説明

ゴルフクラブ、その特性調節方法及びシャフト交換方法

【課題】ヘッドに対するシャフトの取り付け方向を変更することによりライ角やスライス角を調節することができ、しかもヘッドに対するシャフトケースの着脱が容易であるゴルフクラブを提供する。
【解決手段】ゴルフクラブは、ヘッド1のホゼル3にシャフト4を、シャフトケース5、螺子部材6を介して取り付けたものである。シャフトケース5のシャフト挿入穴5aにシャフト4を差し込み、接着剤を用いて固着しておく。シャフトケース5を、ヘッド1のホゼル3に差し込み、螺子部材6の雄螺子6bをホゼル3の雌螺子3aに螺じ込む。シャフトケース5のシャフト挿入穴5aはシャフトケース5の軸心に対して斜交方向となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブに係り、特にシャフト交換を容易に行うことができるゴルフクラブに関する。また、本発明は、このゴルフクラブの特性調節方法及びシャフト交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブは、シャフトの先端部にヘッドが取り付けられたものである。シャフトの基端側にグリップが装着されている。
【0003】
従来の一般的なゴルフクラブヘッドにあっては、ヘッドに直にホゼル穴が設けられており、シャフトは該ホゼル穴に挿入され、接着剤によって固着されている。なお、この接着剤は、一般にエポキシ系接着剤が用いられている。シャフト交換に際しては、ホゼル部分を加熱してエポキシ樹脂硬化物よりなる組織を壊すことにより、シャフトを引き抜く。
【0004】
特開平11−178954には、ヘッド本体とホゼルとを別体とし、このホゼルをヘッド本体にねじによって固定したゴルフクラブヘッドが記載されている。この特開平11−178954では、ホゼルの下端側に板状のネック部を設け、このネック部をヘッド本体の挿着部に差し込み、ねじで固定している。このように板状のネック部をヘッド本体に固定することにより、ボールをヒットしたインパクト時にネック部にしなりを生じさせ、シャフトとホゼルとの結合部に生じる応力集中が緩和される。
【特許文献1】特開平11−178954号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特開平11−178954のゴルフクラブヘッドでは、ヘッド本体とホゼルとの結合強度及び剛性が不足し、力強いインパクト感が得られない。また、ホゼル位置が過度に高くなる。また、ライ角やスライス角などは調節することができない。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、ヘッドに対し、それとは別体のシャフトケース付きシャフトを強固に固定することができ、しかもヘッドに対するシャフトケースの着脱が容易であるゴルフクラブと、このゴルフクラブのシャフト交換方法とを提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明はライ角やスライス角等の特性を調節することができるゴルフクラブと、その特性調節方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のゴルフクラブは、ヘッドのホゼルにシャフトの先端が取り付けられたゴルフクラブにおいて、シャフト挿入穴を有した略円筒形のシャフトケースの該シャフト挿入穴に該シャフトの先端が挿入されて固着され、該ホゼルのホゼル穴内に該シャフトケースが挿入され、該ホゼル穴の軸心に対しシャフト挿入穴の軸心が斜め方向となっており、該シャフトケースに外嵌すると共に、該ホゼルの該上端側に着脱可能に螺着された環状の螺子部材によって該シャフトケースが該ホゼルに固定されており、該螺子部材は該シャフトケースの外周囲に配置され、シャフトには非接触であり、該ホゼル穴の内周面及びシャフトケースの外周面の少なくとも一部は、軸心線と垂直方向の断面形状が三角以上の多角断面形状となっていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2のゴルフクラブは、請求項1において、前記シャフトケースの軸心線方向の途中の外周面に凸部が設けられており、前記ヘッドは、ヘッド本体と、該ヘッド本体に固着された前記ホゼルとを備えており、該ホゼルの該上端側の内周面に雌螺子が刻設されており、前記螺子部材の外周面に雄螺子が設けられており、該雄螺子をホゼルの該雌螺子に螺合させることにより該螺子部材が該ホゼルに螺着されており、該螺子部材の下端面が前記凸部を下方に押圧することにより該シャフトケースが固定されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3のゴルフクラブは、請求項1において、該螺子部材の下側に弾性体が介在されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4のゴルフクラブは、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記シャフトケースのシャフト挿入穴に前記シャフトが挿入され、接着剤によって固着されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5のゴルフクラブは、請求項1ないし4のいずれか1項において、該シャフトケースの下端側が先細形の多角断面形状部となっていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6のゴルフクラブは、請求項1ないし5のいずれか1項において、前記シャフトケースの下端側とホゼル穴の内面との間に弾性体が介在していることを特徴とするものである。
【0014】
請求項7のゴルフクラブは、請求項1ないし6のいずれか1項において、前記シャフトにグリップが装着されており、該グリップは、真円形の断面形状を有することを特徴とするものである。
【0015】
請求項8のゴルフクラブの特性調節方法は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のゴルフクラブの特性を調節する方法であって、前記螺子部材を回して外した後、シャフトケースをその軸心回りに回転させて向きを変え、その後、前記螺子部材をホゼル穴に螺着させてシャフトケースをホゼル穴に固定することを特徴とするものである。
【0016】
請求項9のゴルフクラブのシャフト交換方法は、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のゴルフクラブのシャフトを新たなシャフトに交換する方法であって、予め新たなシャフトを新たなシャフトケースに固着して新たなシャフトケース・シャフト連結体を作成しておき、ゴルフクラブに取り付けられているシャフトケース・シャフト連結体をヘッドから取り外し、このヘッドに新たなシャフトケース・シャフト連結体を取り付けることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のゴルフクラブ及びその特性調節方法にあっては、螺子部材を緩めて外すと、シャフトケースをホゼル穴から抜き出すことができる。そこで、このシャフトケースを若干回転させて向きを変えてホゼル穴に再度差し込み、螺子部材を螺着する。このシャフトケースは、そのシャフト挿入穴の軸心がホゼル穴の軸心に対し斜め方向(例えば斜交方向)となっているので、このようにシャフトケースの向きを変えると、ゴルフクラブのヘッドに対するシャフトの取り付け方向が変更され、ライ角やスライス角が変更される。
【0018】
従って、全く同一のシャフト及び同一のヘッドからなるゴルフクラブにおいて、ライ角又はスライス角のみを調節することができる。
【0019】
また、シャフトケースとして全く同型のシャフトケースを用意しておき、このシャフトケースに別特性のシャフトを固着してシャフトケース・シャフト連結体としておき、このシャフトケース・シャフト連結体をそれまでのヘッドシャフトケース・シャフト連結体と交換して当該ヘッドに取り付けることにより、シャフトのみが異なったゴルフクラブを得ることができる。シャフトケースとしてシャフト挿入穴の傾き角が異なったものを用い、シャフトについては同一特性のシャフトを用いるようにしてもよく、シャフトについても別特性のものを用いるようにしてもよい。
【0020】
近年、ゴルファーが自分の技量にあったゴルフクラブを探すために、コンピュータや高速カメラなどを使って、自分にマッチしたゴルフクラブを探すシステムが開発されてきている。このようなシステムは、ヘッドスピードや打ち出し角度などを基に個々の市販クラブをベースに打ち比べて探すようにしたシステムである。
【0021】
これに対し、本発明のゴルフクラブによれば、同じヘッドに対してシャフトのみを付け替えて、シャフトのみの違いを実感したり、同一のシャフトとヘッドとの位置関係のみを変更して重心距離やプログレッションを変更し、打ち出されたボールの飛球特性(打ち出し角やスピン)の違いを容易に実感したりすることができる。また、その日のプレーヤーの調子に応じてシャフトを交換したり、シャフトは同一のまま、ライ角やスライス角を調整するために、ヘッドに対するシャフトの取り付け方向を変更したりすることもできる。
