説明

サイドウォール用ゴム組成物およびその製造方法、ならびに該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤ

【課題】優れた耐屈曲亀裂性能、耐クラック性および転がり抵抗特性を示すタイヤに用いられるサイドウォール用ゴム組成物とその製造方法、ならびに該ゴム組成物からなる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分および白色充填剤を含有するサイドウォール用ゴム組成物であって、1相以上の非連続相および連続相が海−島構造を呈し、該連続相の少なくとも1相に、該白色充填剤が偏在しているサイドウォール用ゴム組成物、およびそれからなる空気入りタイヤ。前記サイドウォール用ゴム組成物の製造方法は、(a)連続相を構成するゴム成分と白色充填剤とを混練する工程、および(b)工程(a)で得られた混練物に、非連続相を構成するゴム成分を混練する工程からなることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドウォール用ゴム組成物およびその製造方法、ならびに該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タイヤのサイドウォール用ゴム組成物としては、天然ゴム(NR)等の優れた引張強さおよび引裂強さ(耐クラック性)を示すゴムとともに、耐屈曲亀裂特性を改善させるために、ブタジエンゴム(BR)等を混合し、さらに、ゴム組成物の補強性および強度を改善するために、カーボンブラックが補強用フィラーとして用られてきた。
【0003】
しかし、近年、とくに自動車の低燃費化が要求されており、タイヤについても転がり抵抗特性の向上が求められている。例えば、カーボンブラックの一部にかえて、シリカや炭酸カルシウム等の白色充填剤を用いて、タイヤ全体の転がり抵抗特性を改善させる試みがなされている。空気入りタイヤのなかでも、高性能タイヤを製造する場合、とくにタイヤ全体の転がり抵抗を低減することが要求されている。近年、環境問題が重視されるようになり、CO2排出抑制の規制が強化され、さらに、石油資源は有限であって、供給量が年々減少していることから、将来的に石油価格の高騰が予測され、カーボンブラックなどの石油資源からなる配合物の使用には限界がみられる。
【0004】
このように、フィラーについては、石油資源から得られるカーボンブラックから、石油外資源から得られるシリカや炭酸カルシウム等を積極的に使用していくことが必要となっている。特許文献1には、フィラーとしてカーボンブラックおよび炭酸カルシウムを配合し、耐変色性能および耐オゾン性を低下させずに、転がり抵抗特性を改善させた空気入りタイヤが開示されている。しかし、転がり抵抗特性において、充分な改善効果が得られないうえ、充填剤として、石油資源由来のカーボンブラックを多量配合しているため、環境に優しいものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2003−113270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた耐屈曲亀裂特性、耐クラック性および転がり抵抗特性を示すタイヤに用いられるサイドウォール用ゴム組成物およびその製造方法、ならびに該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ゴム成分および白色充填剤を含有するサイドウォール用ゴム組成物であって、1相以上の非連続相および連続相が海−島構造を呈し、該連続相の少なくとも1相に、該白色充填剤が偏在しているサイドウォール用ゴム組成物に関する。
【0008】
前記ゴム組成物の製造方法としては、(a)連続相を構成するゴム成分と白色充填剤とを混練する工程、および(b)工程(a)で得られた混練物に、非連続相を構成するゴム成分を混練する工程からなることが好ましい。
【0009】
非連続相を構成するゴム成分が、連続相を構成するゴム成分より白色充填剤との親和性が高い場合、工程(b)における非連続相を構成するゴム成分が、あらかじめ可塑剤を含有するゴム成分であることが好ましい。
【0010】
本発明は、前記サイドウォール用ゴム組成物を用いたサイドウォールを有する空気入りタイヤに関する。
【0011】
