説明

サトウキビ精脱システム及びトラッシュ除去用トロンメル

【課題】 風力による軽重差で選別することなくサトウキビ茎周囲からハカマを確実に剥離でき、風力選別機等の複雑な選別装置を別途設けることなく、サトウキビ精脱システム全体として安価に提供することができるサトウキビ精脱システム及びトラッシュ除去用トロンメルを提供する。
【解決手段】 所定長さに裁断されたサトウキビ茎を受け入れるホッパーと、このホッパーからサトウキビ茎を受け入れサトウキビのトラッシュを除去するトロンメルと、トラッシュを除去したサトウキビ茎を受け入れ梢頭部を除去する梢頭部選別区間と、この梢頭部選別区間から選別された梢頭部を裁断して家畜飼料とする家畜飼料製造部と、前記梢頭部選別区間で梢頭部を除去したサトウキビ茎を袋詰めする袋詰部とからなる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、サトウキビ茎周囲からハカマを確実に剥離でき、風力選別機等の複雑な選別装置を別途設けることなく、サトウキビ精脱システム全体として安価に提供することができるサトウキビ精脱システム及びトラッシュ除去用トロンメルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1及び2には、所定長さに裁断された裁断済みサトウキビを貯留するホッパ2と、トロンメル(回転筒)4と、風力選別機8とを備え、ホッパ2に貯留された裁断済みサトウキビをトロンメル4に供給し、このトロンメル4において裁断済み砂糖きび中の土砂等のトラッシュを除去すると共に、裁断済みサトウキビの茎からハカマを剥離し、この剥離ハカマを含む裁断済みサトウキビを風力選別機8に供給し、この風力選別機8において少なくとも裁断済みサトウキビの茎とこれよりも軽量のトラッシュとに選別するように構成したトラッシュ除去システムが記載されている。
【0003】
そして、この発明においては、大石・根槐除去装置による大石および根の除去工程と、続く回転式トロンメル装置による土砂類の除去およびハカマの剥離工程と、風力選別機8による健全茎の選別工程とで構成されている旨説明されている。
【0004】
また前記回転式トロンメル装置は傾斜状に軸支されたトロンメル(スクリーン面が円筒形、角筒形、円錐台形、または角錐形をなすスクリーン)を備え、これを回転させることにより、被分離物をトロンメル内が周方向および軸方向低所側へ移動させつつふるい分けられる旨説明されている。
【0005】
さらに、前記風力選別機は送風ノズル9aから離間する方向(重いものから軽いもの)順に健全茎のための第1シュート8d、梢頭部等のための第2シュート8e、および枯れ枝等のための第3シュート8fが設けられている旨説明されている。
【0006】
しかしながら、この発明においては、回転式トロンメル装置4による土砂類の除去およびハカマの剥離工程の他に、大石・根槐除去装置2による大石および根の除去工程及び風力選別機8による健全茎の選別工程が別途必要であり、且つこれらの大石・根槐除去装置及び風力選別機8の構造が極めて複雑である。
【0007】
また、前記回転式トロンメル装置はスクリーン面が円筒形、角筒形、円錐台形、または角錐形をなすスクリーンを備えたトロンメルを回転させることにより、被分離物をトロンメル内で周方向および軸方向低所側へ移動させつつふるい分けられるようにしているため、スクリーン面ではサトウキビ茎周囲のハカマを充分剥離できないと共に、トラッシュである石や繊維がスクリーンの目に詰まる等の欠点がある。
【0008】
さらに、前記風力選別機は送風ノズル9aから離間する方向(重いものから軽いもの)順に健全茎のための第1シュート8d、梢頭部等のための第2シュート8e、および枯葉等のための第3シュート8fが設けられているため、このような風力による選別は軽重差によるため、例えば梢頭部が第1シュート8dに混入したり、枯葉等が第2シュート8eに混入したりする不具合が生じる。
【0009】
