説明

ゴルフクラブ

【課題】ヘッドとシャフトを分離可能に結合する構造でありながら外観が一般のゴルフクラブと同等であって、しかもネジ部材が脱落するおそれがないゴルフクラブを提供する。
【解決手段】シャフトを差し込むシャフト差し込み穴をホーゼル部に設けるとともにシャフト差し込み穴の底部に雌ネジ穴を設け、雌ネジ穴の底部にヘッド底面まで貫通する治具差し込み穴を設けたヘッドと、シャフトの端部に外挿固定され、シャフトと共にシャフト差し込み穴に差し込まれるスリーブと、スリーブの先端部に抜け止めされた状態で且つフリー回転可能に保持されたネジ部材とを有する。そしてヘッド底面側から治具差し込み穴に治具を差し込み、差し込んだ治具によってネジ部材を回転させることによりネジ部材を雌ネジ穴にねじ込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドとシャフトを分離可能に結合する構造のゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今におけるゴルフ業界の動向としてユーザーの体型やスイング等に対応すべくフィッティングにより、各ユーザーに合ったゴルフクラブの提供を実施しており、すなわちメーカーサイドとしては一の番手クラブにおいて、ライ角の大きさ等を異にする複数種類のヘッドと、長さ、重さもしくは固さ等を異にする複数種類のシャフトとを用意し、これらに共通の、分離可能な結合構造を設定する。ユーザーは店頭にてこれらを適宜組み合わせて試し打ちを行ない、最も自分に合った組み合わせを購入する。
【0003】
このため、従来から図7ないし図9に示すように、ヘッド101とシャフト102を分離可能に結合する構造のゴルフクラブが提案されているが、これらの従来技術には以下の不都合がある。
【0004】
図7のゴルフクラブは、ホーゼル上端部103にキャップ104をねじ込んでスリーブ105を変形させることによりヘッド101にシャフト102を締付け固定する構造とされている。したがってヘッド101とシャフト102を分離可能に結合すると云う機能面では十分な性能を備えているが、ホーゼル上端部103にキャップ104をねじ込むと云う特殊な構造であるために、当該ゴルフクラブの外観が一般のゴルフクラブ(ヘッドとシャフトが分離可能でないゴルフクラブ)とかなり異なることになる。したがってユーザーとしてアドレスしたときに違和感を覚えるおそれがある(特許文献1参照)。
【0005】
また、図8または図9のゴルフクラブは、ヘッド101とシャフト102を分離可能に結合すべくヘッド101の底面106側からネジ部材107をねじ込む構造とされている。したがって当初強くねじ込んでも、使用しているうちに徐々に緩んでネジ部材107がヘッド101下方へ脱落するおそれがある(特許文献2または3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3132153号公報
【特許文献2】特開2009−148560号公報
【特許文献3】特表2010−502399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の点に鑑みて、ヘッドとシャフトを分離可能に結合する構造でありながらホーゼル上端部にキャップをねじ込む構造でなく、よってゴルフクラブの外観が一般のゴルフクラブと同等であり、しかもヘッドの底面側からネジ部材をねじ込む構造でなく、よってネジ部材が脱落するおそれがないゴルフクラブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるゴルフクラブは、ヘッドとシャフトを分離可能に結合する構造のゴルフクラブであって、前記シャフトを差し込むシャフト差し込み穴をホーゼル部に設けるとともに前記シャフト差し込み穴の底部に雌ネジ穴を設け、前記雌ネジ穴の底部にヘッド底面まで貫通する治具差し込み穴を設けたヘッドと、前記シャフトの端部に外挿固定され、シャフトと共に前記シャフト差し込み穴に差し込まれるスリーブと、前記スリーブの先端部に抜け止めされた状態で且つフリー回転可能に保持されたネジ部材と、を有し、前記ヘッド底面側から前記治具差し込み穴に治具を差し込み、前記差し込んだ治具によって前記ネジ部材を回転させることにより前記ネジ部材を前記雌ネジ穴にねじ込むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2によるゴルフクラブは、上記した請求項1記載のゴルフクラブにおいて、前記ネジ部材は、前記スリーブの内周面に設けた鍔状の係合部に係合して抜け止めされる比較的大径の頭部と、前記スリーブの先端から突出する比較的小径の雄ネジ部とを一体に備え、前記雄ネジ部の先端面に前記治具を係合するための治具用係合部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3によるゴルフクラブは、上記した請求項1または2記載のゴルフクラブにおいて、前記スリーブの内周面および前記シャフトの外周面間に介在する接着剤が前記ネジ部材に達してフリー回転を阻害することがないように前記スリーブの内部において前記シャフトと前記ネジ部材の間に前記接着剤をシールするプラグが設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4によるゴルフクラブは、上記した請求項1、2または3記載のゴルフクラブにおいて、前記スリーブの内周面および前記シャフトの外周面間に介在する接着剤が前記ネジ部材に達してフリー回転を阻害することがないように前記スリーブの内部において前記シャフトと前記ネジ部材の間に前記接着剤をシールするプラグが設けられるとともに、前記プラグが前記ネジ部材に接触してフリー回転を阻害することがないように前記スリーブの内周面に前記プラグを位置決め係合する段差状の係合部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5によるゴルフクラブは、上記した請求項1、2、3または4記載のゴルフクラブにおいて、前記スリーブとこれを差し込む前記ホーゼル部との間に両者を回り止めするための回り止め構造が設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6によるゴルフクラブは、上記した請求項1、2、3、4または5記載のゴルフクラブにおいて、前記シャフト差し込み穴の内径寸法よりも前記雌ネジ穴の内径寸法を小さくするとともに前記雌ネジ穴の内径寸法よりも前記治具差し込み穴の内径寸法を更に小さく設定することにより随分と小さな治具差し込み穴がヘッドのソール面のみに開口していることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項7によるゴルフクラブは、上記した請求項1、2、3、4、5または6記載のゴルフクラブにおいて、前記スリーブは、比重を異にする金属素材によって製作された複数種類の当該スリーブが用意され、このなかから一のスリーブが選択使用されることを特徴とする。
【0015】
更にまた、本発明の請求項8によるゴルフクラブは、上記した請求項1、2、3、4、5、6または7記載のゴルフクラブにおいて、当該ゴルフクラブは、ウッドクラブ、アイアンクラブ、またはパターであることを特徴とする。
【0016】
上記構成を備える本発明のゴルフクラブにおいては、ヘッドとシャフトの連結構造として、ヘッドのホーゼル部にシャフト差し込み穴が設けられ、シャフト差し込み穴の底部に雌ネジ穴が設けられ、雌ネジ穴の底部に治具差し込み穴がヘッド底面まで貫通するように設けられる。一方、シャフトの端部にスリーブが外挿固定され、スリーブの先端部にネジ部材が抜け止めされた状態で且つフリー回転可能に保持される。そしてヘッド側の雌ネジ穴にシャフト側のネジ部材がねじ込まれる。
【0017】
連結作業の手順としては先ず、スリーブにネジ部材を組み付け、このネジ部材を組み付けたスリーブをシャフトの端部に外挿固定する。外挿固定の接合手段としては例えば接着剤を用いる。次いでスリーブをシャフトと共にシャフト差し込み穴に差し込み、一方、ヘッド底面側から治具差し込み穴に治具を差し込む。そして、差し込んだ治具によってネジ部材を回転させるとネジ部材が雌ネジ穴にねじ込まれ、これによりヘッドとシャフトが連結される。また、治具によってネジ部材を反対向きに回転させるとネジ部材が雌ネジ穴から外れるので、シャフトをスリーブと共に引き抜くことによりヘッドとシャフトが分離される。ヘッドと別のシャフトを組み合わせる場合には、シャフトごとに用意するスリーブを用いる。
【0018】
したがって本発明のゴルフクラブは、上記従来技術におけるキャップに相当する部品を有さず、ホーゼル上端部にキャップをねじ込むと云う構造を有しないものであり、よってゴルフクラブの外観が一般のゴルフクラブと同等となる。また本発明のゴルフクラブは、上記従来技術におけるヘッドの底面側からネジ部材をねじ込むと云う構造を有しないものであり、よってネジ部材が脱落するおそれがないものとなる。
