説明

サイディングの目地構造

【課題】目地部材とサイディングとの間の隙間における水の滞留を抑制するとともに、サイディングと下地との隙間に沿った水の広がりを抑制することができ、しかも、サイディングを下地に対して安定して固定することができるサイディングの目地構造を提供する。
【解決手段】第1シール部25は、第1サイディング131と第1スペーサー部17との間の第1隙間S1及び第2サイディング132と第2スペーサー部19との間の第2隙間S2よりも奥行きが深く、目地隙間S3と溝部21との間に位置する奥深空間Sと第1隙間S1との間に長手方向Lに沿って配置されており、第2シール部27は、奥深空間Sと第2隙間S2との間に長手方向Lに沿って配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外壁材として用いられるサイディングの目地構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁は、長方形のサイディングが横方向に複数配列されて当該建築物の下地に固定された構造を有している。窯業系のサイディングを用いる場合には、通常、横方向に隣り合うサイディング同士の継ぎ目(目地部)に、縦方向(目地部の長手方向)に延びる隙間(以下、目地隙間という。)が設けられる。したがって、この目地隙間から雨水などの水がサイディングの内面側の空間、すなわちサイディングと下地との間の空間に浸入して広がらないようにするために、例えば、シリコーン系、ウレタン系などの湿式のシーリング剤を目地隙間に充填する目地構造が用いられている。
【0003】
ところが、この湿式のシーリング剤は、必ずしも耐久性が十分とは言えないので、経年劣化が生じてひび割れなどが発生することがある。このような経年劣化が生じると水が目地部からサイディングの内面側の空間に浸入しやすくなる。この空間に浸入した水がそこに長時間滞留すると、下地及びその近傍に設けられた部材、特に木製の部材(例えば木製の胴縁など)が腐朽する場合があるので、定期的にシーリング剤を充填し直すなどのメンテナンスが必要になる。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、図14に示すように、目地部4と下地(支持骨5)との間の空間において、目地部4に対応する長手方向の領域を中心としその両側の位置に目地部4の長手方向に沿って突条2が各2つ以上形成された目地部材(敷目板1)を有する目地構造が提案されている。この目地構造では、サイディング(壁体10)と目地部材1との間に突条2によって仕切られる複数の空洞(凹溝7)が形成されており、この凹溝7が樋の役割をする。したがって、この目地構造では、目地隙間から浸入する水は目地部材1の凹溝7内を流下して外部に排出されるので、目地隙間に充填される湿式のシーリング剤を必要とせず、施工費用の軽減を図ることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公昭53−000021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、通常、サイディングは、特許文献1のように下地に対して直接固定されるか、又は胴縁を介して下地に固定される。いずれの場合であっても、サイディングを下地に対して安定して固定するために、サイディングは、下地もしくは胴縁に対してほぼ密着した状態、又は下地もしくは胴縁との間の隙間を小さく抑えた状態で配置されて、ねじや釘などで固定される。
【0007】
したがって、特許文献1に記載の目地構造においては、図14に示すように、突条2を有する目地部材1は、サイディング10と下地5との間の小さな隙間に配置されることになる。よって、目地部材1とサイディング10との隙間8は必然的に小さくなる。このような小さな隙間8に水が入り込むと、この水は、水の表面張力に起因する毛細管現象によって目地部材1とサイディング10との隙間8に保持されて長時間滞留しやすくなる。この隙間8に水が長時間滞留すると、たとえ目地部材1に上記のような突条2が設けられていたとしても、滞留している水は、突条2を越えてサイディング10と目地部材1との隙間、又はサイディング10と下地5との隙間に沿って横方向に広がりやすくなる。
【0008】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、湿式のシーリング剤で目地隙間を塞がなくても、目地部材とサイディングとの間の隙間における水の滞留を抑制するとともに、サイディングと下地との隙間に沿った水の広がりを抑制することができ、しかも、サイディングを下地に対して安定して固定することができるサイディングの目地構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のサイディングの目地構造は、建築物の下地を覆う長方形状の第1サイディング及び第2サイディングと、第1スペーサー部、第2スペーサー部及び溝部を有するベース部材と、第1シール部と、第2シール部と、を備えている。
【0010】
第1サイディング及び第2サイディングは、互いの側縁部間に所定間隔の目地隙間を設けて配列されている。
【0011】
第1スペーサー部は、前記第1サイディングと前記下地との間に位置し、前記目地隙間の長手方向に沿って延び、前記第1サイディングの内面と前記下地との間隔を保持する。前記第2スペーサー部は、前記第2サイディングと前記下地との間に位置し、前記長手方向に沿って延び、前記第2サイディングの内面と前記下地との間隔を保持する。前記溝部は、これらのスペーサー部の間に位置し、前記目地隙間に対向する位置において前記長手方向に沿って延び、前記第1スペーサー部及び前記第2スペーサー部よりも前記下地側の方向に凹んでいる。
【0012】
前記第1シール部は、前記第1サイディングと前記第1スペーサー部との間の第1隙間及び前記第2サイディングと前記第2スペーサー部との間の第2隙間よりも奥行きが深く前記目地隙間と前記溝部との間に位置する奥深空間と、前記第1隙間との間に、前記長手方向に沿って配置され、前記目地隙間から前記奥深空間に入り込んだ水が前記第1隙間に浸入するのを抑制可能である。
【0013】
前記第2シール部は、前記奥深空間と前記第2隙間との間に前記長手方向に沿って配置され、前記目地隙間から前記奥深空間に入り込んだ水が前記第2隙間に浸入するのを抑制可能である。
【0014】
この構成では、ベース部材の第1スペーサー部が第1サイディングの内面と下地との間隔を保持し、第2スペーサー部が第2サイディングの内面と下地との間隔を保持する役割を担う。前記第1隙間及び第2隙間は、ベース部材を介して各サイディングを下地に安定して固定するために、その間隔が小さくなるように設定される。仮に、目地部の隙間から入り込んだ水がこれらの第1隙間及び第2隙間に浸入すると、前記したように毛細管現象によって水が第1隙間及び第2隙間内を幅方向にさらに広がるとともに、これらの第1隙間及び第2隙間に長時間滞留することになる。
【0015】
そこで、本構成ではさらに、ベース部材に前記溝部を設けることにより、目地隙間と溝部との間に、第1隙間及び第2隙間よりも奥行きが深い奥深空間を形成している。この奥深空間では、第1隙間及び第2隙間に比べて毛細管現象が生じにくいので、この奥深空間にある水は前記長手方向に沿って延設された目地部材を伝って円滑に流れて外部に排出される。これにより、奥深空間における水の滞留が抑制される。
