説明

サーバ室用空調システム

【課題】サーバを効率的に冷却でき、保守性やスペース効率に優れ、増設や更新にも容易に対応することが可能なサーバ室用空調システムを提供する。
【解決手段】サーバ室2の床を上層床3と下層床4とにより二重床空間5を有する二重床構造とし、上層床を通風可能なグレーチングにより構成し、上層床上に多数のサーバラック1を冷気供給ゾーン6を挟んでその両側に2列に並べて配列して1モジュールのサーバラック群Mを設定する。1モジュールのサーバラック群における冷気供給ゾーンの直下の二重床空間内および直上のサーバ室の天井部にそれぞれユニット型空調機7(7A,7B)を設置可能とし、該ユニット型空調機の設置台数を1モジュールのサーバラック群の冷却負荷に応じて増減可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータセンターや電算センターにおける空調システム、特に多数のサーバをサーバラックに収容して設置するサーバ室を対象とする空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の空調システムとしては、サーバに対する冷却を効率的に行う目的でサーバ室内にコールドアイルとホットアイルを明確に分離して形成する所謂コールドアイル・ホットアイル空調方式によるものが主流となっている。
これは、たとえば特許文献1に示されているように、サーバ室の床を孔あきパネルを有する二重床として、その床上にサーバを収容した多数のサーバラックを間隔をおいて配列し、二重床から孔あきパネルを通してサーバラック間に給気(冷気)を上向きに吹き出すことによって、サーバ室内をコールドアイルすなわち二重床からの冷気(給気)が直接供給されて低温に維持されるゾーンと、ホットアイルすなわちサーバラックを冷却した後の還気(熱気)が流通するゾーンとに明確に分離するようにしたものである。
【0003】
この場合、サーバラックをその周囲に通路や保守のための空間を確保して適正に配列するとともに、サーバラックの配列に対応させて冷気の給気経路および熱気の還気経路を適正に設定することにより、サーバラックの周囲にコールドアイルとホットアイルが自ずと分離された状態で形成されてサーバラックを効率的に冷却することが可能であるが、さらに要所に冷気および熱気の流通経路を規制するための遮蔽板や垂れ壁等を設置することにより、コールドアイルとホットアイルとの間で冷気や熱気のショートサーキットが生じてしまうことを確実に防止できて冷却効率の低下を防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−184070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなサーバ室を対象とする空調システムでは空調機の設置スペースを如何にして確保するかが重要な課題である。一般には、比較的小容量の空調機をサーバ室内に露出状態で分散配置するか、あるいはサーバ室に隣接して空調機室を設けてその内部にサーバ室全体の冷却負荷を処理する大型の空調機を設置することになるが、それぞれ次のような問題がある。
すなわち、前者の場合はサーバ室内のスペースが空調機のために犠牲になるし、空調機の保守管理のたびに作業員がサーバ室内に立ち入る必要がある点で好ましくない。一方、後者のようにサーバ室とは別に空調機室を設ける場合には、空調機が大型であるばかりでなくその周囲に保守スペースも確保する必要があることから空調機室のためにかなりのスペースを必要とし、したがってデータセンターの建物延面積のうちサーバ室として利用できる有効面積の割合が低下してしまうし、サーバ室の有効面積を犠牲にしなければならない場合もある。
【0006】
