説明

サイクロン集塵機

【課題】 ダストバンカー内に高いエネルギーでダストが流入する場合でも、サイクロン性能を低下させること無くダストの舞い上がりが防止できる実用的なサイクロン集塵機を提供する。
【解決手段】 ダストDを含む気体Gが半円錐状の外筒1の内面に沿って螺旋状に流れて下方に進み、下端開口からダストバンカー3に流入して螺旋状に移動する。ダストバンカー3内には、円筒部31,32の中心軸に対して片側の内部空間を仕切る遮蔽板8が着脱可能に設けられ、一端がダストバンカー3の円筒部31,32の内面に位置し、円筒部31,32の中心軸に向かって延びて他端は中心軸まで達していない。遮蔽板8は、外筒1の半円錐状の部分を仮想的に頂点まで延長して完全な円錐とした際に当該円錐がダストバンカー3内を仕切る領域内に存在する部位を有しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、サイクロンの原理を利用して気体からダストを分離捕集するサイクロン集塵機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サイクロン集塵機は、最近では家庭用の掃除機でも見られるものであるが、廃ガス処理のような産業用としても広く知られている。
図5は、従来の一般的な産業用のサイクロン集塵機の概略図で、(1)は全体の正面断面概略図、(2)は被処理流体の流入構造を示した平面概略図ある。図5(1)に示すように、サイクロン集塵機は、下側部分で径が小さくなっている円筒状の外筒101と、外筒101の上端部に接続された導入ダクト102と、外筒102の下端開口に取り付けられたダストバンカー103等から成っている。
【0003】
図5(2)に示すように、導入ダクト102は、外筒101の中心軸からずれた位置で接続されている。このため、図5(1)に線Fで示すように、被処理流体は、外筒内に流入した後、螺旋状に外筒の内面に沿って先端側に進むことになる。被処理流体とは、ダストを含む気体(通常は空気)である。外筒101は、下側部分で径が細くなっているので、被処理流体はより径の小さい螺旋を描いて進む。そして、最も径が小さくなった外筒101の下端部において流体中の軽い空気が反転して上昇に転じる。一方、重いダストは、遠心力によって外筒101の内面すれすれに沿って進むので、外筒101の下端開口からダストバンカー103内に流入し、ダストバンカー103内に溜まる。
また、外筒101内には、内筒104が設けられている。気体は、内筒104内を上昇して排出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3−19547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来のサイクロン集塵機において、外筒内の螺旋状の流れは、ファンによって強制的に作られる。例えば、内筒の上側(排出側)に排風ファンを設けて集塵機内を吸引すると、導入ダクトから被処理流体が勢い良く流入し、上記螺旋状の流れが生じる。送風ファンの場合には、導入ダクトに送風ファンを設けて強制的に被処理流体を送り込むことで上記螺旋状の流れが生じる。
被処理流体を効率良く集塵処理するには、上記ファンのパワーを大きくして強制的な流れの速さを速くしていくことが有効である。しかしながら、ファンのパワーを大きくして外筒内の螺旋状の流れの速さを速くしてくと、ダストバンカー内に溜まったダストが舞い上がり、内筒を通って上昇してしまうという問題がある。排風ファンの場合には吸い上げによって舞い上がり、送風ファンの場合には吹き上げによって舞い上がる。上昇したダストは、空気に混入して放出されることになって分離捕集能力が低下する結果となる。
【0006】
