説明

サンシェード装置

【課題】シェード展開時において、シェードとディビジョンバーとの間に隙間が発生する事態を抑制可能なサンシェード装置を提供する。
【解決手段】サイドウインドウ12と、ウインドウフレーム14と、ウインドウフレーム14に囲まれた領域内を車両前後方向に区画するディビジョンバー15と、を備えた車両用ドア10に対して取り付けられるサンシェード装置20であって、サイドウインドウ12において、ディビジョンバー15とウインドウフレーム14とに囲まれた被覆領域S1を覆う形で展開可能なシェード21と、シェード21を格納する格納ケース30と、シェード21を巻き取り可能な巻取軸60と、を備え、巻取軸60は、車両前後方向に延びる形状をなすとともに、シェード21が格納ケース30から引き出されることで、水平方向に沿って配された状態から、ディビジョンバー15側へ傾けることが可能な構成とされることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンシェード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両などのドアトリムに取り付けられるサンシェード装置が知られている(下記特許文献1参照)。このようなサンシェード装置は、車両のウインドウガラスを遮光するシェード(遮光スクリーン)と、シェードを巻き取り可能な巻取軸(回転ローラ)とを備えている。これにより、シェードを展開することでウインドウガラスを覆うことが可能になるとともに、巻取軸によって、シェードを巻き取ることで、シェードを収容可能な構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−114713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ウインドウガラスには、ウインドウガラスを車両前後方向に区画するためのディビジョンバーが設けられている場合がある。このような構成の場合、ウインドウガラスにおいて、ウインドウフレームとディビジョンバーに囲まれた領域(以下の説明では、被覆領域と呼ぶ)をシェードで覆う場合がある。このような被覆領域をシェードで隙間なく覆うためには、シェードを被覆領域と同じ形状とすることが好ましい。
【0005】
ここで、シェードは巻取軸に巻き取られる構成であるため、矩形状に近い形状である方が巻き取りやすく好ましい。これに対して、ディビジョンバーは、鉛直方向に対して傾斜する形で延びている場合が多く、被覆領域を矩形状とすることは困難である場合が多い。このため、シェードと被覆領域の形状を一致させることは困難である場合が多く、シェードとディビジョンバーとの間に隙間が生じてしまう結果、その隙間から光が差し込んでくる事態が懸念される。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、シェード展開時において、シェードとディビジョンバーとの間に隙間が発生する事態を抑制可能なサンシェード装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ウインドウガラスと、前記ウインドウガラスを保持するウインドウフレームと、前記ウインドウフレームに囲まれた領域内を車両前後方向に区画するディビジョンバーと、を備えた車両パネルに対して取り付けられるサンシェード装置であって、前記ウインドウガラスにおいて、前記ディビジョンバーと前記ウインドウフレームとに囲まれた領域を覆う形で展開可能なシェードと、前記シェードを格納する格納ケースと、前記格納ケースに設けられ、前記シェードが取り付けられるとともに、前記シェードを巻き取り可能な巻取軸と、を備え、前記巻取軸は、車両前後方向に延びる形状をなすとともに、前記シェードが前記格納ケースから引き出されることで、水平方向に沿って配された状態から、前記ディビジョンバー側へ傾けることが可能な構成であることに特徴を有する。
【0008】
本発明では、シェードを格納ケースから引き出すことで、巻取軸をディビジョンバー側へ傾けることができる。巻取軸がディビジョンバー側へ傾くことで、展開された状態のシェードを、ディビジョンバー側へ接近させることができる。これにより、シェードとディビジョンバーとの間に生じる隙間をより小さくできる。言い換えると、ウインドウガラスにおけるディビジョンバー付近の箇所を、より確実に覆うことができ、遮光することができる。ディビジョンバーの付近には、座席に着座した状態の乗客の頭部が位置することが多い。この点、本発明では、ディビジョンバーの付近をシェードで確実に覆うことができるから、乗客が眩しさを感じる事態をより確実に抑制できる。
【0009】
