説明

ゴム粒子の分取方法

【課題】天然ゴムラテックス中のゴム粒子を、大きさに基づいて分取する有効な方法の提供。
【解決手段】天然ゴムラテックス中のゴム粒子を、大きさに基づいて分取する方法であって、天然ゴムラテックスに、ゴム粒子の表面タンパク質と特異的に結合する検出用抗体を添加し、当該検出用抗体とゴム粒子とが結合した複合体を形成した後、当該複合体を分取することを特徴とする、ゴム粒子の分取方法、前記検出用抗体が、標識物質を結合させた抗体であることを特徴とする前記記載のゴム粒子の分取方法、及び、前記複合体を、前記検出用抗体と特異的に結合する二次抗体であって、標識物質を結合させた抗体を用いて識別し、分取することを特徴とする前記記載のゴム粒子の分取方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ゴムラテックス中のゴム粒子を、大きさに基づいて分取する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ゴムは、弾性を有する高分子であり、主にゴムノキの乳管(laticifer)と呼ばれる細胞内で造られているラテックスという乳液を収集し、これに所望の加工をすることにより製造される(例えば、特許文献1参照。)。乳管は、ゴムノキの樹皮内の形成層の外側に年に数層発達する。ラテックスの収集は、一般的に、ゴムノキの幹にナイフ等を用いて溝状に傷をつけて(タッピング)、切断された乳管から流出するラテックスを回収することにより行われている。
【0003】
天然ゴムは、ゴム製品の主原料として、様々な用途において幅広くかつ大量に用いられている。このため、より高収率でラテックスを得る方法の開発が求められている。より大量のラテックスを採取する方法としては、例えば、ゴムノキの幹に対してエチレンやEthephon(2−クロロエチルホスホン酸)による刺激を加える方法がある。エチレン等を樹皮に塗布することにより、乳管から流出してくるラテックスが傷口で凝固することが抑制されるため、より多くのラテックスを採取することができる。
【0004】
天然ゴムのゴムラテックス(天然ゴムラテックス)中のゴム粒子の粒径分布には、ピークが複数存在しており、天然ゴムラテックス中には様々な大きさのゴム粒子が存在していることが分かっている。また、各ゴム粒子のゴム生合成能が、ゴム粒子の大きさによって異なり、粒子径の小さいゴム粒子のほうが、粒子径の大きいゴム粒子よりもゴム生合成能が高いことが報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
このように、ゴム粒子の特性は粒子径の大きさにより異なるため、天然ゴムラテックスに含まれるゴム粒子の大きさは、天然ゴムラテックスの物性に影響を与えると考えられる。このため、好ましいゴム特性を有する天然ゴムラテックスを調製するためには、天然ゴムラテックスから、粒子径に応じてゴム粒子を分取し、所望の大きさのゴム粒子の含有量が高い天然ゴムラテックスを調製することが理想である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−138102号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】タナカ(Tanaka)、ラバー・ケミストリー・アンド・テクノロジー(RUBBER CHEMISTRY AND TECHNOLOGY)、2005年、第78巻、第694〜704ページ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来は、天然ゴムラテックス中のゴム粒子を、粒子径に応じて精度よく分取することは困難であった。例えば、ゴム粒子は非常に凝集しやすく、このため、タンパク質等を大きさにより分取する際に通常用いられているゲル濾過クロマトグラフィー等の手法を用いた場合には、単独のゴム粒子と凝集体とを分取することは容易であるが、凝集体が混在している状態で、一粒子の粒子径の大きさに基づいてゴム粒子を精度よく分取することが非常に困難である。
【0009】