ダストの舞い上がりの原因は、ダストバンカー内でのダストの動きにも起因している。ダストバンカー内に進入したダストは、最終的にはダストバンカーの底面(又は底面に既に溜まっているダストの上面)に落下して落ち着くが、それまでには高いエネルギーを持ってダストバンカー内を移動している。即ち、外筒の先端開口を通ってダストバンカー内進入したダストは、螺旋状に流れてきたその勢いでダストバンカーに進入するため、ダストバンカー内でも螺旋状に旋回しながら徐々に勢いを失う。このダストバンカー内のダストの旋回にファンによる排風圧力又は送風圧力が影響すると、旋回しているダストを追い出し又は吸い上げる結果となり、ダストの舞い上がりが生じる。
【0007】
また、ダストバンカー内に高いエネルギーを持って流入するダストの存在は、ダストバンカーの耐久性の点でも問題を生じる。ダストバンカー内に流入したダストは、ダストバンカーの内面への衝突を繰り返しながら徐々にエネルギーを失うが、衝突によってダストバンカーが摩耗してしまう問題がある。特に、重いダストや硬いダストの場合、例えば廃棄物を粉砕して処理する廃棄物処理装置に搭載される集塵機のように、ダストが金属、硬質プラスチック、ガラス又は砂等の微粒子である場合、ダストの衝突による衝撃は小さくなく、稼働時間が長くなると摩耗が避けられない。このような高エネルギーの流入ダストの問題は、当然ながら、集塵効率を高めようとして被処理流体の螺旋状の流れの速さを速くしたときにより深刻となる。
【0008】
高エネルギーの流入ダストの問題を解決するには、ダストバンカー内にダストの流れを遮蔽する板を設け、遮蔽板にダストを衝突させてエネルギーを急速に失わせることが考えられる。しかしながら、発明者の研究によると、ダストバンカー内の流れの構造は、外筒の下端部で反転上昇する空気の流れに微妙な影響を与えており、板の設け方によってはサイクロンの性能が低下してしまうことがあり得る。また、そのようにダストを衝突させる板自体の摩耗も考慮する必要がある。
本願の発明は、このような課題を解決するために為されたものであり、ダストバンカー内に高いエネルギーでダストが流入する場合でも、サイクロン性能を低下させること無くダストの舞い上がりが防止できる実用的なサイクロン集塵機を提供する意義を有するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、少なくとも下側部分において下方にいくに従って徐々に径が小さくなっている円筒状の外筒の上端部からダストを含む気体を進入させ、外筒の内面に沿って螺旋状に下方に進ませた後、下端部で気体を反転させるとともにダストを下端開口から流出させることで分離捕集するサイクロン集塵機であって、
外筒の下端開口にはダストバンカーが取り付けられており、
ダストバンカーは円筒部を有し、外筒の下端開口から流入したダストを円筒部の内面に沿って螺旋状に移動させるものであり、
ダストバンカー内には、円筒部の中心軸に対して片側の内部空間を仕切る遮蔽板が設けられており、
この遮蔽板は、着脱可能に取り付けられたものであって、一端がダストバンカーの円筒部の内面又は内面付近に位置し、円筒部の中心軸に向かって延びて他端は中心軸まで達しておらず、
前記外筒の下方にいくに従って徐々に径が小さくなっている部分は、円錐を中心軸に垂直な方向でカットして先端を取り除いた後の形状である半円錐状の形状を成しており、
前記遮蔽板は、前記外筒の半円錐状の部分を仮想的に頂点まで延長して完全な円錐とした際に当該円錐がダストバンカー内を仕切る領域内に存在する部位を有しないものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記遮蔽板の、前記ダストバンカー内にダストが流入して螺旋状に流れて衝突する際のその衝突する側とは反対側には、前記遮蔽板を支える支え板が設けられているという構成を有する。
【発明の効果】
【0010】