また、いずれにしてもサーバは年々大容量化して冷却負荷が増大する傾向にあるので、それに応じて空調機の増設や冷却能力を増大させるための機器更新等の改修が必要となることも想定されるが、従来一般の空調システムでは増設や改修を行うためには大掛かりな工事が必要となることが通常であり、サーバ室を稼働しながらの工事は困難である。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明はサーバを効率的に冷却できることはもとより、保守性やスペース効率上の問題もなく、さらには増設や更新にも容易に対応することが可能である有効適切な空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、多数のサーバをサーバラックに収容して設置するサーバ室を対象とする空調システムであって、前記サーバ室の床を上層床と下層床とにより二重床空間を有する二重床構造として構成して、前記上層床を通風可能なグレーチングにより構成し、前記上層床上に多数のサーバラックを冷気供給ゾーンを挟んでその両側に2列に並べて配列することにより1モジュールのサーバラック群を設定するとともに、前記1モジュールのサーバラック群における前記冷気供給ゾーンの直下の二重床空間内および該冷気供給ゾーンの直上のサーバ室の天井部にそれぞれ前記冷気供給ゾーンに向けて冷気を供給するユニット型空調機を設置可能とし、かつ該ユニット型空調機の設置台数を前記1モジュールのサーバラック群の冷却負荷に応じて増減可能に構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のサーバ室用空調システムであって、前記サーバ室の天井部に前記冷気供給ゾーンの上部空間を周囲から区画するための垂れ壁や遮蔽板等の区画手段を設けて、前記冷気供給ゾーンをコールドアイルとして区画形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のサーバ室用空調システムであって、複数のサーバラックとそれらサーバラックを冷却するためのユニット型空調機により1組の単位システムを構成するとともに、該単位システムを複数組並設して前記1モジュールのサーバラック群を構成し、かつ該1モジュールのサーバラック群における前記ユニット型空調機の台数を該1モジュールのサーバラック群全体の冷却負荷に応じて増減可能としたことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1,2または3記載のサーバ室用空調システムであって、前記1モジュールのサーバラック群に設置されるユニット型空調機の冷却能力を、少なくとも1台のユニット型空調機が故障した際に他のユニット型空調機によりバックアップ可能なように余裕を持たせて設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サーバラック群をモジュール単位で冷却することとして、負荷増大時にはその時点の負荷に応じてモジュール単位でユニット型空調機を増設することにより、負荷増大に対して容易に対応可能であって、負荷増大後にも支障なく最適運転が可能である。
また、ユニット型空調機を二重床空間内および天井部に設置することにより、その設置や増設、機種交換を容易に行うことができ、サーバ室を稼働しながらの作業も可能であるし、従来のように空調機を設置するための格別のスペースをサーバ室内やサーバ室外に確保する必要はなく、したがってサーバ室および建物全体の有効面積を損なうことなく効率的かつ経済的な運用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の空調システムの実施形態を示す概要図である。
【図2】同、ユニット型空調機の設置形態を示す図である。
【図3】同、ユニット型空調機の増設パターンの例を示す図である。
【図4】同、1モジュールのサーバラック群の構成例を示す図である。
【図5】同、他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図2は本発明の実施形態である空調システムの概要を示すものである。
これは、多数のサーバをサーバラック1に収容して設置するサーバ室2を対象とするもので、そのサーバ室2の床を上層床3と下層床4とによる二重床構造としてそれらの間に二重床空間5を確保するとともに、上層床3を通風可能なグレーチングにより構成して上層床3上に多数のサーバラック1を並べて設置することを前提としている。
【0015】
