ゴルフクラブ用シャフト
【課題】ヘッドの走り感、ボールのつかまり感が付与され、スライスに悩むプレーヤーに好適なシャフトを提供する。
【解決手段】シャフト10の細径端部から25mmごとの距離L(mm)と、距離Lの位置における曲げ変位δL(mm)とからなる曲げ変位群(L,δL)を(x,y)とし、該(x,y)を100≦x≦175の群と225≦x≦300の群との2つの群に分けて、それぞれすべての(x,y)を使った最小二乗法により、式(1)および(2)に直線回帰した場合、式(1)の相関係数の二乗R12と式(2)の相関係数の二乗R22とがいずれも0.95以上であり、かつ、式(3)の関係を満足するゴルフクラブ用シャフト。式(1):100≦x≦175においてy=−a1x+b1、式(2):225≦x≦300においてy=−a2x+b2、式(3):a1/a2≧0.8
【解決手段】シャフト10の細径端部から25mmごとの距離L(mm)と、距離Lの位置における曲げ変位δL(mm)とからなる曲げ変位群(L,δL)を(x,y)とし、該(x,y)を100≦x≦175の群と225≦x≦300の群との2つの群に分けて、それぞれすべての(x,y)を使った最小二乗法により、式(1)および(2)に直線回帰した場合、式(1)の相関係数の二乗R12と式(2)の相関係数の二乗R22とがいずれも0.95以上であり、かつ、式(3)の関係を満足するゴルフクラブ用シャフト。式(1):100≦x≦175においてy=−a1x+b1、式(2):225≦x≦300においてy=−a2x+b2、式(3):a1/a2≧0.8
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブ用シャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブは、ゴルフクラブ用シャフト(以下シャフトという。)とこれに装着されたゴルフクラブ用ヘッド(以下ヘッドという。)とを具備している。ゴルフクラブのうち、慣性モーメントが大きい大型ヘッドを備えたものの場合、ゴルフボールをヘッドのスイートスポットの中心以外で打撃しても、ヘッドが水平面内で回転し難いので、打球の方向が安定するといわれている。
ところで、フェースが開いた状態でスイングし、スライスに悩むアベレージプレーヤーは、打球時にヘッドを返すことで打球の方向を制御している。しかし、大型のヘッドはその大きな慣性モーメントのためヘッドが返りにくいことから、相変わらず打球がスライスすることになる。
そこで、大型ヘッドと先調子シャフト(例えば、特許文献1〜5参照。)とを組み合わせ、ヘッドを返しやすくすれば、打球の方向が改善されると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−141754号公報
【特許文献2】特開平9−164600号公報
【特許文献3】特開平11−99229号公報
【特許文献4】特開平11−99230号公報
【特許文献5】特開2004−290391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の先調子シャフトを質量も大きい大型のヘッドと組み合わせたのでは、打球時にトウダウンしやすく、フェース上の打球場所が安定せずバックスピンがかかり過ぎたり、または足りなかったりするため、結果として飛距離が不安定になる問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、打球時のトウダウンが抑えられるために、フェース上の打球場所が安定してバックスピンがかかりすぎることなく、ヘッドも返しやすく、よって、ヘッドの走り感、ボールのつかまり感が付与され、スライスに悩むプレーヤーに好適なシャフトを提供することを課題とする。また、ゴルフクラブの特性の指標となるようなシャフトの特性値を測定する好適な測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は、体積が350mlを超えるゴルフクラブ用ヘッドが装着されるゴルフクラブ用シャフトであって、細径端部から25mmごとの距離L(mm)と、下記測定方法により計測された前記距離Lの位置における曲げ変位δL(mm)とからなる曲げ変位群(L,δL)を(x,y)とし、該(x,y)を100≦x≦175の群と225≦x≦300の群との2つの群に分けて、それぞれすべての(x,y)を使った最小二乗法により、下記式(1)および(2)に直線回帰した場合、下記式(1)の相関係数の二乗R12と下記式(2)の相関係数の二乗R22とがいずれも0.95以上であり、かつ、下記式(3)の関係を満足することを特徴とするシャフトにある。
100≦x≦175において、y=−a1x+b1・・・(1)
225≦x≦300において、y=−a2x+b2・・・(2)
a1/a2≧0.8・・・(3)
【0007】
「曲げ変位δL(mm)の測定方法」
水平方向に50mm離して設置した上部支持ジグと下部支持ジグとでゴルフクラブ用シャフトの軸が水平となるようにシャフトを挟持、固定する。この際、シャフトが下部支持ジグに接する位置を距離L=100mmの位置とする。次に下部支持ジグからシャフトの軸に沿って615mm離れた位置に質量2kgの錘をかけ、下部支持ジグからシャフトの軸に沿って700mm離れた位置の曲げ変位量δ100(mm)を計測する。次にシャフトが下部支持ジグに接する位置を太径側に25mmずつ移動させて、その際の下部支持ジグからシャフトの軸に沿って700mm離れた位置の各曲げ変位量δ125,δ150,・・・,δ300(mm)を繰り返し計測し、曲げ変位群(L,δL)=(x,y)を得る。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、打球時のトウダウンが抑えられるために、フェース上の打球場所が安定してバックスピンがかかりすぎることなく、ヘッドも返しやすく、よって、ヘッドの走り感、ボールのつかまり感が付与され、スライスに悩むプレーヤーに好適なシャフトを提供できる。また、ゴルフクラブの特性の指標となるようなシャフトの特性値を測定する好適な測定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明での曲げ変位δL(mm)の測定方法を示す概略図である。
【図2】実施例で用いた芯金の形状を示す平面図である。
【図3】プリプレグの形状を示すパターン図である(実施例1)。
【図4】LとδLとの関係を示すグラフである(実施例1、比較例1)。
【図5】Lと外径との関係を表すグラフである(実施例1、比較例1)。
【図6】LとEI値との関係を表すグラフである(実施例1、比較例1)。
【図7】プリプレグの形状を示すパターン図である(比較例1)。
【図8】プリプレグの形状を示すパターン図である(実施例2)。
【図9】LとδLとの関係を表すグラフである(実施例2、実施例3、比較例2)。
【図10】Lと外径との関係を表すグラフである(実施例2、実施例3、比較例2)。
【図11】LとEI値との関係を表すグラフである(実施例2、実施例3、比較例2)。
【図12】プリプレグの形状を示すパターン図である(実施例3)。
【図13】プリプレグの形状を示すパターン図である(比較例2)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
[シャフト]
本発明のシャフトは、軸方向に垂直な面の外径が長さ方向の一端から他端に向かって大きくなるように形成されたものである。以下、外径が小さい側の端部を細径端部と言い、外径が大きい側の端部を太径端部という。また、シャフトの長さ方向の中心から、細径端部側を細径部、太径端部側を太径部という。
【0011】
本発明のシャフトは、細径端部から25mmごとの距離L(mm)と、下記測定方法により計測された前記距離Lの位置における曲げ変位δL(mm)とからなる曲げ変位群(L,δL)を(x,y)とし、これを100≦x≦175の群と225≦x≦300の群との2つの群に分けて、それぞれすべての(x,y)を使った最小二乗法により、下記式(1)および(2)に直線回帰した場合、下記式(1)の相関係数の二乗R12と下記式(2)の相関係数の二乗R22とがいずれも0.95以上であり、かつ、下記式(3)の関係を満足するものである。
100≦x≦175において、y=−a1x+b1・・・(1)
225≦x≦300において、y=−a2x+b2・・・(2)
a1/a2≧0.8・・・(3)
【0012】
