説明

ゴム部材の圧縮切断装置および圧縮切断方法

【課題】ゴム部材の切断面の変形およびゴム部材の伸びを防止し、形状および長さについて高い精度をもったゴム部材を提供し、精度およびユニフォーミティの高い製品を製造可能なゴム部材の圧縮切断方法および装置を供する。
【解決手段】アンビル4とカッタ5によりゴム部材2を圧縮切断する方法および圧縮切断装置において、ゴム部材2をアンビル4とカッタ5間に配置し、ゴム部材2をアンビル4とカッタ5により圧縮し、アンビル4とゴム部材2間に、剥離手段20の剥し部材21を挿入し、ゴム部材2を、引き剥がし切断することを特徴としたゴム部材の圧縮切断方法および圧縮切断装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ等の製造に用いられるゴム部材の圧縮切断装置および圧縮切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ等の製造に用いられる各種のゴム部材、例えばインナーライナ等は、未加硫のゴム組成物が押出し装置から押出され、ローラダイにより長尺シート状に形成され、長尺シート状ゴム部材を所定長さに切断されることにより形成されていた。このようなゴム部材を所定長さに切断する切断方法として、クラッシュカッタを具備した圧縮切断装置による切断方法が知られている(特許文献1の図4参照)。
【0003】
図25は、この従来のゴム部材の圧縮切断方法による圧縮切断装置60の側面図である。
【0004】
この圧縮切断装置60による切断方法は、未加硫前の長尺シート状ゴム部材61をアンビル62上に載置し、アンビルの62上方に配設されたクラッシュカッタ63を下方に移動し、クラッシュカッタ63の下端部をアンビル62に向けて押し付け、アンビル62とクラッシュカッタ63の間で発生する圧縮力でもってゴム部材61を圧縮し、その後アンビル62に粘着した長尺シート状ゴム部材61を切断面を中心として左右に引っ張り引き剥がすことにより切断していた。
【0005】
前述のように切断されたゴム部材61は、ゴム部材61がクラッシュカッタ63の圧縮力によりアンビル62に押し付けられてアンビル62に強く粘着しているので、これらのゴム部材61を左右方向に引っ張って引き剥がす際に、強く粘着した切断面の一部が伸張してゴム部材61の切断面の形状の変形が生じ、さらにゴム部材61の全長に亘って延びが発生し、切断された部材ごとにその形状や長さが異なり、ゴム部材61の形状、長さの精度が劣っていた。
【0006】
このような形状、長さの異なるゴム部材を用いてタイヤを製造すると、切断面における変形の生じたゴム部材を重ね合わせることにより、ジョイント部分の形状を一定の形状に形成することが難しく、また所定長さが定まらないゴム部材を重ね合わせて製品を製造するので、製品ごとにジョイント部分のゴム部材の重ね量のばらつきが発生し、製品精度が低下し、タイヤのユニフォーミティが低下する課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−251709号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ゴム部材の切断面の変形およびゴム部材の伸びを防止し、形状および長さについて高い精度をもったゴム部材を提供し、このゴム部材を用いて製造した製品のジョイント部分の重ね合わせを一定なものとし、精度およびユニフォーミティの高い製品を製造可能なゴム部材の圧縮切断方法および装置を供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決するために、請求項1記載の発明は、アンビルとカッタによりゴム部材を圧縮切断する方法において、前記ゴム部材を前記アンビルと前記カッタ間に配置し、前記ゴム部材を前記アンビルと前記カッタにより圧縮し、前記アンビルと前記ゴム部材間に、剥離手段の剥し部材を挿入し、前記ゴム部材を、引き剥がし切断することを特徴とするゴム部材の圧縮切断方法である。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のゴム部材の圧縮切断方法において、前記ゴム部材を前記アンビルと前記カッタ間に配置した後に、前記ゴム部材を前記アンビルおよび前記カッタを挟んで位置する一対の挟持手段により挟持し、前記アンビルと前記ゴム部材間に、剥離手段の剥し部材を挿入した後に、前記一対の挟持手段をゴム部材の圧縮された面を挟んで離れる方向に移動させ、前記ゴム部材を引き剥がし切断することを特徴とするものである。