本実施形態では、各サーバラック1をそれらの間に保守スペースを兼ねる冷気供給ゾーン6を確保した状態で2列をなすように並べて配列することにより、所定台数(図1では4台×2列、計8台のみを図示)のサーバラック1を1モジュールとするサーバラック群Mを設定し、各サーバラック群Mをモジュール単位で冷却することを主眼とする。
【0016】
本実施形態における空調システムは、1モジュールのサーバラック群Mにおける冷気供給ゾーン6の直下の二重空間5内およびその直上の天井部にそれぞれユニット型空調機7(7A,7B)を設置可能とし、二重床空間5内に設置したユニット型空調機7Aからの冷気を上層床3(グレーチング)を通して冷気供給ゾーン6に向けて上向きに供給するとともに、天井部に設置したユニット型空調機7Bからの冷気を冷気供給ゾーン6に向けて下向きに供給するようにしたものである。
これにより、上下のユニット型空調機7からの冷気が冷気供給ゾーン6から各サーバラック1を通過してその内部のサーバを効率的に冷却し、サーバラック1の背面側から還気経路(図示略)を通って各ユニット型空調機7に戻るように循環するようになっている。
また、サーバ室2の天井部には冷気供給ゾーン6の上部空間を周囲から区画するための垂れ壁(区画手段)8がユニット型空調機7Bの両側に設けられていて、その垂れ壁8により冷気供給ゾーン6が明確なコールドアイルとして区画形成されて冷気および還気の明確な循環経路が形成されている。
【0017】
ユニット型空調機7Aを設置するための二重床空間5は通常のフリーアクセスフロアとして機能することに加え、ユニット型空調機7Aの設置スペースおよびその保守点検時の作業スペースとして確保されるものであって、ユニット型空調機7Aに対する保守作業を作業員が二重床空間5に立ち入ることで支障なく行うことが可能なようにたとえば2200mm程度の高さ寸法を確保することが好ましい。勿論、二重床空間5において、ユニット型空調機7Aの設置スペースとして利用されない部分については、サーバ用のUPS設備や蓄電池設備等の設置スペースとしても利用可能である。
なお、サーバ室2の天井部には必要に応じて天井9を設けても良いが、その場合には天井9を上層床3と同様に通風可能なグレーチングにより構成するか、あるいはユニット型空調機7Bの少なくとも吹出口の範囲は開口を設ければ良い。
【0018】
上記のユニット型空調機7(7A,7B)としては、たとえば図2に示すように、ケーシング内にフィルタ7aと送風機7bと冷却コイル7cとをコンパクトに組み込んだ構成のものが好適に採用可能である。サーバ室2の冷却負荷は潜熱負荷が殆どないから冷却コイル7cをドライコイルとしてドレン処理を不要とすることも可能である。
このようなユニット型空調機7を所定規格で予め製作しておくとともに、冷却能力の異なる数機種のユニット型空調機7を予め用意しておけば、必要とされる冷却負荷に応じて最適な冷却能力のユニット型空調機7を選択して使用することが可能であるし、特に冷却能力は異なるものであっても互換性を有するいわゆるカセットタイプのユニット型空調機7を採用することにより、将来的な増設や機種変更を簡便かつ容易に行うことができる。
なお、ユニット型空調機7はサーバ電流やサーバ温度(もしくはサーバラック温度)等の周囲環境情報を刻々と検出するために設けられたセンサーによりサーバの実際の稼働状況を検知可能としておき、それに基づいてたとえばインバータ制御により最適な冷却運転を行うように構成することが好ましく、それにより最も効率的な省エネルギー運転が可能である。
【0019】
そして、本実施形態では、1モジュールのサーバラック群Mの全体のその時点の冷却負荷に応じて、1モジュールごとにそこに設置するべきユニット型空調機7の所要台数を最適に設定することによって1モジュールのサーバラック群M全体の冷却負荷を確保することを基本とし、サーバラック群M全体の冷却負荷が変動した場合にはそれに応じてユニット型空調機7の設置台数を増減することで対処することとする。
すなわち、サーバラック1は将来的には大容量化することが想定され、その際にはサーバラック群M全体の冷却負荷が増大することが想定されることから、運用開始時点では必要最少限のユニット型空調機7だけを設置するとともに所要台数分の設置スペースを確保しておき、必要に応じて所望能力のユニット型空調機7を所望台数だけ増設して負荷増大に対処することとする。
