説明

サンプル収集装置

本発明は透析液のサンプル(42)を収集する装置(20)に関する。装置(20)は、透析液の流れを受け取る入口(22)、飽和した透析液の流れを提供する複数の出口(24)、及び前記出口(24)の一つを連続して選択する手段(26)、を備えている。該連続選択手段(26)は、入口(22)から受け取られた透析液の流れによってのみ作動される。本発明は、かかる装置(20)を備える腹膜透析システムにさらに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路内、例えば、腹膜透析(PD)、特に自動腹膜透析(APD)のための回路内で、流体サンプルを収集する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
腹膜透析は、腎機能不全に冒された患者の血液を浄化する処置である。従来の血液透析と異なり、腹膜透析では、血液をろ過するのに用いられる膜が患者の身体外部にもたらされる人工的エレメントでは構成されず、腹膜から構成されている。当該腹膜は、腹部に位置され、内臓器官を包囲している膜である。それは薄く、そして高度に血管が通され得るので、透析の物理的原理を患者の身体の内部に直接に適用することが可能である。
【0003】
腹膜透析は、腹膜腔の外部回路への連結を可能とすべく、腹部内に恒久的に導入されねばならないカテーテルを必要としている。当該外部回路は、一般に、純粋な透析液を包含しているバッグ及び排液出口を備えている。
【0004】
腹膜透析の処置は、一般に、純粋な透析液がカテーテルを経由して腹膜腔に供給される、第1の注入フェーズ(すなわち充填)を含む。第2の、いわゆる、ドエルフェーズの間は、外部操作が必要とされず、患者の血液と透析液との間で透析性の交換が起こる。第3かつ最後の排液段階(すなわち、ドレーン)の間に、飽和した透析液が腹膜腔から取り出される。
【0005】
血液の満足できる浄化を得るためには、上述の全処置サイクルが、数回、24時間連続して続く中で繰り返されねばならない。APDの場合には、種々の処置サイクルが、充填、ドエル、及びドレーンのフェーズを自動的に設定し調節する、「自動サイクラー」と称される特殊機械によって、夜間を通して連続して実行される。
【0006】
腹膜透析処置の有効性及び質を監視するために、排出される飽和した透析液のサンプルを分析することが知られている。
【0007】
そのような訳で、定期的かつ自動的に、すなわち、患者による、又は他の補助者によるいずれもの介入の必要なく、使用された透析液のサンプルを収集することは極めて有益であることを証明している。実際には、特に夜間において、介入の必要性を排除することが望ましく、さもなければ、この処置方法の利点の1つが失われる。
【0008】
このような訳で、透析液サンプルの周期的サンプリングを自発的に実行する装置を回路内に導入する必要性が存している。
【0009】
この形式の装置は、特許文献1に記載されている。しかしながら、この装置は欠点がないわけではない。実際には、それは極めて複雑である。何故なら、それは、個々の患者のためのサイクル自体、又は最適な透析溶液の用意のような、他の機能をも実行すべく意図されているからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第99/06082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、先行技術に関連して上に特定された欠点を克服することである。
【0012】
特に、本発明の課題は、簡単かつ丈夫な構造及び作動モードを有する、透析液のサンプルを収集する装置を提供することである。
【0013】
さらに、本発明の課題は、流れの速度以外の外部供給源や入力制御信号のいずれも必要としない、透析液のサンプルを収集する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的及び課題は、請求項1による透析液のサンプルを収集する装置によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明の特性及びさらなる利点は、添付図面を参照して、純粋に非限定的例による条件で、以下に提供される実施形態の多数の例の説明から浮かび上がるであろう。
【0016】
【図1】本発明によるサンプル収集装置を備える腹膜透析のための回路を概略的に示している。
【図2】本発明によるサンプル収集装置の第1の実施形態を、第1の形態において、概略的に示している。
【図3】図2による装置を、第2の形態において示している。
【図4】図2による装置を、第3の形態において示している。