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の圧縮切断方法において、前記剥し部材は板状部材であり、前記板状部材は、板の厚さが前記アンビル側は薄く、前記アンビルから離れるに従って厚くなるよう形成された、前記板状部材の断面形状が楔型であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の圧縮切断方法において、前記剥離手段は、帯状可撓性膜を備え、前記剥離手段は、前記剥し部材が出入りする開口部を備え、前記帯状可撓性膜の一端縁は、前記開口部の上端縁に固定され、前記帯状可撓性膜は、前記開口部の下端縁から前記開口部の外側に引き出し可能であり、前記可撓性膜の他端縁は、引き戻し方向に負勢されることを特徴とするものである。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の圧縮切断方法において、前記ゴム部材はシート状長尺ゴム部材であり、前記シート状長尺ゴム部材は、前記挟持手段により、引出し搬送されることを特徴とするものである。
【0014】
請求項6記載の発明は、アンビルとカッタとを備え、前記アンビルと前記カッタの押圧によりゴム部材が切断される圧縮切断装置において、前記アンビルに隣接して配設される剥離装置を備え、前記剥離装置は、前記アンビルと前記ゴム部材の間に挿入脱出可能な剥し部材を備えていることを特徴とする圧縮切断装置である。
【0015】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の圧縮切断装置において、前記アンビルと前記カッタを挟んで位置し、前記ゴム部材を挟持する一対の挟持手段を備えたことを特徴とするものである。
【0016】
請求項8記載の発明は、請求項6または請求項7記載の圧縮切断装置において、前記剥し部材は板状部材であり、前記板状部材は、板の厚さが前記アンビル側は薄く、前記アンビルから離れるに従って厚くなり、前記板状部材の断面形状が楔型であることを特徴とするものである。
【0017】
請求項9記載の発明は、請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の圧縮切断装置において、前記剥離装置は、帯状可撓性膜を備え、前記剥離装置は、前記剥し部材が出入りする開口部を備え、前記帯状可撓性膜の一端縁は、前記開口部の上端縁に固定され、前記帯状可撓性膜は、前記開口部の下端縁から前記開口部の外側に引き出し可能であり、前記可撓性膜の他端縁は、引き戻し方向に負勢されることを特徴とするものである。
【0018】
請求項10記載の発明は、請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の圧縮切断装置において、前記ゴム部材はシート状長尺ゴム部材であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、圧縮切断されてアンビルに粘着したゴム部材は、剥離装置によりアンビルから剥がされた後、引き剥がし切断されるので、当該ゴム部材の切断面の変形および部材の伸びを防止することが可能となり、形状および長さについて高い精度をもったゴム部材を提供し、このゴム部材を用いて製造した製品のジョイント部分の重ね合わせを一定なものとし、精度およびユニフォーミティの高い製品を製造することができる。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、ゴム部材がアンビルおよびカッタを挟んで位置する一対の挟持手段により挟持された後、ゴム部材がアンビルおよびカッタにより圧縮されるので、ゴム部材がアンビルとカッタに圧縮される際にゴム部材の位置が変わらず、高い寸法精度を維持することができる。また、ゴム部材は挟持手段に挟持されているので、圧縮された後に容易に引き剥がすことができる。
