説明

サイズ被覆複合糸およびその製造方法

1つまたは複数のゴム弾性繊維および硬質糸を含む複合糸は、サイズ材を使用してゴム弾性繊維と硬質糸とを一緒に接着させることによって形成される。サイズ被覆複合糸は、所望の衣類特性のストレッチ布を製造するために製織およびニッティングに使用することができる。サイズ材は後の湿式布処理によって除去されてもよい。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合糸の製造ならびに衣類だけでなく、織および編ストレッチ布の製造でのそれらの使用に関する。より具体的には、本発明は、ゴム弾性繊維および比較的非弾性のコンパニオン糸が、製織またはニッティング工程中にゴム弾性繊維を安定化させ、保護するサイズ材で被覆され、一緒に接合される方法である。
【背景技術】
【0002】
ゴム弾性繊維は、織布および編布ならびに衣類で伸張および弾性回復を提供するために一般に使用される。「ゴム弾性繊維」は、任意の捲縮とは無関係に100%を上回る破断伸びを有する、希釈剤なしの、連続フィラメント(場合により合体したマルチフィラメント)か複数のフィラメントかのどちらかである。ゴム弾性繊維は、(1)その長さの2倍に延伸され、(2)1分間保持され、そして(3)解放された時に、解放されて1分以内にその元の長さの1.5倍未満に縮む。本明細書の本文で用いられるところでは、「ゴム弾性繊維」は、少なくとも1つのゴム弾性繊維またはフィラメントを意味すると解釈されるべきである。かかるゴム弾性繊維には、ゴムフィラメント、複合フィラメントおよびエラストエステル、ラストール、ならびにスパンデックスが含まれるが、それらに限定されない。
【0003】
「スパンデックス」は、その中のフィラメント形成物質が少なくとも85重量%のセグメント化ポリウレタンよりなる長鎖合成ポリマーである人造フィラメントである。
【0004】
「エラストエステル」は、その中の繊維形成物質が少なくとも50重量%の脂肪族ポリエーテルおよび少なくとも35重量%のポリエステルよりなる長鎖合成ポリマーである人造フィラメントである。
【0005】
「複合フィラメント」は、フィラメントの長さに沿って互いに接着された少なくとも2つのポリマーを含む連続フィラメントであって、各ポリマーが異なる総称クラス、例えば、ゴム弾性ポリエーテルアミド・コアおよび葉または翼付きのポリアミド・シースにある連続フィラメントである。
【0006】
「ラストール」は、少なくとも95重量%のエチレンおよび少なくとも1つの他のオレフィン単位からなる、低いがかなりの結晶化度の、架橋した合成ポリマーの繊維である。この繊維は実質的に弾力性がある、耐熱性である。
【0007】
織および編ストレッチ布用には、適度な割合のゴム弾性繊維が、ポリエステル、コットン、ナイロン、レーヨンまたはウールのような、比較的非弾性の繊維と組み合わせて使用される。本明細書の目的のためには、かかる比較的非弾性の繊維は「硬い」繊維と称される。布中のゴム弾性繊維の割合は、布の所望の伸張および回復性を提供するために約1重量%〜約15重量%で変わってもよい。
【0008】
布で、ゴム弾性繊維は、布製造方法および製品用途に依存して、「裸の」繊維としてまたは「被覆された」繊維として使用される。「被覆された」ゴム弾性繊維は、硬質糸によって囲まれた、それと撚られた、またはそれとまぜ合わされたものである。ゴム弾性繊維および硬質糸を含む被覆糸はまた、本明細書の本文では「複合糸」とも称される。硬質糸カバーは、ゴム弾性繊維を製織およびニッティング工程中に研磨から守るのに役立つ。かかる摩耗は、結果として起こるプロセス中断および望ましくない布不均一性と共にゴム弾性繊維に切断をもたらし得る。さらに、カバーはゴム弾性繊維の弾性的挙動を安定化させるのに役立ち、その結果、複合糸伸びを裸のゴム弾性繊維で可能であろうよりも均一に製織工程中にコントロールすることができる。
【0009】
ゴム弾性繊維を被覆するために用いられる背景技術方法は典型的には遅く、費用がかかりおよび/または適用が限定される。これらの方法には、(1)硬質糸でのゴム弾性繊維のシングルラッピング、(b)硬質糸でのゴム弾性繊維のダブルラッピング、(c)短繊維でのゴム弾性繊維の連続的被覆(すなわち、コア−スピニング)、引き続く巻取中の加撚、(d)エアジェットでのゴム弾性糸および硬質糸のまぜ合わせおよび交絡、(e)ゴム弾性繊維と硬質糸とを一緒に撚ることが含まれる。図1A〜1Fは、1つまたは複数の硬質糸が1つまたは複数のゴム弾性繊維を被覆する、従来法による被覆複合糸の略図である。図1Aは、ゴム弾性繊維3の周りにラップされた(すなわち、シングル−ラップされた)硬質糸1を示し、図1Bは、ゴム弾性繊維7の周りにラップされた(すなわち、ダブルラップされた)2つの硬質糸5、6を示す。図1Cは、ゴム弾性繊維11が短繊維9で被覆されているコア−スパン糸を示す。図1Dは、ハメル株式会社(Hamel AG)のエラスト・ツイスト(Elasto Twist)(登録商標)システムによって成し遂げられるように、ゴム弾性繊維15の周りにラップされ撚られた硬質糸ペア13、14を示す。図1Eは、ダブルツイスト構造でゴム弾性繊維21と撚られた2つの硬質糸17、19を示す。図1Fは、エアジェット被覆法で行われるように、ゴム弾性繊維23とまぜ合わされたマルチフィラメント硬質糸22を示す。
【0010】
これらのラッピングおよび加撚工程の運転速度は典型的には約25メートル/分である。エアジェット被覆法は500メートル/分以下およびそれ以上の速度で運転することができる。しかしながら、エアジェット被覆法は、予めテクスチャー加工された(例えば、仮撚テクスチャー加工された、連続フィラメント硬質糸の使用に限定される。コットン、ウールおよびリンネルのような、広く使用される短繊維については、または非テクスチャー加工連続フィラメントについては、伝統的な、より遅い被覆方法が現在用いられている。
【0011】
ニッティング工程は、裸のまたは被覆されたゴム弾性繊維を使用して衣類用のストレッチ編布を製造することができる。選択は、衣類のタイプならびに使用時のその所望の美観および性能に依存する。しかしながら、ストレッチ織布を製造するための製織工程についての業界慣行は、より費用がかかる複合糸(例えば、被覆ゴム弾性繊維)をたて糸にだけ、もしくはよこ糸だけに、またはたて糸およびよこ糸の両方に使用することである。
【0012】
さらに、製織操作では、たて糸が硬質糸でできていようと複合糸でできていようと、サイズのコーティング付きたて糸を製造することが慣例である。「サイズ」は、デンプンまたはポリビニルアルコール(PVA)のような材料からできた接着コーティングである。たて糸に塗布された時に、サイズは、滑らかな糸表面を提供するのに、かつ、たて糸の強度を高めるのに役立つ。製織で、たて糸は開口装置の作用中に摩擦および強い力を受ける。サイズはたて糸で使用されて加工中の糸切れを減らす。実質的にすべてのサイズが布湿式仕上げ操作中に糸から除去される。
