説明

サルビアノール酸B等を主成分とする脳卒中又は脳卒中後遺症の予防用又は治療用薬剤

【課題】新しい脳卒中又は脳卒中後遺症の予防用又は治療用薬剤を提供すること。
【解決手段】サルビアノール酸B及びそのプロドラッグ、ならびに薬学的に許容することのできるそれらの塩およびそれらの水和物から選ばれる化合物を主成分とする脳卒中又は脳卒中後遺症の予防用又は治療用薬剤を開発した。例えば、サルビアノール酸Bは、1日1回、週5回、1回当たり、22.5ミリグラム/キログラム投与により、脳卒中発症を3割抑え、脳卒中発症の場合も、その後遺症は軽い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しい脳卒中又は脳卒中後遺症の予防用又は治療用薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
平成13年度の厚生労働省の統計によれば、介護を要する65歳以上の高齢者94,750人に対し、介護が必要になった主な原因の1位は脳卒中等脳血管疾患24,749人、2位は骨折11,744人、3位は痴呆10,659人であり、脳卒中等脳血管疾患が飛びぬけて多い。脳卒中又は脳卒中後遺症の予防用又は治療用薬剤の開発が強く望まれる。
高齢者の高血圧症患者、糖尿病患者、高脂血症患者は脳卒中を起こしやすい。そこで、脳卒中又は脳卒中後遺症の予防として、脳卒中又は脳卒中後遺症の原因たる高血圧症を降圧剤で、糖尿病を抗糖尿病剤で、高脂血症を抗脂血剤で管理する方法が取られているが、脳卒中又は脳卒中後遺症の発生を十分には防いでいない。
そこで、種々のアプローチに脳卒中又は脳卒中後遺症の予防用又は治療用薬剤の開発研究が行われている。例えば、トロンボキサンA2合成阻害剤によるアテローム動脈硬化性脳卒中の血栓症状の治療(特許文献1)、血圧を低下させない用量で脳卒中の再発防止剤(特許文献2)、NR2Bサブタイプ選択的NMDA受容体アンタゴニストを種々の薬剤と組み合わせる脳卒中治療法(特許文献3)、ホスファチジルコリンを有効成分とする脳卒中予防剤(特許文献4)、アホエンを有効成分とする過酸化物を減少させることによる脳卒中予防剤(特許文献5)、キサンチンを有効成分とする脳卒中予防剤(特許文献6)、ジオキサンシクロ[3,3,0]オクタン誘導体を有効成分とする高血圧症状の改善による脳卒中予防剤(特許文献7)等が公表されている。極最近、1‐アミノシクロプロパンカルボン酸及びそのプロドラッグ、ならびに薬学的に許容することのできるそれらの塩およびそれらの水和物から選ばれる化合物を主成分とする脳卒中又は脳卒中後遺症の予防用又は治療用薬剤が開発された(特許文献8)。しかし、未だ、新しい脳卒中又は脳卒中後遺症の予防用又は治療用薬剤の開発が望まれる。
【0003】
一方、丹参は、狭心症、心筋梗塞および脳卒中の薬として古くから知られている。しかし、丹参成分の一つであるサルビアノール酸A(以下、Sal・Aと略称する。)のアシル誘導体が抗スロンボティック作用により脳卒中に有効であるという報告があるのみで(非特許文献1)、丹参のどの成分が脳卒中に有効かは知られていない。
【0004】
しかし、本発明者の一人は神経幹細胞又は神経幹細胞及びその分化細胞からなる神経系細胞を保護しつつ、神経幹細胞を増殖及び/又は分化することを特徴とする神経系細胞の作用剤を探索し、Sal・B にその作用を発見し、種々研究した結果、Sal・B等 を有効成分とする神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の治療剤を開発した(特許文献9)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、新しい脳卒中又は脳卒中後遺症の予防用又は治療用薬剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、今回、発明者等は丹参成分を分離し、分離した種々の成分を用いて脳卒中易発症ラットSHRSPにおける血圧の降圧作用、脳卒中発症率、脳卒中後遺症の重傷度、主要臓器及び寿命への影響を対照ラットと比較検討し、丹参成分の中でSal・Bが脳卒中易発症ラットSHRSPの脳卒中又は脳卒中後遺症の予防又は治療に著しい効果があることを確認し、この結果を基に更に種々研究した結果、本発明を完成した。Sal・Bは丹参の水溶成分の一つであり、脳卒中又は脳卒中後遺症は神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の一つである。従って、本発明は丹参の脳卒中又は脳卒中後遺症の予防又は治療作用及び特願2004−341367に記載されたSal・B等 を有効成分とする神経細胞の退化、減少、細胞死、傷害、除外による組織や臓器の機能低下又は喪失により発症する疾病の治療剤の選択発明に該当する。