【0021】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または請求項2記載の発明の効果に加えて、剥し部材は板状部材であり、板の厚さが前記アンビル側は薄く、前記アンビルから離れるに従って厚くなるよう形成されているので、アンビルとアンビルに粘着しているゴム部材の間に剥し部材を容易に挿入することができ、圧縮されたゴム部材の断面形状を保持したまま剥がすことが可能となり、ゴム部材の断面形状および長さの精度をさらに高いものとすることができる。
【0022】
請求項4記載の発明によれば、請求項1ないし請求項3記載の発明の効果に加えて、剥離手段は帯状可撓性膜を備えており、剥離手段は剥し部材が出入りする開口部を備え、帯状可撓性膜の一端縁は剥し部材が出入りする開口部の上端縁に固定され、帯状可撓性膜は開口部の下端縁から開口部の外側に引き出し可能であり、可撓性膜の他端縁は、引き戻し方向に負勢されるので、剥し部材がアンビルとゴム部材の間に挿入されるべく開口部から外側に出るに従い、帯状可撓性膜が剥し部材に沿って開口部下端縁から引き出され、先にゴム部材に接触した部分の帯状可撓性膜がゴム部材に対して移動することなく順次接触する帯状可撓性膜が引き出されるので、ゴム部材とアンビルの間に剥し部材を挿入する際の抵抗が減少し、挿入することがさらに容易となり、ゴム部材の変形および長さの精度をさらに高めることが可能となる。
【0023】
請求項5記載の発明によれば、請求項1ないし請求項4記載の発明の効果に加えて、ゴム部材はシート状長尺ゴム部材であり挟持手段により引出し搬送されるので、シート状長尺ゴム部材を順次圧縮切断して、連続的に所定長さのシート状ゴム部材を製造することができる。
【0024】
請求項6記載の発明によれば、圧縮切断されてアンビルに粘着したゴム部材は、剥離装置によりアンビルから剥がされ、引き剥がし切断されるので、当該ゴム部材の切断面の変形および部材の伸びを防止することが可能となり、形状および長さについて高い精度をもったゴム部材を提供し、このゴム部材を用いて製造した製品のジョイント部分の重ね合わせを一定なものとし、精度およびユニフォーミティの高い製品を製造することができる。
【0025】
請求項7記載の発明によれば、請求項6記載の発明の効果に加えて、アンビルとカッタを挟んで位置したゴム部材を挟持する一対の挟持手段を備えているので、ゴム部材がアンビルとカッタに圧縮される際に移動することがなく、高い寸法精度を維持することができる。また、ゴム部材は挟持手段に挟持されているので、圧縮された後に容易に引き剥がすことができる。
【0026】
請求項8記載の発明によれば、請求項6または請求項7記載の発明の効果に加えて、前記剥し部材は板状部材であり、板の厚さがアンビル側は薄く、アンビルから離れるに従って厚くなり、板状部材の断面形状が楔型であるので、アンビルとアンビルに粘着しているゴム部材の間に剥し部材を容易に挿入することができ、圧縮されたゴム部材の断面形状を保持したまま剥がすことが可能となり、ゴム部材の断面形状および長さの精度をさらに高いものとすることができる。
【0027】
請求項9記載の発明によれば、請求項6ないし請求項8記載の発明の効果に加えて、剥離装置は帯状可撓性膜を備え、帯状可撓性膜は、一端縁が前記剥し部材が出入りする開口部の上端縁に固定され、前記帯状可撓性膜は、前記開口部の下端縁から前記開口部の外側に引き出し可能であり、前記可撓性膜の他端縁は、引き戻し方向に負勢される。
【0028】
請求項10記載の発明によれば、請求項6ないし請求項9記載の発明の効果に加えて、記ゴム部材はシート状長尺ゴム部材である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例における圧縮切断装置の斜視図である。
【図2】圧縮切断装置による圧縮切断工程を示した側面図である。
【図3】圧縮切断装置による圧縮切断工程を示した側面図である。
【図4】圧縮切断装置による圧縮切断工程を示した側面図である。
【図5】圧縮切断装置による圧縮切断工程を示した側面図である。
【図6】圧縮切断装置による圧縮切断工程を示した側面図である。
【図7】圧縮切断装置による圧縮切断工程を示した側面図である。
【図8】圧縮切断装置による圧縮切断工程を示した側面図である。
【図9】圧縮切断装置による圧縮切断工程を示した側面図である。
【図10】圧縮切断装置による圧縮切断工程を示した側面図である。
