説明

ゴム用途向けのナノ粒子及び液状ポリマーのワンポット合成

ナノ粒子と液状ポリマーの混合物のワンポット合成を行う方法は、第一のモノマー及び任意の第二のモノマーを炭化水素溶媒中で重合させ液状ポリマーを生成させることを含む。完了前に、失活剤で重合を停止させる。次に、重合開始剤投入物、及び架橋剤とモノビニル芳香族モノマーの混合物を加える。これにより、更なる重合が引き起こされ、それによって、架橋剤を含むコアと、第一のモノマー又は第一のモノマーと第二のモノマーを含むシェルを有するナノ粒子が生成する。該方法で生成したナノ粒子/液状ポリマー混合物、及び該混合物を含むゴム組成物も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに述べる技術は、概して、ゴム組成物に関するものである。特には、該技術は、単一の重合反応容器中で、ナノ粒子と液状ポリマーの混合物を合成する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1に示す例において描写するように、ここに記載するナノ粒子は、それぞれ、中心1の周りで組織化された幾つかのポリマー鎖の群又は集合から形成されている。ポリマー鎖は、各ポリマー鎖上の架橋モノマー単位から形成されるコアにおいて、一端で結合している。ポリマー鎖は、コア2から外側に伸びて、シェル3を形成している。シェル3は、モノマー単位を含み、また、任意選択的にコア2中に存在しないポリマーのコモノマー単位を含む。当然のことながら、シェル3は、各ポリマー鎖中で単一のモノマー単位に限定されず、幾つかのモノマー単位を含んでもよい。加えて、シェル3は、複数の副層に分かれていてもよく、該副層は、種々のホモポリマー及びコポリマーのブロックを含んでいてもよい。例えば、副層は、ランダムスチレン−ブタジエンコポリマー又はブタジエンなどのホモポリマーのブロックを含んでいてもよい。シェルの最外層部分4は、モノマー単位、又は各ポリマーの外側終端にある、官能性の若しくは非官能性の重合開始剤により重合開始されたポリマー鎖の頭部からできている。該シェル4は、ナノ粒子の最外部分である。リビングポリマー鎖は、炭化水素溶媒中において、イオン性の鎖末端の集合及びポリマー鎖の化学的相互作用に起因してミセルを形成する。架橋剤を加えると、ミセルを形成しているポリマー鎖が架橋され、安定なナノ粒子が生成する。
【0003】
ゴム組成物における使用向けのナノ粒子及び液状ポリマーが公有の米国特許出願11/305,279に記載されており、ここに参照して取り込む。ナノ粒子と液状ポリマーの組み合わせは、車両用タイヤなどのゴム物品、特には、車両用タイヤのトレッド部の重要な性質を向上させる。例えば、ナノ粒子と液状ポリマーの添加で、トレッドの耐久性に対する良好な補強性を維持しながら、タイヤのトレッドの湿潤/乾燥トラクション及び転がり抵抗を改良することができる。車両用タイヤ向け組成物に使用されるプロセスオイルの量を低減又は削除することが望ましく、このことは、かかる組成物におけるナノ粒子と液状ポリマーの組み合わせの使用により可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従前に開示されたナノ粒子及び液状ポリマーを合成及び加工することは難しい。従来知られている方法は、ナノ粒子と液状ポリマーを別々に合成すること、それらを別々に乾燥すること、その後に、ゴム組成物に各成分を別々に加えることを含む。加工上の問題は、液状ポリマーが極めて粘稠な物質で溶媒からの除去及び乾燥が非常に難しいという事実に起因する。加えて、ナノ粒子と液状ポリマーを別々に保管することによって、貴重な在庫スペースが消費されてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここに開示する技術は、ナノ粒子又は液状ポリマーを除去することなく、同一の反応容器中でのナノ粒子と液状ポリマーの合成(以下、「ワンポット合成」)を提供する。生成する混合物は、別に合成した液状ポリマーよりも、加工及び乾燥が容易である。また、混合物は、ゴム組成物中でのナノ粒子の分散を容易にする。更なる利点は、個別の成分とは対照的に、ナノ粒子/液状ポリマー混合物用の在庫スペースを節約できることである。
【0006】
ナノ粒子と液状ポリマーの混合物のワンポット合成を行う方法は、第一のモノマー及び任意の第二のモノマーを炭化水素溶媒中で重合させ液状ポリマーを生成させることを含む。失活剤で、重合を部分的に失活ないし停止させる。失活剤は、停止剤とも呼ばれ、ここでは、互いに置き換え可能なものとして使用する。次に、投入材料の重合開始剤、架橋剤及びモノビニル芳香族モノマーを加える。これにより、更なる重合が引き起こされ、それによって、多ビニル芳香族モノマーを含むコアと、第一のモノマー又は第一のモノマーと第二のモノマーを含むシェルを有するナノ粒子がインサイチューで生成する。
【0007】
組成物は、本質的にコア−シェルタイプのナノ粒子と液状ポリマーの混合物からなる。ナノ粒子は、液状ポリマー内に分散され、ブレンドされている。
【0008】
ここに開示する方法によって製造されるナノ粒子と液状ポリマーの混合物は、ナノ粒子/液状ポリマーのゴム組成物を製造するために、ゴム組成物に加えてもよい。一例として、ナノ粒子/液状ポリマーのゴム組成物を取り込んだタイヤを、該ゴム組成物を含むタイヤトレッドにより、また、該タイヤトレッドを用いてタイヤを構築することにより、形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ナノ粒子の一例の図を示す。
【図2】本発明の実施態様における、補強性が向上しており、ヒステリシスが制御可能なゴム物品を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここに、ナノ粒子と液状ポリマーの混合物の作製用のワンポット合成を行う方法を開示する。第一の説明用の方法は、液状ポリマーの重合を含み、該重合においては、第一のモノマーと任意の第二のモノマーを反応容器内において炭化水素溶媒中で重合させる。重合を進行させ、次に、失活剤で部分的に失活(停止)させる。停止されるポリマー鎖の量は、用途に応じて変更可能である。停止されるポリマー鎖の量は、反応容器内の総ポリマー鎖の約1−99wt%、或いは、約15−85wt%、或いは、約30−70wt%とすることができる。
【0011】
この方法例の一部として、第二工程で、重合開始剤添加物、及び架橋剤とモノビニル芳香族モノマーの混合物を、液状ポリマーを含む反応容器に加える。この工程で、液状ポリマー合成工程から残留しているリビングポリマーがモノビニル芳香族モノマーと共重合する。生成するコポリマーは、炭化水素溶媒中でミセル構造体に会合する。架橋剤は、ミセルを架橋してナノ粒子を生成させる働きをする。
【0012】
