説明

サービス提供システム

【課題】端末装置を小型化すると共に、利用者が取扱う情報の漏洩を抑えることができるサービス提供システム及び端末形状の提供。
【解決手段】画面を表示して利用者の操作を促すタッチパネルディスプレイ21と、タッチパネルディスプレイ21が受けた操作に応じて利用者の所定の動作を受付ける受付部とを有する自動取引装置1を備え、自動取引装置1を通じて利用者にサービスを提供するサービス提供システムにおいて、自動取引装置1は、受付部が設けられた下部筐体2と、下部筐体2を固定する基台3と、下部筐体2の上部に取付けられ、タッチパネルディスプレイ21が設けられた上部筐体4とを備え、タッチパネルディスプレイ21は縦長に形成され、上部筐体4は、タッチパネルディスプレイ21の形状に合わせて縦長の板状に形成され、利用者に対面した状態において利用者から離れる方向に傾斜するように配置された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末装置を通じて利用者に各種のサービスを提供するサービス提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、公共の施設や建物に設置された端末装置を通じて利用者に各種のサービスを提供するサービス提供システムが普及しており、このような端末装置として、例えば、銀行等の金融機関に設置されて現金の取引を行う自動取引装置(ATM:Automatic teller machine)や、駅等に設置されて乗車券の発行を行う券売機がある。利用者は、自動取引装置を利用することによって自分の口座から現金を引き出したり、あるいは振り込み先へ振り込むことができ、また券売機を利用することによって乗車券を購入することができる。
【0003】
一般的に、端末装置は、画面を表示して利用者の操作を促す画面操作部と、この画面操作部が受けた操作に応じて利用者の所定の動作を受付ける受付部とを有し、端末装置が自動取引装置である場合には、画面操作部が、例えば、画面を押下して操作するタッチパネルディスプレイ(LCD)から成り、受付部は、例えば、利用者が携帯するカードを挿入するカード挿入口と、現金を出入する現金出入口とから少なくとも構成されている。
【0004】
タッチパネルディスプレイは、初期の選択画面として利用者が操作するメニューを表示するようになっている。端末装置がATMの場合、表示されるメニューとして、例えば、残高照会や現金の引き出し、振り込み等の操作が選択可能になっている。従って、利用者がタッチパネルディスプレイに表示されたメニューのうち、例えば、現金の引き出しを選択すると、カードを挿入する動作を促す画面がタッチパネルディスプレイに表示される。そして、利用者がカード挿入口へカードを挿入し、引き出す金額を入力すると、入力した金額の現金が現金出入口に引き出されるので、利用者はこの現金を取り出して現金の引き出し動作を完了する。
【0005】
このような端末装置の従来技術の1つとして、例えば、受付部が暗証番号を入力する入力装置を有し、利用者に設定された暗証情報の照合結果に応じて取引を行う自動取引装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、特許文献1に開示された自動取引装置は、コンビニエンスストアや建物の壁面に埋め込まれて設置され、受付部は、上述したカード挿入口及び現金出入口を有している。また、画面操作部は装置の前面にほぼ垂直に設置されている。
【0006】
ここで、画面操作部の画面に暗証番号を入力させるための所定の数字キーを表示して利用者に画面上の数字キーを押下させることも考えられる。しかしながら、上述したように、画面操作部が装置の前面にほぼ垂直に設置されているので、利用者の暗証番号を取得しようとする不審者に後方から覗き見される問題があった。そこで、受付部が、所定の数字キーの配列のユニットから構成され、利用者にこのユニットを押下して入力を行わせる上述の入力装置を有し、この入力装置を画面操作部の画面下部のへこみ部に実装することにより、押下したユニットの数字キーが利用者の後方から覗き見する不審者の視界に入るのを妨げ、利用者の暗証番号が不審者に容易に知られないようにしている。
【0007】
また、端末装置の他の従来技術の1つとして、利用者の画像を撮像する撮像手段としてのカメラと、このカメラで撮像した利用者の画像に基づいて、利用者の注意方向を検出する注意方向検出手段と、注意方向検出手段が検出した注意方向に基づいて、利用者の注意を誘導する注意誘導手段とを備え、利用者の操作に応じて所定の処理を行う自動機が知られている(例えば、特許文献2参照)。この特許文献2に開示された従来技術の自動機では、上述した特許文献1に開示された従来技術の自動取引装置と同様に、受付部がカード挿入口及び現金出入口を有し、これらのカード挿入口及び現金出入口が装置の前面にほぼ垂直に設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−334389号公報
【特許文献2】特開2009−217618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記特許文献1、2に開示された従来技術の自動取引装置及び自動機では、上述したように、受付部のカード挿入口及び現金出入口が装置の前面にほぼ垂直に設置されているので、端末装置の上部の奥行きや高さが大きくなり、端末装置が大型化する。そのため、端末装置をコンビニエンスストアや建物の壁面に設置する際に、端末装置を設置スペースに搬送する作業が煩雑になり、作業を行う作業者の負担が大きくなっている虞がある。特に、端末装置をコンビニエンスストアに設置する場合、設置スペースが制限されているので、出来るだけ小型化された端末装置が要望されている。さらに、端末装置の上部の奥行きが大きくなることにより、利用者が画面操作部を操作する際に圧迫感を受け易くなるので、画面操作部を操作する利用者に不快感を与える虞がある。
【0010】