【0013】
紡績コットンおよびゴム弾性繊維よりなる背景技術複合糸は、製織での使用前にパッケージとして典型的には染色されるが、かかる染色には不利な点がある。具体的には、ゴム弾性コア糸はパッケージ染色に用いられる熱水温度で縮むであろう。さらに、パッケージの複合糸は、圧縮され、非常にタイトになり、それによって糸パッケージの内部への染料のフローを妨げるであろう。これはしばしば、染色されたパッケージ内の糸の直径位置に依存して、異なる色合いおよびストレッチ・レベルの糸をもたらし得る。この問題を減らすために小さなパッケージが時々コア−スパン複合糸を染色するために用いられる。しかしながら、小さなパッケージ染色は、余分のパッケージングおよびハンドリング要件のために比較的費用がかかる。
【0014】
共通の業界慣行は上で明らかにされているが、追加の背景技術は、製織工程または製品を改善するための代わりの提案を提供している。例えば、米国特許公報(特許文献1)は、一方向(例えば、たて糸)に裸のスパンデックスを、他の方向(例えば、よこ糸)に硬質糸を使った織布を開示している。しかしながら、裸のスパンデックスは、それをよこ糸またはたて糸に使用する前に、別個の費用がかかる操作で延伸し、実質的に撚られなければならない。例えば、4倍延伸された100デニールの裸のスパンデックス繊維は、最低として、インチ当たり18.25撚りを持たなければならない。
【0015】
(特許文献2)は、各ペアが1つまたは複数の裸のゴム弾性繊維および第2の硬質糸を有する、たて糸のペアが同じヒールド小穴およびくぼみを平行におよび異なる張力で通されるたて糸ストレッチ織布および方法を開示している。ゴム弾性繊維を使用することにより、しかしよこ糸に通常通り被覆された複合糸を使用することによりよこ糸ストレッチを達成することもまた可能であると記載されている。サイズは塗布されない。
【0016】
(特許文献3)は、製織中に敏感なスパンデックスの伸びを管理するやり方でストレッチ織布を製造するための方法を開示している。ゴム弾性ストランドは、PVAベースの繊維ストランドで軽く巻き付けられ(ラップされ)、次に2つのストランドが一緒に撚られて糸Bを形成する。糸Bは、製織中の延伸性をさらに抑えるために場合によりサイズ付けすることができる。PVA繊維ストランドは後で布湿式処理中に溶解してストレッチ製品を提供する。さらに、弾性糸Cは、糸Bを様々な連続(合成)繊維ストランドでラップすることによって製造され、次に場合によりサイズ付けされる。糸BおよびCの両方とも、弾性布を提供するためにたて糸またはよこ糸に使用することができる。しかしながら、ストレッチ織布を製造するためのこの方法は、サイズの任意の使用だけでなく、ラッピングによって製造された複合糸の使用を必要とする。
【0017】
(特許文献4)は、たて糸に複合糸および硬質糸の両方を使用するたて糸ストレッチ織布を製造するために用いられる方法を開示している。複合糸は、合成マルチフィラメント硬質糸でラップされ、次にサイズ材でコートされたポリウレタン糸を含む。複合糸の構造は、サイズ材でコートする前に、図1Aおよび図1Bに描かれる複合糸のものである。複合糸は、たて糸方向に所望のストレッチ性を達成するために、別個の合成マルチフィラメント硬質糸に対して様々な割合でたて糸に使用される。この複合糸および方法は、たて糸ストレッチ布を製造するために、かつ、よこ糸ストレッチ布の製織での問題を回避するために開発された。しかしながら、該方法は、それがポリウレタン糸をマルチフィラメント硬質糸のカバーで被覆するために伝統的な遅いラッピング法を用いるので費用がかかる。
【0018】
【特許文献1】米国特許第3,169,558号明細書
【特許文献2】英国特許第1513273号明細書
【特許文献3】特公昭47−33754号公報
【特許文献4】特開2002−13045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
それ故、(1)製織およびニッティング操作での使用に対して十分に保護され、安定であり得る、(2)様々な織布および編布で適用できる、かつ、(3)背景技術被覆方法によって製造されるものより高速でおよび低コストで製造するのに適用できる「被覆された」ゴム弾性繊維を提供する必要性が当該技術には存在する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
ゴム弾性繊維および硬質糸の複合糸の完全性を維持するのに、かつ、複合糸中のゴム弾性繊維成分をニッティングまたは製織工程中に損傷から守るのに十分である「カバー」をサイズだけが提供できることが意外にも発見された。さらに、サイズ被覆複合糸の独特の構造のために、ゴム弾性繊維およびコンパニオン硬質糸は、サイズが湿式仕上げ操作で除去された後は布中で互いに実質的に自由である。この特徴は、当該技術で「手触り」として知られる魅力的な好感触性の織布および編布をもたらす。さらに、「サイズ被覆」複合糸は、エアジェット被覆法のそれに匹敵する高速で製造することができる。
【0021】
本発明の1つの例示的な実施形態は、少なくとも1つのゴム弾性繊維のストランドをストランドの弛緩した長さの1.1倍〜少なくとも5倍の範囲で延伸する工程と、合成繊維、天然繊維および合成繊維と天然繊維とのブレンドよりなる群から選択される少なくとも1つの硬質糸を、前記延伸ストランドに隣接してそして実質的に平行に整列させて整列した糸を形成する工程と、サイズ材を前記整列した糸に塗布する工程と、サイズ材を乾燥または硬化させて複合糸を形成する工程とを含む複合糸の製造方法である。
【0022】
本発明の別の例示的な実施形態は、ストランドの元の紡糸長さの1.2倍〜少なくとも6.2倍の範囲の総延伸のストランドを形成する少なくとも1つのゴム弾性繊維と、合成繊維、天然繊維および合成繊維と天然繊維とのブレンドよりなる群から選択される少なくとも1つの硬質糸であって、前記ストランドに隣接してそして実質的に平行に整列されて整列した糸を作る硬質糸と、整列した糸のストランドと硬質糸とを一緒に接着させる接着剤を形成する乾燥または硬化されるサイズ材とを含む複合糸である。
【0023】
本発明のさらに別の例示的な実施形態は、よこ糸中で硬質糸に実質的に平行であり、かつ、隣接している裸の本質的に撚られていないゴム弾性繊維のストランドをよこ糸中に含む、最終仕上げ後の弾性織布である。
【0024】
本発明のさらに再び別の例示的な実施形態は、よこ糸中で硬質糸に実質的に平行であり、かつ、隣接している裸の本質的に撚られていないゴム弾性繊維のストランドをよこ糸中に含む、最終仕上げ後の弾性織布であって、たて糸中のゴム弾性繊維対硬質糸の比が1:2〜1:4の範囲である織布である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