ここで使用するように、別のことを述べない限り、反応容器中へのモノマーを含む材料の投入又は添加は、同時でも逐次的でもよい。逐次的とは、一成分の添加を他の一成分の添加を始める前に完了すること、或いは、一成分の添加を他の一成分の添加の前に始める(必ずしも完了を要さない)ことを意味する。
【0013】
第二の説明用の方法は、上記の液状重合工程を含む。しかしながら、この方法では、ナノ粒子合成プロセスは、ポットへの、モノビニル芳香族モノマーの逐次添加、その後の架橋剤及び開始剤の添加がある点で異なる。生成するコポリマーは、炭化水素溶媒中で自己集合してコア−シェルタイプのミセルとなり、架橋剤がミセルを架橋させる働きをして、ナノ粒子が生成することとなる。
【0014】
第一の方法及び第二の方法から生成したナノ粒子は、物理的に異なる性質を有することができる。類似の条件下で、第一の方法では、比較的疎に架橋されるものの、コアの全体に渡って架橋されているコアを有するナノ粒子が生成し、一方、第二の方法では、コアの中心で密に架橋されたコアを有するナノ粒子が生成する。
【0015】
架橋密度は、モノマー当りの架橋の数(Xd)で定義できる。ナノ粒子がスチレンとジビニルベンゼン(DVB)を含む一例では、Xdは、DVBのモル数のDVB及びスチレンのモル数に対する比で決まる。この値は、0.01から1、例えば、0.1から0.8、0.2から0.4などの範囲をとることができる。上記した第一の方法の例では、架橋密度は、0.2−0.4、例えば、0.3であってもよく、また、第二の方法の例では、架橋密度は0.8−1.0、例えば、0.9であってもよい。
【0016】
ここに記載したワンポット合成は、これらの材料の個々の合成に比べて、加工及び乾燥が容易なナノ粒子/液状ポリマー混合物を生成させる。また、生成した混合物は、かかる混合物が組み込まれた製品の製造用の在庫スペースを節約する。
【0017】
上記方法の第一工程は、液状ポリマーの重合を起こさせる。第一のモノマー、及び任意の第二のモノマーを、アニオン性開始剤と共に反応容器に加え、一種又は複数種のモノマーの重合をスタートさせ、その結果として、液状ポリマーが生成する。液状ポリマーは、ポリブタジエンなどのホモポリマーを含んでもよいし、スチレン−ブタジエンなどのコポリマーを含んでもよい。
【0018】
第一のモノマーは、アニオン重合可能な如何なるモノマーであってもよい。第一のモノマーは、共役ジエンモノマーの一種又は二種以上から選択することができる。一実施態様では、第一のモノマーは、C4−C8の共役ジエンモノマー類から選択される。該共役ジエンモノマーの具体例としては、特に限定されるものではないが、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、シス−及びトランス−ピペリレン(1,3−ペンタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、シス−及びトランス−1,3−ヘキサジエン、シス−及びトランス−2−メチル−1,3−ペンタジエン、シス−及びトランス−3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエンなど、及びそれらの混合物などが挙げられる。例示的な実施態様においては、イソプレン又は1,3−ブタジエン又はそれらの混合物を、一種又は複数種の共役ジエンモノマーとして用いる。
【0019】
任意の第二のモノマーは、ビニル芳香族モノマーとすることができ、スチレン、エチルビニルベンゼン、α−メチル−スチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン、t−ブトキシスチレン等、並びに、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、及びアラルキル誘導体であって、モノマー中の炭素原子の総数が一般に約20以下である誘導体、及び、それらの混合物からなる群から選択することができる。例示的な実施態様においては、共役ジエンモノマーとビニル芳香族モノマーを、約99:1から約1:99、約30:70から約90:10、約85:15から約60:40の重量比で通常使用する。
【0020】
一以上の実施態様において、採用するアニオン性開始剤は、ポリマー鎖の頭部(即ち、ポリマー鎖がスタートする位置)に官能基を付与する官能性開始剤である。ある実施態様において、官能基は一つ又は二つ以上のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、ホウ素、ケイ素、硫黄、スズ、及びリン原子)又は複素環基を含む。
【0021】
例としてのアニオン性開始剤としては、有機リチウム化合物が挙げられる。一以上の実施態様において、有機リチウム化合物はヘテロ原子を含んでもよい。これらの又は他の実施態様において、有機リチウム化合物は一つ又は二つ以上の複素環基を含んでもよい。
【0022】
有機リチウム化合物の種類としては、アルキルリチウム、アリールリチウム化合物、及びシクロアルキルリチウム化合物が挙げられる。有機リチウム化合物の具体例としては、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、n−アミルリチウム、イソアミルリチウム、及びフェニルリチウムが挙げられる。他の例としては、ブチルマグネシウムブロミドやフェニルマグネシウムブロミド等のアルキルマグネシウムハライド化合物が挙げられる。更に他のアニオン性開始剤の例としては、フェニルナトリウム及び2,4,6−トリメチルフェニルナトリウムなどの有機ナトリウム化合物が挙げられる。ポリマー鎖の両末端がリビング状のジリビングポリマーを生成させるアニオン性開始剤も考えられる。かかる開始剤の例としては、1,3−ジイソプロペニルベンゼンをsec−ブチルリチウムと反応させて調製したもの等のジリチオ開始剤が挙げられる。これらの及び関連する二官能性開始剤が米国特許第3,652,516号に開示されており、ここに参照して取り込む。また、ラジカルアニオン性開始剤を使用してもよく、該ラジカルアニオン性開始剤としては、米国特許第5,552,483号に開示されているもの等が挙げられ、ここに参照して取り込む。
【0023】
特定の実施態様では、有機リチウム化合物として、リチオヘキサメチレンイミン等の環状アミン含有化合物が挙げられる。これらの及び関連する有用な開始剤が米国特許第5,332,810号、第5,329,005号、第5,578,542号、第5,393,721号、第5,698,646号、第5,491,230号、第5,521,309号、第5,496,940号、第5,574,109号及び第5,786,441号に開示されており、ここに参照して取り込む。他の実施態様では、有機リチウム化合物として、2−リチオ−2−メチル−1,3−ジチアン等のアルキルチオアセタール類が挙げられる。これらの及び関連する有用な開始剤が米国出願公開第2006/0030657号、第2006/0264590号、及び第2006/0264589号に開示されており、ここに参照して取り込む。更に他の実施態様では、有機リチウム化合物として、リチオ化t−ブチルジメチルプロポキシシラン等のアルコキシシリル含有開始剤が挙げられる。これらの及び関連する有用な開始剤が米国出願公開第2006/0241241号に開示されており、ここに参照して取り込む。