【図5】本発明によるサンプル収集装置の第2の実施形態を概略的に示している。
【図6】本発明によるサンプル収集装置の第3の実施形態の平面図を、第1の形態において、概略的に示している。
【図7】図6による装置を、第2の形態において示している。
【図8】本発明によるサンプル収集装置の第4の実施形態の平面図を、第1の形態において、概略的に示している。
【図9】図8による装置を、第2の形態において示している。
【図10.a】図6による装置のローターを概略的に示している。
【図10.b】図8による装置のローターを概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、全体的に20で示された、透析液のサンプル42を収集する装置に関する。当該装置20は、透析液の流れを受け取る入口22、飽和した透析液の流れを提供する複数の出口24、出口24の1つを連続的に選択する手段26を備えている。当該連続選択手段26は入口22から受け取られた透析液の流れによってのみ作動される。
【0018】
本発明の説明において、正常動作を保証する当該装置20の空間的配置について言及される。当該装置20の作動中、実際には、特に図2ないし5による実施形態において、重力が重要な部分を演ずる。特に、以下において、重力は、図2ないし5(側面図)においてベクトルgによって示されるように向けられていると仮定する。
【0019】
特に添付の図1を参照して、本発明による装置20を備える腹膜透析用の回路10が説明される。当該回路は、患者Pに導入されて腹膜腔の外部回路10への連結を許容すべく設計されたカテーテル12を備えている。当該カテーテル12は、純粋な透析液を供給するライン16もまた繋がっている自動サイクラー14に連結されている。最後に、排液ライン18が自動サイクラー14から延びている。当該排液ライン18は、本発明による装置20への供給ラインを形成し、そしてそれ故に入口22に連結されている。
【0020】
図1において、供給ライン16から到着する純粋な透析液が当該カテーテル12に、そしてそれ故に患者Pの腹膜腔に供給される前記充填フェーズ中の自動サイクラー14が概略的に示されている。当該自動サイクラー14はまた、それ自体既知の方法で、腹膜透析処置の他のフェーズ、すなわち、ドエルフェーズ及びドレーンフェーズをも管理することができる。図1による略図において、当該種々のフェーズはセレクター15の回転によって管理される。特に、図1に示されている形態から始動して90°に亘る反時計回りの回転は、当該回路をドエルフェーズのための形態にセットする。また、図1に示されている形態から始動して90°に亘る時計回りの回転(又は、当該ドエル形態から180°に亘る反時計回りの回転)は、当該回路をドレーンフェーズのための形態にセットする。
【0021】
図1に見られるように、出口24は、対応する数のサンプル42の収集のための飽和した透析液の流れを提供すべく設計されている。例えば、サンプル42はチューブ25を経由して対応する数の収納容器、すなわち、バッグ52に収集される。図1に示されている形態においては、付加的な排液ライン28が存している。
【0022】
既に上述したように、連続選択手段26は入口22から受け取られた飽和した透析液の当該流れによって、又は温度によってのみ作動される。換言すると、当該連続選択手段26は、装置20の状況を検出するセンサー又はトランスデューサーの作動のため、又は流れに対する望ましい出口24を選択するアクチュエータ又はモーター駆動のアクチュエータの作動のための、如何なる外部動力の供給をも必要としない。当該連続選択手段26の作動が基づいている物理的原理は、本発明による装置20の種々の実施形態間の主要な相違点を表わしている。
【0023】
図2ないし4に概略的に示されている装置20の実施形態が、今や詳細に説明される。この実施形態による装置は、その容積の大半を占めるフロート132を収容する、主チャンバー130を備えている。特に、当該フロート132は実質的に唯一の移動を実行することができる。主チャンバー130の底部131に実質的に休止している休止位置から主チャンバー130のルーフ133に実質的に休止する作動位置に垂直に移動することができる。この移動は、図1において矢印vによって指示されている。主チャンバー130のルーフ133は、好ましくは、ベント156を備えている。
【0024】