また、特許文献3には、基端側を支点にして左右旋回と上下回動が可能に車体に支持されたアームに、その先端側から基端側に梢頭部を搬送する搬送手段を配置し、前記アームの先端側に、梢頭部の下端を切断するカッターを設けると共に該カッターより前方に逆八の字状に開いたかき集め手段を配置し、車体には、前記基端側に移送されて来た梢頭部を、細断装置側に取り込む取り込み手段を設けたサトウキビ梢頭部の収穫装置及び収穫方法が記載されている。
【0010】
そして、分蜜糖や黒砂糖の原料となるサトウキビの梢頭部を収穫する装置及び方法であって、サトウキビの梢頭部のみを収穫可能とすることで、牛馬などの飼料を大量に確保可能とし、しかも梢頭部が砂糖の原料となる茎部に混入するのを抑制する旨説明されている。
【0011】
さらに、特許文献4には、あらかじめ略一定長さに切断されたサトウキビ切断片を略整列させて搬送する搬送手段と、同搬送手段により搬送されてくるサトウキビ切断片の内、梢頭部だけを他のサトウキビ切断片である健全茎部から選別する選別手段とを装備し、選別手段は一対の挟持体を具備し、両挟持体は梢頭部を挟持可能であるが健全茎部は挟持不可能な挟み角を形成する挟み角形成開始位置と、梢頭部の挟持が解除される開放角形成開始位置とを有して、開放角形成開始位置にて開放される梢頭部の放出落下位置と、開放角形成開始位置に至る前に放出される健全茎部の放出落下位置とを離隔させることができるようにしたサトウキビの梢頭部選別装置が記載されている。
【0012】
そして、この梢頭部選別装置において、梢頭部と健全茎部とを略100%の精度で選別することができる旨説明されている。
【0013】
しかしながら、これらの装置は梢頭部選別のために別途装置を必要とし構造が極めて複雑であり、サトウキビ精脱システム全体として安価に提供することができない。
【0014】
特許文献1 特許第3591757号公報
特許文献2 特開2002−028000号公報
特許文献3 特開平11−220927号公報
特許文献4 特開2001−300428号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、風力による軽重差で選別することなくサトウキビ茎周囲からハカマを確実に剥離でき、風力選別機等の複雑な選別装置を別途設けることなく、サトウキビ精脱システム全体として構成が極めて簡単で安価に提供することができるサトウキビ精脱システム及びトラッシュ除去用トロンメルを提供することにある。
【課題を解決する手段】
【0016】
請求項1の発明は、所定長さに裁断されたサトウキビ茎を受け入れるホッパーと、このホッパーからサトウキビ茎を受け入れサトウキビのトラッシュを除去するトロンメルと、トラッシュを除去したサトウキビ茎を受け入れ梢頭部を除去する梢頭部選別区間と、この梢頭部選別区間から選別された梢頭部を裁断して家畜飼料とする家畜飼料製造部と、前記梢頭部選別区間で梢頭部を除去したサトウキビの健全茎を袋詰めする袋詰部とからなる精脱システムを提供するものである。
【0017】
この発明においては、風力による軽重差で選別することなくサトウキビ茎周囲からハカマをトロンメルによって剥離し、風力選別機等の複雑な選別装置を別途設けることなく、また梢頭部選別のために別途複雑な選別装置を必要とせず、サトウキビ精脱システム全体として安価に提供することができるサトウキビ精脱システムを提供することができる。
【0018】
請求項2の発明は、トラッシュ除去用トロンメルが内面平滑な樹脂材料で形成され、前記トロンメルにトラッシュの排出方向へ送風する送風機を設け、該トロンメルをサトウキビ茎の排出方向へ3.2〜8.0度の角度で低くなるよう傾斜状に設けると共に、内面にサトウキビの排出配列方向に平行なブレードを設け、このブレードのサトウキビ接触辺にサトウキビハカマを剥取する波型刃を形成したサトウキビのトラッシュ除去用トロンメルを提供するものである。
【0019】
この発明においては、サトウキビ茎周囲のハカマを確実に剥離できると共に、トラッシュである石や繊維がトロンメルに目に詰まりを生じることなく、ハカマや石等のトラッシュを略完全に除去することができるトラッシュ除去用トロンメルを提供することができる。前記トロンメルの排出方向への傾斜角度が3.2度未満であるとサトウキビ茎を迅速に排出方向へ移行することができず、8.0度を超えると排出方向への移行速度が速すぎハカマを充分剥離することができない。
