説明

ゴム配合剤

【課題】鶏糞、豚糞、牛糞等の畜糞燃焼灰を原料として得られる畜糞燃焼灰中和物を主成分とするゴム配合剤を提供する。
【解決手段】畜糞を燃焼して得られる燃焼灰を酸で中和し、乾燥し、粉砕して得られる畜糞燃焼灰中和物を天然ゴムに配合して、そのゴム組成物のアクロン摩耗試験を行うことで、畜糞燃焼灰中和物の耐摩耗性向上機能を見出した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムの機能を補強するために使用されるゴム配合剤に関し、より詳細には、ゴムに配合することで耐摩耗性を高める畜糞燃焼灰中和物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤのトレッドに用いられるゴム組成物においては、氷上摩擦力を高めるために、トレッドに発泡ゴムを使用したり、中空粒状体や、ガラス繊維、植物性粒状体等の硬質材料を配合することがなされている。
【0003】
また、特許文献1には、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム等のカルシウム化合物を加硫剤と併用することによって、ゴム組成物の耐酸性を著しく強化するゴム組成物が開示されている。他にも、特許文献2には、可塑化戻りの少ないシリコンゴム組成物を得るための多孔質リン酸カルシウムの粒子からなる改質剤が、特許文献3には、ジエン系ゴムに、家畜骨等から得られる多孔性の天然ヒドロキシアパタイト粉末を加えて、スタッドレスタイヤやスノータイヤなどの冬用タイヤのトレッドに用いられるゴム組成物が開示されている。
【0004】
一方、特許文献4には、天然骨由来の天然ヒドロキシアパタイト多孔体を骨充填材料等に用いることが記載されている。また、特許文献5には、天然ヒドロキシアパタイトを牛骨等の家畜骨から効率的に生産するための方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭61−29618号公報
【特許文献2】特開2004−285291号公報
【特許文献3】特開2010−285536号公報
【特許文献4】特開平5−208044号公報
【特許文献5】特許第2534499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、産業廃棄物、とくに鶏糞、豚糞、牛糞等の畜糞燃焼灰を原料として得られる畜糞燃焼灰中和物を主成分とするゴム配合剤を提供することを目的とするものである。自動車や航空機用のタイヤ、産業機械類の部品(ベルト、ロールなど)、建設資材(耐震ゴム、改質アスファルトなど)、靴類など摩擦により劣化するゴム改良のため、ゴムメーカーでは日々、耐摩耗性を発揮する素材の探索に努めている。それゆえ、耐摩耗性を有する素材を開発し、ゴム配合剤としてメーカーに提供することは意義がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明のゴム配合剤は、畜糞燃焼灰中和物を主成分とすることを第1の特徴とし、また、畜糞が鶏糞であることを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は以下の優れた効果を奏する。
そのままでは強アルカリ性で使用できなかった畜糞燃焼灰を、中和し、微粉末にすることで、ゴム配合剤としての機能、すなわち、耐摩耗性を高めるという機能を見出し、ゴム配合剤として使用可能にした。また、産業廃棄物として廃棄されていた畜糞を、機能性素材として利用できることを見出したことにより、環境負荷軽減という二次的な効果も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る畜糞燃焼灰からの畜糞燃焼灰中和物製造工程を示すフローチャートである。
【図2】図1に示す工程で製造した畜糞燃焼灰中和物を添加したゴムの引張試験の結果を示すグラフである。
【図3】図1に示す工程で製造した畜糞燃焼灰中和物を添加したゴムのアクロン摩耗試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のゴム配合剤は、鶏糞燃焼灰中和物を微粉砕したものである。
【0011】
鶏糞は、主に宮崎県、鹿児島県下の養鶏場より集荷されたもので、水分含量が30〜50%である。
【0012】
鶏糞燃焼灰は、当該鶏糞を700〜1200℃、好ましくは800〜1100℃、より好ましくは900〜1000℃で燃焼させることで製造できる。鶏糞燃焼灰の水分含量は通常1%以下である。
【0013】
鶏糞燃焼灰中和物は、当該鶏糞燃焼灰100部に対し、硫酸、塩酸、リン酸等の鉱酸を、例えば正リン酸(リン酸濃度75%品)を15〜35部、好ましくは20部〜30部、より好ましくは23部〜27部を添加・混合して得られる。水分含量は通常、10〜20%である。混合機は市場で売買されているバッチ式、連続式を問わず、均一に混合できるものならいずれを使用しても良い。
【0014】