以下に説明する通り、本願の請求項1記載の発明によれば、ダストバンカー内に中心軸に対して片側の内部空間を仕切る遮蔽板が設けられているので、ダストバンカー内に進入したダストが遮蔽板に衝突して急速にエネルギーを失い、ダストバンカーの底面に落下する。このため、従来見られたダストの舞い上がりの問題は生じない。また、ダストが高いエネルギーでダストバンカーに衝突することが少なくなるので、ダストバンカーの摩耗の問題も抑えられる。その上、遮蔽板は、ダストバンカーの径方向に沿って配置されており、したがって螺旋状の軌道を垂直に遮断する姿勢であるので、ダストの衝突・エネルギー減衰の効率が最も高い。さらに、遮蔽板は、漏出サイクロン気流が存在する可能性がある仮想サイクロン領域に位置する部位を有しないので、漏出サイクロン気流を乱してしまう可能性はゼロである。このため、漏出サイクロン気流の乱れによるダストの舞い上がりも生じ得ない。そして、遮蔽板は着脱可能であるので、摩耗した際に交換することができ、ダストバンカー全体を交換しなければならなくなるような問題もない。
また、請求項2記載の発明によれば、上記効果に加え、遮蔽板の背後(ダストが衝突してくる側とは反対側)には支え板が設けられているので、ダストの衝突による衝撃が緩和され、遮蔽板の姿勢が安定に保持され、遮蔽板が摩耗して薄くなった際にもダストのエネルギー減衰が十分できなくなる恐れは無い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本願発明の実施形態に係るサイクロン集塵機の正面概略図である。
【図2】図1に示すサイクロン集塵機の主要部の平面断面概略図である。
【図3】遮蔽板とその取り付け構造について示した斜視概略図である。
【図4】図1に示すダストバンカー3を上から見た平面概略図である。
【図5】従来の一般的な産業用のサイクロン集塵機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本願発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、本願発明の実施形態に係るサイクロン集塵機の正面概略図、図2は図1に示すサイクロン集塵機の主要部の平面断面概略図である。図1に示すサイクロン集塵機は、少なくとも下側部分において下方にいくに従って径が徐々に小さくなっている円筒状の外筒1と、外筒1の上端部に接続された導入ダクト2と、外筒1の下端開口に取り付けられたダストバンカー3等を備えている。
【0013】
本実施形態では、外筒1は、上部筒体11と下部筒体12とで形成されている。上部筒体11は、径が一定の円筒状である。下部筒体12は、下方にいくに従って徐々に径が小さくなる形状であり、全体として半円錐状を成している。本明細書において「半円錐状」とは、円錐を中心軸に垂直な方向でカットして先端を取り除いた後の形状を言うものとする。これら筒体11,12は、相互にボルト止めによって固定され、外筒1を形成している。
導入ダクト2は、上部筒体11に対して接続されている。導入ダクト2は、図5(2)と同様に、外筒1の中心軸から外れた位置に向かって被処理流体を導入するものであり、被処理流体が外筒1の内面に沿って螺旋状に流れるようにしている。
【0014】
ダストバンカー3は、円筒部31,32と、円筒部31の一端を塞いだ蓋板33等からなっている。円筒部は、径が一定の第一円筒部31と、第一円筒部31の下側に設けられた半円錐状の第二円筒部32である。
蓋板33の中央には、円形の開口(以下、蓋板開口という)330が設けられている。蓋板開口330の周縁から上方に延びるようにして高さの低い半円錐状の部位(以下、上片部)331が設けられている。上片部331は、下部筒体12と面一となるよう設けられており、下部筒体12とともに一つの半円錐を形成するようになっている。上片部331の上端と下部筒体12の下端にはそれぞれフランジが形成されており、両者が突き合わされてボルト止めされており、分割可能に固定されている。
【0015】
ダストバンカー3の下端は開口(以下、バンカー下端開口)となっており、この開口を開閉する開閉体4が設けられている。開閉体4としては、ロータリーバルブやスライドダンパー等が設けられる。ロータリーバルブを用いる場合は、バンカー下端開口に排出管が接続され、別の場所でダストが溜まるよう構成される。ロータリーバルブは通常は開けた状態とされ、メンテナンスの際などに閉じられる。スライドダンパーを用いる場合は、通常は閉じた状態としてダストバンカー3内にダストを溜め、ある程度の量が溜まったらスライドダンパーを開けてダストを取り出す。図1は、一例として開閉体4がスライドダンパーである場合を想定して描かれている。
