サシミ用まな板
【課題】柵を斜めに切っていく場合に、職人などの熟練者でなくても、刺身用の柵をほぼ同じ大きさ(面積)や重さに綺麗に、且つ簡単に切れるようにしたサシミ用まな板を提供する。
【解決手段】まな板20の上面に突条部21を一体的に形成し、この突条部21に包丁の刃先を入れる角度設定用スリット22を、該突条部21の横方向に刺身1切れ分の厚みに対応させた間隔で多数形成する。各角度設定用スリット22は、垂直面に対して傾斜角度αでもって傾斜させていると共に、水平面上では傾斜角度βでもって傾斜させている。包丁の刃先を角度設定用スリット22に入れると、柵を切っていく際の包丁の刃の垂直面上及び水平面上における傾きを自動的に設定することができる。
【解決手段】まな板20の上面に突条部21を一体的に形成し、この突条部21に包丁の刃先を入れる角度設定用スリット22を、該突条部21の横方向に刺身1切れ分の厚みに対応させた間隔で多数形成する。各角度設定用スリット22は、垂直面に対して傾斜角度αでもって傾斜させていると共に、水平面上では傾斜角度βでもって傾斜させている。包丁の刃先を角度設定用スリット22に入れると、柵を切っていく際の包丁の刃の垂直面上及び水平面上における傾きを自動的に設定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚を捌いてサシミを造る場合のサシミ用まな板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鮮魚取り扱い業において、通常は鮮魚小売店の場合、その店の主人や職人が包丁の扱いができ、尚且つ各種の鮮魚の捌き方に精通していることが必須である。一方、食品スーパーでは、鮮魚責任者がある程度魚を扱えることでパート従業員を指導しているが、多くの場合、鮮魚の取り扱いに興味を持つ次の世代が不足しており、鮮魚の捌き方という技術の伝承がなされていないのが現状である。
【0003】
ましてや最近では、スーパーに納められる刺身用鮮魚などは柵の状態までしたものを利用しているのが一般的で、担当者に至っては生きた魚の〆方や捌き方も知らないし、刺身の造り方も出来ないのが当たり前になっている。
【0004】
図25は例えば、マグロの柵52をまな板51の上に載せて包丁1にて刺身を造る場合を示しており、この柵52は、略長方体形状に予め切ってあるものであり、そのため、図26のライン53に示す位置付近に包丁1を入れて所定の間隔毎に単純に切っていくだけで、ある程度厚みを一定にした刺身を造ることができる。また、この柵52は略長方体形状のため、切った刺身の面積もほぼ同じ大きさとすることができ、そのため、鮮魚店、スーパー等のパート従業員や、また、一般家庭の主婦でも、同じ大きさで、同じ厚みの刺身を簡単に造ることができる。
【0005】
しかしながら、図25に示すような、大きな魚から取った柵52は略長方体形状であるから、上述のように簡単に刺身を造ることができるものの、刺身用の柵は長方体形状とは限らない。小さな魚や、魚の種類によってはほとんど長方体形状ではないものの方が多く、図27に示すような魚の柵54は、胴部から尻尾にかけて幅が狭くなっており、また、厚みも尻尾に至るほど薄くなっている。
【0006】
この図27に示すような柵54を、図28に示すように、長方形体状の柵52の場合と同様な切り口で切っていくと、厚みをほぼ同じにできても、図29に示すように、大きさが胴部の頭部に近い刺身片55aや、胴部の真ん中の刺身片55bや、尻尾に近い刺身片55cでは、1切れの大きさ(面積)や重さが異なってしまう。
一般の家庭では、図29に示すような大きさが異なる刺身片でも良いものの、鮮魚店やスーパーでは販売をすることができない。また、飲食店でも同様である。もちろん、家庭においても、お皿に大きさが異なる刺身片を盛った場合、見た目も悪くなって食欲もそそらず、家族から不満が出ることにもなる。
【0007】
図27に示すような柵54の箇所によって幅寸法、厚み寸法が異なる場合でも該柵54を大きさや重さがほぼ同じようになるように切っていくが、これには、この技を持った職人が捌く必要がある。この捌き方(柵54の切り方)は、そう簡単にできるものではなく、何年も修行した結果できるものであると言われている。
このような職人芸を持った人を何人も雇うのは、大手のスーパーや飲食店では可能ではあるものの、比較的小さな食品スーパーや飲食店、鮮魚店では不可能であり、せいぜい一人の職人を雇うのが精一杯である。
【0008】
また、図25及び図26に示すように、長方形状の柵52を単に一直線状に切る場合は、綺麗に柵52を切ることができるものの、包丁を斜めに傾斜させて柵52を切っていき、一片の、刺身片の大きさ(面積)を大きくする場合、常に包丁を一定の角度に傾斜させて切っていくのは、非常に難しい。
【0009】
そこで、柵を斜めに切ることができるまな板として、例えば、下記に示す特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−333852号公報
【0011】
上記特許文献1に記載のまな板は、中央部に溝のある角型の台座と、側面が適当な傾斜角度を持つ斜面を有する安定定規と、端部にローラを回動自在に設けた角型の調材台とで構成されている。
【0012】
この特許文献1では、安定定規の斜面に包丁を置いて柵を切ることで、柵を斜めに切ることができるとしている。しかしながら、柵を切っていく場合、柵を載せた調材台をローラにて移動させる構造のため、調材台を少し移動させては手で柵を押さえながら切っていく必要がある。そのため、調材台を一定の距離を手動で移動させるのが煩わしく、柵を手早く切っていくことができず、作業性が悪いという問題がある。また、一定の距離だけ調材台を移動させていくのは、容易ではなく、切った後の各刺身片の厚みも不揃いとなる。
【0013】
また、特許文献1のまな板は、台座、安定定規及び調材台の3つの構成部材からなり、柵を切る場合には、台座に調材台と安定定規を組み合わせる必要があり、手前に柵が隠れるような大きな安定定規が位置し、この安定定規が邪魔になって魚の捌き作業がやりにくいという問題もある。
【0014】
ところで、後述する本発明の突条部とは機能が異なるものの、まな板の一面に突条部を設けたまな板として、例えば、下記に示す特許文献2、3がある。
【0015】
【特許文献2】特開平8−56861号公報
【特許文献3】特開平9−220168号公報
【0016】
上記特許文献2では、まな板の裏面に互いに平行で高さが2〜5mm程度の3本の突条部を互いに適当間隔をおいて設け、二つの突条部間にキュウリや大根を位置させ、その状態で包丁により切ることにより、キュウリを蛇腹切りしたり、大根を繋がった状態で切る作業を熟練者でなくとも簡単に行なうようにしたものである。
【0017】
また、特許文献3では、まな板に対して摺動・回転可能に突条の部材を設け、この突条の部材をまな板の表面より突出させ、この突条の部材に包丁の刃が当たることで、食材を完全に切り離さず、食材を輪切りにできるようにしたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
このように、上記特許文献1では、柵の斜め切りが簡単に行なうことができず、また、尻尾側に至るほど、幅が狭く、厚みが薄くなる柵の場合では、ほぼ同じ大きさの刺身片を造ることができない。
また、上記特許文献2、3では、突条部分を利用してキュウリなどの食材を一部が繋がった状態で切るようにしたものであり、魚の柵を斜めに切っていくという思想は無い。
【0019】
本発明は上述の問題点に鑑みて提供したものであって、柵を斜めに切っていく場合に、職人などの熟練者でなくても、刺身用の柵をほぼ同じ大きさ(面積)や重さに綺麗に、且つ簡単に切れるようにしたサシミ用まな板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
そこで、本発明の請求項1に記載のサシミ用まな板では、刺身の下ごしらえ用の柵17を載せて該柵17を包丁1で切って刺身を造るまな板20であって、
前記まな板20の上面に該まな板20の横方向の全長にわたって突条部21を一体的に形成し、
前記突条部21に前記包丁1の刃先を入れる角度設定用スリット22を、該突条部21の横方向に刺身1切れ分の厚みに対応させた間隔で多数形成し、
前記角度設定用スリット22の上下方向の線を垂直面上での垂直基線24とし、
前記角度設定用スリット22の前後方向の線を水平面上での水平基線25とし、
前記各角度設定用スリット22の垂直面上の傾きを、前記まな板20を正面から見て前記垂直基線24に対して時計回転方向または反時計回転方向に傾けた傾斜角度αにそれぞれ設定し、
前記各角度設定用スリット22の水平面上の傾きを、前記まな板20を上面から見て前記水平基線25に対して時計回転方向または反時計回転方向に傾けた傾斜角度βにそれぞれ設定していることを特徴としている。
【0021】
請求項2に記載のサシミ用まな板では、前記角度設定用スリット22の水平面上での前記傾斜角度βと同じ傾斜角度を持ち、前記包丁1の刃先をガイドするガイド溝27を各角度設定用スリット22に対応して前記まな板20の上面にそれぞれ凹設していることを特徴としている。
【0022】
請求項3に記載のサシミ用まな板では、前記柵17から出る魚肉汁であるドリップを前記まな板20の裏面に滴下させる穴29を該まな板20に多数穿孔していることを特徴としている。
【0023】
請求項4に記載のサシミ用まな板では、前記角度設定用スリット22の水平面上での前記傾斜角度βと同じ傾斜角度を持ち、前記包丁1の刃先をガイドするガイド溝27を各角度設定用スリット22に対応して前記まな板20の上面にそれぞれ凹設し、
前記柵17から出る魚肉汁であるドリップを前記まな板20の裏面に滴下させる穴29を該まな板20に多数穿孔していることを特徴としている。
【0024】
請求項5に記載のサシミ用まな板では、魚の胴部から尻尾側17bにかけて幅が狭くなり、厚みも薄くなる刺身の下ごしらえ用の柵17を載せて該柵17を包丁1で切って刺身を造るまな板20であって、
前記まな板20の上面に該まな板20の横方向の全長にわたって突条部21を一体的に形成し、
前記突条部21に前記包丁1の刃先を入れる角度設定用スリット22を、該突条部21の横方向に刺身1切れ分の厚みに対応させた間隔で多数形成し、
前記角度設定用スリット22の上下方向の線を垂直面上での垂直基線24とし、
前記角度設定用スリット22の前後方向の線を水平面上での水平基線25とし、
前記角度設定用スリット22の垂直面上の傾きは、右側に頭部側17aとなるように前記柵17を前記まな板20の上面に載せた場合に、前記垂直基線24に対する傾斜角度αを、前記柵17の尻尾側17bに至るほど頭部側17aに傾くように順次大きくなるように形成し、
前記角度設定用スリット22の水平面上の傾きは、右側に頭部側17aとなるように前記柵17を前記まな板20の上面に載せた場合に、前記水平基線25に対する傾斜角度βを、柵17の尻尾側17bに至るほど頭部側17aに傾くように順次大きくなるように形成していることを特徴としている。
