説明

ゴム組成物

【課題】低発熱性および耐摩耗性をさらに向上させたゴム組成物、特にタイヤのトレッド用ゴム組成物として有用なゴム組成物、さらには前記ゴム組成物からなるトレッドを有するタイヤを提供する。
【解決手段】非置換アミノシラン化合物で変性され、かつビニル含量が35重量%以下のブタジエンゴムを10重量%以上含むゴム成分、および該ゴム成分100重量部に対して15〜150重量部のシリカを含むゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低発熱性および耐摩耗性に優れたタイヤを与えるトレッドに好適なゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に要求される特性として、タイヤの転がり抵抗を低減(転がり抵抗性能を向上)させることにより車の低燃費化が進められてきている。
【0003】
近年、さらに車の低燃費化への要求がさらに強まってきており、転がり抵抗性能の向上だけでなく、タイヤの発熱を抑える性能(低発熱性)を改善させることも検討されている。低発熱性はタイヤ部材のなかでも大きな比率を占めるトレッドに強く要求されており、トレッド用のゴム組成物の低発熱化が求められている。
【0004】
ゴム組成物の低発熱性を向上させる1つの方法として、補強用充填剤の配合量を減らす方法がある。しかし、この方法の場合、ゴム組成物の硬度が低下するためタイヤが軟化し、ハンドリング性能(操縦安定性)やウェットスキッド性能が低下したり、耐摩耗性が低下したりするという問題がある。
【0005】
他の方法として、補強用のシリカとして無水シリカと含水シリカをゴム組成物中に併用することにより、低発熱性と耐摩耗性、ウェットグリップ(スキッド)性能をバランスよく向上させる方法が提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかし、さらに低発熱性を向上させることが求められている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−192842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明のゴム組成物は、低発熱性および耐摩耗性をさらに向上させたゴム組成物、特にタイヤのトレッド用ゴム組成物として有用なゴム組成物、さらには前記ゴム組成物からなるトレッドを有するタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、式(I):
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R1、R2およびR3は同じかまたは異なり、いずれもアルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基、またはこれらの誘導体;nは1〜8の整数)で表されるアミノシラン化合物で変性され、かつビニル含量が35重量%以下のブタジエンゴムを10重量%以上含むゴム成分、および
該ゴム成分100重量部に対して15〜150重量部のシリカ
を含むゴム組成物に関する。
【0012】
前記アミノシラン化合物が、式(I)中のR1、R2およびR3がいずれもアルコキシ基である化合物であることが、シリカの分散性が良好な点から好ましい。
【0013】
また、前記シリカが、平均一次粒子径22nm未満のシリカ(1)をゴム成分100重量部に対して5重量部以上含むことが、耐摩耗性が良好な点から好ましい。
【0014】
前記シリカが、さらに平均一次粒子径22nm以上のシリカ(2)をゴム成分100重量部に対して10重量部以上含む混合物であって、かつシリカ(1)とシリカ(2)が数式(1):
(シリカ(2)の平均一次粒子径)/(シリカ(1)の平均一次粒子径)≧1.4
を満たすことが、低発熱性と耐摩耗性のバランスが良好な点から好ましい。
【0015】
前記シリカ(1)とシリカ(2)のシリカ全体における含有量は、数式(2):
(シリカ(2)の含有量)×0.03≦(シリカ(1)の含有量)≦(シリカ(2)の含有量)×14
を満たすことが、ゴムの加工性と耐摩耗性、グリップ性能のバランスが良好な点から好ましい。
【0016】
本発明はまた、上記のゴム組成物をトレッド用ゴムに使用してなるタイヤにも関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低発熱性および耐摩耗性をさらに向上させたゴム組成物、特にタイヤのトレッド用ゴム組成物として有用なゴム組成物、さらには前記ゴム組成物からなるトレッドを有するタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、特定のゴム成分およびシリカを含む。
【0019】