【0007】
すなわち、本発明は、「新しい脳卒中又は脳卒中後遺症の予防用又は治療用薬剤を提供する」という課題に対し、「Sal・B及びそのプロドラッグ、ならびに薬学的に許容することのできるそれらの塩およびそれらの水和物から選ばれる化合物を主成分とする脳卒中又は脳卒中後遺症の予防用又は治療用薬剤」を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の薬剤は、脳卒中又は脳卒中後遺症の予防用又は治療用薬剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は新しい脳卒中又は脳卒中後遺症の予防用又は治療用薬剤の発明である。本発明の薬剤の主成分はSAL・B及びそのプロドラッグ、ならびに薬学的に許容することのできるそれらの塩およびそれらの水和物から選ばれる化合物である。
【0010】
SAL・Bは、天然物質も合成品も使用可能である。Sal・Bは、シソ科の植物の1種である丹参(学名:Salvia・miltiorrhiza・Bunge)、テン丹参(学名:Salvia・yunnanensis・C.H.Wright)、血盆草(学名:Salvia・cavaleriei・Levl.var.simplicifelia・Peter‐Stibal)、アキノタムラソウ(学名:Salvia・chinensis・Benth)、サルビア・カバレリエイ・レブル(学名:Salvia・cavaleriei・Levl.)、サルビア・フラバ・フォレスト・エクス・ディールス(学名:Salvia・flava・Forrest・ex・Diels)、サルビア・ボウレヤナ・ドゥン(学名:Salvia・bowleyana・Dunn)、サルビア・プリオニティス・ハンセ(学名:Salvia・prionitis・Hance)(非特許文献2)等から水、熱湯、メタノール‐水溶液等で抽出後、カラムクロマトグラフィーやカウンター・カレント・クロマトグラフィーで精製される。例えば、丹参の抽出液をpH2−4に調整した後、これをカラムクロマトグラフィーにかけてSal・Bを吸着させ、これに酢酸マグネシウム、又は酢酸カルシウム等の酢酸塩水溶液を流した後、メタノール溶液を用いて溶出した区分を分取し、さらにこれを精製する(特許文献10)か、丹参の熱湯抽出物を樹脂カラムに吸着させ、50%‐95%エタノールで溶離する(特許文献11)か、抽出液丹参のエタノール・水溶液抽出物をノルマル‐ヘキサン・エチル酢酸・エタノール・水(3:7:1:9容量/容量)からなる二層溶媒系の高速カウンター・カレント・クロマトグラフィーで精製する(非特許文献3)等して得られる。取得したSal・Bの品質管理は、例えば、Sal・B試料を分析用オー・ディ・エス・カラム(ODS・column)に吸着させ、メタノール・5%酢酸溶液(35:65容量/容量)で溶離する高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を281ナノメーターの波長で検出する(非特許文献4)か、Sal・B試料20マイクロリットルをディスカバリーC18(Discovery・C18、4.6ミリメーターX25センチメーター)カラムに吸着させ、メタノール‐水‐氷酢酸(40:60:2、容量/容量)で流速0.5ミリリットル/分で溶離するHPLCを286ナノメーターの波長で検出する(非特許文献5)等して行う。しかし、これらの植物以外のSal・B含有植物があれば、その植物から分離してもよく、合成が可能な場合は合成品でもよい。現在Sal・Bは中国(景天生物工程有限公司)と米国(Ivy・Fine・Chemicals・Corporation社)等で市販されている。Sal・Bは単離精製物の他、単離したが精製が十分でないもの、単離未精製物、未単離物等他の化合物が混在する場合でも、本剤が主成分で、かつ、その混在する化合物が、本発明の目的を阻害しない限り、用いることができる。
【0011】
SAL・Bのプロドラッグは加水分解等分解を受けてSAL・Bに成るものであれば、薬学的に許容することのできる限り、どのようなものでもよい。当該プロドラッグの一つとしてSAL・B分子中のカルボキシル基でのメチルエステル誘導体又はエチルエステル誘導体やSAL・B分子中のアミノ基でのアセチル誘導体等が挙げられるが、それらに限らない。将来合成されるものでも差し支えない。
【0012】
SAL・Bの塩及びSAL・Bのプロドラッグの塩は薬学的に許容することのできる塩に限られる。薬学的に許容することのできる塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等のアンモニウム塩、トリエチルアミン、リジン、アルギニン等の有機アミンの塩、塩酸、臭化水素酸、硫酸等鉱酸との酸付加塩等が挙げられるが、それらに限らない。薬学的に許容することのできる塩であればよく、薬学的に許容することのできる限り、将来合成される有機化合物との塩でも差し支えない。SAL・B及びそのプロドラッグの水和物、薬学的に許容することのできるSAL・Bの塩及びそのプロドラッグの塩の水和物も本発明の主成分として用いることができる。