【0025】
請求項6に記載のサシミ用まな板では、前記角度設定用スリット22の水平面上での前記傾斜角度βと同じ傾斜角度を持ち、前記包丁1の刃先をガイドするガイド溝27を各角度設定用スリット22に対応して前記まな板20の上面にそれぞれ凹設していることを特徴としている。
【0026】
請求項7に記載のサシミ用まな板では、前記柵17から出る魚肉汁であるドリップを前記まな板20の裏面に滴下させる穴29を該まな板20に多数穿孔していることを特徴としている。
【0027】
請求項8に記載のサシミ用まな板では、前記角度設定用スリット22の水平面上での前記傾斜角度βと同じ傾斜角度を持ち、前記包丁1の刃先をガイドするガイド溝27を各角度設定用スリット22に対応して前記まな板20の上面にそれぞれ凹設し、
前記柵17から出る魚肉汁であるドリップを前記まな板20の裏面に滴下させる穴29を該まな板20に多数穿孔していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0028】
本発明の請求項1に記載のサシミ用まな板によれば、各角度設定用スリット22の垂直面上の傾きを、まな板20を正面から見て垂直基線24に対して時計回転方向または反時計回転方向に傾けた傾斜角度αにそれぞれ設定し、各角度設定用スリット22の水平面上の傾きを、まな板20を上面から見て水平基線25に対して時計回転方向または反時計回転方向に傾けた傾斜角度βにそれぞれ設定しているので、まな板20の突条部21の角度設定用スリット22に包丁1の刃先を挿入するだけで、柵17を切っていく際の刃2の垂直面上及び水平面上における傾斜角度が自動的に設定される。そのため、角度設定用スリット22の刃先を入れた状態から包丁1を手前に引いて柵17を切っていくだけで、柵17を垂直面上及び水平面上で傾斜角度を持たせた斜め切りした刺身片を一定の厚みでもって切ることができる。
これにより、鮮魚を捌く職人などの熟練者でなくても、まな板20に形成した突条部21の各角度設定用スリット22に包丁1の刃先を入れて、そのまま包丁1を手前に引くことで、ほぼ同じ大きさや重さの刺身片を綺麗に造ることができる。しかも、一方の端の角度設定用スリット22から他方の端の角度設定用スリット22へ順次包丁1の刃先を入れて単に切っていくだけで同じ大きさの刺身片を切ることができ、そのため、短時間で刺身を造ることができ、作業性を向上させることができる。
【0029】
請求項2に記載のサシミ用まな板によれば、角度設定用スリット22の水平面上での傾斜角度βと同じ傾斜角度を持ち、包丁1の刃先をガイドするガイド溝27を各角度設定用スリット22に対応してまな板20の上面にそれぞれ凹設しているので、柵17を切っていく際に包丁1の刃先が角度設定用スリット22から離れても、刃先がそのままガイド溝27に沿って柵17を切ることができる。そのため、刃2がまな板20の横方向に振れることがないので、各刺身片の厚みにバラツキが生じず、一定の厚みの刺身片を綺麗に、且つ簡単で短時間に造ることができる。
【0030】
請求項3に記載のサシミ用まな板によれば、柵17から出る魚肉汁であるドリップをまな板20の裏面に滴下させる穴29を該まな板20に多数穿孔しているので、柵17から出ているドリップは、穴29を介してまな板20の裏面に滴下され、柵17を捌いている際に柵17の下面がドリップに浸かるということを可能な限り防ぐことができ、柵17のうま味を保持することができる。
【0031】
請求項4に記載のサシミ用まな板によれば、角度設定用スリット22の水平面上での傾斜角度βと同じ傾斜角度を持ち、包丁1の刃先をガイドするガイド溝27を各角度設定用スリット22に対応してまな板20の上面にそれぞれ凹設しているので、柵17を切っていく際に包丁1の刃先が角度設定用スリット22から離れても、刃先がそのままガイド溝27に沿って柵17を切ることができる。そのため、刃2がまな板20の横方向に振れることがないので、各刺身片の厚みにバラツキが生じず、一定の厚みの刺身片を綺麗に、且つ簡単で短時間に造ることができる。
また、柵17から出る魚肉汁であるドリップをまな板20の裏面に滴下させる穴29を該まな板20に多数穿孔しているので、柵17から出ているドリップは、穴29を介してまな板20の裏面に滴下され、柵17を捌いている際に柵17の下面がドリップに浸かるということを可能な限り防ぐことができ、柵17のうま味を保持することができる。
【0032】
請求項5に記載のサシミ用まな板によれば、角度設定用スリット22の垂直面上の傾きは、右側に頭部側17aとなるように柵17をまな板20の上面に載せた場合に、垂直基線24に対する傾斜角度αを、柵17の尻尾側17bに至るほど頭部側17aに傾くように順次大きくなるように形成し、角度設定用スリット22の水平面上の傾きは、右側に頭部側17aとなるように柵17をまな板20の上面に載せた場合に、水平基線25に対する傾斜角度βを、柵17の尻尾側17bに至るほど頭部側17aに傾くように順次大きくなるように形成しているので、鮮魚を捌く職人などの熟練者でない人でも、まな板20に形成した突条部21の各角度設定用スリット22に包丁1の刃先を入れて、単にそのまま柵17を切っていくことで、垂直面上及び水平面上での刃2の振り角度を容易に変えていくことができ、尻尾側17b側に至るほど柵17の幅が狭く、厚みも薄くなる柵17の場合でも、刺身片をほぼ同じ大きさや重さに簡単に綺麗な刺身を造ることができる。しかも、一方の端の角度設定用スリット22から他方の端の角度設定用スリット22へ順次包丁1の刃先を入れて単に切っていくだけで同じ大きさの刺身片を切ることができ、そのため、短時間で刺身を造ることができ、作業性を向上させることができる。
【0033】
請求項6に記載のサシミ用まな板によれば、角度設定用スリット22の水平面上での傾斜角度βと同じ傾斜角度を持ち、包丁1の刃先をガイドするガイド溝27を各角度設定用スリット22に対応して前記まな板20の上面にそれぞれ凹設しているので、柵17を切っていく際に包丁1の刃先が角度設定用スリット22から離れても、刃先がそのままガイド溝27に沿って柵17を切ることができる。そのため、刃2がまな板20の横方向に振れることがないので、各刺身片の厚みにバラツキが生じず、一定の厚みの刺身片を綺麗に、且つ簡単で短時間に造ることができる。
【0034】
請求項7に記載のサシミ用まな板によれば、柵17から出る魚肉汁であるドリップをまな板20の裏面に滴下させる穴29を該まな板20に多数穿孔しているので、柵17から出ているドリップは、穴29を介してまな板20の裏面に滴下され、柵17を捌いている際に柵17の下面がドリップに浸かるということを可能な限り防ぐことができ、柵17のうま味を保持することができる。
【0035】
請求項8に記載のサシミ用まな板によれば、角度設定用スリット22の水平面上での傾斜角度βと同じ傾斜角度を持ち、包丁1の刃先をガイドするガイド溝27を各角度設定用スリット22に対応してまな板20の上面にそれぞれ凹設しているので、柵17を切っていく際に包丁1の刃先が角度設定用スリット22から離れても、刃先がそのままガイド溝27に沿って柵17を切ることができる。そのため、刃2がまな板20の横方向に振れることがないので、各刺身片の厚みにバラツキが生じず、一定の厚みの刺身片を綺麗に、且つ簡単で短時間に造ることができる。
また、柵17から出る魚肉汁であるドリップをまな板20の裏面に滴下させる穴29を該まな板20に多数穿孔しているので、柵17から出ているドリップは、穴29を介してまな板20の裏面に滴下され、柵17を捌いている際に柵17の下面がドリップに浸かるということを可能な限り防ぐことができ、柵17のうま味を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の3枚おろしをする場合の魚の平面図である。
【図2】A、Bは本発明の3枚おろしをする場合の胴部の片側の正面図及び断面図である。
【図3】A、Bは本発明の3枚おろしをする場合で胴部の片側を切った場合の正面図及び断面図である。
【図4】本発明のまな板の斜視図である。
【図5】A、Bは本発明のまな板の平面図及び側面図である。
【図6】A、Bは本発明のまな板の正面図及び背面図である。
【図7】本発明の角度設定用スリットの垂直面上及び水平面上における傾斜角度の説明図である。
【図8】本発明のまな板の説明図である。
【図9】本発明の柵を切る場合の説明図である。
【図10】本発明の柵を切る場合の説明図である。
【図11】本発明の柵を切る場合の説明図である
【図12】本発明のガイド溝を形成したまな板の斜視図である。
【図13】本発明のガイド溝を形成したまな板の平面図である。
【図14】本発明のまな板の要部拡大断面図である。
【図15】本発明のガイド溝及びドリップ滴下用の穴を形成したまな板の斜視図である。
【図16】本発明のガイド溝及びドリップ滴下用の穴を形成したまな板の平面図である。
【図17】本発明のまな板の斜視図である。
【図18】本発明のまな板の平面図である。
【図19】本発明のまな板の正面図である。
【図20】本発明の柵を切る場合の説明図である。
【図21】本発明の角度設定用スリットの垂直面上及び水平面上における傾斜角度の説明図である。
【図22】本発明のガイド溝を形成したまな板の平面図である。
【図23】本発明のガイド溝及びドリップ滴下用の穴を形成したまな板の平面図である。
【図24】A〜Dは本発明の他の突条部の例を示す図である。
【図25】従来例の刺身を造る場合の図である。
【図26】従来例の刺身を造る場合の説明図である。
【図27】A、Bは従来例の刺身を造る場合の説明図である。
【図28】従来例の刺身を造る場合の説明図である。
【図29】A、B、Cは従来例の刺身を切った後の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1〜図3は、魚10の3枚おろしをした場合の図を示し、頭部11を切断し、胴部12内の内臓を取り出す。図2に示す背骨13より上側が背身14であり、背骨13より下側が腹身15である。図3は胴部12の片側を長手方向に沿って背身14と腹身15に切ったものであり、図2に示す胴部12の片側部分や、図3に示す背身14部分や腹身15部分を、便宜上、刺身の下ごしらえの柵17と称する。
【0038】
図4は本発明のサシミ用のまな板20の斜視図を示し、図5Aはまな板20の平面図を、図5Bはまな板20の側面図をそれぞれ示している。また、図6Aはまな板20の正面図を、図6Bはまな板20の背面図をそれぞれ示している。
まな板20の後部側には、断面を略三角形状とした突条部21が該まな板20の横方向に全長にわたって一体に形成されている。
【0039】
まな板20の突条部21には、柵17を切っていく際に包丁の刃の水平面上及び垂直面上での傾斜角度を設定するための角度設定用スリット22が多数連続して形成されている。この角度設定用スリット22は、前面、背面及び上面が開口し、前面から見て略V字型となっている。また、角度設定用スリット22の間隔は、1切れの刺身片の厚みとなっている。