【0022】
本発明のゴルフクラブ及びシャフト交換方法にあっては、螺子部材を緩めて外すと、シャフトケースをホゼル穴から抜き出すことができる。予めシャフトにシャフトケースを取り付けた新たなシャフトケース・シャフト連結体をこのホゼルに差し込み、螺子部材を螺着することにより、シャフト交換を行うことができる。
【0023】
本発明のシャフト交換方法によれば、従来のように加熱によって接着剤の組織を壊してシャフトを取り外し、新たなシャフトを再度接着剤で取り付けるという面倒な手間及び時間を省くことができる。そのため、試打したばかりのゴルフクラブのヘッドからシャフトを取り外し、このヘッドに異なる特性の別シャフトを取り付けて直ちに試打を行うことができるので、ゴルフショップ等でゴルファーが適切なゴルフクラブを見出すことが極めて容易となる。また、ヘッドの固体差を考慮することなくシャフトの評価を行うことができる。さらに、ヘッドとシャフトを同一としたまま、ライ角やスライス角を容易に変えることもできる。
【0024】
本発明では、シャフトケースがホゼル内に挿入され、螺子部材によって該シャフトケースを固定しているので、シャフトケースのホゼルへの取り付けが強固なものとなる。
【0025】
本発明では、螺子部材がシャフトケースの外周囲に配置されており、螺子部材はシャフトに対し非接触となっているので、螺子部材を回しても螺子部材がシャフトを擦ることがなく、シャフトに傷付きが生じない。
【0026】
請求項2のゴルフクラブにあっては、螺子部材をホゼルの上端側に螺じ込むと、螺子部材の下端がシャフトケースの凸部を押圧し、シャフトケースが固定される。
【0027】
請求項3によると、螺子部材と該凸部との間のガタツキを防止することができる。
【0028】
請求項4のゴルフクラブにあっては、シャフトをシャフト挿入穴に差し込んで強固に接着することができる。
【0029】
請求項5のゴルフクラブによると、シャフトケースの周方向の位置決め(位相決め)が行われる。また、ヘッドとシャフトケースとの間での回転が防止される。
【0030】
請求項6のゴルフクラブによると、シャフトケースとホゼル内面との間の衝撃や振動が吸収される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図は実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの正面図、第2図は第1図の状態からシャフトケースを180°回転させて再装着したゴルフクラブの正面図、第3図及び第4図は第2図の状態からシャフトケースを正逆方向にそれぞれ90°回転させて再装着したゴルフクラブの正面図である。第5図は第4図のゴルフクラブヘッドのヒール側の側面図である。第6図は第4図のVI−VI線断面図、第7図はホゼル、シャフトケース、螺子部材及びシャフト先端部の斜視図である。
【0032】
このゴルフクラブは、ヘッド1のホゼル3にシャフト4を、シャフトケース5及び螺子部材6を介して取り付けたものである。
【0033】
このヘッド1は、ヘッド本体2と、このヘッド本体2に取り付けられたホゼル3とを有する。このヘッド1は中空のウッド型のものであり、フェース部2aと、クラウン部2bと、ソール部2cと、トウ部2dと、ヒール部2eと、バック部2fとを有する。
【0034】
第6図の通り、クラウン部2bのフェース部2a側かつヒール部2e側に円筒状のホゼル設置部2gが設けられている。このホゼル設置部2gは、上端が開放し、下端が閉じた円筒形であり、シャフトケース5の差込方向に延在している。このホゼル設置部2g内にホゼル3が上方から挿入され、溶接、ろう付け、接着、焼き嵌め、冷し嵌めなどの適宜の固着手段によって固着されている。ただし、ホゼルをヘッド本体と一体に設けてもよい。例えば、ホゼルをヘッド本体と一体に鋳造によって作成し、寸法精度を高めるためにCNC加工機で加工するようにしてもよい。
【0035】
第6,7図に示す通り、ホゼル3は、上端から下端に向けて軸心線方向にホゼル穴3Hが穿説された略円筒形である。このホゼル穴3Hの内周面は、上部が円筒形であり、下部下端ほど小径の正四角錐形(正確には切頭正四角錐形)であるが、後述の通り、正三角錐形、正六角錐形、正八角錐形などの正多角錐形であってもよい。
【0036】
ホゼル穴3Hの入口側すなわちホゼル上端側の内周面には雌螺子3aが設けられている。この実施の形態では、この雌螺子3aに後述の螺子部材6gがねじ込まれる。
【0037】