【0013】
本発明の脳卒中又は脳卒中後遺症の予防用又は治療用薬剤は酸素及び湿気のない状態では比較的安定である。しかし、抗酸化作用を有するので、空中及び水溶液中で比較的不安定である。水溶液中のSal・Bは高温で不安定で、摂氏80度で72時間加温すると35%変化し、チオ硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ヒドロ亜硫酸ナトリウム、システイン塩酸塩、EDTA2ナトリウム塩を添加しても一部変化し、ビタミンCを添加した時のみ摂氏80度で72時間加温しても安定である(非特許文献6)。
Sal・Bを保存する時は酸素や湿気の無い状態で保存することが好ましい。長期保存を考慮に入れると、本発明の脳卒中又は脳卒中後遺症の予防用又は治療用薬剤には有効成分の安定のため、他の抗酸化剤を添加することが好ましい。抗酸化剤としては薬学的に許容することのできる抗酸化剤に限られる。薬学的に許容することのできる抗酸化剤としては、アルファ・カロチン、ベータ・カロチン、リコペン、ルテイン、フラボノイド、カテキン、リザベラトール、イソフラボン、ビタミンA、ビタミンE、セレン、亜鉛、補酵素Q10、グルタチオン、エンゾジノール等が挙げられる。これらの抗酸化剤は高温の水溶液中のSal・Bの変化を抑える。亜硝酸塩はSal・Bの変化を完全には抑えない。したがって、亜硝酸塩は、単独では安定剤としては不十分である。ビタミンCはSal・Bの変化を抑える。したがって、ビタミンCはSal・B等の安定剤として使用は可能であるが、ビタミンC自体が空中及び水溶液中で比較的不安定であり、ビタミンCを多量に添加するか他の抗酸化剤との併用が必要になる。
【0014】
本発明の脳卒中又は脳卒中後遺症の予防用又は治療用薬剤は、主成分が非高分子であることから、経口投与又は非経口投与(坐薬、筋肉内、皮下、静脈内、脳内など)のいずれでも投与できる。主成分がSAL・Bのプロドラッグの場合も、体内で当該プロドラッグが活性化するので、当該プロドラッグを予め活性化しておく必要はない。
【0015】
経口用製剤を調製する場合、賦形剤、さらに必要に応じて、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤及び前述の抗酸化剤などを加えた後、常法により、錠剤、被服錠剤、顆粒剤、カプセル剤、溶液剤、シロップ剤、エリキシル剤、油性又は水性の懸濁液剤などとする。賦形剤としては、例えば、乳糖、コーンスターチ、白糖、ブドウ糖、ソルビット、結晶セルーロスなどが挙げられる。結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、エチルセルロース、メチルセルロース、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、シェラック、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0016】
崩壊剤としては、例えば、デンプン、寒天、ゼラチン未、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸カルシウム、デキストラン、ペクチンなどが挙げられる。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油などが挙げられる。着色剤としては、医薬品に添加することが許可されているものが使用できる。矯味矯臭剤としては、ココア末、ハッカ脳、芳香酸、ハッカ油、竜脳、桂皮末などが使用できる。これらの錠剤は、顆粒剤には、糖衣、ゼラチン衣、その他必要により適宜コーティングしてもよい。
【0017】
注射剤を調製する場合、必要により、グルコースや生理的食塩水等の等調液、pH調整剤、緩衝剤、前述の抗酸化剤及びその他の安定化剤、保存剤などを添加し、常法により、皮下、筋肉内、静脈内、脳内注射剤とする。注射剤は、溶液を容器に収納後、凍結乾燥などによって、固形製剤として、用事調製の製剤としてもよい。また、一投与量を容器に収納してもよく、また、多投与量を同一の容器に収納してもよい。溶液の場合、酸素や湿気を遮断する方がよい。そのため、場合によってはアンプル型の容器に入れ、空気を抜くか、窒素ガス等で空気を置換しておく方がよい。公知の方法でよい。
【0018】