【0040】
この角度設定用スリット22に包丁の刃先を挿入すると、刃は垂直面上で、ある角度に傾斜するように位置決めされると共に、同時に水平面上でも、ある角度に傾斜するように位置決めされる。
図7は、包丁1の刃2の垂直面での傾斜角度と、水平面での傾斜角度が角度設定用スリット22によって決められる状態を図示したものであり、図7Aは、包丁1の刃2の垂直面における傾きを決める角度設定用スリット22の垂直面の傾きを示している。図7Bは刃2の水平面における傾きを決める角度設定用スリット22の水平面の傾きを示している。
【0041】
ここで、図7Aにおいて、刃2を降ろす上下方向の線を垂直基線24とし、図7Bにおいて、水平面での前後方向の線を水平基線25とする。図7Aに示すように、上記垂直基線24に対してαの角度で刃2が傾斜するように垂直面上で角度設定用スリット22が設定されている。同時に図7Bに示すように、上記水平基線25に対してβの角度で刃2が傾斜するように水平面上で角度設定用スリット22が設定されている。
すなわち、包丁1の刃先を角度設定用スリット22に挿入すると、角度α及びβでもって刃2の垂直面上及び水平面上における傾斜角度が自動的に設定されることになる。
【0042】
なお、この実施形態では、突条部21に形成した全ての角度設定用スリット22の傾斜角度αはそれぞれ同じ角度とし、また、各角度設定用スリット22の傾斜角度βもそれぞれ同じ角度としている。この傾斜角度α及びβは、任意の角度に適宜設定されるものであり、例えば、傾斜角度αは、まな板20を正面から見て垂直基線24に対して時計回転方向へ30度から60度の範囲内で設定している。
また、傾斜角度βは、まな板20を上面から見て時計回転方向へ20度から45度の範囲内で設定している。そして、この傾斜角度α及びβを30度より大きく設定することで、直方体状の柵17から、刺身片の1片の大きさを断面積より一層大きくすることができる。
【0043】
なお、本実施形態では、傾斜角度αを約45度、傾斜角度βを約30度としている。この傾斜角度α、βの数値は、職人が柵17を捌く際の一般的な角度に対応させた数値である。
【0044】
また、角度設定用スリット22を突条部21の左側から形成する場合では、上記傾斜角度αは、垂直基線24から反時計回転方向へ傾けた角度となり、傾斜角度βも同様に水平基線25から反時計回転方向へ傾けた角度となる。
【0045】
このように、包丁1の刃先を突条部21の角度設定用スリット22に挿入することで、柵17を切っていく際の刃2の垂直面上及び水平面上の傾斜角度が同時に設定され、そのため、図8に示すように、刃2の垂直面上及び水平面上の傾斜角度が位置決めされた包丁1をそのまま手間に引くことで、矢印に示すように、柵17を綺麗に切ることができる。
【0046】
図9〜図11はまな板20の上面に柵17を置いて包丁1にて柵17を切っていく場合を示している。柵17をまな板20の上に置いた状態で図9に示すように包丁1の刃先を角度設定用スリット22に挿入することで、上述したように刃2の垂直面上及び水平面上の傾斜角度が同時に設定される。
そして、その傾斜角度が位置決めされている状態で、包丁1を手前に引いて柵17を切る。切った後は隣(例えば左)の角度設定用スリット22に再び包丁1の刃先を挿入して刃2の傾斜角度を決め、そのまま上記と同様に包丁1を手前に引いて柵17を切っていく。
【0047】
なお、図11に示す柵17の両側の部分は、中央部分の大きさと同じ大きさの刺身片を取ることができないので、柵17の両側は刺身片として使わずに、他の料理、例えばちらし寿司などの具として利用される。
また、本実施形態では、突条部21には10の角度設定用スリット22を形成している場合を示しているが、角度設定用スリット22の数は限定されるものではなく、まな板20の横方向の長さに応じて多数形成される。
【0048】
このように、本実施形態では、まな板20の突条部21の角度設定用スリット22に包丁1の刃先を挿入するだけで、柵17を切っていく際の刃2の垂直面上及び水平面上における傾斜角度が自動的に設定される。そのため、角度設定用スリット22の刃先を入れた状態から包丁1を手前に引いて柵17を切っていくだけで、柵17を垂直面上及び水平面上で傾斜角度を持たせた斜め切りした刺身片を一定の厚みでもって切ることができる。
これにより、鮮魚を捌く職人などの熟練者でなくても、まな板20に形成した突条部21の各角度設定用スリット22に包丁1の刃先を入れて、そのまま包丁1を手前に引くことで、ほぼ同じ大きさや重さの刺身片を綺麗に造ることができる。しかも、一方の端の角度設定用スリット22から他方の端の角度設定用スリット22へ順次包丁1の刃先を入れて単に切っていくだけで同じ大きさの刺身片を切ることができ、そのため、短時間で刺身を造ることができ、作業性を向上させることができる。
【0049】
図12は、図4に示すまな板20に対して柵17を切っていく際の包丁1の刃先をガイドするガイド溝27を凹設したまな板20の斜視図を示し、図13は該まな板20の平面図を示している。また、図14はまな板20の要部拡大断面図を示している。
ガイド溝27は、各角度設定用スリット22の下端より連続して設けられており、図14に示すように、底面は閉塞されている。また、ガイド溝27の傾斜角度は、図7Bに示す角度設定用スリット22の傾斜角度βと同一である。
【0050】
このように、まな板20の上面に各角度設定用スリット22に対応したガイド溝27を設けていることで、柵17を切っていく際に包丁1の刃先が角度設定用スリット22から離れても、刃先がそのままガイド溝27に沿って柵17を切ることができる。そのため、刃2がまな板20の横方向に振れることがないので、各刺身片の厚みにバラツキが生じず、一定の厚みの刺身片を綺麗に、且つ簡単で短時間に造ることができる。
【0051】
なお、突条部21に形成している各角度設定用スリット22の底面は、まな板の上面と面一となっているが、角度設定用スリット22の底面を、ガイド溝27の底面と面一となるように形成するようにしても良い。かかる場合、角度設定用スリット22の底部とガイド溝27の底部とが連通し、包丁1の刃先を角度設定用スリット22の底部からガイド溝27へと一層スムーズに移行でき、柵を綺麗に切ることができる。
【0052】
ところで、魚を3枚おろしした背身や腹身などの柵からは、ある程度の時間や日が経つと赤色状のドリップ(魚肉汁)が出てくる。ドリップに浸かっていた柵や、ドリップが出ている状態で柵を調理する場合は、該ドリップにより柵のうま味が無くなり、魚自体、あるいは刺身がまずくなってしまう。
【0053】
そこで、ドリップ滴下用の穴29を設けたまな板20の例を図15及び図16に示す。図15は、図12に示すまな板20に対して穴29を設けたまな板20の斜視図を示し、図16は穴29を設けたまな板20の平面図を示している。
ドリップ滴下用の穴29は、図15及び図16に示すように、直線状(ミシン目状)に多数穿孔したものであり、これを3条設けている。
【0054】
これら穴29を多数設けていることで、柵17から出ているドリップは、穴29を介してまな板20の裏面に滴下され、柵17を捌いている際に柵17の下面がドリップに浸かるということを可能な限り防ぐことができ、柵17のうま味を保持することができる。なお、穴29の形状は、図示例では長穴状としているが、長穴状に限らず、円形の穴でも良い。
【0055】
次に、柵17の形状が、尻尾側に至るほど幅が狭く、厚みも薄くなる柵17を捌くのに対応したまな板20について説明する。図17はかかるまな板20の斜視図を、図18は平面図を、図19は正面図をそれぞれ示している。また、図20はまな板20の上面に上記柵17を載せた状態を示している。
【0056】
本実施形態では、上記実施形態と同様にまな板20の上面に突条部21を形成し、この突条部21に上記と同様に角度設定用スリット22を連続して多数形成している。図示例では、突条部21の右側には図4に示すのと同じ傾斜角度α、βを持たせた角度設定用スリット22が10個連続して形成しており、右から11個目以降の角度設定用スリット22は、垂直面上及び水平面上における傾斜角度を徐々に傾斜させている。
【0057】
次に、左側の角度設定用スリット22に垂直面上及び水平面上における傾斜角度について説明する。図21は、包丁1の刃2の垂直面でも傾斜角度と、水平面での傾斜角度が角度設定用スリット22によって決められる状態を図示したものである。
図21Aは、包丁1の刃2の垂直面における傾きを決める角度設定用スリット22の垂直面の傾きを示し、図21Bは、刃2の水平面における傾きを決める角度設定用スリット22の水平面の傾きを示している。
【0058】
ここで、図20に示すように、図4に示すのと同じ傾斜角度を持たせた角度設定用スリットの番号を「22」とし、この角度設定用スリット22より左側の角度設定用スリット22の番号を便宜上「22B」とし、最も左側の角度設定用スリット22の番号を「22A」とする。
【0059】
図21Aに示すように、角度設定用スリット22における垂直基線24に対してα3(図7に示すαに相当)の角度でもって刃2が傾斜するように垂直面上で角度設定用スリット22が設定されている。同時に図21Bに示すように、水平基線25に対してβ3(図7に示すβに相当)の角度で刃2が傾斜するように水平面上で角度設定用スリット22が設定されている。この角度設定用スリット22における垂直面上及び水平面上での傾斜角度は図4に示す角度設定用スリット22の場合と同様である。
【0060】
次に、角度設定用スリット22Bにおいては、図21Aに示すように、垂直面における刃2の傾斜角度に対応した該角度設定用スリット22Bの垂直面での傾斜角度は、垂直基線24に対して上記傾斜角度α3より大きいα2の角度でもって傾斜させている。
同時に、図21Bに示すように、水平面における刃2の傾斜角度に対応した該角度設定用スリット22の水平面での傾斜角度を水平基線25に対して傾斜角度β3より大きいβ2の角度でもって傾斜させている。
【0061】
左端の角度設定用スリット22Aにおいては、図21Aに示すように、垂直面における刃2の傾斜角度に対応した該角度設定用スリット22Bの垂直面での傾斜角度は、垂直基線24に対して上記傾斜角度α2より大きいα1の角度でもって傾斜させている。
同時に、図21Bに示すように、水平面における刃2の傾斜角度に対応した該角度設定用スリット22の水平面での傾斜角度を水平基線25に対して傾斜角度β2より大きいβ1の角度でもって傾斜させている。
【0062】
なお、この角度設定用スリット22Bから左端の角度設定用スリット22Aに至る間の各角度設定用スリット22では、垂直面上及び水平面上における各傾斜角度α、βは、α2、β2から徐々に傾斜させていき、左端の角度設定用スリット22Aにおいて傾斜角度が最も大きいα1、β1へと垂直面上及び水平面上の傾斜角度が設定されている。