サイズ被覆複合糸は、上記のようなシングル−ラッピング、ダブル−ラッピング、コア・スピニング、加撚、またはエアジェット交絡でのような、従来法により硬質糸で被覆された弾性複合糸の代替品である。サイズ被覆糸は、従来法による被覆糸に比べてかなりの経済的な、製品利点を有する。例えば、サイズ被覆方法は500メートル/分以上ほどに高い速度で運転することができる。サイズ被覆の典型的な速度は、エアジェット被覆方法を除いて、他の被覆法の速度の10倍より大きい。しかしながら、エアジェット方法は、ジェット誘発交絡およびまぜ合わせを容易にするための幾つかのやり方でテクチャード加工されたまたは捲縮された合成連続フィラメント被覆糸の使用に実際には限定される。本発明のサイズ被覆方法でゴム弾性繊維と共に使用されてもよいコンパニオン硬質糸のタイプについては何の制限もない。
【0026】
本発明の方法を実行することができるシステムの実施形態は、図2Aの非限定的な概略図に示される。示されるようなプロセス装置は、下に与えられる実施例で説明されるゴム弾性繊維を製造する際に用いられる。用いられる特定の装置は、本発明の方法を可能にすることに関して限定的なものと解釈されるべきではない。
【0027】
一対のモーター駆動ロール29がゴム弾性繊維供給パッケージ33の表面速度をコントロールするために、かつ、好ましくは一定速度で1つまたは通常は多数のゴム弾性繊維53の配送を計量供給するために用いられる。スパンデックスは好ましいゴム弾性繊維53の非限定的な例である。スパンデックスがゴム弾性繊維として使用される場合、好ましくは、スパンデックスは20デニール〜140デニール、最も好ましくは20デニール〜70デニールの範囲の線密度を有する。
【0028】
サイジング・ホイール43の表面速度は、ゴム弾性繊維供給パッケージ33より高い速度にセットされ、その結果、ゴム弾性繊維はこうして合計約1.1倍〜少なくとも5倍に限定されない範囲で機械延伸される(すなわち、伸張される)。スパンデックスが本発明で使用される場合、1.1倍〜4倍の機械延伸範囲が好ましく、実際のセッティングは供給されるスパンデックスのタイプおよびデニールに依存するであろう。この機械延伸値は、紡績されたままのゴム弾性糸のパッケージ(例えば、ボビン)で起こるゴム弾性繊維のいかなる残りの延伸または圧伸も含まない。この残りの延伸はパッケージ・リラクセーション(PR)と称され、その後の処理からの延伸の全値はD=(V/V)×(1+PR)(ここで、Dは全延伸であり、V/Vはサイジング・ホイール43とゴム弾性繊維供給パッケージ33周囲表面速度との延伸比である)である。比V/Vはまた機械延伸とも称される。典型的には、PR数は0.05〜0.25に変わる。
【0029】
さらに、図2Aは、サイジング・ホイール43の表面速度とほぼ同じであるが、硬質糸に幾らかの張力を与えるのに十分なほど異なる速度で硬質糸供給パッケージ25から引き出される硬質糸27を示す。この硬質糸27は短繊維または連続フィラメント繊維のものであることができ、サイズ被覆法で使用できる硬質糸材料のタイプについては何の公知の制限もない。
【0030】
スフ糸については、材料はコットン、ウール、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、またはそれらのブレンドであることできるが、それらに限定されない。さらに、糸は、リング精紡、オープンエンド、エアジェットなどのような、様々な糸紡績法により製造することができる。連続フィラメント糸については、繊維は、ポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリプロピレンなどのような合成材料であることができるが、それらに限定されず、フィラメントはテクスチャー加工かフラット(テクスチャー加工されていない)かのどちらかであることができる。本明細書で限定的であることを意図されないが、硬質糸の線密度は好ましくは45デニール〜900デニールの範囲であり、45〜600デニールの範囲が最も好ましい。
【0031】
図2Aに示される本発明の実施形態では、ゴム弾性繊維53および硬質糸27は両方とも第1ガイド31を通って、次に、ゴム弾性繊維53および硬質糸27を隣接してそして実質的に平行に整列させるのに役立つ蛇行(ゲート)テンショナー35へ導かれる。ゴム弾性繊維53および硬質糸27は整列した糸45を形成する。整列した糸45は、蛇行(ゲート)テンショナー35の出口のポスト−テンショナー・ガイド41を通って、次に、方向変換ロール37によってサイジング液浴49中へ導かれる。整列した糸45は、浸漬レバー39の作用によってサイジング液49に浸漬されて該液が整列した糸45を形成するゴム弾性繊維53および硬質糸27を湿潤させるのを可能にする。
【0032】
サイジング液は好ましくはサイジング材および水を含み、サイジング材は好ましくはサイジング剤およびワックスを含む。サイジング剤のタイプに関して何の特別な制限もなく、任意の公知のタイプを使用することができる。当業者に周知の、テキスタイル用の通常のサイジング剤をサイズ被覆用途向けに選択することができる。かかる材料には、デンプン、アクリルポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)およびCMC(登録商標)(エーテル化ヘミセルロースに対する商品名)が含まれるが、それらに限定されない。ワックスはオレフィンポリマーまたは当業者に公知である他の許容可能なワックスであることができる。
【0033】
サイジング液49中のサイジング剤およびワックスの濃度は、浴液の総重量と比べて、サイジング剤およびワックス材料の%固形分重量として測定される。水性サイジング液49中のサイズ材の濃度は、特定のサイズ材ならびに硬質糸27のタイプおよびデニールに依存して、5%〜25%の範囲であることができる。サイズ材の任意の構成成分であるワックスは0%〜1%の範囲であることができ、0.2%〜0.6%が好ましく、0.5%が最も好ましい。好ましいデニール範囲のコットン硬質糸でPVAサイジング剤を使用する場合、PVA固形分濃度は約10%〜約20%の範囲であることが好ましい。
【0034】
サイジング液温度は約50〜約90℃、好ましくは約55〜約80℃、より好ましくは約55〜約70℃の範囲であるべきである。
【0035】
図2Aに示されるように、湿ったサイズ材でコートされたゴム弾性繊維53および硬質糸27を含む複合糸55はサイジング液49を出て、サイジングロール43と加圧(すなわち、圧搾)ロール51との間のニップを通過する。ゴム弾性繊維53および硬質糸27のタイプおよびデニール、サイジング液49中のサイズ材の濃度、ならびに加圧ロール51によって与えられる圧力が一緒になって湿ったサイズ被覆複合糸55を被覆するサイズ材の最終量を決定する。ある所与の複合糸およびサイジング・ホイール43速度に対して、サイジング液49中のサイズ材の濃度および加圧ロール51圧力は、所望のサイズ材重量を乾燥されたサイズ被覆複合糸61上に提供するようにセットされる。サイジングロール・ホイール43の表面速度、従ってサイジング工程の速度は10〜700メートル毎分の範囲であることができる。コットン硬質糸27については、好ましい速度は約150〜約400メートル毎分の範囲である。