本発明は、天然ゴムラテックス中のゴム粒子を、大きさに基づいて分取する有効な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、天然ゴムラテックス中のゴム粒子においては、粒子径の大きさに依存して、ゴム粒子の表面に存在しているタンパク質の種類が異なること、及び、ゴム粒子の表面に存在するタンパク質に対する抗体を用いた免疫学的手法を利用することにより、粒子径が特定の範囲である所望の粒子径のゴム粒子を、精度よく分取し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1) 天然ゴムラテックス中のゴム粒子を、大きさに基づいて分取する方法であって、天然ゴムラテックスに、ゴム粒子の表面タンパク質と特異的に結合する検出用抗体を添加し、当該検出用抗体とゴム粒子とが結合した複合体を形成した後、当該複合体を分取することを特徴とする、ゴム粒子の分取方法、
(2) 前記検出用抗体が、標識物質を結合させた抗体であることを特徴とする前記(1)記載のゴム粒子の分取方法、
(3) 前記複合体を、前記検出用抗体と特異的に結合する二次抗体であって、標識物質を結合させた抗体を用いて識別し、分取することを特徴とする前記(1)記載のゴム粒子の分取方法、
(4) 前記表面タンパク質が、SRPP(Small rubber particle protein)であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載のゴム粒子の分取方法、
(5) 前記表面タンパク質が、REF(rubber elongation factor) であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載のゴム粒子の分取方法、
(6) 前記標識物質が磁性体微粒子であり、前記複合体を、磁場を用いて回収することを特徴とする前記(2)〜(5)のいずれか記載のゴム粒子の分取方法、
(7) 前記標識物質が蛍光色素であり、前記複合体を、前記標識物質が発する蛍光に基づき識別して分取することを特徴とする前記(2)〜(5)のいずれか記載のゴム粒子の分取方法、
を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゴム粒子の分取方法により、天然ゴムラテックスから、所望の粒子径のゴム粒子を、精度よく分取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】天然ゴムラテックス中のゴム粒子の粒度分布を示した図である。
【図2】(a)及び(b)は、金粒子標識抗マウスIgG抗体−抗SRPP抗体−ゴム粒子複合体の電子顕微鏡像であり、(c)及び(d)は、金粒子標識抗マウスIgG抗体−抗REF抗体−ゴム粒子複合体の電子顕微鏡像である。
【図3】結合している金粒子の数と、ゴム粒子の粒子径の大きさとの関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のゴム粒子の分取方法に供される天然ゴムラテックスは、ラテックス産生植物から回収されたラテックス(主にポリイソプレン)であれば、特に限定されるものではなく、ラテックス産生植物から回収された直後のものであってもよく、回収後一定期間保存されたものであってもよい。なお、ラテックス産生植物からの天然ゴムラテックスの回収は、常法により行うことができる。
【0015】
本発明のゴム粒子の分取方法に供される天然ゴムラテックスを産生するラテックス産生植物は、ラテックス(主にポリイソプレン)を産生する植物であれば、特に限定されるものではなく、乳管を有しており、乳管中にラテックスが含まれている植物であってもよく、乳管細胞内ではなく細胞間隙中にラテックスが含まれている植物であってもよい。このようなラテックス産生植物として、例えば、トウダイグサ科のパラゴムノキ(Havea brasiliensis)、セアラゴムノキ(Manihot glaziovii)、クワ科のインドゴムノキ(Ficus elastica)、パナゴムノキ(Castilloa elastica)、ラゴスゴムノキ(Ficus lutea Vahl)、マメ科のアラビアゴムノキ(Accacia senegal)、トラガントゴムノキ(Astragalus gummifer)、キョウチクトウ科のクワガタノキ(Dyera costulata)、ザンジバルツルゴム(Landolphia kirkii)、フンツミアエラスチカ(Funtumia elastica)、ウルセオラ(Urceola elastica)、キク科のグアユールゴムノキ(Parthenium argentatum)、ゴムタンポポ(Taraxacum kok−saghyz)、アカテツ科のガタパーチャノキ(palaguium gatta)、バラタゴムノキ(Mimusops balata)、サポジラ(Achras zapota)、ガガイモ科のオオバナアサガオ(Cryptostegia grandiflora)、トチュウ科のトチュウ(Eucommia ulmoides)等が挙げられる。中でも、パラゴムノキ、セアラゴムノキ、ゴムタンポポ等であることが好ましく、工業用天然ゴム原料として汎用されているパラゴムノキであることがより好ましい。