前記ゴム成分は、式(I)で表されるアミノシラン化合物で変性した特定のブタジエンゴムを特定量含む点に特徴がある。
【0020】
かかる特定のブタジエンゴムは、
(1)式(I)で表されるアミノシラン化合物で変性されていること、
(2)ビニル含量が35重量%以下であること、
(3)ゴム成分中に10重量%以上含有されていること
を要件とする。
【0021】
変性用のアミノシラン化合物(I)において、R1、R2およびR3は同じかまたは異なり、いずれもR−またはRO−(Rは炭素数1〜18の1価の炭化水素基)であるのが好ましい。
【0022】
1価の炭化水素基Rとしては、たとえば炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアラルキル基などがあげられる。
【0023】
アルキル基およびアルケニル基は直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、具体例としてはたとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロペニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などがあげられる。
【0024】
アリール基は芳香環上に低級アルキル基などの置換基を有していてもよく、具体例としてはたとえば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などがあげられる。
【0025】
アラルキル基においても芳香環上に低級アルキル基などの置換基を有していてもよく、具体例としてはたとえば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基などがあげられる。
【0026】
1、R2およびR3は同じでも異なっていてもよいが、同じであることが合成が容易で入手しやすい点、低燃費性が良好な点から好ましい。好ましくは、R1、R2およびR3がいずれもエトキシである。
【0027】
メチレン基の繰返し数であるnとしては、1〜8であり、低燃費性が良好な点から1〜5である。
【0028】
式(I)で表されるアミノシラン化合物の具体例としては、限定的ではないが、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどがあげられ、これらのうち、3−アミノプロピルトリエトキシシランが、低燃費性が良好な点から好ましい。
【0029】
かかるアミノシラン化合物によるブタジエンゴムの変性は、たとえばアルカリ金属末端のブタジエンゴムにアミノシラン化合物を室温〜100℃で接触させるという公知の方法により行うことができる。この場合、変性はブタジエンゴム末端で生ずる。
【0030】
変性量は、全ブタジエンゴム分子のうちアミノシラン化合物により変性された変性ブタジエンゴムの占める割合が10〜80重量%であることが、低燃費性とゴムの加工性が良好な点から好ましい。
【0031】
本発明で使用するアミノシラン変性ブタジエンゴムのビニル含量は、35重量%以下である。ビニル含量が35重量%を超えると低発熱性が低下する。好ましいビニル含量は25重量%以下、さらには20重量%以下である。また下限は特に限定されないが、ゼロではなく、低温特性が良好な点から5重量%、さらには8重量%が好ましい。
【0032】
変性されるブタジエンゴムとしては、重量平均分子量が30万〜200万、さらには50万〜150万のものが、低燃費性とゴムの加工性のバランスが良好な点から好ましい。また、ビニル含量も35重量%以下であることが好ましい。
【0033】
ブタジエンゴムのビニル含量は、例えばブルカー・バイオスピン(株)製の溶液NMRを用いて、ビニル基のプロトン信号を定量する条件で測定することができる。
【0034】
かかる特定のアミノシラン変性ブタジエンゴムは、ゴム成分の10重量%以上を占める。含有量が10重量%未満の場合、低発熱化の効果が充分ではなく、本発明の目的を達成できない。好ましい含有量はゴム成分中の15重量%以上である。また、単独でゴム成分を構成してもよいが、ゴムの強度を高めるために他のゴムを併用してもよい。併用する場合、上限は90重量%、さらには80重量%が好ましい。
【0035】
他のゴムとしては、たとえば天然ゴム(NR)、ポリイソプレン合成ゴム(IR)、上記変性ブタジエンゴム以外のブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム(SIBR)などがあげられる。これらゴム成分は単独、もしくは2種以上を組み合わせて用いてもよいが、低発熱性、ウェットスキッド性能の点から、天然ゴム(NR)および/またはイソプレンゴム(IR)を用いることが望ましい。
【0036】