本発明の脳卒中又は脳卒中後遺症の予防用又は治療用薬剤の投与量は、経口剤、坐薬、皮下注射剤、筋肉内注射剤、静脈内注射剤、脳内注射剤等剤型によって異なるが、ヒトの場合、成人1日当たり通常0.01〜1000ミリグラム、好ましくは、0.1〜100ミリグラムの範囲で、1日量を1日1回、あるいは2〜4回に分けて投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、毒性試験、薬効試験に関し、急性毒性試験、亜急性毒性試験、催奇性毒性試験、変異原性試験、繁殖性試験中の白血球、リンパ、好中数、ヘモグロビン、GOT、血清総蛋白、アルブミン、トリグリセリド、コレステロール、グルコース、尿素、小核率、精子奇形率、復帰変異菌、死胎率、胎児体重・身長・尾長、胸骨欠失率等の分析は株式会社日本実権医学研究等毒性試験受託会社がルーチンに受託分析し、尿中NO2/NO3、クレアチニン、Na、K、Ca、Cl、Mg、血中アルブミン、グロブリン、GOT、GTP、ガンマ‐グルタミルトランスペプチダーゼ、尿素窒素、クレアチニン、Na、K、Ca、Cl、Mg、アンギオテンシン1転換酵素、アンギオテンシン2等の分析はシオノギ・バイオメディカル・ラボラトリーズ等臨床検査受託会社がルーチンに受託分析している。
以下に先行文献を特許文献と非特許文献に分けて表示する。
【特許文献1】特開2003−26660号公報
【特許文献2】特開2002−370981号公報
【特許文献3】特開2002−322095号公報
【特許文献4】特開2000−239168号公報
【特許文献5】特開平11−228396号公報
【特許文献6】特開平10−182469号公報
【特許文献7】特開平8−268887号公報
【特許文献8】特願2005−025806号
【特許文献9】特願2004−341367号
【特許文献10】特開平1−268682号公報
【特許文献11】米国特許2001年6,299,910号公報
【非特許文献1】J.C.Dongら、Yao・Xue・Bao,31巻6頁1996年
【非特許文献2】L.N.Liら、J.Chinese・Pharmaceutical・Sciences、1997年6巻2号57頁‐64頁
【非特許文献3】H.B.Liら、J.Chromatogr.A.2002年943巻2号235頁‐239頁
【非特許文献4】Q.W.Zhangら、Zhongguo・Zhong・Yao・Za・Zhi、2001年26巻12号848頁‐849頁
【非特許文献5】曲桂武ら、http://www.ndcenter.com.cn/tongxun/2/quguiwu1.pdf.
【非特許文献6】曲桂武ら、http://www.ndcenter.com.cn/tongxun/2/quguiwu2.pdf.
【実施例1】
【0019】
栃本天海堂の医療用の丹参20グラムに150ミリリットルの水を加えて、100℃に加温しながら、30分抽出を行った。濾過後、残渣に再び150ミリリットルの水を加え、100℃に加温しながら、更に30分抽出後、2回の抽出で得られた濾液を集めた。抽出中の水分蒸発により液量が減少し、丹参抽出液を170ミリリットル得た。この溶液量が222ミリリットルになるように水を加えて調整した。これを丹参抽出液とする。4週齢雄SHR‐SP/Izmラットを京都にあるSHR等疾患モデル動物利用研究会より入手後、室温を摂氏22±1度、湿度を60±10%、照明時間を6時から18時まで12時間に設定した飼育室で1週間予備飼育した。体重増加が順調で、一般状態に異常の認められなかったラット60匹の血圧及び体重を測定し、このラット60匹を10匹ずつ6群に群間で血圧、体重の差のないように分けた。以下、毎日1回、週5回、前述の丹参抽出液を10ミリリットル(丹参901ミリグラム相当量)/キログラム体重の割合でラットの腹腔内に注射で投与する群を丹参群、1.125%のSAL・B(中国の天津中一製薬有限公司製)溶液を22.5ミリグラム/キログラム体重の割合でラットの腹腔内に注射で投与する群をSAL・B群、同じ投与条件でラットの脳血流量等を測定する群をB‐丹参群、B‐SAL・B群、同量の蒸留水をラットの腹腔内に注射で投与する群を対照群、同じ投与条件でラットの脳血流量等を測定する群をB‐対照群とした。実験期間は固体SP飼料と水道水を自由に摂取させて飼育した。動物実験の取扱いに関しては、日本生理学会の定める「生理学領域における動物実験に関する基本指針」に従った。
【実施例2】
【0020】
実施例1において、毎週1回、前述の温度・湿度の部屋で午前11時から午後5時までで、薬剤投与前後にラットを摂氏38度の加温器中で10分間加温させ、順応した後、無麻酔下でテイル‐カット(tail‐cuff)法によりソフトロン(Softron)非観血式自動血圧測定装置(BP‐98A)(株式会社ソフトロン製)を用いて、収縮期血圧、拡張期血圧と心拍数を3回測定し、平均値と標準偏差を計算し、平均値±標準誤差で表した。有意差の有無をt‐検定により調べた。