【図11】圧縮切断装置による圧縮切断工程を示した側面図である。
【図12】圧縮切断装置による圧縮切断工程を示した側面図である。
【図13】他の剥離装置を備えた圧縮切断装置の要部縦断面図である。
【図14】他の剥離装置を備えた圧縮切断装置による圧縮切断工程を示した要部縦断面図である。
【図15】他の剥離装置を備えた圧縮切断装置による圧縮切断工程を示した要部縦断面図である。
【図16】他の剥離装置を備えた圧縮切断装置による圧縮切断工程を示した要部縦断面図である。
【図17】他の剥離装置を備えた圧縮切断装置による圧縮切断工程を示した要部縦断面図である。
【図18】さらに他の剥離装置を備えた圧縮切断装置による圧縮切断工程を示した要部縦断面図である。
【図19】さらに他の剥離装置を備えた圧縮切断装置による圧縮切断工程を示した要部縦断面図である。
【図20】さらに他の剥離装置を備えた圧縮切断装置による圧縮切断工程を示した要部縦断面図である。
【図21】さらに他の剥離装置を備えた圧縮切断装置による圧縮切断工程を示した要部縦断面図である。
【図22】さらに他の剥離装置を備えた圧縮切断装置による圧縮切断工程を示した要部縦断面図である。
【図23】アンビルおよびカッタの表面にシボ加工を施した圧縮切断装置の要部側面図である。
【図24】圧縮されたゴム部材に冷却風を送風する送風手段を備えた圧縮切断装置の要部側面図である。
【図25】従来の圧縮切断装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0030】
以下、本発明に係る一実施例について図1ないし図12に基づき説明する。
【0031】
本実施例の圧縮切断装置1およびこれによる圧縮切断方法は、インナーライナ等のタイヤ部材となる未加硫シート状ゴム部材2を、所定長さに圧縮切断するものである。
【0032】
図1は、本実施例の圧縮切断装置1を図示した斜視図である。
シート状ゴム部材2は、インナーライナ等のタイヤを形成するための部材であって、未加硫ゴム材料が押出され、ローラダイにより長尺シート状に形成された後、ロール3により巻き取られ、順次適当に繰り出されるようになっており、図2において右側がシート状ゴム部材1が供給される上流側であり、左側が下流側である。
【0033】
圧縮切断装置1は、シート状ゴム部材2が切断される際に金床となる上面が平面に形成されたアンビル4と、アンビル4間との間の圧縮力によりシート状ゴム部材2を圧縮切断するクラッシュカッタ5が備えられている。
【0034】
クラッシュカッタ5は、アンビル4の上方に配設され、ロッド6を介してシリンダ、モータまたは機械的な他の手段による駆動装置7により鉛直方向に上下動される。駆動装置により、クラッシュカッタ5が下方に移動された際には、クラッシュカッタのカッタ先端部5aがアンビル4に押し付けられるようになっている。
【0035】
アンビル4およびクラッシュカッタ5の幅、すなわちシート状ゴム部材2の供給される方向に対し直角方向の幅は、シート状ゴム部材2の幅よりも広く形成されている。
【0036】
圧縮切断装置1は、アンビル4およびクラッシュカッタ5に対して、シート状ゴム部材2の上流側に上流側挟持手段10が、下流側に下流側挟送手段11が備えられている。上流側挟持手段10および下流側挟持手段11は、それぞれ上側挟持部材12、下側挟持部材13を備えており、上側挟持部材12は、ロッド14を介してシリンダまたはモータ等により駆動される駆動装置15により鉛直方向に上下動されるようになっている。上側挟持部材12が下方に移動され上側挟持部材12と下側挟持部材とでシート状ゴム部材2を挟み込むと、挟持手段はシート状ゴム部材2を挟持する挟持状態となり、上側挟持部材12が駆動装置により上方に移動されると、挟持手段はシート状ゴム部材の挟持を解除する挟持解除状態となる。
【0037】
前記下流側挟持手段11は、シート状ゴム部材2の長尺方向に沿って配設された図示されないレール等の上を、図示されない駆動手段により水平方向に移動されるようになっている。
【0038】
この下流側挟持手段11を挟持状態にしてシート状ゴム部材2を挟み、下流側に水平移動させることによりシート状ゴム部材2をロール3から引き出すことができる。
【0039】