【0036】
サイジングロール43と加圧ロール51との間のニップを通過した後、湿ったサイズ被覆複合糸55は、サイズ被覆複合糸がサイズ被覆複合糸パッケージ67に巻き取られる前に、乾燥されたサイズ被覆複合糸61を提供するために十分に乾燥されなければならない。乾燥されたサイズ被覆複合糸61が十分に乾燥していない場合、巻取機旋回装置65上へのサイズ材の沈着があり、および/または巻取パッケージ67を解くのが困難であるかまたは不可能であろうことは通常非常に明らかである。
【0037】
普通の乾燥方法は図2Aに概略的に示されるが、本発明はこの方法に限定されない。湿ったサイズ被覆糸55は、湿ったサイズ被覆糸55のラップ上方におよびその周りに熱風を流れさせる穴あき円筒ドラム57の周りに複数回ラップされる。熱風温度は約60〜約90℃の範囲であることが好ましく、約60〜約80℃の範囲がより好ましい。かかる熱風乾燥法については、湿ったサイズ被覆複合糸55の乾燥ドラム上の滞留時間は約5分である。これは、ドラムサイズ、ドラム表面速度、穴あき円筒ドラム57上での糸ラップの数の組合せによって達成される。乾燥されたサイズ被覆複合糸61は次に穴あき円筒ドラム57を出て、方向変換ロール59、63を越えて、サイズ被覆複合糸61をサイズ被覆複合糸パッケージ67に巻き取るために用いられる巻取ロール65へ進む。
【0038】
サイズ被覆複合糸61のカバーを構成する乾燥されるサイズ材は好ましくはサイズ付け前糸重量の3重量%〜20重量%の範囲にあるべきである。本発明者らは、約3%未満のサイズの塗布レベルが複合糸の表面を十分に被覆することができず、繊維間の不満足な接着、スレッド露出、および/またはその後の処理中にゴム弾性繊維の切断をもたらすことを見いだした。本発明者らはさらに、20%を超えるサイズの百分率が便益なしにサイズ消費を増やし、布湿式仕上げ工程のサイズを除去する能力の低下をもたらすかもしれないと考える。それにもかかわらず、当業者は、この範囲外の量が許容可能なほどに機能するであろうことを見いだすかもしれない。サイズのより好ましい量は5重量%〜12重量%の範囲である。特殊な複合糸については、サイズ被覆の適切性は、下の分析方法(Analytical Methods)セクションに記載されるマニュアル「接着性試験(Adhesion Test)」によって試験することができる。
【0039】
本発明の方法の別の実施形態では、サイズ材は非水性であり、ホットメルトポリマー・サイジング剤およびワックスを含む。かかるサイズ材は、複合糸に塗布された時は非水性であるが、布湿式仕上げ操作で除去することができる。代わりのタイプのサイズ材は好ましくは、アクリレートエステルまたはメタクリレートエステルのような熱溶融性ポリマーと、オレフィンポリマーのようなワックスとの混合物である。サイズ材は非水性であるので、穴あきドラム57上での乾燥が示されている図2Aに例示される実施形態と比べて、それは乾燥工程で除去されるために水を必要としない。従って、乾燥による水除去および関連費用が必要とされず、それは有利である。ホットメルト・サイジング剤およびワックスは、塗布ノズル(例えば、ジェットスプレー)によって、またはサイズ材のサイジング液49への整列した糸の浸漬によって整列した糸45に典型的には塗布される。整列した糸45に塗布される非水性サイズ材の量は、サイズ付け前の整列した糸45重量の約3重量%〜約6重量%の範囲である。ホットメルト・サイズ材は、20〜70℃、好ましくは35〜45℃の範囲の温度で乾燥または硬化させられる。サイズはその後の布湿式仕上げ操作中にサイズ被覆複合糸61から除去される。
【0040】
図2Bは本発明の方法の一実施形態のフローダイアグラムを示す。図2Bの工程102で、多数のゴム弾性繊維はゴム弾性繊維の弛緩した長さの1.1倍〜少なくとも5.0倍の範囲で延伸される。次に、硬質糸は、工程104に示されるように、整列した糸を製造するためにゴム弾性繊維に隣接してそして実質的に平行に置かれる。図2Bの工程106は配列した糸にサイズ材を塗布する工程である。工程106を行うための実例方法には、整列した糸をサイズ浴に浸漬すること、整列した糸を液体サイズ塗布ノズルに通すこと、整列した糸にサイズを吹き付けること、または整列した糸を回転ロールのサイズ被覆表面上に通すことが含まれるが、それらに限定されない。整列した糸に塗布されたサイズ材は、工程108でサイズ被覆複合糸を製造するために乾燥または硬化させられる。工程108を行うための実例方法には、輻射加熱および強制空気対流が含まれるが、それらに限定されない。
【0041】
図3Aおよび図3Bは、ゴム弾性繊維、硬質糸およびサイズ・カバーを示す、本発明のサイズ被覆複合糸の構造の図である。図3Aは、サイズ材69カバーと共に、硬質糸27に隣接してそして実質的に平行であるようなゴム弾性繊維53の位置を示す、サイズ被覆複合糸61の側面図である。ゴム弾性繊維53は本質的に撚られていない。図3Bは、図3Aのライン3B−3Bに沿ってとられた、複合糸61を構成する硬質糸27、ゴム弾性繊維53およびサイズ材69の個々のフィラメントを示す、断面である。本発明の図3Aおよび図3Bに示されるサイズ被覆複合糸61の独特の構造は、それが図1A〜図1Fの背景技術被覆複合糸の構造と比較される時に容易に明らかである。
【0042】
サイズ材69は、デサイジング、洗浄および染色のような布湿式仕上げ操作で複合糸から除去される。布中で、ゴム弾性繊維53は次にそれらのコンパニオン硬質糸27に平行に置かれ、サイズに拘束されずに、布中で自由に伸びるおよび回復することができる。織られた時に、生じた布は、図1A〜1Fの複合糸では見いだされない、衣類用途で利点を提供する独特の織布「手触り」を有する。
【0043】
本発明の方法の利点は、コットンのような硬いスフ糸を、それらがサイズを塗布することによってゴム弾性繊維と組み合わされる前に染色できることである。伝統的に、短繊維とゴム弾性繊維との複合糸は、ゴム弾性繊維が紡績される繊維のコア中へ供給される(すなわち、図1Cに示されるように、コア・スピニング)と同時に複合糸へ紡績される。結果として、コットン糸の染色は、本発明の方法で可能であるように場合により組み合わされる前よりもむしろ、コットンとゴム弾性繊維とが組み合わせられた後でなければならない。被覆前に、コットンを個別に染色する能力は、上記のような不均一なパッケージ染色の問題を排除する。
【0044】
