説明

ゴム補強用コード

【課題】機械的特性に優れるとともに、耐疲労性にも優れたゴム補強用コードを提供すること。
【解決手段】1種或いは複数種の補強用繊維を含むゴム補強用コードであって、該補強用繊維が特定の構造反復単位を含む芳香族コポリアミドからなり、その強度が20cN/dtex以上、引張弾性率が500cN/dtex以上の芳香族コポリアミド繊維である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ、ベルト、ホースなどのゴム補強材料に関するものであり、さらに詳しくは、耐疲労性に優れたゴム補強用コードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、タイヤ、ホース及びベルト等のゴム補強材として、いわゆる高強度繊維を補強用繊維として用いたゴム補強用コードは知られており、その補強繊維として、アラミド繊維を用いたもの(例えば、特開平11−181679号公報)、ポリベンザゾール繊維を用いたもの(特開平6−294036号公報)などが数多く提案されている。
【0003】
しかしながら、これら従来の高強度繊維からなるゴム補強用コードは機械的特性には優れているが、繊維の耐摩耗性が不十分であることから、ゴム補強用コードの耐久性、即ち耐疲労性が不十分であるという問題点があり、強度が高く、且つ耐疲労性にも優れた繊維ロープが切望されてきた。
【特許文献1】特開平11−181679号公報
【特許文献2】特開平6−294036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その目的は、機械的特性に優れるとともに、耐疲労性にも優れたゴム補強用コードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明によれば、1種或いは複数種の補強用繊維を含むゴム補強用コードであって、該補強用繊維が下記式(1)および下記式(2)の構造反復単位を含む芳香族コポリアミドからなり、その強度が20cN/dtex以上、引張弾性率が500cN/dtex以上の芳香族コポリアミド繊維であることを特徴とするゴム補強用コード。
【0006】
【化1】

【0007】
【化2】

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、機械的特性に優れるとともに、耐疲労性にも優れたゴム補強用コードが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明でいう芳香族コポリアミドとは、1種又は2種以上の2価の芳香族基が直接アミド結合により連結されているポリマーであって、該芳香族基は2個の芳香環が酸素、硫黄又はアルキレン基で結合されたものであってもよい。また、これらの2価の芳香族基には、メチル基やエチル基などの低級アルキル基、メトキシ基、クロルキなどのハロゲン基等が含まれていてもよい。
【0010】
本発明の芳香族コポリアミドは、従来公知の方法にしたがって、アミド系極性溶媒中で芳香族ジカルボン酸クロライドと芳香族ジアミンとを反応せしめてポリマー溶液を得る。
【0011】
本発明における芳香族ジカルボン酸ジクロライドは従来公知のもので良い。例えばテレフタル酸ジクロライド、2−クロロテレフタル酸ジクロライド、3−メチルテレフタル酸ジクロライド、4、4’−ビフェニルジカルボン酸ジクロライド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド等が挙げられる。
【0012】
本発明においては2種の芳香族ジアミンを用いる。一方の芳香族ジアミンは置換又は非置換パラ型芳香族ジアミンから選ばれた1種であり、パラ型フェニレンジアミン、パラ型ビフェニレンジアミン等の一般的に公知のもので良い。また、もう一方の芳香族ジアミンは置換又は非置換のフェニルベンジミダゾール基を有する芳香族ジアミン類から選ばれた1種であり、中でも入手のし易さ、得られる繊維が有する優れた引張強度、初期モジュラス等の点から、5(6)−アミノ−2−(4−アミノフェニル)ベンジミダゾールが良い。
【0013】
本発明で用いられるアミド系極性溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノンなどを例示することができるが、特に、芳香族ポリアミドの重合からドープ調整、湿式紡糸工程に至るまでの取扱い性や安定性及び害溶媒の毒性等の点から、N−メチル−2−ピロリドンが好ましい。
【0014】
本発明における芳香族コポリアミドは、下記式(1)および下記式(2)の構造反復単位を含む芳香族コポリアミドからなる芳香族コポリアミド繊維である必要があり、下記式(2)の構造反復単位が構造単位の全量に対して30〜100モル%、さらに好ましくは50〜100モル%の範囲で含まれていることが好ましい。該含有量が30モル%未満の場合には重合反応においては反応溶液が濁るという問題が生じ、この様な濁ったドープでは製糸することが困難となることがある。
【0015】
【化3】