式(1)の相関係数の二乗R12が0.95以上であると、シャフトのヘッド取り付け位置近傍(100≦x≦175)における剛性分布が均一であり、斑がない。また、式(2)の相関係数の二乗R22が0.95以上であると、シャフトの225≦x≦300の部分における剛性分布が均一であり、斑がない。よって、これらR12とR22とがともに0.95以上であると、式(3)の関係を満足する場合の後述の効果が十分に発揮される。
【0013】
式(3)に示すように、a1とa2との比(a1/a2)が0.8以上であると、打球時のトウダウンが抑えられ、ヘッドが返りやすく、スライスが起こりにくいシャフトとすることができる。このようなシャフトによれば、例えば体積が350mlを超えるような慣性モーメントが大きな大型のヘッドを装着した場合でも、打球時にスイートスポットをはずすことなく、フェースの真正面でゴルフボールを打球でき、ヘッドの走り感、ボールのつかまり感が付与されたゴルフクラブを得ることができる。
【0014】
また、a1、a2のそれぞれの好ましい範囲は、いずれも0.05〜0.3[mm/mm]であり、a1とa2との比(a1/a2)の好ましい範囲は下記式(4)の範囲である。このような範囲であると、よりボールのつかまり感が向上する。
6≧a1/a2≧0.8・・・(4)
【0015】
本発明においては、以上説明したように、曲げ変位群(L,δL)を100≦x≦175である群と225≦x≦300である群との2つの群に分けて、それぞれを最小二乗法により直線回帰している。これは、本発明者の検討により、175<x<225の部分を境にして、シャフトの剛さの傾向が変わることが本発明の効果を得るうえで重要であることが明らかとなったためである。よって、本発明では、曲げ変位群(L,δL)を100≦x≦175である群と225≦x≦300である群との2つの群に分けて、シャフトの剛さについて検討を実施した。
また、xが100mm未満の部分は、その30〜100%の部分が後にヘッドとの接着部分となるため、この部分の剛さはシャフトの特性への影響が非常に小さい。よって、本発明では、この部分の剛さ、曲げ変位については考慮していない。
【0016】
次に、シャフト上の距離L(mm)における曲げ変位δL(mm)の測定方法について、図1を示して説明する。なお、図1中、上下方向が鉛直方向であり、左右方向が水平方向である。
まず、シャフト10を挟持するための一対の上部支持ジグ11と下部支持ジグ12とを用意し、これらを互いに水平方向に距離A=50mmだけ離して設置する。ついで、上部支持ジグ11と下部支持ジグ12とでシャフト10の軸が水平となるようにこれを挟持、固定する。この際、シャフト10の細径端部から100mmの位置、すなわち距離L=100mmの位置が下部支持ジグ12に接するようにする。ついで、下部支持ジグ12からシャフト10の軸に沿って距離B=615mmだけ離れた位置に質量2kgの錘13をかけ、下部支持ジグ12からシャフト10の軸に沿って距離C=700mmだけ離れた位置の変位量を測定器14で測定し、その値を距離L=100mmにおける曲げ変位量δ100(mm)とする(計測工程)。
そして、シャフト10を矢印方向に25mmずつ移動させることによって、シャフト10が下部支持ジグ12に接する位置を太径側に25mmずつ移動させ、すなわち、距離Lを25mmずつ増加させ、その際の下部支持ジグ12からシャフト10の軸に沿って700mm離れた位置のシャフトの各曲げ変位量δ125,δ150,・・・,δ300(mm)を計測器14によりそれぞれ同様に計測し、曲げ変位群(L,δL)=(x,y)=(100,δ100),(125,δ125),(150,δ150),・・・,(300,δ300)を得る(反復工程)。なお、この際、錘13をかける位置もシャフト10の移動にともなって同じく25mmずつ移動させ、距離Bは常に615mmとなるようにして測定する。
【0017】
ついで、こうして計測工程と反復工程とで得られた曲げ変位群(L,δL)を2つの直線に直線回帰する。
具体的には、計測工程と反復工程とで得られた曲げ変位群(L,δL)を(x,y)とし、この曲げ変位群を100≦x≦175の群と225≦x≦300の群との2つの群に分けて、それぞれすべての(x,y)を使った最小二乗法により、下記式(1)および(2)とに直線回帰する(回帰工程)。
100≦x≦175において、y=−a1x+b1・・・(1)
225≦x≦300において、y=−a2x+b2・・・(2)
【0018】
すなわち、n個のデータ、(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、・・・、(Xn,Yn)がある場合、以下の式により、直線Y=aX+bにおけるaおよびbと、相関係数の二乗R2とが得られることが一般に知られている(最小二乗法)。よって、これに沿って、(L,δL)を(x,y)として、2つの直線(上記式(1)および(2))に回帰することによって、a1、b1、a2、b2、R12、R22がそれぞれ得られる。
【0019】
【数1】
【0020】
以上説明したように、曲げ変位群を100≦x≦175の群と225≦x≦300の群との2つの群に分けて、それぞれすべての(x,y)を使った最小二乗法により、式(1)および(2)に直線回帰した場合に、式(1)の相関係数の二乗R12と式(2)の相関係数の二乗R22とがいずれも0.95以上であり、かつ、式(3)の関係を満足するシャフトによれば、打球時のトウダウンが抑えられるために、フェース上の打球場所が安定してバックスピンがかかりすぎることなく、ヘッドも返しやすく、よって、ヘッドの走り感、ボールのつかまり感が付与され、スライスに悩むプレーヤーに好適なシャフトを提供できる。
【0021】
このような本発明のシャフトの材質には特に制限はなく、例えば、エポキシ樹脂などのマトリクス樹脂と炭素繊維などの強化繊維とからなる繊維強化樹脂製のものが挙げられる。
また、本発明のシャフトの製造方法としても特に制限はないが、繊維強化樹脂製のものの場合には、未硬化のマトリクス樹脂を強化繊維に含浸したシート状のプリプレグを用意し、このプリプレグを棒状の芯金(マンドレル)に巻回した後、硬化させ、芯金を抜き取る、いわゆるシートラップ法が挙げられる。
シートラップ法では、プリプレグとして、面積や含有する強化繊維の向きが異なる複数種のものを用意し、これらを1枚ずつ順次芯金に巻回し、多層構造のシャフトを製造することが一般的であるが、この際に、各プリプレグの面積、各プリプレグが含有する強化繊維の向き、各プリプレグを巻回する位置などを調整したり、プリプレグの層数を変更したりすることにより、本発明のシャフトを製造することができる。また、この際に、シャフトのテーパー度やシャフトの外径を適宜調整することも、本発明のシャフトを製造するうえで有効である。
また、本発明のシャフトは、部分的に異なる材質から形成されていてもよく、例えば、175<x<225の部分の材質をx≦175の部分やx≧225の部分とは異ならせることで、各部分を所望の剛さとなるようにしてもよい。
【0022】
シャフトの長さ、質量などは適宜設定できるが、特に長さは990〜1219mmの範囲が好ましい。
また、こうして得られたシャフトは、必要に応じて細径端部側や太径端部側がカットされた後、細径側にはヘッドが、太径側にはグリップが装着され、ゴルフクラブとされる。
ここで細径端部や太径端部をカットする際、細径端部のカット長さが50mm以下、太径端部のカット長さが229mm以下であれば、これらのカットがシャフトの特性に与える影響をほぼ無視することができる。
【0023】
[シャフトの特性値の測定方法]
本発明で採用しているシャフトの特性値の測定方法は、図1のように、水平方向に所定間隔離して設置した上部支持ジグ11と下部支持ジグ12とで、シャフト10の細径部における細径端部からの距離L(mm)の位置が下部支持ジグ12に接し、かつ、シャフト10の軸が水平となるようにシャフト10を挟持、固定してから、シャフト10の太径部に所定質量の錘をかけ、シャフト上の所定位置の曲げ変位量δL(mm)を計測する計測工程と、シャフトが下部支持ジグに接する位置を太径側に所定の長さずつ移動させて距離Lを増加させて、計測工程を繰り返す反復工程と、計測工程と反復工程とで得られた曲げ変位群(L,δL)を(x,y)とし、100≦x≦175の群と225≦x≦300の群との2つの群に分けて、それぞれすべての(x,y)を使った最小二乗法により、下記式(1)および(2)とに直線回帰する回帰工程とを有する。
100≦x≦175において、y=−a1x+b1・・・(1)
225≦x≦300において、y=−a2x+b2・・・(2)
