説明

サクションロール

【課題】部品点数が少なく構造が簡単であり、製作費が安価となるサクションロールを提供する。
【解決手段】内部に減圧室21を形成すると共に円筒壁の一部に内外を連通する開口22を備える内筒20と、内筒20の一端部に取り付けられ減圧室21と機外とを連通する中空固定軸31と、内筒20の他端部を閉塞して設けられる閉塞固定軸32と、両固定軸31、32に軸受41、42を介して取り付けられ円筒壁の一部に内外をガスが流通可能なガス吸引部55が形成される外筒50とを備え、内筒20の円筒外表面と外筒50の円筒内表面とが密接して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輪転機及び塗工機における連続紙(成膜塗布紙)の供給等に使用され、搬送物を吸着搬送するサクションロールに関し、特に、簡単な構造で安価に製造することができるサクションロールに関する。
【背景技術】
【0002】
輪転機において、搬送物に駆動力を伝える方法としては、フィードロール(メッキ金ロール)にニップロール(ゴムロール)を押え付けて、両ロールの間に搬送物を挟む方法が一般的であった。最近では、品質の向上や生産性のスピードアップが強く求められている。そして、クリーン環境の要求から塗布面への接触を嫌い、吸引により駆動力を伝えるサクションロールに移行しつつある。
【0003】
従来から、サクションロールとして多くの形式のものが使用されている。中でも、固定した内筒と回転する外筒とを組み合わせた形式のものは、非常に多くの分野で使用されている。例えば、特許文献1には、フィルム用サクションロールの代表的な一例が記載されている。
【0004】
図3及び図4に示すように、特許文献1に記載されたサクションロール110は、円筒状をなして内部に減圧室121を形成すると共に、円筒壁の一部に内外を連通する開口122を備える内筒120を備えている。内筒120の一端部には、中空状をなして減圧室121と機外とを連通する中空固定軸131が取り付けられている。また、内筒120の他端部には、他端部を閉塞すると共に中空固定軸131と同一軸線上に形成される閉塞固定軸132が取り付けられている。
【0005】
そして、内筒120を包み込むような状態で、外筒150が設けられている。外筒150は円筒状をなすと共に、両端のサイドフランジ151、152が軸受141、142を介して両固定軸131、132に回転可能に取り付けられている。また、円筒壁の一部に、内外をガスが流通可能なガス吸引部155が形成されている。
【0006】
外筒150は、中空固定軸131の側に中空回転軸153を、閉塞固定軸132の側に駆動軸154を備えている。中空回転軸153及び駆動軸154は、軸受を介して固定枠などに取り付けることができる。
【0007】
外筒150と内筒120との間に形成される空間は、内筒120の円筒外表面に設けられる仕切り部材123によって、吸引領域161と非吸引領域162とに2分されている。そして、仕切り部材123の外表面は、外筒150の内表面と密接するように形成されている。
【0008】
吸引領域161は、内筒120の表面に開口122を備えている領域であり、外筒150のガス吸引部155を通じて空気を吸引することができる。非吸引領域162は、内筒120の表面に開口122を備えておらず、ガス吸引部155を通じて空気を吸引することができない。図2において、吸引領域161に対応する角度が、搬送物Fを吸着する吸引角θとなる。
【0009】
このサクションロール110を使用するときは、中空回転軸153及び駆動軸154を固定枠等に回転可能に取り付け、別途に設けた駆動源により駆動軸154を回転する。同時に、中空固定軸131を真空ポンプ等の減圧源に接続し、減圧室121内を減圧状態とする。これによって、搬送物Fを外筒150に巻き付かせて、吸着搬送することができる。
【0010】
しかしながら、このサクションロール110は、部品点数が多く構造が複雑であるために、制作費が高価となる欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−189454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、部品点数が少なく構造が簡単であり、製作費が安価となるサクションロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係るサクションロールは、円筒状をなして内部に減圧室を形成すると共に円筒壁の一部に内外を連通する開口を備える内筒と、前記内筒の一端部に取り付けられると共に中空状をなして前記減圧室と機外とを連通する中空固定軸と、前記内筒の他端部を閉塞して設けられると共に前記中空固定軸と同一軸線上に形成される閉塞固定軸と、円筒状をなして前記両固定軸に軸受を介して回転可能に取り付けられると共に円筒壁の一部に内外をガスが流通可能なガス吸引部が形成される外筒とを備え、前記内筒の円筒外表面と前記外筒の円筒内表面とが密接して形成されているという手段を採用している。
【0014】
また、本発明の請求項2に係るサクションロールは、請求項1に記載のサクションロールであって、前記外筒が、前記閉塞固定軸の側に駆動軸を備えている手段を採用している。また、本発明の請求項3に係るサクションロールは、請求項1又は2に記載のサクションロールであって、前記ガス吸引部が、円筒壁に多数の孔を穿設して形成されている手段を採用している。さらに、本発明の請求項4に係るサクションロールは、請求項1乃至3の何れかに記載のサクションロールであって、前記内筒の円筒外表面と前記外筒の円筒内表面との間の隙間が、0.3mm以下に形成されている手段を採用している。
【発明の効果】
【0015】
本発明のサクションロールは、部品点数が少ないために材料費が安価であり、また、構造が簡単であるために製作費を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のサクションロールの一例を示す概略全体断面図である。