【0020】
請求項3の発明は、前記ブレードの立上幅が5〜80mmであり、波型刃先端が湾曲形状をなし、波型刃のピッチが5〜50mmで、波型刃の深さが3〜15mmである前記請求項2記載のトラッシュ除去用トロンメルを提供するものである。
【0021】
この発明においては、サトウキビ茎周囲のハカマを確実に剥離できると共に、サトウキビの健全茎の両端部を傷つけないトラッシュ除去用トロンメルを提供することができる。前記立上幅が5mm未満であるとサトウキビ茎のハカマを確実に剥離することができず、80mmを超えるとサトウキビ茎のひっかかり幅が大きすぎ逆にサトウキビ茎のハカマを確実に剥離することができないと共に、健全茎の周面や切断両端面に傷が付きやすくなり、サトウキビ茎の短期腐敗を招く。また、波型刃のピッチが5〜50mmの範囲外、波型刃の深さが3〜15mmの範囲外では、サトウキビ茎のハカマを確実に剥離することができない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。図1はサトウキビ精脱システムの概略全体平面図であり、図2は図1のI−I線視図、図3は図1のII−II線視図、図4は図1のIII−III線視図である。
【0023】
ハーベスターにより所定長さに裁断されたサトウキビ茎A1(図5)はホッパー1に貯留される。このサトウキビ茎A1はホッパー1より送り装置2を介してサトウキビのトラッシュを除去するトロンメル3に間欠的に順次供給される。このトロンメル3において、サトウキビの健全茎A2とトウキビ茎A1の周囲に付着するハカマB(図6)等のトラッシュを除去する。
【0024】
トロンメル3は、図7に示すように筒状態の回転体であり、内面平滑な樹脂材料、例えば、塩化ビニールであり、前記トロンメル3にトラッシュの排出方向(矢印X)へ送風する送風機4を設け、該トロンメルをサトウキビ茎の排出方向へ約4.5度の角度Yで低くなるよう傾斜状に設けている。この角度Yは3.2〜8.0度の範囲で低くなるよう傾斜状に設けることができる。好ましくは4.0〜6.0度の範囲である。上記内面平滑な樹脂材料、例えば、塩化ビニールとした理由は、サトウキビ茎の両端切断部A4、A4(図6)がつぶれないようにしたもので、サトウキビ茎の両端切断部A4、A4が金属面等との接触(トロンメルの回転によりサトウキビ茎A1が上方から下方に落下したときに生ずる)によりつぶれてその部分からの腐敗の進行が極めて速くなる。
【0025】
図8に示す如く、このトロンメル3の内周面にはサトウキビ茎A1の排出配列方向に平行なブレード5・・・を設け、このブレード5・・・のサトウキビ接触辺にサトウキビハカマBを剥取する波型刃Mを形成している。
【0026】
前記ブレード5・・・の立上幅Lは5〜80mmで、波型刃M先端が湾曲形状Nをなし、波型刃MのピッチOが5〜50mmで、波型刃Mの深さPが3〜15mmである。好ましくは、前記立上幅Lは15〜50mmで、波型刃M先端はサトウキビ茎の節の湾曲A3(図6)に近いか、それより小さい湾曲形状Nとなしており、波型刃MのピッチOは10〜20mmで、波型刃Mの深さPが5〜10mmである。また、ブレード5・・・は、トロンメルの回転によりサトウキビ茎A1が上方から下方に落下したときに生ずる金属面(ブレード)との接触を防止するため回転方向に4列以上形成しない方が好ましい。
【0027】
トロンメル3で除去されたハカマB等のトラッシュは第1送風機4及び第2送風機7(図2)の風力によりトラッシュ排出場6へ排出される。一方トラッシュが除去されたサトウキビの健全茎A2・・・と梢頭部C(図9)は送り装置8を介して梢頭部選別区間9(コンベア)に送られる。
【0028】
梢頭部選別区間9では、サトウキビの健全茎A2・・・を最終送り装置10へ送る一方、梢頭部Cを人手により選別して梢頭部送り装置11へ供給する。この梢頭部選別区間から選別された梢頭部Cは梢頭部送り装置11を介して家畜飼料製造部12へ送られ、そこで梢頭部Cの裁断等を行い家畜の飼料を製造する。これにより、このシステムと一体的に梢頭部Cの飼料化、食品化が可能となる。製造された家畜飼料はトラック13の荷台に積まれ搬送される。