【0024】
具体的には、先に本発明のシャフト10について説明したとおりであり、上部支持ジグ11と下部支持ジグ12との間隔を例えばA=50mmとするとともに、シャフト10の細径部のうち例えば距離L=100mmの位置が下部支持ジグ12に接するようにシャフト10をまず固定する。ついで、シャフト10の太径部、例えば下部支持ジグ12からシャフト10の軸に沿って距離B=615mmだけ離れた位置に例えば質量2kgの錘をかけ、下部支持ジグ12からシャフト10の軸に沿って例えば距離C=700mmだけ離れた位置の変位量を計測器14にて計測し、その値を距離L=100mmにおける曲げ変位量δ100(mm)とする(計測工程)。
そして、シャフト10が下部支持ジグ12に接する位置を太径側に例えば25mmずつ移動させて、その際の下部支持ジグ12からシャフト10の軸に沿って700mm離れた位置のシャフトの各曲げ変位量δ125,δ150,・・・,δ300(mm)を計測し、曲げ変位群(L,δL)=(x,y)=(100,δ100),(125,δ125),(150,δ150),・・・,(300,δ300)を得る(反復工程)。
【0025】
ついで、計測工程と反復工程とで得られた曲げ変位群(L,δL)を(x,y)とし、これを100≦x≦175の群と225≦x≦300の群との2つの群に分けて、それぞれすべての(x,y)を使った最小二乗法により、式(1)および(2)とに直線回帰する(回帰工程)。
【0026】
そして、得られたa1、b1、a2、b2の各値や、相関係数の二乗R12、R22の値をシャフトの特性値とし、これを指標として、このシャフトから得られたゴルフクラブの特性を推測することができる。
具体的には、相関係数の二乗R12とR22とがともに0.95以上であり、a1とa2との比(a1/a2)が0.8以上であると、打球時のトウダウンが抑えられ、ヘッドが返りやすく、スライスが起こりにくいシャフトとすることができる。
このようなシャフトによれば、例えば体積が350mlを超えるような慣性モーメントが大きな大型のヘッドを装着した場合でも、打球時にスイートスポットをはずすことなく、フェースの真正面でゴルフボールを打球でき、ヘッドの走り感、ボールのつかまり感が付与されたゴルフクラブを得ることができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例に基づき本発明を更に具体的に説明する。
(実施例1)
図2(a)に示す形状の芯金20(鉄製)を用意した。この芯金20における各部分の外径、長さ、テーパー度は以下のとおりである。
P1の外径=4.25mm、P3の外径=7.10mm、P4およびP5の外径=13.00mm、P1〜P2の距離(l1)=150mm、P2〜P3の距離(l2)=100mm、P1〜P4の距離(l3)=960mm、P1〜P5の距離(l4)=1500mm、P1〜P2のテーパー度=8.30/1000、P3〜P4のテーパー度=8.30/1000
【0028】
ついで、この芯金20に、図3に示した形状に切断したプリプレグ(パターン1〜6)を順次巻きつけ、その上に20mm幅のポリプロピレン製収縮テープをピッチ2mmで巻きつけた。
なお、パターン2および3はいずれも、炭素繊維(CF)が芯金の軸方向に対して+45°に配向したプリプレグと−45°に配向したプリプレグとを2枚重ね合わせたものである。また、パターン2では、パターン2の図3中左側の端部において、2枚の巻き始め端部(プリプレグの図中上端)が9mmずれるように重ねられ、図3中右側の端部において、2枚の巻き始め端部が20mmずれるように重ねられている。また、図3中の各部分のサイズは以下のとおりである。
α1=200mm、α2=44mm、α3=100mm、α4=60mm、α5=1190mm、α6=67mm、α7=149mm、α8=600mm、α9=22mm、α10=37mm、α11=1190mm、α12=45mm、α13=97mm、α14=1190mm、α15=48mm、α16=99mm、α17=110mm、α18=100mm、α19=500mm
また、芯金20におけるプリプレグを巻きつける位置は、細径端部から測って50mmから1240mmまでの部分とした。
【0029】
ついで、これを135℃に加熱した加熱炉に2時間入れ、取り出したのち常温に冷めたところで、前記収縮テープを剥ぎ取り、表面を研磨し、シャフトを得た。使用した各プリプレグの詳細は、表1に示すとおりである。
【0030】
【表1】
【0031】
このシャフトについて、図1を示して説明した上述の「曲げ変位δL(mm)の測定方法」に沿って、曲げ変位群(L,δL)を求め、これを(x,y)とし、100≦x≦175の群と225≦x≦300の群との2つの群に分けて、それぞれすべての(x,y)を使った最小二乗法により、式(1)および(2)に直線回帰した。なお、図1中、A=50mm、B=615mm、C=700mm、錘の質量2kgとし、シャフトは25mmずつ矢印方向に移動させて測定を行った。
得られたa1、a2、R12、R22、a1/a2の各値と、シャフトの長さ、質量、振動数、トルク、キックポイントを表2に示す。
また、LとδLとの関係、Lと外径との関係、LとEI値との関係をそれぞれ図4、図5、図6に示す。
【0032】
ついで、得られたシャフトを長さ44インチ(1118mm)にカットした後、細径側にヘッド(体積:400ml、ロフト:9度)、太径側に市販のグリップを装着し、長さ44.75インチ(1137mm)の試験用のドライバーゴルフクラブを製作した。この際、細径端部のカット長さは0mm、太径端部のカット長さは50mmとした。
このクラブを上級者ゴルファー3名に各5球ずつ打ってもらい、ブリヂストンスポーツ株式会社製「サイエンスアイ・フィールド」を用いてボールの回転、飛距離などを算出し、平均値を求めた。結果を表3に示す。
【0033】
(1)振動数
特開平10−225541号公報に記載されている方法により測定した。
すなわち、藤倉ゴム株式会社製ゴルフクラブタイミングハーモナイザーを用い、シャフトの先端(細径端部)にヘッドを模擬した質量196gの重りを取り付け、シャフトの太径端部から180mmを固定して、シャフトの固有振動数を求めた。
(2)キックポイント
特開平10−225541号公報に記載されている方法により求めた。
すなわち、株式会社フォーティーン製キックポイントゲージFG−105RMを用いて、決定したキックポイント位置(チップ端、すなわち細径端部からの長さ)をシャフト全長に対する比率で表した。
(3)トルク(シャフト全体の捩れ角)
特開平5−337223号公報に記載されているトルク(シャフト全体の捻れ角)の測定方法に従って測定した。
すなわち、細径端部と太径端部とをそれぞれチャックでクランプし、各チャックを介して、シャフトに対して互いに逆方向の捩れトルク(13.9kgcm)を加えて、捩れ角を測定した。
(4)EI分布
シャフトのEI値は、特開2001−120696公報に記載の方法で求めた。
すなわち、シャフトを支点間距離300mmで支持し、シャフトの細径端部からの距離L(mm)の位置に荷重20kgを加え、距離L(mm)における曲げたわみ量(mm)を求めた。そして、支点間距離をa(mm)、荷重をb(kg)、曲げたわみ量をc(mm)とし、これらの値から下記式により、距離L(mm)におけるEI値[kgf・mm2]を求めた。
EI値=(1/48)×(b・a3/c)
(5)外径の測定
シャフトの距離L=0〜350mmにおける外径は、マイクロメーターを使用し、25mm間隔で測定した。
【0034】
(比較例1)
図7に示した形状に切断したプリプレグ(パターン1〜6)に替えたほかは実施例1と同様に処理して、シャフトを得て、実施例1と同様の処理を行った。
なお、パターン2は、炭素繊維が芯金の軸方向に対して+45°に配向したプリプレグと−45°に配向したプリプレグとを2枚重ね合わせたものであり、パターン2の図7中左側の端部において、2枚の巻き始め端部が9mmずれるように重ねられ、図7中右側の端部において、2枚の巻き始め端部が20mmずれるように重ねられている。また、図7中の各部分のサイズは以下のとおりである。
α20=200mm、α21=63mm、α22=100mm、α23=84mm、α24=1190mm、α25=67mm、α26=149mm、α27=300mm、α28=22mm、α29=220mm、α30=29mm、α31=1190mm、α32=46mm、α33=97mm、α34=1190mm、α35=48mm、α36=99mm、α37=110mm、α38=100mm