また、上記特許文献1に開示された従来技術の自動取引装置では、入力装置のユニットが画面操作部の画面下部のへこみ部に実装されているものの、画面操作部が装置の前面にほぼ垂直に設置されているので、画面操作部に表示される暗証番号以外の取引情報や個人情報等が利用者の後方の不審者に知られる可能性があり、利用者が取扱う情報の保護が十分に図られていないことが懸念されている。
【0011】
なお、上記特許文献2に開示された従来技術の自動機では、端末装置の前面にカメラが取付けられているが、このカメラは、利用者の顔を撮影して注意方向検出手段及び注意誘導手段によって利用者の注意を画面操作部の操作に案内するために使用されるものである。しかしながら、利用者の注意を画面操作部の操作に案内することができても、操作に集中した利用者は後方の不審者に気が付き難くなるので、暗証番号を含む取引の情報や個人情報が不審者に知られることを有効に防ぐことができない虞がある。
【0012】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、端末装置を小型化すると共に、利用者が取扱う情報の漏洩を抑えることができるサービス提供システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明のサービス提供システムは、画面を表示して利用者の操作を促す画面操作部と、この画面操作部が受けた操作に応じて前記利用者の所定の動作を受付ける受付部とを有する端末装置を備え、この端末装置を通じて前記利用者にサービスを提供するサービス提供システムにおいて、前記端末装置は、前記受付部が設けられた下部筐体と、この下部筐体を固定する基台と、前記下部筐体の上部に取付けられ、前記画面操作部が設けられた上部筐体とを備え、前記画面操作部は縦長に形成され、前記上部筐体は、前記画面操作部の形状に合わせて縦長の板状に形成され、前記利用者に対面した状態において前記利用者から離れる方向に傾斜するように配置されたことを特徴としている。
【0014】
また、本発明に係るサービス提供システムは、前記発明において、前記端末装置は、前記利用者に対して現金の取引を行う自動取引装置から成り、前記基台は、現金を収納する金庫を有し、前記受付部は、前記利用者が携帯するカードを挿入するカード挿入口と、現金を出入する現金出入口とを有することを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係るサービス提供システムは、前記発明において、前記自動取引装置は、近接した人を検知する人検知手段と、この人検知手段によって複数の人が検知された場合に、この検知された複数の人の中から前記利用者と不審者とを判別する判別手段とを有し、前記画面操作部は、前記判別手段によって前記利用者と前記不審者が判別された場合に、前記利用者に注意を喚起する映像を前記画面に表示する注意喚起手段を有することを特徴としている。
【0016】
また、本発明に係るサービス提供システムは、前記発明において、前記人検知手段は、前記自動取引装置から第1の所定の距離に近接した人を検知する第1のセンサと、前記自動取引装置から第2の所定の距離に近接した人を検知し、この第2の所定の距離が前記第1の所定の距離よりも大きく設定された第2のセンサとから成り、前記判別手段は、前記第1のセンサによって検知された人を前記利用者であると判別し、前記第1のセンサが検知した後に前記第2のセンサによって検知された人を前記不審者であると判別することを特徴としている。
【0017】
また、本発明に係るサービス提供システムは、前記発明において、前記人検知手段は、前記上部筐体の上部に設けられたステレオカメラから成り、前記判別手段は、このステレオカメラによって撮影された映像から前記検知された複数の人の位置関係を取得し、前記検知された複数の人のうち前記ステレオカメラからの距離が最も近い人を前記利用者、及びこの利用者の背後にいる人を前記不審者であると判別し、前記注意喚起手段は、前記ステレオカメラによって撮影された映像を前記画面に表示することを特徴としている。
【0018】
また、本発明に係るサービス提供システムは、前記発明において、前記注意喚起手段は、前記不審者の顔を囲む枠を表示して当該顔の動きを追跡する顔枠表示手段を含むことを特徴としている。
【0019】
また、本発明に係るサービス提供システムは、前記発明において、前記注意喚起手段は、前記画面操作部が受けた操作のうち所定の操作に応じて前記利用者に注意を喚起する映像をポップアップすることを特徴としている。
【0020】
また、本発明に係るサービス提供システムは、前記発明において、前記画面操作部は、前記受付部が前記所定の動作を受付けるときに、前記所定の動作に対応する動画を前記所定の動作に連動するように表示することを特徴としている。
【0021】
また、本発明に係るサービス提供システムは、前記発明において、前記上部筐体は、前記下部筐体から取外し可能に設けられたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
本発明のサービス提供システムは、端末装置を小型化できるので、従来よりも端末装置を搬送する作業を容易に行うことができる。特に、設置スペースが限られた場所にも端末装置を収め易くなり、端末装置の設置作業の効率性を向上させることができる。また、端末装置の上部の奥行きも抑えられるので、画面操作部を操作する利用者が受ける圧迫感を減少させることができる。さらに、利用者による画面操作部の操作が利用者の後方の不審者に見え難くなるので、利用者が取扱う情報の漏洩を抑えることができる。このように、利用者に対して快適かつ安全なサービスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係るサービス提供システムの第1実施形態の構成を説明するブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態の構成を示す図である。
【図3】図2に示す自動取引装置のタッチパネルディスプレイを操作する利用者の視野角を説明する図であり、(a)図は平面図、(b)図は側面図である。
