説明

サラシア属植物の葉の粉砕物を配合した油脂加工食品

【課題】 長期間にわたって、香味には影響なく、安定して鮮やかな緑色を付与したマヨネーズ、ドレッシング等の油脂加工食品を提供すること。
【解決手段】 サラシア属植物の葉の粉砕物を配合したことを特徴とする油脂加工食品であり、サラシア属植物が、サラシア レティキュラータ(Salacia reticulata)あるいはサラシア オブロンガ(Salacia oblonga)であり、油脂加工食品が、マヨネーズ又はドレッシングである緑色油脂加工食品であり、香味に影響を与えることがなく、鮮やかな緑色を呈し、品質の劣化が認められず、安定した品質を保持するマヨネーズ等の油脂加工食品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サラシア属植物の葉の粉砕物を配合した油脂加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
油脂加工食品として、マヨネーズ、ドレッシング等があるが、そのなかでマヨネーズは、食酢に卵黄を添加し、攪拌を行いながら油脂を徐々に加えて均質に乳化することにより製造されている。これは、卵黄に含まれるタンパク質およびレシチンの乳化力を利用した方法であり、油脂の含有量は通常70〜90%を占めている。
【0003】
一方、マヨネーズの劣化は、油の酸化変敗(酸敗)により乳化破壊を生じ、油分の分離や、さらにそれらに伴う風味の劣化を内容としている。この劣化を防止するための劣化防止剤として、トコフェロール、ブチルヒドロキシアンニソール(BHA)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)などが用いられている。また、特許文献1には、茶葉ポリフェノールのマヨネーズへの添加による酸化防止について開示している。
【0004】
また最近に至り、マヨネーズ自体に種々の機能を付与した試みもなされている。例えば、コレステロールの上昇を抑えることを目的として、茶葉粉末、又は茶のエキスとオリゴ糖を混合して攪拌した茶入りマヨネーズの製造方法が特許文献2に、また、耐熱性を付与したマヨネーズの開発のためにキトサンを含有した製品について特許文献3に記載されている。
【0005】
マヨネーズやドレッシングなどの油脂加工食品が色鮮やかな緑色であれば、その付加価値も向上すると考えられる。実際に、緑茶葉を利用した緑色のマヨネーズの開発を目的とした試みがなされている(特許文献4および5)。
【特許文献1】特開平04−020262号公報
【特許文献2】特開平11−137210号公報
【特許文献3】特開平04−053469号公報
【特許文献4】特開2001−192695号公報
【特許文献5】特開2002−212589号公報
【0006】
鮮やかな緑色は健康を意味する色調であり、視覚の点からも鮮やかな緑色を呈する食品のニーズが高いものである。しかしながら、マヨネーズに対する緑茶葉による緑色付与は、緑茶葉の香りや緑茶葉独特の渋みが強く、嗜好の点から問題があった。また、長期間置いておくと褐色化してしまい、この点からも問題であった。
したがって、長期間にわたって、香味には影響なく、安定して鮮やかな緑色をマヨネーズに付与できる素材が強く求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の現状に鑑み、長期間にわたって、香味には影響なく、安定して鮮やかな緑色を付与したマヨネーズを始めとする、油脂加工食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、本発明者らは、色調が鮮やかな黄緑であること、長期間保存したとしても褪変しにくいこと、香が強すぎないこと、味の収斂性が高濃度でも弱いこと、乳化性があること、等の視点で種々の植物葉を評価した。
その結果、サラシア属植物の葉の粉砕物を混合して製造した油脂加工食品は、緑色が明るく鮮やかであり、紫外線に対して退色せず、香味性に優れていることを見出した。
さらに、サラシア属植物の葉には乳化性があるため、添加する油脂量が少なくてもマヨネーズ本来の物性を有した製品の製造が可能であることを見出すことによって、本発明を完成させるに至った。
【0009】
したがって、本発明は、その基本的態様としてサラシア属植物の葉の粉砕物を配合したことを特徴とする油脂加工食品である。
【0010】
具体的には、サラシア属植物が、サラシア レティキュラータ(Salacia reticulata)あるいはサラシア オブロンガ(Salacia oblonga)であることを特徴とする上記の緑色油脂加工食品である。