この雌螺子3aに引き続いて、縮径方向に段差面3bが設けられ、この段差面3bよりも奥側が円筒部3cとなっている。この円筒部3cよりも奥側の内面は、奥側ほど小径となる正四角錐形となっており、ホゼル3の軸心と斜交する4面の斜面3dが設けられている。対向する1対の斜面3d,3d同士の交差角度(挟角)は10〜30°特に15〜20°程度が好適である。
【0038】
シャフトケース5は、ホゼル3の円筒部3cよりも極くわずかに小径の筒形部材であり、上端側から下端側に向って、シャフト4の挿入用のシャフト挿入穴5aが設けられている。シャフトケース5の外周面は、下部を除き円筒形である。シャフト挿入穴5aの内周面も、下部を除き円筒形である。
【0039】
この実施の形態では、シャフトケース5の外周面の軸心線aに対しシャフト挿入穴5aの軸心線aは斜交している。軸心線a,aの交差角度θ(第6図)は0.1〜5.0°、特に0.25〜3.0°程度が好ましい。
【0040】
なお、軸心線a,aは交差しなくてもよく、「ねじれ」の関係にあってもよい。即ち、軸心線a,aは交わることがなく、軸心線aが軸心線aの近傍を通り抜ける関係であってもよい。この場合の軸心線a,aの角度については、軸心線aをヒール側に最も傾いた状態とし、軸心線aを含み飛球線方向に延在する面を想定し、この面と軸心線aとの交差角度が上記角度θの範囲となるようにすればよい。
【0041】
シャフトケース5の外径は12〜20mm特に13〜15mm程度が好ましく、シャフト挿入穴5aの内径は8〜10mm特に8.5〜9.0mm程度が好ましい。ホゼル3の外径は13〜20mm特に15〜19mm程度が好ましい。
【0042】
シャフト挿入穴5aの奥底面からシャフトケース5の下端面に空気抜き用の小孔5bが穿設されている。
【0043】
シャフトケース5の軸心線方向(長手方向)の途中の外周面に凸部5tが設けられている。この実施の形態では、凸部5tはシャフトケース5を周回するフランジ状である。この凸部5tは段差面3bに上方から当接する直径を有している。
【0044】
シャフトケース5の下端側の外面は、下端ほど小径となる四角錐形(正確には切頭四角錐形)であり、4面の斜面5cが設けられている。斜面5cは、シャフトケース5の軸心線を挟んで対称に設けられている。対向する1対の斜面5c,5c同士の交差角度は、ホゼル3の斜面3d,3dの交差角度と同一である。シャフトケース5の斜面5cの大きさは、ホゼル3の斜面3dと同一とされてもよく、両者間に弾性体を介在させる場合にはわずかに小さなものとされてもよい。
【0045】
シャフトケース5の上端には、上方ほど小径となるテーパ形外周面を有した拡径部5gが一体に設けられている。この拡径部5gは、偏心した円錐台形状となっており、その上面にシャフト挿入穴5aが開口している。拡径部5gの下面はスペーサ7f(第6図)を介して螺子部材6の上面に重なっている。
【0046】
シャフトケース5の拡径部5gの下側に引き続く部分が小径部5h(第6図)となっている。この小径部5hに螺子部材6が回転自在に外嵌している。シャフトケース5の該小径部5hよりも下側に、前記凸部5tが設けられている。螺子部材6の下端面は、この凸部5tにスペーサ6gを介して当っている。
【0047】
なお、図示は省略するが、シャフト挿入穴5aの上端側の内周縁に角度20〜45°程度の面取りを形成してシャフト4を差し込み易くしてもよい。
【0048】
螺子部材6は、略円環形であり、その上半部6aに比べて下半部が小径とされ、下半部の外周面に雄螺子6b(第7図)が刻設されている。第7図の通り、上半部6aの上端側の外周面には、6個の平面部6eが設けられ、ナット状となっている。この平面部6eにモンキー、スパナ等の工具をかけて螺子部材6を回転させることができる。
【0049】
ゴルフクラブを組み立てるには、第7図のように、シャフト4の先端をシャフトケース5のシャフト挿入穴5aに差し込んで接着剤を用いて固着しておく。好ましくは、この接着剤をシャフト4の先端部の外周面に塗着し、シャフト挿入穴5aの最奥部まで差し込む。接着剤としてはエポキシ系接着剤などが好適である。
【0050】
シャフトケース5に小孔5bが設けられているので、シャフト4をシャフト挿入穴5aに差し込んだときに空気が該小孔5bを通って流出する。
【0051】
このように螺子部材6が装着されると共にシャフトケース5が固着されたシャフトケース・シャフト連結体の該シャフトケース5を、ホゼル穴3Hに差し込む。なお、この実施の形態では、シャフトケース5の斜面5c及びシャフトケース5の先端面に、薄い(例えば厚さ0.5〜5mm程度)のゴム、エラストマー等の薄片状の弾性体8を塗着、貼り付けなどにより設けておく。弾性体8は、予めシャフトケース5に設けておいてもよく、シャフトケース・シャフト連結体を構成してからシャフトケース5に設けてもよい。