【図4】図2に示す本発明の第1実施形態からパーティションを取外した状態を示す図であり、(a)図は平面図、(b)図は正面図、(c)図は側面図、(d)図は背面図である。
【図5】本発明の第1実施形態の要部を説明する図であり、図2に示す上部筺体及び下部筺体の正面図である。
【図6】本発明の第1実施形態の要部を説明する図であり、(a)図は図2に示す上部筺体及び下部筺体の斜視図、(b)図は(a)図に示す下部筐体から上部筐体を取り外した状態を示す斜視図である。
【図7】本発明に係るサービス提供システムの第1実施形態の構成を分解して説明する斜視図である。
【図8】図1に示すホストコンピュータに記録されたデータを示す図である。
【図9】図5に示すタッチパネルディスプレイにおける操作を説明する図であり、カードを挿入する動作を示す図である。
【図10】図5に示すタッチパネルディスプレイにおける操作を説明する図であり、生体認証を行う動作を示す図である。
【図11】図5に示すタッチパネルディスプレイにおける操作を説明する図であり、タッチパネルディスプレイの画面にメニューが表示された状態を示す図である。
【図12】図5に示すタッチパネルディスプレイにおける操作を説明する図であり、暗証番号を入力する動作を示す図である。
【図13】図5に示すタッチパネルディスプレイにおける操作を説明する図であり、現金が紙幣出入口に引き出される状態を示す図である。
【図14】図5に示すタッチパネルディスプレイにおける操作を説明する図であり、現金を取り出す動作を示す図である。
【図15】図5に示すタッチパネルディスプレイにおける操作を説明する図であり、明細の送付先を選択する動作を示す図である。
【図16】図5に示すタッチパネルディスプレイにおける操作を説明する図であり、カードを取り出す動作を示す図である。
【図17】図5に示すタッチパネルディスプレイにおける操作を説明する図であり、利用者の携帯端末に現金をチャージする動作を示す図である。
【図18】利用者が携帯する携帯端末の構成を示す図である。
【図19】本発明の第1実施形態の動作を説明するフローチャートであり、開始から操作内容の選択までの動作を説明するフローチャートである。
【図20】本発明の第1実施形態の動作を説明するフローチャートであり、不審者の判別から終了までの動作を説明するフローチャートである。
【図21】本発明に係るサービス提供システムの第2実施形態の構成を説明するブロック図である。
【図22】本発明の第2実施形態に備えられた基台3の上面に設置される天板を示す図である。
【図23】本発明の第2実施形態における通帳リーダライタ及び硬貨出入口の他の設置形態を説明する図であり、(a)図は通帳リーダライタの設置形態を説明する図、(b)図は硬貨出入口の設置形態を説明する図である。
【図24】図23に示す硬貨出入口の他の設置形態において使用される天板を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るサービス提供システムを実施するための形態を図に基づいて説明する。なお、同一の部材または部位は同一符号を以って示し、重複した説明は省略する。
【0025】
[第1実施形態]
図1から図20を参照して、本発明の第1実施形態に係るサービス提供システムについて説明する。本発明に係るサービス提供システムの第1実施形態は、画面を表示して利用者の操作を促す画面操作部と、この画面操作部が受けた操作に応じて利用者の所定の動作を受付ける受付部とを有する端末装置を備え、この端末装置を通じて利用者にサービスを提供するようになっている。本発明の第1実施形態では、端末装置は、例えば、図1及び図2に示すように、利用者に対して現金の取引を行う自動取引装置1から成り、この自動取引装置1を、例えばコンビニエンスストアに設置する場合、一般の大人の利用者を想定してその大きさが設定されている。
【0026】
具体的には、自動取引装置1は、受付部が設けられた下部筐体2と、この下部筐体2を固定する基台3と、この下部筐体2の上部に取付けられ、画面操作部が設けられた上部筐体4と、基台3の上面に設けられ、上部筐体4を支持する支持片5(図6参照)とを備えている。基台3は、例えば、内部に現金を収納する図示しない金庫と、接続された機器の動作を制御する中央制御装置13とを有し、箱型に形成されている。また、基台3の高さは、図3(b)に示すように利用者の腰の位置となるように設定されている。さらに、中央制御装置13は、各種の処理を行うホストコンピュータ11にネットワーク装置12を介して接続されている。なお、下部筐体2は、図4(a)及び図4(b)に示すように、基台3の上面右側に配置されている。
【0027】
画面操作部は、図5に示すように縦長に形成され、例えば、画面を押下して操作するタッチパネルディスプレイ21から成り、上部に後述するカメラ14,15が収納されるスリット21Aが形成されている。また、上部筐体4は、タッチパネルディスプレイ21の形状に合わせて縦長の板状に形成され、後述するように、利用者に対面した状態において、利用者から離れる方向に傾斜するように配置されている。例えば、図5に示すように、タッチパネルディスプレイ21と基台3の上面とのなす角は45°に設定されている。
【0028】
ここで、図3(b)に示すように、利用者がタッチパネルディスプレイ21に対面した状態では、利用者の中心視から下方へ30°の範囲Cが最適視認範囲となるので、タッチパネルディスプレイ21の画面の大部分がこの範囲Cに収まるようにタッチパネルディスプレイ21の縦の大きさが設定されている。また、図3(a)に示すように、利用者がタッチパネルディスプレイ21に対面した状態では、利用者の中心視から左右方向へそれぞれ60°の範囲Aが色、輝度が変化する場合に色を弁別する限界を示す範囲となり、利用者の中心視から左右方向へそれぞれ30°の範囲Bがシンボルを認識する限界を示す範囲となるので、タッチパネルディスプレイ21の画面がこの範囲Bに収まるようにタッチパネルディスプレイ21の横の大きさが設定されている。なお、タッチパネルディスプレイ21の画面上には、利用者の立ち位置以外からの視認を制限する覗き見防止フィルムが貼付されている。