また、本発明は、前記製造方法により得られたサイドウォール用ゴム組成物を用いたサイドウォールを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フィラーとして白色充填剤を用いて、それを連続相に偏在させることにより、タイヤの耐屈曲亀裂性能、耐クラック性および転がり抵抗特性を向上させたサイドウォール用ゴム組成物およびその製造方法、ならびに該ゴム組成物を用いた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物は、ゴム成分、およびフィラーとして白色充填剤を含有し、1相以上の非連続相および連続相が海−島構造を呈したものであり、該白色充填剤は、連続相の少なくとも1相に偏在している。
【0014】
海−島構造とは、図1に示すように、白色充填剤が偏在している連続相1を海、非連続相2を島としたものをいう。
【0015】
本発明におけるゴム成分は、白色充填剤が偏在している連続相を構成するゴム成分(以下、ゴム(1)とする)、および非連続相を構成するゴム成分(以下、ゴム(2)とする)からなる。
【0016】
連続相に白色充填剤を偏在させるには、ゴム(1)および(2)における白色充填剤との親和性、溶融粘度、ならびに配合量がそれぞれ相違している必要がある。
【0017】
ゴム(1)は、白色充填剤を偏在させ、充分な強度を得られることから、白色充填剤との親和性が高いことが好ましく、さらに、ゴム(2)は、白色充填剤との親和性が低いことが好ましい。
【0018】
ゴム(1)としては、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴム、天然ゴム(NR)、および極性基を有するジエン系ゴムからなる群から選ばれる1種以上のゴムであることが好ましい。ゴム(1)としては、NRまたは極性基を有するジエン系ゴムであることが好ましく、とくに、極性基を有するジエン系ゴムであることが好ましい。
【0019】
ゴム(1)が、極性基を有するジエン系ゴムである場合、極性基としては、ブロモ基、クロロ基などのハロゲン基、エポキシ基、アミノ基などがあげられる。また、ジエン系ゴムとしては、NR、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などがあげられる。
【0020】
ゴム(1)として特にエポキシ化ジエン系ゴムが好ましく、なかでもエポキシ化天然ゴム(ENR)がより好ましい。
【0021】
エポキシ化ジエン系ゴム、とくにENRを用いると、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナなどが有する水酸基等の極性基とエポキシ基との相互作用により、より強い補強性、耐屈曲亀裂疲労性および良好な白色充填剤の偏在状態を容易に得ることができる。
【0022】
ENRとしては、市販のENRを用いてもよいし、NRをエポキシ化して用いてもよい。NRをエポキシ化する方法としては、とくに限定されるものではなく、クロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法などの方法を用いて行なうことができる。過酸法としては、たとえば、NRに過酢酸や過蟻酸などの有機過酸を反応させる方法などがあげられる。
【0023】
ゴム(1)のSP値は7.9以上であることが好ましく、8.5以上であることがより好ましい。SP値が7.9未満では、極性が低すぎてシリカ等の白色充填剤との親和性が低くなり、その中にかかる白色充填剤を偏在させることが難しくなる傾向がある。また、ゴム(1)のSP値は11以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、9.5以下であることがさらに好ましい。SP値が11をこえると、極性が高すぎて、ゴム(2)との相容性が悪くなりすぎて、コンパウンド全体の力学強度や、他の部材との接着強度が低下してしまう傾向がある。
【0024】
測定温度100℃におけるゴム(1)のムーニー粘度(ML1+4)は、25以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましい。ムーニー粘度が25未満では、粘着性が増加して、その中に通常のゴム用混練機を用いて白色充填剤を混入するのが難しくなる傾向がある。また、測定温度100℃におけるゴム(1)のムーニー粘度(ML1+4)は、115以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、85以下であることがさらに好ましい。ムーニー粘度が115をこえると、加工性が悪くなり、さらに、その中に白色充填剤を混入するのが難しくなる傾向がある。
【0025】