【0024】
一以上の実施態様において、採用するアニオン性開始剤は、トリ−n−ブチルスズリチウム等のトリアルキルスズリチウム化合物である。これらの及び関連する有用な開始剤が米国特許第3,426,006号及び第5,268,439号に開示されており、ここに参照して取り込む。
【0025】
任意選択的に、液状ポリマーの合成工程は、例えば、反応速度を向上させるため、モノマーの反応性の比を均等にするため、及び/又は、共役ジエンモノマー中の1,2−ミクロ構造をコントロールするために、調節剤や1,2−ミクロ構造調整剤の存在下で、行ってもよい。好適な調節剤としては、特に限定されるものではないが、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジエチルエーテル、トリ−n−ブチルホスフィン、p−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−オクチルエーテル、アニソール、ジベンジルエーテル、ジフェニルエーテル、ジメチルエチルアミン、ビス−オキソラニルプロパン、トリ−n−プロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルピペリジン、N−メチル−N−エチルアニリン、N−メチルモルホリン、テトラメチレンジアミン、オリゴマー状オキソラニルプロパン(OOPs)、2,2−ビス−(4−メチルジオキサン)、ビステトラヒドロフリルプロパンなどが挙げられる。
【0026】
本発明に用いられる他の調節剤や1,2−ミクロ構造調整剤は、以下に示す構造式(IV)で表わされる直鎖のオキソラニルオリゴマーであっても、構造式(V)で表わされる環状オリゴマーであってもよい。
【0027】
【化1】

【0028】
【化2】

【0029】
ここで、R14及びR15は、それぞれ独立して水素又はC1−C8のアルキル基であり、R16、R17、R18及びR19は、それぞれ独立して水素又はC1−C6のアルキル基であり、yは1から5の整数であり、zは3から5の整数である。
【0030】
調節剤や1,2−ミクロ構造調整剤の具体例としては、特に限定されるものではないが、オリゴマー状オキソラニルプロパン(OOPs)、2,2−ビス(4−メチルジオキサン)、ビス(2−オキソラニル)メタン、1,1−ビス(2−オキソラニル)エタン、ビステトラヒドロフリルプロパン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、2,2−ビス(5−メチル−2−オキソラニル)プロパン、2,2−ビス−(3,4,5−トリメチル−2−オキソラニル)プロパン、2,5−ビス(2−オキソラニル−2−プロピル)オキソラン、オクタメチルペルヒドロシクロテトラフルフリレン(環状四量体)、2,2−ビス(2−オキソラニル)ブタン等が挙げられる。調節剤や1,2−ミクロ構造調整剤の二種以上の混合物を用いることもできる。
【0031】
反応時間が進んで、液状ポリマーが生成した後、リビングポリマーを部分的に失活(停止)させる量の失活剤を加える。部分的な停止により、リビング(終結していない)ポリマーが残り、続いて、後続のナノ粒子の合成工程で共重合してナノ粒子のシェルを形成する。液状ポリマーの合成工程は、比較例速く、例えば、約15分で完了することができる。ここで使用するように、部分的な停止とは、リビングポリマー鎖の100%未満を停止させることを意味する。
【0032】
好適な失活剤としては、特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノール等のアルコール類が挙げられる。任意に、失活剤を用いて、末端官能基を設けてもよい。官能基をもたらす失活剤の例としては、特に限定されるものではないが、SnCl4、R3SnCl、R2SnCl2、RSnCl3、カルボジイミド、N−メチルピロリジン、環状アミド、環状尿素類、イソシアネート、シッフ塩基、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、N,N’−ジメチルエチレンウレア、及びこれらの混合物が挙げられ、ここで、Rは、約1から約20個の炭素原子を有するアルキル、約3から約20個の炭素原子を有するシクロアルキル、約6から約20個の炭素原子を有するアリール、約7から約20個の炭素原子を有するかアラルキル、及び、これらの組み合わせからなる群から選択される。
【0033】
液状ポリマーは、バッチでも、半回分式でも、連続プロセスでも作製することができる。溶媒/溶媒の組み合わせがミセルの形成を阻害しない限り、他の溶媒又は溶媒の組み合わせを用いることも可能であるが、典型的には、炭化水素溶媒を用いる。炭化水素溶媒は、重合の間、液体状態で存在する限り、好適な任意の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、又はそれらの混合物から選択してもよい。典型的な脂肪族炭化水素としては、特に限定されるものではないが、ペンタン、イソペンタン、2,2−ジメチルブタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、かかる炭化水素の混合物等が挙げられる。典型的な脂環式炭化水素としては、特に限定されるものではないが、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン等が挙げられる。一実施態様において、液状の炭化水素溶媒は、ヘキサン類を含む。
【0034】
ここに開示したプロセスによれば、バッチプロセスで液状ポリマーを合成するのに幾つかの利点がある。しかしながら、ここに開示した方法は、単一の反応容器中で連続プロセスによって行うことも可能である。連続プロセスでは、モノマーと開始剤を溶媒と共に、反応容器中に連続的に供給する。
【0035】
反応容器内の圧力は、重合反応条件下で、実質的に液相を維持するのに十分であるべきである。反応媒体は、一般には、重合の間中、約20℃から約140℃の範囲内の温度に維持することができる。
【0036】
液状ポリマーは、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−イソプレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−イソプレンコポリマー、ブタジエン−イソプレンコポリマー、液状ブチルゴム、液状ネオプレン、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレン−ジエンコポリマー、アクリロニトリル−ブタジエンコポリマー、液状シリコーン、エチレンアクリルコポリマー、エチレンビニールアセテートコポリマー、液状エピクロロヒドリン、液状塩素化ポリエチレン、液状クロロスルホン化ポリエチレンゴム、液状水素化ニトリルゴム、液状テトラフルオロエチレン−プロピレンゴム、液状水素化ポリブタジエン及びスチレン−ブタジエンコポリマー等、及びそれらの混合物を含んでもよい。