【0063】
すなわち、右側の角度設定用スリット22では、刃2の垂直面上及び水平面上における傾きが、それぞれα3、β3の角度となるように角度設定用スリット22にて設定されている。この角度設定用スリット22の左側の角度設定用スリット22Bから左端の角度設定用スリット22Aにかけては、刃2の垂直面上及び水平面上における傾きが徐々大きくなるように、各角度設定用スリット22にて設定されている。
【0064】
つまり、角度設定用スリット22(22B)から角度設定用スリット22(22A)にかけては、角度設定用スリット22の垂直面上の傾きは、右側に頭部側17aとなるように柵17をまな板20の上面に載せた場合に、垂直基線24に対する傾斜角度αを、前記柵17の尻尾側17bに至るほど頭部側17aに傾くように順次大きくなるように形成している。
また、角度設定用スリット22の水平面上の傾きは、右側に頭部側17aとなるように柵17をまな板20の上面に載せた場合に、水平基線25に対する傾斜角度βを、柵17の尻尾側17bに至るほど頭部側17aに傾くように順次大きくなるように形成している。
【0065】
ここで、角度設定用スリット22での傾斜角度αは上記と同様に約45度、傾斜角度βは約30度としており、左端の角度設定用スリット22Aの傾斜角度αは約75度、傾斜角度βは約60度としている。もちろん、各角度設定用スリット22間の間隔や数によりこれらの傾斜角度α、βは決められるものであり、左端の角度設定用スリット22Aの傾斜角度αの範囲はまな板20を正面から見て70度から80度の範囲内で、また、傾斜角度βはまな板20を上面から見て50度から70度の範囲内である。
【0066】
このように、右側の各角度設定用スリット22では、角度設定用スリット22に包丁1の刃先を入れると、刃2の垂直面上及び水平面上における傾斜角度はα3、β3にそれぞれ自動的に決められ、その垂直面上及び水平面上での刃2の傾斜角度を維持させながら図20の矢印に示すように柵17を切る。
また、中央部分の角度設定用スリット22Bでは、角度設定用スリット22に包丁1の刃先を入れると、刃2の垂直面上及び水平面上における傾斜角度はα2、β2にそれぞれ自動的に決められ、その垂直面上及び水平面上での刃2の傾斜角度を維持させながら柵17を切る。
【0067】
左端の角度設定用スリット22Aでは、角度設定用スリット22に包丁1の刃先を入れると、刃2の垂直面上及び水平面上における傾斜角度はα3、β3にそれぞれ自動的に決められ、その垂直面上及び水平面上での刃2の傾斜角度を維持させながら柵17を切る。
【0068】
このように、柵17の尻尾側にいくほど、柵17の幅が狭くなり、また柵17の厚みが薄くなっていく場合には、尻尾側17bに至るほど包丁1の刃2が垂直面及び水平面において頭部側17aに順次形状するように角度設定用スリット22(22Bから22A)を形成しているので、所定の厚みに切った後の各刺身片の大きさや重さをほぼ同じものとすることができる。
【0069】
各角度設定用スリット22に包丁1の刃2を入れると、各角度設定用スリット22により刃2の垂直面上及び水平面上における傾斜角度が自動的に決められ、そのまま包丁1を手前に引いて柵17を切るだけで良い。
これにより、鮮魚を捌く職人などの熟練者でない人でも、まな板20に形成した突条部21の各角度設定用スリット22に包丁1の刃先を入れて、単にそのまま柵17を切っていくことで、垂直面上及び水平面上での刃2の振り角度を容易に変えていくことができ、尻尾側17b側に至るほど柵17の幅が狭く、厚みも薄くなる柵17の場合でも、刺身片をほぼ同じ大きさや重さに簡単に綺麗な刺身を造ることができる。しかも、一方の端の角度設定用スリット22から他方の端の角度設定用スリット22へ順次包丁1の刃先を入れて単に切っていくだけで同じ大きさの刺身片を切ることができ、そのため、短時間で刺身を造ることができ、作業性を向上させることができる。
【0070】
図22は、図12の場合と同様にガイド溝27を各角度設定用スリット22に対応させて設けたものであり、ガイド溝27の構造は図12の場合と同様なので詳細な説明は省略する。
このガイド溝27により、刃2の横触れを防止でき、厚みをほぼ同じとした刺身片を切っていくことができる。
【0071】
図23は、図15の場合と同様にドリップ滴下用の穴29をミシン目状に3条形成したものである。これら穴29を多数設けていることで、柵17から出ているドリップは、穴29を介してまな板20の裏面に滴下され、柵17を捌いている際に柵17の下面がドリップに浸かるということを可能な限り防ぐことができ、柵17のうま味を保持することができる。
【0072】
なお、図17、図22及び図23に示すまな板20において、途中の角度設定用スリット22から垂直面上及び水平面上における傾斜角度を徐々に傾けるようにしていたが、右端の角度設定用スリット22から左端の角度設定用スリット22にかけて、垂直面上及び水平面上における傾斜角度を徐々に傾けるようにしても良い。
【0073】
ところで、まな板20に形成した突条部21は、先の実施形態では、断面を背面側が上下方向に真っ直ぐとした三角形状としていたが、この形状に限られるものではない。例えば、図24Aに示すように、突条部21の断面を半円形状としたり、図24Bに示すように、なだらかな山形としても良い。
また、図24Cに示すように、突条部21の断面を四角形状としたり、図24Dに示すように、突条部21の断面を上部が尖った三角形状としても良い。
【0074】
また、上記各実施形態において、まな板20にガイド溝27と穴29を形成している場合を示しているが、ガイド溝27は形成せずに、ドリップ滴下用の穴29を形成したまな板20でも良い。
【0075】
なお、このまな板20の材料としては、厚手の紙材、プラスチック、木材などが用いられ、また、木材として、例えば、間伐材が用いられる。また、紙材とした場合、紙51%とポリプロピレン49%の合成紙でも良い。
紙材やプラスチックでまな板20を形成した場合では、上記突条部21をリブ状に一体に形成しているので、まな板20に剛性を付与できて、厚さを少々薄くしてもまな板20が撓むこともない。
【符号の説明】
【0076】
1 包丁
2 刃
17 柵
17a 柵の頭部側
17b 柵の尻尾側
20 まな板
21 突条部
22 角度設定用スリット
24 垂直基線
25 水平基線
27 ガイド溝
29 ドリップ滴下用の穴
α 傾斜角度
β 傾斜角度
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚を捌いてサシミを造る場合のサシミ用まな板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鮮魚取り扱い業において、通常は鮮魚小売店の場合、その店の主人や職人が包丁の扱いができ、尚且つ各種の鮮魚の捌き方に精通していることが必須である。一方、食品スーパーでは、鮮魚責任者がある程度魚を扱えることでパート従業員を指導しているが、多くの場合、鮮魚の取り扱いに興味を持つ次の世代が不足しており、鮮魚の捌き方という技術の伝承がなされていないのが現状である。
【0003】
ましてや最近では、スーパーに納められる刺身用鮮魚などは柵の状態までしたものを利用しているのが一般的で、担当者に至っては生きた魚の〆方や捌き方も知らないし、刺身の造り方も出来ないのが当たり前になっている。
【0004】
図25は例えば、マグロの柵52をまな板51の上に載せて包丁1にて刺身を造る場合を示しており、この柵52は、略長方体形状に予め切ってあるものであり、そのため、図26のライン53に示す位置付近に包丁1を入れて所定の間隔毎に単純に切っていくだけで、ある程度厚みを一定にした刺身を造ることができる。また、この柵52は略長方体形状のため、切った刺身の面積もほぼ同じ大きさとすることができ、そのため、鮮魚店、スーパー等のパート従業員や、また、一般家庭の主婦でも、同じ大きさで、同じ厚みの刺身を簡単に造ることができる。
【0005】
しかしながら、図25に示すような、大きな魚から取った柵52は略長方体形状であるから、上述のように簡単に刺身を造ることができるものの、刺身用の柵は長方体形状とは限らない。小さな魚や、魚の種類によってはほとんど長方体形状ではないものの方が多く、図27に示すような魚の柵54は、胴部から尻尾にかけて幅が狭くなっており、また、厚みも尻尾に至るほど薄くなっている。
【0006】
この図27に示すような柵54を、図28に示すように、長方形体状の柵52の場合と同様な切り口で切っていくと、厚みをほぼ同じにできても、図29に示すように、大きさが胴部の頭部に近い刺身片55aや、胴部の真ん中の刺身片55bや、尻尾に近い刺身片55cでは、1切れの大きさ(面積)や重さが異なってしまう。
一般の家庭では、図29に示すような大きさが異なる刺身片でも良いものの、鮮魚店やスーパーでは販売をすることができない。また、飲食店でも同様である。もちろん、家庭においても、お皿に大きさが異なる刺身片を盛った場合、見た目も悪くなって食欲もそそらず、家族から不満が出ることにもなる。
【0007】
図27に示すような柵54の箇所によって幅寸法、厚み寸法が異なる場合でも該柵54を大きさや重さがほぼ同じようになるように切っていくが、これには、この技を持った職人が捌く必要がある。この捌き方(柵54の切り方)は、そう簡単にできるものではなく、何年も修行した結果できるものであると言われている。
このような職人芸を持った人を何人も雇うのは、大手のスーパーや飲食店では可能ではあるものの、比較的小さな食品スーパーや飲食店、鮮魚店では不可能であり、せいぜい一人の職人を雇うのが精一杯である。
【0008】
また、図25及び図26に示すように、長方形状の柵52を単に一直線状に切る場合は、綺麗に柵52を切ることができるものの、包丁を斜めに傾斜させて柵52を切っていき、一片の、刺身片の大きさ(面積)を大きくする場合、常に包丁を一定の角度に傾斜させて切っていくのは、非常に難しい。
【0009】
そこで、柵を斜めに切ることができるまな板として、例えば、下記に示す特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−333852号公報
【0011】
上記特許文献1に記載のまな板は、中央部に溝のある角型の台座と、側面が適当な傾斜角度を持つ斜面を有する安定定規と、端部にローラを回動自在に設けた角型の調材台とで構成されている。
【0012】
この特許文献1では、安定定規の斜面に包丁を置いて柵を切ることで、柵を斜めに切ることができるとしている。しかしながら、柵を切っていく場合、柵を載せた調材台をローラにて移動させる構造のため、調材台を少し移動させては手で柵を押さえながら切っていく必要がある。そのため、調材台を一定の距離を手動で移動させるのが煩わしく、柵を手早く切っていくことができず、作業性が悪いという問題がある。また、一定の距離だけ調材台を移動させていくのは、容易ではなく、切った後の各刺身片の厚みも不揃いとなる。
【0013】
また、特許文献1のまな板は、台座、安定定規及び調材台の3つの構成部材からなり、柵を切る場合には、台座に調材台と安定定規を組み合わせる必要があり、手前に柵が隠れるような大きな安定定規が位置し、この安定定規が邪魔になって魚の捌き作業がやりにくいという問題もある。
【0014】
ところで、後述する本発明の突条部とは機能が異なるものの、まな板の一面に突条部を設けたまな板として、例えば、下記に示す特許文献2、3がある。
【0015】
【特許文献2】特開平8−56861号公報
【特許文献3】特開平9−220168号公報
【0016】
上記特許文献2では、まな板の裏面に互いに平行で高さが2〜5mm程度の3本の突条部を互いに適当間隔をおいて設け、二つの突条部間にキュウリや大根を位置させ、その状態で包丁により切ることにより、キュウリを蛇腹切りしたり、大根を繋がった状態で切る作業を熟練者でなくとも簡単に行なうようにしたものである。
【0017】
また、特許文献3では、まな板に対して摺動・回転可能に突条の部材を設け、この突条の部材をまな板の表面より突出させ、この突条の部材に包丁の刃が当たることで、食材を完全に切り離さず、食材を輪切りにできるようにしたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
このように、上記特許文献1では、柵の斜め切りが簡単に行なうことができず、また、尻尾側に至るほど、幅が狭く、厚みが薄くなる柵の場合では、ほぼ同じ大きさの刺身片を造ることができない。
また、上記特許文献2、3では、突条部分を利用してキュウリなどの食材を一部が繋がった状態で切るようにしたものであり、魚の柵を斜めに切っていくという思想は無い。
【0019】
本発明は上述の問題点に鑑みて提供したものであって、柵を斜めに切っていく場合に、職人などの熟練者でなくても、刺身用の柵をほぼ同じ大きさ(面積)や重さに綺麗に、且つ簡単に切れるようにしたサシミ用まな板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
そこで、本発明の請求項1に記載のサシミ用まな板では、刺身の下ごしらえ用の柵17を載せて該柵17を包丁1で切って刺身を造るまな板20であって、
前記まな板20の上面に該まな板20の横方向の全長にわたって突条部21を一体的に形成し、
前記突条部21に前記包丁1の刃先を入れる角度設定用スリット22を、該突条部21の横方向に刺身1切れ分の厚みに対応させた間隔で多数形成し、
前記角度設定用スリット22の上下方向の線を垂直面上での垂直基線24とし、
前記角度設定用スリット22の前後方向の線を水平面上での水平基線25とし、
前記各角度設定用スリット22の垂直面上の傾きを、前記まな板20を正面から見て前記垂直基線24に対して時計回転方向または反時計回転方向に傾けた傾斜角度αにそれぞれ設定し、
前記各角度設定用スリット22の水平面上の傾きを、前記まな板20を上面から見て前記水平基線25に対して時計回転方向または反時計回転方向に傾けた傾斜角度βにそれぞれ設定していることを特徴としている。
【0021】
請求項2に記載のサシミ用まな板では、前記角度設定用スリット22の水平面上での前記傾斜角度βと同じ傾斜角度を持ち、前記包丁1の刃先をガイドするガイド溝27を各角度設定用スリット22に対応して前記まな板20の上面にそれぞれ凹設していることを特徴としている。
【0022】
請求項3に記載のサシミ用まな板では、前記柵17から出る魚肉汁であるドリップを前記まな板20の裏面に滴下させる穴29を該まな板20に多数穿孔していることを特徴としている。
【0023】
請求項4に記載のサシミ用まな板では、前記角度設定用スリット22の水平面上での前記傾斜角度βと同じ傾斜角度を持ち、前記包丁1の刃先をガイドするガイド溝27を各角度設定用スリット22に対応して前記まな板20の上面にそれぞれ凹設し、
前記柵17から出る魚肉汁であるドリップを前記まな板20の裏面に滴下させる穴29を該まな板20に多数穿孔していることを特徴としている。
【0024】
請求項5に記載のサシミ用まな板では、魚の胴部から尻尾側17bにかけて幅が狭くなり、厚みも薄くなる刺身の下ごしらえ用の柵17を載せて該柵17を包丁1で切って刺身を造るまな板20であって、
前記まな板20の上面に該まな板20の横方向の全長にわたって突条部21を一体的に形成し、
前記突条部21に前記包丁1の刃先を入れる角度設定用スリット22を、該突条部21の横方向に刺身1切れ分の厚みに対応させた間隔で多数形成し、
前記角度設定用スリット22の上下方向の線を垂直面上での垂直基線24とし、
前記角度設定用スリット22の前後方向の線を水平面上での水平基線25とし、
前記角度設定用スリット22の垂直面上の傾きは、右側に頭部側17aとなるように前記柵17を前記まな板20の上面に載せた場合に、前記垂直基線24に対する傾斜角度αを、前記柵17の尻尾側17bに至るほど頭部側17aに傾くように順次大きくなるように形成し、
前記角度設定用スリット22の水平面上の傾きは、右側に頭部側17aとなるように前記柵17を前記まな板20の上面に載せた場合に、前記水平基線25に対する傾斜角度βを、柵17の尻尾側17bに至るほど頭部側17aに傾くように順次大きくなるように形成していることを特徴としている。
【0025】
請求項6に記載のサシミ用まな板では、前記角度設定用スリット22の水平面上での前記傾斜角度βと同じ傾斜角度を持ち、前記包丁1の刃先をガイドするガイド溝27を各角度設定用スリット22に対応して前記まな板20の上面にそれぞれ凹設していることを特徴としている。
【0026】
請求項7に記載のサシミ用まな板では、前記柵17から出る魚肉汁であるドリップを前記まな板20の裏面に滴下させる穴29を該まな板20に多数穿孔していることを特徴としている。
【0027】
請求項8に記載のサシミ用まな板では、前記角度設定用スリット22の水平面上での前記傾斜角度βと同じ傾斜角度を持ち、前記包丁1の刃先をガイドするガイド溝27を各角度設定用スリット22に対応して前記まな板20の上面にそれぞれ凹設し、
前記柵17から出る魚肉汁であるドリップを前記まな板20の裏面に滴下させる穴29を該まな板20に多数穿孔していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0028】
本発明の請求項1に記載のサシミ用まな板によれば、各角度設定用スリット22の垂直面上の傾きを、まな板20を正面から見て垂直基線24に対して時計回転方向または反時計回転方向に傾けた傾斜角度αにそれぞれ設定し、各角度設定用スリット22の水平面上の傾きを、まな板20を上面から見て水平基線25に対して時計回転方向または反時計回転方向に傾けた傾斜角度βにそれぞれ設定しているので、まな板20の突条部21の角度設定用スリット22に包丁1の刃先を挿入するだけで、柵17を切っていく際の刃2の垂直面上及び水平面上における傾斜角度が自動的に設定される。そのため、角度設定用スリット22の刃先を入れた状態から包丁1を手前に引いて柵17を切っていくだけで、柵17を垂直面上及び水平面上で傾斜角度を持たせた斜め切りした刺身片を一定の厚みでもって切ることができる。
これにより、鮮魚を捌く職人などの熟練者でなくても、まな板20に形成した突条部21の各角度設定用スリット22に包丁1の刃先を入れて、そのまま包丁1を手前に引くことで、ほぼ同じ大きさや重さの刺身片を綺麗に造ることができる。しかも、一方の端の角度設定用スリット22から他方の端の角度設定用スリット22へ順次包丁1の刃先を入れて単に切っていくだけで同じ大きさの刺身片を切ることができ、そのため、短時間で刺身を造ることができ、作業性を向上させることができる。
【0029】
請求項2に記載のサシミ用まな板によれば、角度設定用スリット22の水平面上での傾斜角度βと同じ傾斜角度を持ち、包丁1の刃先をガイドするガイド溝27を各角度設定用スリット22に対応してまな板20の上面にそれぞれ凹設しているので、柵17を切っていく際に包丁1の刃先が角度設定用スリット22から離れても、刃先がそのままガイド溝27に沿って柵17を切ることができる。そのため、刃2がまな板20の横方向に振れることがないので、各刺身片の厚みにバラツキが生じず、一定の厚みの刺身片を綺麗に、且つ簡単で短時間に造ることができる。
【0030】
請求項3に記載のサシミ用まな板によれば、柵17から出る魚肉汁であるドリップをまな板20の裏面に滴下させる穴29を該まな板20に多数穿孔しているので、柵17から出ているドリップは、穴29を介してまな板20の裏面に滴下され、柵17を捌いている際に柵17の下面がドリップに浸かるということを可能な限り防ぐことができ、柵17のうま味を保持することができる。
【0031】
請求項4に記載のサシミ用まな板によれば、角度設定用スリット22の水平面上での傾斜角度βと同じ傾斜角度を持ち、包丁1の刃先をガイドするガイド溝27を各角度設定用スリット22に対応してまな板20の上面にそれぞれ凹設しているので、柵17を切っていく際に包丁1の刃先が角度設定用スリット22から離れても、刃先がそのままガイド溝27に沿って柵17を切ることができる。そのため、刃2がまな板20の横方向に振れることがないので、各刺身片の厚みにバラツキが生じず、一定の厚みの刺身片を綺麗に、且つ簡単で短時間に造ることができる。
また、柵17から出る魚肉汁であるドリップをまな板20の裏面に滴下させる穴29を該まな板20に多数穿孔しているので、柵17から出ているドリップは、穴29を介してまな板20の裏面に滴下され、柵17を捌いている際に柵17の下面がドリップに浸かるということを可能な限り防ぐことができ、柵17のうま味を保持することができる。
【0032】
請求項5に記載のサシミ用まな板によれば、角度設定用スリット22の垂直面上の傾きは、右側に頭部側17aとなるように柵17をまな板20の上面に載せた場合に、垂直基線24に対する傾斜角度αを、柵17の尻尾側17bに至るほど頭部側17aに傾くように順次大きくなるように形成し、角度設定用スリット22の水平面上の傾きは、右側に頭部側17aとなるように柵17をまな板20の上面に載せた場合に、水平基線25に対する傾斜角度βを、柵17の尻尾側17bに至るほど頭部側17aに傾くように順次大きくなるように形成しているので、鮮魚を捌く職人などの熟練者でない人でも、まな板20に形成した突条部21の各角度設定用スリット22に包丁1の刃先を入れて、単にそのまま柵17を切っていくことで、垂直面上及び水平面上での刃2の振り角度を容易に変えていくことができ、尻尾側17b側に至るほど柵17の幅が狭く、厚みも薄くなる柵17の場合でも、刺身片をほぼ同じ大きさや重さに簡単に綺麗な刺身を造ることができる。しかも、一方の端の角度設定用スリット22から他方の端の角度設定用スリット22へ順次包丁1の刃先を入れて単に切っていくだけで同じ大きさの刺身片を切ることができ、そのため、短時間で刺身を造ることができ、作業性を向上させることができる。