鶏糞燃焼中和物粉砕品は、当該鶏糞燃焼灰中和物を粉砕機で粉砕した後、100メッシュ、好ましくは200メッシュ、より好ましくは400メッシュの篩を通すことで得られる。粉砕に使用される粉砕機は、遠心式粉砕機、気流式粉砕気、グラインダー等微粉砕できるものなら何でも良い。ゴム配合剤は、ゴムへの配合のし易さから、微粒子であればあるほど良いとされており、市販品の中には1ミクロン以下の製品も存在する。
【0015】
現在、ゴム配合剤として多用されているブラックカーボン、二酸化ケイ素などは、一般的に、ゴム100部に対し、20〜60部程度配合されて、耐摩耗性などの機能を発現している。鶏糞燃焼灰中和物粉砕品は、天然ゴム100部に対し5部以上、好ましくは10部以上配合することで、鶏糞燃焼灰中和物粉砕品無添加時と比較し、3%以上の耐摩耗性改善効果を示す。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[鶏糞燃焼灰]
本発明者らは、鶏糞を燃料にして蒸気の製造及びその蒸気を用いた発電を実施している。鶏糞(含水率35%)を900〜1000℃で燃焼させると、原料の10%程度に減容された燃焼灰(含水率1%以下)が得られる。蛍光X線(装置:株式会社島津製作所製 エネルギー分散型蛍光X線分析装置 EDX−800HS)による鶏糞燃焼灰の無機成分組成分析例は次のとおりである。
リン:9.3%
カリウム:34.4%
カルシウム:29.1%
マグネシウム:4.1%
pH12(10%水懸濁液)
この鶏糞燃焼灰類似の灰として、水処理汚泥燃焼灰、豚糞・牛糞等の畜糞燃焼灰が挙げられる。
【0017】
[鶏糞燃焼灰中和物製造工程]
図1に示すように、先ず鶏糞燃焼灰(2.4kg、含水率1%以下)に正リン酸(リン酸濃度75%)をpH7になるように0.6kgを添加した。その際、発熱し、水蒸気が発生するが、常温に戻るまで攪拌した(ステップS1)。これにより、ウェット(含水)状態の鶏糞燃焼灰中和物(3.3kg、含水率16.9%)が得られた。次いで、得られた鶏糞燃焼灰中和物を105℃の温風で約12時間送風乾燥して、鶏糞燃焼灰中和物の乾燥品(2.8kg;含水率2.3%)を得た(ステップS2)。この鶏糞燃焼灰中和物の乾燥品の蛍光X線(装置:株式会社島津製作所製 エネルギー分散型蛍光X線分析装置 EDX−800HS)による無機成分組成は、リン:17.6%、カリウム:25.6%、マグネシウム:4.4%で、pHは7.1(10%水懸濁液)であった。次いで、得られた鶏糞燃焼灰中和物の乾燥品を超遠心粉砕機(レッチェ製:スクリーンサイズ0.5mm)にて粉砕(ステップS3)した後、メッシュサイズ25μmで篩い分けを行い(ステップS4)、平均粒径8.2μmの鶏糞燃焼灰中和物の微粉砕品を得た。
【0018】
以下、上記工程により得られた鶏糞燃焼灰中和物の粉砕品を、天然ゴムの配合剤として評価した。その配合処方を表1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】
[ゴム組成物の調製]
表1の配合処方に従って、硫黄、MBTS(加硫促進剤)以外の成分を加圧ニーダーで加温しながら混練し、次いでゴムロールに移して硫黄、MBTSを添加、さらに混練し、比較例1と実施例1、2を得た。
【0021】
[ゴム配合剤としての評価]
キュラストメーター(加硫試験機)によるスコーチタイム及び加硫速度の試験、引張試験、アクロン摩耗試験を行った。結果を表2と図2及び図3のグラフに示す。
【0022】
【表2】

【0023】
表2から分かるように、スコーチタイムは用量依存的に早まる傾向を示し、この加硫条件では作業性が懸念されるが、アクロン摩耗試験では用量依存的に摩耗体積が低下し、耐摩耗効果があることが分かった。また、引張試験でも10分加硫条件下で、用量依存的に強くなる傾向が見られた。本発明のゴム配合剤は天然ゴムに配合して耐摩耗性を向上させることが明らかになったことから、天然ゴムが利用される自動車や航空機用のタイヤ、産業機械類の部品(ベルト、ロールなど)、建設資材(耐震ゴム、改質アスファルトなど)、靴類など摩擦により劣化するゴムの改良のため、広く利用することができる。さらに天然ゴム以外にもスチレンゴム(SBR、SBS)、ブタジエンゴム(BR)、シリコンゴムなど他のゴムの物性改良に貢献する可能性も容易に推定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜糞燃焼灰中和物を主成分とするゴム配合剤。
【請求項2】
畜糞が鶏糞であることを特徴とする請求項1記載のゴム配合剤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のゴム配合剤を含むゴム組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−201721(P2012−201721A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65392(P2011−65392)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(598123312)南国興産株式会社 (8)
【Fターム(参考)】