また、図1に示すように、外筒1内には内筒5が設けられている。内筒5は、径が一定の円筒状であり、外筒1と同軸に設けられている。内筒5の上側には、排出ダクト7が接続されている。
【0016】
このような本実施形態のサイクロン集塵機において、ダストバンカー3内には、円筒部31,32の中心軸に対して片側の内部空間を仕切る遮蔽板8が設けられている。この遮蔽板8は、前述した従来のサイクロン集塵機におけるダストの舞い上がりの問題を検討した発明者の研究成果によるものであり、ダストバンカー3内に螺旋状に流れるダストを衝突させてエネルギーを失わせ、短時間のうちに底面に落下させるようにしたものである。
このような意図で、本願の発明者は遮蔽板8の採用を決定したが、遮蔽板8の大きさや配置によっては、別の問題が生じることが判明した。以下、この点について、図1を参照しながら説明する。
【0017】
サイクロン集塵機の原理は、前述したように、外筒1内に被処理流体の螺旋状の流れ(図1中にFで示す)を生じさせ、徐々に径が小さくなる外筒1の内面に沿ってこの螺旋状の流れFを進ませて下端部で気体を反転上昇させることでダストDを分離するというものである。いったん下端で渦巻き状になった流れFのうち気体は反転して上昇する気流(図1にGで示す)となるが、質量の重いダストDの微粒子は、外筒1の下端開口から飛び出ると、外筒1による規制がなくなるため、遠心力によって外に広がり、ダストバンカー3内でより径の大きな軌道で螺旋状に移動する。この際、気流Gは、マクロ的な動きであるので、外筒1内で反転して上昇するものもあるが、外筒1の先端開口からダストバンカー3内に漏れ出て、ダストバンカー3内で反転して上昇するものもある。徐々に軌道半径が小さくなる螺旋状のマクロ的な流れになってしまっているので、外筒1の先端開口を過ぎてもその流れが維持され、ダストバンカー3内で反転・上昇するのである。
【0018】
したがって、このようなダストバンカー3内に漏れ出た気流(以下、漏出サイクロン気流と呼び、図1中にLSで示す)が仮に何らかの遮蔽物で遮蔽されると、そこで気流が乱され、スムーズに反転・上昇しなくなってしまう。乱された気流は、ダストバンカー3内を攪乱する。この気流も、ファンの送風又は排風の圧力によって押し上げ又は吸い上げられ、内筒5を通って放出されるが、この際、ダストバンカー3内の浮遊ダストDを取り込んだり、溜まっているダストDを巻き上げて取り込んだりしてしまうことがある。このため、原因は別であるが結果的にダストDの舞い上がりが生じて分離捕集性能が低下してしまう。
【0019】
このような発明者の分析及び知見に基づき、本実施形態では、漏出サイクロン気流LSを遮蔽しない位置に遮蔽板8を配置するようにしている。漏出サイクロン気流LSが存在し得る領域は、原理的には、外筒1の半円錐状の部分を仮想的に頂点まで延長して完全な円錐とした際に当該円錐がダストバンカー3内を仕切る領域である。以下、この領域を、仮想サイクロン領域と呼ぶ。また、仮想サイクロン領域を仕切る円錐を、図1中に二点鎖線Iで示す。
【0020】
図2に示すように、本実施形態では、遮蔽板8は、円筒部31,32の中心軸Cに対して片側の内部空間を仕切るよう設けられている。これは、ダストDがダストバンカー3内で螺旋状に旋回するので、片側の空間を仕切ればダストを衝突させるのに十分であるということによる。より具体的に説明すると、遮蔽板8は、ダストバンカー3の円筒部31,32の径方向に沿って設けられており、一端が円筒部31,32の内面に位置し、他端が円筒部31,32の中心軸Cに向かって延びている。
そして、図1及び図2に示すように、遮蔽板8の他端は中心軸Cまでは達していない。と同時に、図1に示すように、遮蔽板8の他端は、仮想サイクロン領域を仕切る円錐Iよりも外側にある。即ち、遮蔽板8は、仮想サイクロン領域内に位置する部位は有しない。このため、遮蔽板8は仮想サイクロン領域内の漏出サイクロン気流LSを乱すことがない。