【図2】図1のA−A矢視の概略断面図である。
【図3】従来のサクションロールの一例を示す概略全体断面図である。
【図4】図3のX−X矢視の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を図に示す実施例により説明するが、これらの図は本発明を何ら限定するものではない。図1は、本発明のサクションロール10の概略断面図であり、図2は、図1におけるA−A矢視の概略断面図である。
【0018】
本発明のサクションロール10は、前述のサクションロール110と同様に、内筒20及び外筒50を備えている。
【0019】
内筒20は、円筒状をなして内部に減圧室21形成すると共に、円筒壁の一部に内外を連通する開口22を備えている。内筒20の一端部には、減圧室21と機外とを連通する中空固定軸31が取り付けられている。また、内筒20の他端部には、他端部を閉塞すると共に中空固定軸と同一軸線上に形成される閉塞固定軸32が取り付けられている。
【0020】
そして、内筒20を包み込むような状態で、外筒50が設けられている。外筒50は、円筒状をなすと共に、両端のサイドフランジ51、52が軸受41、42を介して両固定軸31、32に回転可能に取り付けられている。また、円筒壁の一部に、内外をガスが流通可能なガス吸引部55が形成されている。
【0021】
ガス吸引部55は、円筒壁に多数の孔56を穿設して形成することができる。搬送物に対する吸引力を一様にするためには、直径が1〜5mm程度の多数の孔56を穿設した外筒50の外周面に、さらに、通気構造のニッケルメッシュスリーブ等で被覆することが好ましい。
【0022】
ガス吸引部55は、図に示すように軸線方向に所定の長さにわたって外筒50の全周に形成される。そして、多数の孔56は、ガス吸引部55内の全範囲にわたって均等に形成される。このガス吸引部55の長さが、搬送物に対する吸着幅wとなる。
【0023】
外筒50は、閉塞固定軸32の側に駆動軸54を備え、プーリー43等を取り付けて駆動することができる。中空固定軸の側には、ベアリング押え53が設けられている。構造が少し複雑になるが、中空固定軸31の側に駆動軸54を設けることも可能である。
【0024】
本発明の特徴は、内筒20の外表面と外筒50の内表面とが密接して形成されていることである。このため、減圧室21内に空気が流入するのは、ガス吸引部55内であって、内筒20の開口22が設けられている範囲に限定される。外筒50の孔56は、全周にわたって形成されているが、内筒20の開口22に対応しない部分は減圧の影響を受け難いので、空気は殆ど流入しない。
【0025】
内筒20の円筒外表面及び外筒50の円筒内表面は、機械加工により簡単に、かつ精密に仕上げることができる。そして、内筒20の円筒外表面と外筒50の円筒内表面との間の隙間は、1.0mm以下に形成することが好ましく、0.3mm以下に形成することがより好ましい。
【0026】
また、内筒20は、図に示すように、開口22が設けられている範囲の外表面を薄く削って、段差27を設けることにより、吸着範囲を一層明確に限定することができる。すなわち、段差27を形成した部分が、吸着幅w及び吸着角θを決めることになる。
【0027】
このサクションロール10を使用するときは、中空固定軸31及び駆動軸54を固定枠等に回転可能に取り付け、別途に設けた駆動源により駆動軸54を回転する。同時に、中空固定軸31を真空ポンプ等の減圧源に接続し、減圧室21内を減圧状態とする。これによって、搬送物Fを外筒50に巻き付かせて、吸着搬送することができる。
【0028】
以上のように、本発明のサクションロール10は、部品点数が少ないために材料費が安価であり、構造が簡単であるために製作費を低減することができる。
【符号の説明】
【0029】
10、110 サクションロール
20、120 内筒
21、121 減圧室
22、122 開口
27 段差
31、131 中空固定軸
32、132 閉塞固定軸
41、42、141、142 軸受
43 プーリー
50、150 外筒
51、52、151、152 サイドフランジ
53 ベアリング押え
54、154 駆動軸
55、155 ガス吸引部
56 孔
123 仕切部材
153 中空回転軸
161 吸引領域
162 非吸引領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状をなして内部に減圧室を形成すると共に円筒壁の一部に内外を連通する開口を備える内筒と、
前記内筒の一端部に取り付けられると共に中空状をなして前記減圧室と機外とを連通する中空固定軸と、
前記内筒の他端部を閉塞して設けられると共に前記中空固定軸と同一軸線上に形成される閉塞固定軸と、
円筒状をなして前記両固定軸に軸受を介して回転可能に取り付けられると共に円筒壁の一部に内外をガスが流通可能なガス吸引部が形成される外筒とを備え、
前記内筒の円筒外表面と前記外筒の円筒内表面とが密接して形成されていることを特徴とするサクションロール。
【請求項2】
前記外筒が、前記閉塞固定軸の側に駆動軸を備えていることを特徴とする請求項1に記載のサクションロール。
【請求項3】
前記ガス吸引部が、円筒壁に多数の孔を穿設して形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のサクションロール。
【請求項4】
前記内筒の円筒外表面と前記外筒の円筒内表面との間の隙間が、0.3mm以下に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のサクションロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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