【0035】
得られたa1、a2、R12、R22、a1/a2の各値と、シャフトの長さ、質量、振動数、トルク、キックポイントを表2に示す。
また、LとδLとの関係、Lと外径との関係、LとEI値との関係をそれぞれ図9、図10、図11に示す。
そして、このシャフトから実施例1と同様にして試験用のドライバーゴルフクラブを製作し、ボールの回転、飛距離などを算出し、平均値を求めた。結果を表3に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
なお、サイドスピンは、正がスライス回転、負がフック回転である。
【0038】
(実施例2)
図2(b)に示す形状の芯金(鉄製)30を用意した。この芯金30における各部分の外径、長さ、テーパー度は以下のとおりである。
P1の外径=4.10mm、P3の外径=7.05mm、P4およびP5の外径=13.00mm、P1〜P2の距離(l1)=170mm、P2〜P3の距離(l2)=90mm、 P1〜P4の距離(l3)=960mm、P1〜P5の距離(l4)=1500mm、P1〜P2のテーパー度=8.50/1000、P3〜P4のテーパー度=8.50/1000
【0039】
ついで、この芯金30に、図8に示した形状に切断したプリプレグ(パターン1〜6)を巻きつけ、その上に20mm幅のポリプロピレン製収縮テープをピッチ2mmで巻きつけた。
なお、パターン2は、炭素繊維が芯金の軸方向に対して+45°に配向したプリプレグと−45°に配向したプリプレグとを2枚重ね合わせたものであり、パターン2の図8中左側の端部において、2枚の巻き始め端部が9mmずれるように重ねられ、図8中右側の端部において、2枚の巻き始め端部が20mmずれるように重ねられている。また、図8中の各部分のサイズは以下のとおりである。
α40=210mm、α41=45mm、α42=120mm、α43=62mm、α44=1190mm、α45=63mm、α46=143mm、α47=300mm、α48=21mm、α49=220mm、α50=29mm、α51=1190mm、α52=42mm、α53=97mm、α54=1190mm、α55=46mm、α56=99mm、α57=140mm、α58=130mm
また、芯金30におけるプリプレグを巻きつける位置は、細径端部から測って50mmから1240mmまでの部分とした。
【0040】
ついで、これを135℃に加熱した加熱炉に2時間入れ、取り出したのち常温に冷めたところで、前記収縮テープを剥ぎ取り、表面を研磨し、シャフトを得た。また、使用したプリプレグの詳細は、表2に示すとおりである。
【0041】
このシャフトについて、実施例1と同様にして、a1、a2、R12、R22、a1/a2の各値を得た。これらの値と、シャフトの長さ、質量、振動数、トルク、キックポイントを表4に示す。
また、LとδLとの関係、Lと外径との関係、LとEI値との関係をそれぞれ図9、図10、図11に示す。
【0042】
ついで、得られたシャフトを長さ44インチ(1118mm)にカットした後、細径側にヘッド(体積:460ml、ロフト:10度)、太径側に市販のグリップを装着し、長さ45インチ(1143mm)の試験用のドライバーゴルフクラブを製作した。この際、細径端部のカット長さは0mm、太径端部のカット長さは50mmとした。
このクラブを株式会社ミヤマエ製ゴルフ試打テストロボット「SHOTROBO IV」を使用し、各10球ずつ打ち、AccuSport社製「AccuVector」を用いてボールの回転、飛距離などを算出し、平均値を求めた。結果を表5に示す。
【0043】
(実施例3および比較例2)
実施例3では図12に示した形状に切断したプリプレグ(パターン1〜6)に替え、比較例2では図13に示した形状に切断したプリプレグ(パターン1〜6)に替えたほかは実施例2と同様に処理して、シャフトを得て、それぞれ実施例2と同様の処理を行った。
なお、図12のパターン2は、炭素繊維が芯金の軸方向に対して+45°に配向したプリプレグと−45°に配向したプリプレグとを2枚重ね合わせたものであり、パターン2の図12中左側の端部において、2枚の巻き始め端部が9mmずれるように重ねられ、図12中右側の端部において、2枚の巻き始め端部が20mmずれるように重ねられている。また、図12中の各部分のサイズは以下のとおりである。
α60=210mm、α61=29mm、α62=120mm、α63=40mm、α64=1190mm、α65=63mm、α66=143mm、α67=300mm、α68=21mm、α69=220、α70=29mm、α71=1190mm、α72=42mm、α73=97mm、α74=1190mm、α75=46mm、α76=99mm、α77=150mm、α78=135mm
【0044】
図13のパターン2は、炭素繊維が芯金の軸方向に対して+45°に配向したプリプレグと−45°に配向したプリプレグとを2枚重ね合わせたものであり、パターン2の図13中左側の端部において、2枚の巻き始め端部が9mmずれるように重ねられ、図13中右側の端部において、2枚の巻き始め端部が20mmずれるように重ねられている。また、図13中の各部分のサイズは以下のとおりである。
α80=210mm、α81=45mm、α82=120mm、α83=62mm、α84=1190mm、α85=63mm、α86=143mm、α87=300mm、α88=21mm、α89=220mm、α90=29mm、α91=1190mm、α92=42mm、α93=97mm、α94=1190mm、α95=46mm、α96=99mm、α97=140mm、α98=130mm
【0045】
得られたa1、a2、R12、R22、a1/a2の各値と、シャフトの長さ、質量、振動数、トルク、キックポイントを表4に示す。
また、LとδLとの関係、Lと外径との関係、LとEI値との関係をそれぞれ図9、図10、図11に示す。
そして、このシャフトから実施例2と同様にして試験用のドライバーゴルフクラブを製作し、ボールの回転、飛距離などを算出し、平均値を求めた。結果を表5に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
なお、サイドスピンは、正がスライス回転、負がフック回転である。
【0048】
表2〜5の結果から明らかなように、各実施例のシャフトから得られたゴルフクラブによれば、良好なヘッドスピード、ボールスピード、飛距離が得られるとともに、バックスピンの程度が適度で、かつ、サイドスピンも抑制され、スライスに悩むプレーヤーに好適なシャフトを提供することができた。
また、得られたa1/a2の各値や、相関係数の二乗R12、R22の値を指標として、このシャフトを備えたゴルフクラブの特性を推測できることが示された。
【符号の説明】
【0049】
10 シャフト
11 上部支持ジグ
12 下部支持ジグ
13 錘
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブ用シャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブは、ゴルフクラブ用シャフト(以下シャフトという。)とこれに装着されたゴルフクラブ用ヘッド(以下ヘッドという。)とを具備している。ゴルフクラブのうち、慣性モーメントが大きい大型ヘッドを備えたものの場合、ゴルフボールをヘッドのスイートスポットの中心以外で打撃しても、ヘッドが水平面内で回転し難いので、打球の方向が安定するといわれている。
ところで、フェースが開いた状態でスイングし、スライスに悩むアベレージプレーヤーは、打球時にヘッドを返すことで打球の方向を制御している。しかし、大型のヘッドはその大きな慣性モーメントのためヘッドが返りにくいことから、相変わらず打球がスライスすることになる。
そこで、大型ヘッドと先調子シャフト(例えば、特許文献1〜5参照。)とを組み合わせ、ヘッドを返しやすくすれば、打球の方向が改善されると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−141754号公報
【特許文献2】特開平9−164600号公報
【特許文献3】特開平11−99229号公報
【特許文献4】特開平11−99230号公報