また、圧縮切断後に下流側挟持手段11の挟持状態を維持したまま下流方向に移動させると、所定長さに圧縮切断されたシート状ゴム部材2aを圧縮装置1から搬出し、図示されないベルトコンベア等の搬送手段に移動させた後に挟持解除状態として、次の工程に送り出すことができる。
【0040】
さらに、圧縮切断装置1は、クラッシュカッタ5により圧縮されてアンビル4上に粘着したシート状ゴム部材2を剥がすための剥離装置20を具備している。
【0041】
剥離装置20は、アンビル4の上流側に隣接して設けられ、剥し部材としての剥し板21を備えている。剥し板21は、板状部材であり、その板厚がアンビル側は薄く、アンビルから離れるに従って厚くなるように形成され、断面形状が略楔形に形成されている。剥し板21の幅は、シート状ゴム部材2の幅よりも広い幅に設定されている。
【0042】
剥し板21は、ロッド22を介してシリンダ、モータまたは機械的な他の手段等である駆動装置23により、シート状ゴム部材2に沿って上流方向または下流方向に移動されるようになっている。剥し板21を駆動装置23により下流方向に移動すると、アンビル6上に粘着したシート状ゴム部材2と、アンビル4との間に剥し板21が挿入され、上流方向に移動するとシート状ゴム部材2とアンビル4の間から脱出される。
【0043】
この圧縮切断装置1による、シート状ゴム部材2の圧縮切断方法の工程について以下説明する。図2ないし図12は、この圧縮切断方法の工程を示す側面図である。
【0044】
図2に示すように、シート状ゴム部材2はクラッシュカッタ5およびアンビル4の間、および上流側挟持手段10及び下流側挟持手段11のそれぞれの上側挟持部材12と下側挟持部材の間に配置され、上流側挟持手段10および下流側挟持手段11の上側挟持部材12が駆動手段15により下方に移動され挟持状態となり、シート状ゴム部材2は上流側挟持手段11および下流側挟持手段12により挟持される。
【0045】
その後図3および図4に示すように、クラッシュカッタ5はロッド6を介して駆動装置7により下降され、シート状ゴム部材2はクラッシュカッタ5によりアンビル4に押し付け圧縮され、そのクラッシュカッタ3は駆動装置7により上方に移動され元の位置へ戻される。シート状ゴム部材1は、クラッシュカッタ5により圧縮されるので、アンビル4の表面に粘着した状態となる。
【0046】
図5および図6に示すように、剥離装置20の剥し板21が駆動装置23により下流側へと移動され、シート状ゴム部材2とアンビル4との間に剥し板21が挿入されると、アンビル4に粘着したシート状ゴム部材2が剥がされる。
【0047】
その後図7に示すように、上流側挟持手段10および下流側挟持手段11の挟持状態が維持されたまま、駆動手段により上流側挟持手段10が上流側に、下流側挟持手段11が下流に水平移動され、圧縮切断されたシート状ゴム部材2は切断面を中心に左右に引き剥がされ切断され、所定長さのシート状ゴム部材2aを得ることができる。
【0048】
図8に示すように、下流側挟持手段11は挟持状態のままさらに下流側に移動し、圧縮切断された所定長さのシート状ゴム部材2aを圧縮装置1から搬出し、図示されないベルトコンベア等の搬送手段に移動させた後、挟持解除状態とし、所定長さのシート状ゴム部材2aを次の工程に送り出す。
【0049】
図9ないし図11に示すように、下流側挟持手段11は挟持解除状態にされたまま、下流側挟持手段11の上部挟持部材12と下部挟持部材13とでシート状ゴム部材2の端部2bを挟持可能な位置まで上流方向に水平移動され、その後上部挟持部材12を下方に移動させ挟持状態とする。その後上流側挟持手段10の上部挟持部材12を上方に移動させ、挟持解除状態とする。
【0050】
図12に示すように、下流側挟持手段11はシート状ゴム部材2を挟持したまま所定位置に戻り、シート状ゴム部材2は所定長さロール3から引き出される。その後上流側挟持手段10の上部挟持部材12を下方に移動させ、挟持状態とする。図3から図12の工程を繰り返すことにより、シート状ゴム部材は繰り返し所定長さに圧縮切断される。
【0051】
本実施例では、圧縮切断されてアンビル4に粘着したシート状ゴム部材2は、剥離装置20によりアンビル4から剥がされた後、引き剥がし切断されるので、シート状ゴム部材2の切断面の変形および部材の伸びを防止することができる。
【0052】