【0011】
より具体的な態様として、本発明は、油脂加工食品が、マヨネーズ又はドレッシングであることを特徴とする上記の緑色油脂加工食品であり、したがって、最も具体的な本発明は、サラシア属植物の葉の粉砕物を配合したことを特徴とするマヨネーズ又はドレッシング等の緑色油脂加工食品である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、香味に影響を与えることがなく、鮮やかな緑色を呈したマヨネーズ等の油脂加工食品を製造することができる。本発明によって、マヨネーズの製造の際に、食用酸の使用量の拡大が図れ、さらには油脂の使用量の縮小が可能となり、消費者の嗜好に対応したマヨネーズの多様化製品の開発につながる利点を有している。
また、本発明により得られた緑色を呈したマヨネーズ等の油脂加工食品は、従来の茶葉粉末等を配合した製品に比較して品質の劣化が認められず、安定した品質の製品を提供できる利点を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は上記したように、サラシア属植物葉の粉砕物を配合したことを特徴とする油脂加工食品である。すなわち、本発明は、マヨネーズやドレッシングなどの油脂加工食品を製造するにあたり、サラシア属植物の葉を乾燥して、粉砕したものを混合することを特徴とする緑色油脂加工食品である。
【0014】
本発明において使用するサラシア属植物としては、特に、サラシア レティキュラータ(Salasia reticulata)およびサラシア オブロンガ(Salasia oblonga)の葉が適している。
また、粉砕物は微粉砕物でも、荒粉砕物でもよい。すなわち、微粉砕物は100メッシュの篩を通過するごく微粉末であり、荒粉砕物は目視で葉の切片が確認できる程度の、約10mm四方のものであり、本発明にあってはこの範囲内におけるどの粉砕物を使用しても、目的とする緑色油脂加工食品を製造することができる。
また、本発明において、サラシア属植物の葉の粉砕物と共に、サラシア属植物の根や幹などの粉砕物が混合していてもよい。
【0015】
本発明においては、油脂加工食品の製造の際に、サラシア属植物葉の粉砕物を添加して製造してもよいし、予めサラシア属植物葉を油脂に浸出することによって緑色油脂を調製し、それを用いて油脂加工食品を製造してもよい。
この場合の油脂としては、食用油脂としてのサラダオイル、ゴマ油、綿実油、オリーブ油、コーン油、大豆油、ナタネ油、落下生油、エゴマ油、紅花油、キャノーラ油、米油、亜麻仁油などを用いることができる。
【0016】
本発明でいう油脂加工食品とは、種々のものを挙げることができるが、特に、マヨネーズ、ドレッシングなどの油脂加工食品が好ましく包含される。
【0017】
本発明が提供する油脂加工食品において、添加させるサラシア属植物の葉の粉砕物以外に使用する原料としては、通常のマヨネーズやドレッシングの製造に用いられるものであればどのようなものでもよく、例えば、卵、油脂、食酢、食塩、香辛料等が用いられる。
【0018】
サラシア属植物の粉砕物は、サラシア属植物の葉を採取後、よく洗浄した後、乾燥させたものを用いるのがよい。乾燥は、自然乾燥でも人工乾燥でも構わないが、人工乾燥の場合には、過度に高温になることを避ける必要がある。乾燥温度としては、120℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下であることが望ましい。
乾燥した葉を粉砕することにより、添加する粉砕物を調製する。この粉砕は、通常の乾燥粉砕機での粉砕でも支障はないが、目的とする粉砕物の大きさによって粉砕法を選択することができる。例えば、微粉末を得るにはボールミル粉砕機、荒粉砕物を得るには荒粉砕専用機などを挙げることができる。得られた粉砕物は、気流式殺菌機で殺菌後、篩にかけた後、金属探知等により夾雑物の除外等を行ったうえで、使用に供せられる。
かくして得られたサラシア属植物の葉の粉砕物は、きわめて鮮明な明るい緑色を呈しており、色調は安定であり、紫外線のもとでも退色しにくいものであった。また、粉砕物自体の香味もまろやかであり、強い収斂性は感じられないものである。
【0019】
本発明において、油脂加工食品に対するサラシア属植物の粉砕物の添加量は、目的とする油脂加工食品により異なり、一概に限定できないが、原料に対して、0.1%〜20%程度、特に、好ましくは全原料の1%から10%程度が適当である。
また、このサラシア属植物の微粉砕物を混合してマヨネーズを製造したところ、茶葉などに比べて、乳化性がよくなり、物性面でも嗜好性が向上することが明らかになった。
