説明

サーキット・ブレーカ

このサーキット・ブレーカは、絶縁ガスで満たされたエンクロージャの中に、絶縁ガスで満たされ長手方向軸(2)に沿って伸びる少なくとも一つの遮断室(1)を有している。この遮断室(1)は、実質的に放射対称に構成され、且つ、アーク用スペース(4)及び少なくとも二つの対応するアーク接触子(5,6)を含んでいる。上記アーク用スペース(4)は、排気スペース(12)を有する少なくとも一つの排気管に、アクティブに接続されている。上記排気管は、遮断動作の間に生成される高温ガスを冷却するために構成され、上記遮断室のスペース(22)に接続されている。このサーキット・ブレーカの遮断容量は、大幅に増大され、排気管は、比較的シンプルで且つコスト効率の良いやり方で構成されることになる。このことは、上記排気管の領域の中に、高温ガス流動抵抗を増大させる少なくとも一つの強制的に作られる循環領域(29,31)を設けることによって実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分によるサーキット・ブレーカに基づく。
【背景技術】
【0002】
スイス国特許 CH 645 753 号明細書から、高電圧送電網において使用することができるサーキット・ブレーカが知られている。このサーキット・ブレーカは、クエンチ及び絶縁媒体として、例えばSFガスのような絶縁的に不活性なガスで満たされた回転対称形の遮断室を有している。この遮断室は、アーク用スペースを有し、その中で、クエンチ及び絶縁媒体が、二つのアーク接触子の間の遮断アークの放電により、イオン化され且つ加熱される。この加熱されたクエンチ及び絶縁媒体の一部は、絶縁ノズルを通って、排気スペースの中に流れこみ、そこで、冷却デバイスにより冷却され且つ再度方向付けられる。
【0003】
加熱されたクエンチ及び絶縁媒体と、排気管の中に存在している低温ガスの混合は、比較的僅かな程度でしか可能でない。その理由は、低温ガスの大半の部分が、ある程度の混合が可能になる前に、当該加熱されたクエンチ及び絶縁媒体により排気管から押し出されるからである。冷却デバイスのガスの流れに対する流動抵抗は、このサーキット・ブレーカの中において、可能な限り、低く抑えられる。上記の冷却されそして非イオン化されたクエンチ及び絶縁媒体は、その後、更なるスイッチング・プロセスのために、再度利用可能になる。
【0004】
冷却デバイスは、冷却プレートを有している。この冷却プレートは、流れを助けるために精密に形作られ、且つ、精密に支持されていなければならない。それに加えて、この冷却プレートは、焼損ロス及び磨耗に対する抵抗性を有する金属で作られ、そのために、比較的高価である。低温ガスとの混合による加熱されたクエンチ及び絶縁媒体の冷却は、ここでは、非常に僅かな程度でしか起こらない。
【特許文献1】スイス国特許 CH 645 753 号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
独立請求項の中で特徴付けられた本発明は、際立って増大した遮断容量を有するサーキット・ブレーカを創造することにより、上記の目的を実現する。このサーキット・ブレーカの排気管は、比較的単純に且つ経済的に構成され、このサーキット・ブレーカは、高温ガスを特に効果的なやり方で冷却する。
【0006】
独立請求項の中で特徴付けられた本発明は、際立って増大した遮断容量を有するサーキット・ブレーカを創造することにより、上記の目的を実現する。このサーキット・ブレーカの排気管は、比較的単純に且つ経済的に構成され、このサーキット・ブレーカは、高温ガスを特に効果的なやり方で冷却する。
【0007】
本発明に基づくサーキット・ブレーカは、絶縁ガスで満たされたエンクロージャの中に、長手方向軸に沿って伸びる少なくとも一つの遮断室を有している。この遮断室は、放射対称に実質的に構成され、且つアーク用スペース及び少なくとも二つの対応するアーク接触子を有している。このアーク用スペースは、排気スペースを有する少なくとも一つの排気管に、アクティブに接続されている。この排気管は、遮断動作の間に生成された高温ガスを冷却するために構成され、遮断室のスペースに接続されている。この排気管の領域の中に、少なくとも一つの強制的に作られる循環領域が設けられ、この循環領域は、高温ガスの流動抵抗を増大させる。