【0016】
また、奥深空間と第1隙間との間には前記長手方向に沿って第1シール部が配置され、奥深空間と第2隙間との間には前記長手方向に沿って第2シール部が配置されている。第1シール部は、目地隙間から奥深空間に入り込んだ水が第1隙間に浸入するのを抑制可能であり、第2シール部は、目地隙間から奥深空間に入り込んだ水が第2隙間に浸入するのを抑制可能である。
【0017】
以上のように、本構成によれば、湿式のシーリング剤で目地隙間を塞がなくても、目地部材とサイディングとの間の隙間における水の滞留を抑制するとともに、サイディングと下地との隙間に沿った水の広がりを抑制することができ、しかも、サイディングを下地に対して安定して固定することができる。
【0018】
前記第1シール部は、前記長手方向に沿って延び、前記ベース部材側の位置に設けられる基端部と、前記長手方向に沿って延び、前記目地隙間側を向く方向に撓むように弾性変形した状態で前記第1サイディングの内面に接触する先端部とを有しているのが好ましい。また、前記第2シール部は、前記長手方向に沿って延び、前記ベース部材側の位置に設けられる基端部と、前記長手方向に沿って延び、前記目地隙間側を向く方向に撓むように弾性変形した状態で前記第2サイディングの内面に接触する先端部とを有しているのが好ましい。
【0019】
この構成では、第1シール部の先端部及び第2シール部の先端部が共に目地隙間側の方向に向いた状態、すなわち内側に向いた状態で第1サイディングの内面及び第2サイディングの内面にそれぞれ接触しているので、外側に向いた状態と比べて毛細管現象による水の浸入をより抑制することができる。すなわち、第1シール部及び第2シール部によって奥深空間と隔てられた両サイドの空間においては、先端部とサイディングの内面との接触領域の近傍に微少な隙間が形成される。したがって、先端部とサイディングの内面とのなす角度が鋭角になっている。一方で、奥深空間においては、先端部はなだらかなカーブを描いてサイディングの内面に向かっており、先端部とサイディングの内面とのなす角度は鈍角となる。これにより、奥深空間において、毛細管現象による水の滞留が生じるのを抑制できる。
【0020】
また、各先端部は撓むように弾性変形した状態で各サイディングの内面に接触しているので、各先端部と各サイディングの内面との間に隙間が生じにくくなり、第1隙間及び第2隙間への水の浸入をさらに抑制することができる。
【0021】
また、本発明の目地構造では、前記第1シール部及び前記第2シール部を含み、前記ベース部材に対して着脱可能な目地部材を備えていてもよい。この目地部材は、前記溝部の底面に沿って配置されて前記長手方向に沿って延びる基板部を有し、この基板部の幅方向の一方側の端辺に前記第1シール部の前記基端部がつながり、前記基板部の前記幅方向の他方側の端辺に前記第2シール部の前記基端部がつながり、前記基板部、前記第1シール部及び前記第2シール部が一体に成形されている。
【0022】
この構成では、基板部を溝部の底面に沿って配置するだけで、第1シール部及び第2シール部を所定の位置に簡単に取り付けることができる。
【0023】
前記目地部材は、前記基板部から前記目地隙間まで立設されるとともに前記長手方向に沿って延びる立設部と、この立設部に取り付けられ、前記目地隙間を塞ぐように前記側縁部間に前記長手方向に沿って配置され、弾性変形した状態で各側縁部に当接する弾性部材とを含む第3シール部をさらに有していてもよい。
【0024】
この構成では、前記側縁部間に第3シール部の弾性部材が弾性変形した状態で前記長手方向に沿って配置されているので、目地隙間から奥深空間へ水が入り込むのを抑制することができる。
【0025】
前記目地部材は、前記第1シール部又は前記基板部から前記幅方向の一方側の外方に突出する第1凸部と、前記第2シール部又は前記基板部から前記幅方向の他方側の外方に突出する第2凸部とをさらに有しており、前記ベース部材は、前記溝部内における前記第1スペーサー部側の内側面に前記第1凸部が係合する凹部を有し、前記溝部の外部に前記第2凸部が載置される載置面を有していてもよい。
【0026】
この構成では、目地部材の第1凸部をベース部材の凹部に係合させ、第2凸部を載置面に載置するだけで、目地部材をベース部材に対して正確にかつ簡単に位置決めできる。
【0027】
また、前記第1シール部及び前記第2シール部が前記ベース部材と一体の部材である場合には、ベース部材を下地に取り付けるだけでそれと同時に第1シール部及び第2シール部を所定の位置に配設できる。
【0028】
この場合、前記溝部は、前記下地側の方向に凹む第1溝部と、この第1溝部よりも幅が小さく前記第1溝部の底面からさらに前記下地側の方向に凹む第2溝部とを含み、前記第1シール部の基端部及び第2シール部の基端部は、前記第1溝部の底面又は内側面に連結されていてもよい。
【0029】
この構成では、溝部の奥行きの深さを大きなまま維持できる一方で、第1シール部及び第2シール部の基端部から先端部までの寸法を小さくできるので、前記した水の浸入及び滞留の抑制効果を維持しつつ、前記寸法が大きい場合と比べて第1シール部及び第2シール部の形状安定性及び第1溝部との連結部の耐久性を高めることができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、湿式のシーリング剤で目地隙間を塞がなくても、目地部材とサイディングとの間の隙間における水の滞留を抑制するとともに、サイディングと下地との隙間に沿った水の広がりを抑制することができ、しかも、サイディングを下地に対して安定して固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるサイディングの目地構造を示す正面図である。
【図2】(a)は第1実施形態の目地構造を示す平面図であり、(b)は目地部の周辺を拡大した断面図である。
【図3】第1実施形態の目地構造に用いる部材であり、(a)は固定金具を示す正面図であり、(b)はベース部材を示す平面図であり、(c)は目地部材を示す平面図である。
【図4】第1実施形態の目地構造の施工方法の全体の流れを示す平面図である。
【図5】(a)及び(b)は、図4の施工方法において目地部材を第1サイディングとベース部材との間の空間に挿入するステップを示している。
【図6】図4の施工方法において目地部材をベース部材に取り付けた状態を示している。
【図7】第1実施形態において、第1シール部及び第2シール部の先端部と第1サイディング及び第2サイディングの内面との接触状態、並びに第3シール部の弾性部材と第1サイディング及び第2サイディングの側縁部との接触状態を示している。
【図8】本発明の第2実施形態にかかるサイディングの目地構造を示す平面図である。
【図9】(a)は、本発明の第3実施形態にかかるサイディングの目地構造を示す平面図であり、(b)は、その目地部の周辺を拡大した断面図である。
【図10】(a)は、第3実施形態の目地構造の他の例を示す平面図であり、(b)は、その目地部の周辺を拡大した断面図である。
【図11】本発明の第4実施形態にかかるサイディングの目地構造を示す平面図である。
【図12】本発明の第5実施形態にかかるサイディングの目地構造を示す平面図である。
【図13】第5実施形態の目地構造の他の例を示す平面図である。