【0019】
スリーブの先端部に抜け止めされた状態で且つフリー回転可能に保持されるネジ部材としては、スリーブの内周面に設けた鍔状の係合部に係合して抜け止めされる比較的大径の頭部と、スリーブの先端から突出する比較的小径の雄ネジ部とを一体に備えるものとするのが好適であり、これによれば、スリーブに対してネジ部材が抜け止めされる機能およびスリーブに対してネジ部材がフリー回転する機能が双方共に実現される。またこの場合、雄ネジ部の先端面には、治具を係合するための治具用係合部を設けることが望ましい。
【0020】
また、シャフトの端部にスリーブを外挿固定するための接合手段として接着剤を用いる場合には、この接着剤がネジ部材に達することによりネジ部材のフリー回転を阻害することが懸念される。そこでこれに対策するには、スリーブの内部においてシャフトとネジ部材の間に接着剤をシールするためのプラグを設けるのが好適であり、これによれば、プラグによって接着剤がネジ部材に届かず、よってネジ部材のフリー回転を確保することが可能となる。
【0021】
また、このようにシャフトとネジ部材の間にプラグを設ける場合には、このプラグがネジ部材に接触することによりネジ部材のフリー回転を阻害することが懸念される。そこでこれに対策するには、スリーブの内周面にプラグを位置決め係合するための段差状の係合部を設けるのが好適であり、これによれば、係合部によってプラグがネジ部材に届かず、よってネジ部材のフリー回転を確保することが可能となる。
【0022】
また、本発明のゴルフクラブは、ヘッド側の雌ネジ穴にシャフト側のネジ部材をねじ込むものであるので、打球時に生じる回転トルクによってシャフトに対するヘッドの取り付け角度が変わってしまうことが懸念される。そこでこれに対策するには、スリーブとこれを差し込むホーゼル部との間に両者を回り止めするための回り止め構造を設けるのが好適であり、これによれば、シャフトに対してヘッドが回転せず、よってシャフトに対するヘッドの取り付け角度を初期設定どおりに維持すること可能となる。
【0023】
また、本発明のゴルフクラブは、ヘッド底面まで貫通する治具差し込み穴を設けるものであるので、この治具差し込み穴による開口があまりに大きいと例えばアイアンヘッドのバックフェースが一部えぐられた状態となってヘッドの見栄えが悪くなることが懸念される。そこでこれに対策するには、ヘッドの構造に関してシャフト差し込み穴の内径寸法よりも雌ネジ穴の内径寸法を小さくするとともにこの雌ネジ穴の内径寸法よりも差し込み穴の内径寸法を更に小さく設定することにより随分と小さな治具差し込み穴がヘッドのソール面のみに開口している構造とするのが好適であり、これによれば、治具差し込み穴による開口が見えにくくなるため、ヘッドの見栄えを良くすることが可能となる。
【0024】
また、本発明のゴルフクラブは、上記したようにシャフトごとにスリーブを用意するものであるので、重いシャフトに用いるスリーブと軽いシャフトに用いるスリーブとが同じ重さではクラブ全体の重量バランスに微妙な影響を及ぼすことが懸念される。そこでこれに対策するには、スリーブとして、比重を異にする金属素材によって製作された複数種類のスリーブを用意し、このなかから一のスリーブを選択使用するのが好適であって、これによれば、重いシャフトに重いスリーブを用いる、軽いシャフトに軽いスリーブを用いるというように使い分けすることにより重量バランスを安定化することが可能となる。
【0025】
本発明によるヘッドとシャフトの連結構造は、ウッドクラブ、アイアンクラブまたはパターの何れにも適用可能である。
【発明の効果】
【0026】
上記構成を備える本発明においては、ヘッドとシャフトの連結が雌ネジ穴およびネジ部材の組み合わせによってホーゼル内部で行なわれるために、ホーゼル上端部にキャップをねじ込む必要がなく、よってゴルフクラブの外観が一般のゴルフクラブと同等となる。また、ネジ部材がスリーブに保持された状態でホーゼル内部に組み込まれるために、ネジ部材が脱落するおそれが全くない。したがってヘッドとシャフトを分離可能に結合する構造でありながら外観が一般のゴルフクラブと同等であって、しかもネジ部材が脱落するおそれがないゴルフクラブを提供することができる。
【0027】