丹参又はSAL・Bの投与開始直前、投与開始1週間後、2週間後、3週間後、4週間後の収縮期血圧は、対照群がそれぞれ164.76±12.98、186.74±10.3、206.29±15.36、212.87±13.17、228.54±10.46(ミリメートルHg)であり、丹参群がそれぞれ165.75±6.87、187.37±10.2、203.28±13.35、210.64±10.23、218.63±8.46(ミリメートルHg)であり、SAL・B群がそれぞれ166.20±5.84、188.33±10.01、197.07±10.34、200.25±9.89(*)、209.72±6.35(*3)(ミリメートルHg)であり、弛緩期血圧は、対照群がそれぞれ120.40±11.1、147.37±12.68、170.33±17.6、172.16±10.70、189.04±11.5(ミリメートルHg)であり、丹参群がそれぞれ120.33±9.45、144.67±11.66、162.42±16.7、164.76±10.78、176.16±11.8(ミリメートルHg)であり、SAL・B群がそれぞれ120.03±8.73、135.95±10.91、141.74±15.33(*2)、144.59±10.97(*3)、152.96±12.8(*3)(ミリメートルHg)であり、心拍数は、対照群がそれぞれ388.40±28.8、393.25±27.90、372.33±33.16、357.83±34.62、380.20±30.9(回数/分)であり、丹参群がそれぞれ385.60±28.3、383.46±29.84、369.45±32.87、350.66±29.67、361.31±30.6(回数/分)であり、SAL・B群がそれぞれ381.83±26.2、377.62±31.64、345.70±31.93、333.22±24.98、338.20±30.6(*2)(回数/分)であった。なお、対照群と比較してP<0.05、P<0.01、P<0.001の範囲で有意差があったSAL・B群の値はそれぞれ(*)、(*2)、(*3)印で示した。
収縮期血圧はSAL・B群と丹参群と対照群ともに投与4週目まで上昇したが、SAL・B群では、対照群と比較して投与開始後3、4週目において血圧が有意な低値を示し、血圧上昇抑制効果を示した(それぞれP<0.01、0.001)。丹参群では、対照群と比較して投与開始後3、4週目において血圧が低値を示す傾向が認められたが、統計的有意差はなかった。拡張期血圧について投与開始後2、3,4週目においてSAL・B群は対照群に比べ有意に低値を示した(それぞれP<0.01、0.001、0.001)。丹参群は対照群に比べ低値を示す傾向が見られたが有意差はなかった。心拍数については、投与開始後4週目まではSAL・B群と対照群の間に有意な差が認められなかったが、4週目にP<0.01の範囲で有意差に低かった。SAL・Bの心筋保護作用が働いたと思われる。丹参群も対照群に比べ低値を示す傾向が見られたが有意差はなかった。
【実施例3】
【0021】
実施例2において、丹参又はSAL・B投与開始4週間後の血圧と心拍数測定後に、ラットを代謝ケ―ジに入れ、24時間採尿を行った。対照群と丹参群とSAL・B群の24時間排泄量に関し、NO2/NO3をGriess法により、クレアチニンをアルカリピクリン法により、NaとKとClをイオン電極法により、Mgをキシリジル‐ブルー法により、CaをOCPC法により測定した。対照群と丹参群とSAL・B群のNO2/NO3は順に8.68±3.26と8.02±1.58と6.96±1.32(*)(マイクロモル)、クレアチニンは順に38.75±7.92と36.77±9.95と31.77±12.88(ミリグラム/デシリットル)、Naは順に0.267±0.086と0.298±0.084と0.356±0.08(ミリ等量)、Kは順に0.590±0.17と0.599±0.19と0.624±0.22(ミリ等量)、Clは順に0.222±0.07と0.223±0.08と0.229±0.10(ミリ等量)、Mgは順に1.61±0.80と1.58±0.64と1.45±0.38(ミリ等量)、Caは順に0.20±0.08と0.20±0.08と0.22±0.08(ミリ等量)の値を得た。SAL・B群は対照群に比べ、尿中のNO2/NO3がP<0.05(*)の範囲ないで、有意に高値を示したが、尿中クレアチン、Na、Cl、K、Mg、Caは、対照群に比べ有意な差は無かった。丹参群は対照群に比べ、尿中のNO2/NO3、クレアチン、Na、Cl、K、Mg、Caは、対照群に比べ有意な差は無かった。特願2005−025806に記載の1‐アミノシクロプロパンカルボン酸(以下、ACCと略称する。)投与による結果と非常に異なる。SAL・Bの作用機序はACCを主成分とする脳卒中又は脳卒中後遺症の予防用又は治療用薬剤の作用機序が異なるからであると思われる。丹参もSal・Bと同様の傾向を示すが、作用が低い。