【0016】
【化4】

【0017】
本発明における芳香族コポリアミドは、公知のアラミド繊維の製造方法により製糸することができる。例えば、半乾半湿式紡糸法によりドープを凝固液中に押し出し、凝固液から凝固糸として引き取り、水洗工程にて溶媒を十分に除去し、乾燥工程にて充分に乾燥したのち必要に応じて熱処理を行う。
【0018】
本発明における繊維の熱処理温度は400〜500℃の範囲とすることが好ましい。該温度が400℃未満の場合には、繊維が充分に配向結晶化を起こすことができないために充分な引張強度、耐摩耗性が得られない場合がある。また、該温度が500℃を越える場合には、繊維が熱劣化を引き起こすために充分な引張強度、初期モジュラスが得られないことがある。
【0019】
また、本発明で得られる芳香族コポリアミド繊維は引張強度20cN/dtex、初期モジュラス500cN/dtex以上であることが必要である。
【0020】
本発明のゴム補強用コードは通常、2本もしくは3本の下撚りコードで構成され、全繊度は、220から6600dtexであり、単糸dtexは0.55〜10dtexであるがこれに限定されるものではない。
【0021】
このようなゴム補強用コードを製造するには、まず、芳香族コポリアミド繊維を下撚り0.1≦K≦1.5(K=(T×ルートD)/287.4,K:撚り係数、T:撚り数(回/m)、D:繊度)の範囲で加撚処理する。この際、下撚りのKが0.1未満であると収束性が悪く、すぐにコードが扁平になり耐圧縮性が十分発揮できない。また、逆に、Kが1.5を越えると、上撚りをかけた後のコード形状が不良となり、コード強力が低下する。
【0022】
また、下撚りコードにさらに上撚りを掛ける場合は、0.8≦K≦2.5(K=(T×ルートD)/287.4,K:撚り係数、T:撚り数(回/m)、D:繊度)の範囲で加撚処理する。この際、上撚りのKが、0.8未満であると、コード強力を発揮しにくくなり、逆に、Kが2.5を越えると、コード強力の低下が大きく、寸法安定性も悪い。
【0023】
次に、このようにして加撚された芳香族コポリアミド繊維コードをポリエポキシド化合物を含む第一処理剤で処理する。ポリエポキシド化合物としては、一分子中に少なくとも、2個以上のエポキシ基を該化合物100gあたり0.2g当量以上含有する化合物であり、エチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール類とエピクロルヒドリンの如きハロゲン含有エポキシド類との反応生成物、レゾルシン・ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェニール・ホルムアルデヒド樹脂などの多価フェノール類と前記ハロゲン含有エポキシド類反応生成物、過酢酸または過酸化水素などで不飽和化合物を酸化して得られるポリエポキシド化合物、即ち、3,4−エポキシシクロヘキセンエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル)アジペートなどをあげることが出来る。これらの中で、特に、多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応生成物、即ち、多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物が優れた性能を示すので好ましい。
【0024】
かかるポリエポキシド化合物は通常小量の溶媒に溶解したものを公知の乳化剤、例えば、アルキルベンゼンスルフォン酸ソーダ、ジオクチルスルフォサクシネートNa塩などを用いて乳化液または溶媒として使用される。
【0025】
また、ポリエポキシド化合物はアミン系、イミダゾール系硬化剤もしくはポリイソシアネートと公知のオキシム、フェノール、カプロラクタムなどのブロック化剤との付加化合物であるブロックイソシアネートを混合使用することができる。更に、ゴムラテックスとの併用、例えば、スチレンブタジエンラテックス、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックス、アクロニトリルブタジエンラテックスを併用使用することができる。
【0026】
ポリエポキシド化合物(A)及び硬化剤もしくはブロックイソシアネート(B)との混合比は0.05≦(A)/〔(A)+(B)〕≦0.9(重量比)の範囲が好ましい。更にゴムラテックス(C)を併用する場合には、その比率は0.5≦(C)/〔(A)+(B)〕≦15.0(重量比)である。特に、0.1≦(A)/〔(A)+(B)〕≦0.5(重量比)、1.0≦(C)/〔(A)+(B)〕≦10.0(重量比)の範囲になるように配合することが好ましい。ポリエポキシド化合物の濃度としては、0.1〜5.0%が使用される。また、第一処理剤の総固形分濃度は1〜30重量%、好ましくは3〜20重量%になるようにして使用する。
【0027】
そして、上記ポリエポキシド化合物を含む第一処理剤を芳香族コポリアミド繊維コードに対する固形分付着量を0.05〜5.0重量%にコントロールして付着させ、予め加撚した芳香族コポリアミドコードを浸漬処理する。引き続き、100〜150℃で60〜180秒で乾燥し、次いで、150〜250℃で30〜210秒処理する。好ましくは60〜210秒である。