ゴム(1)が、エポキシ化ジエン系ゴムの場合、エポキシ化ジエン系ゴムのエポキシ化率は10モル%以上であることが好ましく、15モル%以上であることがより好ましく、20モル%以上であることがさらに好ましい。エポキシ化率が10モル%未満では、白色充填剤を連続相であるゴム(1)中に偏在させることが困難となる傾向がある。また、エポキシ化ジエン系ゴムのエポキシ化率は80モル%以下であることが好ましく、60モル%以下であることがより好ましく、55モル%以下であることがさらに好ましい。エポキシ化率が80モル%をこえると、そのSP値が上昇し、上述したようなコンパウンド全体の力学強度や他の部材との接着強度が低下してしまう傾向があるほか、硬度が高くなりすぎる傾向もある。
【0026】
全ゴム成分中におけるゴム(1)の含有率は、25重量%以上であることが好ましく、30重量%以上であることがより好ましく、40重量%以上であることがさらに好ましく、50重量%以上であることがとくに好ましい。ゴム(1)の含有率が25重量%未満では、白色充填剤を連続相中に配合して充分な補強性を得ることができず、動的加硫などの手法を用いたとしても、要求されるゴム組成物が得られない傾向がある。また、全ゴム成分中におけるゴム(1)の含有率は、85重量%以下であることが好ましく、80重量%以下であることがより好ましく、75重量%以下であることがさらに好ましく、65重量%以下であることがとくに好ましい。ゴム(1)の含有率が85重量%をこえると、耐屈曲亀裂疲労特性の改善をはかることが困難になる傾向がある。
【0027】
ゴム(2)としては、NR、水素化天然ゴム、BR、低ニトリル含有率(5〜24%)のNBR、低ニトリル含有率(5〜24%)の水素化ニトリルゴム、エチレンプロピレンジエン共重合ゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、SBR、水素化SBR、水素化BR、エポキシ化率が30モル%以下のENR、エポキシ化率が30モル%以下のエポキシ化スチレンブタジエンゴム(ESBR)、エポキシ化率が30%以下のエポキシ化ブタジエンゴム(EBR)、ならびにそれらの変性物からなる群から選ばれる1種以上のゴムであることが好ましい。なかでも、ゴム(2)としては、NR、水素化天然ゴムまたはBRであることが好ましく、とくに、NRまたは水素化天然ゴムであることが好ましい。NRおよび水素化天然ゴムは石油外資源により得られるため、環境的観点からも好ましい。
【0028】
ゴム(2)のSP値は10以下であることが好ましく、9.5以下であることがより好ましく、9以下であることがさらに好ましい。SP値が10をこえると、白色充填剤が、ゴム(2)の中にも分配されやすくなり、ゴム(1)の中に白色充填剤を偏在させるのが難しくなる傾向がある。
【0029】
ゴム(2)として、ENRなどのエポキシ化ジエン系ゴムを用いる場合、エポキシ化ジエン系ゴムのエポキシ化率は1モル%以上であることが好ましく、3モル%以上であることがより好ましく、5モル%以上であることがさらに好ましい。エポキシ化率が1モル%未満では、エポキシ化による改質効果が充分にみられない傾向がある。また、エポキシ化ジエン系ゴムのエポキシ化率は30モル%以下であることが好ましく、25モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることがさらに好ましく、15モル%以下であることがとくに好ましい。エポキシ化率が30モル%をこえると、非連続相であるゴム(2)中に白色充填剤が偏在する傾向がある。
【0030】
測定温度100℃におけるゴム(2)のムーニー粘度(ML1+4)は、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、25以上であることがさらに好ましい。ムーニー粘度が5未満では、粘着性が増加して加工性の点で問題が生じる傾向がある。また、測定温度100℃におけるゴム(2)のムーニー粘度(ML1+4)は、115以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましく、85以下であることがさらに好ましい。ムーニー粘度が115をこえると、加工性が悪くなり、タイヤのサイドウォール用に供することが難しくなる傾向がある。
【0031】
全ゴム成分中におけるゴム(2)の含有率は、15重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましく、25重量%以上であることがさらに好ましく、35重量%以上であることがとくに好ましい。ゴム(2)の含有率が15重量%未満では、耐屈曲亀裂疲労特性の改善をはかることが困難になる傾向がある。また、全ゴム成分中におけるゴム(2)の含有率は、75重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることがより好ましく、60重量%以下であることがさらに好ましく、50重量%以下であることがとくに好ましい。ゴム(2)の含有率が75重量%をこえると、白色充填剤を連続相に配合して充分な補強性をえることができず、動的加硫などの手法を用いたとしても、本発明において要求するゴム組成物が得られない傾向がある。