【0033】
請求項6に記載のサシミ用まな板によれば、角度設定用スリット22の水平面上での傾斜角度βと同じ傾斜角度を持ち、包丁1の刃先をガイドするガイド溝27を各角度設定用スリット22に対応して前記まな板20の上面にそれぞれ凹設しているので、柵17を切っていく際に包丁1の刃先が角度設定用スリット22から離れても、刃先がそのままガイド溝27に沿って柵17を切ることができる。そのため、刃2がまな板20の横方向に振れることがないので、各刺身片の厚みにバラツキが生じず、一定の厚みの刺身片を綺麗に、且つ簡単で短時間に造ることができる。
【0034】
請求項7に記載のサシミ用まな板によれば、柵17から出る魚肉汁であるドリップをまな板20の裏面に滴下させる穴29を該まな板20に多数穿孔しているので、柵17から出ているドリップは、穴29を介してまな板20の裏面に滴下され、柵17を捌いている際に柵17の下面がドリップに浸かるということを可能な限り防ぐことができ、柵17のうま味を保持することができる。
【0035】
請求項8に記載のサシミ用まな板によれば、角度設定用スリット22の水平面上での傾斜角度βと同じ傾斜角度を持ち、包丁1の刃先をガイドするガイド溝27を各角度設定用スリット22に対応してまな板20の上面にそれぞれ凹設しているので、柵17を切っていく際に包丁1の刃先が角度設定用スリット22から離れても、刃先がそのままガイド溝27に沿って柵17を切ることができる。そのため、刃2がまな板20の横方向に振れることがないので、各刺身片の厚みにバラツキが生じず、一定の厚みの刺身片を綺麗に、且つ簡単で短時間に造ることができる。
また、柵17から出る魚肉汁であるドリップをまな板20の裏面に滴下させる穴29を該まな板20に多数穿孔しているので、柵17から出ているドリップは、穴29を介してまな板20の裏面に滴下され、柵17を捌いている際に柵17の下面がドリップに浸かるということを可能な限り防ぐことができ、柵17のうま味を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の3枚おろしをする場合の魚の平面図である。
【図2】A、Bは本発明の3枚おろしをする場合の胴部の片側の正面図及び断面図である。
【図3】A、Bは本発明の3枚おろしをする場合で胴部の片側を切った場合の正面図及び断面図である。
【図4】本発明のまな板の斜視図である。
【図5】A、Bは本発明のまな板の平面図及び側面図である。
【図6】A、Bは本発明のまな板の正面図及び背面図である。
【図7】本発明の角度設定用スリットの垂直面上及び水平面上における傾斜角度の説明図である。
【図8】本発明のまな板の説明図である。
【図9】本発明の柵を切る場合の説明図である。
【図10】本発明の柵を切る場合の説明図である。
【図11】本発明の柵を切る場合の説明図である
【図12】本発明のガイド溝を形成したまな板の斜視図である。
【図13】本発明のガイド溝を形成したまな板の平面図である。
【図14】本発明のまな板の要部拡大断面図である。
【図15】本発明のガイド溝及びドリップ滴下用の穴を形成したまな板の斜視図である。
【図16】本発明のガイド溝及びドリップ滴下用の穴を形成したまな板の平面図である。
【図17】本発明のまな板の斜視図である。
【図18】本発明のまな板の平面図である。
【図19】本発明のまな板の正面図である。
【図20】本発明の柵を切る場合の説明図である。
【図21】本発明の角度設定用スリットの垂直面上及び水平面上における傾斜角度の説明図である。
【図22】本発明のガイド溝を形成したまな板の平面図である。
【図23】本発明のガイド溝及びドリップ滴下用の穴を形成したまな板の平面図である。
【図24】A〜Dは本発明の他の突条部の例を示す図である。
【図25】従来例の刺身を造る場合の図である。
【図26】従来例の刺身を造る場合の説明図である。
【図27】A、Bは従来例の刺身を造る場合の説明図である。
【図28】従来例の刺身を造る場合の説明図である。
【図29】A、B、Cは従来例の刺身を切った後の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1〜図3は、魚10の3枚おろしをした場合の図を示し、頭部11を切断し、胴部12内の内臓を取り出す。図2に示す背骨13より上側が背身14であり、背骨13より下側が腹身15である。図3は胴部12の片側を長手方向に沿って背身14と腹身15に切ったものであり、図2に示す胴部12の片側部分や、図3に示す背身14部分や腹身15部分を、便宜上、刺身の下ごしらえの柵17と称する。
【0038】
図4は本発明のサシミ用のまな板20の斜視図を示し、図5Aはまな板20の平面図を、図5Bはまな板20の側面図をそれぞれ示している。また、図6Aはまな板20の正面図を、図6Bはまな板20の背面図をそれぞれ示している。
まな板20の後部側には、断面を略三角形状とした突条部21が該まな板20の横方向に全長にわたって一体に形成されている。
【0039】
まな板20の突条部21には、柵17を切っていく際に包丁の刃の水平面上及び垂直面上での傾斜角度を設定するための角度設定用スリット22が多数連続して形成されている。この角度設定用スリット22は、前面、背面及び上面が開口し、前面から見て略V字型となっている。また、角度設定用スリット22の間隔は、1切れの刺身片の厚みとなっている。
【0040】
この角度設定用スリット22に包丁の刃先を挿入すると、刃は垂直面上で、ある角度に傾斜するように位置決めされると共に、同時に水平面上でも、ある角度に傾斜するように位置決めされる。
図7は、包丁1の刃2の垂直面での傾斜角度と、水平面での傾斜角度が角度設定用スリット22によって決められる状態を図示したものであり、図7Aは、包丁1の刃2の垂直面における傾きを決める角度設定用スリット22の垂直面の傾きを示している。図7Bは刃2の水平面における傾きを決める角度設定用スリット22の水平面の傾きを示している。
【0041】
ここで、図7Aにおいて、刃2を降ろす上下方向の線を垂直基線24とし、図7Bにおいて、水平面での前後方向の線を水平基線25とする。図7Aに示すように、上記垂直基線24に対してαの角度で刃2が傾斜するように垂直面上で角度設定用スリット22が設定されている。同時に図7Bに示すように、上記水平基線25に対してβの角度で刃2が傾斜するように水平面上で角度設定用スリット22が設定されている。
すなわち、包丁1の刃先を角度設定用スリット22に挿入すると、角度α及びβでもって刃2の垂直面上及び水平面上における傾斜角度が自動的に設定されることになる。
【0042】
なお、この実施形態では、突条部21に形成した全ての角度設定用スリット22の傾斜角度αはそれぞれ同じ角度とし、また、各角度設定用スリット22の傾斜角度βもそれぞれ同じ角度としている。この傾斜角度α及びβは、任意の角度に適宜設定されるものであり、例えば、傾斜角度αは、まな板20を正面から見て垂直基線24に対して時計回転方向へ30度から60度の範囲内で設定している。
また、傾斜角度βは、まな板20を上面から見て時計回転方向へ20度から45度の範囲内で設定している。そして、この傾斜角度α及びβを30度より大きく設定することで、直方体状の柵17から、刺身片の1片の大きさを断面積より一層大きくすることができる。
【0043】
なお、本実施形態では、傾斜角度αを約45度、傾斜角度βを約30度としている。この傾斜角度α、βの数値は、職人が柵17を捌く際の一般的な角度に対応させた数値である。
【0044】
また、角度設定用スリット22を突条部21の左側から形成する場合では、上記傾斜角度αは、垂直基線24から反時計回転方向へ傾けた角度となり、傾斜角度βも同様に水平基線25から反時計回転方向へ傾けた角度となる。
【0045】
このように、包丁1の刃先を突条部21の角度設定用スリット22に挿入することで、柵17を切っていく際の刃2の垂直面上及び水平面上の傾斜角度が同時に設定され、そのため、図8に示すように、刃2の垂直面上及び水平面上の傾斜角度が位置決めされた包丁1をそのまま手間に引くことで、矢印に示すように、柵17を綺麗に切ることができる。
【0046】
図9〜図11はまな板20の上面に柵17を置いて包丁1にて柵17を切っていく場合を示している。柵17をまな板20の上に置いた状態で図9に示すように包丁1の刃先を角度設定用スリット22に挿入することで、上述したように刃2の垂直面上及び水平面上の傾斜角度が同時に設定される。
そして、その傾斜角度が位置決めされている状態で、包丁1を手前に引いて柵17を切る。切った後は隣(例えば左)の角度設定用スリット22に再び包丁1の刃先を挿入して刃2の傾斜角度を決め、そのまま上記と同様に包丁1を手前に引いて柵17を切っていく。
【0047】
なお、図11に示す柵17の両側の部分は、中央部分の大きさと同じ大きさの刺身片を取ることができないので、柵17の両側は刺身片として使わずに、他の料理、例えばちらし寿司などの具として利用される。
また、本実施形態では、突条部21には10の角度設定用スリット22を形成している場合を示しているが、角度設定用スリット22の数は限定されるものではなく、まな板20の横方向の長さに応じて多数形成される。
【0048】
このように、本実施形態では、まな板20の突条部21の角度設定用スリット22に包丁1の刃先を挿入するだけで、柵17を切っていく際の刃2の垂直面上及び水平面上における傾斜角度が自動的に設定される。そのため、角度設定用スリット22の刃先を入れた状態から包丁1を手前に引いて柵17を切っていくだけで、柵17を垂直面上及び水平面上で傾斜角度を持たせた斜め切りした刺身片を一定の厚みでもって切ることができる。
これにより、鮮魚を捌く職人などの熟練者でなくても、まな板20に形成した突条部21の各角度設定用スリット22に包丁1の刃先を入れて、そのまま包丁1を手前に引くことで、ほぼ同じ大きさや重さの刺身片を綺麗に造ることができる。しかも、一方の端の角度設定用スリット22から他方の端の角度設定用スリット22へ順次包丁1の刃先を入れて単に切っていくだけで同じ大きさの刺身片を切ることができ、そのため、短時間で刺身を造ることができ、作業性を向上させることができる。
【0049】
図12は、図4に示すまな板20に対して柵17を切っていく際の包丁1の刃先をガイドするガイド溝27を凹設したまな板20の斜視図を示し、図13は該まな板20の平面図を示している。また、図14はまな板20の要部拡大断面図を示している。
ガイド溝27は、各角度設定用スリット22の下端より連続して設けられており、図14に示すように、底面は閉塞されている。また、ガイド溝27の傾斜角度は、図7Bに示す角度設定用スリット22の傾斜角度βと同一である。
【0050】