可撓性アクチュエータ134が当該フロート132に取り付けられている。当該可撓性アクチュエータ134は、好ましくは、当該フロート132の頂部表面にそれに関して垂直に取り付けられている。当該可撓性アクチュエータ134は、中空の摺動体138と一体の複数の歯136の単一の歯に選択的に係合すべく設計されている。中空の摺動体138は、複数の出口24を画成している多重コネクタ144の内部を摺動すべく設計されているヘッド140を有している。中空の摺動体138の2つの連続する歯136を分けているピッチpは、多重コネクタ144において2つの連続する出口24を分けているピッチpに等しい。当該ヘッド140は、多重コネクタ144の内部壁に対するシールを確実にするための2つのシール141の間に位置されている半径方向の開口146を備えている。さらに、当該ヘッド140に対して反対側の端部において、中空の摺動体138は、底部の近傍で主チャンバーの壁部に形成された開口148を経由して、主チャンバーに流体の連通をしている。特に、当該開口148は、フロート132がその移動経路の底端部にあるときに当該フロート132によって覆われ、そして当該フロート132がその移動経路の頂端部にあるときは覆われないような位置に、形成されている。当該フロート132の体積は、ヘッド140が多重コネクタ144に沿って移動する際に発生される摩擦抵抗に打ち勝つべく設計されている。
【0025】
最後に、当該装置20は主チャンバー130の底部131から延びている排液ライン28を備えている。排液ライン28は流れの調節及び/又は中断のためのバルブを備えるか、又は、好ましくは、その内部の流れを著しく減速する狭窄部を備えてもよい。
【0026】
図2ないし4に示された実施形態による当該装置20の作動が、今や説明される。当該自動サイクラー14がドレーンフェーズのスタートを起動したとき、当該カテーテル12を出発した飽和透析液が当該排液ライン18に沿って流れ、そして当該装置20の入口22に到達する。飽和した透析液の流れは主チャンバー130に到達する。当該装置20の形態は、透析液の入ってくる質量が積極的にバランスされることを保証している。排液ライン28は、実際には、(バルブを備える実施形態においては)完全に閉じられるか、又は大きく狭窄されている。かくて、当該排液ライン28に沿って出て行く全ての流れは、入口22を通って入ってくる流れよりも著しく少ないということが保証される。このことは、主チャンバー130の内部の飽和した透析液の容積が連続的に増大することを保証し、当該フロート132に浮揚スラストを発生させる。当該浮揚スラストは、休止位置から作動位置に向けて、当該フロートを上昇させる(図1の矢印vを見よ)。フロート132の当該上方への移動は、2つの別々の作用効果を有している。
【0027】
第1の作用効果は、当該開口148を自由にし、透析液がアクセスするのを可能にすることである。他の作用効果は、浮揚力が第1の歯136.aに係合するように形成されている可撓性アクチュエータ134に伝達され、その形態を適応させることである。そこで、当該可撓性アクチュエータ134は、当該フロート132の垂直方向移動(矢印v)を中空の摺動体138の水平方向移動(矢印h)に変換する。中空の摺動体138の水平方向移動は、多重コネクタ144内部での距離pを越えるヘッド140の前方への移動を生じさせる。かくて、当該ヘッド140は2つのシール141の間で第1の出口24を隔離し、そして半径方向の開口146を実質的にそれに整列させる。図3は、このようにして当該装置20により取られる形態を示している。実際に、如何にして、当該フロート132の移動が、一方において当該開口148を自由にし、そして他方において半径方向の開口146を出口24.aに整列させるかが注目される。それ故に、飽和した透析液が入口22から第1の出口24まで自由に流れることができ、そしてその後、収納器、すなわち、バッグ52.aの内部に第1のサンプル42として収集される(図1を見よ)ように、如何にして流体経路が確立される(図3の点線矢印を見よ)かが注目される。
【0028】
ある実施形態によれば、バッグ52の各々は、ドレーンフェーズ全体の間に排出される飽和透析液の全体の容積を包含することができる。このような場合には、サンプルとして用いられる少量の透析液(例えば、1%)が、当該全体の容積から後で、病院でおそらく次の日に取り出されるであろう。他の実施形態によれば、バッグ52の各々は、代わりに、サンプルとして用いられる少量の透析液のみを包含することができる一方、残りの容積の全てはそれ自体既知の方法でドレーンされる。
【0029】
