説明

ゴルフクラブヘッド

【課題】従来のゴルフクラブヘッドを強度や使用寿命に悪影響を与えずに、そのクラウン部の厚さ調整を通して重心を従来よりもっと大いに下げることをその目的とする。
【解決手段】そのクラウン部の位置が開いている中空状のヘッド本体と、前記クラウン部として、前記中空状のヘッド本体を閉鎖している、内張りのついた厚さ0.1〜0.5mmの薄板と、からなっているゴルフクラブヘッドが挙げられる。特に、一体鋳造法を使用しようとしない場合の構成例として、前記中空状のヘッド本体は、そのクラウン部の位置が開口となっている上、該開口はその周縁の前記ヘッド本体から突出して環状の窪みとなった止め板に囲まれており、また、前記薄板は、前記ヘッド本体の窪みに埋まれて前記止め板に保持されているものが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに関し、特に低重心化になるゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的高い重心を持つゴルフクラブヘッドが使用されれば、打ち出し角及び打たれたゴルフボールの飛翔軌道に悪影響を与える。したがって、多くのクラブヘッドは、その全体の重心を下げるために、クラウン部をなるべく薄くさせてなる。
【0003】
しかしながら、クラウン部を薄くさせる方法として、クラブヘッドの他の部分と共に形成する一体鋳造法を使用すれば、多くとも0.6mmまで厚さを下げるので、重心高さが18mm以上持ち、やはり理想にならない。もちろん、一体鋳造法をした後、更に研磨加工を加え、または一体鋳造法を使用せずに、始めからクラウン部またはその一部として他により薄い金属板を使用することもできるが、研磨法は面倒臭い上、厚さの均一性についてもよく保証できず、それに、厚さが0.55mmまでにも薄過ぎると、クラウン部が変形しやすいので、クラブヘッド全体の強度や使用寿命に悪影響を与える、という欠点が出てくる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記のような事情に鑑みてなされたものである。
【0005】
即ち、本発明は、従来のゴルフクラブヘッドを強度や使用寿命に悪影響を与えずに、そのクラウン部の厚さ調整を通して重心を従来よりもっと大いに下げることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、その中空状のヘッド本体の少なくとも一部が内張りのついた厚さ0.1〜0.5mmの薄いものになっているゴルフクラブヘッドを提供する。
【0007】
前記発明の実施形態として、そのクラウン部の少なくとも一部が開口となっている中空状のヘッド本体と、前記クラウン部の少なくとも一部として、前記開口を閉鎖している、内張りのついた厚さ0.1〜0.5mmの薄板と、からなっているゴルフクラブヘッドが挙げられる。
【0008】
即ち、本発明のゴルフクラブヘッドは、そのクラウン部の少なくとも一部が内張りのついた、従来より薄いものになり、特に、一体鋳造法を使用しようとしない場合、始めからクラウン部またはその一部として他に従来より薄い板を使用する上、該薄い板の内面に内張りを施せば良い。
【0009】
前記一体鋳造法を使用しない実施形態の構成例として、前記開口は、その周りの前記クラウン部から窪んで環状の窪みとなった止め板に囲まれており、また、前記薄板は、前記ヘッド本体の窪みに埋まれて前記止め板に保持されているものが挙げられる。
【0010】
また、前記内張りも色々な変形が採用され得る。例えば、前記薄板の内面の一部または全部についたり、単一または複数になったり、または補強のために、リブや他の補強構造が形成されているものが挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
前記構成によるゴルフクラブヘッドは、まずそのクラウン部またはその一部が内張りを施したものからなるので、強度、使用寿命の問題にかからなくてそれ自体の厚さが従来より遥かに薄い0.1〜0.5mmまでに押さえられ得る。また、前記厚さが0.1〜0.5mmになるので、重心高さが8〜18mmまでに下げられ得る。
【0012】
そして、前記内張りで前記厚さにおける均一性を調整することができるので、やはり一体鋳造法プラス研磨法との製造方法を使用することができるが、この製造方法を使用せずに、クラウン部またはその一部として他に内張りを施した薄板を使用する場合、始めから厚さの均一性問題がないので、研磨法を省いて製造コストを大いに下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に関するゴルフクラブヘッドの好適な実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、図中、似ている部分には、同一の参照符号を付する。
【0014】
まず、図1、図2及び図3を参照しながら本発明の第1の実施形態例のゴルフクラブヘッドを説明する。
【0015】
ゴルフクラブヘッドは、大別してクラウン部、ソール部、フェース部、及びサイド部に分けられるが、本発明は、クラウン部、特にその、内張りのついた薄い部分を中心とするものであるので、他の部分を合わせてヘッド本体と称する。なお、以下の説明では、ウッド型のヘッドが例示されている。
【0016】
図1に示すように、本実施形態例のゴルフクラブヘッドは、そのクラウン部2の周縁部以外の部分が開口11となり、周縁部10が中空状のヘッド本体1の一部となっている。また、クラウン部2の周縁部以外の部分、即ちクラウン部2の開口11を閉鎖している部分は、内張り22のついた厚さ0.1〜0.5mmの薄板21からなっている。
【0017】
そして、開口11は、その周りのクラウン部2(即ち周縁部10)から窪んで環状の窪みとなった止め板12に囲まれている。また、薄板21は、ヘッド本体1の窪みに埋まれて止め板12に保持されている。