【0008】
本発明に基づくこのサーキット・ブレーカの一つの変形形態において、高温ガスは、遮断の間に、アーク用スペースから中間スペースの中に流入する。この中間スペースの中には、高温ガスの流れの中に突出する少なくとも一つのバッフル・プレートが設けられている。上記の中間スペースは、ラバル管(Laval nozzle)の形態で構成されノズル狭窄部を有するフロー・チューブに取り付けられている。このフロー・チューブは、遮断室スペースに接続された排気スペースへ通じている。
【0009】
サーキット・ブレーカの好ましい実施形態は、以下のように構成される;即ち、高温ガスの中間スペース内への入口とバッフル・プレートの間に、距離L1が設けられ、バッフル・プレートとノズル狭窄部の間に、距離L2が設けられ、ノズル狭窄部とフロー・チューブの出口先端部の間に、距離L3が設けられる。そして、これらの距離の間に、下記の関係が適用され:
L2=0.7*L1
また、フロー・チューブの長さL3は、フロー・チューブのノズル狭窄部の直径の、2倍から3倍の範囲内である。
【0010】
サーキット・ブレーカの特に効果的な更なる変形形態において、高温ガスの流れの方向を180°まで変換する手段が、排気スペースの中に設けられる。
【0011】
極めて大きな遮断電力に適したサーキット・ブレーカの変形形態は、フロー・チューブの中に開口を有し、これらの開口は、フロー・チューブ内への更なるガスの流入のために設けられ、それによって、少なくとも一つの第二の強制的に作られる循環領域が形成され、その中で、高温ガスが、より冷たいガスと特に効果的に混合されて、冷却されることになる。
【0012】
本発明によって実現される有利な効果は、実際には、次のように見ることができる; 即ち、高温ガスの特に良好な冷却なために、高温ガスのスペースの漸進的な減少が生じ、従って、アーク用スペースからの高温ガスの最適な流出が確保され、それによって、遮断室の寸法がほぼ同一のままで、サーキット・ブレーカの極めて高い遮断容量が実現されることになる。
【0013】
同時に、サーキット・ブレーカのスイッチング・オフについての信頼性もまた、好都合にも増大する。
【0014】
本発明の更なる有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下のテキスト中において、本発明、その改良、及びそれによって得られる有利な効果が、図面を用いてより詳細に説明される。但し、それは可能性のある実施化の一つの方法を示すものに過ぎない。
【0016】
全ての図面において、同一機能の要素には、同一の参照符号が付されている。本発明の直接の理解のために必要とされない要素は、示されていないか、あるいは、記載されていない。
【0017】
サーキット・ブレーカは、絶縁ガスで満たされた 一つまたはそれ以上の直列に接続された遮断室を有することが可能である。これらの遮断室は、従来のスイッチング原理の内の一つに従って、換言すれば、例えば、自己ブローイング(self-blowing)または自己消火(self-extinguishing)チェンバーとして、少なくとも一つの付加的な圧縮ピストンまたはパファー装置(puffer arrangement)を備えた自己ブローイングチェンバーとして、または単純なパファー・ブレーカ(puffer breaker)として、動作する。サーキット・ブレーカは、密閉型のサーキット・ブレーカとして構成されることが可能であり、金属またはプラスチックが、密閉容器の材料として選択されることが可能である。このようにして、サーキット・ブレーカは、例えば、ライフ−タンクまたは屋外ブレーカとして、金属−密閉型のガス絶縁型スイッチ・ギアの一部として、またはデッド−タンクブレーカとして、作られることが可能である。
【0018】
図1に、サーキット・ブレーカの第一の実施形態の遮断室1(非常に単純化され概略化されている)の、スイッチング・オフ・プロセスの間の、部分断面図を示す。示されているパワー電流経路に加えて、平行な公称電流経路が、原則として常に存在するが、それは図中では省略されている。
【0019】