さらに、シート状ゴム部材2が、アンビル4およびクラッシュカッタ5を挟んで位置する一対の挟持手段である上流側挟持手段10および下流側挟持手段11の上側挟持部材12および下側挟持部材13により挟持された後、シート状ゴム部材2がアンビル4およびクラッシュカッタ5により圧縮されるので、シート状ゴム部材2は圧縮される際に位置が変わることがなく、高い寸法精度を維持することができる。
【0053】
また、シート状ゴム部材は上流側挟持手段10および下流側挟持手段11に挟持されているので、圧縮された後に容易に引き剥がすことができる。
【0054】
剥し板21は、板状部材であり、板の厚さがアンビル側は薄く、アンビル4から離れるに従って厚くなるよう断面形状が略楔型に形成されているので、アンビル4とアンビル4に粘着しているシート状ゴム部材2の間に剥し板21を容易に挿入することができ、圧縮されたシート状ゴム部材2の断面形状を保持したまま剥がすことが可能となり、切断されたシート状ゴム部材2の断面形状および長さの精度を高いものとすることができる。
【0055】
以上より本実施例による圧縮切断方法および圧縮切断装置1では、形状および長さについて高い精度をもったシート状ゴム部材2を提供することが可能となり、この切断されたシート状ゴム部材2を用いて製造したタイヤのジョイント部分の重ね合わせを一定なものとし、精度およびユニフォーミティの高いタイヤを製造することができる。
【実施例2】
【0056】
次に他の剥離装置30を適用したゴム部材圧縮切断方法および装置の実施例を図13ないし図17に示す。
【0057】
本実施例の圧縮切断装置は、実施例1の剥離装置20に代えて剥離装置30を具備している。剥離装置30はアンビル4の上流側に隣接して配設され、断面形状が略楔型の剥し板31、およびロッド32を介して剥し板を移動させる駆動装置34を備えている。
【0058】
図13に示すように、剥離装置30は、ケース34を備えており、ケース34には剥し板31が出入りすることのできる開口部35が設けられ、さらにケース34の下の面には、後述する帯状可撓性膜36の幅より若干広い幅に、帯状可撓性膜36を引き出すことのできるように開口されている開口部34aが、また上流側の壁面に開口部34bが設けられ、剥し板31を移動させるロッド32が開口部34bを貫通している。
【0059】
また、剥離装置30は、樹脂、紙あるいは布等の可撓性のある素材を用い、剥し板31の幅と略同じ幅であって帯状に形成された帯状可撓性膜36を具備している。帯状可撓性膜36の一端縁36aは、開口部35の上端縁35aに留具37により固定され、剥し板31の先端部を覆うようにケース34内に引き戻され、前記開口部34aからケース34の外側に引き出されている。開口部34aのうち帯状可撓性膜36に接する部分は、帯状可撓性膜36が容易に引き出されるように、曲面に形成されている。
【0060】
帯状可撓性膜36の他端縁36bには錘39が付けられており、錘39は帯状可撓性膜36を引き戻し方向に負勢する負勢手段38として働いている。
【0061】
本実施例による圧縮切断方法および圧縮切断装置を、図13ないし図17に示す。
【0062】
図13のシート状ゴム部材2は、図示されていない上流側挟持手段10および下流側挟持手段11により、実施例1と同様に挟持されている。さらに、図14に示すように、クラッシュカッタ5をアンビル4に押し付けることにより、シート状ゴム部材2を圧縮する。
【0063】
図15に示すように、カッタ5は所定位置に戻され、剥離装置30の剥し板31を、アンビル4とアンビル4に粘着したシート状ゴム部材2の間に挿入する方向に移動させる。帯状可撓膜36の一端縁36aは開口部35の上端縁34aに留具37により固定されているので、剥し板30がアンビル側に移動するにつれて、負勢手段38である錘39の負勢力に反して、帯状可撓性膜36が開口部35よりアンビル側に引き出されていく。帯状可撓膜36の一端縁36aは開口部35の上端縁34aに固定されているので、帯状可撓性膜36のうち、引き出されてシート状ゴム部材2に先に接した部分は、シート状ゴム部材2に対して相対的に移動することがない。剥し板31がさらに移動し、剥し板31と帯状可撓性膜36によりアンビル4に粘着したシート状ゴム部材2はアンビル4から剥され、帯状可撓性膜36の上に乗った状態になる。
【0064】
図16に示すように、シート状ゴム部材2は、挟持手段10、11により反対方向に引き離されて切断される。