上記構成において、前記巻取軸の軸方向における両端部が前記格納ケースに対して、それぞれ取り付けられており、前記両端部のうち、前記ディビジョンバー側の一端部が前記格納ケースに対して、回動可能に固定され、他端部が前記格納ケースに対して、前記シェードの展開方向において変位可能な形で取り付けられているものとすることができる。このような構成とすれば、巻取軸を、その一端部において回動させることができ、巻取軸をディビジョンバー側へ傾けることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シェード展開時において、シェードとディビジョンバーとの間に隙間が発生する事態を抑制可能なサンシェード装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態1のサンシェード装置が取り付けられた車両用ドアの上部を示す正面図。
【図2】実施形態1のサンシェード装置を示す斜視図。
【図3】サンシェード装置を示す断面図(図2のA−A線で切断した図)。
【図4】サンシェード装置を巻取軸の長手方向に沿った線で切断した状態を示す断面図。
【図5】図4において、巻取軸の軸方向における両端部付近を拡大して示す拡大図。
【図6】図4において、巻取軸がディビジョンバー側へ傾いた状態を示す断面図。
【図7】実施形態2のサンシェード装置を示す断面図。
【図8】図7において、巻取軸がディビジョンバー側へ傾いた状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図6によって説明する。図1は、本実施形態のサンシェード装置20が取り付けられた車両用ドア10の上部を示す正面図である。図2は、サンシェード装置20を示す斜視図である。図3は、サンシェード装置20を図2のA−A線で切断した状態を示す断面図である。図4は、サンシェード装置20を巻取軸60の長手方向に沿った線で切断した状態を示す断面図である。図5は、図4において、巻取軸60の軸方向における両端部付近を拡大して示す拡大図である。図6は、図4において、巻取軸60がディビジョンバー15側へ傾いた状態を示す断面図である。また、図3の左側を車室内側とし、右側を車室外側として説明する。また、図1、図4〜図6の左側を車両前方とし、右側を車両後方として説明する。
【0013】
本実施形態の車両用ドア10(車両パネル)は、車両のサイドドアとして使用されるもので、金属製のインナパネル11及びアウタパネル12、合成樹脂製のドアトリム17を備えている(図3参照)。また、車両用ドア10は、ウインドウガラス13(サイドウインドウ)と、ウインドウガラス13を保持するウインドウフレーム14と、を備えている。
【0014】
そして、車両用ドア10は、ウインドウフレーム14に囲まれた領域内を車両前後方向(図1の左右)に区画するディビジョンバー15を備えている。このディビジョンバー15は、鉛直方向に対してわずかに傾いており、具体的には車両後方に向かうにつれて上昇傾斜する形で配されている。
【0015】
また、ウインドウガラス13は、ウインドウレギュレータ(図示せず)によって上下方向に昇降可能な構成とされており、下降時には、ウインドウガラス13は、インナパネル11とアウタパネル12との間に収容される構成となっている。なお、ウインドウガラス13とインナパネル11及びアウタパネル12との間には、ウェザーストリップ16が配されており、ウインドウガラス13と各パネル11,12との間をシールする構成となっている。
【0016】
図1に示すように、ウインドウガラス13の下方には、本実施形態のサンシェード装置20が設置されている。サンシェード装置20は、図3に示すように、車両用ドア10を構成するドアトリム17及びインナパネル11との間(ウインドウガラス13の車室内側)に配される形でドアトリム17に取り付けられている。
【0017】
サンシェード装置20は、図1及び図2に示すように、全体として車両前後方向に長い形状をなし、ウインドウガラス13から差し込む光を遮光するためのシェード21と、シェード21を巻き取り状態で格納するための格納ケース30と、を備えている。
【0018】
このサンシェード装置20は、ウインドウガラス13のうち、ウインドウフレーム14とディビジョンバー15によって囲まれた領域を覆うためのものである。具体的には、シェード21によって、ウインドウフレーム14とディビジョンバー15に囲まれた領域のうち、車両前方の領域を覆う構成となっている。
【0019】
以下の説明では、ウインドウフレーム14とディビジョンバー15に囲まれた領域のうち、車両前方の領域(ほぼ全面がシェード21によって覆われる領域)を被覆領域S1と呼ぶこととする。なお、図1では、格納ケース30から引き出された状態のシェード21が図示されており、ドアトリム17の車室裏側に配されている格納ケース30は、破線にて、その概形を図示してある。