本発明のゴム組成物の他の成分であるシリカは、特に制限はなく、乾式法(無水)シリカでも湿式法(含水)シリカでもよい。シラノール基が多いので強度とグリップ性能に優れることから、湿式法シリカが好ましい。
【0037】
シリカの含有量はゴム成分100重量部に対して15重量部以上、好ましくは40重量部以上、さらに好ましくは60重量部以上である。15重量部未満の場合、シリカの配合による補強効果が充分に発揮できない。シリカの含有量の好ましい上限はゴム成分100重量部に対して150重量部、さらには120重量部である。多くなりすぎるとゴム成分への均一な分散が難しくなり加工性がわるくなる。
【0038】
かかるシリカとしては、平均一次粒子径22nm未満のシリカ(1)と平均一次粒子径22nm以上のシリカ(2)を併用することが好ましい。シリカ(2)を併用することにより、低発熱性とゴムの加工性がさらに向上する。
【0039】
併用する場合、シリカ(1)の含有量はゴム成分100重量部に対して5重量部以上、さらには10重量部以上とすることが強度を向上させる観点から好ましい。上限はゴム成分100重量部に対して140重量部、さらには80重量部であることが、加工性を良好に維持し耐摩耗性を低下させない観点から好ましい。なお、シリカ(2)の含有量はシリカ(1)の含有量の残部である。
【0040】
またゴム組成物をトレッドとするタイヤの転がり抵抗をより向上させる観点からは、全シリカ中にシリカ(1)を10重量%以上、さらには15重量%以上含むこと好ましい。またシリカ(1)の好ましい含有量(全シリカ中)の上限は、破壊強度を維持する点から35重量%、さらには30重量%が好ましい。
【0041】
また、ゴム組成物をトレッドとするタイヤの操縦安定性を良好に保ち、かつ転がり抵抗を低く維持する観点からは、前記シリカ(1)とシリカ(2)のシリカ全体における含有量は、数式(2):
(シリカ(2)の含有量)×0.03≦(シリカ(1)の含有量)≦(シリカ(2)の含有量)×14
を満たすことが好ましい。
【0042】
さらに好ましくは、シリカ(1)の含有量はシリカ(2)の含有量の0.15倍以上、特に0.25倍以上である。シリカ(1)の含有量がシリカ(2)の含有量の0.03倍未満では、ゴム組成物をトレッドとするタイヤの操縦安定性が低下する傾向にある。またシリカ(1)の含有量はシリカ(2)の含有量の7倍以下、特に4倍以下が好ましい。シリカ(1)の含有量がシリカ(2)の含有量の14倍を超えると、ゴム組成物をトレッドとするタイヤの転がり抵抗が増大する傾向にある。
【0043】
シリカ(1)とシリカ(2)を併用する場合、シリカ(1)とシリカ(2)の粒子径比が数式(1):
(シリカ(2)の平均一次粒子径)/(シリカ(1)の平均一次粒子径)≧1.4
満たすことが、2種類のシリカをブレンドする効果、たとえば低発熱性とゴムの加工性の向上、耐摩耗性が良好な点から好ましい。さらに好ましい粒子径比としては、2.0以上である。また上限は特に限定されないが、破壊強度が良好な点から5が好ましく、さらには4がさらに好ましい。
【0044】
なお、本発明でいうシリカの平均一次粒子径とは、凝集構造を構成するシリカの最小粒子単位を円として観察し、その最小粒子の絶対最大長を円の直径として測定した値の平均値を意味する。
【0045】
シリカの平均一次粒子径は、例えば(株)日立製作所製の透過型電子顕微鏡H−7100を用いて、一次粒子100個の直径を観察し、その一次粒子100個の直径の平均値を求めることで、得られる。
【0046】
本発明のゴム組成物にはシランカップリング剤を配合することが好ましい。
【0047】
シランカップリング剤は、とくに限定されないが、具体的には、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系;ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系;3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系;γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ系;3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらのシランカップリング剤は単独でも、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0048】
シランカップリング剤の含有量は、ゴム組成物の破壊強度を向上させ、かつゴム組成物をトレッドとするタイヤの転がり抵抗を低減させる観点から、シリカの含有量(シリカ(1)とシリカ(2)を使用する場合はその合計量)100重量部に対して5重量部以上が好ましく、さらには8重量部以上が好ましい。5重量部未満の場合は破壊強度が低下する傾向がある。上限は15重量部、さらには10重量部である。15重量部を超えるとシランカップリング剤を添加する効果が損なわれる傾向にある。