【0065】
図17に示すように、剥し板36がロッド32を介して駆動手段33によりケース34内に移動されると、それに伴い帯状可撓性膜36は負勢手段38により開口部35よりケース34内に引き戻される。
【0066】
本実施例の圧縮切断方法および圧縮切断装置は、剥し板31がアンビル4とシート状ゴム部材2の間に挿入されるにつれ、帯状可撓性膜36が開口部35の下端縁35bから順次引き出されるので、帯状可撓性膜36のうち、引き出されてシート状ゴム部材2に先に接した部分は、シート状ゴム部材2に対して相対的に移動することがなく、シート状ゴム部材2とアンビル4の間に剥し板31を挿入する際の抵抗が低くなり、また、粘着性の高いシート状ゴム部材2と剥し板31との間の摩擦を軽減することが可能となり、粘着したシート状ゴム部材2をアンビル4から剥す際に、シート状ゴム部材の断面形状が変形することがなく、シート状ゴム部材2の断面形状の変形防止およびシート状ゴム部材2長さの精度を高めることができる。
【実施例3】
【0067】
本実施例の圧縮切断方法および装置は、実施例1の剥離装置20に代えて剥離装置40を具備しており、剥離装置40は前述の剥離装置30の負勢手段38に代えて負勢手段48が適用されている。
【0068】
剥離装置40は、剥し板41、剥し板41をロッド42を介して移動させる駆動手段43、ケース44、帯状可撓性膜46および負勢手段48を備えている。ケース44には剥し板41が出入りすることのできる開口部45が設けられ、さらに上流側の壁面に開口部44bが設けられ、剥し板41を移動させるロッド42が開口部44aを貫通している。帯状可撓性膜46の一端縁46aは、ケース44の開口部45の上端縁45aに留具47により固定され、他端縁46bは、負勢手段48によりケース44内に引き戻されるように負勢されている。
【0069】
負勢手段48は、円筒上の巻取り部50を備え、巻取り部50は剥し板41の下面の上流側にブラケット49により支持されている。前記帯状可撓性膜46の他端縁46bは巻取り部50に取り付けられており、巻取り部50は、図示されないぜんまいバネ等により帯状可撓性膜46を巻取る方向に負勢され、負勢手段48として働いている。
【0070】
本実施例の圧縮切断方法および装置は、負勢手段48が適用されているので、実施例2の効果と同様に、帯状可撓性膜46の巻き取り引き出しが容易であり、シート状ゴム部材2の切断面の変形防止およびシート状ゴム部材2の長さの精度を高めることができる。
【実施例4】
【0071】
また、図21に示すように、前記実施例1から実施例3に用いたアンビル4およびクラッシュカッタ5を、その表面にシボ加工を施したアンビル50およびクラッシュカッタ51に代えてもよい。アンビル50およびクラッシュカッタ51にシボ加工を施すことにより、圧縮切断時のアンビル50へのシート状ゴム部材2の粘着力を低下させ、さらに製品精度を向上することができる。
【実施例5】
【0072】
さらにまた、図22に示すように、前記実施例1から実施例3の圧縮切断装置に、クラッシュカッタ5の近傍に冷却風を送る送風手段52を設け、冷却風をシート状ゴム部材2の圧縮切断面に送風し、シート状ゴム部材を冷却してもよい。圧縮切断面が冷却されることにより、シート状ゴム部材の粘着力を低下させ、製品精度を向上させることができる。
【0073】
前記実施例1から実施例3の圧縮切断方法および圧縮切断装置においては、剥離装置はアンビルの上流側に隣接して配置されているが、剥離装置を、アンビルに対して下流側に隣接して配置し、または、アンビルの側方に隣接して剥し板の移動方向がシート状ゴム部材の流れ方向に対して直角になるように配置してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…圧縮切断装置、2…シート状ゴム部材、3…ロール、4…アンビル、5…クラッシュカッタ、6…ロッド、7…駆動装置、
10…上流側挟持手段、11…下流側挟持手段、12…上側挟持部材、13…下側挟持部材、14…ロッド、15…駆動手段、
20…剥離装置、21…剥し板、22…ロッド、23…駆動装置、
30…剥離装置、31…剥し板、32…ロッド、33…駆動装置、34…ケース、35…開口部、36…帯状可撓性膜、37…留具、38…負勢手段、39…錘、
