説明

サプリメントシート

【課題】 当初準備した栄養素の残存量が実質的に向上するサプリメントシート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 サプリメントシート11は矩形シート形状の基材シート13の一方面にビタミンCを含む栄養素保持層15が全面に形成されている。基材シート13はPETフィルムよりなり、栄養素保持層15としてビタミンCが熱可塑性樹脂をバインダーとして基材シート13に塗布されている。熱可塑性樹脂は融点がビタミンCの分解温度より低く、塗布に水等を使用しないため、基材シート13に残存するビタミンCの量が当初より減少しない。使用時にあっては、弁当箱等の食品の上にサプリメントシート11を配置すると、栄養素保持層15のビタミンCが溶解して食品に浸透し、食品を食することによって手軽にビタミンCを取得することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サプリメントシートに関し、特に弁当箱等に食品とともに収容して使用するサプリメントシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビタミンC等の栄養素は人間にとって必要であるが、体内で生成できないものもあるため、通常食品を通して取得する。そのため、弁当箱等にはビタミンC等を含む果物や野菜等が主食とともに入れられている。
【0003】
一方、このような栄養素を積極的に補給する目的で、特許文献1に示されているように樹脂シートにビタミンC等の栄養素を保持させ、これを食材に転写させるように使用するサプリメントシートが提案されている。
【特許文献1】特開2007−008835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の栄養素の取得方法では、日保ちの良くない高価な果物等を購入する必要があるため、日常的であるとは言えない。又、栄養素を錠剤にしたものもあるが、比較的高価であり、又、薬のように意識的に服用する必要があり、食品を通して取得する本来的なものではない。
【0005】
そこで、上記のようなサプリメントシートが提案されているが、これによるとデンプンが栄養素を保持させるためのバインダーとして使用されている。しかし、この場合、デンプンを溶かすために温水を必要とする。そして、これに栄養素を混合して基材シートに塗布して高温で乾燥させる必要がある。一般に、栄養素は水や高温で分解し易い性質を有しているため、当初に混合した栄養素のうち基材シートに保持される量が実質的に低減してしまい、栄養素摂取の面とコスト的な面からも不利となってしまう。
【0006】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、当初準備した栄養素の残存量が実質的に向上するサプリメントシート及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、サプリメントシートであって、
基材シートと、基材シートの少なくとも一方面に形成され、少なくとも栄養素を含む栄養素保持層とを備え、栄養素保持層の融点は、栄養素の分解温度より低いものである。
【0008】
このように構成すると、栄養素の分解を少なくした状態で基材シートに栄養素を保持できる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、栄養保持層は、安息香酸、安息香酸ナトリウム、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、脂肪酸のエステル化合物からなる一群から選択されたバインダーよりなるものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、栄養保持層は、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエステル脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、サボニンからなる一群から選択されたバインダーよりなるものである。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の構成において、基材シートは、合成樹脂フィルム、合成樹脂不織布、紙からなる一群から選択されたものである。
【0012】
このように構成すると、食品の蒸気等が基材シートに加わると、ビタミンCの溶解及び放出が早まる。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、栄養素は、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、クエン酸からなる一群から選択されたものである。
【0014】