【0021】
次に、遮蔽板8及びその取り付け構造等について、図3及び図4を使用して説明する。図3は、遮蔽板8とその取り付け構造について示した斜視概略図、図4はダストバンカー3を上から見た際の平面概略図である。
図3に示すように、遮蔽板8は、全体としては台形状の板であり、垂直に立てて配置される。遮蔽板8が成す台形は、水平な姿勢の上辺81と、互いに平行な一対の側辺82,83と、斜めに延びる斜辺84とから成る。一対の側辺のうち、外側に位置する側辺82は短く(以下、短側辺と呼ぶ)、内側に位置する側辺83は長い(以下、長側辺と呼ぶ)。尚、遮蔽板8は、材質としてはスチール製である。この他、耐摩耗性を考慮し、ステンレス製やMCナイロン(日本ポリペンコ株式会社の登録商標)のような強度的に優れた樹脂製のものが使用されることもある。
【0022】
このような遮蔽板8の台形形状は、ダストバンカー3の円筒部31,32の正面断面形状に適合した寸法形状となっている。即ち、遮蔽板8の上辺81及び短側辺82が第一円筒部31に適合し、斜辺84が第二円筒部(半円錐状)32に適合している。そして、図1から解るように、長側辺83は仮想サイクロン領域の外側に位置する。
図3に示すように、ダストバンカー3内には、支え板91,92が設けられている。支え板91,92は、ダストが衝突する遮蔽板8を背後から支えて安定させるものである。この実施形態では、支え板は二つ設けられている。一つは、遮蔽板8の上辺81の背後と短側辺の背後に位置するよう設けられたL字状の第一支え板91であり、もう一つは、遮蔽板8の斜辺84の背後に位置するよう設けられた第二支え板92である。支え板91,92は、帯板状であり、溶接によってダストバンカー3の内面に固定されている。
【0023】
遮蔽板8は、上辺81及び斜辺84においてボルト止めによって固定されている。遮蔽板8は、上辺81が水平に折れ曲がっており、この部分が蓋板33に数カ所ボルト止めされている。また、遮蔽板8は、斜辺84に沿って第二支え板92に対して数カ所ボルト止めされている。第一第二の支え板91,92は、これら取り付けのためのガイド的な機能もある。このように遮蔽板8はボルト止めであるので、着脱可能である。図3において、各ナットの図示は省略されている。
尚、図4に示すように、ダストバンカー3の蓋板33には、点検用の開口(点検口)が設けられており、点検口は点検窓34で塞がれている。点検窓34は、開閉可能となっている。点検窓34は、遮蔽板8の交換の際にも開閉される。
【0024】
上記構成に係る本実施形態のサイクロン集塵機の動作について、以下に説明する。
不図示の送風ファン又は排風ファンが動作すると、被処理流体が導入ダクト2から外筒1に進入し、外筒1の内面に沿って螺旋状に下方に流れる流れFが形成される。螺旋状の流れFのうちに、質量の大きなダストは遠心力によって外筒1の内面すれすれに沿って流れる一方、軽い気体は外筒1の内面と中心軸との間の中間の位置あたりを流れる。このような螺旋状の流れFは、外筒1の径が徐々に小さくなるため、軌道半径が徐々に小さくなる。そして、外筒1の下端開口に達すると、ダストDは下端開口からダストバンカー3内に進入し、その勢いでより大きな径の螺旋を描きながらダストバンカー3内を移動する。一方、気体の流れは、まとまったサイクロン流であるため、外筒1の細く絞られた下端開口付近に達すると、反転・上昇する。上昇した気流Gは、内筒5を通り排出ダクト7から排出される。
【0025】
ダストバンカー3内に進入したダストDは、螺旋状に流れた後、螺旋状の軌道を遮断する遮蔽板8に衝突し、これによって急速にエネルギーを失う。エネルギーを失ったダストDは、自重によって落下する。開閉体4がロータリーバルブの場合、そこを通過して不図示の排出管を通って排出される。開閉体4としてスライドダンパーが用いられている場合、図1に示すようにダストバンカー3の底部に溜まる。ある程度の量が溜まったら、スライドダンパーを開けてダストDを取り出す。このようにしてダストDの分離捕集が行われ、排出ダクト7からはダストの無い清浄が気体が排出される。