【図14】従来のサイディングの目地構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0033】
<第1実施形態>
図1及び図2に示すように、第1実施形態にかかるサイディングの目地構造は、柱11を含む建築物の下地を覆う長方形状の複数のサイディング13と、ベース部材23と、目地部材29と、防水シート67とを備えている。
【0034】
以下の説明では、複数のサイディング13のうち、図1を正面から見たときに目地部15に対して向かって左側のサイディング13を第1サイディング131と呼び、目地部15に対して向かって右側のサイディングを第2サイディング132と呼ぶこととする。これらのサイディング131,132は同じ形状を有している。また、図1に示すように、目地部15の隙間の延びる方向(長手方向)Lは、本実施形態では鉛直方向に一致している。
【0035】
第1サイディング131と第2サイディング132は、互いの側縁部31,33同士が対向するように横方向に交互に配列されている。これらのサイディング131,132同士の継ぎ目である目地部15は、所定間隔の目地隙間S3を有している。また、第1サイディング131は上下方向にも複数配列され、第2サイディング132も同様に上下方向に複数配列されている。
【0036】
各サイディング13は、上端辺の左右両サイドの2箇所と下端辺の左右両サイドの2箇所の合計4箇所において固定金具57によりベース部材23に固定されている。図1には、第2サイディング132の上端辺の左サイドの箇所に設けられた固定金具57が描かれている。図2には、第1サイディング131の上端辺の右サイドの箇所に設けられた固定金具57と、第2サイディング132の上端辺の左サイドの箇所に設けられた固定金具57とが描かれている。
【0037】
図3(a)に示すように、この固定金具57は、正面から見ると長方形状の金具本体57dと、この金具本体57dの高さ方向の中央付近に設けられた上部支持片57a及び一対の下部支持片57bとを有している。また、金具本体57dには、一対の下部支持片57b,57bの上方に、後述する金具固定釘63,65をそれぞれ挿通するための一対の穴57cが設けられている。
【0038】
図1及び図2に示すように、各サイディング13は、その上端辺における裏面側の位置に、厚みがサイディング13の本体よりも薄く幅方向に沿って延びる係止片13aを有している。上部支持片57aは、サイディング13の上端辺の係止片13aに引っかけてサイディング13の上部を支持するためものであり、金具本体57dから前方に延び下方に向かって折れ曲がった形状を有している。各下部支持片57bは、金具本体57dから前方に延び上方に向かって折れ曲がった形状を有している。各下部支持片57bは、各サイディング13の下端辺の近傍における裏面側の位置に設けられ、前記した係止片13aと同様な形状の図略の係止片に引っかけてサイディング13の下部を支持する。
【0039】
図1、図2及び図3(b)に示すように、ベース部材23は、厚み方向T(前後方向)よりも幅方向W(左右方向)の方が大きく長手方向Lに沿って延びる扁平な形状を有している。ベース部材23は、サイディング13と柱11との間に配置されている。図3(b)に示すように、ベース部材23は、第1スペーサー部17、第2スペーサー部19及び溝部21を有している。
【0040】
第1スペーサー部17は、第1サイディング131と柱11との間に位置し、長手方向Lに沿って延びている。この第1スペーサー部17は、第1サイディング131の内面37と柱11との間隔を保持する。第2スペーサー部19は、第2サイディング132と柱11との間に位置し、長手方向Lに沿って延びている。この第2スペーサー部19は、第2サイディング132の内面39と柱11との間隔を保持する。
【0041】
言い換えると、第1スペーサー部17及び第2スペーサー部19は、サイディング13と下地(柱11)との間隔を決める役割を果たす部位である。具体的には、本実施形態の場合には、サイディング13を支持する固定金具57の裏面と接しているベース部材23の表面17aと、柱11の表面と接しているベース部材23の裏面17bとの間の部分(図3(b)の一点鎖線よりも右側の部分)が第1スペーサー部17となる。同様に、サイディング13を支持する固定金具57の裏面と接しているベース部材23の表面19aと、柱11の表面と接しているベース部材23の裏面19bとの間の部分(図3(b)の一点鎖線よりも左側の部分)が第2スペーサー部19となる。
【0042】
溝部21は、第1スペーサー部17と第2スペーサー部19の間に位置し、目地隙間S3に対向する位置において長手方向Lに沿って延び、第1スペーサー部17及び第2スペーサー部19よりも柱11側の方向に凹んでいる。
【0043】
溝部21は、その幅が目地隙間S3の間隔よりも大きくなるように設計されている。また、溝部21は、その幅方向Wの中央が目地隙間S3の幅方向Wの中央とほぼ一致するように配置されている。溝部21の深さは、溝部21に目地部材29を配置したときにサイディング13の内面37,39と目地部材29の基板部47との間に毛細管現象によって水が滞留するのを抑制できるような寸法に設定される。すなわち、溝部21の深さを調整することにより、内面37,39と基板部47との間の奥行きを適宜調整できる。
【0044】
また、ベース部材23は、溝部21における第1スペーサー部17側の内側面及び第2スペーサー部19側の内側面に凹部49,49がそれぞれ設けられている。また、ベース部材23は、溝部21と第1スペーサー部17の表面17aとの間に載置面51を有し、溝部21と第2スペーサー部19の表面19aとの間に載置面51を有している。凹部49は、後述する第1凸部43が係合し、載置面51は、第2凸部45が載置される。凹部49は、厚み方向Tの背面側の面が溝部21の底面と同一平面上にある。載置面51は、第2凸部45の厚みに相当する深さ又はそれよりも少し大きめの深さ分だけ表面17a,19aよりも背面側に凹んでいる。
【0045】
一対の凹部49,49は、長手方向Lに沿って延びる幅方向の中心の線に対して線対称の関係にあり、一対の載置面51,51も同様に前記中心線に対して線対称の関係にある。図2に示すように、実際の使用時には、一対の凹部49,49のうちの一方のみが使用され、一対の載置面51,51のうちの一方のみが使用されるが、前記したように線対称の関係にあるので、このベース部材23は上下を逆に配置しても使用することができる。
【0046】
図3(c)に示すように、本実施形態の目地部材29は、ベース部材23とは別体の部材であり、ベース部材23に対して着脱可能である。この目地部材29は、基板部47、第1シール部25、第2シール部27、第3シール部41、第1凸部43、及び第2凸部45を有し、これらが一体に成形されている。
【0047】
基板部47は、溝部21の底面に沿って配置され、長手方向Lに延びる板形状を有している。この基板部47の長手方向Lの長さは溝部21の底面の長手方向Lの長さとほぼ同じである。この基板部47の幅方向Wの一方側(方向W1側)の端辺には、第1シール部25の基端部25aがつながり、基板部47の幅方向Wの他方側(方向W2側)の端辺には、第2シール部27の基端部27aがつながっている。
【0048】