【0016】
後述する図1に示すように、天然ゴムラテックス中には、様々な粒子径のゴム粒子が混在している。そこで、本発明者は、各ゴム粒子の特性を調べるべく、ゴム生合成への関与が示唆されている2つのタンパク質、SRPPとREFの局在を、各タンパク質と特異的に結合する抗体を用いた免疫学的手法により調べたところ、図2及び図3に示すように、SRPPは、比較的粒子径の小さいゴム粒子の表面に多く局在しており、REFは比較的粒子径の大きいゴム粒子の表面に多く局在していることが分かった。このように、ゴム粒子表面に存在するタンパク質の種類が、ゴム粒子の粒子径に依存して異なること、及び、ゴム粒子表面に存在するタンパク質を指標とすることにより、粒子径が特定の範囲であるゴム粒子を、他の大きさのゴム粒子から識別し得ることは、本発明者により初めて見出された知見である。
【0017】
なお、SRPPとREFのいずれも、複数のアイソタイプを有するタンパク質であるが、本発明においては、パラゴムノキ由来のタンパク質であることが好ましい。特に、SRPPとしては配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質であることが、REFとしては配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質であることが、それぞれ好ましい。
【0018】
本発明のゴム粒子の分取方法は、該知見に基づいた方法であり、天然ゴムラテックス中のゴム粒子を、大きさに基づいて分取する方法であって、天然ゴムラテックスに、ゴム粒子の表面タンパク質(ゴム粒子表面に存在しているタンパク質)と特異的に結合する検出用抗体を添加し、当該検出用抗体とゴム粒子とが結合した複合体を形成した後、当該複合体を分取することを特徴とする。すなわち、他の大きさのゴム粒子の表面よりも、粒子径が特定の範囲であるゴム粒子の表面により選択的に発現しているタンパク質を指標とし、当該タンパク質を抗原とする抗体(検出用抗体)を、ゴム粒子表面の当該タンパク質と結合させて当該検出用抗体とゴム粒子とが結合した複合体(検出用抗体−ゴム粒子複合体)を形成した後、当該検出用抗体−ゴム粒子複合体を分取することにより、当該検出用抗体が結合した特定のタンパク質が表面に存在しているゴム粒子を分取することができる。
【0019】
例えば、検出用抗体として、SRPPと特異的に結合する抗SRPP抗体を用いることにより、天然ゴムラテックスから、粒子径が比較的小さいゴム粒子、より具体的には、粒子径が10〜250nmのゴム粒子を分取することができる。一方、検出用抗体として、REFと特異的に結合する抗REF抗体を用いることにより、天然ゴムラテックスから、粒子径が比較的大きいゴム粒子、より具体的には、粒子径が250〜2000nmのゴム粒子を分取することができる。
【0020】
検出用抗体−ゴム粒子複合体の形成は、抗原抗体反応において一般的に行われている条件や手法で行うことができる。例えば、天然ゴムラテックスに、検出用抗体を添加し、30分間〜2時間インキュベーションすることにより、検出用抗体が、ゴム粒子表面の抗原(タンパク質)に結合し、検出用抗体−ゴム粒子複合体が形成される。なお、検出用抗体が添加される天然ゴムラテックスは、適当なバッファー等で希釈したものであることが好ましい。該バッファーとして、例えば、リン酸バッファー、トリスバッファー等が挙げられる。
【0021】
本発明において用いられる検出用抗体は、ゴム粒子表面に発現している目的の表面タンパク質を抗原とする抗体であれば、特に限定されるものではなく、当該技術分野において一般的に用いられているいずれの種類の抗体であってもよい。例えば、モノクローナル抗体であってもよく、ポリクローナル抗体であってもよく、キメラ抗体であってもよい。また、市販されている抗体であってもよく、抗原とするタンパク質又はその部分タンパク質を抗原として動物に免疫し、常法により作製された抗体であってもよい。例えば、SRPPの検出用抗体としては、配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質を抗原として作製された抗SRPP抗体等を用いることができる。また、REFの検出用抗体としては、配列番号4のアミノ酸配列を有するタンパク質を抗原として作製された抗REF抗体等を用いることができる。