【0020】
図2及び図3に示すように、格納ケース30は、合成樹脂材料やアルミニウム等の金属材料により形成された本体部31と、本体部31に取り付けられたアウターケース32と、を備えている。本体部31の内部には、シェード21を巻き取るための巻取軸60が設けられている。巻取軸60には、図4及び図5に示すように、コイルスプリング61Aが取り付けられており、コイルスプリング61Aの復元力によって、巻取軸60が回転することで、シェード21を自動的に巻き取り可能な構成となっている。つまり、シェード21の先端部(後述するフレーム22及び掴みノブ23を含む)は、巻取軸60側(図3の下側、巻き取り方向)に付勢される構成となっている。
【0021】
シェード21(遮光スクリーン)は、可撓性部材からなり、略方形状をなすシート状の部材である。シェード21は、展開時には、ウインドウガラス13における被覆領域S1の大部分(ほぼ全面)を車室内側から覆うことが可能な大きさとされる。このシェード21にて、ウインドウガラス13を覆うことで、ウインドウガラス13から差し込む光を遮光することができる。また、シェード21は、車外と車内とを視覚的に遮断するためにも用いられる。
【0022】
シェード21としては、例えば、半透明シート、不透明シート、メッシュシート、織布、不織布等を例示することができる。また、シェード21の材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂材料を例示することができる。
【0023】
シェード21の上端縁部には、フレーム22が取り付けられている。このフレーム22は、シェード21の上端縁とほぼ同じ長さで設定され、例えば、合成樹脂材料やアルミニウム等の金属材料で形成された板状部材である。なお、フレーム22の形状は、板状に限定されず、例えば、棒状の部材であってもよい。このフレーム22は、主にシェード21の形状を保持する機能を担っている。
【0024】
また、フレーム22において、長手方向(車両前後方向、図1の左右方向)の両端部には、図1に示すように、フック孔22Aが、それぞれ貫通形成されている。各フック孔22Aに、ウインドウフレーム14におけるウインドウガラス13の上端縁付近に設けられたフック14Aをそれぞれ引っ掛けることで、シェード21を展開状態で保持することが可能となっている。
【0025】
フレーム22において、車両前後方向の中央部には、図1に示すように、シェード21を格納ケース30外へ引き出す際に把持される掴みノブ23が設けられている。掴みノブ23は、図3に示すように、断面視略L字状をなしている。掴みノブ23の基端部23Bは、ヒンジピン24を介して、フレーム22に取り付けられている。また、車両の乗員は掴みノブ23の先端部23Aを手で把持することによって、シェード21を上下方向に操作することが可能となっている。
【0026】
また、掴みノブ23の先端部23Aは、格納ケース30の本体部31における車室内側壁部33(後述)の上端部33Aに上方から当接する構成となっている(図3参照)。掴みノブ23の先端部23Aが上端部33Aに当接することで、巻取軸60によるシェード21の巻き取りが規制される。
【0027】
格納ケース30の本体部31は、図3に示すように、車室内側壁部33及び車室外側壁部34を有している。車室内側壁部33と車室外側壁部34との間には、巻取軸60及びシェード21を格納可能な格納空間35が形成されている。
【0028】
アウターケース32は、例えば、合成樹脂材料等によって形成されており、車室外側壁部34の上部に対してビスB1などで取り付けられている。なお、アウターケース32と本体部31とは、一体部品であってもよい。
【0029】
アウターケース32の下壁部32Bは、車室内側壁部33と間隔を空ける形で対向され、下壁部32Bと車室内側壁部33との間に、シェード21が引き出し可能な引き出し口36が形成されている。これにより、引き出し口36を通じてシェード21を格納ケース30に対して出し入れ可能な構成となっている。
【0030】
アウターケース32の上壁部32Aは、車室外側に向けて突出された断面視略U字形状をなしている。上壁部32Aの下部には、ブラケット32Dを介して、蓋部50が取り付けられている。蓋部50は、ヒンジピン52を介して、ブラケット32Dに対して回動可能に取り付けられている。これにより、蓋部50は、引き出し口36を閉止する閉位置(図3に示す位置)と、引き出し口36を開放する開位置との間で回動可能な構成となっている。蓋部50は、引き出し口36を閉止することで、見栄えを良くする機能の他、引き出し口36を通じて格納ケース30内に異物が侵入する事態を抑制する機能を担っている。