第1シール部25及び第2シール部25は、長手方向Lに沿ってそれぞれ延びている。第1シール部25は、基端部25aが溝部21の底面に接するように配置され、この基端部25aから第1サイディング131の内面37に向かって延びている。第1シール部25の先端部25bは、第1サイディング131の内面37に接している。第2シール部27は、基端部27aが溝部21の底面に接するように配置され、この基端部27aから第2サイディング132の内面39に向かって延びている。第2シール部27の先端部27bは、第2サイディング132の内面39に接している。
【0049】
具体的には、第1シール部25は、基端部25aから前方に延び、途中で方向W1に向かって折れ曲がり方向W1に向かって延び、再び前方に折れ曲がった形状を有している。また、第2シール部27は、基端部27aから前方に延び、途中で方向W2に向かって折れ曲がり方向W2に向かって延び、再び前方に折れ曲がった形状を有している。
【0050】
したがって、第1シール部25と第2シール部27との間隔は、基端部25a,27a側の部分が狭く、先端部25b,27b側の部分が広くなっている。このように目地部材29における前記基端部25a,27a側の部分がコンパクトになっているので、後述する施工時において、溝部21に目地部材29を配置する際に、前記基端部25a,27a側の部分が邪魔になりにくい。これにより、施工時の作業性が向上する。一方で、先端部25b,27b側の部分は、前記間隔が広いので、この空間に水が浸入した場合であっても毛細管現象に起因する水の滞留を効果的に抑制することができる。
【0051】
第1シール部25の先端部25b及び第2シール部27の先端部27bは、長手方向Lに垂直な方向の厚みが薄い扁平形状をそれぞれ有している。これらの先端部25b,27bは弾性を有しているので、後述する施工時や現場設置後において、サイディング13の内面37,39に対して密着(接触)しやすくなり、優れた防水性が得られる。
【0052】
先端部25b及び先端部27bは、先端に行くほど目地部15の隙間に近づく方向に向くように成形されている。すなわち、先端部25bと先端部27bは、先端に行くほど互いの間隔が小さくなるように成形されている。各部材が現場に設置されたときには、先端部25bは、弾性変形した状態で先端部25bの一方の面(外側の面)が第1サイディング131の内面37に面接触した状態となり、先端部27bは、弾性変形した状態で先端部27bの一方の面(外側の面)が第2サイディング132の内面39に面接触した状態となる。
【0053】
第3シール部41は、基板部47から目地部15の隙間まで延びるとともに長手方向Lに沿って延設された板状の立設部53と、この立設部53に取り付けられ、弾性変形した状態で長手方向Lに沿って側縁部31,33間に配置されて両方の側縁部31,33に当接する弾性部材55とを含んでいる。
【0054】
立設部53は、前後方向に平行な立設部本体53aとこの立設部本体53aの先端に設けられ、幅方向Wに平行な先端部53bとを有している。この先端部53bは、その幅が目地部15の隙間の間隔と同じ又はそれよりも僅かに小さな寸法に成形されているので、目地部15の隙間をある程度塞ぐことができる。これにより、目地部15からに水の浸入をさらに抑制することができる。また、先端部53bは、弾性部材55が立設部53から抜けて外れるのを防止する機能も有している。
【0055】
第1凸部43は、第1シール部25と基板部47がつながる角部から幅方向Wの一方側の外方(図2の方向W1)に突出している。すなわち、第1凸部43は、その裏面が基板部47の裏面と同一平面上にあり、前記角部から基板部47と平行な方向(方向W1)に延設された形態を有している。したがって、目地部材29が溝部21に配置された状態では、第1凸部43は溝部21の底面に面接触する。このような構成であるので、目地部材29を溝部21に配置する際には、第1凸部43を溝部21の底面に接触させながら凹部49に向かってスライドさせるだけで、第1凸部43を凹部49に簡単に挿入することができる。
【0056】
第2凸部45は、第2シール部27から幅方向Wの他方側の外方(図2の方向W2)に突出している。具体的には、図3(c)に示すように、第2凸部45は、基端部27aから前方に延びる第2シール部27が途中で方向W2に向かって折れ曲がり、再び前方に向かって折れ曲がる角部から方向W2に向かって延設された板形状を有している。上記したように、第1凸部43が凹部49に挿入されて位置決めされると、第2凸部45は、載置面51に載置するだけで適正な位置に配設される。
【0057】
上記のような目地部材29がベース部材23の溝部21に配置され、各サイディング13が取り付けられた状態では、図2(b)に示すように、目地隙間S3と溝部21との間には、奥深空間Sが形成されている。この奥深空間Sは、目地部材20の基板部47、第1シール部25、第2シール部27、及び各サイディングの内面37,39に囲まれた空間である。この奥深空間Sは、第1隙間S1及び第2隙間S2よりも奥行きが深い。
【0058】
サイディング13の内面37,39と、防水シート67との間の空間Vは通気層として機能する。
【0059】
ベース部材23は、例えば木材、金属、樹脂などを用いて成形される。目地部材29は、基板部47、第1シール部25、第2シール部27、第3シール部41の立設部53、第1凸部43、及び第2凸部45が全て同じ材質であってもよいが、これに限定されない。例えば、基板部47、第1シール部25(先端部25bを除く部分)、第2シール部27(先端部27bを除く部分)、第3シール部41の立設部53、第1凸部43及び第2凸部45は、ある程度の剛性が必要であるので例えばアルミニウムなどの金属、硬質の樹脂、樹脂被膜を有する鋼板などを用いて形成されるのがよい。第1シール部25の先端部25b、第2シール部27の先端部27b及び第3シール部41の弾性部材55は、耐水性を有する軟質の樹脂などを用いて形成されるのがよい。このように異なる材料で目地部材29が構成される場合であっても共押出成形などによって一体成形することもできる。
【0060】
各部材は以上のような構成を有しており、次のようにして柱11に固定される。すなわち、図2に示すように、ベース部材固定釘59,61は、ベース部材23を柱11に固定している。ベース部材固定釘59,61は、ベース部材23の長手方向に沿って複数箇所に設けられる。ベース部材固定釘61は、目地部材29の第2凸部45に設けられた図略の穴にも挿通されており、目地部材29をベース部材23に対して固定している。また、金具固定釘63,65は、サイディング13の上端辺及び下端辺を支持する固定金具57をベース部材23及び柱11に固定している。
【0061】
防水シート67は、各サイディング13の背面側のほぼ全体にわたって設けられ、ベース部材23と柱11との間に挟まれて支持されている。
【0062】
次に、本実施形態の目地構造の施工方法について説明する。この施工方法は、以下に示すように複数のステップからなる。なお、図4において二点鎖線で描いている第1サイディング131及び第2サイディング132は、ベース部材23に固定する前の状態をそれぞれ示している。また、図4の柱11′に固定されているベース部材23′、目地部材29′及びサイディング13′は、既に取り付けられた状態であることとし、以下ではこの状態から先の施工手順について説明する。
【0063】
まず、図4に示すように、第1ステップにおいて、柱11とベース部材23の間に防水シート67を配置した状態で、ベース部材固定釘59,61を用いてベース部材23を柱11に固定する。