【0037】
一実施態様において、生成する液状ポリマーの数平均分子量(Mn)は、約10,000から約120,000の範囲内、約20,000から約110,000の範囲内、又は約25,000から約75,000の範囲内である。液状ポリマーの重量平均分子量は、約20,000から100,000、例えば、70,000から90,000の範囲とすることができる。
【0038】
液状ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、例えば、約−95℃から約−40℃の範囲、約−90℃から約−50℃の範囲のような約−100℃から約−20℃の範囲内である。液状ポリマーは、たった一つのガラス転移温度を示してもよい。
【0039】
リビング末端を有する残留ポリマーを後で用いて、ナノ粒子のシェル層を形成するので、失活剤の量も、ナノ粒子/液状ポリマー混合物中における液状ポリマーのナノ粒子に対する比を決定する。
【0040】
反応を失活剤で部分的に停止させた後、液状ポリマーの生成を完了させる。ここに記載する例示的な方法では、次に、ナノ粒子の合成工程を開始させる投入材料を加える。
【0041】
一実施態様において、ナノ粒子の合成工程のために、アニオン性開始剤を最初に反応容器に加える(即ち、モノ−及びカップリング剤を加える前)。他の実施態様では、開始剤を、モノビニル芳香族モノマー及びカップリング剤と同時に加えることもできる。アニオン性開始剤は、上記のものとすることができる。
【0042】
開始剤の添加後、又は、開始剤の添加と同時に、モノビニル芳香族モノマーと架橋剤を、液状ポリマーが生成した同一の反応容器に加える。液状ポリマーの合成工程に由来するリビングポリマー鎖は、モノビニル芳香族モノマーと共重合する。次に、コポリマー鎖が炭化水素溶媒中で自己集合してミセルとなる。架橋剤は、ナノ粒子を生成するミセルを架橋する働きをする。
【0043】
任意選択的に、調節剤や1,2−ミクロ構造調整剤、例えば、上記のものの存在下で、ナノ粒子の合成工程を行ってもよい。
【0044】
一実施態様において、コポリマーは、ポリ(ブタジエン−b−スチレン)のような、多共役ジエンブロックとモノビニル芳香族ブロックを含むジ−ブロックコポリマーである。典型的には、モノビニル芳香族のブロックは、架橋剤によって少なくとも部分的に架橋されている。一実施態様において、ポリマーのナノ粒子は、個々の性質を保持しているが、互いの間で殆ど或いは全く重合しない。幾つかの実施態様では、ナノ粒子は、実質的に単一モードで、形状が均一であり、他の実施態様では、ナノ粒子は、多モードのサイズ分布を有する。
【0045】
ナノ粒子鎖の共重合は、所望のモノマー転化率、重合度(DP)、及び/又はブロックポリマー分子量が得られるまで、必要な限り、続けてもよい。この工程の重合反応は、典型的には、約0.5時間から約20時間、約0.5時間から10時間、又は、約0.5時間から約5時間続けることができる。この工程の重合反応は、約30°Fから約300°F、約100°Fから約250°F、又は、約150°Fから約210°Fの温度で行うことができる。
【0046】
ポリマーのナノ粒子を調製するのに用いる重合反応は、失活剤で停止させてもよい。好適な失活剤としては、上記のものが挙げられる。例示した実施態様では、ナノ粒子の反応混合物を冷却し、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)等の酸化防止剤を含むイソプロパノール/アセトン溶液中に落とした。イソプロパノール/アセトン溶液は、例えば、1容量部のイソプロパノールと4容量部のアセトンを混合して調製することができる。
【0047】
一実施態様においては、ナノ粒子の合成を、液状ポリマーの合成に用いた溶媒と同じ溶媒中で行う。ナノ粒子の合成の間、液状ポリマーは、溶媒と考えることもできる。理論に縛られるものではないが、ナノ粒子の合成の間、リビングポリマー鎖がミセルの形態にあるとき、液状ポリマーは、自分自身をリビングポリマー鎖の間に挿入するものと考えられる。このことにより、炭化水素溶媒からのミセルの内部の単離が起こる可能性がある。従って、生成するミセルはより安定なものとなり、2つ又はそれ以上のミセルが互いに接触して、場合により結合し、非常に大きな粒子が生成する機会が減る。液状ポリマーは、生成したナノ粒子を膨潤させ、生成した混合物がより柔らかくなり、ゴム組成物中への混合がより容易になる。
【0048】
理論に縛られるものではないが、ナノ粒子の合成の間、ポリ(共役ジエン)ブロックは、モノビニル芳香族ブロックよりも、選択した炭化水素溶媒により溶解し易い、ないし混和し易いものと考えられる。このことが、後続のミセル、最終的にはナノ粒子のブロックコポリマー鎖からの生成を容易にする。
【0049】
それらの混和性に依存して、溶液又は懸濁系中のポリマー鎖は、自己集合して、種々の構造のドメインになることができる。理論に縛られるものではないが、ミセル様の構造が、ポリ(共役ジエン)ブロックと芳香族ブロックを含むブロックコポリマー鎖を集合させることによって形成される可能性がある。モノビニル芳香族ブロックは、典型的には、ミセルの中心の方向に向かっており、ポリ(共役ジエン)含有ブロックは、典型的には、中心から遠い方向に伸びている。
【0050】
ナノ粒子は、モノビニル芳香族ブロックから作製されたコアと、ポリ(共役ジエン)含有ブロックから作製されたシェルとを有する架橋されたミセル構造体から形成される。架橋剤は、ミセルの中心コアを架橋してナノ粒子を安定化及びまとめるものと考えられる。
【0051】
一実施態様では、ナノ粒子/液状ポリマー混合物の液状ポリマーは、スチレン−ブタジエンコポリマーである。該スチレン−ブタジエンは、Mnが約80,000から120,000で、約5重量パーセントから約95重量パーセントのスチレンと、それに対応して、約5重量パーセントから約95重量パーセントの1,3−ブタジエンとに由来する繰り返し単位から構成される。この例では、例示の方法の液体重合プロセスにおいて、第一のモノマーがスチレンで、第二のモノマーがブタジエンである。幾つかの用途には、ビニルの割合は50−60%が好ましく、これは、この範囲で、相溶性の液状ポリマー/ナノ粒子相が生成するからである。しかしながら、より低いビニルレベルも可能である。
【0052】