【0052】
シャフトケース・シャフト連結体の該シャフトケース5を、斜面5cと斜面3dとを重ね合わせるようにホゼル穴3Hに挿入した後、螺子部材6の雄螺子6bをホゼル穴3Hの上部内周面の雌螺子3aに螺じ込む。
【0053】
これにより、第3〜6図の通り、螺子部材6の下端面がシャフトケース5の凸部5tを押圧し、シャフトケース5の斜面5cが弾性体8を介してホゼル3の斜面3dに押し付けられ、シャフトケース5がホゼル3に固定される。シャフトケース5とシャフト4とは接着剤によって強固に接着されているので、これにより、シャフト4とヘッド1とが一体となったゴルフクラブが完成する。
【0054】
なお、第4〜6図では、シャフト4は最も飛球線方向、すなわち、フェース部2a側に傾いた状態となっている。後述の第1図は、第2図の如く、この傾き方向は変更可能である。
【0055】
このゴルフクラブからシャフトケース5を抜き出すには、螺子部材6を緩み方向に回す。この螺子部材6の雄螺子6bがホゼル3の雌螺子3aに螺合しているので、螺子部材6が緩み方向に回転すると、螺子部材6は上方へ移動(螺進)し、螺子部材6が拡径部5gを押し上げ、シャフトケース5が上方に移動する。これにより、シャフトケース5がホゼル3から離脱する上方向へ移動するので、容易に取り外すことができる。
【0056】
シャフトケース5をホゼル3から取り出した後、90°又は180°回転させて向きを変え、再度ホゼル穴3Hに挿入し、螺子部材6を雌螺子3aにねじ込む。シャフト挿入穴5aの軸心線aがホゼル穴3Hの軸心線aに対して角度θだけ傾いている。そのため、シャフトケース5を90°又は180°回すことにより、シャフト4の傾き方向を変えることができる。第1図では、シャフト4は最もヒール側に傾いている。第2図では、シャフト4は最もトウ側に傾いている。第3図ではシャフト4は最も後方へ傾いた状態となっている。
【0057】
このようにシャフト4の傾きの向きを変えることによりライ角及びスライス角を変えることができる。
【0058】
ライ角に関して説明すれば、第1図で最も小さく、フラットライであり、第2図で最も大きく、アップライである。第3〜6図では両者の中間となっている。
スライス角に関して説明すれば、第4〜6図ではフェース面が最も閉じたフックフェースとなり、第3図ではフェース面が最もオープンとなったスライスフェースとなり、第1図及び第2図では両者の中間となっている。
【0059】
このように、この実施の形態によると、ヘッド1に対するシャフト4の傾き方向を変更することができ、ライ角及びスライス角を変えることができる。
【0060】
このゴルフクラブにあっては、拡径部5gをテーパ形としているが、平たいフランジ形の拡径部を設け、その上側にフェルールを装着するようにしてもよい。
【0061】
この実施の形態では、螺子部材6はシャフトケース5に外嵌してホゼル3に螺じ込まれるようになっており、螺子部材6を回転させるときにシャフト4に接触しない。このため、シャフト4の傷付きが防止される。
【0062】
なお、ホゼル3の斜面3dとシャフトケース5の斜面5cとの間にゴム、エラストマー、合成樹脂などよりなる薄片状の弾性体8を介在させているので、インパクト時の衝撃や振動を吸収することができる。
【0063】
この実施の形態では、斜面3d,5cを設けることにより、ホゼル穴3Hの穴奥側の内面と、シャフトケース5の下端側の外面とを、それぞれ四角錐形状とし、この斜面3d,5c同士を係合させるので、ガタツキが少なく、シャフト4のシャフト軸心周り方向の回転が阻止される。すなわち、シャフト4のトルク方向の固定剛性が高い。
【0064】
また、4面の斜面5cを設けてシャフトケース5の先端側を先細形としているので、シャフトケース5をホゼル3内に挿入し易い。
【0065】
ゴルフクラブのシャフト交換を行うには、交換すべき新シャフトに、予め上記シャフトケース5と同型のシャフトケースを接着剤によって固着しておく。なお、螺子部材6もこのシャフトに装着しておく。
【0066】
既存のゴルフクラブの螺子部材6を回し、旧シャフト4を旧シャフトケース5及び螺子部材6共々ヘッド1から取り外す。次いで、シャフトケース及び螺子部材付きの新シャフト(シャフトケース・シャフト連結体)をヘッド1のホゼル穴3Hに差し込み、螺子部材6を雌螺子3aにねじ込むことによって固定する。
【0067】