【0049】
本発明のゴム組成物には、ゴム組成物、特にタイヤのトレッド用のゴム組成物に通常配合される配合剤を本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。そうした配合剤としては、たとえばカーボンブラック、クレーなどの補強剤、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、アロマオイル、ワックスなどがあげられる。
【0050】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を採用することができ、たとえば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練することができる。
【0051】
本発明のゴム組成物はタイヤ用、特にタイヤのトレッド用のゴム組成物に好適であり、トレッドとして用いることで、低発熱性でかつ耐摩耗性に優れたタイヤが得られ、車の低燃費性を向上させることができる。
【実施例】
【0052】
実施例にもとづいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0053】
まず、実施例および比較例において用いた各成分を以下に示す。
SBR:旭化成ケミカルズ(株)製のE15
BR(1):ブタジエンゴムを式(I)においてR1=R2=R3=エトキシでn=3のアミノシラン化合物で変性したもの(試作品;変性ブタジエンゴム量:全ブタジエンゴム中の30重量%;ビニル含量15重量%)(変性条件は以下に示す)
BR(2):日本ゼオン(株)製のNipol BR1220(未変性。ビニル含量1重量%)
BR(3):ブタジエンゴムを3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシランで変性したもの(試作品;変性ブタジエンゴム量:全ブタジエンゴム中の32重量%;ビニル含量14重量%)(変性条件は以下に示す)
BR(4):ブタジエンゴムを式(I)においてR1=R2=R3=メトキシでn=3のアミノシラン化合物で変性したもの(試作品;変性ブタジエンゴム量:全ブタジエンゴム中の31重量%;ビニル含量15重量%)(変性条件は以下に示す)
カーボンブラック:東海カーボン(株)製のシーストNH
シリカ(1):デグッサ社製のULTRASILVN3(平均一次粒子径:15nm)
シリカ(2−1):デグッサ社製のULTRASIL360(平均一次粒子径:28nm)
シリカ(2−2):東ソー・シリカ(株)製のNipsil E−743(平均一次粒子径:43nm)
シランカップリング剤:デグッサ・ヒュルス社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸「椿」
アロマオイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
老化防止剤:住友化学工業(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0054】
(BR(1)の製造)
10Lのオートクレーブに窒素条件下にて、シクロヘキサン6L、ジエチルエーテル55ml、1,3−ブタジエン570gを加え、重合開始剤として1.6M n−ブチルリチウム溶液2.6mlを加え、50℃で4h反応させて、ブタジエンゴムを調製し、ブタジエンゴムを式(I)において、R1=R2=R3=エトキシでn=3のアミノシラン化合物の1Mシクロヘキサン溶液を1.4ml加え、さらに1h反応させた。その後、老化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール10gを加えて、乾燥させ、変性BR(1)を得た。
【0055】
また、得られた変性ブタジエンゴムのビニル含量を、ブルカー・バイオスピン(株)製の溶液NMRを用いて、ビニル基のプロトン信号を定量する条件で測定した。
【0056】
得られた変性ブタジエンゴム量は、全ブタジエンゴム中の30重量%であり、ビニル含量は15重量%であった。
【0057】
(BR(3)の製造)
ブタジエンゴムを3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシランで変性させた以外は、前記(BR(1)の製造)と同様により変性した。
【0058】
また、得られた変性ブタジエンゴムのビニル含量を、前記(BR(1)の製造)と同様の方法で測定した。
【0059】
得られた変性ブタジエンゴム量は、全ブタジエンゴム中の32重量%であり、ビニル含量は14重量%であった。