【特許文献5】特開2004−290391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の先調子シャフトを質量も大きい大型のヘッドと組み合わせたのでは、打球時にトウダウンしやすく、フェース上の打球場所が安定せずバックスピンがかかり過ぎたり、または足りなかったりするため、結果として飛距離が不安定になる問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、打球時のトウダウンが抑えられるために、フェース上の打球場所が安定してバックスピンがかかりすぎることなく、ヘッドも返しやすく、よって、ヘッドの走り感、ボールのつかまり感が付与され、スライスに悩むプレーヤーに好適なシャフトを提供することを課題とする。また、ゴルフクラブの特性の指標となるようなシャフトの特性値を測定する好適な測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は、体積が350mlを超えるゴルフクラブ用ヘッドが装着されるゴルフクラブ用シャフトであって、細径端部から25mmごとの距離L(mm)と、下記測定方法により計測された前記距離Lの位置における曲げ変位δL(mm)とからなる曲げ変位群(L,δL)を(x,y)とし、該(x,y)を100≦x≦175の群と225≦x≦300の群との2つの群に分けて、それぞれすべての(x,y)を使った最小二乗法により、下記式(1)および(2)に直線回帰した場合、下記式(1)の相関係数の二乗R12と下記式(2)の相関係数の二乗R22とがいずれも0.95以上であり、かつ、下記式(3)の関係を満足することを特徴とするシャフトにある。
100≦x≦175において、y=−a1x+b1・・・(1)
225≦x≦300において、y=−a2x+b2・・・(2)
a1/a2≧0.8・・・(3)
【0007】
「曲げ変位δL(mm)の測定方法」
水平方向に50mm離して設置した上部支持ジグと下部支持ジグとでゴルフクラブ用シャフトの軸が水平となるようにシャフトを挟持、固定する。この際、シャフトが下部支持ジグに接する位置を距離L=100mmの位置とする。次に下部支持ジグからシャフトの軸に沿って615mm離れた位置に質量2kgの錘をかけ、下部支持ジグからシャフトの軸に沿って700mm離れた位置の曲げ変位量δ100(mm)を計測する。次にシャフトが下部支持ジグに接する位置を太径側に25mmずつ移動させて、その際の下部支持ジグからシャフトの軸に沿って700mm離れた位置の各曲げ変位量δ125,δ150,・・・,δ300(mm)を繰り返し計測し、曲げ変位群(L,δL)=(x,y)を得る。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、打球時のトウダウンが抑えられるために、フェース上の打球場所が安定してバックスピンがかかりすぎることなく、ヘッドも返しやすく、よって、ヘッドの走り感、ボールのつかまり感が付与され、スライスに悩むプレーヤーに好適なシャフトを提供できる。また、ゴルフクラブの特性の指標となるようなシャフトの特性値を測定する好適な測定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明での曲げ変位δL(mm)の測定方法を示す概略図である。
【図2】実施例で用いた芯金の形状を示す平面図である。
【図3】プリプレグの形状を示すパターン図である(実施例1)。
【図4】LとδLとの関係を示すグラフである(実施例1、比較例1)。
【図5】Lと外径との関係を表すグラフである(実施例1、比較例1)。
【図6】LとEI値との関係を表すグラフである(実施例1、比較例1)。
【図7】プリプレグの形状を示すパターン図である(比較例1)。
【図8】プリプレグの形状を示すパターン図である(実施例2)。
【図9】LとδLとの関係を表すグラフである(実施例2、実施例3、比較例2)。
【図10】Lと外径との関係を表すグラフである(実施例2、実施例3、比較例2)。
【図11】LとEI値との関係を表すグラフである(実施例2、実施例3、比較例2)。
【図12】プリプレグの形状を示すパターン図である(実施例3)。
【図13】プリプレグの形状を示すパターン図である(比較例2)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
[シャフト]
本発明のシャフトは、軸方向に垂直な面の外径が長さ方向の一端から他端に向かって大きくなるように形成されたものである。以下、外径が小さい側の端部を細径端部と言い、外径が大きい側の端部を太径端部という。また、シャフトの長さ方向の中心から、細径端部側を細径部、太径端部側を太径部という。
【0011】
本発明のシャフトは、細径端部から25mmごとの距離L(mm)と、下記測定方法により計測された前記距離Lの位置における曲げ変位δL(mm)とからなる曲げ変位群(L,δL)を(x,y)とし、これを100≦x≦175の群と225≦x≦300の群との2つの群に分けて、それぞれすべての(x,y)を使った最小二乗法により、下記式(1)および(2)に直線回帰した場合、下記式(1)の相関係数の二乗R12と下記式(2)の相関係数の二乗R22とがいずれも0.95以上であり、かつ、下記式(3)の関係を満足するものである。
100≦x≦175において、y=−a1x+b1・・・(1)
225≦x≦300において、y=−a2x+b2・・・(2)
a1/a2≧0.8・・・(3)
【0012】
式(1)の相関係数の二乗R12が0.95以上であると、シャフトのヘッド取り付け位置近傍(100≦x≦175)における剛性分布が均一であり、斑がない。また、式(2)の相関係数の二乗R22が0.95以上であると、シャフトの225≦x≦300の部分における剛性分布が均一であり、斑がない。よって、これらR12とR22とがともに0.95以上であると、式(3)の関係を満足する場合の後述の効果が十分に発揮される。
【0013】
式(3)に示すように、a1とa2との比(a1/a2)が0.8以上であると、打球時のトウダウンが抑えられ、ヘッドが返りやすく、スライスが起こりにくいシャフトとすることができる。このようなシャフトによれば、例えば体積が350mlを超えるような慣性モーメントが大きな大型のヘッドを装着した場合でも、打球時にスイートスポットをはずすことなく、フェースの真正面でゴルフボールを打球でき、ヘッドの走り感、ボールのつかまり感が付与されたゴルフクラブを得ることができる。
【0014】
また、a1、a2のそれぞれの好ましい範囲は、いずれも0.05〜0.3[mm/mm]であり、a1とa2との比(a1/a2)の好ましい範囲は下記式(4)の範囲である。このような範囲であると、よりボールのつかまり感が向上する。
6≧a1/a2≧0.8・・・(4)
【0015】
本発明においては、以上説明したように、曲げ変位群(L,δL)を100≦x≦175である群と225≦x≦300である群との2つの群に分けて、それぞれを最小二乗法により直線回帰している。これは、本発明者の検討により、175<x<225の部分を境にして、シャフトの剛さの傾向が変わることが本発明の効果を得るうえで重要であることが明らかとなったためである。よって、本発明では、曲げ変位群(L,δL)を100≦x≦175である群と225≦x≦300である群との2つの群に分けて、シャフトの剛さについて検討を実施した。
また、xが100mm未満の部分は、その30〜100%の部分が後にヘッドとの接着部分となるため、この部分の剛さはシャフトの特性への影響が非常に小さい。よって、本発明では、この部分の剛さ、曲げ変位については考慮していない。
【0016】
次に、シャフト上の距離L(mm)における曲げ変位δL(mm)の測定方法について、図1を示して説明する。なお、図1中、上下方向が鉛直方向であり、左右方向が水平方向である。
まず、シャフト10を挟持するための一対の上部支持ジグ11と下部支持ジグ12とを用意し、これらを互いに水平方向に距離A=50mmだけ離して設置する。ついで、上部支持ジグ11と下部支持ジグ12とでシャフト10の軸が水平となるようにこれを挟持、固定する。この際、シャフト10の細径端部から100mmの位置、すなわち距離L=100mmの位置が下部支持ジグ12に接するようにする。ついで、下部支持ジグ12からシャフト10の軸に沿って距離B=615mmだけ離れた位置に質量2kgの錘13をかけ、下部支持ジグ12からシャフト10の軸に沿って距離C=700mmだけ離れた位置の変位量を測定器14で測定し、その値を距離L=100mmにおける曲げ変位量δ100(mm)とする(計測工程)。