このようにシャフトの取り付けや交換を極めて簡単かつ迅速に行うことができる。なお、従来では、シャフトの交換に際し既存のゴルフクラブのホゼル部分を加熱して接着剤硬化物の組織を壊し、シャフトを抜いた後、新シャフトを接着剤で固着するようにしていたため、数時間〜1日程度の時間がかかっていたが、上記実施の形態では、予め新シャフトにシャフトケース5を接着剤で取り付けておくことにより、シャフト交換を数分程度で行うことができる。従って、シャフトケース付きの各種スペックのシャフトを用意しておき、同一のヘッド本体に順次に異なるシャフトを取り付けて試打する様な利用方式が実現可能となる。
【0068】
また、シャフトケース5としてシャフト挿入穴5aの傾き角度θが異なるものを製作しておき、このシャフトケースにシャフトを固着して交換用シャフトケース・シャフト連結体としてもよい。既設のシャフトケース・シャフト連結体をこの交換用シャフトケース・シャフト連結体と交換することにより、ライ角及びスライス角を変えることができる。
【0069】
例えば、交換用シャフトケースを上記角度θが0.5°,1°,1.5°,2°,2.5°,3°のように小刻みに変えた複数種類のシャフトケース群を用意しておき、ライ角やスライス角を小刻みに変えて試打することができる。
【0070】
この実施の形態では、第6,7図に明示の通り、シャフト挿入穴5aの上端がシャフトケース5の上端の中心から偏心している。そのため、シャフトケース5の向きをこのシャフト挿入穴5aの上端の位置に基づいて知ることができ、このシャフトケース5の向きからシャフト4がいずれの方向に傾けているかを容易に知ることができる。また、後述の第8図のものに比べて、軸心の傾きを大きくすることができ、ライ角やスライス角を大きく変えることができる。
【0071】
ただし、シャフト挿入穴5a上端は、シャフトケース5の上端の中心に配置されても良い。この場合には、拡径部5gのテーパ面が正円錐形となり、見栄えがよくなる。
【0072】
第8図〜第12図を参照して別の実施の形態について説明する。第8図は別の実施の形態に係るゴルフクラブヘッドの前記第3図と同様部分の断面図、第9図及び第10図(a)、(b)はシャフトの取付、交換方法を示す斜視図、第11図はホゼル、シャフトケース、螺子部材及びトップ部の斜視図、第12図はホゼル、シャフトケース、螺子部材及びトップ部の断面図である。
【0073】
このゴルフクラブは、ヘッド1Aのホゼル3に固着されたシャフトケース5Aの上端部に、別体のトップ部7を取り付けたものである。
【0074】
第11,12図の通り、シャフトケース5Aは、前記実施の形態のシャフトケース5と同じく、ホゼル3の円筒部3cよりも極くわずかに小径の円筒形部材であり、上端側から下端側に向って、シャフト4の挿入用の穴5aが設けられている。
【0075】
シャフトケース5Aの上端は、上方ほど小径となるテーパ部5hとされている。このテーパ部5hに引き続くシャフトケース5Aの上部の外周面に雄螺子5nが設けられている。この雄螺子5nにトップ部7が螺着される。
【0076】
ホゼル3及び螺子部材6の構成は、前記実施の形態と同一である。
【0077】
この実施の形態では、螺子部材6よりも上側にトップ部7が設けられている。このトップ部7は、外周面が上方ほど小径となるテーパ状とされた環状である。トップ部7の内周面には、シャフトケース5の雄螺子5nに螺着する雌螺子7a(第12図)が設けられている。第11図の通り、トップ部7の外周面の下端側には、1対の平行面7eが設けられている。これにより、この平行面7eに工具を係合させてトップ部7を回転させることが可能となっている。トップ部7と螺子部材6との間には、前記実施の形態と同様にゴム又はエラストマー等の弾性体やプラスチック、金属よりなる薄いスペーサ7fを介在させている。なお、トップ部7は、シャフトケース5に対し溶接、接着、かしめ等によって固定されてもよい。
【0078】
この実施の形態のその他の構成は、前記実施の形態と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0079】
この実施の形態に係るゴルフクラブを組み立てるには、第9図のように、シャフト4の先端側からトップ部7及び螺子部材6を嵌め通し、該シャフト4の先端にシャフトケース5Aを接着剤を用いて固着しておく。好ましくは、この接着剤をシャフト4の先端部の外周面に塗着し、シャフトケース5Aの穴5aの最奥部まで該シャフト4を差し込む。
【0080】
シャフトケース5Aに小孔5bが設けられているので、シャフト4をシャフトケース5Aの穴5aに差し込んだときに空気が該小孔5bを通って流出する。接着剤としてはエポキシ系接着剤などが好適である。
【0081】
このようにトップ部7及び螺子部材6が嵌挿されると共にシャフトケース5Aが固着されたシャフトケース・シャフト連結体の該シャフトケース5Aを、第9図及び第10図(a)の如くヘッド1Aのホゼル3に差し込む。