【0032】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物は、さらにアロマオイル、ナフテンオイル、パラフィンオイル、植物オイルなどの可塑剤を含むことができる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、石油外資源により得られ、環境にやさしいという理由から、可塑剤としては植物オイルが好ましい。
【0033】
可塑剤のSP値は7.4以上であることが好ましく、8.0以上であることがより好ましい。可塑剤のSP値が7.4未満では、極性が低く、ゴムとの相溶性が悪く、分離する傾向がある。また、可塑剤のSP値は11.5以下であることが好ましく、10.5以下であることがより好ましい。SP値が11.5をこえると、可塑剤の極性が高く、ゴムとの相溶性が悪く、分離する傾向がある。
【0034】
可塑剤を配合する場合、可塑剤の配合量は、ゴム(2)100重量部に対して、2重量部以上であることが好ましく、5重量部以上であることがより好ましい。可塑剤の配合量が2重量部未満では、可塑剤の配合による充分な可塑化の効果が得られない傾向がある。また、可塑剤の配合量は、50重量部以下であることが好ましく、30重量部以下であることがより好ましい。可塑剤の配合量が50重量部をこえると、粘度が著しく低下し、さらに、加工性が低下する傾向がある。
【0035】
ゴム(2)と可塑剤のSP値の差は、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。可塑剤のSP値の差が3をこえると、可塑剤がゴム(2)と相溶せずに非連続相の柔軟化効果を示さない傾向がある。
【0036】
フィラーとして使用される白色充填剤としては、たとえば、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、クレー、マイカ、アルミナ、タルクなどがあげられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、コスト削減ならびに補強性および低燃費性を向上させることができる点から、シリカ、炭酸カルシウムおよび水酸化アルミニウムから選ばれる1種以上であることが好ましく、シリカおよび/または炭酸カルシウムであることがより好ましい。
【0037】
白色充填剤のBET比表面積は5m2/g以上であることが好ましく、20m2/g以上であることがより好ましく、50m2/g以上であることがさらに好ましい。白色充填剤のBET比表面積が5m2/g未満では、粒径が大きくなり、充分な補強性や力学強度が得られにくい傾向がある。また、白色充填剤のBET比表面積は600m2/g以下であることが好ましく、500m2/g以下であることがより好ましく、450m2/g以下であることがさらに好ましい。白色充填剤のBET比表面積が600m2/gをこえると、均一に分散させるのが困難であり、原材料コストが上昇する傾向がある。
【0038】
シリカは、シランカップリング剤と併用されることが好ましい。シランカップリング剤としては特に制限はなく、Si69のようにタイヤ工業において一般的に用いられているものを用いることができる。
【0039】
炭酸カルシウムは、脂肪酸処理などの表面処理を施したものが好ましい。とくに脂肪酸により表面処理した炭酸カルシウムは、良好な補強性が得られることから、ゴム成分としてNRの誘導体・変性物とともに使用されることが好ましい。
【0040】
白色充填剤の含有量は、ゴム成分100重量部に対して、5重量部以上であることが好ましく、15重量部以上であることがより好ましく、25重量部以上であることがさらに好ましい。白色充填剤の含有量が5重量部未満では、ゴム組成物に対しての補強性が充分に得られず、さらに耐クラック性および耐屈曲亀裂特性が充分ではない傾向がある。また、白色充填剤の含有量は、80重量部以下であることが好ましく、65重量部以下であることがより好ましく、50重量部以下であることがさらに好ましい。白色充填剤の含有量が80重量部をこえると、ゴム組成物の硬度が過剰に大きくなるため、タイヤ用として使用する場合に問題が生じる傾向がある。白色充填剤の含有量を5〜80重量部の範囲内とすることにより、タイヤの補強性および低燃費性を両立できるとともに、コストを削減することができる。