そして、シャフト10を矢印方向に25mmずつ移動させることによって、シャフト10が下部支持ジグ12に接する位置を太径側に25mmずつ移動させ、すなわち、距離Lを25mmずつ増加させ、その際の下部支持ジグ12からシャフト10の軸に沿って700mm離れた位置のシャフトの各曲げ変位量δ125,δ150,・・・,δ300(mm)を計測器14によりそれぞれ同様に計測し、曲げ変位群(L,δL)=(x,y)=(100,δ100),(125,δ125),(150,δ150),・・・,(300,δ300)を得る(反復工程)。なお、この際、錘13をかける位置もシャフト10の移動にともなって同じく25mmずつ移動させ、距離Bは常に615mmとなるようにして測定する。
【0017】
ついで、こうして計測工程と反復工程とで得られた曲げ変位群(L,δL)を2つの直線に直線回帰する。
具体的には、計測工程と反復工程とで得られた曲げ変位群(L,δL)を(x,y)とし、この曲げ変位群を100≦x≦175の群と225≦x≦300の群との2つの群に分けて、それぞれすべての(x,y)を使った最小二乗法により、下記式(1)および(2)とに直線回帰する(回帰工程)。
100≦x≦175において、y=−a1x+b1・・・(1)
225≦x≦300において、y=−a2x+b2・・・(2)
【0018】
すなわち、n個のデータ、(X1,Y1)、(X2,Y2)、(X3,Y3)、・・・、(Xn,Yn)がある場合、以下の式により、直線Y=aX+bにおけるaおよびbと、相関係数の二乗R2とが得られることが一般に知られている(最小二乗法)。よって、これに沿って、(L,δL)を(x,y)として、2つの直線(上記式(1)および(2))に回帰することによって、a1、b1、a2、b2、R12、R22がそれぞれ得られる。
【0019】
【数1】
【0020】
以上説明したように、曲げ変位群を100≦x≦175の群と225≦x≦300の群との2つの群に分けて、それぞれすべての(x,y)を使った最小二乗法により、式(1)および(2)に直線回帰した場合に、式(1)の相関係数の二乗R12と式(2)の相関係数の二乗R22とがいずれも0.95以上であり、かつ、式(3)の関係を満足するシャフトによれば、打球時のトウダウンが抑えられるために、フェース上の打球場所が安定してバックスピンがかかりすぎることなく、ヘッドも返しやすく、よって、ヘッドの走り感、ボールのつかまり感が付与され、スライスに悩むプレーヤーに好適なシャフトを提供できる。
【0021】
このような本発明のシャフトの材質には特に制限はなく、例えば、エポキシ樹脂などのマトリクス樹脂と炭素繊維などの強化繊維とからなる繊維強化樹脂製のものが挙げられる。
また、本発明のシャフトの製造方法としても特に制限はないが、繊維強化樹脂製のものの場合には、未硬化のマトリクス樹脂を強化繊維に含浸したシート状のプリプレグを用意し、このプリプレグを棒状の芯金(マンドレル)に巻回した後、硬化させ、芯金を抜き取る、いわゆるシートラップ法が挙げられる。
シートラップ法では、プリプレグとして、面積や含有する強化繊維の向きが異なる複数種のものを用意し、これらを1枚ずつ順次芯金に巻回し、多層構造のシャフトを製造することが一般的であるが、この際に、各プリプレグの面積、各プリプレグが含有する強化繊維の向き、各プリプレグを巻回する位置などを調整したり、プリプレグの層数を変更したりすることにより、本発明のシャフトを製造することができる。また、この際に、シャフトのテーパー度やシャフトの外径を適宜調整することも、本発明のシャフトを製造するうえで有効である。
また、本発明のシャフトは、部分的に異なる材質から形成されていてもよく、例えば、175<x<225の部分の材質をx≦175の部分やx≧225の部分とは異ならせることで、各部分を所望の剛さとなるようにしてもよい。
【0022】
シャフトの長さ、質量などは適宜設定できるが、特に長さは990〜1219mmの範囲が好ましい。
また、こうして得られたシャフトは、必要に応じて細径端部側や太径端部側がカットされた後、細径側にはヘッドが、太径側にはグリップが装着され、ゴルフクラブとされる。
ここで細径端部や太径端部をカットする際、細径端部のカット長さが50mm以下、太径端部のカット長さが229mm以下であれば、これらのカットがシャフトの特性に与える影響をほぼ無視することができる。
【0023】
[シャフトの特性値の測定方法]
本発明で採用しているシャフトの特性値の測定方法は、図1のように、水平方向に所定間隔離して設置した上部支持ジグ11と下部支持ジグ12とで、シャフト10の細径部における細径端部からの距離L(mm)の位置が下部支持ジグ12に接し、かつ、シャフト10の軸が水平となるようにシャフト10を挟持、固定してから、シャフト10の太径部に所定質量の錘をかけ、シャフト上の所定位置の曲げ変位量δL(mm)を計測する計測工程と、シャフトが下部支持ジグに接する位置を太径側に所定の長さずつ移動させて距離Lを増加させて、計測工程を繰り返す反復工程と、計測工程と反復工程とで得られた曲げ変位群(L,δL)を(x,y)とし、100≦x≦175の群と225≦x≦300の群との2つの群に分けて、それぞれすべての(x,y)を使った最小二乗法により、下記式(1)および(2)とに直線回帰する回帰工程とを有する。
100≦x≦175において、y=−a1x+b1・・・(1)
225≦x≦300において、y=−a2x+b2・・・(2)
【0024】
具体的には、先に本発明のシャフト10について説明したとおりであり、上部支持ジグ11と下部支持ジグ12との間隔を例えばA=50mmとするとともに、シャフト10の細径部のうち例えば距離L=100mmの位置が下部支持ジグ12に接するようにシャフト10をまず固定する。ついで、シャフト10の太径部、例えば下部支持ジグ12からシャフト10の軸に沿って距離B=615mmだけ離れた位置に例えば質量2kgの錘をかけ、下部支持ジグ12からシャフト10の軸に沿って例えば距離C=700mmだけ離れた位置の変位量を計測器14にて計測し、その値を距離L=100mmにおける曲げ変位量δ100(mm)とする(計測工程)。
そして、シャフト10が下部支持ジグ12に接する位置を太径側に例えば25mmずつ移動させて、その際の下部支持ジグ12からシャフト10の軸に沿って700mm離れた位置のシャフトの各曲げ変位量δ125,δ150,・・・,δ300(mm)を計測し、曲げ変位群(L,δL)=(x,y)=(100,δ100),(125,δ125),(150,δ150),・・・,(300,δ300)を得る(反復工程)。
【0025】
ついで、計測工程と反復工程とで得られた曲げ変位群(L,δL)を(x,y)とし、これを100≦x≦175の群と225≦x≦300の群との2つの群に分けて、それぞれすべての(x,y)を使った最小二乗法により、式(1)および(2)とに直線回帰する(回帰工程)。
【0026】
そして、得られたa1、b1、a2、b2の各値や、相関係数の二乗R12、R22の値をシャフトの特性値とし、これを指標として、このシャフトから得られたゴルフクラブの特性を推測することができる。
具体的には、相関係数の二乗R12とR22とがともに0.95以上であり、a1とa2との比(a1/a2)が0.8以上であると、打球時のトウダウンが抑えられ、ヘッドが返りやすく、スライスが起こりにくいシャフトとすることができる。
このようなシャフトによれば、例えば体積が350mlを超えるような慣性モーメントが大きな大型のヘッドを装着した場合でも、打球時にスイートスポットをはずすことなく、フェースの真正面でゴルフボールを打球でき、ヘッドの走り感、ボールのつかまり感が付与されたゴルフクラブを得ることができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例に基づき本発明を更に具体的に説明する。
(実施例1)
図2(a)に示す形状の芯金20(鉄製)を用意した。この芯金20における各部分の外径、長さ、テーパー度は以下のとおりである。
P1の外径=4.25mm、P3の外径=7.10mm、P4およびP5の外径=13.00mm、P1〜P2の距離(l1)=150mm、P2〜P3の距離(l2)=100mm、P1〜P4の距離(l3)=960mm、P1〜P5の距離(l4)=1500mm、P1〜P2のテーパー度=8.30/1000、P3〜P4のテーパー度=8.30/1000
【0028】
ついで、この芯金20に、図3に示した形状に切断したプリプレグ(パターン1〜6)を順次巻きつけ、その上に20mm幅のポリプロピレン製収縮テープをピッチ2mmで巻きつけた。