【0022】
また、本発明において用いられる検出用抗体は、標識物質を結合させた抗体(標識抗体)であることが好ましい。検出用抗体が標識抗体である場合には、当該標識を利用して簡便に検出用抗体−ゴム粒子複合体を分取することができるためである。標識物質としては、当該技術分野において、抗体の標識に一般的に用いられる標識物質であれば特に限定されるものではない。該標識物質として、フルオレセイン、FITC、ローダミン等の蛍光色素、Quantum Dot、磁性体微粒子、シリカビーズ等の固相担体等が挙げられる。
【0023】
蛍光色素やQuantum Dotを結合させた検出用抗体を用いた場合には、例えば、蛍光シグナルを検出し、目的の蛍光シグナルを発する粒子を分取することが可能なセルソーター等を用いることにより、検出用抗体−ゴム粒子複合体を分取することができる。
【0024】
また、磁性体微粒子を結合させた検出用抗体を用いた場合には、例えば、磁石等を用いて磁性体のみを回収することにより、検出用抗体−ゴム粒子複合体を分取することができる。なお、本発明において、磁性体微粒子とは、磁性を帯びた微粒子を意味し、鉄等の磁性体からなる微粒子であってもよく、樹脂ビーズ等に鉄等の磁性体を埋め込んだ微粒子であってもよい。
【0025】
また、シリカビーズ等の固相担体を結合させた検出用抗体を用いた場合には、例えば、当該固相担体が通過できない多孔質膜を用いたフィルトレーション法により、当該多孔質膜上に固相担体を回収することにより、検出用抗体−ゴム粒子複合体を分取することができる。なお、検出用抗体を結合させる固相担体としては、アフィニティカラム等において一般的に用いられる固相担体を用いることができる。
【0026】
その他、検出用抗体−ゴム粒子複合体は、当該検出用抗体と特異的に結合する二次抗体であって、標識物質を結合させた抗体を用いて識別し、分取することができる。すなわち、当該二次抗体と検出用抗体を結合させることにより、二次抗体−検出用抗体−ゴム粒子三者複合体を形成することができる。二次抗体を、標識物質と結合させた標識抗体とすることにより、形成された三者複合体を、当該標識を利用して簡便に分取することができる。なお、二次抗体に結合させる標識物質は、検出用抗体の標識に用いられる標識物質と同様のものを用いることができ、また、三者複合体の分取方法は、検出用抗体が標識抗体である場合の検出用抗体−ゴム粒子複合体の分取方法と同様に行うことができる。
【0027】
本発明のゴム粒子の分取方法は、このように、ゴム粒子の表面に特定のタンパク質が存在しているゴム粒子を、当該タンパク質を抗原とする抗体を用いた免疫学的手法により分取する方法である。
【実施例】
【0028】
次に実験例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実験例に限定されるものではない。
【0029】
[参考例] 天然ゴムラテックス中のゴム粒子の粒度分布の測定
パラゴムノキから回収された天然ゴムラテックスを、リン酸バッファーで希釈し、この希釈溶液中の各ゴム粒子の粒子径を、粒度分布測定装置LS 13320(ベックマン・コールター社製)を用いて測定した。測定の結果得られたゴム粒子の粒度分布を図1に示す。
この粒度分布から、測定に供された天然ゴムラテックス中のゴム粒子の粒度分布には、少なくとも2つのピークがあり、天然ゴムラテックス中には様々な大きさのゴム粒子が存在していることが確認された。
【0030】
[実験例1]
参考例で用いた天然ゴムラテックスの希釈溶液に、抗SRPP抗体を添加し、室温で1時間インキュベーションした後、金粒子を結合させた金粒子標識抗マウスIgG抗体を添加し、さらに室温で1時間インキュベーションすることにより、金粒子標識抗マウスIgG抗体−抗SRPP抗体−ゴム粒子複合体を形成した。なお、抗SRPP抗体は、大腸菌発現系で発現させた配列番号3のアミノ酸配列を有する組み換えタンパク質を、エピトープとしてマウスに免疫して作製されたポリクローナル抗体(免疫はタカラバイオ社に外注。)を、金粒子標識抗マウスIgG抗体は、British biocell international社のgoat anti-mouse IgG(H and L)(Code No; EM.GMHL20)を用いた。インキュベーション後の溶液中のゴム粒子を、電子顕微鏡を用いて観察した。図2の(a)及び(b)は、金粒子標識抗マウスIgG抗体−抗SRPP抗体−ゴム粒子複合体の電子顕微鏡像である。この結果、抗SRPP抗体は、比較的粒子径の小さいゴム粒子に多く結合していることが確認された。