このように、まな板20の上面に各角度設定用スリット22に対応したガイド溝27を設けていることで、柵17を切っていく際に包丁1の刃先が角度設定用スリット22から離れても、刃先がそのままガイド溝27に沿って柵17を切ることができる。そのため、刃2がまな板20の横方向に振れることがないので、各刺身片の厚みにバラツキが生じず、一定の厚みの刺身片を綺麗に、且つ簡単で短時間に造ることができる。
【0051】
なお、突条部21に形成している各角度設定用スリット22の底面は、まな板の上面と面一となっているが、角度設定用スリット22の底面を、ガイド溝27の底面と面一となるように形成するようにしても良い。かかる場合、角度設定用スリット22の底部とガイド溝27の底部とが連通し、包丁1の刃先を角度設定用スリット22の底部からガイド溝27へと一層スムーズに移行でき、柵を綺麗に切ることができる。
【0052】
ところで、魚を3枚おろしした背身や腹身などの柵からは、ある程度の時間や日が経つと赤色状のドリップ(魚肉汁)が出てくる。ドリップに浸かっていた柵や、ドリップが出ている状態で柵を調理する場合は、該ドリップにより柵のうま味が無くなり、魚自体、あるいは刺身がまずくなってしまう。
【0053】
そこで、ドリップ滴下用の穴29を設けたまな板20の例を図15及び図16に示す。図15は、図12に示すまな板20に対して穴29を設けたまな板20の斜視図を示し、図16は穴29を設けたまな板20の平面図を示している。
ドリップ滴下用の穴29は、図15及び図16に示すように、直線状(ミシン目状)に多数穿孔したものであり、これを3条設けている。
【0054】
これら穴29を多数設けていることで、柵17から出ているドリップは、穴29を介してまな板20の裏面に滴下され、柵17を捌いている際に柵17の下面がドリップに浸かるということを可能な限り防ぐことができ、柵17のうま味を保持することができる。なお、穴29の形状は、図示例では長穴状としているが、長穴状に限らず、円形の穴でも良い。
【0055】
次に、柵17の形状が、尻尾側に至るほど幅が狭く、厚みも薄くなる柵17を捌くのに対応したまな板20について説明する。図17はかかるまな板20の斜視図を、図18は平面図を、図19は正面図をそれぞれ示している。また、図20はまな板20の上面に上記柵17を載せた状態を示している。
【0056】
本実施形態では、上記実施形態と同様にまな板20の上面に突条部21を形成し、この突条部21に上記と同様に角度設定用スリット22を連続して多数形成している。図示例では、突条部21の右側には図4に示すのと同じ傾斜角度α、βを持たせた角度設定用スリット22が10個連続して形成しており、右から11個目以降の角度設定用スリット22は、垂直面上及び水平面上における傾斜角度を徐々に傾斜させている。
【0057】
次に、左側の角度設定用スリット22に垂直面上及び水平面上における傾斜角度について説明する。図21は、包丁1の刃2の垂直面でも傾斜角度と、水平面での傾斜角度が角度設定用スリット22によって決められる状態を図示したものである。
図21Aは、包丁1の刃2の垂直面における傾きを決める角度設定用スリット22の垂直面の傾きを示し、図21Bは、刃2の水平面における傾きを決める角度設定用スリット22の水平面の傾きを示している。
【0058】
ここで、図20に示すように、図4に示すのと同じ傾斜角度を持たせた角度設定用スリットの番号を「22」とし、この角度設定用スリット22より左側の角度設定用スリット22の番号を便宜上「22B」とし、最も左側の角度設定用スリット22の番号を「22A」とする。
【0059】
図21Aに示すように、角度設定用スリット22における垂直基線24に対してα3(図7に示すαに相当)の角度でもって刃2が傾斜するように垂直面上で角度設定用スリット22が設定されている。同時に図21Bに示すように、水平基線25に対してβ3(図7に示すβに相当)の角度で刃2が傾斜するように水平面上で角度設定用スリット22が設定されている。この角度設定用スリット22における垂直面上及び水平面上での傾斜角度は図4に示す角度設定用スリット22の場合と同様である。
【0060】
次に、角度設定用スリット22Bにおいては、図21Aに示すように、垂直面における刃2の傾斜角度に対応した該角度設定用スリット22Bの垂直面での傾斜角度は、垂直基線24に対して上記傾斜角度α3より大きいα2の角度でもって傾斜させている。
同時に、図21Bに示すように、水平面における刃2の傾斜角度に対応した該角度設定用スリット22の水平面での傾斜角度を水平基線25に対して傾斜角度β3より大きいβ2の角度でもって傾斜させている。
【0061】
左端の角度設定用スリット22Aにおいては、図21Aに示すように、垂直面における刃2の傾斜角度に対応した該角度設定用スリット22Bの垂直面での傾斜角度は、垂直基線24に対して上記傾斜角度α2より大きいα1の角度でもって傾斜させている。
同時に、図21Bに示すように、水平面における刃2の傾斜角度に対応した該角度設定用スリット22の水平面での傾斜角度を水平基線25に対して傾斜角度β2より大きいβ1の角度でもって傾斜させている。
【0062】
なお、この角度設定用スリット22Bから左端の角度設定用スリット22Aに至る間の各角度設定用スリット22では、垂直面上及び水平面上における各傾斜角度α、βは、α2、β2から徐々に傾斜させていき、左端の角度設定用スリット22Aにおいて傾斜角度が最も大きいα1、β1へと垂直面上及び水平面上の傾斜角度が設定されている。
【0063】
すなわち、右側の角度設定用スリット22では、刃2の垂直面上及び水平面上における傾きが、それぞれα3、β3の角度となるように角度設定用スリット22にて設定されている。この角度設定用スリット22の左側の角度設定用スリット22Bから左端の角度設定用スリット22Aにかけては、刃2の垂直面上及び水平面上における傾きが徐々大きくなるように、各角度設定用スリット22にて設定されている。
【0064】
つまり、角度設定用スリット22(22B)から角度設定用スリット22(22A)にかけては、角度設定用スリット22の垂直面上の傾きは、右側に頭部側17aとなるように柵17をまな板20の上面に載せた場合に、垂直基線24に対する傾斜角度αを、前記柵17の尻尾側17bに至るほど頭部側17aに傾くように順次大きくなるように形成している。
また、角度設定用スリット22の水平面上の傾きは、右側に頭部側17aとなるように柵17をまな板20の上面に載せた場合に、水平基線25に対する傾斜角度βを、柵17の尻尾側17bに至るほど頭部側17aに傾くように順次大きくなるように形成している。
【0065】
ここで、角度設定用スリット22での傾斜角度αは上記と同様に約45度、傾斜角度βは約30度としており、左端の角度設定用スリット22Aの傾斜角度αは約75度、傾斜角度βは約60度としている。もちろん、各角度設定用スリット22間の間隔や数によりこれらの傾斜角度α、βは決められるものであり、左端の角度設定用スリット22Aの傾斜角度αの範囲はまな板20を正面から見て70度から80度の範囲内で、また、傾斜角度βはまな板20を上面から見て50度から70度の範囲内である。
【0066】
このように、右側の各角度設定用スリット22では、角度設定用スリット22に包丁1の刃先を入れると、刃2の垂直面上及び水平面上における傾斜角度はα3、β3にそれぞれ自動的に決められ、その垂直面上及び水平面上での刃2の傾斜角度を維持させながら図20の矢印に示すように柵17を切る。
また、中央部分の角度設定用スリット22Bでは、角度設定用スリット22に包丁1の刃先を入れると、刃2の垂直面上及び水平面上における傾斜角度はα2、β2にそれぞれ自動的に決められ、その垂直面上及び水平面上での刃2の傾斜角度を維持させながら柵17を切る。
【0067】
左端の角度設定用スリット22Aでは、角度設定用スリット22に包丁1の刃先を入れると、刃2の垂直面上及び水平面上における傾斜角度はα3、β3にそれぞれ自動的に決められ、その垂直面上及び水平面上での刃2の傾斜角度を維持させながら柵17を切る。
【0068】
このように、柵17の尻尾側にいくほど、柵17の幅が狭くなり、また柵17の厚みが薄くなっていく場合には、尻尾側17bに至るほど包丁1の刃2が垂直面及び水平面において頭部側17aに順次形状するように角度設定用スリット22(22Bから22A)を形成しているので、所定の厚みに切った後の各刺身片の大きさや重さをほぼ同じものとすることができる。
【0069】
各角度設定用スリット22に包丁1の刃2を入れると、各角度設定用スリット22により刃2の垂直面上及び水平面上における傾斜角度が自動的に決められ、そのまま包丁1を手前に引いて柵17を切るだけで良い。
これにより、鮮魚を捌く職人などの熟練者でない人でも、まな板20に形成した突条部21の各角度設定用スリット22に包丁1の刃先を入れて、単にそのまま柵17を切っていくことで、垂直面上及び水平面上での刃2の振り角度を容易に変えていくことができ、尻尾側17b側に至るほど柵17の幅が狭く、厚みも薄くなる柵17の場合でも、刺身片をほぼ同じ大きさや重さに簡単に綺麗な刺身を造ることができる。しかも、一方の端の角度設定用スリット22から他方の端の角度設定用スリット22へ順次包丁1の刃先を入れて単に切っていくだけで同じ大きさの刺身片を切ることができ、そのため、短時間で刺身を造ることができ、作業性を向上させることができる。
【0070】
図22は、図12の場合と同様にガイド溝27を各角度設定用スリット22に対応させて設けたものであり、ガイド溝27の構造は図12の場合と同様なので詳細な説明は省略する。
このガイド溝27により、刃2の横触れを防止でき、厚みをほぼ同じとした刺身片を切っていくことができる。
【0071】
図23は、図15の場合と同様にドリップ滴下用の穴29をミシン目状に3条形成したものである。これら穴29を多数設けていることで、柵17から出ているドリップは、穴29を介してまな板20の裏面に滴下され、柵17を捌いている際に柵17の下面がドリップに浸かるということを可能な限り防ぐことができ、柵17のうま味を保持することができる。
【0072】
なお、図17、図22及び図23に示すまな板20において、途中の角度設定用スリット22から垂直面上及び水平面上における傾斜角度を徐々に傾けるようにしていたが、右端の角度設定用スリット22から左端の角度設定用スリット22にかけて、垂直面上及び水平面上における傾斜角度を徐々に傾けるようにしても良い。
【0073】
ところで、まな板20に形成した突条部21は、先の実施形態では、断面を背面側が上下方向に真っ直ぐとした三角形状としていたが、この形状に限られるものではない。例えば、図24Aに示すように、突条部21の断面を半円形状としたり、図24Bに示すように、なだらかな山形としても良い。
また、図24Cに示すように、突条部21の断面を四角形状としたり、図24Dに示すように、突条部21の断面を上部が尖った三角形状としても良い。
【0074】
また、上記各実施形態において、まな板20にガイド溝27と穴29を形成している場合を示しているが、ガイド溝27は形成せずに、ドリップ滴下用の穴29を形成したまな板20でも良い。
