説明

サウンド・ジェネレータを有する耐水性の携帯用機器

本発明は、サウンド・ジェネレータ(12)とマイクロプロセッサ(1)とを有するダイバーズ・ウオッチのような耐水性の携帯用機器に関し、この携帯用機器は、ユーザがいる周囲の媒体(空気中あるいは水中)に応じて2つの異なる周波数(f、f)の音響信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サウンド・ジェネレータを有する水中あるいは地上で使用される耐水性の携帯用機器に関し、特に電子音響トランデューサのようなサウンド・ジェネレータを有するダイバーズ・ウオッチに関する。
【背景技術】
【0002】
人は地上(空気中)と水中で同じように音を感知しない。安全性のために時計の装着者は、自分がいる媒体(空気中または水中にいるかを問わず)で最適な方法で警告を受けなければならない。このことは、時計の装着者が潜水をする時に特に言えることである。ダイバーは、潜水可能時間が切れる前あるいは最深深度に到着する前に余裕を持って警告を受けることが必須である。
【0003】
【特許文献1】特許公開第60−001588号
【特許文献2】特許公開第07−333359号
【特許文献2】特許公開第57−101786号
【0004】
このようなダイバーズ・ウオッチは、特許文献1,2,3に開示されている。
【0005】
特許文献1に開示された電子時計は、音による時間警報と音による深度警報を生成することができる。可聴信号周波数は両方の警報に対して同一である。しかし警報の特徴(繰り返し周期と音の長さ)は、時間警報か深度警報かによって異なる。
【0006】
特許文献3に開示された電子時計は、到達した深度を表示し、深度が所定値に達した時に、音響信号を生成する装置を具備する。
【0007】
特許文献2に開示された電子時計は、深度の測定値が所定値に達したか否かを検出する手段を具備する。音響警報がその後生成され、指針が駆動される。
【0008】
上記の特許文献1,2,3は、時計の装着者が潜水を行っている時に音響警報を生成できる。しかし、これらの特許文献のいずれも、ユーザがいる周囲の媒体(空気中あるいは水中)に応じて、警報の周波数を変えることを開示/示唆していない。音響信号が伝搬する媒体(空気または水)と聴音器官(水中での聴音の場合には外部耳/内部耳あるいは頭蓋骨)は、信号に関してフィルタのように機能する。これらはいわゆる聴音フィルタと称する。実験データによるカーブが、時計の装着者がいる媒体に依存して得られ、ある周波数において、放射された音響パワーとユーザが感受する音響パワーとの差を示す。地上(空気中)では、ユーザにより聴取される音は、1−10kHzの広い周波数範囲で知覚フィルタによりわずかに減衰されるだけである。しかし水中では、音の伝搬は、40dBのオーダーの減衰で800−1000Hzのオーダーの周波数が最適のようである。しかし周波数が2倍高くなると減衰は、60dB以上となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ユーザがいる媒体がどのようなものであろうとも、ユーザに最適の聴音特性を提供できるようなサウンド・ジェネレータを有するダイバーズ・ウオッチのような携帯用機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はそれ故、ダイバーズ・ウオッチのような耐水性の携帯用機器に関する。この携帯用機器は、ユーザがいる周囲の媒体(空気中あるいは水中)に応じて2つの異なる周波数の音響信号を生成することができる。
【0011】
これらの特徴により本発明は、ユーザがいる媒体が如何なるものであろうとも、ユーザに最適の方法で警報を発するダイバーズ・ウオッチのような携帯用機器を提供する。特に、ユーザが潜水中に放出される音の周波数は、このユーザが最も好ましく聞こえるように選択される。同じことが、ユーザが地上にいる時にも行われる。
【0012】
ユーザが地上にいるかあるいは水中にいるかによって、最適の音を提供する周波数は、これら2つの媒体中の音の伝搬特性が同一でない為、異なる。さらにまた、聴音プロセスにおいて、ユーザが聴音に使用する器官は、地上にいるかあるいは水中にいるかによって、異なる。地上にいる時人は外部耳で音を聞き、水中にいる時は内部耳と頭蓋骨で音を聞く。
【0013】
本発明の第1実施例によれば、本発明の携帯用機器は、ユーザが駆動するマニュアル・スイッチを有し、これにより時計が地上にあるか水中にあるかをマイクロプロセッサに知らせる。本発明の第2実施例によれば、携帯用機器は、時計が置かれる媒体を検知する手段を有し、この携帯用機器が地上あるいは水中にあるかをマイクロプロセッサに示す信号を生成する。この検知手段は、湿度センサあるいは圧力センサであり、測定された圧湿度/圧力に応じて、携帯用機器(例えば時計)が地上にあるか水中にあるかをマイクロプロセッサに示す。
【実施例】
【0014】
本発明の携帯用機器(例えばダイバーズ・ウオッチ)は、ユーザが地上あるいは水中にいるかに応じて2つの周波数で警報信号を放出する。この2つの周波数は、ユーザのいる媒体が何であろうとも最適な方法でユーザに警報を与える。本発明の時計はユーザの安全性を大きく向上させる。
【0015】
図1のグラフは、横軸(x軸)の周波数(ヘルツ)と縦軸(y軸)の放射された音響パワーに対しユーザが受信する音響パワーの減衰(dB)を表す。カーブAは、音が空気中を伝搬する時の減衰量を表す。空気中においては、人間により感受される音は、1kHz−10kHzの間の広い周波数範囲において、極めてわずかに減衰するだけである。この理由は、音が伝搬する媒体(空気)の場合には、人間の聴音器官は、放射された音をわずか減衰させるだけだからである。水中において(カーブB)は、音の伝搬は、800−1000Hzの範囲の周波数で40dBの減衰で最適である。2つのカーブAとBとの差は、これらの2つのカーブを得るために用いられた基準音響圧力Pは、空気中と水中とでは同一でないという事実により一部説明できる。空気中においては、P=20μPaであり、水中ではP=1μPaである。この差は、音響伝達現象は、人が地上にいるか水中にいるかによって異なるという事実により説明できる。聴音プロセスで使用される人間の器官は、人間が地上にいるか水中にいるかにより同一ではない。人は、地上では外部耳により、水中では内部耳と頭蓋骨により主に音を聞き取る。