【実施例4】
【0022】
実施例3において24時間採尿後、24時間絶食させ、エーテル麻酔し、腹動脈より採血を行った。血中アルブミンはBCG法により、アルブミン/グロビン比は計算により、GOTとGPTはUV法により、ガンマ‐グルタミルトランスペプチダーゼは比色法により、尿素窒素はUV法により、クレアチニンはアルカリピクリン法により、NaとKはイオン電極法により、CaはOCPC法により、Clはイオン電極法により、Mgはキシリジル‐ブルー法により、アンジオテンシン1転移酵素は笠原法により、アンジオテンシン2はRIA・DCC法により測定した。対照群と対照群とSAL・B群の血中アルブミンは順に2.31±0.18と2.30±0.17と2.23±0.10(グラム/デシリットル)、アルブミン/グロビン比は順に0.61±0.02と0.61±0.08と0.64±0.03(*2)(計算値)、GOTは順に476.9±178.1と472.6±186.2と455.3±139.0(単位/リットル)、GPTは順に115.6±43.9と115.9±46.4と113.3±18.4(単位/リットル)、ガンマ‐グルタミルトランスペプチダーゼは順に1.86±0.90と1.85±0.87と1.83±0.98(単位/リットル)、尿素窒素は順に20.43±2.82と20.44±2.97と19.00±1.78(ミリグラム/デシリットル)、クレアチニンは順に0.37±0.08と0.36±0.11と0.33±0.05(ミリグラム/デシリットル)、Naは順に148.0±7.02と148.5±7.72と146.8±2.56(ミリ等量/リットル)、Kは順に6.36±1.37と6.33±1.42と5.75±0.91(ミリ等量/リットル)、Caは順に10.95±1.00と10.99±1.10と10.58±0.57(ミリグラム/デシリットル)、Clは順に104.0±5.90と103.9±5.85と102.5±2.58(ミリ等量/リットル)、Mgは順に3.34±0.45と3.30±0.48と3.25±0.30(ミリグラム/デシリットル)、アンジオテンシン1転移酵素は順に28.47±10.3と27.57±9.9と21.82±3.2(単位/リットル)、アンジオテンシン2は順位207.2±210.4と187.2±223.5と115.6±42.2(ピコグラム/ミリリットル)の値を得た。栄養状態を反映する血中アルブミン及び、肝、腎機能を表すGOT、GPTや尿素窒素、クレアチニンは全て対照群と丹参群とSAL・B群の間に有意な差が無かったため、丹参とSAL・Bの栄養状態、肝腎機能への影響が少ないと考えられる。アルブミン/ゴロブリン比についてSAL・B群が対照群よりP<0.001(*2)の範囲内で有意に高値を示したが、正常範囲内であるので、SAL・Bの副作用と考えにくい。また、血中Na、Cl、K、Ca、Mg値について、丹参群又はSAL・B群と対照群の間に有意な差が示されなかったことは、丹参群及びSAL・Bが血中電解質のバランスに影響が無いことを示す。対照群に比べ、丹参群及びSAL・B群のアンジオテンシン1転移酵素、アンジオテンシン2値が低下の傾向が見られた。これはSAL・Bの降血圧の一因の可能性がある。丹参はSAL・Bと同様の薬効を示すが作用が低かった。
【実施例5】
【0023】
実施例2において、丹参又はSAL・B投与後100日目の脳卒中の発症率と脳卒中後遺症の重傷度及び生存状況を観察し、分析した。死亡したラットを当日に解剖し、脳卒中病変の有無を病理検査した。実験データは平均値±標準誤差で表した。有意差の有無をt‐検定により調べた。
投与100日まで、行動神経症状(過敏性、痛覚過敏性、四肢の麻痺等)の観察から脳卒中症状を示していた個体数はそれぞれSAL・B群7匹、丹参群9匹、対照群10匹であった。丹参投与によっても脳卒中発症を抑制するが、SAL・B投与により脳卒中発症を3倍も効率よく抑制することが示された。投与100日までの生存個体数に関しては、SAL・B群は67日目に3匹、68日目、73日目、77日目、85日目に各1匹ずつ死亡した。これに対して丹参群は70日目に3匹、75日目に2匹、80日目に1匹、82日目に3匹、計9匹の死亡が認められた。これに対して対照群は70日目に3匹、75日目に2匹、80日目に1匹、82日目に3匹、85日目に1匹、計10匹の死亡が認められた。SAL・B又は丹参投与による延命効果が確認できた(P<0.01)。死亡した個体についての解剖肉眼的所見は対照群の全例に大脳皮質下と大脳基底核に梗塞巣とその周囲の瀰漫性脳浮腫および出血巣を認めたのに対し、SAL・B群ではこの病理変化が軽かった。丹参群での病理変化は対照群と比較し、やや良好の傾向が見られるが、ほとんど変わらなかった。
【実施例6】
【0024】