他の例では、液状ポリマーは、Mnが約35,000から70,000の液状イソプレン−ブタジエンゴム(IBR)であり、該液状イソプレン−ブタジエンゴムは、約5重量パーセントから約95重量パーセントのイソプレンと、それに対応して、約5重量パーセントから約95重量パーセントの1,3−ブタジエンとに由来する繰り返し単位から構成され、ここで、イソプレンと1,3−ブタジエンに由来する繰り返し単位は、実質的に順番はランダムである。この例では、上記の例示の方法に従い、第一のモノマーがイソプレンで、第二のモノマーがブタジエンである。
【0053】
ここに記載したワンポット法で合成したポリマーのナノ粒子は、加硫可能なシェルと架橋されたコアを含んでもよい。シェルを構成するモノマーは、硫黄による加硫又は過酸化物によって硬化可能であってもよい。好適な硫黄加硫剤の例としては、「ゴムメーカーの」可溶性硫黄;単体硫黄(遊離硫黄);有機シランポリスルフィド類、アミンジスルフィド類、高分子ポリスルフィド類又は硫黄オレフィン付加物等の硫黄供与性加硫剤;及び不溶性の高分子硫黄が挙げられる。関連する従来特許及び米国特許第6,437,050号公報(株式会社ブリヂストン)及びMacromol.Symp.118,143−148(1997)は、好適な硫黄加硫剤を幾つか開示している。
【0054】
種々の例示的な実施態様において、シェルは、如何なる適切な共役ジエン又はそれらの混合物から形成されていてもよい。C4−C8の1,3−共役ジエンモノマーが最も好ましい。シェルのモノマーの具体例としては、特に限定されるものではないが、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、シス−及びトランス−ピペリレン(1,3−ペンタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、シス−及びトランス−1,3−ヘキサジエン、シス−及びトランス−2−メチル−1,3−ペンタジエン、シス−及びトランス−3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン等、及びそれらの混合物が挙げられる。ある実施態様では、イソプレン又は1,3−ブタジエン又はそれらの混合物を、シェルのモノマーとして用いる。
【0055】
ナノ粒子の架橋されたコアは、典型的には、モノビニル芳香族モノマーが架橋剤で架橋されたときに形成される。モノビニル芳香族モノマーと架橋剤との間の重量比は、約95:5から約0:100、約90:10から約25:75、又は約85:15から約60:40の広い範囲に及ぶ。
【0056】
好適なモノビニル芳香族モノマーとしては、特に限定されるものではないが、通常は8から20、好ましくは8から12個の炭素原子を含むものが挙げられ、例えば、スチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、スチレンの種々のアルキル、シクロアルキル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキル誘導体、例えば、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−p−トリルスチレン、4−(4−フェニルブチル)スチレン、又はそれらの混合物から選択することができる。ある実施態様では、モノビニル芳香族モノマーはスチレンを含む。
【0057】
ある実施態様では、モノビニル芳香族モノマーと共役ジエンモノマーの重合で形成したミセルを架橋し、生成するナノ粒子の形状及びサイズの均一性及び耐久性を高める。かかる実施態様では、架橋剤は、多官能性コモノマーを含む。ある実施態様では、2つの官能基がビニル置換芳香族炭化水素モノマーと反応できる、少なくとも二官能性の架橋剤が許容できる。好適な多官能性コモノマーは、少なくとも2、好ましくは2から4の共重合可能な炭素−炭素二重結合を有する化合物、例えば、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、フタル酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、トリアリルイソシアヌレート、1,2−ポリブタジエン、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、N,N’−(4−メチル−m−フェニレン)ジマレイミド及び/又はトリアリルトリメリテート等である。また、使用可能な他の化合物は、多価、好ましくは2価又は3価のC2−C10アルコール、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール並びにソルビトールのアクリレート及びメタクリレートである。2から20、好ましくは2から8個のオキシエチレン単位を有するポリエチレングリコールのアクリレート及びメタクリレートを使用することも可能である。架橋剤を含むアクリレートの例としては、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート、(ジエチレングリコール)ジアクリレート、グリセロールプロポキシートトリアクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、及び、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレートが挙げられる。脂肪族ジオール及び/又はポリオール、或いは、マレイン酸、フマル酸及び/又はイタコン酸から構成されるポリエステルを使用することも可能である。
【0058】
ここに記載するワンポット法で合成されたポリマーのナノ粒子は、実質的に球形でもよい。球の平均径は、約1nmから約200nmの範囲内、約5nmから約100nmの範囲内、約10nmから約80nmの範囲内、又は約15nmから約70nmの範囲内で、広範囲に渡り得る。
【0059】
シェル部分のポリ(共役ジエン)ブロックの平均分子量Mnは、約5,000から約500,000の範囲内、約5,000から約200,000の範囲内、最も好ましくは約10,000から約100,000の範囲内に調節できる。架橋されていない芳香族ブロックの平均分子量Mnは、約5,000から約500,000の範囲内、約5,000から約200,000の範囲内、又は約10,000から約100,000の範囲内に調節できる。
【0060】
全ナノ粒子の数平均分子量(Mn)は、約10,000から約200,000,000の範囲内、約50,000から約1,000,000の範囲内、又は約100,000から約500,000の範囲内に調節できる。ポリマーナノ粒子の多分散度(重量平均分子量の数平均分子量に対する比)は、約1から約1.5の範囲内、約1から約1.3の範囲内、又は約1から約1.2の範囲内に調節できる。
【0061】
Mnは、ポリスチレン標準品で校正し、対象ポリマーに対するマーク−ホーウィンク係数で調整したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。以下の例で使用したMnの値は、直鎖状ポリマーで校正したGPC法で測定されたものである。