【0075】
なお、このまな板20の材料としては、厚手の紙材、プラスチック、木材などが用いられ、また、木材として、例えば、間伐材が用いられる。また、紙材とした場合、紙51%とポリプロピレン49%の合成紙でも良い。
紙材やプラスチックでまな板20を形成した場合では、上記突条部21をリブ状に一体に形成しているので、まな板20に剛性を付与できて、厚さを少々薄くしてもまな板20が撓むこともない。
【符号の説明】
【0076】
1 包丁
2 刃
17 柵
17a 柵の頭部側
17b 柵の尻尾側
20 まな板
21 突条部
22 角度設定用スリット
24 垂直基線
25 水平基線
27 ガイド溝
29 ドリップ滴下用の穴
α 傾斜角度
β 傾斜角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺身の下ごしらえ用の柵(17)を載せて該柵(17)を包丁(1)で切って刺身を造るまな板(20)であって、
前記まな板(20)の上面に該まな板(20)の横方向の全長にわたって突条部(21)を一体的に形成し、
前記突条部(21)に前記包丁(1)の刃先を入れる角度設定用スリット(22)を、該突条部(21)の横方向に刺身1切れ分の厚みに対応させた間隔で多数形成し、
前記角度設定用スリット(22)の上下方向の線を垂直面上での垂直基線(24)とし、
前記角度設定用スリット(22)の前後方向の線を水平面上での水平基線(25)とし、
前記各角度設定用スリット(22)の垂直面上の傾きを、前記まな板(20)を正面から見て前記垂直基線(24)に対して時計回転方向または反時計回転方向に傾けた傾斜角度(α)にそれぞれ設定し、
前記各角度設定用スリット(22)の水平面上の傾きを、前記まな板(20)を上面から見て前記水平基線(25)に対して時計回転方向または反時計回転方向に傾けた傾斜角度(β)にそれぞれ設定している
ことを特徴とするサシミ用まな板。
【請求項2】
前記角度設定用スリット(22)の水平面上での前記傾斜角度(β)と同じ傾斜角度を持ち、前記包丁(1)の刃先をガイドするガイド溝(27)を各角度設定用スリット(22)に対応して前記まな板(20)の上面にそれぞれ凹設していることを特徴とする請求項1に記載のサシミ用まな板。
【請求項3】
前記柵(17)から出る魚肉汁であるドリップを前記まな板(20)の裏面に滴下させる穴(29)を該まな板(20)に多数穿孔していることを特徴とする請求項1に記載のサシミ用まな板。
【請求項4】
前記角度設定用スリット(22)の水平面上での前記傾斜角度(β)と同じ傾斜角度を持ち、前記包丁(1)の刃先をガイドするガイド溝(27)を各角度設定用スリット(22)に対応して前記まな板(20)の上面にそれぞれ凹設し、
前記柵(17)から出る魚肉汁であるドリップを前記まな板(20)の裏面に滴下させる穴(29)を該まな板(20)に多数穿孔していることを特徴とする請求項1に記載のサシミ用まな板。
【請求項5】
魚の胴部から尻尾側(17b)にかけて幅が狭くなり、厚みも薄くなる刺身の下ごしらえ用の柵(17)を載せて該柵(17)を包丁(1)で切って刺身を造るまな板(20)であって、
前記まな板(20)の上面に該まな板(20)の横方向の全長にわたって突条部(21)を一体的に形成し、
前記突条部(21)に前記包丁(1)の刃先を入れる角度設定用スリット(22)を、該突条部(21)の横方向に刺身1切れ分の厚みに対応させた間隔で多数形成し、
前記角度設定用スリット(22)の上下方向の線を垂直面上での垂直基線(24)とし、
前記角度設定用スリット(22)の前後方向の線を水平面上での水平基線(25)とし、
前記角度設定用スリット(22)の垂直面上の傾きは、右側に頭部側(17a)となるように前記柵(17)を前記まな板(20)の上面に載せた場合に、前記垂直基線(24)に対する傾斜角度(α)を、前記柵(17)の尻尾側(17b)に至るほど頭部側(17a)に傾くように順次大きくなるように形成し、
前記角度設定用スリット(22)の水平面上の傾きは、右側に頭部側(17a)となるように前記柵(17)を前記まな板(20)の上面に載せた場合に、前記水平基線(25)に対する傾斜角度(β)を、柵(17)の尻尾側(17b)に至るほど頭部側(17a)に傾くように順次大きくなるように形成している
ことを特徴とするサシミ用まな板。
【請求項6】
前記角度設定用スリット(22)の水平面上での前記傾斜角度(β)と同じ傾斜角度を持ち、前記包丁(1)の刃先をガイドするガイド溝(27)を各角度設定用スリット(22)に対応して前記まな板(20)の上面にそれぞれ凹設していることを特徴とする請求項5に記載のサシミ用まな板。
【請求項7】
前記柵(17)から出る魚肉汁であるドリップを前記まな板(20)の裏面に滴下させる穴(29)を該まな板(20)に多数穿孔していることを特徴とする請求項5に記載のサシミ用まな板。
【請求項8】
前記角度設定用スリット(22)の水平面上での前記傾斜角度(β)と同じ傾斜角度を持ち、前記包丁(1)の刃先をガイドするガイド溝(27)を各角度設定用スリット(22)に対応して前記まな板(20)の上面にそれぞれ凹設し、
前記柵(17)から出る魚肉汁であるドリップを前記まな板(20)の裏面に滴下させる穴(29)を該まな板(20)に多数穿孔していることを特徴とする請求項5に記載のサシミ用まな板。
【請求項1】
刺身の下ごしらえ用の柵(17)を載せて該柵(17)を包丁(1)で切って刺身を造るまな板(20)であって、
前記まな板(20)の上面に該まな板(20)の横方向の全長にわたって突条部(21)を一体的に形成し、
前記突条部(21)に前記包丁(1)の刃先を入れる角度設定用スリット(22)を、該突条部(21)の横方向に刺身1切れ分の厚みに対応させた間隔で多数形成し、
前記角度設定用スリット(22)の上下方向の線を垂直面上での垂直基線(24)とし、
前記角度設定用スリット(22)の前後方向の線を水平面上での水平基線(25)とし、
前記各角度設定用スリット(22)の垂直面上の傾きを、前記まな板(20)を正面から見て前記垂直基線(24)に対して時計回転方向または反時計回転方向に傾けた傾斜角度(α)にそれぞれ設定し、
前記各角度設定用スリット(22)の水平面上の傾きを、前記まな板(20)を上面から見て前記水平基線(25)に対して時計回転方向または反時計回転方向に傾けた傾斜角度(β)にそれぞれ設定している
ことを特徴とするサシミ用まな板。
【請求項2】
前記角度設定用スリット(22)の水平面上での前記傾斜角度(β)と同じ傾斜角度を持ち、前記包丁(1)の刃先をガイドするガイド溝(27)を各角度設定用スリット(22)に対応して前記まな板(20)の上面にそれぞれ凹設していることを特徴とする請求項1に記載のサシミ用まな板。
【請求項3】
前記柵(17)から出る魚肉汁であるドリップを前記まな板(20)の裏面に滴下させる穴(29)を該まな板(20)に多数穿孔していることを特徴とする請求項1に記載のサシミ用まな板。
【請求項4】
前記角度設定用スリット(22)の水平面上での前記傾斜角度(β)と同じ傾斜角度を持ち、前記包丁(1)の刃先をガイドするガイド溝(27)を各角度設定用スリット(22)に対応して前記まな板(20)の上面にそれぞれ凹設し、
前記柵(17)から出る魚肉汁であるドリップを前記まな板(20)の裏面に滴下させる穴(29)を該まな板(20)に多数穿孔していることを特徴とする請求項1に記載のサシミ用まな板。
【請求項5】
魚の胴部から尻尾側(17b)にかけて幅が狭くなり、厚みも薄くなる刺身の下ごしらえ用の柵(17)を載せて該柵(17)を包丁(1)で切って刺身を造るまな板(20)であって、
前記まな板(20)の上面に該まな板(20)の横方向の全長にわたって突条部(21)を一体的に形成し、
前記突条部(21)に前記包丁(1)の刃先を入れる角度設定用スリット(22)を、該突条部(21)の横方向に刺身1切れ分の厚みに対応させた間隔で多数形成し、
前記角度設定用スリット(22)の上下方向の線を垂直面上での垂直基線(24)とし、
前記角度設定用スリット(22)の前後方向の線を水平面上での水平基線(25)とし、
前記角度設定用スリット(22)の垂直面上の傾きは、右側に頭部側(17a)となるように前記柵(17)を前記まな板(20)の上面に載せた場合に、前記垂直基線(24)に対する傾斜角度(α)を、前記柵(17)の尻尾側(17b)に至るほど頭部側(17a)に傾くように順次大きくなるように形成し、
前記角度設定用スリット(22)の水平面上の傾きは、右側に頭部側(17a)となるように前記柵(17)を前記まな板(20)の上面に載せた場合に、前記水平基線(25)に対する傾斜角度(β)を、柵(17)の尻尾側(17b)に至るほど頭部側(17a)に傾くように順次大きくなるように形成している
ことを特徴とするサシミ用まな板。
【請求項6】
前記角度設定用スリット(22)の水平面上での前記傾斜角度(β)と同じ傾斜角度を持ち、前記包丁(1)の刃先をガイドするガイド溝(27)を各角度設定用スリット(22)に対応して前記まな板(20)の上面にそれぞれ凹設していることを特徴とする請求項5に記載のサシミ用まな板。
【請求項7】
前記柵(17)から出る魚肉汁であるドリップを前記まな板(20)の裏面に滴下させる穴(29)を該まな板(20)に多数穿孔していることを特徴とする請求項5に記載のサシミ用まな板。
【請求項8】
前記角度設定用スリット(22)の水平面上での前記傾斜角度(β)と同じ傾斜角度を持ち、前記包丁(1)の刃先をガイドするガイド溝(27)を各角度設定用スリット(22)に対応して前記まな板(20)の上面にそれぞれ凹設し、
前記柵(17)から出る魚肉汁であるドリップを前記まな板(20)の裏面に滴下させる穴(29)を該まな板(20)に多数穿孔していることを特徴とする請求項5に記載のサシミ用まな板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2012−34880(P2012−34880A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178371(P2010−178371)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【特許番号】特許第4672808号(P4672808)
【特許公報発行日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(510110518)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【特許番号】特許第4672808号(P4672808)
【特許公報発行日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(510110518)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]