なお、パターン2および3はいずれも、炭素繊維(CF)が芯金の軸方向に対して+45°に配向したプリプレグと−45°に配向したプリプレグとを2枚重ね合わせたものである。また、パターン2では、パターン2の図3中左側の端部において、2枚の巻き始め端部(プリプレグの図中上端)が9mmずれるように重ねられ、図3中右側の端部において、2枚の巻き始め端部が20mmずれるように重ねられている。また、図3中の各部分のサイズは以下のとおりである。
α1=200mm、α2=44mm、α3=100mm、α4=60mm、α5=1190mm、α6=67mm、α7=149mm、α8=600mm、α9=22mm、α10=37mm、α11=1190mm、α12=45mm、α13=97mm、α14=1190mm、α15=48mm、α16=99mm、α17=110mm、α18=100mm、α19=500mm
また、芯金20におけるプリプレグを巻きつける位置は、細径端部から測って50mmから1240mmまでの部分とした。
【0029】
ついで、これを135℃に加熱した加熱炉に2時間入れ、取り出したのち常温に冷めたところで、前記収縮テープを剥ぎ取り、表面を研磨し、シャフトを得た。使用した各プリプレグの詳細は、表1に示すとおりである。
【0030】
【表1】
【0031】
このシャフトについて、図1を示して説明した上述の「曲げ変位δL(mm)の測定方法」に沿って、曲げ変位群(L,δL)を求め、これを(x,y)とし、100≦x≦175の群と225≦x≦300の群との2つの群に分けて、それぞれすべての(x,y)を使った最小二乗法により、式(1)および(2)に直線回帰した。なお、図1中、A=50mm、B=615mm、C=700mm、錘の質量2kgとし、シャフトは25mmずつ矢印方向に移動させて測定を行った。
得られたa1、a2、R12、R22、a1/a2の各値と、シャフトの長さ、質量、振動数、トルク、キックポイントを表2に示す。
また、LとδLとの関係、Lと外径との関係、LとEI値との関係をそれぞれ図4、図5、図6に示す。
【0032】
ついで、得られたシャフトを長さ44インチ(1118mm)にカットした後、細径側にヘッド(体積:400ml、ロフト:9度)、太径側に市販のグリップを装着し、長さ44.75インチ(1137mm)の試験用のドライバーゴルフクラブを製作した。この際、細径端部のカット長さは0mm、太径端部のカット長さは50mmとした。
このクラブを上級者ゴルファー3名に各5球ずつ打ってもらい、ブリヂストンスポーツ株式会社製「サイエンスアイ・フィールド」を用いてボールの回転、飛距離などを算出し、平均値を求めた。結果を表3に示す。
【0033】
(1)振動数
特開平10−225541号公報に記載されている方法により測定した。
すなわち、藤倉ゴム株式会社製ゴルフクラブタイミングハーモナイザーを用い、シャフトの先端(細径端部)にヘッドを模擬した質量196gの重りを取り付け、シャフトの太径端部から180mmを固定して、シャフトの固有振動数を求めた。
(2)キックポイント
特開平10−225541号公報に記載されている方法により求めた。
すなわち、株式会社フォーティーン製キックポイントゲージFG−105RMを用いて、決定したキックポイント位置(チップ端、すなわち細径端部からの長さ)をシャフト全長に対する比率で表した。
(3)トルク(シャフト全体の捩れ角)
特開平5−337223号公報に記載されているトルク(シャフト全体の捻れ角)の測定方法に従って測定した。
すなわち、細径端部と太径端部とをそれぞれチャックでクランプし、各チャックを介して、シャフトに対して互いに逆方向の捩れトルク(13.9kgcm)を加えて、捩れ角を測定した。
(4)EI分布
シャフトのEI値は、特開2001−120696公報に記載の方法で求めた。
すなわち、シャフトを支点間距離300mmで支持し、シャフトの細径端部からの距離L(mm)の位置に荷重20kgを加え、距離L(mm)における曲げたわみ量(mm)を求めた。そして、支点間距離をa(mm)、荷重をb(kg)、曲げたわみ量をc(mm)とし、これらの値から下記式により、距離L(mm)におけるEI値[kgf・mm2]を求めた。
EI値=(1/48)×(b・a3/c)
(5)外径の測定
シャフトの距離L=0〜350mmにおける外径は、マイクロメーターを使用し、25mm間隔で測定した。
【0034】
(比較例1)
図7に示した形状に切断したプリプレグ(パターン1〜6)に替えたほかは実施例1と同様に処理して、シャフトを得て、実施例1と同様の処理を行った。
なお、パターン2は、炭素繊維が芯金の軸方向に対して+45°に配向したプリプレグと−45°に配向したプリプレグとを2枚重ね合わせたものであり、パターン2の図7中左側の端部において、2枚の巻き始め端部が9mmずれるように重ねられ、図7中右側の端部において、2枚の巻き始め端部が20mmずれるように重ねられている。また、図7中の各部分のサイズは以下のとおりである。
α20=200mm、α21=63mm、α22=100mm、α23=84mm、α24=1190mm、α25=67mm、α26=149mm、α27=300mm、α28=22mm、α29=220mm、α30=29mm、α31=1190mm、α32=46mm、α33=97mm、α34=1190mm、α35=48mm、α36=99mm、α37=110mm、α38=100mm
【0035】
得られたa1、a2、R12、R22、a1/a2の各値と、シャフトの長さ、質量、振動数、トルク、キックポイントを表2に示す。
また、LとδLとの関係、Lと外径との関係、LとEI値との関係をそれぞれ図9、図10、図11に示す。
そして、このシャフトから実施例1と同様にして試験用のドライバーゴルフクラブを製作し、ボールの回転、飛距離などを算出し、平均値を求めた。結果を表3に示す。
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
なお、サイドスピンは、正がスライス回転、負がフック回転である。
【0038】
(実施例2)
図2(b)に示す形状の芯金(鉄製)30を用意した。この芯金30における各部分の外径、長さ、テーパー度は以下のとおりである。
P1の外径=4.10mm、P3の外径=7.05mm、P4およびP5の外径=13.00mm、P1〜P2の距離(l1)=170mm、P2〜P3の距離(l2)=90mm、 P1〜P4の距離(l3)=960mm、P1〜P5の距離(l4)=1500mm、P1〜P2のテーパー度=8.50/1000、P3〜P4のテーパー度=8.50/1000
【0039】
ついで、この芯金30に、図8に示した形状に切断したプリプレグ(パターン1〜6)を巻きつけ、その上に20mm幅のポリプロピレン製収縮テープをピッチ2mmで巻きつけた。
なお、パターン2は、炭素繊維が芯金の軸方向に対して+45°に配向したプリプレグと−45°に配向したプリプレグとを2枚重ね合わせたものであり、パターン2の図8中左側の端部において、2枚の巻き始め端部が9mmずれるように重ねられ、図8中右側の端部において、2枚の巻き始め端部が20mmずれるように重ねられている。また、図8中の各部分のサイズは以下のとおりである。
α40=210mm、α41=45mm、α42=120mm、α43=62mm、α44=1190mm、α45=63mm、α46=143mm、α47=300mm、α48=21mm、α49=220mm、α50=29mm、α51=1190mm、α52=42mm、α53=97mm、α54=1190mm、α55=46mm、α56=99mm、α57=140mm、α58=130mm
また、芯金30におけるプリプレグを巻きつける位置は、細径端部から測って50mmから1240mmまでの部分とした。
【0040】
ついで、これを135℃に加熱した加熱炉に2時間入れ、取り出したのち常温に冷めたところで、前記収縮テープを剥ぎ取り、表面を研磨し、シャフトを得た。また、使用したプリプレグの詳細は、表2に示すとおりである。
【0041】
このシャフトについて、実施例1と同様にして、a1、a2、R12、R22、a1/a2の各値を得た。これらの値と、シャフトの長さ、質量、振動数、トルク、キックポイントを表4に示す。
また、LとδLとの関係、Lと外径との関係、LとEI値との関係をそれぞれ図9、図10、図11に示す。
【0042】
ついで、得られたシャフトを長さ44インチ(1118mm)にカットした後、細径側にヘッド(体積:460ml、ロフト:10度)、太径側に市販のグリップを装着し、長さ45インチ(1143mm)の試験用のドライバーゴルフクラブを製作した。この際、細径端部のカット長さは0mm、太径端部のカット長さは50mmとした。