また、スリーブ内部にプラグを設けることにより接着剤がネジ部材のフリー回転を阻害するのを抑制することができ、スリーブ内周面に位置決め用の係合部を設けることによりプラグがネジ部材のフリー回転を阻害するのを抑制することができる。また、スリーブおよびホーゼル部間に回り止め構造を設けることによりシャフトに対しヘッドが回転するのを抑制することができ、治具差し込み穴の内径寸法を小さく設定することによりヘッドの見栄えを良くすることができる。また、比重を異にする複数種類のスリーブを用意することによりゴルフクラブの重量バランスを安定化させることができ、以上述べた作用効果をウッドクラブ、アンアンクラブおよびパターの全てにおいて実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例に係るゴルフクラブが備えるヘッドおよびシャフト連結構造の断面図
【図2】同連結構造の組み立て前の状態を示す断面図
【図3】同連結構造を備えるアイアンクラブの組み立て前の状態を示す要部正面図
【図4】同アイアンクラブの要部断面図
【図5】同連結構造を備えるウッドクラブの組み立て前の状態を示す要部正面図
【図6】同ウッドクラブの要部断面図
【図7】従来例に係るゴルフクラブの要部断面図
【図8】他の従来例に係るゴルフクラブの組み立て前の状態を示す斜視図
【図9】他の従来例に係るゴルフクラブの組み立て前の状態を示す正面図
【発明を実施するための形態】
【0029】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0030】
図1および図2は、本発明の実施例に係るゴルフクラブ1が備えるヘッドおよびシャフトの連結構造を示している。また、図3および図4はこの連結構造をアイアンクラブに適用した場合、図5および図6はこの連結構造をウッドクラブに適用した場合をそれぞれ示している。当該連結構造は、ヘッドとシャフトを分離可能に結合するものであって、以下のように構成されている。
【0031】
すなわち図1および図2に示すように先ず、ヘッド11(図3ないし図6参照)側の構成として、ヘッド本体12(図3ないし図6参照)と一体のホーゼル部13にシャフト21を差し込むためのシャフト差し込み穴14が設けられ、このシャフト差し込み穴14の底部に雌ネジ穴15が設けられ、雌ネジ穴15の底部に治具差し込み穴16がヘッド底面11a(図3ないし図6参照)まで貫通するように設けられている。一方、シャフト21側の構成として、シャフト21の端部にスリーブ31が外挿固定され、このスリーブ31の先端部(下端部)にネジ部材41が抜け止めされた状態で且つフリー回転可能に保持されている。そしてヘッド11側の雌ネジ穴15にシャフト21側のネジ部材41がねじ込まれる構成とされている。
【0032】
スリーブ31は、円筒状の部品であって、連結後にシャフト差し込み穴14の内部に配置される小径部32を備え、この小径部32の上端に環状の段差部33を介して、連結後にホーゼル部13の上方に配置される、ホーゼル部13と略同径の大径部34が一体成形されている。また、大径部34の更に上方にソケット部35が一体成形されているが、このソケット部35は図3または図5に示すようにスリーブ31に対し別体の部品としても良い。また、小径部32の下端すなわちスリーブ31の下端に位置してスリーブ31の内周面に鍔状の係合部36が設けられ、この鍔状の係合部36の上方に位置してスリーブ31の内周面に段差状の係合部37が設けられている。
【0033】
ネジ部材41は、スリーブ31にその上端開口から挿入されるものであって、スリーブ31の内周面に設けた鍔状の係合部36に係合することにより下方へ向けて抜け止めされる比較的大径の頭部42を備え、この頭部42の下面側に、スリーブ31の下端部から下方へ向けて突出する比較的小径の雄ネジ部43が一体成形されている。また、頭部42の上面すなわちネジ部材41の上面および雄ネジ部43の下面すなわちネジ部材41の下面にそれぞれ、治具(図示せず)を係合するための治具用係合部44,45が設けられており、当該実施例では治具として棒状の六角レンチが想定されているので、治具用係合部44,45としてそれぞれ六角穴が設けられている。
【0034】
スリーブ31はシャフト21の端部に外挿固定されるが、その接合手段として接着剤(図示せず)が用いられる。接着剤はスリーブ31の内周面およびこれに対応するシャフト21の外周面の間に介在することになるが、この接着剤の余剰分がネジ部材41に達して固まるようなことがあるとネジ部材41のフリー回転を阻害してしまうので、これを防止すべくスリーブ31の内部においてシャフト21とネジ部材41の間に、接着剤をシールするためのプラグ51が設けられている。プラグ51はスリーブ31の内径寸法と略同径の円板状の小部品である。
【0035】