【0062】
一例において、合成されたナノ粒子のコアは、比較的硬い。即ち、コアは、Tgが約60℃又はそれより高い。他の一例では、ナノ粒子は、シェルよりも相対的に硬いコア、例えば、シェル層のTgよりも少なくとも約60℃高いコアを有する。一例では、シェルは軟らかい。即ち、シェルは、Tgが約0℃より低い。一実施態様では、シェル層のTgは、約0℃と約−100℃の間である。硬いコアと軟らかいシェルを有するナノ粒子は、タイヤのトレッドに用いられるゴム配合物を補強するのに特に有用である。
【0063】
当業者に公知のように、ポリマーのTgは、モノマー及びその分子量、スチレン含量、並びにビニル含量の選択によって調節することができる。
【0064】
液状ポリマー/ナノ粒子混合物を含む例示の組成物は、(a)ゴムマトリクス、(b)任意のオイル、及び(c)カーボンブラック、シリカ、加硫剤、加硫促進剤、粘着付与性樹脂、老化防止剤、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、素練り促進剤、加硫遅延剤、活性剤、加工添加剤、可塑剤、顔料、及びオゾン劣化防止剤からなる群から選択される1種又は2種以上の成分も含む。タイヤやパワーベルト等の種々のゴム製品を、この組成物を基にして製造することができる。
【0065】
ナノ粒子/液状ポリマー混合物は、ゴム配合の技術分野で一般に公知の方法、例えば、標準的な混合設備及び手法を用いて、ゴム状マトリクスポリマーとナノ粒子/液状ポリマー混合物を、従前の量の一般に使用される種々の添加材料と共に混合するなどして、ゴムと配合することができる。
【0066】
加硫ゴム製品は、ゴム混合機中で、ナノ粒子/液状ポリマー混合物、ゴム状マトリクスポリマー、及び、従前の量の一般に使用される種々の添加材料を順次逐次的手法で熱機械的に混合し、その後、該組成物を成形し硬化させることによって、本発明の組成物から製造することができる。タイヤ等のゴム物品は、上記したナノ粒子/液状ポリマー混合物で作製した組成物から製造することができる。この目的のために、米国出願公開第2004/0143064A1号公報を参照してもよく、該公報を参照してここに取り込む。
【0067】
ゴムマトリクスを含み得るポリマーとしては、天然及び合成のエラストマーが挙げられる。合成エラストマーは、典型的には、共役ジエンモノマーの重合から得られる。これらの共役ジエンモノマーは、ビニル芳香族モノマー等の他のモノマーと共重合してもよい。他のゴム状エラストマーは、エチレンと、一種又は二種以上のアルファオレフィン類及び任意の一種又は二種以上のジエンモノマーとの重合から得られる。
【0068】
有用なエラストマーとしては、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン−co−イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン−co−プロピレン)、ポリ(スチレン−co−ブタジエン)、ポリ(スチレン−co−イソプレン)、及びポリ(スチレン−co−イソプレン−co−ブタジエン)、ポリ(イソプレン−co−ブタジエン)、ポリ(エチレン−co−プロピレン−co−ジエン)、多硫化ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、及びそれらの混合物が挙げられる。これらのエラストマーは、直鎖状、分岐状及び星型などの無数の高分子構造を取りうる。
【0069】
オイルは、ゴム組成物において配合助剤として従前より使用されている。オイルの例としては、特に限定されるものではないが、芳香族系、ナフテン系及び/又はパラフィン系のプロセスオイルが挙げられる。幾つかの例では、低多環芳香族(PCA)オイル、特には、PCA含量が3%未満のオイルを使用することが好ましいかもしれない。ある実施態様では、上記の混合物の液状ポリマー部分を、オイルと共に用い、或いは、ゴム配合物中のオイルの一部を置き換えるのに用い、或いは、ゴム配合物中のオイルの全部を置き換えるのに用いる。そうであるので、オイルの代表的な量は、ゴム組成物中のゴムマトリクス100phrに対して、約0phrから約100phr、約0phrから約70phr、約0phrから約50phrの広い範囲に及ぶことができる。
【0070】
当業者であれば理解できるように、ゴム製品の補強性は、低歪の動的モジュラスG’によって反映され、該G’は22℃でASTM−D 412に従って測定することができる。ある実施態様では、本発明の組成物から作製したタイヤ等のゴム製品の補強は、(i)ナノ粒子/液状ポリマー混合物の配合で達成しても、(ii)ナノ粒子/液状ポリマー混合物によるオイルの部分的な置換で達成しても、(iii)ナノ粒子/液状ポリマー混合物によるオイルの完全な置換で達成してもよい。
【0071】
ナノ粒子/液状ポリマー混合物は、様々なゴム製品に、向上した補強性と制御可能なヒステリシスをもたらす。制御可能なヒステリシスとは、ヒステリシスが、組成物中にオイルが存在するものの、ナノ粒子/液状ポリマー混合物が組成物中に含まれない状況に比べて、上昇したり、低下したり、或いは、ほぼ変化しないままであることを意味する。例えば、G’(MPa)は、少なくとも約0.3、或いは、少なくとも約1.5、又は少なくとも3.0ほど上昇し得る。
【0072】
エラストマーのエネルギーロスはヒステリシスと呼ばれ、該ヒステリシスは、エラストマー製の物品を変形させるのに適用したエネルギーと、エラストマーが初期の変形していない状態に戻るに従って解放されるエネルギーとの間の違いを指す。ヒステリシスは、損失正接、正接デルタ(tanδ)で特徴付けられ、該tanδは、損失モジュラスの貯蔵モジュラスに対する比(即ち、粘性モジュラス 対 弾性モジュラス)であり、強制的な正弦波変形下で測定される。tanδの値は、例えば、ティー・エイ・インスツルメントのARESレオメーターで測定できる。
【0073】
補強性が向上しており、適切なヒステリシスを有するゴム製品は、ナノ粒子/液状ポリマー混合物を含むことができ、ここで、成分(a)の液状ポリマーと成分(b)のポリマーナノ粒子の間のphr比は、約1:99から約99:1の範囲内、他の一実施態様では約20:80から約80:20の範囲内、また、他の一実施態様では約25:75から約40:60の範囲内である。
【0074】
ここに記載した説明用のゴム組成物は、種々の用途に使用できる。例えば、それらは、タイヤのトレッド原料、サイドウォール原料、又は他のタイヤの構成部材の原料配合物などの種々のゴム配合物に使用できる。かかるタイヤは、公知で且つ当業者が容易且つ明確に理解できるであろう様々な方法で、構築、成形、成型、及び硬化することができる。一実施態様では、上記の組成物及び手法に基づき、成型された未加硫タイヤを加硫モールドに投入した後、加硫してタイヤを製造することができる。