請求項6記載の発明は、サプリメントシートの製造方法であって、栄養素と、栄養素の分解温度より低い融点を有する熱可塑性樹脂とを混合して混合物を生成する工程と、混合物を基材シートに対して、分解温度未満の温度で且つ融点以上の温度で塗布する工程とを備えたものである。
【0015】
このように構成すると、栄養素が分解されることなく基材シートに塗布される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、栄養素の分解を少なくした状態で基材シートに栄養素を保持できるので、栄養素の残存量に対して使用量が実質的に抑えられるのでコスト的に有利なサプリメントシートとなる。
【0017】
請求項2及び請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、これらの栄養保持層はバインダーに適しており、また食品衛生上にも問題を生じるものでないため、信頼性の高いサプリメントシートとなる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、ビタミンCの溶解及び放出が早まるため、栄養素の取得効率がより高まる。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、熱により分解し易い性質を有するこれらの栄養素を安定的に保持することが可能となる。
【0020】
請求項6記載の発明は、栄養素が分解されることなく基材シートに塗布されるので、栄養素の残存量に対して使用量が実質的に抑えられるのでコスト的に有利なサプリメントシートを製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1はこの発明の第1の実施の形態によるサプリメントシートの外観形状を示した平面図であり、図2は図1で示したサプリメントシートの概略断面構造を示した図である。
【0022】
これらの図を参照して、サプリメントシート11は矩形シート形状を有しており、ポリエチレンテレフタレート(PET)よりなる基材シート13の一方面に、栄養素となるビタミンC(L−アスコルビン酸)を含んだ栄養素保持層15が形成されている。栄養素保持層15として、ビタミンC単体を基材シート13にコーティングしても良いが、基材シート13の特性によっては剥がれ易いものとなる。そのため、この実施の形態にあっては、ビタミンCを粉末にして、例えばソルビタン脂肪酸エステルよりなる熱可塑性樹脂をバインダーとしてこれに混合させたものを、栄養素保持層15として基材シート13に塗布し自然冷却させている。これによって熱可塑性樹脂は硬化し、栄養素と共に基材シート13に固着されることになる。
【0023】
このようにしてサプリメントシート11を形成すると、水を使用しないためビタミンCが分解する虞がない。又、バインダーとするソルビタン脂肪酸エステルの融点は160℃以下であり、ビタミンCの分解温度の170℃より低い。したがって、ソルビタン脂肪酸エステルを溶かした混合状態でもビタミンCを分解させる虞がない。又、ソルビタン脂肪酸エステルは食品衛生上も問題がないため、後述するようなサプリメントシート11の使用に際しても衛生上なんら問題はない。
【0024】
尚、バインダーはこのように融点が栄養素の分解温度より低いもので食品衛生上も問題がないものであれば、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエステル脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、サボニン等でも良い。尚、バインダーの融点の下限は使用上の観点から言えば40℃程度であることが好ましい。
【0025】
ここで、上記のサプリメントシートにおいてビタミンCの残存量の効果を評価するために、以下の実施例1及び2に示すサプリメントシートを準備し、ビタミンCの残存量を測定した。又、比較対照のために、特許文献1に示されている比較例1及び2に示すサプリメントシートも準備して同様にビタミンCの残存量を測定した。
【0026】
まず、実施例1及び2並びに比較例1及び2のサプリメントシートの構成と試験方法について説明する。
【0027】
(基材シート:各例について共通)
レーヨン系樹脂よりなる不織布(目付け:300g/m)を10cm×10cmの大きさとなるように準備した。
【0028】
(実施例1)
バインダーとなるソルビタン脂肪酸エステル(日光ケミカルズ株式会社製、製品名:NIKKOL SL−10)を500g用意し、これを80℃で溶解させてビタミンC(扶桑化学工業株式会社製、製品名:ビタミンC(L−アスコルビン酸))を500g投入する。80℃で保持した状態でミキサーによって1時間攪拌したものを、80℃の塗布温度で不織布の片面に2g(ビタミンCの計算量は1g)を「押出コート法」で塗布した。
【0029】
(実施例2)