【0029】
上述した受付部は、例えば、図5に示すように、利用者が携帯するカードを挿入するカード挿入口22と、このカード挿入口22に挿入されたカードの本人確認を行う生体認証装置16と、取引の明細書を送付するレシート発行機構25と、現金を出入する現金出入口とを有している。ここで、自動取引装置1をコンビニエンスストアに設置する場合、上述したように、その設置スペースは限られているので、現金出入口は紙幣を出入する紙幣出入口24のみから構成されている。
【0030】
そして、これらのカード挿入口22、生体認証装置16、レシート発行機構25、及び紙幣出入口24には、タッチパネルディスプレイ21が受けた操作に応じて利用者に所定の動作を行うように注意を促すフリッカーランプ23がそれぞれ設けられている。また、基台3の上面左側には、例えば、図4(a)に示すように音声ガイダンスを行ったり、あるいは外部と通話するガイダンスホン17が設けられている。なお、上述した生体認証装置16、ガイダンスホン17、タッチパネルディスプレイ21、カード挿入口22、フリッカーランプ23、紙幣出入口24、及びレシート発行機構25は、それぞれ中央制御装置13に接続されている。
【0031】
また、生体認証装置16は、生体情報、例えば、利用者の指紋及び指静脈の模様(指静脈パターン)を検出し、検出した指紋あるいは指静脈パターンが登録されている利用者の指紋あるいは指静脈パターンと一致するかどうかを判定することによって本人確認を行うようになっている。従って、生体認証装置16が利用者の指紋あるいは指静脈パターンを検出すると、検出した利用者の指紋情報あるいは指静脈パターン情報がネットワーク装置12を介してホストコンピュータ11に送信され、ホストコンピュータ11に登録された利用者の指紋情報あるいは指静脈パターン情報と照合される。
【0032】
本発明の第1実施形態では、利用者は、タッチパネルディスプレイ21の操作として、例えば、図11に示すように、画面にメニューとして表示される現金を引き出す「お引出し」、利用者の口座の残高を確認する「残高照会」、利用者の口座に現金を預ける「お預入れ」、現金を利用者が携帯する携帯端末(図18参照)に入金する「チャージ」、現金を振り込み先へ振り込む「お振込み」、及びこれら以外の暗証番号変更等の取引を行う「その他のお取引」の中から所望のメニューを選択して操作し、選択した操作に対応した動作を下部筐体2で受付けるようになっている。なお、タッチパネルディスプレイ21の画面には、初期画面として利用者に対してタッチパネルディスプレイ21の画面に触れる旨の指示が表示され、その後、利用者が画面に触れた場合には、図9に示すように、カードをカード挿入口22へ挿入する動作が行われる。
【0033】
また、本発明の第1実施形態では、タッチパネルディスプレイ21の画面上に表示されたメニューの中から選択された操作に対応した動作を受付けた後に、明細が送付されるようになっている。この明細の送付先の選択画面として、例えば、図15に示すように、「明細書不要」、「ご自身の携帯電話」、「ご自宅のパソコン」、及び「その他の携帯電話・パソコン」のいずれかを選択する旨の指示が表示されるようになっている。そして、利用者が「携帯電話」を選択した場合には、携帯端末50をレシート発行機構25にかざし、出力された明細を受け取るようにしている。また、利用者が「ご自宅のパソコン」を選択した場合には、ホストコンピュータ11からメール等で明細を送信するようにしている。
【0034】
さらに、上述した携帯端末50は、例えば、図18に示すように、画面を押下して操作するタッチパネルディスプレイ51と、このタッチパネルディスプレイ51の画面に自動取引装置1のタッチパネルディスプレイ21の画面に表示されたメニューと同様のメニューを表示する図示しないモバイルバンキング機能とを備えている。このモバイルバンキング機能は、例えば、利用者が自動取引装置1でサービスを受ける前に、希望する操作を携帯端末50のタッチパネルディスプレイ51で予め選択しておき、自動取引装置1を利用する際に携帯端末50をレシート発行機構25にかざすことにより、自動取引装置1のタッチパネルディスプレイ21が携帯端末50のタッチパネルディスプレイ51で選択された操作を行うようになっている。
【0035】
本発明の第1実施形態では、タッチパネルディスプレイ21は、図6(a)及び図6(b)に示すように、下部筐体2から取外し可能に設けられている。また、本発明の第1実施形態では、図7に示すように、基台3の後面に配置される板状のバックパネル31と、基台3の側面に配置される板状の一対のパーティション27と、基台3の上面に配置される天板32とを有している。
【0036】
バックパネル31の高さは、図3(b)に示すように、利用者の身長よりも大きく設定されている。また、バックパネル31の横幅は、図3(a)に示すように、基台3の横幅と同じ大きさに設定されている。さらに、バックパネル31は、図2に示すように、基台3の後面に取付ける取付面の上部に設けられたセカンドディスプレイ28と、音声を出力するステレオスピーカ20(図1参照)とを有し、図3及び図4に示すように、取付面の下部が基台3の後面に合わさるように取付けられる。セカンドディスプレイ28及びステレオスピーカ20は、中央制御装置13にそれぞれ接続され、広告や自動取引装置1に関する説明等の各種の情報を表示したり、あるいは音声で案内するようになっている。
【0037】
各パーティション27は、透過率を調整する図示しない透過率調整手段を有しており、各パーティション27の高さは、天板32に対して所定の角度で傾斜して配置されたタッチパネルディスプレイ21の高さよりも大きく設定されており、横幅は基台3の奥行きにバックパネル31の厚さを加えた大きさに設定されている。そして、図2に示すように、各パーティション27の下部が基台3の側面とバックパネル31の側面に合わさるようにボルト41,42で取付けられ、各パーティション27の上部の角部のうち、奥側の角部がボルト43でバックパネル31の側面に固定されている。また、各パーティション27は、中央制御装置13に接続され、利用者によってタッチパネルディスプレイ21が操作されたときに、透過率調整手段で透過率を減少させる制御を行うようになっている。