このケースにおいて、この遮断室1は、例えば、回転対称で且つ長手方向軸2に沿って伸びた形態で、作られている。この遮断室1は、ここでは、同心状に配置され且つ接地された金属エンクロージャ3により、ガス・タイトに密閉されている。遮断室1を金属エンクロージャ3の中に固定する電気的に絶縁性のホルダーは、示されていない。遮断室1はアーク用スペース4を有し、その中で、スイッチング・オフ動作の間に、二つの棒状のアーク接触子5及び6の間で、アーク7が放電する。
【0020】
アーク接触子5は、ここでは、スイッチング・オフ動作の間に、矢印8の方向へ軸方向に移動する可動接触子として作られている。これに対して、アーク接触子6は、固定接触子として構成されている。しかし、明瞭性を確保するために、その機械的な取り付け構造は、示されていない。しかしながら、遮断室変形形態として、両側で移動することができるアーク接触子を備え形態や、両側で固定されたアーク接触子を備えた形態もまた、可能である。
【0021】
アーク用スペース4は、絶縁ノズル9の内側の壁面により、径方向に限界が定められている。絶縁ノズル9は、中間スペース10の方向に開口している。絶縁ノズル9は、固定された状態で作られることが可能であるが、ここで想定されているように、アーク接触子5とともに、移動可能であっても良い。
【0022】
スイッチング・オフ動作の間に、アーク7は、周知のやり方で、アーク用スペース4内の絶縁ガスを加熱する。この加熱され、イオン化されそして加圧されたガスの大半の部分は、絶縁ノズル9から流出し、中間スペース10の中に流れ込む。絶縁ノズル9から流れ出るこの円錐状の高温ガスの流れは、バッフル・プレート11に衝突する。このバッフル・プレート11は、原則として金属製であり、固定アーク接触子6に取り付けられている。この円形のバッフル・プレート11は、高温ガスの流れの方向を変換させ、それにより、高温ガスが、直接的に軸方向前方に、排気スペース12の中へ流れ込むことを防止する。矢印13は、この高温ガスの、アーク用スペース4から排気領域の中へ入り次いで排気領域の中を通る 全体的な流れ方向を示している。
【0023】
中間スペース10は、金属製の壁面14により、径方向に限界が定められている。絶縁ノズル9の方向に向いた側に、管状の突出部15が設けられ、この管状の突出部15は、壁面14により外側方向に限界が定められた中間スペース10より、小さい直径を有しており、壁面14に軸方向に取り付けられている。この管状の突出部15の中で、絶縁ノズル9の外側が軸方向にガイドされる。管状の突出部15の反対方向に向いた側には、狭窄部16が、中間スペース10の壁面14に取り付けられ、このサイドで、中間スペース10の限界を定めている。
【0024】
壁面14から狭窄部16への移行部は、半径Rを有し、この半径Rは、中間スペース10内での高温ガスの方向の変換を助ける。40kAから70kAまでの範囲内の遮断電流に対して、25mmの範囲内の半径Rが選択され、その結果として、冷却された排気ガスの、約30°の排出角度αが実現される。
【0025】
狭窄部16は、軸方向に伸びる金属製のフロー・チューブ17に移行している。このフロー・チューブ17は、ラバル管の形態で構成され、中間スペース10の方向に向いた側でノズル狭窄部18を有し、排気スペース12の方向に開口している。排気スペース12の方向における、フロー・チューブ17の端部は、出口先端部17aと呼ばれる。フロー・チューブ17は、ラバル管の形態で作られており、従って、中間スペース10を排気スペース12につなげる。
【0026】
排気スペース12は、金属製の排気ハウジング19により限界が定められ、この排気ハウジング19は、流れを促進するように構成され、高温ガスの流れを、180°まで曲げる。排気ハウジング19の円筒状に構成された部分は、中間スペース10とほぼ同一の外径を有しており、この部分は、フロー・チューブ17、ガスの流れのための残された環状の断面積を有するダクト20、及び、フロー・チューブと排気ハウジング19の間にある既に僅かに冷却された高温ガスの周囲を取り囲んでいる。狭窄部16の外側の壁面と排気ハウジング19の終端部21の間に、円筒状の出口領域が残され、この出口領域を通って、ガスが、更に冷却されて、斜め方向に遮断室スペース22の中に流れ込む。遮断室スペース22の中の絶縁ガスは、遮断室1の上述のアクティブな部分の周囲を取り囲み、それらを、金属エンクロージャ3に対して絶縁する。