【0064】
ついで、第2ステップにおいて、第1サイディング131の側縁部31がベース部材23の溝部21に対向するように、第1サイディング131をベース部材23の第1スペーサー部17側の位置に固定金具57及び金具固定釘63を用いて固定する。このとき、柱11′に固定されているベース部材23′にも同様にして第1サイディング131を固定する。
【0065】
次に、第3ステップにおいて、図4及び図5(a)に示すように、第1シール部25の先端部25bの一方の面(外面)を第1サイディング131の内面37に接触させるとともに、第3シール部41の弾性部材55の一方の端部(幅方向の一方の端部)を第1サイディング131の側縁部31に当接させながら目地部材29を横方向にスライドさせる。このとき、目地部材29の第1凸部43を溝部21の底面に接触させながら目地部材29をスライドさせる。
【0066】
このようにスライドさせることにより、先端部25bをスライド方向とは反対側に向けて弾性変形させ(倒れ込ませ)、かつ、弾性部材55が前記スライド方向に収縮するように弾性変形させた状態で、目地部材29の第1凸部43及び第1シール部25を第1サイディング131とベース部材23との間の空間に挿入することができる。なお、ここでいう横方向とは、方向W1ないしこの方向W1から柱11側に少し傾斜した方向のことをいう。
【0067】
ついで、図5(b)に示すように、目地部材29を前記横方向にさらにスライドさせながら第2凸部45を柱11側の方向(背面側の方向)に押し込むことにより、第1凸部43を溝部21の凹部49に係合させ、第2凸部45を載置面51に載置することができる。
【0068】
ついで、図6に示すように、第2凸部45に設けられた穴にベース部材固定釘61を挿通して第2凸部45をベース部材23及び柱11に固定する。
【0069】
次に、第4ステップにおいて、図4に二点鎖線で示す第2サイディング132の内面39(又は内面39と側縁部33との角部)を、図7に示すように第2シール部27の先端部27bの一方の面(外面)に接触させるとともに、第2サイディング132の側縁部33を第3シール部41の弾性部材55の他方の端部(幅方向の他方の端部)に当接させながら第2サイディング132を横方向(方向W1)にスライドさせる。これにより、図7に実線で示すように、先端部27bを前記スライド方向に向けて弾性変形させ(倒れ込ませ)、かつ、弾性部材55を前記スライド方向に収縮するように弾性変形させた状態にすることができる。この状態では、図2(b)に示すように、第2サイディング132の側縁部33は、溝部21に厚み方向(前後方向)に対向するとともに第1サイディング131の側縁部31との間に所定の間隔を隔てて配置されている。ついで、第2サイディング132を固定金具57を用いて、ベース部材23の第2スペーサー部19側の位置に固定する。
【0070】
なお、図7において、先端部25b,27bが弾性変形する前(設置前)の状態を二点鎖線で示し、先端部25b,27bが弾性変形した後(設置後)の状態を実線で示している。
【0071】
以上説明したように、前記実施形態によれば、ベース部材23に溝部21を設けることにより、目地隙間S3と溝部21との間に、第1隙間S1及び第2隙間S2よりも奥行きが深い奥深空間Sを形成している。この奥深空間Sでは、第1隙間S1及び第2隙間S2に比べて毛細管現象が生じにくいので、この奥深空間Sにある水は長手方向Lに沿って延設された目地部材29を伝って円滑に流れて外部に排出される。これにより、奥深空間Sにおける水の滞留が抑制される。
【0072】
また、奥深空間Sと第1隙間S1との間には長手方向Lに沿って第1シール部25が配置され、奥深空間Sと第2隙間S2との間には長手方向Lに沿って第2シール部27が配置されている。第1シール部25は、目地隙間S3から奥深空間Sに入り込んだ水が第1隙間S1に浸入するのを抑制可能であり、第2シール部27は、目地隙間S3から奥深空間Sに入り込んだ水が第2隙間S2に浸入するのを抑制可能である。
【0073】
また、間隔の狭い目地隙間S3から奥行きを持たせた奥深空間Sに水が入り込むときの減圧効果によって、第1隙間及び第2隙間に水が浸入しようとする作用(力)が弱まるので、第1隙間及び第2隙間に水が広がりにくくなる。
【0074】
また、前記実施形態では、第1シール部25は、長手方向Lに沿って延び、ベース部材23の溝部21の底面に接するように設けられる基端部25aと、長手方向Lに沿って延び、目地隙間S3側を向く方向に撓むように弾性変形した状態で第1サイディング131の内面37に接触する先端部25bとを有している。また、第2シール部27は、長手方向Lに沿って延び、ベース部材23の溝部21の底面に接するように設けられる基端部27aと、長手方向Lに沿って延び、目地隙間S3側を向く方向に撓むように弾性変形した状態で第2サイディング132の内面39に接触する先端部27bとを有している。
【0075】
この構成では、第1シール部25の先端部25b及び第2シール部27の先端部27bが共に目地隙間S3側の方向に向いた状態、すなわち内側に向いた状態で第1サイディング131の内面37及び第2サイディング132の内面39にそれぞれ接触している。これにより、先端部25,27がそれぞれ外側に向いた状態と比べて、奥深空間Sに入り込んだ水が毛細管現象によって第1隙間及び第2隙間に浸入するのをより抑制することができる。
【0076】
また、先端部25,27は撓むように弾性変形した状態でサイディング131,132の内面37,39にそれぞれ接触しているので、先端部25,27とサイディング131,132の内面37,39との間に隙間が生じにくくなり、第1隙間S1及び第2隙間S2への水の浸入をさらに抑制することができる。
【0077】
また、前記実施形態では、第1シール部25及び第2シール部27を含み、ベース部材23に対して着脱可能な目地部材29を備えている。この目地部材29は、溝部21の底面に沿って配置されて長手方向Lに沿って延びる基板部47を有し、この基板部47の幅方向の一方側の端辺に第1シール部25の基端部25aがつながり、基板部47の幅方向の他方側の端辺に第2シール部27の基端部27aがつながっている。基板部47、第1シール部25及び第2シール部27は一体に成形されている。
【0078】
この構成では、基板部47を溝部21の底面に沿って配置するだけで、第1シール部25及び第2シール部27を所定の位置に簡単に取り付けることができる。
【0079】
また、前記実施形態では、目地部材29は、基板部47から目地隙間S3まで立設されるとともに長手方向Lに沿って延びる立設部53と、この立設部53に取り付けられ、目地隙間S3を塞ぐように側縁部31,33間に長手方向Lに沿って配置され、弾性変形した状態で各側縁部に当接する弾性部材55とを含む第3シール部41をさらに有している。
【0080】
この構成では、側縁部31,33間に第3シール部41の弾性部材55が弾性変形した状態で長手方向Lに沿って配置されているので、目地隙間S3から奥深空間Sへ水が入り込むのを抑制することができる。
【0081】
前記実施形態では、目地部材29は、基板部47から方向W1に突出する第1凸部43と、第2シール部27から方向W2に突出する第2凸部45とをさらに有している。ベース部材23は、溝部21内における第1スペーサー部17側の内側面に第1凸部43が係合する凹部49を有し、溝部21の外部に第2凸部45が載置される載置面51を有している。