【0038】
このように、タッチパネルディスプレイ21は、側方の一対のパーティション27及び後方のバックパネル31によって囲まれ、利用者が対面するタッチパネルディスプレイ21の正面の空間が開放されるようになっている。さらに、天板32は、例えば、廉価なメラミン化粧板とエコ素材の竹集成材から成り、下部筐体2、支持片5、及びガイダンスホン17の各周囲の形状に合わせて部分的にくり抜かれ、くり抜かれた部分がこれらの下部筐体2、支持片5、及びガイダンスホン17に挿通するように上方から基台3の上面に設置される。
【0039】
本発明の第1実施形態では、自動取引装置1は、近接した人を検知する後述の人検知手段と、この人検知手段によって複数の人が検知された場合に、この検知された複数の人の中から利用者と不審者とを判別する判別手段とを有し、この判別手段は、例えば、中央制御装置13の内部に格納されている。また、タッチパネルディスプレイ21は、判別手段によって利用者と不審者が判別された場合に、利用者に注意を喚起する映像を画面に表示する後述の注意喚起手段を有している。
【0040】
上述した人検知手段は、例えば、タッチパネルディスプレイ21の上部に設けられたステレオカメラから成り、このステレオカメラは、例えば、タッチパネルディスプレイ21の上方の左右にそれぞれ配置され、両眼視差を生じさせて奥行きのある映像を撮影する2つのカメラ14,15から構成されている。2つのカメラ14,15は、それぞれ中央制御装置13に接続され、図5に示すように、タッチパネルディスプレイ21のスリット21A内に収納されている。そして、このスリット21Aは、例えば、裏面側から表面側へ透過する光の透過率が、表面側から裏面側へ透過する光の透過率よりも低い特殊なプラスチック21Bで蓋をされており、このプラスチック21Bでカメラ14,15の外観が隠れて外側からスリット21Aの中が見えないようになっている。
【0041】
判別手段は、カメラ14,15によって撮影された映像に映し出された複数の人の位置関係を取得し、撮影された立体的な映像を分析することにより、映像に映し出された各人とカメラ14,15との距離を計算し、計算した結果に基づいてカメラ14,15からの距離が最も近い人を利用者、及びこの利用者の背後にいる人を不審者であると判別するようになっている。そして、前述した注意喚起手段は、例えば、カメラ14,15によって撮影された映像をタッチパネルディスプレイ21の画面に表示するようにしている。ここで、タッチパネルディスプレイ21の画面は、上下2画面に分割して表示することができ、分割された上画面にカメラ14,15で撮影された映像を表示すると共に、下画面にメニュー等の操作画面を表示するようになっている。
【0042】
また、注意喚起手段は、例えば、不審者の顔を囲む枠を表示して当該顔の動きを追跡する顔枠表示手段を含んでいる。さらに、注意喚起手段は、タッチパネルディスプレイ21が受けた操作のうち、所定の操作、例えば、暗証番号を入力する操作や現金の引き出しを行う操作に応じて利用者に注意を喚起する映像をポップアップするようになっている。従って、これらの暗証番号を入力する操作や現金の引き出しを行う操作中に、判別手段によって利用者と不審者が判別された場合には、注意喚起手段がタッチパネルディスプレイ21の上画面にカメラ14,15で撮影された映像、すなわち顔に枠が表示された不審者の映像をポップアップする。
【0043】
そして、これらの映像は、ネットワーク装置12を介してホストコンピュータ11に送信され、利用者が取引した情報に関連付けてデータとして記録されるようになっている。これらのデータは、例えば、図8に示すように、利用者の取引毎に開始時刻、終了時刻、利用者のカードのID情報、及び操作内容が記録され、これらの開始時刻、終了時刻、利用者のカードのID情報、及び操作内容に対して各画像が記録されるようになっている。このとき、利用者が操作した際にタッチパネルディスプレイ21の画面にメッセージが表示された場合には、これらのメッセージも同様に記録されるようになっている。
【0044】
ここで、自動取引装置1が使用されていないときもカメラ14,15によって撮影が行われている。タッチパネルディスプレイ21は、カメラ14,15によって利用者の立ち位置に人が撮影された場合、バックライトを点灯して画面を明るく表示し、カメラ14,15によって利用者の立ち位置に人が撮影されなかった場合、バックライトを消灯するバックライト機能を有している。
【0045】
判別手段は、カメラ14,15によって撮影された映像から携帯端末50を使用しながらタッチパネルディスプレイ21の操作を行っている利用者を判別する図示しない通話判別手段を有している。また、注意喚起手段は、通話判別手段によって携帯端末50を使用しながらタッチパネルディスプレイ21の操作を行っている利用者が判別された場合に、タッチパネルディスプレイ21の画面に振り込め詐欺の注意を喚起する映像を表示するようになっている。
【0046】
本発明の第1実施形態では、タッチパネルディスプレイ21は、受付部が所定の動作を受付けるときに、所定の動作に対応する動画を所定の動作に連動するように表示するようになっている。例えば、図9に示すように、利用者がカードをカード挿入口22へ挿入すると、カードをカード挿入口22へ挿入する動きを反映するようにタッチパネルディスプレイ21の画面上の下側から中央へ向けてカードが移動する映像が映し出される。
【0047】
また、図10に示すように、利用者が生体認証装置16で指紋を認証すると、生体認証装置16が利用者の指紋を読み取った動きを反映するように、タッチパネルディスプレイ21の画面上の下側から中央へ向けて生体認証装置が移動する映像が映し出される。さらに、図13に示すように、利用者が、例えば、タッチパネルディスプレイ21の画面に表示されたメニューの「お引出し」を選択して操作すると、紙幣が金庫から紙幣出入口24へ出される動きを反映するように、タッチパネルディスプレイ21の画面上の中央から下側へ向けて紙幣が移動し、画面上の下端へ消えて表示されなくなったときに紙幣出入口24の蓋が開かれるようになっている。