集塵機の稼働がある程度の時間に達すると、ダストDの衝突によって遮蔽板8が摩耗してくるので、交換が必要になる。遮蔽板8の交換は、点検窓34を開けてそこから工具を差し込んで既存の遮蔽板8を取り外し、遮蔽板8を点検口を通して取り出した後、新しい遮蔽板8を点検口から内部に挿入し、同様に取り付ける。
【0026】
上述した構成及び動作に係る本実施形態のサイクロン集塵機によれば、ダストバンカー3内に中心軸に対して片側の内部空間を仕切る遮蔽板8が設けられているので、ダストバンカー3内に進入したダストDが遮蔽板8に衝突して急速にエネルギーを失い、ダストバンカー3の底面に落下する。このため、従来見られたダストDの舞い上がりの問題は生じない。
【0027】
その上、遮蔽板8は、ダストバンカー3の径方向に沿って配置されており、したがって螺旋状の軌道を垂直に遮断する姿勢であるので、ダストDの衝突・エネルギー減衰の効率が最も高い。即ち、遮蔽板8が螺旋状の軌道に対して斜めに配置されていると、ダストDを逃すことなく十分に衝突させるにはより幅を大きくしなければならない。また、斜めに配置されていると、遮蔽板8に斜めに衝突するダストDの割合が大きくなるので、衝突後も大きなエネルギーを保持するダストDの割合が大きくなる。このため、ダストDがダストバンカー3の底部に落下しにくくなり、前述したように舞い上がってしまう可能性が高くなる。一方、この実施形態のように、ダストDが螺旋状の軌道に対して遮蔽板8を垂直に配置すると、遮蔽板8に対して垂直に衝突するダストDの割合が最も大きくなり、エネルギー減衰・落下の割合が最も大きくなる。このため、ダストDの舞い上がり防止の効果が最も高くなっている。
【0028】
さらに、前述したように、遮蔽板8は、漏出サイクロン気流LSが存在する可能性がある仮想サイクロン領域に位置する部位を有しないので、漏出サイクロン気流LSを乱してしまう可能性はゼロである。このため、漏出サイクロン気流LSの乱れによるダストDの舞い上がりも生じ得ない。
また、遮蔽板8は着脱可能であるので、摩耗した際に交換することができる。このため、ダストバンカー3全体を頻繁に交換しなければならなくような問題もない。
【0029】
そして、遮蔽板8の背後(ダストが衝突してくる側とは反対側)には支え板91,92が設けられているので、ダストDの衝突による衝撃が緩和され、遮蔽板8の姿勢が安定に保持される。遮蔽板8が摩耗して薄くなってくると、支え板91,92が無い場合、ダストDの衝突による衝撃やファンの送風又は排風圧力によって遮蔽板8が揺れる可能性がある。この揺れが原因でダストDのエネルギー減衰が十分できなくなる恐れがあるが、本実施形態では支え板91,92があるので、このような恐れは無い。
【0030】
上述した各効果は、ダストDが比較的粒の大きなものであったり、堅い粒子であったり、重い粒子であったりする場合、特に著しい。例えば、廃棄物を粉砕して処理する粉砕機用いられるサイクロン集塵機では、廃ガス中に金属、硬質プラスチック、ガラス又は砂等の微粒子が混ざっていることがあり、これらが除去すべきダストDとなっていることがある。このような場合、ダストDが衝突することによる衝撃は、一般的な塵埃(例えばハウスダスト)の場合に比べて非常に大きく、遮蔽板8の摩耗の度合いが大きい。したがって、遮蔽板8の交換は必須であるし、また支え板91,92の効果も大きい。さらに言えば、堅い又は重いダストDがダストバンカー3内で高いエネルギーで旋回すると、ダストバンカー3の内面への衝突が避けられないため、ダストバンカー3自体の摩耗も問題になってくる。本実施形態のように遮蔽板8を設けてそこに衝突させるようにすると、ダストDが高いエネルギーを持ってダストバンカー3内を旋回する距離が小さくなるので、ダストバンカー3自体の摩耗も極めて少なくなる。
【0031】