【0082】
この構成では、目地部材29の第1凸部43をベース部材23の凹部49に係合させ、第2凸部45を載置面51に載置するだけで、目地部材29をベース部材23に対して正確にかつ簡単に位置決めできる。
【0083】
また、前記実施形態の施工方法は、次の各ステップを含んでいる。第1ステップでは、柱(下地)11にベース部材23を固定する。第2ステップでは、第1サイディング131の側縁部31が溝部21に対向するように第1サイディング131をベース部材23に固定する。
【0084】
ついで、第3ステップでは、第1シール部25の先端部25bを第1サイディング131の内面37に接触させながら目地部材29を横方向にスライドさせることにより、先端部25bが前記スライド方向とは反対側を向く方向に撓むように先端部25bを弾性変形させた状態で、目地部材29を溝部21に配置する。
【0085】
ついで、第4ステップでは、第2サイディング132の内面39(又は内面39と側縁部33との角部)を第2シール部27の先端部27bに接触させながら第2サイディング132を目地部材29の前記スライド方向と同じ横方向にスライドさせることにより、第2シール部27の先端部27bが前記スライド方向に撓むように先端部27bを弾性変形させた状態で、第2サイディング132の側縁部33が溝部21に対向するとともに第1サイディング131の側縁部31との間に所定間隔の目地隙間S3ができるように第2サイディング132を配置する。
【0086】
この方法では、第3ステップにおいて、前記のように目地部材29を前記横方向にスライドさせ、第4ステップにおいて、前記のように第2サイディング132を前記横方向にスライドさせることにより、第1シール部25及び第2シール部27の各先端部が目地隙間S3側を向く方向に撓むように弾性変形した状態で各先端部を各サイディングの内面に接触させることができる。これにより、奥深空間Sにおいては、先端部25b,27bはなだらかなカーブを描いてサイディング131,132の内面37,39に向かっており、先端部25b,27bとサイディング131,132の内面37,39とのなす角度は鈍角となる。その結果、奥深空間Sにおいて、毛細管現象による水の滞留が生じるのを抑制できる。また、各先端部25b,27bと各サイディング13の内面37,39との間に隙間が生じにくくなり、第1隙間S1及び第2隙間S2側への水の浸入をさらに抑制することができる。また、上記のような順序で各部材を取り付けることによって目地隙間S3の間隔を正確に調整しやすい。
【0087】
また、前記実施形態では、目地部材29が第3シール部41を有しているので、第3ステップ及び第4ステップをさらに次のようにしている。
【0088】
すなわち、前記第3ステップにおいて、第1シール部25の先端部25bを第1サイディング131の内面37に接触させるとともに、第3シール部41の弾性部材55の一方の端部を第1サイディング131の側縁部31に当接させながら目地部材29を横方向にスライドさせることにより、先端部25bが前記スライド方向とは反対側を向く方向に撓むように弾性変形させ、かつ、弾性部材55が前記スライド方向に収縮するように弾性変形させた状態で、目地部材29を溝部21に配置する。
【0089】
そして、前記第4ステップにおいて、第2サイディング132の内面39(又は内面39と側縁部33との角部)を第2シール部27の先端部27bに接触させるとともに、第2サイディング132の側縁部33を第3シール部41の弾性部材55の他方の端部に当接させながら第2サイディング132を横方向にスライドさせることにより、第2シール部27の先端部27bが前記スライド方向に撓むように先端部27bを弾性変形させ、かつ、弾性部材55が前記スライド方向に収縮するように弾性変形させた状態で、第2サイディング132を配置する。
【0090】
この方法では、目地部材29及び第2サイディング132を前記したように前記横方向にスライドさせることにより、第3シール部41の弾性部材55を前記側縁部31,33間において所望の位置で所望の弾性変形状態で配置することができる。すなわち、第3シール部41の弾性部材55は、幅方向の一方側の端部が第1サイディング131の側縁部31の所望の位置に当接し、他方側の端部が第2サイディング132の側縁部33の所望の位置に当接し、幅方向に収縮した状態で弾性変形している。これにより、目地隙間S3から奥深空間Sへ水が入り込むのを抑制することができる。
【0091】
<第2実施形態>
図8は、本発明の第2実施形態にかかるサイディングの目地構造を示す平面図である。この第2実施形態の目地構造は、目地部材29の構成が第1実施形態と異なっている。なお、他の構成については第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
【0092】
この第2実施形態の目地部材29は、ベース部材23とは別体の部材である。目地部材29は、第1実施形態のように第3シール部を有していない。目地部材29は、基板部47とこの基板部47の幅方向Wの一方側(方向W1側)の端辺から前方に立設された第1シール部25と、基板部47の幅方向Wの他方側(方向W2側)の端辺から前方に立設された第2シール部27とを有している。
【0093】
第1シール部25は、その基端部から第1サイディング131の内面37に向かってほぼ前後方向に平行に延び、その先端側の部分に第1実施形態の先端部25bと同様の先端部25bが設けられている。第2シール部27は、第1シール部25と同様に、その基端部から第2サイディング132の内面39に向かってほぼ前後方向に平行に延び、その先端側の部分に第1実施形態の先端部27bと同様の先端部27bが設けられている。
【0094】
この第2実施形態においても目地隙間S3と溝部21との間に奥深空間Sが形成されている。この奥深空間Sは、第1隙間S1及び第2隙間S2よりも奥行きが深い。なお、図8では、第1隙間S1及び第2隙間S2が固定金具57の下方に隠れているので、第1隙間S1及び第2隙間S2を破線の矢印で示している。
【0095】
また、この目地部材29は、第1実施形態の目地部材29のように第1凸部及び第2凸部を有していない。このような目地部材29の構成に合わせてベース部材23には、第1実施形態のような凹部49及び載置面51は設けられていない。したがって、第2実施形態の目地部材29は、例えば、溝部21に嵌合して固定される構造であってもよく、また、基板部47の裏面を接着剤などにより溝部21の底面に接合してもよく、基板部47を溝部21の底面に配置した状態で図略の釘などにより溝部21に固定してもよい。
【0096】
この第2実施形態では、例えば次のような施工方法を採用することができる。まず、ベース部材23を柱11に固定し、このベース部材23の溝部21に目地部材29を嵌合する。ついで、ベース部材23に第1サイディング用の固定金具57を固定し、この固定金具57に第1サイディング131を取り付ける。ついで、ベース部材23に第2サイディング132用の固定金具57を固定し、この固定金具57に第2サイディング132を取り付ける。
【0097】
この第2実施形態では、第1実施形態と比べて目地部材29及びベース部材23の構成が簡略化されているので、部材の製造コストなどを低減できる。