【0075】
以下の例は、請求項に係る発明を当業者が実施するための追加手引きの提供を目的とするものである。提供した例は、本願の教示に寄与する仕事の単なる代表例である。従って、これらの例は、如何なる方法においても、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の限定を目的とするものではない。
【実施例】
【0076】
(ナノ粒子/液状ポリマー混合物の調製)
2ガロンのジャケット付き反応器を反応容器として用いた。以下の成分を使用した。
ブタジエン19.3%のヘキサン溶液、スチレン33%のヘキサン溶液、ヘキサン、n−ブチルリチウム(1.6M)、オリゴマー状オキソラニルプロパン(1.6M)(OOPs)、イソプロパノール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、及びアルドリッチから購入した80%のジビニルベンゼン(DVB)。
【0077】
反応器に、4.96ポンドのヘキサン、0.59ポンドの33%スチレン、3.58ポンドの19.3%ブタジェンを順次投入した。この反応器を約15分かけて120°Fに加熱した。反応器が117°Fに達したときに、約20mLのヘキサンで希釈した2.3mLのn−ブチルリチウム(1.6M)と0.76mLのOOPs(1.6M)を加えた。3分後、重合は126.7°Fで発熱を伴った。1時間後、反応器のジャケットを100°Fに設定し、0.14mLのイソプロパノールを加えた。分析用にサンプルを落とした後、追加のn−ブチルリチウム(2.3mL)を反応器に加えた。140.2gのスチレンブレンドと28.5mLのDVBとの混合物を調製し、反応器に加えた。反応器のジャケットの温度を180°Fに上げた。3時間後、反応器の温度を90°Fに落とし、BHTを含有するイソプロパノール中に混合物を落とした。次に、生成した固形物を、チーズクロスを通して濾過し、ドラム乾燥した。
【0078】
液状ポリマーの部分のMnは73,000から80,000と決定された。ナノ粒子の部分のMnは83,700と決定された。合成された混合物は、55wt%の液状ポリマーと、45wt%のナノ粒子を含んでいた。
【0079】
ナノ粒子/液状ポリマーの混合物は、溶剤からの単離及び乾燥が、従来知られていた別に液状ポリマーを合成する方法に比べて、非常に容易であった。しかしながら、液状ポリマーブレンド中に十分な量のナノ粒子を有し、凝固後は、実質的に固体の混合物が生成し、非常に容易にドラム乾燥することができる。
【0080】
(ゴム配合物の例の調製及び分析)
表1及び2に示す処方に従って、6つのゴム組成物を調製した。第1の例は、ナノ粒子も液状ポリマーも含まないコントロールで、試験配合物との比較の役目を果たす。第2の例は、合成ナノ粒子を用いて、配合処方中の10phrのスチレン−ブタジエンゴム(SBR)を置き換えて作製した。第3の例は、ナノ粒子及び液状ポリマーを用いて、10phrのSBRと約15phrの芳香族オイルを置き換えて作製した。合成されたMNP/LP混合物が55wt%の液状ポリマーと45wt%のナノ粒子を含んでいたため、所望の組成に正確に適合させるために、22.2phrのMNP/LP混合物と2.8phrの追加のLPを処方に用いた。
【0081】
追加量のLPがここに記載する例に必要な成分ではないことを明らかにするために、第4の机上の例も示す。該机上の例4では、25phrの40:60のMNP/LP混合物を用いる。この机上の例は、10phrのSBRを10phrの混合MNPで置換し、追加のLP自体を使用することなく、15phrのLPを15phrの混合LPで置換する。
【0082】
また、3つの比較例を調製した。これらの例のそれぞれは、マトリクスのゴムとしてポリブタジエンを使用し、液状ポリマーとは別のポット中で合成されたナノ粒子を使用する。比較例1は、15phrの芳香族オイルを含むものの、ナノ粒子も液状ポリマーも含まないものとした。比較例1をコントロール(コントロール2)として使用して、その他の比較例の結果を比較例1に関して標準化した。比較例2は、比較例1とは、15phrのポリブタジエンを15phrのナノ粒子で置き換えた点で異なる。比較例3は、比較例1とは、15phrのポリブタジエン及び15phrの芳香族オイルを15phrのナノ粒子及び15phrの液状ブタジエンポリマーで置き換えた点で異なる。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
各例において、成分の混合物を表3に掲載した方法で混練りした。最終ストックをシート化し、165℃で15分間成型した。
【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

【0088】
ゴム組成物を加硫した例に対して、引張強度及びヒステリシスロスを測定した。結果を表4に示す。引張強度の測定は、ASTM−D 412に従って行った。
【0089】
例1、2及び3では、試験片の形状は、幅が0.05インチ、厚さが0.075インチのリング状とした。試験片を特定ゲージ長1.0インチで試験した。ヒステリシスロスは、周波数1Hz、歪1%に設定したダイナスタット粘弾性分析機で測定した。この試験用の試験片の形状は、長さ15mm、直径10mmの円柱とした。
【0090】
例5、6及び7では、試験片の形状は、幅が0.05インチ、厚さが0.075インチのリング状とした。試験片を特定ゲージ長1.0インチで試験した。ヒステリシスロスは、ティー・エイ・インスツルメントのARESレオメーターで測定した。試験片の形状は、長さ15mm、直径9mmの円柱状とした。以下の条件を採用した。
周波数5Hz、歪1%
【0091】
本発明を典型的な実施態様で詳しく説明したが、本発明の技術思想から逸脱することなく様々な変更及び置換が可能であるため、ここに示した詳細な記述に本発明を限定する意図はない。従って、当業者であれば、単なる日常的な実験を行って、ここに記載した本発明の更なる変形例及び均等物を思い付くであろうし、そして、かかる変形例及び均等物の総ては、以下の特許請求の範囲で定義される本発明の思想及び範囲に入るものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中でワンポット合成されたナノ粒子と液状ポリマーの混合物を調製する方法であって、
(a)反応容器中で、第一のモノマーを重合させて液状ポリマーを生成させるか、第一のモノマーと第二のモノマーを共重合させて液状ポリマーを生成させる工程と、
(b)重合を失活剤で部分的に停止させる工程と、
(c)多官能性コモノマー及びモノビニル芳香族モノマーを加え、任意選択的に重合開始剤投入物を加える工程と
を含み、
前記ナノ粒子が、前記モノビニル芳香族モノマーを含むコアと、前記第一のモノマー又は前記第一及び第二のモノマーを含むシェルとを有することを特徴とする、