バインダーとなるソルビタン脂肪酸エステルを500g用意し、これを80℃で溶解させてビタミンCを投入する。80℃で保持した状態でミキサーで1時間攪拌したものを、150℃の塗布温度で不織布の片面に2g(ビタミンCの計算量は1g)を「押出コート法」で塗布した。
【0030】
(比較例1)
バインダーとなるデンプンを100g及びビタミンCを100g用意し、これを95℃で800mlの温水に溶解させる。95℃で保持した状態で加熱スターラーで1時間攪拌したものを、不織布の片面に10g(ビタミンCの計算量は1mg)を滴下し、その後常温で5時間乾燥させた。
【0031】
(比較例2)
バインダーとなるデンプンを100g及びビタミンCを100g用意し、これを95℃で800mlの温水に溶解させる。95℃で保持した状態で加熱スターラーで1時間攪拌したものを、不織布の片面に10g(ビタミンCの計算量は1mg)を滴下し、その後200℃の大気中で20分間乾燥させた。
【0032】
(評価方法)
各例の不織布から5cm×5cmの試料を作成し、実際に残存しているビタミンCの残存量を測定した。尚、この測定は、財団法人日本食品分析センターにてヒドラジンで誘導体化した後、高速クロマトグラフ法によりビタミンCを定量することによって行った。そして、測定された残存量の、この試料に当初塗布したビタミンCの計算値に対する比率を算出して評価した。
【0033】
試験結果を下記の表に表す。
【表1】

【0034】
実施例1及び実施例2共にビタミンCの残存比率が100%であり、これは当初塗布したビタミンCが全く分解等せずに試料に残存していることを意味し、サプリメントシートとして好ましいものである。
【0035】
比較例1では常温乾燥させているがビタミンCの残存比率が80%であり、かなりのビタミンCが分解等によって消失したことを示している。又、常温での乾燥は5時間を要するが、これは実際的な製品の製法としてはまず採用することは困難と言える。
【0036】
比較例2では常温乾燥ではないため実用化は可能であるが、ビタミンCの残存比率が50%と比較例1より更に低いので、コスト面から不利な製法であると言える。
【0037】
尚、ビタミンCをバインダーに混合させる際に、香料等の添加剤を加えれば、香りの効果も生じることになり、より好ましいものとなる。
【0038】
又、ビタミンCを含む栄養素保持層15の基材シート13に対する塗布の方法は、グラビア、オフセット、スクリーン、ナイフ、コンマ、どぶ付け、噴霧(スプレー)等の方法が考えられるが、熱可塑性樹脂の融点を考慮して基材シート13に固定できるものであれば、何れの方法でも良い。
【0039】
更に、上記の実施の形態にあっては、栄養素保持層15には栄養素としてビタミンCを含むように構成しているが、その他ビタミン類B1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12やマグネシウム、クエン酸、コラーゲン、ペプチド、酢、コエンザイムQ10、ドコサヘキサ塩酸(DHA)、カルシウム、イソフラノボイド、アミノ酸、ロイヤルゼリー、カプサイシン、ポリフェノール、カルニチン、カモミール、にがり等の他の栄養素を加えても良いし、これらのいずれかを栄養素の単体として、栄養素保持層15に含むように構成しても良い。いずれの栄養素であっても、その分解温度より低い融点を有する熱可塑性樹脂をバインダーとして使用するようにすれば同様の効果を奏する。
【0040】
更に、上記の実施の形態にあっては、基材シート13はPETフィルムを用いているが、これに代えて、紙、合成樹脂不織布、織布やアルミ箔等又はこれらを貼り合わせたものを基材シート13として用いても良い。ここでPETフィルムは、通気性が低いため食品等の蒸気が液化することによりビタミンCの溶解度が高まる利点がある。一方、基材シート13として紙、不織布や織布を用いると、ビタミンCの付着量を大きくすることができ、又その付着性も良好となる。
【0041】
図3は図1で示したサプリメントシートの使用状態を示した概略断面図である。
【0042】
図を参照して、弁当箱17には食品18が収納されており、その上面を覆うようにサプリメントシート11が設置されている。すると、サプリメントシート11の下面に形成されている栄養素保持層15から、ビタミンCが徐々に溶解して食品18内に浸透する。したがって、食品18を食することによって、これに浸透したビタミンCを容易に取得することが可能となる。
【0043】
尚、食品18が温められている場合には、そこから発生する蒸気がサプリメントシート11の下面で結露することにより水滴となる。この結果、水溶性が高いビタミンCは迅速に溶解して食品18内に浸透することになる。これによって、サプリメントシート11からのビタミンCの供給効果がより高まることになる。
【0044】