また、このプラグ51がネジ部材41に接触するようなことがあるとネジ部材41のフリー回転を阻害してしまうので、これを防止すべくこのプラグ51が、スリーブ31の内周面に設けた段差状の係合部37に係合することにより位置決め配置されている。したがって鍔状の係合部36から段差状の係合部37までの間隔はネジ部材41の頭部42の厚みよりも少々大きく設定されている。
【0036】
また、スリーブ31とこれを差し込むホーゼル部13との間に、両者13,31を回り止めするための回り止め構造61が設けられており、この回り止め構造61が具体的には、互いに突き合わされるスリーブ31の段差部33とホーゼル部13の上端部にそれぞれ互いに対応する多角面形状(例えば八角面形状)62,63を設けることによって形成されている。すなわちスリーブ31の外周面が段差部33の下方において円筒面でなく多角面形状62とされ、これに対応してホーゼル部13の上端部の内周面も円筒面でなく多角面形状63とされている。したがって多角面形状62,63同士が円周方向に係合するため、スリーブ31とこれを差し込むホーゼル部13が互いに回り止めされ、延いてはシャフト21とヘッド11が回り止めされることになる。またホーゼル部13の上端部内周面はシャフト21の折損防止のため、テーパー面状に加工するのが好ましい。
【0037】
上記ヘッド11に設けられたシャフト差し込み穴14、雌ネジ穴15および治具差し込み穴16は、同一中心軸線0上に配置されている。またこれらの寸法関係において、雌ネジ穴15の内径寸法はシャフト差し込み穴14の内径寸法よりも小さく設定されるとともに治具差し込み穴16の内径寸法は雌ネジ穴15の内径寸法よりも更に小さく設定され、よって治具差し込み穴16の内径寸法は実寸で4mm程度と随分小さく設定されている。したがってこのように実寸で4mm程度と随分小さな治具差し込み穴16が図4または図6に示すようにヘッド11のソール面のみに開口している。
【0038】
スリーブ31、ネジ部材41およびプラグ51は何れも金属製の部品である。
【0039】
上記構成のゴルフクラブ1を組み立てる、すなわちヘッド11とシャフト21を連結するに際しては、図2の状態から先ず、スリーブ31にネジ部材41およびプラグ51を組み付け、このネジ部材41およびプラグ51を組み付けたスリーブ31をシャフト21の端部に接着剤を用いて外挿固定する。次いでスリーブ31をシャフト21と共にシャフト差し込み穴14に差し込み、一方、ヘッド底面11a側から治具差し込み穴16に治具(図示せず)を差し込む。そして差し込んだ治具の先端をネジ部材41の治具用係合部45に係合して回転すると、ネジ部材41の雄ネジ部43が雌ネジ穴15にねじ込まれてゆき、スリーブ31の下端部がシャフト差し込み穴14の底面に突き当たると爾後、ネジ部材41の頭部42とシャフト差し込み穴14の底面の間でスリーブ31が強く締め付けられる。このとき締付けが最終段階に至る前にヘッド11とシャフト21の回転方向の向きを合わせたうえでスリーブ31外周面およびホーゼル部13上端部に設けた回り止め構造61(多角面形状62,63同士)を係合させることによりヘッド11とシャフト21の向きが正確に合わせられる。締付けを完了した時点でヘッド11とシャフト21は、上記したようにネジ部材41の頭部42とシャフト差し込み穴14の底面間でスリーブ31が強く締め付けられるとともに回り止め構造61が係合しているので、強固に連結され、打球時の反力による回転トルクがヘッド11に作用しても連結が緩むことはない。尚、この回転トルクの作用について云えば、このトルクが作用したときにねじ込みが深まるようにネジ部材41および雌ネジ穴15によるねじ込みの螺旋の向きを設定するのが好ましく、これによれば、連結が一層緩みにくくなる。
【0040】
また、上記構成のゴルフクラブ1を分解する、すなわちヘッド11とシャフト21を分離するに際しては、ヘッド底面11a側から治具差し込み穴16に治具を差し込み、治具の先端をネジ部材41の治具用係合部45に係合して反対向きに回転させるとネジ部材41の雄ネジ部43が雌ネジ穴15から外れるので、外れた後にシャフト21をホーゼル部13から引き抜くことによりヘッド11とシャフト21が分離される。このときスリーブ31はシャフト21の端部に接着剤を用いて固定されたままであるので、ヘッド11と別のシャフト21を組み合わせる場合には、シャフト21ごとに新たなスリーブ31、ネジ部材41およびプラグ51を用意してこれらを用いることになる。
【0041】