【0041】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物は、フィラーとしては、白色充填剤のほかにカーボンブラック、グラファイトなどがあげられる。
【0042】
フィラーの全含有量に対する白色充填剤の含有率は、50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましく、90重量%以上であることがとくに好ましく、100重量%であることがもっとも好ましい。
【0043】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物は、前記ゴム成分、フィラー、シランカップリング剤および可塑剤以外にも、ワックス、老化防止剤、ステアリン酸、亜鉛華、加硫剤および加硫促進剤などの添加剤を配合することができる。
【0044】
本発明のサイドウォール用ゴム組成物は、混練工程(a)および(b)からなる製造方法により得られる。
【0045】
混練工程(a)では、ゴム(1)および白色充填剤を混練することが好ましい。
【0046】
混練工程(a)において、ゴム成分の全配合量に対する、混練工程(a)におけるゴム(1)の配合率は、50〜100重量%、より好ましくは、75〜100重量%であることが好ましい。かかる配合率が50重量%未満では、ゴム(1)に対するフィラーなどの比率が高くなるため、混練物の粘度が非常に高くなり、加工しにくい傾向がある。配合率は100重量%であることが最も好ましい。
【0047】
混練工程(a)における白色充填剤の配合量は、全混練工程において用いられる白色充填剤の配合量の50〜100重量%であることが好ましい。配合量が50重量%未満では、工程(b)において、ゴム(2)中に白色充填剤が多く配合されて硬い層ができるため、耐屈曲亀裂性能が劣る傾向がある。配合量は100重量%であることが最も好ましい。
【0048】
また、混練工程(a)においては、他にシランカップリング剤、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛などの添加剤も配合することが好ましい。
【0049】
混練工程(b)では、ゴム(2)を混練することが好ましい。
【0050】
ゴム(2)が、ゴム(1)より白色充填剤との親和性が高い場合、工程(b)におけるゴム(2)は、あらかじめ可塑剤を含有するゴム成分であることが好ましい。ゴム(2)が、ゴム(1)より白色充填剤との親和性が高い場合としては、たとえば、ゴム(1)として、NR、水素化天然ゴムなどの白色充填剤との親和性が低いゴムを用い、ゴム(2)として、ENRなどの白色充填剤との親和性が高いゴムを用いる場合をいう。この場合、工程(b)の前に、ゴム(2)を可塑剤とプレブレンドして可塑化し、得られたゴムを、工程(b)において、工程(a)で得られた混練物と混練りする。
【0051】
混練工程(b)におけるゴム(2)の配合率は、この工程でのゴム成分の全配合量に対して、50〜100重量%であることが好ましい。かかる配合率が50重量%未満では、必要な量のゴム(2)を配合して非連続相を形成させることが難しくなる。
【0052】
前記混練工程(a)および(b)からなる製造方法を好ましく用いたのち、未加硫の段階でタイヤのサイドウォールの形状にあわせて押出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成し、この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより空気入りタイヤを得ることができる。
【0053】
本発明の空気入りタイヤは、スポーツタイヤ、低燃費車用タイヤなど、優れた転がり抵抗性能を示す高性能タイヤとすることが好ましい。
【実施例】
【0054】
実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0055】
次に、実施例および比較例にて使用した各種薬品について、詳細に説明する。
天然ゴム(NR):RSS♯3(測定温度100℃におけるムーニー粘度:100、SP値:8.2)
ブタジエンゴム(BR):宇部興産(株)製のBR150B(測定温度100℃におけるムーニー粘度:43、SP値:8.2)
エポキシ化天然ゴム(ENR):ガスリーポリマー社(Guthrie Polymer sdn. bhd)製のENR25(エポキシ化率25モル%、測定温度100℃におけるムーニー粘度:75、SP値:9)