ドレーンフェーズの終わりには、入口22への飽和した透析液の流れが中断される。当該排液ライン28がバルブを備える場合、及びそれが大きく狭窄されるのみである場合の両者において、主チャンバー130の内部の透析液の容積は減少し始める。第1の場合、実際には、このフェーズの間において当該バルブが開かれて、当該排液ライン28に沿う流れを許容している。しかしながら、第2の場合、当該出口流れは、最小量ではあるけれども、入ってくる流れによってはバランスされていない。主チャンバー130の内部の飽和した透析液の容積は減少し、当該フロート132の浮揚スラストを低減して、作動位置から休止位置へと下方に徐々に移動させる。当該フロート132の下方への移動は、当該開口148が再度覆われ、そして当該可撓性アクチュエータ134を第1の歯136.aから係合解除するのを生じさせる。当業者には明らかであるように、可撓性アクチュエータ134及び歯136は、当該フロート132の下方への移動の際には、中空の摺動体138に如何なる移動をも伝達しないように形成されている。それ故に、中空の摺動体138のヘッド140は、多重コネクタ144の内部で前に取られた位置を維持する。このように、装置20によって取られる形態が図2(当該フロート132の位置のみ)に部分的に示され、そして図3(中空の摺動体138の位置のみ)に部分的に示されている。この点において、装置20は、第2の出口24.bに対向させて当該ヘッド140をもたらすために、上述と全体的に同様の方式で、さらなる距離pを越えての中空の摺動体138の変位を生じさせるであろう次の作動サイクルの用意ができている。かくて、第2のサンプル42.bが、第2のバッグ52.bの内部に収集される(図1を見よ)。
【0030】
この作動サイクルは、APD処置の終わりにおいて、(図4に示されるように)最後の出口24.nが到達されるまで数回繰り返され得る。図は5つの出口を備える多重コネクタ144を示しているが、しかし、特定の要求を満たすためには、当該装置20の実質的な修正を伴わずに異なる出口の数を提供することが可能であることは自明である。
【0031】
図5に概略的に示されている装置20の実施形態が、今や、以下に詳細に説明される。この実施形態によれば、装置はその容積の大半を占めるフロート232を収容する主チャンバー230を備えている。主チャンバー230及びフロート232は共に、実質的に円筒(柱)形状を有している。当該フロート232は2つの移動を遂行することができる。すなわち、主チャンバー230の底部231に実質的に休止している休止位置から主チャンバー230のルーフ233で実質的に休止している作動位置への第1の垂直並進移動、及びその垂直軸線回りの第2の回転移動である。これらの移動は、図5において、矢印v及び矢印rによってそれぞれ指示されている。
【0032】
らせん形の溝250が当該フロート232に形成され、そして主チャンバー230の内部に形成された対応する形状のスレッド254に係合すべく設計されている。当該フロート232の内部にはダクトが形成され、当該フロートの底部における開口248を頂部に形成されたもう1つの開口246に連結している。
【0033】
主チャンバー230のルーフ233は、多重コネクタ244の機能を実行し、そして複数の出口24を画成している。当該出口24は、主チャンバー230の軸線から同じ半径距離に位置され、そして周方向に等距離式に離間されている。当該ルーフ230で2つの連続する出口24を分けている角度αは、形状付けられたスレッド254の延長部の角度αに等しい。この点において、図5は正確でないことに留意すべきである。主チャンバー230のルーフ233はまた、好ましくは、半透膜によって保護されたベント256を備えている。
【0034】
主チャンバーの底部231は、フロート232の底部と協働すべく設計されたセンタリング手段258を備えている。
【0035】
最後に、当該装置20は主チャンバー230の底部231から延びている排液ライン28を備えている。当該排液ライン28は流れの調節及び/又は中断のためのバルブを備えるか、又は好ましくは、その内部の流れを著しく減速させる狭窄部を備えてもよい。
【0036】
図5に示された実施形態による装置20の作動が今や説明される。当該自動サイクラー14が当該ドレーンフェーズのスタートを起動すると、カテーテル12を出発した飽和透析液が排液ライン18に沿って流れ、当該装置20の入口22に到達する。飽和した透析液の流れは主チャンバー230に到達する。当該装置20の形態は透析液の入ってくる質量が積極的にバランスされることを保証している。実際には、その好ましい実施形態において、当該排液ライン28は常には開かれてそして大きく狭窄されている。代替の実施形態においては、当該排液ライン28は完全に閉じるか、又は大きく狭窄することができるバルブを備えている。このようにして、当該排液ライン28に沿って出て行く流れは、全て入口22を通って入ってくる流れよりも著しく少ないということが保証される。このことは、主チャンバー230の内部の飽和透析液の容積が連続的に増大し、当該フロート232に浮揚スラストを発生させることを保証する。当該浮揚スラストは、当該フロートを休止位置から(図5の矢印vを見よ)作動位置に向けて上昇させる。当該フロート232の上方への移動は、らせん形の溝250が形状付けられたスレッド254に係合することを生じさせるという他の作用効果を有している。当該フロート232の垂直方向移動(矢印v)は、それ故に、それの回転移動を生じさせる(矢印r)。当該フロート232の回転移動は、開口246の第1の出口24.aとの整列を生じさせる。かくて、飽和した透析液が入口22から自由に第1の出口24に流れ、そしてその後、第1のサンプル42としてバッグ52.aの内部に収集され得る(図1を見よ)ように、流体経路が確立される(図5における点線矢印を見よ)。