また、このシャフト21の交換に関連して、上記したように重いシャフト21に用いるスリーブ31と軽いシャフト21に用いるスリーブ31とが同じ重さではクラブ全体の重量バランスに微妙な影響を及ぼすことが懸念されるので、スリーブ31として、比重を異にする金属素材によって製作された複数種類のスリーブ31を用意し、このなかから一のスリーブ31を選択して使用するのが好適であり、これによれば、重いシャフト21に重いスリーブ31を用いる(例えばステンレス鋼によるスリーブ31を用いる)、あるいは軽いシャフト21に軽いスリーブ31を用いる(例えばチタン合金によるスリーブ31を用いる)というように使い分けをすることによりゴルフクラブ1の重量バランスを安定化させることができる。
【0042】
上記したように図3および図4は当該連結構造をアイアンクラブに適用した場合を示すとともに図5および図6は当該連結構造をウッドクラブに適用した場合を示しているが、このほか当該連結構造はパター(図示せず)に適用することも可能であって、いずれにしても本発明所期の目的どおり、ヘッド11とシャフト21を分離可能に結合する構造でありながら外観が一般のゴルフクラブと同等であって、しかもネジ部材41が脱落するおそれがないゴルフクラブ1を提供することができる。また、スリーブ31の内部にプラグ51を設けることにより接着剤がネジ部材41のフリー回転を阻害するのを抑制することができ、スリーブ31の内周面に位置決め用の係合部37を設けることによりプラグ51がネジ部材41のフリー回転を阻害するのを抑制することができる。また、スリーブ31およびホーゼル部13の間に回り止め構造を設けることによりシャフト21に対しヘッド11が回転するのを抑制することができ、治具差し込み穴16の内径寸法を小さく設定することによりヘッド11の見栄えを良くすることができる。また、比重を異にする複数種類のスリーブ31を用意することによりゴルフクラブ1の重量バランスを安定化させることができ、これらの作用効果をウッドクラブ、アンアンクラブおよびパターの全てにおいて実現することができる。
【0043】
尚、上記実施例について更に説明すると、ネジ部材41の構成として、雄ネジ部43の基端部(根元部)には、雄ネジ46が切られていない雄ネジ46の谷径と略同径の円筒面部47が所定の長さに亙って設けられており、この円筒面部47の長さは鍔状の係合部36の厚みと略同等とされている。またスリーブ31の構成として、鍔状の係合部36の内周面には、雄ネジ部43の雄ネジ46と螺合する雌ネジ38が切られている。これらの関係は以下のとおりとされている。
【0044】
すなわち図2の状態で、スリーブ31の上端開口からネジ部材41を挿入すると、雄ネジ46の山が雌ネジ38の山に引っかかるので、回転させない限りネジ部材41は鍔状の係合部36に当接して停止する。この停止した状態で、スリーブ31の上端開口から治具(図示せず)を挿入して治具の先端をネジ部材41の上面に設けた治具用係合部44に係合して回転すると、雄ネジ46は雌ネジ38にねじ込まれてゆき、やがて雌ネジ38を通過してスリーブ31の下面側に突出する。この雄ネジ46が突出した状態でネジ部材41は頭部42が鍔状の係合部36に係合し、よってネジ部材41はスリーブ31に対し下向きに抜け止めされる。またこの雄ネジ46が突出した状態で雌ネジ38の内周側には円筒面部47が位置し、よってネジ部材41はスリーブ31に対しフリー回転可能とされる。またこの雄ネジ46が突出した状態でネジ部材41を上方へ引き抜こうとしても雄ネジ46の山が雌ネジ38の山に引っかかるので、回転させない限りネジ部材41はスリーブ31に対し上向きにも抜け止めされる。したがってスリーブ31にネジ部材41を組み付けた状態でネジ部材41はフリー回転可能でありながらスリーブ31と一体化され、両者31,41がバラバラにならないので、部品の取り扱い作業性を向上させることができる。
【0045】
したがって、当該構成はこのように部品の取り扱い作業性を向上させるものであるが、これに対し両者31,41がバラバラになるのを許容するならば、当該構成は不要となる。すなわちこの場合は、鍔状の係合部36の内周面に雌ネジ38を設ける必要はなく、雄ネジ部43の基端部に円筒面部47を設ける必要はなく、ただ単に、鍔状の係合部36の内径寸法を雄ネジ46の山径よりも大きく設定すれば良い。
【符号の説明】
【0046】
1 ゴルフクラブ
11 ヘッド
11a ヘッド底面
12 ヘッド本体
13 ホーゼル部
14 シャフト差し込み穴
15 雌ネジ穴
16 治具差し込み穴