【0048】
また、図17に示すように、利用者が、例えば、タッチパネルディスプレイ21の画面に表示されたメニューの「チャージ」を選択して操作すると、紙幣が金庫からレシート発行機構25上に置かれた携帯端末へ入金される動きを反映するように、タッチパネルディスプレイ21の画面上の中央から左下側へ向けて紙幣が携帯端末50の大きさに合わせるように徐々に縮小しながら移動し、画面上の左下端へ消えて表示されなくなったときに携帯端末50の入金が完了する。
【0049】
次に、本発明の第1実施形態の動作を、図19、図20のフローチャートに基づいて詳細に説明する。
【0050】
図19は、本発明の第1実施形態の動作を説明するフローチャートであり、開始から操作内容の選択までの動作を説明するフローチャート、図20は、本発明の第1実施形態の動作を説明するフローチャートであり、不審者の判別から終了までの動作を説明するフローチャートである。
【0051】
図19、図20に示すように、利用者が自動取引装置1の前に立ち止まると、タッチパネルディスプレイ21がバックライトを点灯して初期画面、すなわちタッチパネルディスプレイ21の画面に触れる旨の指示が表示される(ステップ(以下、Sと記す)1)。そして、利用者がタッチパネルディスプレイ21の画面に触れると(S2)、図9に示すように、タッチパネルディスプレイ21の画面にカードをカード挿入口22へ挿入する旨の指示が表示されると共に、カード挿入口22のフリッカーランプ23が点灯する(S3)。
【0052】
次に、利用者がカードをカード挿入口22へ挿入すると(S4)、このカードの挿入の動きに合わせてタッチパネルディスプレイ21の画面上の下側からカードの映像が表示され、表示されたカードの映像が画面上の下側から中央へ向けて移動する。そして、図10に示すように、タッチパネルディスプレイ21の画面に生体認証装置16に指を置く旨の指示が表示されると共に、生体認証装置16のフリッカーランプ23が点灯する(S5)。
【0053】
次に、利用者が生体認証装置16に指を置くと(S6)、図10に示すように、利用者の指の動きに合わせてタッチパネルディスプレイ21の画面上の右下側から生体認証装置の外観の映像が表示され、表示された生体認証装置の映像が画面上の右下側から中央へ向けて移動する。そして、利用者の指紋情報が生体認証装置16に読み込まれてホストコンピュータ11へ送信され、ホストコンピュータ11は、この受信した指紋情報と予め登録された利用者の指紋情報とを照合し、本人確認を行う(S7)。
【0054】
次に、手順S7において照合した結果、挿入されたカードが利用者のものではないと判断された場合には、手順S1の動作に戻る。一方、手順S7において照合した結果、挿入されたカードが利用者のものであると判断された場合には、図11に示すように、タッチパネルディスプレイ21の画面にメニューが表示される(S8)。そして、利用者が、タッチパネルディスプレイ21の画面上のメニューの中から、例えば、「お引出し」を選択すると(S9)、判別手段は、カメラ14,15によって撮影された映像を分析することにより、利用者の背後に不審者がいるかどうかを判別する(S10)。
【0055】
このとき、判別手段によって利用者の背後に不審者がいると判別された場合には、注意喚起手段は、タッチパネルディスプレイ21の上画面にカメラ14,15で撮影された映像をポップアップし(S11)、タッチパネルディスプレイ21の画面に注意を喚起するメッセージと共に暗証番号を入力する旨の指示が表示される(S12)。一方、手順S10において、判別手段によって利用者の背後に不審者がいないと判別された場合には、カメラ14,15で撮影された映像がポップアップされることなく、図12に示すように、タッチパネルディスプレイ21の画面に暗証番号を入力する旨の指示が表示される(S12)。
【0056】
次に、利用者がタッチパネルディスプレイ21の画面に表示された数字キーを押下して暗証番号を入力すると(S13)、入力された暗証番号の情報がホストコンピュータ11へ送信され、ホストコンピュータ11は、この受信した暗証番号の情報と予め登録された利用者の暗証番号の情報とを照合し、入力された暗証番号が正しいかどうかを判断する(S14)。
【0057】
次に、手順S14において照合した結果、入力された暗証番号が正しくないと判断された場合には、手順S12の動作に戻る。一方、手順S14において照合した結果、入力された暗証番号が正しいと判断された場合には、図13に示すように、タッチパネルディスプレイ21の画面上の中央に紙幣の映像が表示される。そして、表示された紙幣の映像が画面上の中央から下側へ向けて移動し、図14に示すように、画面上の下端へ消えて紙幣出入口24の蓋が開かれると共に、紙幣出入口24のフリッカーランプ23が点灯する。
【0058】
その後、利用者は紙幣出入口24の中から現金を取り出し(S15)、図15に示すように、タッチパネルディスプレイ21の画面に明細の送付先を選択する旨の指示が表示される(S16)。このとき、例えば、利用者が「ご自身の携帯電話」を選択すると(S17)、レシート発行機構25のフリッカーランプ23が点灯するので、利用者が携帯する携帯端末50をレシート発行機構25にかざして明細を受け取る(S18)。
【0059】
次に、図16に示すように、タッチパネルディスプレイ21の画面にカードを取り出す旨の指示が表示されると共に、タッチパネルディスプレイ21の画面の中央にカードの映像が表示され(S19)、表示されたカードの映像が画面上の中央から下側へ向けて移動する。そして、利用者がカード挿入口22からカードを取り出すと(S20)、タッチパネルディスプレイ21のバックライト機能が、利用者が自動取引装置1から離れたかどうかを判断する(S21)。
【0060】