【0020】
そのような場合におけるユニット型空調機7の増設パターンの具体的な一例を図3を参照して説明する。
図3は10台×2列に配列した計20台のサーバラック1を1モジュールのサーバラック群Mとして設定し、それを2モジュール並設した場合を示している。各モジュールのサーバラック群Mには床部および天井部のそれぞれに対して最大5台ずつ全10台のユニット型空調機7を設置可能としておく。
【0021】
(1)運用開始時点ではその時点の冷却負荷(ベース負荷)に応じて床部に所要台数のユニット型空調機7Aを設置し、それらユニット型空調機7Aのみでモジュール全体の冷却負荷に見合う冷却能力を確保する。たとえば、図3(a)に示すように各モジュールの床部に3台のユニット型空調機7Aを分散して設置し、それら3台のユニット型空調機7Aにより20台のサーバラック1による1モジュールのサーバラック群M全体の冷却負荷を賄う。つまり、この時点で設置するユニット型空調機7Aの1台の冷却能力は1モジュールのサーバラック群M全体のこの時点での冷却負荷の1/3以上であれば良いことになる。
【0022】
(2)運用開始後にサーバラック2の一部が大容量化してモジュール単位での冷却負荷が増大した場合には、その不足分を補うためにたとえば(b)に示すように天井部に所要台数(図示例では各モジュールに2台ずつ)のユニット型空調機7Bを増設する。
その際、冷却負荷が増大したサーバラック1(斜線を付して示す)の近傍位置に対してユニット型空調機7Bを増設することにより、モジュール内における冷却負荷の偏在に効果的に対応することができる。
【0023】
(3)さらに冷却負荷が増大した場合には、床部にユニット型空調機7Aを増設していき、負荷増大量に応じて(c)に示すように1モジュールにつき最大5台となるまで増設する。
【0024】
(4)さらに冷却負荷が増大した場合には、天井部にユニット型空調機7Bを増設していき、負荷増大量に応じて(d)に示すように1モジュールにつき最大5台となるまで増設する。
【0025】
以上により、負荷増大に対するユニット型空調機7(7A,7B)の台数の増設による対応は限界に達したので、さらなる負荷増大に対してはいずれかのユニット型空調機7をより大容量のものに順次置換していくことで対応する。
なお、上記のように基本的にはベース負荷を床部のユニット型空調機7Aで処理することとして、その後の負荷増大時には状況に応じて天井部あるいは床部へ順次増設していけば良いが、当初のベース負荷を天井部に設置したユニット型空調機7Bにより処理することでも良いし、その後の増強パターン(台数増設および大容量機への置換)も冷却負荷の増大状況に応じて最適に設定すれば良い。
【0026】
以上のように、本発明の空調システムによれば、サーバラック群Mをモジュール単位で冷却することにより、負荷増大時にはその時点の負荷に応じてモジュール単位でユニット型空調機7を増設、増強することのみで負荷増大に対して容易に対応可能であり、負荷増大後にも支障なく最適運転が可能である。勿論、将来的にサーバ効率が向上して冷却負荷が低減したような場合には、一部のユニット型空調機7を撤去してそのスペースを他に転用することも可能である。
【0027】
そして、本発明においては、2列に配列したサーバラック群の間にコールドアイルとしての冷気供給ゾーン6を確保してその上下にそれぞれユニット型空調機7を設置可能としたので、サーバラック群全体を効率的に冷却できることはもとより、ユニット型空調機7として予め所定規格で製作したカセットタイプのものを用いることによりその設置や増設、機種交換を容易に行うことが可能であり、サーバ室を稼働しながらの作業も可能である。
勿論、ユニット型空調機7を二重床空間5内および天井部に設置するので従来のように空調機を設置するためにサーバラックの設置スペースを犠牲にしたり、サーバ室外に空調機械室を確保する必要はなく、したがってサーバ室2および建物全体の有効面積を損なうことなく効率的かつ経済的な運用が可能である。
なお、サーバ室2に二重床空間5を設けているものの上層床3はグレーチングにより構成しているので建築基準法上は床面積が二重に算定されることはない。