21 シャフト
31 スリーブ
32 小径部
33 段差部
34 大径部
35 ソケット部
36 鍔状の係合部
37 段差状の係合部
38 雌ネジ
41 ネジ部材
42 頭部
43 雄ネジ部
44,45 治具用係合部
46 雄ネジ
47 円筒面部
51 プラグ
61 回り止め構造
62,63 多角面形状
0 中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドとシャフトを分離可能に結合する構造のゴルフクラブであって、
前記シャフトを差し込むシャフト差し込み穴をホーゼル部に設けるとともに前記シャフト差し込み穴の底部に雌ネジ穴を設け、前記雌ネジ穴の底部にヘッド底面まで貫通する治具差し込み穴を設けたヘッドと、前記シャフトの端部に外挿固定され、シャフトと共に前記シャフト差し込み穴に差し込まれるスリーブと、前記スリーブの先端部に抜け止めされた状態で且つフリー回転可能に保持されたネジ部材と、を有し、
前記ヘッド底面側から前記治具差し込み穴に治具を差し込み、前記差し込んだ治具によって前記ネジ部材を回転させることにより前記ネジ部材を前記雌ネジ穴にねじ込むことを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項2】
請求項1記載のゴルフクラブにおいて、
前記ネジ部材は、前記スリーブの内周面に設けた鍔状の係合部に係合して抜け止めされる比較的大径の頭部と、前記スリーブの先端から突出する比較的小径の雄ネジ部とを一体に備え、前記雄ネジ部の先端面に前記治具を係合するための治具用係合部が設けられていることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項3】
請求項1または2記載のゴルフクラブにおいて、
前記スリーブの内周面および前記シャフトの外周面間に介在する接着剤が前記ネジ部材に達してフリー回転を阻害することがないように前記スリーブの内部において前記シャフトと前記ネジ部材の間に前記接着剤をシールするプラグが設けられていることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のゴルフクラブにおいて、
前記スリーブの内周面および前記シャフトの外周面間に介在する接着剤が前記ネジ部材に達してフリー回転を阻害することがないように前記スリーブの内部において前記シャフトと前記ネジ部材の間に前記接着剤をシールするプラグが設けられるとともに、前記プラグが前記ネジ部材に接触してフリー回転を阻害することがないように前記スリーブの内周面に前記プラグを位置決め係合する段差状の係合部が設けられていることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項5】
請求項1、2、3または4記載のゴルフクラブにおいて、
前記スリーブとこれを差し込む前記ホーゼル部との間に両者を回り止めするための回り止め構造が設けられていることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載のゴルフクラブにおいて、
前記シャフト差し込み穴の内径寸法よりも前記雌ネジ穴の内径寸法を小さくするとともに前記雌ネジ穴の内径寸法よりも前記治具差し込み穴の内径寸法を更に小さく設定することにより随分と小さな治具差し込み穴がヘッドのソール面のみに開口していることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6記載のゴルフクラブにおいて、
前記スリーブは、比重を異にする金属素材によって製作された複数種類の当該スリーブが用意され、このなかから一のスリーブが選択使用されることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6または7記載のゴルフクラブにおいて、
当該ゴルフクラブは、ウッドクラブ、アイアンクラブ、またはパターであることを特徴とするゴルフクラブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−31594(P2013−31594A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169782(P2011−169782)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(393003686)株式会社本間ゴルフ (4)
【Fターム(参考)】