又、図3にあっては、サプリメントシート11は食品18の上面に配置されているが、食品18の種類によっては食品18を収容する前にサプリメントシート11を敷設するように構成しても良い。この場合、サプリメントシート11の栄養素保持層15が上面となるように敷設することが好ましい。更に、サプリメントシートを弁当箱内の食品の味移りを防ぐ仕切り(バラン)や、食品カップ状に成形して使用しても良い。
【0045】
尚、上記の実施の形態では、栄養素保持層は基材シートの一方面に形成されているが、両方面に形成しても良い。又、唐揚げ等の油を多く含む食品に対しては、水溶性ビタミンに代えて油溶性ビタミンを用いたり、水溶性ビタミンと油溶性ビタミンとを混合して用いることもできる。
【0046】
又、上記の実施の形態では、栄養素保持層は基材シートの一方面の全面に形成されているが、一方面に対して部分的に形成しても良い。
【0047】
更に、上記の実施の形態では、基材シートは矩形形状を有しているが、他の形状であっても良く、又、切れ目またはミシン目等を形成しておき、必要に応じて切り取って使用するように構成しても良い。
【0048】
更に、上記の実施の形態では、基材シートとしてPETフィルムを用いているが、このフィルムに通気孔を形成しても良い。又、PETフィルム等に紙等を貼り合わせて、水分保持層を設けたものを使用しても良い。尚、基材シートにPETフィルム等の樹脂フィルムを用いた場合は、樹脂フィルムに栄養素保持層とは別の印刷層(例えば、アニメキャラクターや動物の図柄等)を鮮明に印刷することができ、意匠性が高まり付加価値が向上する。
【0049】
更に、上記の実施の形態では、栄養素保持層の色合い等には言及していないが、栄養素に色を付けておき、一方基材シートを透明にしておくと、栄養素の拡散程度によってサプリメントシートの色合いが変化するため摂取の状況が判明して使用勝手が向上する。
【0050】
更に、上記の実施の形態では、栄養素保持層の厚みは一定としているが、栄養素保持層の厚みは必ずしも一定である必要は無く、段階的に厚みを変化させても良く、あるいは部分的に厚みを変化させても良い。
【0051】
更に、上記の実施の形態では、ビタミンCはL−アスコルビン酸としているが、ビタミンCとしてL−アスコルビン酸ナトリウムにも同様に適用でき同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の第1の実施の形態によるサプリメントシートの外観形状を示した平面図である。
【図2】図1で示したサプリメントシートの概略断面構造を示した図である。
【図3】図1で示したサプリメントシートの使用状態を示した概略断面図である。
【符号の説明】
【0053】
11…サプリメントシート
13…基材シート
15…栄養素保持層
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サプリメントシートであって、
基材シートと、
前記基材シートの少なくとも一方面に形成され、少なくとも栄養素を含む栄養素保持層とを備え、
前記栄養素保持層の融点は、前記栄養素の分解温度より低い、サプリメントシート。
【請求項2】
前記栄養保持層は、安息香酸、安息香酸ナトリウム、カリウムミョウバン、アンモニウムミョウバン、脂肪酸のエステル化合物からなる一群から選択されたバインダーよりなる、請求項1記載のサプリメントシート。
【請求項3】
前記栄養保持層は、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエステル脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン、サボニンからなる一群から選択されたバインダーよりなる、請求項1記載のサプリメントシート。
【請求項4】
前記基材シートは、合成樹脂フィルム、合成樹脂不織布、紙からなる一群から選択された、請求項1から請求項3のいずれかに記載のサプリメントシート。
【請求項5】
前記栄養素は、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、クエン酸からなる一群から選択された、請求項1記載のサプリメントシート。
【請求項6】
サプリメントシートの製造方法であって、
栄養素と、前記栄養素の分解温度より低い融点を有する熱可塑性樹脂とを混合して混合物を生成する工程と、
前記混合物を基材シートに対して、前記分解温度未満の温度で且つ前記融点以上の温度で塗布する工程とを備えた、サプリメントシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−153390(P2009−153390A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−331721(P2007−331721)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000222141)東洋アルミエコープロダクツ株式会社 (106)
【Fターム(参考)】