ENR1:ENR100重量部に対してエポキシ化大豆油を10重量部添加したプレブレンド(測定温度100℃におけるムーニー粘度:47、SP値:9.1)
エチレンプロピレンジエン共重合ゴム(EPDM):住友化学(株)製のエスプレン586(測定温度100℃におけるムーニー粘度:85、SP値:7.9)
シリカ:Degussa社製のウルトラシルVN3(BET比表面積:175m2/g)
シランカップリング剤:Degussa社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
カーボンブラック:昭和キャボット(株)製のショウブラックN330(HAF)
アロマオイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX140
レジン:(株)日本触媒製のSP1068レジン
ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸「桐」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ワックス:日本精鑞(株)製のオゾエース0355
硫黄:鶴見化学工業(株)製
加硫促進剤BBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルファンアミド)
加硫促進剤CBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルファンアミド)
【0056】
実施例1〜5および比較例1〜4
表1の工程(a)に示す配合量にしたがって、ゴム成分、フィラー、軟化剤、レジン、ワックス、老化防止剤、ステアリン酸および酸化亜鉛を、充填率が58%になるように(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーに充填し、80rpmでゴム温度が140℃に到達するまで混練した。
【0057】
次に、実施例1〜5に関しては、工程(a)で得られた混練物に、表1の工程(b)に示す配合量にしたがってゴム成分を配合して、バンバリーミキサーを用いて70rpmで3分間混練した。一方、比較例1〜4で得られた混練物については、工程(b)を行なわなかった。
【0058】
工程(a)または(b)で得られた混練物に対して、表1の工程(c)に示す配合量にしたがって、硫黄ならびに加硫促進剤BBSおよびCBSを配合し、得られた未加硫ゴム組成物を160℃で20分間プレス加硫することにより、約2mm×130mm×130mmの加硫ゴムブラスシート(粘弾性試験用)およびゴムサンプル(引裂試験およびデマチャ屈曲亀裂成長試験用)をそれぞれ作製した。
【0059】
得られたゴム組成物を使用して、以下の試験をおこなった。
【0060】
(粘弾性試験)
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメーターVESを用いて、温度70℃、初期歪10%、動歪2%および周波数10Hzの条件下で実施例1〜5および比較例1〜4の加硫ゴムブラスシートのtanδを測定した。そして、測定したtanδから、以下の式により、転がり抵抗指数を算出した。転がり抵抗指数が大きいほど、転がり抵抗が低減され、転がり抵抗特性に優れることを示す。
【0061】
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
【0062】
(引裂試験)
JIS K 6252「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム―引裂強さの求め方」に準じて、切り込み無しのアングル形試験片を使うことにより、引裂強さ(N/mm)を測定した。そして、測定した引裂強さから、以下の式により引裂強さ指数を算出した。引裂強さ指数が大きいほど、引裂強さが大きいことを示す。
【0063】
(引裂強さ指数)=(各配合の引裂強さ)/(比較例1の引裂強さ)×100
【0064】
(デマチャ屈曲亀裂成長試験)
JIS K 6260「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムのデマチャ屈曲亀裂成長試験方法」に準じて、温度23℃、相対湿度55%の条件下でゴム組成物サンプルに対して、100万回試験後の亀裂長さ、あるいは1mmの亀裂に成長するまでの屈曲回数を測定した。そして、得られた亀裂長さおよび屈曲回数をもとに、ゴム試験片サンプルに亀裂が1mmの長さまで成長するまでの屈曲回数を対数で表した。数値が大きいほど、亀裂が成長しにくく、耐屈曲亀裂成長性が優れていることを示す。なお、70%および110%とは、もとのゴム組成物サンプルの長さに対する伸び率を示す。