【0028】
ところで、上記実施形態では20台のサーバラック1により1モジュールのサーバラック群Mを設定し、その1モジュールに対して最大で10台のユニット型空調機7を設置可能としたが、本発明はそれに限定されるものでは勿論なく、モジュールの設定パターンと各モジュールを冷却するための空調システムの構成は、冷却対象のサーバラック1の仕様やサーバ室2全体の規模や形態、その他の諸条件を考慮して最適に設定すれば良く、たとえば図4に示すモジュール構成としてそれに十分な冗長性を持たせることも好ましい。
【0029】
図4は上記実施形態と同様に10台×2列、計20台のサーバラック1を1モジュールとして設定し、かつ1モジュールに対して最大で上下に5台ずつ全10台のユニット型空調機7を設置可能としたものであるが、その1モジュールのサーバラック群Mを5組の単位システム10を並設することで構成したものである。
すなわち、冷気供給ゾーン6の両側に2台ずつ配置した計4台のサーバラック1と、それら4台のサーバラック1の間の冷気供給ゾーン6の直下の二重床空間5内に設置した1台のユニット型空調機7Aにより1組の単位システム10を構成し、冷気供給ゾーン6の直上の天井部には負荷増大時のためにユニット型空調機7Bの設置スペースを確保しておき、当初はそれら5組の単位システム10の全体で1モジュールのサーバラック群Mを構成する。
なお、上記とは逆に、当初は天井部にユニット型空調機7Bを設置しておいて床部にはユニット型空調機7Aの設置スペースを確保しておき、負荷増大時に床部にユニット型空調機7Aを増設することでも良い。
この場合、当初に各単位システム10に設置する1台のユニット型空調機7の空調能力は単位システム10ごとの冷却負荷(この場合は4台のサーバラック1の冷却負荷の総計)に応じて決定するが、上記実施形態において説明したように予め製作した冷却能力の異なる数機種のカセットタイプのユニット型空調機7を予め用意しておいて、実際に使用される4台のサーバラックの冷却負荷に応じて最適な冷却能力のユニット型空調機7を選択して使用すれば良い。
【0030】
各単位ユニット10をそのような構成としておくことにより、各単位ユニット10を構成しているサーバラック1が大容量化して冷却負荷が増大したような場合には、単位ユニット10ごとに天井部にユニット型空調機7Bを増設する(あるいは、当初に天井部にユニット型空調機7Bを設置した場合には、床部にユニット型空調機7Aを増設する)ことにより、単位システム10ごとに冷却能力を倍増させて負荷増大に対処することができる。勿論、さらなる負荷増大に対してはユニット型空調機7を大容量のものに交換することで対応可能であるし、仮に1モジュール単位で負荷が低減した場合には任意のユニット型空調機7を撤去しても良い。
【0031】
さらに、上記の場合には、仮に1台のユニット型空調機7が故障した場合には他のユニット型空調機7によってバックアップ可能なように、各ユニット型空調機7の空調能力に余裕を持たせて設定して十分な冗長性を持たせることが好ましい。
【0032】
具体的には、各ユニット型空調機7の空調能力をそれぞれサーバラック5台分(単位システム10を構成しているサーバラック4台分+余裕1台分)としておいて、1モジュールの5台のユニット型空調機7のうちの4台のユニット型空調機7の冷却能力の合計で1モジュールの全体(全20台のサーバラック1)を支障なく冷却できるようにしておくと良い。そして、通常時は全5台のユニット型空調機7をそれぞれが受け持つ4台のサーバラック1の稼働状況に応じた最適な部分負荷運転を行い、いずれか1台のユニット型空調機7が故障した際には他の4台のユニット型空調機7を全負荷運転とすることでバックアップすれば良い。
あるいは、全5台のユニット型空調機7のうちのいずれか1台(たとえば斜線を付して示したもの)は常にバックアップ機として待機させ、通常時はバックアップ機を除く4台のユニット型空調機7をほぼ全負荷運転して1モジュール全体の冷却負荷を処理し、いずれか1台のユニット型空調機7が故障した際にはバックアップ機に切り換えるようにしても良い。この場合、特定の1台をバックアップ専用機としても良いし、5台のうちのいずれか1台が順次バックアップ機となるように自動交互運転を行うようにしても良い。