【0016】
図2において、本発明の時計は、マイクロプロセッサ1を有する。このマイクロプロセッサ1の入力は、手動スイッチ2あるいは時計が置かれた媒体を検出する手段(例えば圧力センサ)4のいずれかに接続される。本発明の変形例において、時計の装着者は、2つの状態の間で手動スイッチ2を活性化させ、時計(自分)が地上にあるか水中にあるかをマイクロプロセッサ1に指示する。本発明の一実施例によれば、圧力センサ4は、音が伝搬する媒体を検出する、即ち媒体の変化にリンクする圧力変動を検出する。
【0017】
手動スイッチ2を活性化することにより、あるいは圧力センサ4により検出した圧力変化が電気信号を生成する。この電気信号が、状態制御回路6の入力に加えられる。この電気信号は、時計が地上あるいは水中にあるかに応じて、高レベルと低レベルのいずれかを採る。手動スイッチ2または圧力センサ4により生成された電気信号の高レベルと低レベルに応じて、状態制御回路6は制御信号を周波数選択回路8の入力に与える。この制御信号により周波数選択回路8は、周波数生成回路10の出力点の2つの周波数fまたはfを、ピエゾ電子素子であるサウンド・ジェネレータ装置12に入力する。
【0018】
本発明の変形例として、本発明はダイバーズ・ウオッチを例に説明したが、本発明は水陸両用のゲーム、耐水性カメラ、深度メータあるいはさらにビーパ(ポケベル)等の他の種類の携帯用機器にも適用可能である。一例として、水陸両用のゲームは、地上あるいは水中でユーザが容易に聞くことのできるメロディを奏でる。耐水性カメラの場合には、このカメラが地上あるいは水中にあるかによって異なる音を発する。例えば、焦点合わせが実行されていることを異なる周波数でユーザに知らせる。深度メータは、ダイバーに自分が最大の深度に達したことを示し、陸上では別の機能を示す。ビーパ(ポケベル)は、媒体が空気あるいは水であろうとも人に効率よく呼び出し音を発する。
【0019】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】地上と水中における人間の音響感受性を示すグラフ。
【図2】本発明の時計の電子回路のフローチャート図。
【符号の説明】
【0021】
1 マイクロプロセッサ
2 手動スイッチ
4 圧力センサ
6 状態制御回路
8 周波数選択回路
10 周波数生成回路
12 サウンド・ジェネレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サウンド・ジェネレータ(12)とマイクロプロセッサ(1)とを有する耐水性の携帯用機器において、
前記サウンド・ジェネレータ(12)は、
携帯用機器が地上にある時には、第1周波数fを有する第1音響信号を生成し、
水中にある時には、前記第1周波数fとは異なる第2周波数fを有する第2音響信号を生成する
ことを特徴とするサウンド・ジェネレータを有する耐水性の携帯用装置。
【請求項2】
前記第1周波数fは、1kHz−10kHzの間にあり、
前記第2周波数fは、800Hz−1000Hzの間である
ことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
装着者により駆動される手動スイッチ(2)をさらに有し、
前記手動スイッチ(2)により、前記携帯用機器が地上あるいは水中にあるかをマイクロプロセッサ(1)に示す
ことを特徴とする請求項1あるいは2記載の装置。
【請求項4】
携帯用機器が置かれる媒体である空気あるいは水を検出する手段(4)
をさらに有する
ことを特徴とする請求項1あるいは2記載の装置。
【請求項5】
前記検出手段は、湿度センサである
ことを特徴とする請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記検出手段は、圧力センサ(4)を有し、
前記圧力センサ(4)は、測定された圧力に応じて、携帯用機器が地上あるいは水中にあるかをマイクロプロセッサ(1)に示す信号を生成する
ことを特徴とする請求項4記載の装置。
【請求項7】
前記手動スイッチ(2)の駆動または検知手段により検知された媒体中の変化により、状態制御回路(6)の入力に加えられる電気信号が生成され、
前記状態制御回路(6)は、前記電気信号に応じて、制御信号を周波数選択回路(8)に供給し、
これにより、前記周波数選択回路(8)は、周波数生成回路(10)の出力点での2つの周波数fとfのいずれかを選択し、選択された前記周波数fまたはfの信号が、サウンド・ジェネレータ(12)に入力される
ことを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項8】
前記サウンド・ジェネレータ(12)は、ピエゾ電子トランデューサを含む
ことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記携帯用機器は、ダイバーズ・ウオッチである
ことを特徴とする請求項1記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−541068(P2008−541068A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510445(P2008−510445)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/003948
【国際公開番号】WO2006/122641
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(505072926)イーティーエー エスエー マニュファクチュア ホルロゲア スイス (61)
【Fターム(参考)】