【0082】
次いで、第10図(b)の通り、螺子部材6の雄螺子6bをホゼル3の雌螺子3aに螺じ込み、次いでトップ部7をシャフトケース5Aの雄螺子5aに螺じ込む。
【0083】
これにより、第8図の通り、螺子部材6の下端面がシャフトケース5Aの凸部5tの上面を押圧し、シャフトケース5Aの斜面5cが弾性体8を介してホゼル3の斜面3dに押し付けられ、シャフトケース5Aがホゼル3に固定される。シャフトケース5とシャフト4とは接着剤によって強固に接着されているので、これにより、シャフト4とヘッド1Aとが一体となったゴルフクラブが完成する。
【0084】
このゴルフクラブからシャフトケース5Aを抜き出すには、トップ部7を付けた状態にて螺子部材6を緩み方向に回す。この螺子部材6の雄螺子6bがホゼル3の雌螺子3aに螺合しているので、螺子部材6が緩み方向に回転すると、螺子部材6は上方へ移動(螺進)し、トップ部7を押し上げる。トップ部7はシャフトケース5Aに固着されているため、トップ部7が螺子部材6によって上方に押されると、トップ部7とシャフトケース5Aとが一体となって上方に移動する。これにより、シャフトケース5Aがホゼル3から離脱する上方向へ移動するので、容易に取り外すことができる。
【0085】
この実施の形態においても、シャフト挿入穴5aの軸心線がシャフトケース5Aの外周面の軸心線に対し斜交しているのでシャフト4の傾き方向をヒール側、トウ側、飛球線方向又は後方に変更することができる。これにより、前記実施の形態と同様の効果が奏される。なお、この実施の形態では、シャフト挿入穴5aの上端が中心に位置しており、トップ部7のテーパ面からシャフトケース5Aのテーパ部5hにかけて同一テーパ角度のテーパ面を構成することができる。このため、第6図のものに比べ、外観上の違和感がない。
【0086】
なお、螺子部材6をホゼル3の雌螺子3aに螺じ込んだ後、トップ部7をシャフトケース5Aの雄螺子5nに螺じ込んでいるので、螺子部材6の緩みが防止される。特にこの実施の形態では、雌螺子3aと雄螺子6bとが逆螺子となっており、螺子部材6の緩み回転方向がトップ部7の締め付け回転方向となるので、螺子部材6の緩みが防止される。
【0087】
上記ホゼル、シャフトケース及び螺子部材は金属製とされることが好ましく、特にアルミ又はチタンもしくはそれらの合金よりなることが好ましい。ホゼル3については、ヘッド本体と同等又はそれよりも低い比重の材質が好ましく、例えばチタン合金、アルミニウム、アルミ合金、マグネシウム合金、FRP、合成樹脂などを用いてもよい。
【0088】
ヘッドの材質は特に限定されないが、ウッド型ゴルフクラブヘッドの場合、例えばチタン合金やアルミ合金、ステンレス等とすることができる。
【0089】
上記実施の形態ではシャフトケース及びホゼル穴に正四角錐形となるように4面の斜面5c,3dを設けているが、斜面の数が3又は5以上の正多角錐形でもよい。また、シャフトケースの先端側及びホゼル穴の奥部を星型等の凹多角形断面形状やギヤ歯形断面形状としてもよい。
【0090】
なお、シャフト4に取り付けるグリップとして、断面が非真円形のものを用いることがある。例えば、グリップ外周面のうちアドレス状態で地面を指向する下側面をその他の面よりも膨出した形状とすることがある。このような場合、シャフトケース5の向きを変えたときに、グリップ膨出部が地面側とならないことがある。そこで、本発明では、断面真円形のグリップを用いるのが好ましい。
【0091】
上記実施の形態ではゴルフクラブヘッドはウッド型であるが、ユーティリティ型、アイアン型、パターなどのいずれのタイプのゴルフクラブヘッドにも本発明を適用することができる。
【0092】
なお、図示の中空型のゴルフクラブヘッドの場合、ホゼル3及びホゼル設置部2g並びにシャフトケース5又は5A、螺子部材6を設けたことにより、ヒール側の重量が一般的なゴルフクラブヘッドに比べて大きくなる。そのため、トウ側やバック部の肉厚を大きくしたり、トウ側にウェイトを設けたりすることにより、ゴルフクラブヘッドのバランスをとるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】実施の形態に係るヘッドの正面図である。
【図2】シャフトの向きを変えたヘッドの正面図である。
【図3】シャフトの向きを変えたヘッドの側面図である。
【図4】シャフトの向きを変えたヘッドの正面図である。
【図5】シャフトケースの向きを変えたヘッドの側面図である。
【図6】第4図のVI−VI線断面図である。