【0065】
試験結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
(ポリマー分散の評価)
原子間力顕微鏡(AFM)式の走査型プローブ顕微鏡(SPM)の位相モードにより、実施例4および比較例2のテストサンプルについてのモルフォルジーを観測した。ポリマー分散の評価結果を図2および3に示す。
【0068】
実施例1〜3のゴム組成物は、白色充填剤であるシリカを、連続相であるENRに優先的に分散させることができる。
【0069】
また、実施例4のゴム組成物では、あらかじめエポキシ化大豆油を含有するエポキシ化天然ゴム(ENR1)を工程(b)において添加して混練りすることで、ENR1ではなく、一般的にエポキシ化天然ゴムよりシリカとの相互作用の低いNRに積極的にシリカを分散させることができる。このことは、図2に示すように、実施例4のゴム組成物において、連続相中にフィラーが含まれていることからも明らかである。
【0070】
さらに、実施例5のゴム組成物では、工程(b)においてBRとともにEPDMを添加して混練りすることで、連続相を形成するNRに、より積極的にシリカを分散させることができる。
【0071】
実施例1〜5のゴム組成物はいずれも、比較例1(従来用いられているBRおよびカーボンブラックを配合したゴム組成物)のゴム組成物と比較して、引裂強さは遜色なく、転がり抵抗特性および耐屈曲亀裂成長性が優れる。
【0072】
それらに対して、比較例1のゴム組成物は、実施例と比較すると、転がり抵抗特性が大きく劣っている。
【0073】
比較例2のゴム組成物は、図3に示すように、ENRを主成分とする非連続相にシリカが分散されてしまい、実施例1〜5および比較例1のゴム組成物と比較して、とくに耐屈曲亀裂成長性が劣る。
【0074】
比較例3のゴム組成物は、ゴム成分がNRの1相のみからなっている。転がり抵抗特性はきわめて良好だったが、亀裂の成長を妨げる島相がないため、耐屈曲亀裂成長性に劣っている。
【0075】
比較例4のゴム組成物は、充填剤を配合したものではなく、補強性が充分ではなく、引裂強さおよび耐屈曲亀裂成長性に劣っている。
【0076】
実施例1〜5および比較例1〜4の結果から、シリカの分配のされやすさは、以下のことが考えられる。
EPDM≦BR<NR<ENR
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】連続相および1種類の非連続相からなるゴム組成物の海−島構造を示す図である。
【図2】実施例4で得られたテストサンプルの走査型プローブ顕微鏡(SPM)写真である。
【図3】比較例2で得られたテストサンプルの走査型プローブ顕微鏡(SPM)写真である。
【符号の説明】
【0078】
1 連続相
2 非連続相
3 天然ゴム
4 エポキシ化天然ゴム
5 白色充填剤を主として含むフィラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分および白色充填剤を含有するサイドウォール用ゴム組成物であって、
1相以上の非連続相および連続相が海−島構造を呈し、
該連続相の少なくとも1相に、該白色充填剤が偏在しているサイドウォール用ゴム組成物。
【請求項2】
(a)連続相を構成するゴム成分と白色充填剤とを混練する工程、および
(b)工程(a)で得られた混練物に、非連続相を構成するゴム成分を混練する工程
からなる請求項1記載のサイドウォール用ゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
非連続相を構成するゴム成分が、連続相を構成するゴム成分より白色充填剤との親和性が高い場合、
工程(b)における非連続相を構成するゴム成分が、あらかじめ可塑剤を含有するゴム成分である請求項2記載のサイドウォール用ゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載のサイドウォール用ゴム組成物を用いたサイドウォールを有する空気入りタイヤ。
【請求項5】
請求項2または3記載の製造方法により得られたサイドウォール用ゴム組成物を用いたサイドウォールを有する空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−112846(P2007−112846A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−303435(P2005−303435)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】