【0037】
当該ドレーンフェーズの終わりには、入口22への飽和透析液の流れが中断される。排液ライン28がバルブを備える場合及び大きく狭窄されるのみの場合も共に、主チャンバー230の内部の透析液の容積は減少し始める。第1の場合、実際には、このフェーズの間には当該バルブは開かれ、当該排液ライン28に沿う流れを許容している。第2の場合には、しかしながら、出口流れは、最小量ではあるけれども、入ってくる流れによってはバランスされない。主チャンバー230の内部の飽和透析液の容積は減少し、当該フロート232の浮揚スラストを低減させ、作動位置から休止位置へと徐々に下方に移動させる。当業者には明らかであるように、らせん形の溝250及び形状付けられたスレッド254が、当該フロート132の下方への移動の際に、その如何なる移動をも生じさせないように形成されている。当該開口246は、それ故に、前に取られた角度位置を維持する。
【0038】
この点において、当該装置20は、第2の出口24.bに対向させて開口246をもたらすために、上述と全体的に同様の方式で、当該フロート132のさらなる角度αに亘る回転を生じさせるであろう次の作動サイクルの用意ができている。かくて、第2のサンプル42.bが第2のバッグ52.bの内部に収集される(図1を見よ)。
【0039】
この作動サイクルは、APD処置の終わりにおいて、最後の出口24.nが到達されるまでに要求される回数繰り返されてもよい。
【0040】
図5は、5つの出口を備える多重コネクタ244を示しているが、しかし、特定の要求を満たすために、当該装置20の実質的な修正を伴わずに異なる数の出口を設けることが可能であることは自明である。
【0041】
図6及び7に概略的に示されている装置20の実施形態が、今や、詳細に説明される。この実施形態によれば、装置はステーター360とステーター360の内部の中心のチャンバー361内に収容されているローター362とを備えている。入口22によってアクセスされる環状チャンバー330が、中心のチャンバー361の周りに形成されている。2つの逆方向のスラストによって作動される湾曲された摺動体364が中心のチャンバー361の内部に収容されている。第1のスラストは形状記憶合金(SMA)又は形状記憶ポリマー(SMP)のような形状記憶材料で作られているスラスター366によって与えられる。よく知られている形状記憶材料は、ニチノールと呼ばれているニッケル及びチタンがベースの合金である。当該スラスター366は、環状チャンバー330の内部で、湾曲された摺動体364の一方向への回転を生じさせる傾向にある。第2のスラストは、従来の形式のスプリング368によって与えられ、そして環状チャンバー330の内部で湾曲された摺動体364の反対方向への回転を生じさせる傾向にある。図6及び7に概略的に示されている実施例に従えば、当該スラスター366が湾曲された摺動体364の時計回り方向の回転を生じさせる傾向にある一方、スプリング368はそれが反時計回り方向に回転するのを生じさせる傾向にある。湾曲された摺動体364の平衡状態は2つのスラストが等しいときに、それ自体既知の方法で到達される。
【0042】
当該スラスター366を形成する形状記憶合金(SMA)は、温度において変動が存するときは、それ自体既知の方法で、その構造を変更することができる。この特定の場合には、当該SMAは、34°Cより低い温度で安定であるマルテンサイト組織から、34°Cより高い温度で安定であるオーステナイト組織へ通過することができる。合金の内部構造における当該変化は、当該スラスター366の形状における対応する変化に帰する。特に、図6は内部温度が安定的に34°Cより低い状態における装置20を示している。この状態では、当該スラスター366はそのより圧縮された形態にあり、それ故に、湾曲された摺動体364がスプリング368によって、その角度付き移動経路の反時計回り端部に対して押されている。逆に、図7は内部温度が安定的に34°Cよりも高い状態における装置20を示している。この状態では、当該スラスター366はより拡張された形態にあり、それ故に、湾曲された摺動体364がその角度付き移動経路の時計回り端部におけるスプリング368に対して押されている。湾曲された摺動体364の全体の角度付き移動経路は、角度βを含んでいる。