【図7】ホゼル、シャフトケース及び螺子部材の斜視図である。
【図8】別の実施の形態を示す断面図である。
【図9】図8の実施の形態の分解斜視図である。
【図10】図8の実施の形態の分解斜視図である。
【図11】図8の実施の形態の分解斜視図である。
【図12】図8の実施の形態の分解断面図である。
【符号の説明】
【0094】
1,1A ヘッド
2 ヘッド本体
2a フェース部
2e ヒール部
3 ホゼル
3a 雌螺子
3b 段差面
3d 斜面
3H ホゼル穴
4 シャフト
5,5A シャフトケース
5a シャフト挿入穴
5b 小孔
5c 斜面
5g 拡径部
5t 凸部
6 螺子部材
6b 雄螺子
7 トップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドのホゼルにシャフトの先端が取り付けられたゴルフクラブにおいて、
シャフト挿入穴を有した略円筒形のシャフトケースの該シャフト挿入穴に該シャフトの先端が挿入されて固着され、
該ホゼルのホゼル穴内に該シャフトケースが挿入され、
該ホゼル穴の軸心に対しシャフト挿入穴の軸心が斜め方向となっており、
該シャフトケースに外嵌すると共に、該ホゼルの該上端側に着脱可能に螺着された環状の螺子部材によって該シャフトケースが該ホゼルに固定されており、
該螺子部材は該シャフトケースの外周囲に配置され、シャフトには非接触であり、
該ホゼル穴の内周面及びシャフトケースの外周面の少なくとも一部は、軸心線と垂直方向の断面形状が三角以上の多角断面形状となっている
ことを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項2】
請求項1において、
前記シャフトケースの軸心線方向の途中の外周面に凸部が設けられており、
前記ヘッドは、ヘッド本体と、該ヘッド本体に固着された前記ホゼルとを備えており、
該ホゼルの該上端側の内周面に雌螺子が刻設されており、
前記螺子部材の外周面に雄螺子が設けられており、
該雄螺子をホゼルの該雌螺子に螺合させることにより該螺子部材が該ホゼルに螺着されており、
該螺子部材の下端面が前記凸部を下方に押圧することにより該シャフトケースが固定されていることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項3】
請求項1において、該螺子部材の下側に弾性体が介在されていることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記シャフトケースのシャフト挿入穴に前記シャフトが挿入され、接着剤によって固着されていることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、該シャフトケースの下端側が先細形の多角断面形状部となっていることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記シャフトケースの下端側とホゼル穴の内面との間に弾性体が介在していることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記シャフトにグリップが装着されており、
該グリップは、真円形の断面形状を有することを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のゴルフクラブの特性を調節する方法であって、
前記螺子部材を回して外した後、シャフトケースをその軸心回りに回転させて向きを変え、
その後、前記螺子部材をホゼル穴に螺着させてシャフトケースをホゼル穴に固定する
ことを特徴とするゴルフクラブの特性調節方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のゴルフクラブのシャフトを新たなシャフトに交換する方法であって、
予め新たなシャフトを新たなシャフトケースに固着して新たなシャフトケース・シャフト連結体を作成しておき、
ゴルフクラブに取り付けられているシャフトケース・シャフト連結体をヘッドから取り外し、このヘッドに新たなシャフトケース・シャフト連結体を取り付けることを特徴とするゴルフクラブのシャフト交換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−131182(P2010−131182A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309897(P2008−309897)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)
【Fターム(参考)】