40…剥離装置、41…剥し板、42…ロッド、43…駆動装置、44…ケース、45…開口部、46…帯状可撓性膜、47…留具、48…負勢手段、49…ブラケット、50…ぜんまいバネ、
55…アンビル、56…クラッシュカッタ、57…送風手段、58…送風口、
60…圧縮切断装置、61…シート状ゴム部材、62…アンビル、63…カッタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンビルとカッタによりゴム部材を圧縮切断する方法において、
前記ゴム部材を前記アンビルと前記カッタ間に配置し、
前記ゴム部材を前記アンビルと前記カッタにより圧縮し、
前記アンビルと前記ゴム部材間に、剥離手段の剥し部材を挿入し、
前記ゴム部材を、引き剥がし切断することを特徴としたゴム部材の圧縮切断方法。
【請求項2】
前記ゴム部材を前記アンビルと前記カッタ間に配置した後に、
前記ゴム部材を前記アンビルおよび前記カッタを挟んで位置する一対の挟持手段により挟持し、
前記アンビルと前記ゴム部材間に、剥離手段の剥し部材を挿入した後に、
前記一対の挟持手段をゴム部材の圧縮された面を挟んで離れる方向に移動させ、
前記ゴム部材を引き剥がし切断することを特徴とする請求項1記載のゴム部材の圧縮切断方法。
【請求項3】
前記剥し部材は板状部材であり、
前記板状部材は、板の厚さが前記アンビル側は薄く、前記アンビルから離れるに従って厚くなるよう形成された、前記板状部材の断面形状が楔型であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧縮切断方法。
【請求項4】
前記剥離手段は、帯状可撓性膜を備え、
前記剥離手段は、前記剥し部材が出入りする開口部を備え、
前記帯状可撓性膜の一端縁は、前記開口部の上端縁に固定され、
前記帯状可撓性膜は、前記開口部の下端縁から前記開口部の外側に引き出し可能であり、
前記可撓性膜の他端縁は、引き戻し方向に負勢されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の圧縮切断方法。
【請求項5】
前記ゴム部材はシート状長尺ゴム部材であり、
前記シート状長尺ゴム部材は、前記挟持手段により引出し搬送されることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の圧縮切断方法。
【請求項6】
アンビルとカッタとを備え、前記アンビルと前記カッタの押圧によりゴム部材が切断される圧縮切断装置において、
前記アンビルに隣接して配設される剥離装置を備え、
前記剥離装置は、前記アンビルと前記ゴム部材の間に挿入脱出可能な剥し部材を備えていることを特徴とする圧縮切断装置。
【請求項7】
前記アンビルと前記カッタを挟んで位置し、前記ゴム部材を挟持する一対の挟持手段を備えたことを特徴とする請求項6記載の圧縮切断装置。
【請求項8】
前記剥し部材は、板状部材であり、
前記板状部材は、板の厚さが前記アンビル側は薄く、前記アンビルから離れるに従って厚くなり、前記板状部材の断面形状が楔型であることを特徴とする請求項6または請求項7記載の圧縮切断装置。
【請求項9】
前記剥離装置は、帯状可撓性膜を備え、
前記剥離装置は、前記剥し部材が出入りする開口部を備え、
前記帯状可撓性膜の一端縁は、前記開口部の上端縁に固定され、
前記帯状可撓性膜は、前記開口部の下端縁から前記開口部の外側に引き出し可能であり、
前記可撓性膜の他端縁は、引き戻し方向に負勢されることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の圧縮切断装置。
【請求項10】
前記ゴム部材はシート状長尺ゴム部材であることを特徴とする請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の圧縮切断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−76195(P2012−76195A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225533(P2010−225533)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】