【0027】
中間スペース10は、バッフル・プレート11まで、長さL1を有している。バッフル・プレート11からノズル狭窄部18までの距離はL2であり、ノズル狭窄部18から出口先端部17aまでのフロー・チューブ17は、長さL3を有している。以下の長さの比が、この排気部の構造の冷却性能に関して、特に有利であることが見出された:
L2=0.7*L1
もし、排気部の構造に関して、より大きな長手方向の寸法が容易に可能である場合には、L1の70%から100%の値が、ここで実現されることも可能である。
【0028】
フロー・チューブ17の長さL3は、好ましくは、それが、ノズル狭窄部18の直径の3倍に対応するように、選択される。しかしながら、満足し得る排気管容量は、もし、フロー・チューブ17の長さL3が、それがノズル狭窄部18の直径の2倍から3倍の範囲内にあるように、選択された場合にも実現される。
【0029】
図2は、図1による遮断室の排気領域の、非常に単純化され概略化されて描かれた部分断面図を示す。この図2において、アーク用スペースからの高温ガスの流出のために決定される断面積が、示されている。
【0030】
面積FDは、絶縁ノズル9からの高温ガスの出口領域、あるいは、中間スペース10の中への高温ガスの入口領域を示している。バッフル・プレート11は、この面積FDとほぼ同一の有効面積を有している。環状部の面積FAは、バッフル・プレート11と壁面14の間にある領域を表わしている。面積FEは、フロー・チューブ17のノズル狭窄部18の断面積を表わしている。
【0031】
面積F1は、フロー・チューブ17からの出口断面積を表わしている。この面積F1は、面積FDとほぼ同一の大きさである。環状部の面積F2は、フロー・チューブ17の出口先端部17aと排気ハウジング19の間にある領域を表わしている。環状部の面積F3は、フロー・チューブ17の狭窄部と排気ハウジング19の仮想延長部の間にある断面積を表わしている。狭窄部16の外側の壁面と排気ハウジング19の終端部21の間には、円筒状の出口領域F4が残されている。
【0032】
上述の長さの比も有している最適な排気管デザインにおいて、面積FD、バッフル・プレート11の面積、及び面積F1は、ほぼ同一のサイズとなるように構成される。バッフル・プレート11の周りの環状部の面積FAは、それが面積FDの30%から80%までであるように構成される。最適の排気管容量は、FA=50%*FD の関係が維持されているときに得られる。原則として、面積FE及びF2は、それらがFDの50%から70%までの範囲内であるように、その寸法が定められる。環状部の面積F3は、出口領域F4と同様に、面積FDとほぼ同一のサイズである。
【0033】
図3は、上述の排気領域の、可能性な更なるデザインを示している。遮断室1に要求される遮断容量に依存して、以下のテキストの中で示される変形形態は、単独でまたは2つか3つの組み合わせで使用されることが可能である。バッフル・プレート11の上流には、第二の金属製のプレート、即ち、円形に構成されたパーフォレイテッド・プレート23が、ここでは、組み込まれている。このプレートには、複数の開口24が設けられている。
【0034】
パーフォレイテッド・プレート23とバッフル・プレート11は、ほぼ同一の直径を有し、それらの間には、距離Aが設けられている。これらの開口24が、それぞれ直径D1を有し、比A/D1が2の値を有しているとき、高温ガスの特に良好な冷却が実現される。しかし、A/D1=1.5から5までの全領域の中で、比較的良好な冷却結果が実現される。原則として、それらの開口24の間の距離は、直径D1の2倍以上の範囲内に定めるべきである。
【0035】
更なる開口25を、フロー・チューブ17に、ノズル狭窄部18の下流で、設けることが可能である。これらの開口25は、異なる形状であっても良く、フロー・チューブ17の内側を、フロー・チューブ17の外側の環状のスペースにつなげる。それに加えて、流れを促進するように構成されたデフレクター26を、フロー・チューブ17の開口に対向して、排気ハウジング19の中に取り付けることができる。このデフレクター26は、高温ガスの流れの180°の方向の変換を容易にする。