このとき、タッチパネルディスプレイ21のバックライト機能によって利用者が自動取引装置1から離れていないと判断された場合には、手順S1の動作に戻る。一方、手順S21において、タッチパネルディスプレイ21のバックライト機能によって利用者が自動取引装置1から離れたと判断された場合には、タッチパネルディスプレイ21がバックライトを消灯し(S22)、本発明の第1実施形態の動作を終了する。
【0061】
このように構成した本発明の第1実施形態によれば、自動取引装置1は、基台3に固定され、受付部が設けられた下部筐体2と、この下部筐体2の上部に取付けられ、タッチパネルディスプレイ21が設けられた上部筐体4とを備え、この上部筐体4がタッチパネルディスプレイ21の形状に合わせて縦長の板状に形成され、利用者に対面した状態において利用者から離れる方向に傾斜するように配置されることにより、自動取引装置1の高さ及び上部筐体4の厚さを抑えることができる。これにより、自動取引装置1を小型化して軽量化できるので、自動取引装置1を搬送する作業を容易に行うことができる。特に、本発明の第1実施形態において、コンビニエンスストアのように設置スペースが限られた場所にも自動取引装置1を収め易くなり、自動取引装置1の設置作業の効率性を向上させることができる。
【0062】
また、自動取引装置1の高さが抑えられることによって、バックパネル31のセカンドディスプレイ28の画面が見易くなることに加え、自動取引装置1の上部の奥行きも抑えられることにより、タッチパネルディスプレイ21を操作する利用者が受ける圧迫感を減少させることができる。さらに、図3(a)及び図3(b)に示すように、利用者がタッチパネルディスプレイ21に対面した状態では、上述したように、タッチパネルディスプレイ21が利用者から離れる方向に傾斜するように配置されることにより、利用者によるタッチパネルディスプレイ21の操作が利用者の後方の不審者に見え難くなるので、暗証番号、引き出した金額、振り込み先の情報等の利用者が取扱う情報の漏洩を抑えることができる。特に、タッチパネルディスプレイ21は、画面に覗き見防止フィルムが貼付されており、側方の一対のパーティション27及び後方のバックパネル31に囲まれているので、透過率調整手段によって利用者がタッチパネルディスプレイ21に対面したときに透過率を調整することにより、利用者が取扱う情報の漏洩を十分に抑えることができる。このように、利用者に対して快適かつ安全なサービスを提供することができる。
【0063】
また、本発明の第1実施形態は、自動取引装置1の受付部の生体認証装置16、カード挿入口22、紙幣出入口24、及びレシート発行機構25を基台3上に固定された下部筐体2に1つに纏めて配置し、タッチパネルディスプレイ21の下方に下部筐体2が位置しているので、手順S3、S5、S16、S19においてタッチパネルディスプレイ21に指示が表示された後や、手順S9において利用者がメニューを選択した後に、図3に示す最適視認範囲Cに下部筐体2が入り易くなり、利用者が生体認証装置16、カード挿入口22、紙幣出入口24、及びレシート発行機構25の個々の場所を探す手間を省くことができ、取引を円滑に行うことができる。これにより、利用者の注意をタッチパネルディスプレイ21の操作から受付部の動作に容易に向かわせることができる。
【0064】
また、本発明の第1実施形態は、タッチパネルディスプレイ21の上部のスリット21Aにカメラ14,15が収納されており、これらのカメラ14,15によって撮影された映像に基づいて判別手段によって利用者と不審者とが判別される。そして、注意喚起手段によってタッチパネルディスプレイ21の画面上で利用者に注意を呼び掛けることにより、タッチパネルディスプレイ21の操作において利用者が警戒することができるので、安全な取引を実現することができる。
【0065】
また、本発明の第1実施形態は、タッチパネルディスプレイ21のスリット21Aの中で2つのカメラ14,15が左右に分かれて配置されていることにより、両眼視差によって奥行きのある立体的な映像を撮影できるので、判別手段は、映像に映し出された各人の距離を計算して比較することで利用者と不審者とを正確に判別することができ、利用者と不審者とを判別する精度を向上させることができる。さらに、利用者はタッチパネルディスプレイ21の画面に表示されたカメラ14,15の映像から後方を確認できるので、不審者がいることを自覚することができる。これにより、自動取引装置1の利用において利用者の安全に対する意識を高めることができる。なお、利用者はプラスチック21Bによってスリット21A内のカメラ14,15に気付き難くなっているので、カメラ14,15のレンズを手で塞ぐ等のいたずらを防止することができる。
【0066】
また、本発明の第1実施形態は、顔枠表示手段によってタッチパネルディスプレイ21の画面上の映像に映し出された不審者の顔を囲む枠を表示して当該顔の動きを追跡することにより、利用者が表示された枠を目印にして不審者を目で追うことができるので、不審者の行動を容易に把握することができる。これにより、利用者は、タッチパネルディスプレイ21の画面を自分の体で隠して不審者に見え難くする等の適切な対応を取ることができる。
【0067】
また、本発明の第1実施形態は、利用者がタッチパネルディスプレイ21の操作のうち、暗証番号を入力する操作や現金を引き出す操作を行うときに、手順S11においてカメラ14,15で撮影された映像がタッチパネルディスプレイ21の上画面にポップアップされるので、利用者が背後の不審者に迅速に気付くことができる。このように、利用者が重要な操作を行う前に背後の不審者の存在を知ることにより、利用者が取扱う情報の漏洩を効果的に抑えることができ、自動取引装置1の信頼性を高めることができる。
【0068】
また、本発明の第1実施形態は、タッチパネルディスプレイ21は、手順S4におけるカードの挿入、手順S6における生体認証、手順S15における現金の引き出し、手順S18における明細の送付、及び手順S20におけるカードの取り出しの動作を受付けるときに、これらの各動作に対応する動画を各動作に連動するように表示することにより、タッチパネルディスプレイ21を操作してから1つの動作の処理が完了するまで流れを分かり易く伝えることができる。これにより、自動取引装置1の高い操作性を確保することができる。