【0031】
蓋部50には、図2に示すように、車室内側に開口された切り欠き部51が形成されている。切り欠き部51は、掴みノブ23の基端部23Bが嵌合可能な形状となっている(図3参照)。これにより、掴みノブ23と、閉じた状態の蓋部50とが干渉することが抑制される。
【0032】
ヒンジピン24には、図3に示すように、例えば、ばね鋼製で弾性変形可能なトーションバネ25(付勢部)が巻回されている。このトーションバネ25の一端部は、蓋部50の裏面に当接され、他端部は、アウターケース32の上壁部32Aに当接されている。なお、図3においては、トーションバネ25は2点鎖線で図示してある。
【0033】
このトーションバネ25によって、蓋部50は、開方向(図3における時計周り方向)へ付勢される構成となっている。なお、トーションバネ25は、ヒンジピン24の延設方向(車両前後方向)において、複数箇所に取り付けられているが、同方向における一箇所のみに取り付けられていてもよい。
【0034】
また、開方向へ付勢されている蓋部50は、その後端面(図3の右側の端面)が上壁部32Aに設けられた緩衝材37に当接することで、それ以上の回動が規制され、開位置にて保持される構成となっている。緩衝材37は、例えば、ゴムやフェルトなどの弾性部材とされ、蓋部50の後端面が当接した際に異音が発生する事態を抑制するものである。なお、緩衝材37を備えずに、蓋部50の後端面が、上壁部32Aに対して直接当接する構成としてもよい。
【0035】
図2及び図3に示すように、掴みノブ23の先端部23Aにおいて、車室外側(図3の右側)の周端部23D(押圧部)は、蓋部50の切り欠き部51より、平面視において一回り大きい形で形成されている。言い換えると、周端部23Dは、掴みノブ23の一部を蓋部50側へ突出させる形で形成されている。これにより、掴みノブ23の周端部23Dは、図3に示すように、蓋部50に対して、上方から当接する構成となっている。
【0036】
上述したように、シェード21の先端部(ひいては掴みノブ23)は、巻取軸60によって、巻取軸60側(図3の下側)に付勢されている。このため、掴みノブ23の周端部23Dは、蓋部50を下方に押圧する構成となっている。これにより、蓋部50は、シェード21の巻き込みに伴って、掴みノブ23に押圧されることで、閉じる方向に回動されるとともに、閉位置にて保持される構成となっている。
【0037】
本実施形態において、巻取軸60は、格納ケース30内において、その長手方向(軸方向)が水平方向(車両前後方向)に沿う形で配されている(図4参照)。なお、ここで言う、「巻取軸60の長手方向」が「水平方向に沿う」とは、「巻取軸60の長手方向」が水平方向と完全に一致している場合の他、水平方向に対してわずかに傾いている場合も含まれる。そして、本実施形態において、巻取軸60は、水平方向に沿って配された状態から、ディビジョンバー15側へ傾けることが可能な構成となっている。次に、巻取軸60の構成について詳しく説明する。
【0038】
図4に示すように、巻取軸60は、車両前後方向に長い略円筒状をなし、シェード21の下端部が取り付けられる本体部61と、本体部61の内部に収容されたコイルスプリング61Aと、本体部61において、ディビジョンバー15側(図4の右側)の端部に取り付けられた第1取付部62(ディビジョンバー側の一端部)と、ディビジョンバー15とは反対側の端部に取り付けられた第2取付部63(他端部)とを備えている。
【0039】
巻取軸60は、軸方向の両端部(第1取付部62及び第2取付部63)において、格納ケース30の本体部31を構成する両側壁部41,42(車両前後方向における側壁部)に、それぞれ取り付けられている。なお、第2取付部63は、本体部61の開口端部を閉塞する形で、本体部61に取り付けられている。
【0040】
第1取付部62は、車両前後方向に貫通された取付孔62Aを有する略円筒状をなしている。一方、格納ケース30の両側壁部41,42のうち、ディビジョンバー15側の側壁部41の内面には、巻取軸60側に突き出す形状をなす取付突部43が形成されている。この取付突部43は、取付孔62Aの孔径とほぼ同じ径(又はわずかに小さい径)を有する略円柱状をなし、第1取付部62の取付孔62Aに挿通されている。
【0041】
一方、格納ケース30の両側壁部41,42のうち、ディビジョンバー15とは反対側の側壁部42には、図2に示すように、スリット42Aが貫通形成されている。第2取付部63は、巻取軸60の軸方向(図4の左右方向)に沿って延びる棒状をなしており、スリット42A側の端部がスリット42Aに嵌合されている。これらの構成により、巻取軸60は、その軸(図4の左右方向に延びる軸)を中心とした回転(シェード21を巻き取り可能とする回転)が可能な構成となっている。また、第1取付部62には、格納ケース30の外側(図4の左側)から取付ビスB2が装着されており、第2取付部63がスリット42Aから抜ける事態を防止している。