【0036】
図4は、バッフル・プレート11の実施形態の他の変形形態を、上面図、及び右側の部分断面図として示す。円形の金属製のバッフル・プレート11には、ほぼ同じ深さの狭いノッチ27が設けられ、それらは、周囲に一様に配置されている。ノッチ27の間に残されるウイング28は、それぞれ、風車の形状で、約30°傾いている。このようにバッフル・プレート11を構成することにより、高温ガスの流れの中に、特に効果的な乱流状態が実現され、それに対応して、この流れの特に良好な冷却が実現される。バッフル・プレート11をアーク接触子6に接続するためのデバイスは、示されていない。
動作を説明するため、次に、上述の図面をより詳細に考察する。矢印13は、アーク7により生成された高温ガスの、遮断室1の排気領域を通る全体的な流れを示している。高温ガスが絶縁ノズル9から流れ出た後、その高温ガスは、バッフル・プレート11に衝突して、僅かに曲げられる。バッフル・プレート11は、高温ガスからの熱エネルギーを吸収し、同様に、壁面14も熱エネルギーを吸収する。この冷却のために、高温ガスの流れの体積が、僅かに減少する。この高温ガスは、次いで、バッフル・プレート11の周りを流れ、狭窄部16に衝突し、そこで、再び曲げられ、狭窄部16の材料にエネルギーを分配することにより、更に冷却され、それにより体積が減少する。
【0037】
バッフル・プレート11の下流に位置している中間スペース10の領域が、ガスの流れのための循環領域29として、部分的に使用される。循環領域29の面積が、破線で示された矢印30により、概略的に示されている。この循環領域29の中で、効果的な流れが形成され、この流れは、高温ガスと、中間スペース10内にある温度がより低い絶縁ガスとの特に良好な混合を招来する。高温ガスと、中間スペース10内にある温度がより低い絶縁ガスとのこの混合のために、熱エネルギーの大半が、高温ガスから取り除かれる。中間スペース10のエッジ領域の中に生じる乱流状態は、高温ガスから規制材の材料への熱の移転を改善する。しかし、原則として、排気の冷却効果に対するそれらの寄与は、余り重要ではない。
【0038】
更に冷却されたこの混合ガスは、次に、フロー・チューブ17の中に流れ込み、そこで先ず、ノズル狭窄部18により狭められる。フロー・チューブ17が、ノズル狭窄部18の後でラバル管の形態で広げられているので、ガスの流れの速度が、そこで増大し、それにより負の圧力が作り出されることになり、この負の圧力は、ノズル狭窄部18を介して、ガスを更に吸い込む。この効果は、好都合にも、バッフル・プレート11の下流に位置する循環領域29の領域の中での、ガスの混合の強さを増大させる。フロー・チューブ17の壁面もまた、高温ガスから熱エネルギーを吸収して、取り除く。
【0039】
高温ガスは、先ず、アーク用スペース4から、主として軸方向に流れ出る。しかし、フロー・チューブ17から出て来た後、高温ガスは、排気ハウジング19により180°曲げられ、フロー・チューブ17の外側で、当初の流れ方向に対して反対にガイドされる。金属製の排気ハウジング19は、高温ガスから熱エネルギーを吸収して取り除く。この熱の移転は、ガスの方向の変換の間に必然的に形成される渦により、改善される。ガスの流れの、この完全な再方向付けは、排気領域の構造的長さを減少させ、その結果としてサイズの好都合な減少をもたらし、それにより、遮断室1のコストの減少ももたらす。
【0040】
幾何学的な条件が許す場合には、比較的大きな排気スペース12を設け、上記の方向変化を省略することも、容易に考え出すことができる。
【0041】
その後で、ガスは、更に冷却され、フロー・チューブ17の外側と排気ハウジング19の間を、遮断室スペース22の方向へ流れる。図2から分かるように、ガスが流れる環状部の面積F2は、この領域への入口において、環状部の面積F3よりも小さく、または、ガスがこの排気領域から流れ出るときの円筒状の出口領域F4よりも小さい。それにより、ガスの流れの速度が、大幅に減少され、その結果として、この領域でガスの圧力が僅かに増大する。
【0042】
狭窄部16から、壁面14への移行部は、半径Rを有している。40kAから70kAまでの範囲の遮断電流のために、25mmの範囲内の半径Rが選択され、その結果として、冷却された排気ガスの遮断室スペース22の中への、約30°の排出角度αが実現される。