【0098】
<第3実施形態>
図9は、本発明の第3実施形態にかかるサイディングの目地構造を示す平面図である。この第3実施形態の目地構造は、目地部材がベース部材と一体の部材である点が第1実施形態と異なっている。なお、他の構成については第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
【0099】
この第3実施形態では、図9(a),(b)に示すように、溝部21は、柱11側の方向に凹む第1溝部21aと、この第1溝部21aよりも幅が小さく第1溝部21aの底面からさらに柱11側の方向に凹む第2溝部21bとを有している。
【0100】
第1シール部25は、その基端部25aが第1溝部21aの底面に接合され、この基端部25aから前方に向かって延び、その先端側の部分に第1実施形態と同様の弾性及び可撓性を有する先端部25bが設けられている。同様に、第2シール部27は、その基端部27aが第1溝部21aの底面に接合され、この基端部27aから前方に向かって延び、その先端側の部分に第1実施形態と同様の弾性及び可撓性を有する先端部27bが設けられている。
【0101】
このような一体の部材は、例えば共押出成形などの方法を用いることにより一体成形することができる。この場合、例えばベース部材23の部分を、硬質樹脂を発泡させた発泡樹脂により成形し、目地部材29の部分をエラストマーなどにより成形すればよい。
【0102】
この第3実施形態においても目地隙間S3と溝部21との間に奥深空間Sが形成されている。この奥深空間Sは、第1隙間S1及び第2隙間S2よりも奥行きが深い。
【0103】
また、この第3実施形態では、ベース部材23、第1シール部25及び第2シール部27は、図10(a),(b)に示すような構造であってもよい。この構造では、ベース部材23は、単一の溝からなる溝部21を有している。
【0104】
第1シール部25は、その基端部25aがベース部材23の第1スペーサー部17の表面17aにおける溝部21との境界部分に接合され、この基端部25aから前方に向かって延び、先端部25bが撓んで弾性変形した状態で第1サイディング131の内面37に接するように配置された構造を有している。同様に、第2シール部27は、その基端部27aがベース部材23の第2スペーサー部19の表面19aにおける溝部21との境界部分に接合され、この基端部25aから前方に向かって延び、先端部27bが撓んで弾性変形した状態で第2サイディング132の内面39に接するように配置された構造を有している。第1シール部25及び第2シール部27は、全体が弾性を有する材料により形成されている。
【0105】
これらの第3実施形態では、例えば次のような施工方法を用いることができる。まず、ベース部材23を柱11に固定する。ついで、ベース部材23に第1サイディング用の固定金具57を固定し、この固定金具57に第1サイディング131を取り付ける。ついで、ベース部材23に第2サイディング132用の固定金具57を固定し、この固定金具57に第2サイディング132を取り付ける。
【0106】
この第3実施形態では、目地部材29がベース部材23と一体の部材であるので、施工時にはこれらの部材を同時に設置することができる。これにより、作業性が向上する。
【0107】
<第4実施形態>
図11は、本発明の第4実施形態にかかるサイディングの目地構造を示す平面図である。この第4実施形態の目地構造は、固定金具57を用いていない点が第2実施形態と異なっている。なお、他の構成については第2実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
【0108】
この第4実施形態では、第2実施形態と同様の互いに別体の目地部材29及びベース部材23を用いている。
【0109】
この第4実施形態においても目地隙間S3と溝部21との間に奥深空間Sが形成されている。この奥深空間Sは、第1隙間S1及び第2隙間S2よりも奥行きが深い。
【0110】
この第4実施形態では、例えば次のような施工方法を採用することができる。まず、ベース部材23を柱11に固定し、このベース部材23の溝部21に目地部材29を嵌合する。ついで、ベース部材23に第1サイディング131を図略の釘、接着剤などの接合手段を用いて取り付ける。ついで、ベース部材23に第2サイディング132を図略の釘、接着剤などの接合手段を用いて取り付ける。
【0111】
この第4実施形態では、固定金具57の分だけ第2実施形態よりもさらに部材にかかるコストを低減することができる。
【0112】
<第5実施形態>
図12は、本発明の第5実施形態にかかるサイディングの目地構造を示す平面図である。この第5実施形態の目地構造は、固定金具57を用いていない点が第3実施形態と異なっている。なお、他の構成については第3実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
【0113】
この第5実施形態では、第3実施形態と同様の互いに一体の目地部材29及びベース部材23を用いている。図12に示す形態の場合、ベース部材23の溝部21は、柱11側の方向に凹む第1溝部21aと、この第1溝部21aよりも幅が小さく第1溝部21aの底面からさらに柱11側の方向に凹む第2溝部21bとを有している。第1シール部25は、その基端部25aが第1溝部21aの底面に接合されている。先端部25bは、第1実施形態と同様に、弾性及び可撓性を有している。第2シール部27は、その基端部27aが第1溝部21aの底面に接合されている。先端部27bは、第1実施形態と同様に、弾性及び可撓性を有している。
【0114】
図13に示す形態の場合、ベース部材23は、単一の溝からなる溝部21を有している。第1シール部25は、その基端部25aがベース部材23の第1スペーサー部17の表面17aにおける溝部21との境界部分に接合されている。先端部25bは、撓んで弾性変形した状態で第1サイディング131の内面37に接するように配置されている。第2シール部27は、その基端部27aがベース部材23の第2スペーサー部19の表面19aにおける溝部21との境界部分に接合されている。先端部27bは、撓んで弾性変形した状態で第2サイディング132の内面39に接するように配置されている。第1シール部25及び第2シール部27は、全体が弾性を有する材料により形成されている。
【0115】
この第5実施形態においても目地隙間S3と溝部21との間に奥深空間Sが形成されている。この奥深空間Sは、第1隙間S1及び第2隙間S2よりも奥行きが深い。
【0116】
この第5実施形態では、例えば次のような施工方法を用いることができる。まず、ベース部材23を柱11に固定する。ついで、ベース部材23に第1サイディング131を図略の釘、接着剤などの接合手段を用いて取り付ける。ついで、ベース部材23に第2サイディング132を図略の釘、接着剤などの接合手段を用いて取り付ける。
【0117】
この第5実施形態では、固定金具57の分だけ第3実施形態よりもさらに部材にかかるコストを低減することができる。
【0118】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、前記実施形態では、目地部15の隙間の長手方向が上下方向に一致する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、目地部15の隙間の長手方向が横方向(水平方向)に向いていてもよい。この場合、ベース部材及び目地部材もこれらの長手方向が横方向に向くように配置される。