【0042】
また、コイルスプリング61Aは、その一端側が第2取付部63に形成された突部63Aに外挿する形で取り付けられており、他端側(図示せず)が取付突部43(側壁部41側)に取り付けられている。これにより、コイルスプリング61Aの復元力によって、巻取軸60がその軸を中心にして回転する結果、シェード21を自動的に巻き取り可能な構成となっている。なお、図4〜図6において、コイルスプリング61Aは、側壁部42側の端部のみ図示してある。
【0043】
そして、取付突部43の突出端面43Aは、略半球面状をなしている。取付突部43は、第1取付部62の取付孔62Aに対して、その先端部(突出端面43A付近)のみが挿通されている(図5参照)。これにより、取付孔62Aの内周面(後述するテーパ部62Bも含む)は突出端面43Aに対して摺動可能となっている。このため、第1取付部62(ひいては巻取軸60)は、取付突部43の先端部を中心として、回動可能な構成となっている。
【0044】
また、スリット42Aは、図2に示すように、シェード21の巻き取り方向(鉛直方向、図5の上下方向)に沿って延びる形状をなしている。これにより、第2取付部63は、格納ケース30に対して、スリット42Aの延設方向(シェード21の展開方向)に沿って変位可能な構成となっている。
【0045】
つまり、巻取軸60は、ディビジョンバー15側の端部(第1取付部62)においては、格納ケース30に対して回動可能に取り付けられ、ディビジョンバー15と反対側の端部(第2取付部63)においては、格納ケース30に対して、上下方向にスライド可能に取り付けられている。また、格納ケース30の格納空間35は、図3に示すように、巻取軸60が上下方向にスライド可能な大きさで設定されている。なお、図3においては、上方へ移動した状態の巻取軸60を二点鎖線で図示してある。
【0046】
これにより、巻取軸60は、図1及び図6に示すように、水平方向に沿った状態から、所定の角度D1だけ、ディビジョンバー15側へ傾けることが可能となっている。このように巻取軸60を傾けることで、巻取軸60に取り付けられているシェード21全体を、ディビジョンバー15側に近づける(傾ける)ことができる。なお、図1においては、水平状態にある巻取軸60の軸線及びシェード21を2点鎖線にて図示してある。また、ディビジョンバー15側へ傾斜した状態の巻取軸60の軸線を破線(符号60Aを付す)で図示してある。
【0047】
なお、取付孔62Aのディビジョンバー15側の端部は、図5に示すように、テーパ部62Bとされ、取付孔62Aは、ディビジョンバー15側の端部に向かうにつれて孔径が大きくなっている。テーパ部62Bは、第1取付部62と取付突部43との干渉を少なくすることで、巻取軸60の傾き動作を滑らかにする機能を担っている。なお、テーパ部62Bを備えていない構成であってもよい。
【0048】
次に、本実施形態において、シェード21を格納ケース30から出し入れする際の作用、及び効果について説明する。まず、シェード21が格納ケース30内に格納され、蓋部50が閉位置にある状態(図3の状態)から、シェード21を引き出す際の作用について説明する。
【0049】
図3の状態において、乗員(操作者)は、掴みノブ23の先端部23Aを把持し、掴みノブ23を引き上げる。これにより、シェード21が格納ケース30から引き出される。なお、掴みノブ23が引き上げられることで、蓋部50は、掴みノブ23によって下方に押圧されなくなる。これにより、蓋部50はトーションバネ25の付勢力によって、ヒンジピン52を中心として、開く方向へ回動する。
【0050】
シェード21が上方に引き出されるのに伴って、巻取軸60の第2取付部63側が、スリット42Aに沿って上方に引っ張られる。これにより、巻取軸60は、第1取付部62側を中心として、ディビジョンバー15側へ回動する。この結果、巻取軸60は、水平状態から所定の角度D1だけ、ディビジョンバー15側へ傾く。巻取軸60がディビジョンバー15側へ傾くことで、シェード21も同じ角度だけ、ディビジョンバー15側へ傾く。
【0051】
そして、フレーム22のフック孔22Aに、車両用ドア10におけるサイドウインドウ12の上端縁付近に設けられたフック14Aを引っ掛ける。これにより、シェード21は、サイドウインドウ12における被覆領域S1を車室内側から覆う展開状態で保持される(図1の状態)。
【0052】