【0028】
第一処理剤で処理された芳香族コポリアミド繊維コードは、次いでレゾルシン−ホルマリン−ラテックス(RFL)を含む接着剤で処理される。RFLはレゾルシンとホルムアルデヒドのモル比が1:0.1〜1:8、好ましくは1:0.5〜1:5、更に好ましくは1:1〜1:4の範囲で用いられる。
【0029】
レゾルシン・ホルマリンとゴムラテックスとの配合比率は固形分重量比で1:1〜1:5であることが好ましい。ゴムラテックスの種類としては、第一処理剤と同じものを用いることができるが、被着体のゴム種によって選択される。特に、本発明においてはポリブタジエンラテックスを配合するのが好ましい。
【0030】
ポリブタジエンラテックスは単独で配合することもできるし、他のゴムラテックスとしては、例えば天然ゴムラテックス、スチレン・ブタジエン・コポリマーラテックス、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエン・ターポリマーラテックス、ニトリルゴムラテックス、水素添加ニトリルゴムラテックス、クロロスルフォン化ポリエチレンラテックス、クロロプレンゴムラテックス等を利用することもできる。
【0031】
上記、RFL処理後、80〜150℃、0.5〜5分間乾燥後、150〜260℃、0.5〜5分間熱処理し硬化させる。撚糸コードに対するRFLの付着量は、繊維重量に対して、1〜10重量%が好ましい。
【0032】
かくして得られた芳香族コポリアミド繊維コードは、そのまま或いは繊維製品に加工され、衣料用、産業用、生活資材等の広い用途に適応可能である。特に、キャップフライやエッジフライなどのタイヤ補強材、ベルト補強材として極めて有用である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の各特性は、以下の方法に従って評価した。
(1)繊維の摩耗試験
耐摩耗性は、JIS L1095のうち摩耗強さを測定するB法に準拠した摩耗試験により、破断までの摩耗回数にて評価した。
【0034】
[実施例1]
パラフェニレンジアミン(PPD)15モル、5(6)−アミノ−2−(4−アミノフェニル)ベンジミダゾール(DAPBI)35モル、テレフタル酸クロライド50モルからなる重合体ドープを紡出した未延伸糸を、熱処理温度480℃にて熱処理を行い、1100dtex、500フィラメント芳香族コポリアミド繊維を得た。
得られた芳香族コポリアミド繊維の引張強度は24.9cN/dtex、引張り弾性率は899cN/dtexであった。
【0035】
得られた繊維に、撚り係数10回/mでS方向に下撚りをかけ、ついで、該下撚りコード2本を下撚りと同じ方向(S撚り)に、撚り係数2の撚りをかけて撚糸コードを作成した。
【0036】
次いで、該コードをエポキシ樹脂の水分散液を用い、処理温度240℃で1段目のディップ処理を行い、引続きRFL液を用いて、235℃で2段目のディップ処理を行なった。得られたディップコードの強力は、610Nであった。得られた繊維およびディップコード(ゴム補強用コード)の特性を表1に示す。
【0037】
[実施例2〜3]
実施例1において、ジアミンの投入量を表1に示す如く変更した以外は、実施例1と同様に実施してディップコードを得た。得られた繊維およびディップコード(ゴム補強用コード)の特性を表1に示す。
【0038】
[比較例1]
補強用繊維として、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)繊維(帝人トワロン製、商標名Twaron)を用い、実施例1と同様の方法にてディップコードを得た。得られた繊維およびディップコード(ゴム補強用コード)の特性を表1に示す。
【0039】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、機械的特性に優れるとともに、耐疲労性にも優れたゴム補強用コードが提供されるので、キャップフライやエッジフライなどのタイヤ補強材、ベルト補強材等の用途分野に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種或いは複数種の補強用繊維を含むゴム補強用コードであって、該補強用繊維が下記式(1)および下記式(2)の構造反復単位を含む芳香族コポリアミドからなり、その強度が20cN/dtex以上、引張弾性率が500cN/dtex以上の芳香族コポリアミド繊維であることを特徴とするゴム補強用コード。
【化1】

【化2】

【請求項2】
芳香族コポリアミドに含まれる下記式(2)の構造反復単位が構造単位の全量に対して30〜100モル%である請求項1記載のゴム補強用コード。
【化3】


【公開番号】特開2006−207067(P2006−207067A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−19488(P2005−19488)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】