【0018】
なお、この例1では、内張り22は、薄板21の内面の、止め板12に当たっている部分以外の全面についている。
【0019】
また、この実施形態例では、薄板21は、チタン合金からなったものであるが、他の例えばアルミ合金、マグネシウム合金及びステンレス鋼など強靭度の高い金属材からなったものを使用しても良い。
【0020】
また、内張り22は、炭素繊維強化樹脂からなったものであるが、他の例えばガラス繊維強化樹脂、ホウ素繊維強化樹脂、短繊維強化熱可塑性複合材、チタン繊維強化樹脂及びチタン網強化樹脂など比重2.8未満の軽量強化複合材からなったものを使用しても良い。
【0021】
この実施形態例のゴルフクラブヘッドは、そのクラウン部2の大部分が薄いものになっているので、重心高さが従来より遥かに低い8〜18mmになっており、なお、該薄い部分に内張り22が施されたので、強靭性が高くて使用時の変形や使用寿命の問題にかからない。
【0022】
また、図4〜図7を参照しながら本発明の第2の実施形態例のゴルフクラブヘッドを説明する。
【0023】
図4及び図5に示すように、本実施形態例のゴルフクラブヘッドは、薄板21の内面の、止め板12に当たっている部分以外の全面についている内張り22のほぼ中央部分に一つの補強リブ221が形成してあるものであるが、この補強リブ221は色々な変形が採用され得る。例えば、図6及び図7に示すのは、その変形例であって、その内張り22には三つの補強リブ221A、221、221Aが並んでいる。
【0024】
本実施形態例のゴルフクラブヘッドの他の構造は、前記実施例1のと同じなので、ここでその説明を省く。
【0025】
そして、図8〜図11を参照しながら本発明の第3の実施形態例のゴルフクラブヘッドを説明する。
【0026】
図8及び図9に示すように、本実施形態例のゴルフクラブヘッドは、その内張りが前記実施形態例1及び2と同じように止め板12に当たっている部分以外についているが、二つに分けられている。即ち、その内張りは、隙間を空けたもの22A、22Bからなっており、止め板12に当たっている部分以外の全面についているものではない。
【0027】
また、その変形例として、図10及び図11に示すように、前記内張りは三つ22C、22D、22Eに分けられても良い。
【0028】
本実施形態例のゴルフクラブヘッドの他の構造は、前記実施例1のと同じなので、ここでその説明を省く。
【0029】
そして、図12〜図19を参照しながら本発明の第4の実施形態例のゴルフクラブヘッドを説明する。
【0030】
本実施形態例のゴルフクラブヘッドは、前記第3の実施形態例と同じく内張りが複数になって、それぞれ薄板21の内面の、止め板12に当たっている部分以外についているが、各内張りには、補強リブが形成してある。
【0031】
図12及び図13に示すのは、その応用例1であって、内張りが二つ22A、22Bになっており、各内張りの中央部には、それぞれ補強リブ221B、221Cが形成してある。
【0032】
図14及び図15に示すのは、その応用例2であって、内張りが二つ22A、22Bになっており、該二つの内張りの隣り合っている端縁には、それぞれ補強リブ221D、221Eが形成してある。
【0033】
図16及び図17に示すのは、その応用例3であって、内張りが三つ22C、22D、22Eになっており、それぞれ補強リブ221F、221G、221Hが形成してあるが、補強リブ221Fは内張り22Dのほぼ中央部に、補強リブ221G、221Hは内張り22Cと内張り22Eとの、内張り22Dを挟んでいる端縁に形成してある。
【0034】
図18及び図19に示すのは、その応用例4であって、応用例3と同じように内張りが三つ22C、22D、22Eになっているが、中央にある内張り22Dはその両端縁にも補強リブ221J、221Kが形成されている。
【0035】
本実施形態例のゴルフクラブヘッドの他の構造は、前記実施例1のと同じなので、ここでその説明を省く。
【0036】
さらに、図20及び図21を参照しながら本発明の第5の実施形態例のゴルフクラブヘッドを説明する。
【0037】
まず、図20をみてみると、この実施形態例のゴルフクラブヘッドは、内張りが一つ22Fだけからなっている。もっと詳しくみると、その環状の窪みとなった止め板12の外面には、一対の、互いに対称している凹陥部121、121がある上、これらの凹陥部121には、それぞれ他の凹陥部121のと一筋の直線上にあるスリット122、122が開けられている。また、内張り22Fは、その両端部222A、222Bがそれぞれ一対の凹陥部121、121の一つに嵌め込むように該一対の凹陥部121、121の間に延在している長条板部222と、長条板部222の内面から下へ突出し且つその両端部223A、223Bがそれぞれ一対の凹陥部のスリット121、121を貫通するように、一対の凹陥部121、121の間に延在している補強リブ223と、からなっている。
【0038】
本発明は、その精神及び必須の特徴事項から逸脱することなく他のやり方で実施することができる。従って、本明細書に記載した好ましい実施例は例示的なものであり、限定的なものではない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
如上のように、本発明のゴルフクラブヘッドは、そのクラウン部の少なくとも一部が内張りを施したものになっているので、前記少なくとも一部が薄くなっても、該内張りにより強靭性が維持されうる。
【0040】
そして、本発明のゴルフクラブヘッドは、そのクラウン部の少なくとも一部が薄いものになっているので、その重心高さが従来より低くなっている。
【0041】