【0043】
冷却された排気ガスの斜め方向の出口は、ガスの流れの中にまだ存在するかも知れないイオン化されパーティクルが、より長い経路上で、遮断室スペース22の中に存在する冷たい絶縁ガスにより冷却されると言う結果をもたらし、その結果、それらが、電圧が掛かっているアクティブな遮断室部分と、原則として接地されている金属エンクロージャ3の間で、フラッシュ・オーバーを引き起こすことができなくなる。ガスが、円筒状に構成された出口領域F4からほぼ放射方向に流れ出るときには、全てのケースにおいて適切な絶縁強度を確保することは、可能でないこともあり得る。
【0044】
図3に示されている遮断室1の実施形態の変形形態は、排気管の性能を改善する。バッフル・プレート11の前に取り付けられたパーフォレイテッド・プレート23は、バッフル・プレート11の冷却効果を大幅に改善する。
【0045】
他の変形形態において、フロー・チューブ17に設けられた開口25は、僅かに冷たいガスの、外側からフロー・チューブ17の内側への流入を可能にする。その理由は、フロー・チューブ17の外側のガス圧力が、その内側よりも高いからである。
【0046】
その結果として、更なる循環領域31(破線の矢印32で示されている)が、ここでは、フロー・チューブ17の中及びダクト20の中に形成される。この循環領域31の中で、それはまた力により作り出されるものであるが、高温及び低温ガスの更に強い混合が生じ、高温ガスのより良好な冷却が生ずる。その後に、排気ガスの流れの速度が、フロー・チューブ17内で、再び増大する。
【0047】
排気ハウジング19の中に挿入されたデフレクター26は、好都合にも、ガスの流れの反対方向への方向変換の間に、動抵抗を減少させる。それに加えて、デフレクター26は、ガスの流れから更なる熱エネルギーを取り除く。
【0048】
図4に示されているように、周囲に配置された狭い径方向のノッチ27を備えた円形の金属製の バッフル・プレート11は、高温ガスの流れの中に、特に効果的な乱流状態を発生させる。風車の形態で捩じられたウイング28のために、流れに、回転運動が与えられ、それが、更に流れを強める。以上で説明したバッフル・プレート11の他の実施形態と比較して、ノッチ27を直接的に通過する高温ガスの流れは、高温及び低温ガスのより強い混合を、バッフル・プレート11の背後の循環領域29で引き起こし、それに対応して、より効果的な高温ガスの冷却を、この領域でもたらす。
【0049】
全てのこれらの手段は、個別にあるいはそれらの組み合わせで、サーキット・ブレーカの遮断容量の好都合な増大をもたらす。もし、サーキット・ブレーカの容量の更なる増大を実現しようとする場合には、固定アーク接触子6と向かい合う可動アーク接触子5の排気領域の幾何学的構造が、既に述べた実施形態と同様なやり方で、デザインされる。その結果、可動アーク接触子5の側で、アーク用スペース4から遮断室スペース22の方向に、取り除かれた高温ガスも、同様に効果的なやり方で冷却される。このことは、高温ガスの流れの体積の更なる好都合な減少をもたらす。
【0050】
サーキット・ブレーカは、その単数または複数の遮断室の両側に、この改良された高温ガスの冷却方式が設を設けることにより、同じ寸法を有する従来のサーキット・ブレーカと比べて、極めて高い遮断容量を備える。
【0051】
バッフル・プレート11が無く、且つパーフォレイテッド・プレート23が無い排気管変形形態を構成することも、容易に可能である。この排気管変形形態において、フロー・チューブ17のみが、開口25に設けられ、それによって、循環領域31が、単一の循環領域として、サーキット・ブレーカの遮断またはスイッチング・オフ動作の間に形成され、この領域の中に、高温ガスの強い冷却をもたらす。この排気管変形形態もまた、フロー・チューブ17の後での、ガスの方向変換が、有る形態でまたは無い形態で、構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、密閉型サーキット・ブレーカの第一の実施形態の、非常に単純化され概略化されて描かれた遮断室の部分断面図を示す。