本発明の上記実施形態では、ゴム弾性繊維53および硬質糸27は、サイズ材が塗布される前および後に互いに隣接しており、かつ、実質的に平行である。硬質糸がコットンまたはコットンブレンドのような短繊維の紡績糸である場合、硬質糸ステープルフィラメント末端は糸の表面から突き出ている。これらの末端は紡績糸に「毛深い」外観または特性を与える。紡績された硬質糸とゴム弾性繊維との間の接着を達成するのを助けるために、任意のエアジェット交絡装置36(図2Aを参照されたい)をポスト−テンショナー・ガイド41の後に追加することができ、任意のエアジェット交絡工程105(図2Bを参照されたい)はサイズ材を塗布する工程106の前に追加されてもよい。エアジェットで、表面に突き出た硬質糸末端は、一般に硬質糸に平行でそしてその外側のゴム弾性繊維の位置を依然として維持しながら、ゴム弾性繊維と交絡する。この絡み合いは、表面ステープルフィラメント末端と連続ゴム弾性繊維との間であり、先行エアジェット被覆法での連続糸とゴム弾性繊維とのまぜ合わせおよびインターレース効果とは明らかに異なる。所望の絡み合いは、例えば、3〜6バールの空気圧(ここで、4バール空気圧が好ましい)で操作されるヘーベルラインAG繊維技術社(Heberlein AG Fiber Technology,Inc.)インターレース・ノズル・モデル・スライドジェット−HFP(Model SlideJet−HFP)を用いることによって、コットンで達成することができる。
【0045】
パッケージ67の乾燥されたサイズ被覆複合糸61は、その後の製織またはニッティング工程のために使用される準備完了である。サイズ被覆複合糸61は織布および編布を製造するために使用することができるが、織布が好ましい。サイズ被覆複合糸61は、織布用のよこ糸およびたて糸に使用することができるが、紡績された硬いスフ糸を使用したサイズ被覆複合糸については、それらをよこ糸に使用することが好ましい。織布については、用いられる織りパターンに関して何の制限もない。しかしながら、サイズ被覆剤は一般に水溶性であるので、サイズ被覆複合糸61は好ましくは水ジェット織機で使用されるべきではない。織布、よこ糸および/またはたて糸でのサイズ被覆複合糸61対硬質糸27の比は1:1〜1:4の範囲であることができる。本発明のサイズ被覆複合糸61の用途についての例には、フラットニット布、丸編布およびそり編布が挙げられるが、それらに限定されない。
【実施例】
【0046】
(ストレッチ織布および編布の製造へのサイズ被覆複合糸の適用)
次の実施例は、本発明のサイズ被覆方法と様々な複合糸の製造での使用についての、ならびに順繰りにストレッチ織布および編布を製造するために使用されることになるそれらの複合糸についてのその可能性とを実証する。サイズ被覆複合糸61は、6−シングル−エンド位サイジング機の1位置で製造した。サイジング機の非限定的な例は日本国のカジ製作所株式会社(Kaji Saisakusno,Co.Ltd)製のタイプKS−3、カジ・シングルエンド・サイジング機「ユニ・サイザー」(Type KS−3,Kaji Single End Sizing Machine“Uni Sizer”)モデル番号1101である。ゴム弾性繊維53のための携帯型正駆動(positive−drive)供給機をシングル−エンド位の1つに隣接して配置した。硬質糸27をサイジング機の給糸位置に入れた。硬質糸27およびゴム弾性繊維53の両方を第1ガイド31に導き、そこからサイジング、乾燥および巻取操作によって一緒に処理した。ライクラ(Lycra)(登録商標)スパンデックスを実施例すべてで使用した。ライクラ(登録商標)は、スパンデックス繊維のその銘柄に対するイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.DuPont de Nemours and Company)の登録商標である。
【0047】
組み合わせた糸処理速度を先ず硬質糸のそれ(例えば、270メートル/分)にセットし、スパンデックス正駆動供給機をその後3.5倍の機械延伸にとって所望のスパンデックス機械延伸を提供するための速度(例えば、77メートル/分)にセットした。すべての実施例について、サイジング剤はポリビニルアルコール(「PVA」)であり、ワックスはオレフィンポリマーであった。組み合わせた糸上へのサイズ材の塗布は、サイズ浴50中のサイズ材の%固形分濃度によって、および加圧ロール51によって与えられる圧力によってコントロールした。ワックス濃度はすべてのケースで0.5%であった。
【0048】
何の追加重量も加圧ロール51に加えなかったので、加圧ロール圧力は加圧ロール51の重量およびその機械的メカニズムによって決定された。サイジング浴50中の%固形分の濃度は、テクニクイップ・コーポレーション(TechniQuip Corporation)によって製造されたブリスチックス(Bristix)(登録商標)携帯型屈折計(Portable Refractometer)を用いる測定によって確認した。湿ったサイズ被覆複合糸56を加熱空気エンクロージャー中の回転枠上で機械で連続的に乾燥させた。回転枠は、糸の滞留時間が300メートル/分で約5分であるようにアキュムレーターとして機能する。この機械で、処理の速度は、より低いデニールの複合糸では、乾燥速度がより高いのでより高くなり得る。すべての実施例で、サイズはサイズ被覆複合糸61が巻き取られる前に完全に乾燥した。
【0049】
サイズ被覆複合糸61を実施例で織布および編布の両方を製造するために使用した。織布はエアジェット織機で製造した。実施例1のものを除いて、すべての織布はドルニエ・エアジェット織機(Dornier Air Jet Loom)、タイプTYD LTV6/S−2000で製造した。実施例1の織布はルチオ(Rutio)L−5000エアジェット織機で製造した。実施例7の編布は、シングル・シリンダー付きのフラットニット・スタイルのロナチ(Lonati)462丸編機で製造した。
【0050】
特に記載のない限り、実施例の各生機布は、先ずそれを低い張力下に、それぞれ、160°F、180°Fおよび202°F(71℃、82℃および94℃)で熱水に3回通すことによって仕上げをした。
【0051】
合成硬質糸だけを含有する布は160°F(71℃)で30分間サイズ材を除去し、予備洗浄した。予備洗浄およびデサイジングは、水溶液中で6.0重量%シンサザイム(Synthazyme)(登録商標)(ドゥーリ・ケミカルズ有限責任会社(Dooley Chemicals LLC)製のデンプン加水分解酵素)、1.0重量%ルビット(Lubit)(登録商標)64(サイブロン社(Sybron,Inc.)製の非イオン性滑剤)、および0.5重量%マーポル(Merpol)(登録商標)LFH界面活性剤(イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニーの登録商標)を使ってであった。布をその後0.5重量%リン酸三ナトリウム、1.0重量%ルビット(登録商標)64および1.0重量%マーポル(登録商標)LFHを含有する溶液中110°F(43℃)で5分間洗浄した。重量パーセントは乾燥布重量を基準とする。洗浄した布を次に、緑色、黄褐色、または灰色分散染料で、pH5.2、230°F(110℃)で30分間ジェット染色し、その後テンターで380°F(193℃)で40秒間ヒートセットした。