そしてまた、本発明のゴルフクラブヘッドは、前記クラウン部の少なくとも一部として、一体鋳造法を使用せずに、他に内張りを施した薄板を使用する場合、始めから従来の厚さの均一性問題がないので、研磨法を省いて製造コストを大いに下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のゴルフクラブヘッドの第1の実施形態例の分解斜視図である。
【図2】本発明のゴルフクラブヘッドの第1の実施形態例の一部断面図である。
【図3】図2の実施形態例の上面図である。
【図4】本発明のゴルフクラブヘッドの第2の実施形態例の一部断面図である。
【図5】図4の実施形態例の上面図である。
【図6】本発明のゴルフクラブヘッドの第2の実施形態例の変形例の一部断面図である。
【図7】図6の変形例の上面図である。
【図8】本発明のゴルフクラブヘッドの第3の実施形態例の一部断面図である。
【図9】図8の実施形態例の上面図である。
【図10】本発明のゴルフクラブヘッドの第3の実施形態例の変形例の一部断面図である。
【図11】図10の変形例の上面図である。
【図12】本発明のゴルフクラブヘッドの第4の実施形態例の応用例1の一部断面図である。
【図13】図12の応用例の上面図である。
【図14】本発明のゴルフクラブヘッドの第4の実施形態例の応用例2の一部断面図である。
【図15】図14の応用例の上面図である。
【図16】本発明のゴルフクラブヘッドの第4の実施形態例の応用例3の一部断面図である。
【図17】図16の応用例の上面図である。
【図18】本発明のゴルフクラブヘッドの第4の実施形態例の応用例4の一部断面図である。
【図19】図18の応用例の上面図である。
【図20】本発明のゴルフクラブヘッドの第5の実施形態例の分解斜視図である。
【図21】本発明のゴルフクラブヘッドの一部断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 中空状のヘッド本体
10 周縁部
11 開口
12 止め板
121 凹陥部
122 スリット
2 クラウン部
21 薄板
22、22A、22B、22C、22D、22E 内張り
221 補強リブ
221A、221B、221C、221D、221E、221F、221G、221H、221J、221K 補強リブ
222 長条板部
222A、222B 長条板部の両端部
223 補強リブ
223A、223B 補強リブの両端部
22F 内張り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その中空状のヘッド本体の少なくとも一部が内張りのついた厚さ0.1〜0.5mmの薄いものになっているゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
そのクラウン部の少なくとも一部が開口となっている中空状のヘッド本体と、
前記クラウン部の少なくとも一部として、前記開口を閉鎖している、内張りのついた厚さ0.1〜0.5mmの薄板と、
からなっているゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記薄板は、チタン合金、アルミ合金、マグネシウム合金及びステンレス鋼の群より選ばれた金属材からなったものである、請求項1または2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記内張りは、炭素繊維強化樹脂、ガラス繊維強化樹脂、ホウ素繊維強化樹脂、短繊維強化熱可塑性複合材、チタン繊維強化樹脂及びチタン網強化樹脂の群より選ばれた、比重2.8未満の軽量複合材からなったものである、請求項3に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記開口は、その周りの前記クラウン部から窪んで環状の窪みとなった止め板に囲まれており、
また、前記薄板は、前記窪みに埋まれて前記止め板に保持されている、請求項2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記内張りは、前記薄板の内面の、前記止め板に当たっている部分以外についている、請求項5に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記内張りは、前記止め板に当たっている部分以外の全面についている、請求項5に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記内張りは複数あって、それぞれ前記薄板の内面の、前記止め板に当たっている部分以外についている、請求項5に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記内張りには補強リブが形成してある、請求項5に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記環状の窪みとなった止め板の外面には、一対の、互いに対称している凹陥部がある上、これらの凹陥部には、それぞれ他の凹陥部のと一筋の直線上にあるスリットが開けられており、
また、前記内張りは、
その両端部がそれぞれ前記一対の凹陥部の一つに嵌め込むように該一対の凹陥部の間に延在している長条板部と、
前記長条板部の内面から下へ突出し且つその両端部がそれぞれ前記一対の凹陥部のスリットを貫通するように、前記一対の凹陥部の間に延在している補強リブと、
からなっている、請求項5に記載のゴルフクラブヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2008−228775(P2008−228775A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68635(P2007−68635)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(501106263)明安國際企業股▲分▼有限公司 (12)
【Fターム(参考)】