次に、展開されているシェード21を格納ケース30に格納する際の作用について説明する。図1に示す状態から、フレーム22をサイドウインドウ12の上端縁付近に設けられたフック14Aから取り外すと、シェード21は、コイルスプリング61Aによって巻取方向に付勢された巻取軸60によって、巻き取られていく。これと同時に巻取軸60は自重によって、水平状態(図4の状態)に戻る。なお、シェード21の巻き取り過程では、開いている蓋部50を、掴みノブ23の周端部23Dが上方から押圧することで、蓋部50が閉じられる。
【0053】
以上、説明したように、本実施形態は、サイドウインドウ12と、サイドウインドウ12を保持するウインドウフレーム14と、ウインドウフレーム14に囲まれた領域内を車両前後方向に区画するディビジョンバー15と、を備えた車両用ドア10に対して取り付けられるサンシェード装置20であって、サイドウインドウ12において、ディビジョンバー15とウインドウフレーム14とに囲まれた被覆領域S1を覆う形で展開可能なシェード21と、シェード21を格納する格納ケース30と、格納ケース30に設けられ、シェード21が取り付けられるとともに、シェード21を巻き取り可能な巻取軸60と、を備え、巻取軸60は、車両前後方向に延びる形状をなすとともに、シェード21が格納ケース30から引き出されることで、水平方向に沿って配された状態から、ディビジョンバー15側へ傾けることが可能な構成とされる。
【0054】
本実施形態では、シェード21を格納ケース30から引き出すことで、巻取軸60をディビジョンバー15側へ傾けることができる。巻取軸60をディビジョンバー15側へ傾けることで、展開された状態のシェード21を、ディビジョンバー15側へ接近させることができる。これにより、シェード21(シェード21におけるディビジョンバー15側の周端部21A)とディビジョンバー15との間に隙間(図1における符号S2)が形成されることを抑制できる。
【0055】
言い換えると、サイドウインドウ12におけるディビジョンバー15付近の箇所を、より確実に覆うことができ、遮光することができる。ディビジョンバー15の付近には、座席に着座した状態の乗客の頭部が位置することが多い。この点、本実施形態のものでは、ディビジョンバー15の付近をシェード21で確実に覆うことができるから、乗客が眩しさを感じる事態をより確実に抑制できる。
【0056】
上記構成において、巻取軸60の軸方向における両端部が格納ケース30に対して、それぞれ取り付けられており、両端部のうち、第1取付部62が格納ケース30に対して、回動可能に固定され、第2取付部63が格納ケース30に対して、シェード21の展開方向において変位可能な形で取り付けられているものとすることができる。このような構成とすれば、巻取軸60を、第1取付部62側を中心として回動させることができ、巻取軸60をディビジョンバー15側へ傾けることができる。
【0057】
なお、シェード21をディビジョンバー15側へ傾ける(近づける)ためには、格納ケース30(ひいては巻取軸60)を、ディビジョンバー15側へ傾けた状態で設置する構成も考えられる。しかしながら、格納ケース30をディビジョンバー15側へ傾けた状態で取り付けると、設置スペースが大きくなる。
【0058】
車両用ドア10には、サンシェード装置20以外にも、様々な部品が取り付けられることが想定されるため、設置スペースは小さい方が好ましい。また、格納ケース30を傾けて設置する場合、組み付けに係る作業性も低下する。このため、本実施形態においては、格納ケース30及び巻取軸60を、水平方向に配することで、省スペースとしつつ、シェード21展開時にのみ、巻取軸60をディビジョンバー15側へ傾斜させる構成とした。
【0059】
また、本実施形態においては、突出端面43Aが球面状をなす取付突部43に第1取付部62を挿通させることで、巻取軸60をディビジョンバー15側に傾斜可能とする構成としたが、これに限定されない。例えば、巻取軸60におけるディビジョンバー15側の端部をヒンジなどで側壁部41に取り付けることで、巻取軸60をディビジョンバー15側に傾斜可能とする構成としてもよい。
【0060】
しかしながら、巻取軸60によってシェード21を巻き取るためには、巻取軸60を、その軸線を中心として回転可能に取り付ける必要がある。このため、ヒンジなどを用いて、巻取軸60を傾斜可能とする場合は、取付構造が複雑となる。この点、本実施形態においては、取付突部43に第1取付部62を挿通させるといった簡単な構成で、「巻取軸60をディビジョンバー15側の端部を中心として傾き可能な構成」及び「巻取軸60を、その軸線を中心として回転可能な構成」を実現でき、部品点数や組み付け工数を低減させることができる。