このクラブを株式会社ミヤマエ製ゴルフ試打テストロボット「SHOTROBO IV」を使用し、各10球ずつ打ち、AccuSport社製「AccuVector」を用いてボールの回転、飛距離などを算出し、平均値を求めた。結果を表5に示す。
【0043】
(実施例3および比較例2)
実施例3では図12に示した形状に切断したプリプレグ(パターン1〜6)に替え、比較例2では図13に示した形状に切断したプリプレグ(パターン1〜6)に替えたほかは実施例2と同様に処理して、シャフトを得て、それぞれ実施例2と同様の処理を行った。
なお、図12のパターン2は、炭素繊維が芯金の軸方向に対して+45°に配向したプリプレグと−45°に配向したプリプレグとを2枚重ね合わせたものであり、パターン2の図12中左側の端部において、2枚の巻き始め端部が9mmずれるように重ねられ、図12中右側の端部において、2枚の巻き始め端部が20mmずれるように重ねられている。また、図12中の各部分のサイズは以下のとおりである。
α60=210mm、α61=29mm、α62=120mm、α63=40mm、α64=1190mm、α65=63mm、α66=143mm、α67=300mm、α68=21mm、α69=220、α70=29mm、α71=1190mm、α72=42mm、α73=97mm、α74=1190mm、α75=46mm、α76=99mm、α77=150mm、α78=135mm
【0044】
図13のパターン2は、炭素繊維が芯金の軸方向に対して+45°に配向したプリプレグと−45°に配向したプリプレグとを2枚重ね合わせたものであり、パターン2の図13中左側の端部において、2枚の巻き始め端部が9mmずれるように重ねられ、図13中右側の端部において、2枚の巻き始め端部が20mmずれるように重ねられている。また、図13中の各部分のサイズは以下のとおりである。
α80=210mm、α81=45mm、α82=120mm、α83=62mm、α84=1190mm、α85=63mm、α86=143mm、α87=300mm、α88=21mm、α89=220mm、α90=29mm、α91=1190mm、α92=42mm、α93=97mm、α94=1190mm、α95=46mm、α96=99mm、α97=140mm、α98=130mm
【0045】
得られたa1、a2、R12、R22、a1/a2の各値と、シャフトの長さ、質量、振動数、トルク、キックポイントを表4に示す。
また、LとδLとの関係、Lと外径との関係、LとEI値との関係をそれぞれ図9、図10、図11に示す。
そして、このシャフトから実施例2と同様にして試験用のドライバーゴルフクラブを製作し、ボールの回転、飛距離などを算出し、平均値を求めた。結果を表5に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
なお、サイドスピンは、正がスライス回転、負がフック回転である。
【0048】
表2〜5の結果から明らかなように、各実施例のシャフトから得られたゴルフクラブによれば、良好なヘッドスピード、ボールスピード、飛距離が得られるとともに、バックスピンの程度が適度で、かつ、サイドスピンも抑制され、スライスに悩むプレーヤーに好適なシャフトを提供することができた。
また、得られたa1/a2の各値や、相関係数の二乗R12、R22の値を指標として、このシャフトを備えたゴルフクラブの特性を推測できることが示された。
【符号の説明】
【0049】
10 シャフト
11 上部支持ジグ
12 下部支持ジグ
13 錘
【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積が350mlを超えるゴルフクラブ用ヘッドが装着されるゴルフクラブ用シャフトであって、
細径端部から25mmごとの距離L(mm)と、下記測定方法により計測された前記距離Lの位置における曲げ変位δL(mm)とからなる曲げ変位群(L,δL)を(x,y)とし、該(x,y)を100≦x≦175の群と225≦x≦300の群との2つの群に分けて、それぞれすべての(x,y)を使った最小二乗法により、下記式(1)および(2)に直線回帰した場合、
下記式(1)の相関係数の二乗R12と下記式(2)の相関係数の二乗R22とがいずれも0.95以上であり、かつ、下記式(3)の関係を満足することを特徴とするゴルフクラブ用シャフト。
100≦x≦175において、y=−a1x+b1・・・(1)
225≦x≦300において、y=−a2x+b2・・・(2)
a1/a2≧0.8・・・(3)
「曲げ変位δL(mm)の測定方法」
水平方向に50mm離して設置した上部支持ジグと下部支持ジグとでゴルフクラブ用シャフトの軸が水平となるようにゴルフクラブ用シャフトを挟持、固定する。この際、ゴルフクラブ用シャフトが下部支持ジグに接する位置を距離L=100mmの位置とする。次に下部支持ジグからゴルフクラブ用シャフトの軸に沿って615mm離れた位置に質量2kgの錘をかけ、下部支持ジグからゴルフクラブ用シャフトの軸に沿って700mm離れた位置の曲げ変位量δ100(mm)を計測する。次にゴルフクラブ用シャフトが下部支持ジグに接する位置を太径側に25mmずつ移動させて、その際の下部支持ジグからゴルフクラブ用シャフトの軸に沿って700mm離れた位置の各曲げ変位量δ125,δ150,・・・,δ300(mm)を計測し、曲げ変位群(L,δL)=(x,y)を得る。
【請求項1】
体積が350mlを超えるゴルフクラブ用ヘッドが装着されるゴルフクラブ用シャフトであって、
細径端部から25mmごとの距離L(mm)と、下記測定方法により計測された前記距離Lの位置における曲げ変位δL(mm)とからなる曲げ変位群(L,δL)を(x,y)とし、該(x,y)を100≦x≦175の群と225≦x≦300の群との2つの群に分けて、それぞれすべての(x,y)を使った最小二乗法により、下記式(1)および(2)に直線回帰した場合、
下記式(1)の相関係数の二乗R12と下記式(2)の相関係数の二乗R22とがいずれも0.95以上であり、かつ、下記式(3)の関係を満足することを特徴とするゴルフクラブ用シャフト。
100≦x≦175において、y=−a1x+b1・・・(1)
225≦x≦300において、y=−a2x+b2・・・(2)
a1/a2≧0.8・・・(3)
「曲げ変位δL(mm)の測定方法」
水平方向に50mm離して設置した上部支持ジグと下部支持ジグとでゴルフクラブ用シャフトの軸が水平となるようにゴルフクラブ用シャフトを挟持、固定する。この際、ゴルフクラブ用シャフトが下部支持ジグに接する位置を距離L=100mmの位置とする。次に下部支持ジグからゴルフクラブ用シャフトの軸に沿って615mm離れた位置に質量2kgの錘をかけ、下部支持ジグからゴルフクラブ用シャフトの軸に沿って700mm離れた位置の曲げ変位量δ100(mm)を計測する。次にゴルフクラブ用シャフトが下部支持ジグに接する位置を太径側に25mmずつ移動させて、その際の下部支持ジグからゴルフクラブ用シャフトの軸に沿って700mm離れた位置の各曲げ変位量δ125,δ150,・・・,δ300(mm)を計測し、曲げ変位群(L,δL)=(x,y)を得る。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−81350(P2012−81350A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20329(P2012−20329)
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【分割の表示】特願2006−314399(P2006−314399)の分割
【原出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(506266746)エムアールシーコンポジットプロダクツ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【分割の表示】特願2006−314399(P2006−314399)の分割
【原出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(506266746)エムアールシーコンポジットプロダクツ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
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