【0029】
一方、サトウキビの健全茎A2・・・は最終送り装置10を介して袋詰部14へ送られ、そこで袋詰されてクレーン(図示せず)によりトラックの荷台に積み込まれる。2つの袋詰枠体14、14は内部に袋16、16設け、例えば、図1に示すように、底部にレール15、15を設けて移動可能に形成し、交互に袋詰めできるようにしている。
【発明の効果】
【0030】
この発明においては、風力による軽重差で選別することなくサトウキビ茎周囲からハカマを確実に剥離でき、風力選別機等の複雑な選別装置を別途設けることなく、また梢頭部選別のために別途複雑な選別装置を必要とせず、サトウキビ精脱システム全体として安価に提供することができる。
【0031】
また、トラッシュ除去用トロンメルにより、サトウキビ茎周囲のハカマを確実に剥離できると共に、トラッシュである石や繊維がトロンメルに目に詰まりを生じることなく、ハカマや石等のトラッシュを略完全に除去することができる。
【0032】
また、トロンメルを内面平滑な樹脂製(塩化ビニール)としたので、サトウキビの健全茎の両端切断部をつぶすことなく、そこからの腐敗の進行を抑制することができる。
【0033】
さらに、本発明はサトウキビ茎からトラッシュを除去するに加え、梢頭部を裁断して家畜飼料を製造する家畜飼料製造部を設けたので、一貫して簡略なサトウキビの精脱システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】 サトウキビ精脱システム全体の概略説明図
【図2】 図1のI−I線視図
【図3】 図1のII−II線視図
【図4】 図1のIII−III線視図
【図5】 ハカマの付着した状態を示すサトウキビ茎の写真
【図6】 ハカマを除去した状態を示すサトウキビ茎の写真
【図7】 トラッシュ除去用トロンメル一部断面説明図
【図8】 ブレード部分拡大図
【図9】 サトウキビ梢頭部の写真
【符号の説明】
1 ホッパー
3 トロンメル
4 送風機
5 ブレード
6 トラッシュ排出場6
9 梢頭部選別区間
10 最終送り装置10
11 梢頭部送り装置
12 家畜飼料製造部
14 袋詰枠体
15 袋詰枠体のレール
16 袋
A1 サトウキビ茎
A2 サトウキビの健全茎
A3 サトウキビ茎の節の湾曲
A4 サトウキビ茎の両端切断部
B ハカマ
C 梢頭部
X トラッシュの排出方向
Y トロンメルのサトウキビ茎排出方向への角度
L ブレードの立上幅
M 波型刃
N 波型刃先端の湾曲形状
O 波型刃のピッチ
P 波型刃の深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さに裁断されたサトウキビ茎を受け入れるホッパーと、このホッパーからサトウキビ茎を受け入れサトウキビのトラッシュを除去するトロンメルと、トラッシュを除去したサトウキビ茎を受け入れ梢頭部を除去する梢頭部選別区間と、この梢頭部選別区間から選別された梢頭部を裁断して家畜飼料とする家畜飼料製造部と、前記梢頭部選別区間で梢頭部を除去したサトウキビの健全茎を袋詰めする袋詰部とからなる精脱システム
【請求項2】
トラッシュ除去用トロンメルが内面平滑な樹脂材料で形成され、前記トロンメルにトラッシュの排出方向へ送風する送風機を設け、該トロンメルをサトウキビ茎の排出方向へ3.2〜8.0度の角度で低くなるよう傾斜状に設けると共に、内面にサトウキビの排出配列方向に平行なブレードを設け、このブレードのサトウキビ接触辺にサトウキビハカマを剥取する波型刃を形成したサトウキビのトラッシュ除去用トロンメル。
【請求項3】
前記ブレードの立上幅が5〜80mmであり、波型刃先端が湾曲形状をなし、波型刃のピッチが5〜50mmであり、波型刃の深さが3〜15mmである前記請求項2記載のサトウキビのトラッシュ除去用トロンメル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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