【0033】
そして、そのようなバックアップ運転を可能とするためには、各ユニット型空調機7をそれぞれが受け持つ4台のサーバラック1の稼働状況のみならず他のユニット型空調機7の運転状況も監視しつつ、故障時には故障状況に応じて最適なバックアップ運転を行うように制御すれば良く、そのための制御システムを各単位システム10に組み込んでおくと良い。そのように少なくとも1台のユニット型空調機7が故障した際に他のユニット型空調機7によりバックアップ可能な冗長化システムとすることにより、1モジュールのサーバラック群Mに対する空調システムの信頼性を充分に確保できるものとなる。
【0034】
なお、上記実施形態では、サーバ室2の天井部に冷気供給ゾーン6の上部空間を周囲から区画するための区画手段としての垂れ壁8を設けて、その垂れ壁8により冷気供給ゾーン6を明確なコールドアイルとして区画形成したが、垂れ壁8を設けることに代えて図5に示すように冷気供給ゾーン6の上部空間を区画手段としての遮蔽板8’により水平に区画したり、さらに他の区画手段を設けることによっても同様の効果が得られる。勿論、区画手段が不要な場合には省略して差し支えない。
【符号の説明】
【0035】
M サーバラック群(1モジュール)
1 サーバラック
2 サーバ室
3 上層床(グレーチング)
4 下層床
5 二重床空間
6 冷気供給ゾーン(コールドアイル)
7(7A,7B) ユニット型空調機
7a フィルタ
7b 送風機
7c 冷却コイル
8 垂れ壁(区画手段)
8’ 遮蔽板(区画手段)
9 天井
10 単位システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のサーバをサーバラックに収容して設置するサーバ室を対象とする空調システムであって、
前記サーバ室の床を上層床と下層床とにより二重床空間を有する二重床構造として構成して、前記上層床を通風可能なグレーチングにより構成し、
前記上層床上に多数のサーバラックを冷気供給ゾーンを挟んでその両側に2列に並べて配列することにより1モジュールのサーバラック群を設定するとともに、
前記1モジュールのサーバラック群における前記冷気供給ゾーンの直下の二重床空間内および該冷気供給ゾーンの直上のサーバ室の天井部にそれぞれ前記冷気供給ゾーンに向けて冷気を供給するユニット型空調機を設置可能とし、かつ該ユニット型空調機の設置台数を前記1モジュールのサーバラック群の冷却負荷に応じて増減可能に構成したことを特徴とするサーバ室用空調システム。
【請求項2】
請求項1記載のサーバ室用空調システムであって、
前記サーバ室の天井部に前記冷気供給ゾーンの上部空間を周囲から区画するための垂れ壁や遮蔽板等の区画手段を設けて、前記冷気供給ゾーンをコールドアイルとして区画形成したことを特徴とするサーバ室用空調システム。
【請求項3】
請求項1または2記載のサーバ室用空調システムであって、
複数のサーバラックとそれらサーバラックを冷却するためのユニット型空調機により1組の単位システムを構成するとともに、該単位システムを複数組並設して前記1モジュールのサーバラック群を構成し、かつ該1モジュールのサーバラック群における前記ユニット型空調機の台数を該1モジュールのサーバラック群全体の冷却負荷に応じて増減可能としたことを特徴とするサーバ室用空調システム。
【請求項4】
請求項1,2または3記載のサーバ室用空調システムであって、
前記1モジュールのサーバラック群に設置されるユニット型空調機の空調能力を、少なくとも1台のユニット型空調機が故障した際に他のユニット型空調機によりバックアップ可能なように余裕を持たせて設定したことを特徴とするサーバ室用空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−220585(P2011−220585A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88812(P2010−88812)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】