【0060】
(BR(4)の製造)
ブタジエンゴムを
式(I)においてR1=R2=R3=メトキシでn=3のアミノシラン化合物で変性させた以外は、前記(BR(1)の製造)と同様により変性した。
【0061】
また、得られた変性ブタジエンゴムのビニル含量を、前記(BR(1)の製造)と同様の方法で測定した。
【0062】
得られた変性ブタジエンゴムは、全ブタジエンゴム中の31重量%であり、ビニル含量は15重量%であった。
【0063】
実施例1〜9
硫黄および加硫促進剤を除く各成分を表1の配合内容にしたがって、バンバリー型ミキサーにて4分間混練し、ついで硫黄および加硫促進剤を加えてオープンロールにて4分間混練し、未加硫ゴム組成物を得た。この未加硫ゴム組成物を170℃にて12分間プレス加硫し、加硫シートを製造した。
【0064】
製造した加硫ゴムシートについて、粘弾性試験および耐摩耗性試験を行った。結果を表1および2に示す。
【0065】
(粘弾性試験)
加硫ゴムシートを170℃の条件下で12分間熱酸化させて劣化させた供試ゴムシートを(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータを用い、周波数10Hz、初期歪10%および動歪2%の条件下で30℃における損失正接tanδを測定する。比較例1のtanδを100として、他の実施例および比較例で測定した損失正接tanδを次式に代入して得られる指数(低発熱指数)で評価する。指数が大きくなるほど(tanδが大きくなるほど)発熱が少なく、低発熱性に優れる。
低発熱指数={(比較例1のtanδ)/(各例のtanδ)}×100
【0066】
(耐摩耗性)
ランボーン型摩耗試験機を用いて、20℃、スリップ率20%および試験時間2分間の条件で供試ゴムシートのランボーン摩耗量を測定する。ついで、得られたランボーン摩耗量から容積損失量を算出し、比較例1の容積損失量を100として、他の実施例および比較例で算出した容積損失量を次式に代入して得られる指数(ランボーン摩耗指数)で評価する。指数が大きくなるほど耐摩耗性に優れる(摩耗量が少ない)。
ランボーン摩耗指数={(比較例1の容積損失量)/(各例の容積損失量)}×100
【0067】
比較例1〜3
表1の比較配合に従ったほかは実施例1と同様に未加硫ゴム組成物を調製し、実施例1と同様にしてプレス加硫を行い、比較用の加硫ゴムシートを製造した。製造した比較用の加硫ゴムシートについて、実施例1と同様にして粘弾性試験および耐摩耗性試験を行った。結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、R1、R2およびR3は同じかまたは異なり、いずれもアルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基、またはこれらの誘導体;nは1〜8の整数)で表されるアミノシラン化合物で変性され、かつビニル含量が35重量%以下のブタジエンゴムを10重量%以上含むゴム成分、および
該ゴム成分100重量部に対して15〜150重量部のシリカ
を含むゴム組成物。
【請求項2】
前記アミノシラン化合物が、式(I)中のR1、R2およびR3がいずれもアルコキシ基である化合物である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記シリカが、平均一次粒子径22nm未満のシリカ(1)をゴム成分100重量部に対して5重量部以上含む請求項1または2記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記シリカが、さらに平均一次粒子径22nm以上のシリカ(2)をゴム成分100重量部に対して10重量部以上含む混合物であって、かつシリカ(1)とシリカ(2)が数式(1):
(シリカ(2)の平均一次粒子径)/(シリカ(1)の平均一次粒子径)≧1.4
を満たす請求項3記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記シリカ(1)とシリカ(2)のシリカ全体における含有量が、数式(2):
(シリカ(2)の含有量)×0.03≦(シリカ(1)の含有量)≦(シリカ(2)の含有量)×14
を満たす請求項4記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のゴム組成物をトレッド用ゴムに使用してなるタイヤ。

【公開番号】特開2008−214608(P2008−214608A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316790(P2007−316790)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】