【0043】
環状チャンバー330は、通路348を経由して中心のチャンバー361に流体の連通をしている。特に、当該通路348は、湾曲された摺動体364がその移動経路の反時計回り端部にあるときに湾曲された摺動体364によって覆われ、そして湾曲された摺動体364がその移動経路の時計回り端部にあるときに摺動体364によって覆われないような位置に形成されている。
【0044】
当該湾曲された摺動体364には、ローターに設けられた対応する第2の係合手段372に係合すべく設計されている、第1の係合手段370が設けられている。係合手段370及び372は、問題になっている実施例において、時計回り方向においての意味での係合を許容するように形成されている。
【0045】
ステーター360の主チャンバー361のルーフ333は多重コネクタ344の機能を実行し、複数の出口24を画成している。装置20の出口24の各々は、実際には、チューブ25に連結されている。図6及び7において、大半のチューブ25は明瞭化のために取り除かれている。図7では、唯一のチューブ25のみが見え、開いた出口24.aに連結されている。出口24は、ステーター360の軸線から同じ半径距離に位置され、そして周方向に等距離に離間されている。当該ルーフ230の2つの連続する出口24を分けている角度βは、湾曲された摺動体364によって移行される角度βに等しい。
【0046】
当該ローター362は、その頂壁部363に開口346を備えている(図9をも見よ)。頂壁部363は、開口346に並ぶ1つ以外の全ての出口24を塞ぐことができる。図6、7及び9による開口346は、当該出口24から容易に区別されるべき六角形状を有している。開口346として他の形状が用いられてもよいこともちろんである。
【0047】
図6から7に示されている実施形態による装置20の作動が、今や、説明される。自動サイクラー14が当該ドレーンフェーズのスタートを起動すると、当該カテーテル12を出発した飽和透析液が排液ライン18に沿って流れ、当該装置20の入口22に到達し、そして環状チャンバー330にアクセスする。このことは、環状チャンバー330の内部温度が大気温度(典型的に34°Cより低い)から患者Pの体温(34°Cより高い)にまで上昇することに帰する。かくて、これは当該SMAの構造においての変化、及びそれ故に当該スラスター366の形状においての変化を生じさせる。湾曲された摺動体364に付与された時計回り方向のスラストは、かくてスプリング368のスラストに打ち勝ち、それ故に、湾曲された摺動体364をその角度付き移動経路の時計回り端部に移動させる。換言すると、当該スラスター366の形状における変化が、当該湾曲された摺動体364を図6に示された位置から図7に示された位置まで移動させる。湾曲された摺動体364の回転の間に、ローター362もまた係合手段370及び372の結果として移動される。当該ローター362の回転移動は、開口346の第1の出口24.aへの整列を生じさせる。かくて、飽和した透析液が入口22から第1の出口24.aを介してチューブ25.aに沿って自由に流れることができ、そしてその後、バッグ52.aの内部に第1のサンプル42として収集される(図1を見よ)ように流体経路が確立される(図7における点線矢印を見よ)。当該ドレーンフェーズの終わりには、入口22への当該飽和透析液の流れが中断され、そして当該装置20の残りの透析液は選択されたサンプルバッグ52.a内に完全に流れる。その後、環状チャンバー330の内部温度は患者Pの体温(34°Cより高い)から低下し、そして大気温度(典型的には34°Cより低い)に再度到達する。かくて、これは当該SMAの構造において新しい変化、そしてそれ故に、当該スラスター366の形状において新しい変化を生じさせる。かくて、スプリング368によって湾曲された摺動体364に付与された反時計回り方向のスラストは、湾曲された摺動体364をその角度付き移動経路の反時計回り端部まで移動させる。換言すると、当該スラスター366の形状においての当該変化は、湾曲された摺動体364を図7に示された位置から図6に示された位置に移動させる。湾曲された摺動体364の反時計回りの回転は、係合手段370及び372の特別な形態のせいでローター362の移動を生じさせない。それ故に、開口346は前に取られた角度付き位置を維持する。
【0048】
この点において、当該装置20は、上に述べたのと全体的に同様の方式で、ローター362のさらなる角度βに亘るさらなる回転を付与し、かくて開口346を第2の出口24.bに対向させてもたらすために湾曲された摺動体364の新たな回転を生じさせるであろう次の作動サイクルの用意ができている。かくて、第2のサンプル42.bは、第2のバッグ52.bの内部に収集される(図1を見よ)。