実施例5において、ラットの行動神経症状により重症度の判定を行い、点数を付きて評価した。以下の評価基準を用いた。感覚(痛覚等)過敏を1点、片肢体マヒがあるが、自主的に歩け、ケージ蓋上の餌が自主的に食べられるを2点、片肢体マヒが存在し、自主的歩きが困難、ケージ内の餌しかを食べられないを3点、死亡を4点とした。対照群40点に対し、丹参群は36点、SAL・B群は4点であり、対照群に比較してSAL・B群は有意に脳卒中後遺症を軽減した。丹参群も脳卒中後遺症を軽減の傾向は見られたが対照群と比較して有意差はなかった。
【実施例7】
【0025】
実施例1において、薬剤投与後の30日目に、B‐SAL・B群とB‐対照群の2群のラットにレーザー・ドップラ法を用いて脳血流量の連続的測定と2次元的測定を行なった。測定方法としては麻酔下においてラット頭皮を切開し、頭蓋骨を露出させ、リスカ社のレーザー・トップラー血流画像装置PIM2(リスカ社、スウェーデン)を用いてラットの脳血流量を測定した。有意差の有無をt‐検定により調べた。レーザードップラ法を用いて連続的測定と二次元的測定を行い、SAL・B群1.414±0.24、対照群1.144±0.31(P<0.05)の値を得た。この結果はSAL・B群ラットの脳血流状況が対照群のラットより改善されたことを示している。丹参群の脳血流量は1.199±0.43であり、SAL・B群ほどではないが、脳血流の改善が認められた。
【実施例8】
【0026】
高血圧症、糖尿病、高脂血症、心疾患、一過性能虚血発作等脳卒中発症の危険因子の大きい患者で治験に参加を希望する人に対し、本治験により得られる可能性のある効果と危険性、及びいつでも治験参加を撤回でき、撤回により不利に扱わない旨が書かれた文書を渡して、かつ口頭でも説明した上で、それでも参加を希望する患者に対し、事前に治験倫理委員会の承認を得る治験プロトコールに従い、基礎治療の上にSAL・B投与を行うSAL・B群と基礎治療だけを行う対照群に2群する。患者の症状を毎日ジャパン・ストローク・スケール調査票に従い、点数を記入し、調査票に書かれた規則に従って計算された計算値で脳卒中の発症を診断し、対照群とSAL・B群の脳卒中発症率の差から、SAL・Bの脳卒中予防効果を測定できる。
ジャパン・ストローク・スケール調査票の内容は以下の通りである。
1.意識:a)またはb)
a)グラスゴウ・コマ・スケール:[開眼]自発的に開眼するを4点、呼びかけにより開眼するを3点、痛み刺激により開眼するを2点、全く開眼しないを1点、[言語]見当識良好を5点、混乱した会話を4点、不適切な言葉を3点、理解不能の応答を2点、反応なしを1点、[運動]命令に従うを6点、疼痛に適切に反応を5点、屈曲逃避を4点、異常屈曲反応を3点、伸展反応を2点、反応なしを1点とし、[開眼]と[言語]と[運動]の合計が15点をA、14−7点をB、6−3点をCと分類する。

b)ジャパン・コマ・スケール:[刺激しなくても覚醒している状態]全く正常を9点、大体意識清明だが、今一つはっきりしないを8点、時・人・場所がわからないを7点、自分の名前、生年月日が言えないを6点、[刺激すると覚醒している状態]普通の呼びかけで容易に開眼するを5点、大きな声または体を揺さぶることにより開眼するを4点、痛み・刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すとかろうじて開眼するを3点、[刺激しても覚醒しない状態]痛み刺激に対しはらいのける様な動作をするを2点、痛み刺激で少し手足を動かしたり顔をしかめるを1点、痛み刺激に全く反応しないを0点とし、9点をA、8-3点をB、2-点をCと分類する。
分類の値(A=7.74、B=15.47、=23.21)を累計に用いる。
2.言語:口頭命令で拳をつくる、時計を見せて時計といえる、サクラを繰り返して言える、住所・家族の名前が上手に言える:4/4をA、3/4又は2/4をB、1/4又は0/4をCと分類し、分類の値(A=1.74、B=2.95、C=4.42)を累計に用いる。
3.無視:線分ニ等分試験正常をA、線分ニ等分試験で半側空間無視をB、麻痺に気が付かないあるいは一側の空間を無視した行動をするをCと分類し、分類の値(A=0.42、B=0.85、C=1.27)を累計に用いる。
4.視野欠損または半盲:同名性の視野欠損または半盲なしをA、同名性の視野欠損または半盲ありをBと分類し、分類の値(A=0.45、B=0.91)を累計に用いる。
5.眼球運動障害:なしをA、側方視が自由にできないをB、眼球に偏位したままで反対側へ側方視できないをCと分類し、分類の値(A=0.84、B=1.68、C=2.53)を累計に用いる。
6.瞳孔異常:瞳孔異常なしをA、片側の瞳孔異常ありをB、両側の瞳孔異常ありをCと分類し、分類の値(A=1.03、B=2.06、C=3.09)を累計に用いる。