【図2】図2は、図1による遮断室の排気領域の非常に単純化され概略化されて描かれた部分断面図を示す。
【図3】図3は、図1による遮断室の更なる排気管の変形形態の非常に単純化され概略化されて描かれた部分断面図を示す。
【図4】図4は、単純化されて示された排気管の詳細部の実施形態の変形形態を示す。
【符号の説明】
【0053】
1・・・遮断室、2・・・長手方向軸、3・・・金属エンクロージャ、4・・・アーク用スペース、5,6・・・アーク接触子、7・・・アーク、8・・・矢印、9・・・絶縁ノズル、10・・・中間スペース、11・・・バッフル・プレート、12・・・排気スペース、13・・・矢印、14・・・壁面、15・・・管状の突出部、16・・・狭窄部、17・・・フロー・チューブ、17a・・・出口先端部、18・・・ノズル狭窄部、19・・・排気ハウジング、20・・・ダクト、21・・・終端部、22・・・遮断室スペース、23・・・パーフォレイテッド・プレート、24・・・開口、25・・・開口、26・・・デフレクター、27・・・ノッチ、28・・・ウイング、29・・・循環領域、30・・・矢印、31・・・循環領域、32・・・矢印、α・・・排出角度、R・・・半径、L,L,L・・・様々な長さ、FD・・・領域、FA・・・環状部の面積、FE,F1・・・領域、F,F・・・環状部の面積、F・・・出口領域、A・・・距離、D1・・・直径。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーキット・ブレーカであって、
このサーキット・ブレーカは、絶縁ガスで満たされたエンクロージャの中に、長手方向軸(2)に沿って伸びる少なくとも一つの遮断室(1)を有し、且つ、
このサーキット・ブレーカは、実質的に放射対称に構成され、且つ、アーク用スペース(4)及び少なくとも二つの対応するアーク接触子(5,6)を有し、
前記アーク用スペース(4)は、排気スペース(12)を有する少なくとも一つの排気管にアクティブに接続され、
この排気管スペースは、遮断動作の間に生成された高温ガスを冷却するために構成され、且つ、前記遮断室のスペース(22)に接続された、
サーキット・ブレーカにおいて、
前記排気管の領域の中に、高温ガスの流動抵抗を増大させる少なくとも一つの強制的に作られる循環領域(29,31)が設けられたことを特徴とするサーキット・ブレーカ。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載のサーキット・ブレーカ:
− 高温ガスが、前記アーク用スペース(4)から中間スペース(10)の中へ流れること、及び
− 前記中間スペース(10)の中に、高温ガスの流れの中に突出する少なくとも一つのバッフル・プレート(11)が設けられ、このバッフル・プレートの下流に第一の循環領域(29)が形成される。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項2に記載のサーキット・ブレーカ:
− この中間スペース(10)に続いて、フロー・チューブ(17)が設けられ、このフロー・チューブは、ラバル管の形態で構成され、且つ、前記遮断室スペース(22)に接続された前記排気スペース(12)へ通じるノズル狭窄部(18)を有していること、
【請求項4】
下記特徴を有する請求項3に記載のサーキット・ブレーカ:
− 前記中間スペース(10)内への高温ガスの流入部と前記バッフル・プレート(11)の間に、距離L1が設けられ、
− 前記バッフル・プレート(11)と前記ノズル狭窄部(18)の間に、距離L2が設けられ、且つ、
− 前記ノズル狭窄部(18)と前記フロー・チューブ(17)の出口先端部(17a)の間に、距離L3が設けられている。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項4に記載のサーキット・ブレーカ:
− 前記距離の間に、下記の関係が適用され:
L2=0.7*L1
および/または、
− 前記フロー・チューブ(17)の長さL3は、前記フロー・チューブ(17)のノズル狭窄部(18)の直径の、2倍から3倍までの範囲内である。
【請求項6】
下記特徴を有する請求項3から5のいずれか1項に記載のサーキット・ブレーカ:
− 前記バッフル・プレート(11)は、高温ガスの前記中間スペース(10)内への入口領域(面積FDとして示される)と、ほぼ同一の有効面積であり、および/または、
− 前記フロー・チューブ(17)の断面積は、面積F1として示され、この面積F1は、出口先端部(17a)領域で、前記面積FDと、同一のサイズに構成され、および/または、
− 前記バッフル・プレート(11)と前記壁面(14)の間に位置する環状部の面積FAは、前記面積FDの30%から80%までであり、および/または、
− 面積FEは、前記フロー・チューブ(17)のノズル狭窄部(18)の断面積を示し、この面積FEは、前記面積FDの50%から70%までである。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項6に記載のサーキット・ブレーカ:
− 前記環状部の面積FAは、前記面積FDの約50%である。
【請求項8】
下記特徴を有する請求項1から7のいずれか1項に記載のサーキット・ブレーカ:
− 前記排気スペース(12)の中に、高温ガスの流れの方向を、180°まで変換する手段が設けられている。
【請求項9】
下記特徴を有する請求項8に記載のサーキット・ブレーカ:
− 環状部の面積F2は、前記フロー・チューブ(17)の出口先端部(17a)と前記排気ハウジング(19)の間の断面積を示すものであって、この面積F2は、前記面積FDの50%から70%までであり、および/または、
− 環状部の面積F3は、前記フロー・チューブ(17)のノズル狭窄部(18)と前記排気ハウジング(19)の仮想延長部の間にある断面積であって、この面積F3は、前記面積FDとほぼ同一のサイズであるように構成され、および/または、
− 前記狭窄部(16)の外側の壁面と前記排気ハウジング(19)の終端部(21)の間に、前記面積FDとほぼ同一のサイズであるように構成された、円筒状の出口領域F4が残される。
【請求項10】
下記特徴を有する請求項9に記載のサーキット・ブレーカ:
− 前記高温ガスは、前記遮断室のスペース(22)の中に、排出角度αで、前記円筒状の出口領域F4を介して、導入され、且つ
− この排出角度αは、30の範囲内である。
【請求項11】
下記特徴を有する請求項8に記載のサーキット・ブレーカ:
− ラバル管の形態で構成され且つ前記中間スペース(10)に取り付けられた前記フロー・チューブ(17)の中に配置された前記ノズル狭窄部(18)に続いて、
開口(25)が、前記フロー・チューブ(17)の壁面の中に設けられ、これらの開口は、前記フロー・チューブ(17)の内側にガスが流入することを可能にし、その結果として、少なくとも一つの第二の循環領域(31)が、スイッチング・オフ動作の間に、必然的に形成される。
【請求項12】
下記特徴を有する請求項2に記載のサーキット・ブレーカ:
− 前記バッフル・プレート(11)は、直径D1を有する開口(24)が設けられたパーフォレイテッド・プレート(23)により、距離Aで上流側に位置している。
【請求項13】
下記特徴を有する請求項12に記載のサーキット・ブレーカ:
− 比A/D1は、2の値を有し、且つ、
− 前記開口(24)の間の距離は、直径D1の2倍より大きな範囲内にある。
【請求項14】
下記特徴を有する請求項2に記載のサーキット・ブレーカ:
− 前記バッフル・プレート(11)には、周囲に沿って一様に配置された同じ深さの狭いノッチ(27)が設けられ、且つ、
− これらのノッチ(27)の間に残されるウイング(28)は、風車の形態で傾いた状態に構成される。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−502098(P2008−502098A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513647(P2007−513647)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000295
【国際公開番号】WO2005/122201
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(505063441)アーベーベー・テヒノロギー・アーゲー (96)
【Fターム(参考)】