【0119】
また、前記実施形態では、第1シール部及び第2シール部の各先端部がその先端に行くほど目地部の隙間に近づく方向に向いて弾性変形した状態でサイディングの内面に面接触している場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。各先端部は、例えば前後方向に向いた状態でサイディングの内面に接触していてもよい。
【0120】
また、前記実施形態では、第1シール部及び第2シール部の各先端部が厚みの薄い扁平形状である場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。各先端部は、例えば半球状、球状、直方体形状などのように厚みが大きな立体的な形状であってもよい。
【0121】
また、前記実施形態では、目地部材がベース部材と一体の部材である場合に、溝部が第1溝部と第2溝部とからなる複数段の構成であり、第1シール部及び第2シール部が第2溝部の底面に連結されている場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。溝部は複数段の構成ではなく一つの溝からなり、この溝の底面又は側面に第1シール部及び第2シール部が連結されていてもよい。
【0122】
また、前記第1実施形態では、ベース部材23、第1サイディング131、目地部材29、及び第2サイディング132が、この順に取り付けられる施工方法を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、第1実施形態では、まず、ベース部材23を下地に固定し、このベース部材23の溝部21に目地部材29を嵌合し、ついで、ベース部材23に第1サイディング用の固定金具57を固定し、この固定金具57に第1サイディング131を取り付け、ついで、ベース部材23に第2サイディング132用の固定金具57を固定し、この固定金具57に第2サイディング132を取り付ける施工方法を採用することもできる。
【0123】
また、前記第1実施形態では、第3シール部41が立設部53と弾性部材55とを含む場合を例に挙げて説明したが、この第3シール部41は弾性部材55を有していなくてもよい。
【0124】
また、前記第1実施形態では、目地部材29が第3シール部41を含む場合を例に挙げて説明したが、この目地部材29は第3シール部41を有していなくてもよい。
【符号の説明】
【0125】
11 柱(下地)
13 サイディング
131 第1サイディング
132 第2サイディング
17 第1スペーサー部
19 第2スペーサー部
21 溝部
23 ベース部材
25 第1シール部
27 第2シール部
29 目地部材
41 第3シール部
43 第1凸部
45 第2凸部
47 基板部
49 凹部
51 載置面
53 立設部
55 弾性部材
S 奥深空間
S1 第1隙間
S2 第2隙間
S3 目地隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの側縁部間に所定間隔の目地隙間を設けて配列され、建築物の下地を覆う長方形状の第1サイディング及び第2サイディングと、
前記第1サイディングと前記下地との間に位置し、前記目地隙間の長手方向に沿って延び、前記第1サイディングの内面と前記下地との間隔を保持する第1スペーサー部、前記第2サイディングと前記下地との間に位置し、前記長手方向に沿って延び、前記第2サイディングの内面と前記下地との間隔を保持する第2スペーサー部、及びこれらのスペーサー部の間に位置し、前記目地隙間に対向する位置において前記長手方向に沿って延び、前記第1スペーサー部及び前記第2スペーサー部よりも前記下地側の方向に凹む溝部を有するベース部材と、
前記第1サイディングと前記第1スペーサー部との間の第1隙間及び前記第2サイディングと前記第2スペーサー部との間の第2隙間よりも奥行きが深く、前記目地隙間と前記溝部との間に位置する奥深空間と、前記第1隙間との間に、前記長手方向に沿って配置され、前記目地隙間から前記奥深空間に入り込んだ水が前記第1隙間に浸入するのを抑制可能な第1シール部と、
前記奥深空間と前記第2隙間との間に前記長手方向に沿って配置され、前記目地隙間から前記奥深空間に入り込んだ水が前記第2隙間に浸入するのを抑制可能な第2シール部と、を備えているサイディングの目地構造。
【請求項2】
前記第1シール部は、前記長手方向に沿って延び、前記ベース部材側の位置に設けられる基端部と、前記長手方向に沿って延び、前記目地隙間側を向く方向に撓むように弾性変形した状態で前記第1サイディングの内面に接触する先端部とを有し、
前記第2シール部は、前記長手方向に沿って延び、前記ベース部材側の位置に設けられる基端部と、前記長手方向に沿って延び、前記目地隙間側を向く方向に撓むように弾性変形した状態で前記第2サイディングの内面に接触する先端部とを有している、請求項1に記載のサイディングの目地構造。
【請求項3】
前記第1シール部及び前記第2シール部を含み、前記ベース部材に対して着脱可能な目地部材を備え、
前記目地部材は、前記溝部の底面に沿って配置されて前記長手方向に沿って延びる基板部を有し、この基板部の幅方向の一方側の端辺に前記第1シール部の前記基端部がつながり、前記基板部の前記幅方向の他方側の端辺に前記第2シール部の前記基端部がつながり、前記基板部、前記第1シール部及び前記第2シール部が一体に成形されている、請求項2に記載のサイディングの目地構造。
【請求項4】
前記目地部材は、前記基板部から前記目地隙間まで立設されるとともに前記長手方向に沿って延びる立設部と、この立設部に取り付けられ、前記目地隙間を塞ぐように前記側縁部間に前記長手方向に沿って配置され、弾性変形した状態で各側縁部に当接する弾性部材とを含む第3シール部をさらに有している、請求項3に記載のサイディングの目地構造。
【請求項5】
前記目地部材は、前記第1シール部又は前記基板部から前記幅方向の一方側の外方に突出する第1凸部と、前記第2シール部又は前記基板部から前記幅方向の他方側の外方に突出する第2凸部とをさらに有し、
前記ベース部材は、前記溝部内における前記第1スペーサー部側の内側面に前記第1凸部が係合する凹部を有し、前記溝部の外部に前記第2凸部が載置される載置面を有している、請求項3又は4に記載のサイディングの目地構造。
【請求項6】
前記第1シール部及び前記第2シール部は前記ベース部材と一体の部材である、請求項1又は2に記載のサイディングの目地構造。
【請求項7】
前記溝部は、前記下地側の方向に凹む第1溝部と、この第1溝部よりも幅が小さく前記第1溝部の底面からさらに前記下地側の方向に凹む第2溝部とを含み、
前記第1シール部の基端部及び第2シール部の基端部は、前記第1溝部の底面又は内側面に連結されている、請求項6に記載のサイディングの目地構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−47203(P2011−47203A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197035(P2009−197035)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】