7.顔面麻痺:なしをA、片側の鼻唇が浅いをB、安静時に口角が下垂しているをCと分類し、分類の値(A=0.31、B=0.62、C=0.93)を累計に用いる。
8.足底反射:正常をA、いずれとも言えないをB、病的反射ありをCと分類し、分類の値(A=0.08、B=0.15、C=0.23)を累計に用いる。
9.感覚系:正常をA、何らかの軽い感覚障害があるをB,はっきりした感覚障害があるをCと分類し、分類の値(A=−0.15、B=−0.29、C=−0.44)を累計に用いる。
10.運動系:
10‐1.手:正常をA、親指と小指で輪をつくる、またはそばに置いたコップが持てるをB、指は動くが物がつかめない、または全く動かないをCと分類し、分類の値(A=0.33、B=0.66、C=0.99)を累計に用いる。
10‐2.腕:正常をA、肘を伸ばしたまま腕を挙上できる、または肘を屈曲すれば腕を挙上できるをB、腕はある程度動くが持ち上げられない、または全く動かないをCと分類し、分類の値(A=0.66、B=1.31、C=1.97)を累計に用いる。
10‐3.下肢手:正常をA、膝を伸ばしたまま下肢を挙上できる、または自力で膝立てが可能をB、下肢は動くが膝立てはできない、または全く動かないをCと分類し、分類の値(A=1.15、B=2.31、C=3.46)を累計に用いる。
上記各分類の値の累計から定数14.71を差引いた値がプラスの場合は脳卒中発症と判断する。対照群とSAL・B群の脳卒中発症の頻度の差から、SAL・Bの脳卒中予防または治療効果を測定できる。
【実施例9】
【0027】
脳卒中後遺症がある患者を脳卒中運動機能障害重傷度スケールに従い、診断し、重傷度別に群分けをする。一つの群をSAL・Bを投与するSAL・B群と投与しない対照群に2群する。両群とも重傷度に合わせた同じリハビリを行い、定期的に脳卒中運動機能障害重傷度スケール採点を行う。対照群とSAL・B群の脳卒中運動機能障害重傷度の差から、SAL・Bの脳卒中後遺症予防または治療効果を測定する。
脳卒中運動機能障害重傷度スケールの内容は以下の通りである。
1.顔面麻痺:なしをA、ありをBと分類し、分類の値(A=−1.27、B=1.27)を累計に用いる。
2.嚥下障害:なしをA、時にむせることがあるをB、チューブ・フィーディングが必要をCと分類し、分類の値(A=−4.93、B=−0.89、C=5.82)を累計に用いる。
3.腕:肘を伸ばしたまま腕を挙上できるをA、肘を屈曲すれば腕を挙上できるをB、重力に抗して運動できないをCと分類し、分類の値(A=−0.97、B=−0.09、C=1.06)を累計に用いる。
4.手:正常をA、そばに置いたコップが持てるをB、物がつかめないをCと分類し、分類の値(A=−1.26、B=−0.16、C=1.42)を累計に用いる。
5.下肢近位筋:臥位で検査し正常をA、膝立て可能をB、膝立て不能をCと分類し、分類の値(A=−1.04、B=0.14、C=0.89)を累計に用いる。
6.足関節:座位で検査し、座位がとれない場合は臥位の筋力から推定し、爪先を上げられるをA、爪先を上げられないをBと分類し、分類の値(A=−0.52、B=0.52)を累計に用いる。
7.複合運動:ベッド上仰臥位からベッド脇で立位になるまでの一連の動作で、ベッド脇に立てるをA、ベッドに座れるをB、座れないをCと分類し、分類の値(A=−1.24、B=−0.39、C=1.63)を累計に用いる。
8.歩行:補助具なしに歩けるをA、補助具ないしは介護者があれば歩けるをB、自力では歩けないをCと分類し、分類の値(A=−3.63、B=−0.45、C=4.08)を累計に用いる。
上記各分類の値の累計に定数14.60を加え値がプラスの場合は脳卒中後遺症ありと判断する。対照群とSAL・B群の脳卒中運動機能障害重傷度の差から、SAL・Bの脳卒中後遺症予防または治療効果を測定できる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の薬剤は、脳卒中又は脳卒中後遺症の予防剤又は治療剤として、利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サルビアノール酸B及びそのプロドラッグ、ならびに薬学的に許容することのできるそれらの塩およびそれらの水和物から選ばれる化合物を主成分とする脳卒中又は脳卒中後遺症の予防用又は治療用薬剤。
【請求項2】
請求項1に記載する脳卒中後遺症予防用又は治療用薬剤。

【公開番号】特開2006−232698(P2006−232698A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47343(P2005−47343)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(300027510)学校法人鈴鹿医療科学大学 (6)
【出願人】(300007235)
【Fターム(参考)】