【0052】
コットンを含有する各織生機布を3.0重量%ルビット(登録商標)64で、120°F(49℃)で10分間予備洗浄した。その後、それを6.0重量%シンサザイム(登録商標)および2.0重量%マーポル(登録商標)LFHで160°F(71℃)で30分間サイズ材を除去し、次に3.0重量%ルビット(登録商標)64、0.5重量%マーポル(登録商標)LFHおよび0.5重量%リン酸三ナトリウムで180°F(82℃)で30分間洗浄した。布を次に3.0重量%ルビット(登録商標)64、15.0重量%の35%過酸化水素、および3.0重量%ケイ酸ナトリウムで、pH9.5で180°F(82℃)で60分間漂白した。布漂白に引き続いて、黄褐色、黒色、または緑色直接染料で200°F(93℃)で30分間ベック染色し、アンダーフィーディングなしにたて糸方向に布を真っ直ぐ保持するのに十分な張力下に35秒間テンターで380F(193℃)でヒートセットした。
【0053】
(サイズ被覆複合糸を特性化するために用いられる分析方法)
様々な方法を、サイズ被覆複合糸、製織操作の性能、ならびに織布および編布例の品質を特性化するために用いた。これらの方法を下に記載する。
【0054】
(複合糸接合安定性)
本発明で使用されるサイズ材の一機能は、製織またはニッティングの工程の間ずっと一単位として一体化したままであるように、ゴム弾性繊維と硬質糸とを一緒に「接合する」または「接着する」ことである。好ましくは、サイズ材は複合糸の外面を被覆する。ゴム弾性糸と硬質糸との間の接合があるポイントで有意に機能しなくなるならば、その時はゴム弾性繊維はもはや「被覆」または「接着」されておらず、製織またはニッティング中の糸切れの機会は実質的に増える(すなわち、プロセス効率は低下する)。
【0055】
サイズ被覆複合糸を簡単な試験で接合安定性について試験する。ある長さのサイズ被覆複合糸61をパッケージから解く。サイズ被覆複合糸61を約13センチメートル離れたポイントで手で掴む。サイズ被覆複合糸61を切断なしにその最大長さまで伸張し、次に元の長さに回復させ、これを約5秒の全時間で連続して5回繰り返す。サイズ被覆複合糸61サンプルを次に目視により調べて(掴んだポイント間で)ゴム弾性繊維と硬質糸との間で少しでも分離があるかどうかを見る。サンプル長さに沿って何の分離もない場合、サイズ被覆複合糸61は試験に合格である−ゴム弾性繊維と硬質糸とは一緒に接着したままである。少しでも分離がある場合、サイズ被覆複合糸61は試験に不合格であった。下の実施例について、すべての複合糸サンプルを上記のように試験した。各サンプルは、接合安定性が実施例で合格と格付けされるために合格しなければならなかった。
【0056】
(製織性能)
製織効率をよこ糸によって引き起こされた100,000ピック当たりの織機停止回数によって評価した。許容可能なレベルは5停止/100,000ピック未満である。
【0057】
(織布伸長(伸張))
布を、複合糸の方向である布伸張方向(すなわち、よこ糸、たて糸、またはよこ糸およびたて糸)に規定の荷重(すなわち、力)下で%伸長について評価する。寸法60cm×6.5cmの3つのサンプルを布からカットする。長い寸法(60cm)は伸張方向に対応する。サンプルを5.0cmのサンプル幅に減らすために部分的に解く。サンプルを次に20℃±2℃および65%相対湿度±2%で少なくとも16時間順化させる。
【0058】
第1標線を、サンプル端から6.5cmのところで各サンプルの幅を横切って引く。第2標線を、第1標線から50.0cmのところでサンプル幅を横切って引く。第2標線からサンプルの他端までの過剰の布は、その中へ金属ピンを挿入することができるループを形成しそして縫い合わせるために用いる。ノッチを次に、重りを金属ピンに取り付けることができるようにループへカットする。
【0059】
サンプル非ループ端を固定し、布サンプルを垂直に吊す。30ニュートン(N)重り(6.75LB)をぶら下がった布ループによって金属ピンに取り付け、その結果、布サンプルは重りによって伸張される。サンプルを、重りにより3秒間伸張させ、次に重りを持ち上げることにより手動で力を解除することによって「運動させる」。これを3回行う。重りを次に自由にぶら下がらせ、こうして布サンプルを伸張させる。2つの標線間のミリメートル単位の距離を、布が荷重下にあるまま測定し、この距離をMLと呼ぶ。標線間の元の距離(すなわち、未伸張距離)をGLと呼ぶ。各それぞれのサンプルについての%布伸長を次の通り計算する:
%伸長(E%)=((ML−GL)/GL)×100
【0060】
3つの伸長結果を最終結果のために平均する。
【0061】
(織布伸び(回復されない伸張))
伸張後に、伸びなし布は、伸張前のその元の長さに正確に回復するであろう。典型的には、しかしながら、ストレッチ布は完全には回復せず、長期の伸張後にわずかにより長くなるであろう。長さのこのわずかな増加は「伸び」と称される。
【0062】
上の布伸長試験は伸び試験前に完了しなければならない。布の伸張方向だけを試験する。2方向ストレッチ布については両方向を試験する。3つのサンプル、それぞれ55.0cm×6.0cmを布からカットする。これらは伸長試験に使用したものとは異なるサンプルである。55.0cm方向は伸張方向に対応するべきである。サンプル幅を5.0cmに減らすためにサンプルを部分的に解く。サンプルを上の伸長試験でのような温度および湿度で順化させる。正確に50cm離れた2つの標線をサンプルの幅を横切って引く。
【0063】
伸長試験から既知の伸長%(E%)を用いてこの既知伸長の80%でのサンプルの長さを計算する。これは
80%でのE(長さ)=(E%/100)×0.80×L
(ここで、Lは標線間の元の長さ(すなわち、50.0cm)である)
のように計算する。サンプルの両端を固定し、サンプルを、標線間の長さが上で計算されるようなL+E(長さ)に等しくなるまで伸張させる。この伸張を30分間維持し、その時間後に伸長力を解除し、サンプルを自由にぶら下がらせ、弛緩させる。60分後に%伸びは
%伸び=(L2×100)/L
(ここで、L2は、リラクセーション後のサンプル標線間の長さの増加であり、Lは標線間の元の長さである)
のように測定する。この%伸びを各サンプルについて測定し、結果を平均して伸び数を求める。
【0064】
(織布収縮)