このようにダストバンカー3自体の摩耗が極めて少ないので、ダストバンカー3の交換の頻度は極めて少なくなるが、それでもダストバンカー3の交換が必要な場合は、ダストバンカー3の上片部331と下部筒体12とのボルト止めを取り外して行う。尚、下部筒体12についても、摩耗により交換が必要な場合があり得るが、この場合も、上部筒体11と下部筒体12とのボルト止めを取り外して行う。
【0032】
上記実施形態では遮蔽板8は台形状であったが、他の形状の場合もあり得る。例えば、ダストバンカー3が単純な円筒状(径の一定な円筒状)である場合、遮蔽板8としては、方形の板状のものを径方向に沿って立てて配置したものとする場合もある。また、ダストバンカー3の円筒部が半円錐状部のみからなる場合、三角形状の遮蔽板8が使用されることもある。
【0033】
また、遮蔽板8は着脱可能に取り付けられている必要があるが、ボルト止めには限定されず、嵌め込み等によって取り付けても良い。尚、遮蔽板8の交換構造については、上述した点検窓34から工具を差し込んで行う構造の他、ダストバンカー3が分解式になっており、ダストバンカー3を分解してから交換する構造の場合もあり得る。
尚、外筒1としては、前述した構造の他、一つ又は三つ以上の筒体で形成されている場合もあるし、径が一定の部分を有さずに全体が半円錐状の形状である場合もある。また、二つ以上の筒体を接合して外筒1とする場合、ボルト止めではなく溶接等によって相互に固定する場合もある。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上説明したように、本願発明のサイクロン集塵機によれば、ダストバンカー内の浮遊ダストの舞い上がりが無く、ダストの分離捕集が高効率で行えるので、廃ガスの処理等の分野に著しい利用可能性がある。
【符号の説明】
【0035】
1 外筒
2 導入ダクト
3 ダストバンカー
31 第一円筒部
32 第二円筒部
33 蓋板
4 開閉体
5 内筒
7 排出ダクト
8 遮蔽板
91 第一支え板
92 第二支え板
F 螺旋状の流れ
G 気流
D ダスト
LS 漏出サイクロン気流


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下側部分において下方にいくに従って徐々に径が小さくなっている円筒状の外筒の上端部からダストを含む気体を進入させ、外筒の内面に沿って螺旋状に下方に進ませた後、下端部で気体を反転させるとともにダストを下端開口から流出させることで分離捕集するサイクロン集塵機であって、
外筒の下端開口にはダストバンカーが取り付けられており、
ダストバンカーは円筒部を有し、外筒の下端開口から流入したダストを円筒部の内面に沿って螺旋状に移動させるものであり、
ダストバンカー内には、円筒部の中心軸に対して片側の内部空間を仕切る遮蔽板が設けられており、
この遮蔽板は、着脱可能に取り付けられたものであって、一端がダストバンカーの円筒部の内面又は内面付近に位置し、円筒部の中心軸に向かって延びて他端は中心軸まで達しておらず、
前記外筒の下方にいくに従って徐々に径が小さくなっている部分は、円錐を中心軸に垂直な方向でカットして先端を取り除いた後の形状である半円錐状の形状を成しており、
前記遮蔽板は、前記外筒の半円錐状の部分を仮想的に頂点まで延長して完全な円錐とした際に当該円錐がダストバンカー内を仕切る領域内に存在する部位を有しないものであることを特徴とするサイクロン集塵機。
【請求項2】
前記遮蔽板の、前記ダストバンカー内にダストが流入して螺旋状に移動して衝突する際のその衝突する側とは反対側には、前記遮蔽板を支える支え板が設けられていることを特徴とする請求項1記載のサイクロン集塵機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−31820(P2013−31820A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170023(P2011−170023)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(502325029)株式会社デュコル (3)
【Fターム(参考)】