【0049】
この作動サイクルは、APD処置の終わりにおける最後の出口24.nが到達されるまで必要とされる回数繰り返されてもよい。
【0050】
さて、図8及び9に概略的に示されている装置20の実施形態が詳細に説明される。この実施形態は、図6及び7を参照して上に説明したのと極めて類似している。かくて、同様の部品に対しては前の説明が参照されて、相違点のみが以下に説明される。同じ要素は同一の参照符号によって識別されている。当該装置20はステーター360及びローター362を備えている。ローター362の頂壁部363は多重コネクタ344の機能を実行し、そして複数の出口24を画成している。当該装置20の出口24の各々は、実際にはチューブ25に連結されている(図10.bをも見よ)。図8及び9において、チューブ25の大半は明瞭化のために取り外されている。図9においては、1つのチューブ25のみが開いた出口24.aに連結されて見えている。出口24はローター362の軸線から同じ半径距離で、周方向に等距離だけ離間されて位置されている。ローター362の2つの連続する出口24を分けている角度βは、湾曲された摺動体364によって移行される角度βに等しい。ステーター360は開口346を画成している壁部374を備えている。当該壁部374は、開口346に並んでいる1つ以外の全ての出口24を塞ぐことができる。図8及び9によれば、開口346は当該出口24から容易に区別し得るべく円扇形状を有している。もちろん、開口346として他の形状が用いられてもよい。
【0051】
図8及び9に示された実施形態による装置20の作動がここに簡単に説明される。透析液が環状チャンバー330にアクセスするとき、当該スラスター366はその形状を変化させる。スラストは、湾曲された摺動体364をその角度付き移動経路の時計回り端部に移動させ、通路348を覆わなくする。湾曲された摺動体364の回転の間に、ローター362もまた、係合手段370及び372の結果として移動される。ローター362の回転移動は、第1の出口24.aがステーター360の開口346に整列されるのを生じさせる。かくて、飽和した透析液がバッグ52.aに自由に流れることができるように、流体経路が確立される(図9の点線矢印を見よ)。
【0052】
飽和した透析液の流れが中断されたとき、残りの透析液は当該装置20からサンプルバッグ52.a内に完全に流れる。環状チャンバー330の内部の温度は低下し、湾曲された摺動体364を元に移動させる、当該スラスター366の形状における新たな変化を生じさせる。湾曲された摺動体364の反時計回りの回転はローター362の移動を生じさせず、そして当該出口24は前に取られた角度付き位置を維持する。
【0053】
当該装置20は次の作動サイクルのために用意ができている。湾曲された摺動体364の新たな回転がローター362のさらなる角度βに亘るさらなる回転を付与し、第2の出口24.bを開口346に一致させる。
【0054】
この作動サイクルは、APD処置の終わりにおける最後の出口24.nが到達されるまで必要とされる回数繰り返されてもよい。
【0055】
図6及び7に示されたもの及び図8及び9に示されたものの、2つの上に説明された実施形態間の差異は、図10.a及び10.bに示されたそれぞれのローター形状及び機能を考慮すれば、容易に評価され得る。図10.aに見られるように、図6及び7に示された実施形態のローター362は、1つの開口346のみを有している。かかる開口346は、ステーター360に設けられている出口24の1つを引き続いて有効とするように回転することが意図されている。それどころか、図10.bに見られるように、図8及び9に示された実施形態のローター362は複数の出口24を有している。かかる出口24は、ステーター360に設けられた開口346のみによって引き続いて有効にされるように回転することが意図されている。
【0056】
図6ないし9は、6つの出口を備える多重コネクタ344を示しているが、しかし、特定の要求を満たすためには、当該装置20の実質的な修正無しに異なる出口の数を設けることが可能であることは自明である。
【0057】
上述の透析液のサンプルを収集する装置の実施形態を参照して、当業者は、特定の要求を満たすために、添付のクレームの範囲から逸脱すること無しに、説明された要素を修正及び/又は均等な要素に置換え得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析液のサンプル(42)を収集する装置(20)であって、
透析液の流れを受け取る入口(22)、