布収縮は洗濯後に測定する。布を先ず、伸長および伸び試験でのような温度および湿気で順化させる。2つのサンプル(60cm×60cm)を次に布からカットする。サンプルは耳から少なくとも15cm離して切り取るべきである。40cm×40cmの4面のボックスを布サンプル上にマークする。
【0065】
サンプルを、サンプルとローディング布とを一緒に洗濯機で洗濯する。全洗濯機ロードは2kgの風乾材料であるべきであり、洗濯物の半分以下が試験サンプルよりなるべきである。洗濯物を40℃の水温で穏やかに洗濯し、回転させる。水の硬度に依存して、1g/l〜3g/lの洗剤量を使用する。サンプルを乾燥するまでフラット表面上に置き、次にそれらを20℃±2℃および65%相対湿度±2%相対湿度で16時間順化させる。
【0066】
布サンプル収縮を次に、標識間の距離を測定することによってたて糸およびよこ糸方向に測定する。洗濯後収縮、C%は
C%=((L1−L2)/L1)×100
(ここで、L1は標識間の元の距離(40cm)であり、L2は乾燥後の距離である)
のように計算する。結果をサンプルについて平均し、たて糸およびよこ糸の両方向について報告する。負の収縮数は、硬質糸挙動のために幾つかのケースで可能である、膨張を反映する。
【0067】
(適用例)
次の8つの実施例のそれぞれのために、ライクラ(登録商標)スパンデックスおよび硬質糸を含有する複合糸を先ず本発明のサイズ被覆方法を用いて製造した。表1は、各実施例用の複合糸を製造するために使用した材料およびプロセス条件をリストする。例えば、見出し「ライクラ(登録商標)」の列で、40dは延伸前に40デニールを意味し、T162またはT563Bは商業的に入手可能なタイプのライクラ(登録商標)スパンデックスを意味し、そして3.5×は、サイジング機によって課せられるライクラ(登録商標)スパンデックスの延伸(機械延伸)を意味する。例えば、見出し「硬質糸」の列で、20Neは英国綿番手システム(English Cotton Count System)によって測定されるような紡績糸の線密度であるが、50d、34fil(フィル)は34フィラメントの50デニール連続マルチフィラメント糸である。表1中の項目の残りは明確に表示されている。
【0068】
ストレッチ布をその後表1の各実施例の複合糸を使用して製造した。サイズ被覆複合糸を織布ではよこ糸として、よこニット編布についてはフィード糸として使用した。織布については、たて糸は、紡績コットン糸か合成ポリエステル仮撚テクスチャー加工連続マルチフィラメント糸かのどちらかであった。
【0069】
【表1】

【0070】
表2は、布に使用された糸、織りまたは編みパターン。製織またはニッティング性能、および布の品質特性をまとめる。実施例のそれぞれについての幾つかの追加コメントを下に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
(実施例1:織られたストレッチ・コットン・カーキ色布)
たて糸は3.8撚り/メートル(t/m)の16Ne番手のリング精紡糸であった。織機速度はインチ当たり50ピックのレベルで478ピック毎分であった。デサイジングおよび洗浄後に、布を青色に染色した。ヒートセット後に、布は46.5インチ幅であった。
【0073】
(実施例2:織られたストレッチ・コットンデニム)
たて糸は10Neオープンエンド紡績コットンであり、製織前にインジゴ染色した。よこ糸は10Neコットン/70Dセット容易な(T563B)ライクラ(登録商標)サイズ被覆糸であった。織機速度はインチ当たり38ピックで400ピック/分であった。布はデニム軽石洗浄され、洗浄後に60%利用可能伸張および4%伸びを有した。布は、10%亜塩素酸塩の漂白液を30℃および11pHで30分間通した後に54%利用可能伸張を有した。
【0074】
(実施例3:織られたストレッチ・ポリエステル布)
織機速度はインチ当たり55ピックで500ピック毎分であった。デサイジングおよび洗浄後に、布を110℃でカーキ色に染色した。完成布エンド数はたて糸でインチ当たり105エンド(EPI)であり、よこ糸でインチ当たり73ピック(PPI)であった。
【0075】
(実施例4:織られたストレッチ・シャツ地)
たて糸は40綿番手リング精紡コットンであり、よこ糸は75Dナイロン/40D実験溶融紡糸ライクラ(登録商標)であった。織機速度はインチ当たり65ピックで400ピック/分であった。完成布エンド数は、たて糸およびよこ糸方向で、それぞれ、135EPIおよび75PPIであった。
【0076】
(実施例5:織られたストレッチ・コットンポプリン)
織機はインチ当たり96エンドのたて糸密度で12ハーネスを有した。布中のライクラ(登録商標)スパンデックス含有率は布重量の3.48%であった。完成布エンド数は、たて糸およびよこ糸方向で、それぞれ、135EPIおよび68PPIであった。
【0077】
(実施例6:糸染色ストリップ織布)
複合よこ糸に使用した20Neコットン糸は、40デニールのライクラ(登録商標)繊維およびサイズ・カバーと組み合わせる前にパッケージ構成で青色に染色した。織機速度はインチ当たり55ピックで500ピック/分であった。よこ糸方向での着色糸および白色糸の配置は4:4であったので、カラーストリップが布よこ糸方向に形成された。
【0078】
(実施例7:円編ストレッチ布)
ニードル数はインチ当たり168であり、シリンダー直径は3.75インチであった。布を、1.0g/lマーポルLHPおよび0.5g/l苛性アルカリを用いて82℃で30分間洗浄し、次に76.5℃に冷却し、リンスした。布重量対水重量の比は1:30であった。湿った布を次に37.8℃で10分間酢酸で7.0pHに中和した。布を最後に、ホフマン(Hoffman)プレスで15秒のスチーム、引き続く15秒の真空の3サイクルで、270°Fでスチーム処理した。ニット・サンプルは小さく、結果としてニッティング性能は定量化しなかった。
【0079】
(実施例8:ブレンドされたストレッチ織布)
織機速度はインチ当たり45ピックで500ピック/分であった。布の幅は織機で80インチであった。完成布エンド数は、たて糸およびよこ糸方向で、それぞれ、111EPIおよび62PPIであった。
【0080】
本発明は好ましい実施形態の観点から記載されてきたが、それが多くのやり方で変えられてもよいことは明らかであろう。かかる変形は本発明の精神および範囲からの逸脱と見なされるべきではなく、当業者に明らかであろうような、すべてのかかる変更は冒頭の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1A】ストランド一面にラップされたシングル被覆糸付きのストランドを形成する多数のゴム弾性繊維の背景技術例を示す。
【図1B】ストランド一面にラップされたダブル被覆糸付きのストランドを形成する多数のゴム弾性繊維の背景技術例を示す。