一方、抗SRPP抗体に換えて、抗REF抗体を用いた以外は、同様にして、金粒子標識抗マウスIgG抗体−抗REF抗体−ゴム粒子複合体を形成した。なお、抗REF抗体は、大腸菌発現系で発現させた配列番号4のアミノ酸配列を有する組み換えタンパク質を、エピトープとしてマウスに免疫して作製されたポリクローナル抗体(免疫はタカラバイオ社に外注。)を用いた。インキュベーション後の溶液中のゴム粒子を、電子顕微鏡を用いて観察した。図2の(c)及び(d)は、金粒子標識抗マウスIgG抗体−抗REF抗体−ゴム粒子複合体の電子顕微鏡像である。この結果、抗SRPP抗体とは逆に、抗REF抗体は、比較的粒子径の大きいゴム粒子に多く結合していることが確認された。
図3は、取得された電子顕微鏡像を画像解析処理により二値化し、結合している金粒子の数と、ゴム粒子の粒子径の大きさとの関係を示した図である。これらの結果からも、抗SRPP抗体は、比較的粒子径の小さいゴム粒子に多く結合しており、抗REF抗体は、比較的粒子径の大きいゴム粒子に多く結合していることが明らかである。
【0031】
これらの結果から、天然ゴムラテックス中のゴム粒子においては、粒子径の大きさに依存して、ゴム粒子の表面に存在しているタンパク質の種類が異なること、特に、SRPPは、比較的粒子径の小さいゴム粒子に多くしており、一方、REFは、比較的粒子径の大きいゴム粒子に多く存在していることが明らかになった。
また、粒子の大きさにより、粒子表面に局在するタンパク質が異なるということから、天然ゴムラテックス中のゴム粒子においては、小さいゴム粒子が生長して大きなゴム粒子となるのではなく、小さいゴム粒子と大きなゴム粒子とでは、生成起源が異なり、異なる合成経路により生成されていることが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のゴム粒子の分取方法を用いることにより、天然ゴムラテックスから、粒子径に応じてゴム粒子を分取し、所望の大きさのゴム粒子の含有量が高い天然ゴムラテックスを調製することができるため、天然ゴムの生産及び製造の分野で特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムラテックス中のゴム粒子を、大きさに基づいて分取する方法であって、
天然ゴムラテックスに、ゴム粒子の表面タンパク質と特異的に結合する検出用抗体を添加し、当該検出用抗体とゴム粒子とが結合した複合体を形成した後、当該複合体を分取することを特徴とする、ゴム粒子の分取方法。
【請求項2】
前記検出用抗体が、標識物質を結合させた抗体であることを特徴とする請求項1記載のゴム粒子の分取方法。
【請求項3】
前記複合体を、前記検出用抗体と特異的に結合する二次抗体であって、標識物質を結合させた抗体を用いて識別し、分取することを特徴とする請求項1記載のゴム粒子の分取方法。
【請求項4】
前記表面タンパク質が、SRPP(Small rubber particle protein)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のゴム粒子の分取方法。
【請求項5】
前記表面タンパク質が、REF(rubber elongation factor) であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のゴム粒子の分取方法。
【請求項6】
前記標識物質が磁性体微粒子であり、前記複合体を、磁場を用いて回収することを特徴とする請求項2〜5のいずれか記載のゴム粒子の分取方法。
【請求項7】
前記標識物質が蛍光色素であり、前記複合体を、前記標識物質が発する蛍光に基づき識別して分取することを特徴とする請求項2〜5のいずれか記載のゴム粒子の分取方法。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−164537(P2010−164537A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9276(P2009−9276)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】