飽和した透析液の流れを提供する複数の出口(24)、
前記出口(24)の一つを連続して選択する手段(26)、
を備え、
該連続選択手段(26)は、入口(22)から受け取られた透析液の流れによってのみ作動されることを特徴とする装置(20)。
【請求項2】
前記複数の出口(24)は、多重コネクタ(144、244、344)によって画成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置(20)。
【請求項3】
前記連続選択手段(26)は、前記透析液の流れにより到達されたとき、浮揚スラストを発生させるに適したフロート(132,232)を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置(20)。
【請求項4】
前記フロート(132)は、前記多重コネクタ(144)の内部を摺動すべく設計された中空の摺動体(138)に作用するように、休止位置から作動位置まで垂直に移動することができることを特徴とする請求項3に記載の装置(20)。
【請求項5】
前記中空の摺動体(138)は、前記出口(24)のいずれにも選択的に整列されるべく適合された半径方向の開口(146)を備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の装置(20)。
【請求項6】
前記フロート(232)は、前記多重コネクタ(244)に関して、休止位置から作動位置まで垂直に移動し、かつその垂直軸線の回りに回転することができることを特徴とする請求項2に記載の装置(20)。
【請求項7】
前記フロート(232)は、当該フロートの底部の開口(248)を当該フロートの頂部の他の開口(246)に連結するダクトを備え、当該開口(246)は前記出口(24)のいずれかと選択的に整列されるべく適合されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の装置(20)。
【請求項8】
前記連続選択手段(26)は、形状記憶材料から作られ、前記透析液の流れにより到達されたときその形状を変えるのに適したスラスター(366)を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置(20)。
【請求項9】
前記スラスター(366)は、開口(346)を備えるローター(362)に作用するのに適し、当該開口(346)は前記出口(24)のいずれにも選択的に整列されるべく適合されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の装置(20)。
【請求項10】
排液ライン(28)をさらに備えていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の装置(20)。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の装置(20)を備える腹膜透析システムであって、
当該装置(20)の入口(22)に連結する又は連結されている供給ライン(18)、及び
装置(20)の出口(24)の1つに連結する又は連結されている少なくとも1つの収納器(52)、を備えるチューブセットを有することを特徴とする腹膜透析システム。
【請求項12】
装置(20)に連結された排液ライン(28)をさらに備えていることを特徴とする請求項11に記載の腹膜透析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−a】
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【図10−b】
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【公表番号】特表2012−528617(P2012−528617A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513548(P2012−513548)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057291
【国際公開番号】WO2010/139590
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(599117152)フレゼニウス メディカル ケアー ドイチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (50)
【氏名又は名称原語表記】Fresenius Medical Care Deutschland GmbH
【Fターム(参考)】