方法。
【請求項2】
前記失活剤は、前記ポリマー鎖の20から95%が終結するように前記重合を部分的に停止させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
更に、前記ワンポット合成されたナノ粒子と液状ポリマーの混合物を濾過して、ドラム乾燥する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第二のモノマーが、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、1−α−メチルビニルナフタレン、2−α−メチルビニルナフタレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン、t−ブトキシスチレン、及び、それらのアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、及びアラルキル誘導体であって該誘導体中の炭素原子の総数が18以下である誘導体、又は、ジ−若しくはトリ−置換芳香族炭化水素、並びに、それらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第一のモノマーが共役ジエンであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第一のモノマーがC4−C8の共役ジエン及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ナノ粒子が前記多官能性コモノマーで架橋されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記架橋剤が、ジイソプロペニルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルエーテル、ジビニルスルホン、フタル酸ジアリル、シアヌル酸トリアリル、トリアリルイソシアヌレート、1,2−ポリブタジエン、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、N,N’−(4−メチル−m−フェニレン)ジマレイミド及び/又はトリアリルトリメリテート、C2−C10の多価アルコールのアクリレート及びメタクリレート、2から20個のオキシエチレン単位を有するポリエチレングリコールのアクリレート及びメタクリレート、及び、脂肪族ジ−及び/又はポリオール、又はマレイン酸、フマル酸及び/又はイタコン酸からなるポリエステルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記架橋剤がジビニルベンゼンであることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第一のモノマーがブタジエンであり、前記第二のモノマーがスチレンであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ナノ粒子のコアは、Tgが約60℃又はそれより高いことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ナノ粒子のシェルは、Tgが約0℃より低いことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ナノ粒子のシェルは、Tgが約0℃から約−70℃の間であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ナノ粒子のコアのTgが、前記シェルのTgよりも、少なくとも約60℃高いことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記液状ポリマーは、Mwが約10,000から約120,000であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ナノ粒子がミセルの自己集合によって形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ナノ粒子が、ジビニルベンゼンで架橋されたスチレンを含むコアと、ブタジエンを含むシェルとを有することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記架橋剤を、重合開始剤及びモノビニル芳香族モノマーの前に添加することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記失活剤が、メタノール、エタノール、プロパノール、及びイソプロパノールからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記失活剤が官能化剤であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記官能化剤が四塩化スズであることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記工程(a)の重合又は共重合をアニオン性開始剤で開始させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記工程を同じ反応容器中で行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
請求項1に記載のナノ粒子と液状ポリマーの混合物を作製する工程と、
該混合物をゴム組成物に加える工程と
を含む、ゴム組成物の製造方法。
【請求項25】
ナノ粒子と液状ポリマーでタイヤを製造する方法であって、
請求項1に記載のナノ粒子と液状ポリマーの混合物を作製する工程と、
該混合物をゴム組成物に加える工程と、
該ゴム組成物を成型してタイヤのトレッドにする工程と、
該タイヤのトレッドを用いてタイヤを構築する工程と
を含む、方法。
【請求項26】
コア−シェルタイプのミセルナノ粒子と、
Mwが約10,000から約120,000の液状ポリマーと
から実質的になり、
前記ナノ粒子が前記液状ポリマー内に分散及び混合されていることを特徴とする、組成物。
【請求項27】
前記ナノ粒子と前記液状ポリマーが25:75から40:60の比で存在することを特徴とする、請求項26に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−532422(P2010−532422A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−515229(P2010−515229)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/068838
【国際公開番号】WO2009/006434
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】