【図1C】ストランド一面にコアスパン被覆糸付きのストランドを形成する多数のゴム弾性繊維の背景技術例を示す。
【図1D】ハメル(Hamel)撚りペア被覆糸付きのストランドを形成する多数のゴム弾性繊維の背景技術例を示す。
【図1E】その一面に一対の硬質糸が撚られたストランドを形成する多数のゴム弾性繊維の背景技術例を示す。
【図1F】ストランド一面にエアジェット被覆糸付きのストランドを形成する多数のゴム弾性繊維の背景技術例を示す。
【図2A】本発明のサイズ被覆複合糸を製造するためのシステムの非限定的なシステム概略図を示す。
【図2B】本発明の複合糸の製造方法の非限定的なフローダイアグラムを示す。
【図3A】本発明のサイズ被覆複合糸の非限定的な実例図面を示す。
【図3B】本発明のサイズ被覆複合糸の非限定的な例の断面を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のゴム弾性繊維のストランドをストランドの弛緩した長さの1.1倍〜少なくとも5倍の範囲で延伸する工程と、
合成繊維、天然繊維および合成繊維と天然繊維とのブレンドよりなる群から選択される少なくとも1つの硬質糸を、前記延伸ストランドに隣接してそして実質的に平行に整列させて整列した糸を形成する工程と、
サイズ材を前記整列した糸に塗布する工程と、
前記サイズ材を乾燥または硬化させて複合糸を形成する工程と
を含むことを特徴とする複合糸の製造方法。
【請求項2】
1つまたは複数のゴム弾性繊維の前記ストランドと整列した少なくとも1つの硬質糸の表面繊維を交絡させる工程をさらに含む請求項1に記載の方法であって、前記交絡がサイズ材を前記整列した糸に塗布する前に行われることを特徴とする方法。
【請求項3】
前記サイズ材がサイジング剤およびワックスを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ストランドが20〜140のデニールのスパンデックス糸を含み、かつ、前記硬質糸が45〜900の総デニールを有することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記サイジング剤がデンプン、アクリルポリマー、PVAおよびCMCよりなる群から選択され、かつ、ワックスの濃度が0重量%〜1重量%であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記サイジング剤がホットメルト・ポリマーであり、かつ、前記サイズ材がサイズ付け前の整列した糸重量を基準にして3重量%〜6重量%の量で前記整列した糸に塗布されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記サイズ材が前記整列した糸に塗布される前に前記サイズ材が水に溶解されて溶液を形成し、かつ、前記溶液中の前記サイズ材の濃度が5重量%〜25重量%であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ホットメルト・ポリマーがアクリレートエステルおよびメタクリレートエステルよりなる群から選択され、かつ、ワックスの濃度が0重量%〜1重量%であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
ストランドの元の紡糸長さの1.2倍〜少なくとも6.2倍の範囲の総延伸のストランドを形成する少なくとも1つのゴム弾性繊維と、
合成繊維、天然繊維および合成繊維と天然繊維とのブレンドよりなる群から選択される少なくとも1つの硬質糸であって、前記ストランドに隣接してそして実質的に平行に整列されて整列した糸を作る硬質糸と、
前記整列した糸の前記ストランドと硬質糸とを一緒に接着させる接着剤を形成する乾燥または硬化されるサイズ材と
を含むことを特徴とする複合糸。
【請求項10】
前記ストランドが延伸前に20〜140のデニールのスパンデックス糸から形成され、かつ、前記硬質糸が45〜900の総デニールを有することを特徴とする請求項9に記載の複合糸。
【請求項11】
前記サイズ材がサイジング剤およびワックスを含むことを特徴とする請求項9に記載の複合糸。
【請求項12】
前記乾燥されるサイズ材が前記整列した糸上に接着コーティングを形成することを特徴とする請求項9に記載の複合糸。
【請求項13】
製織時におよび最終布仕上げ前に
たて糸に請求項9に記載の複合糸および硬質糸、ならびによこ糸に請求項9に記載の複合糸および硬質糸を含む弾性織布であって、
前記複合糸対前記硬質糸の比がたて糸およびよこ糸の両方で1:1〜1:4であることを特徴とする織布。
【請求項14】
製織時におよび最終布仕上げ前に
よこ糸に請求項9に記載の複合糸および硬質糸、ならびに
たて糸に硬質糸
を含む弾性織布であって、
前記複合糸対前記硬質糸の比がよこ糸で1:1〜1:4であることを特徴とする織布。
【請求項15】
製織時におよび最終布仕上げ前に
たて糸に請求項9に記載の複合糸および硬質糸、ならびに
よこ糸に硬質糸
を含む弾性織布であって、
前記複合糸対前記硬質糸の比がたて糸で1:1〜1:4であることを特徴とする織布。
【請求項16】
ニッティング時におよび最終仕上げ前に請求項9に記載の複合糸を含むことを特徴とする弾性編布。
【請求項17】
よこ糸中で硬質糸に実質的に平行であり、かつ、隣接している裸の本質的に撚られていないゴム弾性繊維のストランドをよこ糸中に含むことを特徴とする最終仕上げ後の弾性織布。
【請求項18】
請求項17に記載の弾性織布を含むことを特徴とする衣類。
【請求項19】
たて糸中で硬質糸に実質的に平行であり、かつ、隣接している裸の実質的に撚られていないゴム弾性繊維のストランドをたて糸中に含む最終仕上げ後の弾性織布であって、たて糸での前記ゴム弾性繊維対前記硬質糸の比が1:2〜1:4であることを特徴とする織布。
【請求項20】
請求項19に記載の弾性織布を含むことを特徴とする衣類。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2007−534849(P2007−534849A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542665(P2006−542665)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/039968
【国際公開番号】WO2005/056896
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(505245302)インヴィスタ テクノロジー エスアエルエル (81)
【氏名又は名称原語表記】INVISTA Technologies S.a.r.l.
【住所又は居所原語表記】Talstrasse 80,8001 Zurich,Switzerland
【Fターム(参考)】