【実施例】
【0020】
以下に、サラシア属植物の葉の粉砕物を混合して作った油脂加工食品の代表的な実施例を示すことにより、本発明を説明する。
なお、下記に示す実施例は、本発明の理解のためであり、これらに限定されるものではない。
【0021】
実施例1:通常のマヨネーズの製造
以下の配合と工程で、通常の卵黄色マヨネーズを製造した。
卵黄:3個、食酢:大さじ(約12g/杯)3杯、食塩:少々(約1g)を混合した後、攪拌しながら徐々にサラダオイル540gを添加した。サラダオイルはよく乳化して、通常の卵黄色のマヨネーズが製造できることを確認した。
【0022】
実施例2:緑色マヨネーズの製造
以下の配合と工程で緑色マヨネーズを製造した。
卵黄:3個、食酢:大さじ(約12g/杯)3杯、食塩:少々(約1g)、サラシア レティキュラータ葉の微粉砕物(粉砕粒度:100メッシュ以下)15g、サラシア レティキュラータ葉の荒粉砕物(辺の長さ1mm程度の切片)15gを混合した後、攪拌しながらサラダオイル540gを徐々に添加して、緑色マヨネーズを得た。
得られた緑色マヨネーズは、緑色が鮮やかであり、香味もよく、マヨネーズとして使いよい品質であることを確認した。
また、サラシア属植物の葉を加えると、酸味が抑えられ、マヨネーズの乳化性が増すことが確認された。さらに、製造された緑色マヨネーズは長時間経過後も油脂が分離することなく、安定なものであった。
【0023】
実施例3:緑色マヨネーズの製造
以下の配合と工程で、緑色マヨネーズを製造した。
卵黄:3個、食酢:大さじ(約12g/杯)6杯、食塩:少々(約1g)、サラシア レティキュラータ葉の微粉砕物(粉砕粒度:100メッシュ以下)4.5g、同粉砕物(粉砕粒度:40メッシュ以下)4.5gを混合した後、攪拌しながらサラダオイル450gを徐々に添加して、緑色マヨネーズを得た。
なお、サラシア属植物葉を加えると酸味が抑えられることから、食酢を通常(実施例1、大さじ3杯)の倍量とし、また、サラダオイルを通常(実施例1、540g)より約20%少ない条件にして製造したが、緑色マヨネーズは、緑色が鮮やかで、乳化の状態も問題がなく、香味も優れた品質であった。
【0024】
実施例4:緑色マヨネーズの安定性比較
以下の配合と工程で、緑茶葉粉砕物配合マヨネーズと、本発明のサラシア属植物葉粉砕物配合緑色マヨネーズを製造した。
卵黄:6個、食酢:大さじ(約12g/杯)6杯、食塩:少々(約2g)を混合した。
この混合物を2つに分けて、それぞれに、
(A)緑茶葉粉砕物(粉砕粒度:40メッシュ以下)9g
(B)サラシア レティキュラータ葉の粉砕物(粉砕粒度:40メッシュ以下)9g
を添加し、さらによく混合した。
混合後、(A)、(B)のそれぞれに攪拌しながらサラダオイル540gを徐々に加えて、緑色マヨネーズを得た。両者とも緑色であったが、(A)を添加して得たマヨネーズは渋みがあるが、(B)を添加して得た本発明のマヨネーズは渋みがまったく感じられないものであった。
さらに、この両者の緑色マヨネーズを、1L容量の透明ガラス容器に入れて、白色光のもと、10℃にて6ヶ月間保存し、その色の変化を観察した。
その結果、(A)を添加して得たマヨネーズは、保存後に緑褐色に変化していたが、(B)を添加して得たマヨネーズは保存後も鮮やかな緑色のままであり、安定なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上に記載したように、本発明により、長期間にわたって、香味には影響なく、安定した鮮やかな緑色を付与したマヨネーズを始めとする、油脂加工食品が提供される。
本発明が提供する緑色を呈したマヨネーズ等の油脂加工食品は、消費者の嗜好に対応した油脂加工食品の多様化製品の開発につながり、益するところが大きい。
さらに、本発明によって、たとえば、マヨネーズ製造の際には食用酸の使用量の拡大が図れ、さらには油脂の使用量の縮小が可能となることなど、健康食品として、産業上の利用可能性は多大なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サラシア属植物の葉の粉砕物を配合したことを特徴とする油脂加工食品。
【請求項2】
サラシア属植物が、サラシア レティキュラータ(Salacia reticulata)あるいはサラシア オブロンガ(Salacia oblonga)であることを特徴とする請求項1に記載の緑色油脂加工食品。
【請求項3】
油脂加工食品が、マヨネーズ又はドレッシングであることを特徴とする請求項1又は2に記載の緑色油脂加工食品。