【0061】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を図7及び図8によって説明する。上記実施形態と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。本実施形態のサンシェード装置120においては、第1取付部及び取付突部の形状が上記実施形態と相違する。
【0062】
本実施形態の第1取付部162は、図7に示すように、上記実施形態のテーパ部62Bを有していない点で、第1取付部62と相違する。また、取付突部143は、その先端部が、略球状(取付突部43に比して、より球状に近い形状)をなしている。このような構成とすれば、取付突部143の突出端面143Aに対して、第1取付部162の取付孔62Aの内周面を、より滑らかに摺動可能とすることができ、巻取軸60の動作をより滑らかにすることができる(図8参照)。
【0063】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0064】
(1)上記実施形態では、ウインドウガラス13において、ウインドウフレーム14とディビジョンバー15に囲まれた領域のうち、車両前方の領域をシェード21で覆う構成としたが、これに限定されない。シェード21は、ウインドウフレーム14とディビジョンバー15に囲まれた領域を覆う構成であればよい。
【0065】
(2)上記実施形態では、取付突部43の突出端面43Aを略球面状とすることで、巻取軸60をディビジョンバー15側へ傾斜可能な構成としたが、これに限定されない。例えば、取付突部43の径を、取付孔62Aの径よりも小さくすることで、取付突部43の外周面と、取付孔62Aの内周面との間に隙間を設ける構成としてもよい。このようにすれば、この隙間の分だけ、巻取軸60を傾斜させることができる。
【0066】
(3)シェード21の形状及び材質は、上記実施形態で例示したものに限定されず、適宜変更可能である。
【0067】
(4)上記実施形態では、蓋部50の付勢部としてトーションバネ25を用いたが、これに限定されない。例えば、付勢部として、コイルスプリングを用いてもよい。この場合、コイルスプリングの一端を蓋部50へ、他端を格納ケース30へ取り付けることで蓋部50を開位置側へ付勢する構成としてもよい。
【0068】
(5)上記実施形態では、緩衝材37としてゴムやフェルトなどを例示したが、これに限定されるものではない。例えば、緩衝材37として、スポンジ等を使用してもよい。
【符号の説明】
【0069】
10…車両用ドア(車両パネル)、13…ウインドウガラス、14…ウインドウフレーム、15…ディビジョンバー、20,120…サンシェード装置、21…シェード、30…格納ケース、60…巻取軸、62…第1取付部(両端部のうち、ディビジョンバー側の一端部)、63…第2取付部(他端部)、S1…被覆領域(ディビジョンバーとウインドウフレームとに囲まれた領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドウガラスと、前記ウインドウガラスを保持するウインドウフレームと、前記ウインドウフレームに囲まれた領域内を車両前後方向に区画するディビジョンバーと、を備えた車両パネルに対して取り付けられるサンシェード装置であって、
前記ウインドウガラスにおいて、前記ディビジョンバーと前記ウインドウフレームとに囲まれた領域を覆う形で展開可能なシェードと、
前記シェードを格納する格納ケースと、
前記格納ケースに設けられ、前記シェードが取り付けられるとともに、前記シェードを巻き取り可能な巻取軸と、を備え、
前記巻取軸は、車両前後方向に延びる形状をなすとともに、前記シェードが前記格納ケースから引き出されることで、水平方向に沿って配された状態から、前記ディビジョンバー側へ傾けることが可能な構成であることを特徴とするサンシェード装置。
【請求項2】
前記巻取軸の軸方向における両端部が前記格納ケースに対して、それぞれ取り付けられており、
前記両端部のうち、前記ディビジョンバー側の一端部が前記格納ケースに対して、回動可能に固定され、他端部が前記格納ケースに対して、前記シェードの展開方向において変位可能な形で取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のサンシェード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−101570(P2012−101570A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248990(P2010−248990)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】