタジエンが水酸基および/またはカルボキシル基含有1,2-ポリブタジエンと併用され、両者の合計量中水酸基および/またはカルボキシル基含有1,2-ポリブタジエンが75重量%以下の割合で用いられた請求項1記載のゴム状弾性体用コーティング剤。

【公開番号】特開2007−332269(P2007−332269A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165644(P2006−165644)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】