【0069】
また、本発明の第1実施形態は、タッチパネルディスプレイ21(上部筐体4)が下部筐体2から取外し可能に設けられているので、万一、タッチパネルディスプレイ21が故障した場合であっても、図6(b)に示すように、タッチパネルディスプレイ21(上部筐体4)を下部筐体2から取り外し、図6(a)に示すように、新しいタッチパネルディスプレイ21(上部筐体4)を取付けることにより、タッチパネルディスプレイ21の交換作業を容易に行うことができるので、自動取引装置1を早期に復旧させることができる。これにより、自動取引装置1を利用できない時間を減少させることができ、利用者に対して優れたサービスを提供することができる。
【0070】
また、本発明の第1実施形態は、自動取引装置1が使用されていないときには、バックライト機能によってタッチパネルディスプレイ21のバックライトが消灯されるので、無駄な消費電力を省くことができ、タッチパネルディスプレイ21の待機電力にかかる電気代を削減することができる。さらに、注意喚起手段は、通話判別手段によって携帯端末50を使用しながらタッチパネルディスプレイ21の操作を行っている利用者が判別された場合に、タッチパネルディスプレイ21の画面に振り込め詐欺等の注意を喚起する映像を表示することにより、振り込め詐欺等による被害を抑制することができる。
【0071】
また、本発明の第1実施形態は、カメラ14,15で撮影された映像とメッセージが、利用者が取引した情報に関連付けてデータとして記録されているので、例えば、利用者の要望に応じて過去の映像を利用者の明細に記載された時刻から取り出して調査したり、あるいは映像に映し出された不審者の行動等を分析することができる。このように、記録された映像をタッチパネルディスプレイ21の操作における情報の漏洩の防止に役立たせることができる。
【0072】
[第2実施形態]
次に、図21を参照して、本発明に係るサービス提供システムの第2実施形態を説明する。図21は本発明に係るサービス提供システムの第2実施形態の構成を説明するブロック図である。
【0073】
本発明の第2実施形態は、人検知手段の構成が前述した第1実施形態と異なっている。具体的には、人検知手段がタッチパネルディスプレイ21のスリット21Aの中に設けられたステレオカメラ、すなわちカメラ14,15により構成された第1実施形態に対して、第2実施形態では、人検知手段が、自動取引装置1から第1の所定の距離に近接した人を検知するセンサ18(第1のセンサ)と、自動取引装置1から第2の所定の距離に近接した人を検知し、この第2の所定の距離が第1の所定の距離よりも大きく設定されたセンサ19(第2のセンサ)とから構成されている。
【0074】
この第2の実施形態では、判別手段は、センサ18によって検知された人を利用者であると判別し、センサ18が検知した後にセンサ19によって検知された人を不審者であると判別するようになっている。上述した第1の所定の距離は、例えば、タッチパネルディスプレイ21から利用者の立ち位置までの距離に設定されている。ここで、不審者が、天板32に対して所定の角度で傾斜したタッチパネルディスプレイ21の画面に表示された文字を視覚するには、利用者のそばまで近接する必要がある。このため、第2の所定の距離は、例えば、利用者の立ち位置から利用者の後方1mまでの距離に設定されている。なお、本発明の第2実施形態では、注意喚起手段は、判別手段によって利用者と不審者が判別された場合に、予め作製された映像をタッチパネルディスプレイ21の画面に表示するようになっている。
【0075】
また、本発明の第2実施形態では、自動取引装置1を、例えば、銀行等の金融機関に設置することを想定している。そのため、本発明の第2実施形態における自動取引装置1の設置スペースは、第1実施形態における自動取引装置1の設置スペースよりも大きくなっている。従って、本発明の第2実施形態における下部筐体2の大きさが、第1実施形態における下部筐体2の大きさよりも大きく設定されるので、受付部は、例えば、カード挿入口22の隣の空いている部分に配置された、通帳に記入する通帳リーダライタ26を有している。
【0076】
そして、現金出入口は、例えば、紙幣出入口24と、生体認証装置16とレシート発行機構25との間の空いている部分に配置され、硬貨を出入する硬貨出入口34とから構成されている。さらに、本発明の第2実施形態では、天板32の代わりに、図22に示すようにL字型に形成された天板33が用いられている。その他の構成は第1実施形態と同じであり、第1実施形態と重複する部分には同一符号を付して説明している。
【0077】
このように構成した本発明の第2実施形態によれば、利用者が自動取引装置1の操作時の立ち位置に接近すると、利用者がセンサ18及び判別手段によって検出される。その後、利用者が自動取引装置1を操作している間に不審者が利用者の後方1mの距離に接近した場合には、この利用者に接近した不審者がセンサ19及び判別手段によって検出され、タッチパネルディスプレイ21の画面に注意を喚起する映像が表示されるので、利用者はこの映像を確認することによって後方から不審者が近づいてきたことを容易に察知することができる。これにより、利用者は、取扱う情報が不審者に覗き見される前にタッチパネルディスプレイ21の操作を中断できるので、利用者が取扱う情報の漏洩を十分に抑えることができる。
【0078】
なお、上述した本発明の第1実施形態は、タッチパネルディスプレイ21のスリット21Aの中に設けられた2つのカメラ14,15によって奥行きのある映像を撮影した場合について説明したが、この場合に限るものではない。例えば、カメラ14,15に広角レンズを用いて基台3の上面を撮影し、撮影された画像から利用者によるタッチパネルディスプレイ21の操作前後の差分を検出する差分検出手段を備えても良い。このように構成すると、差分検出手段によって利用者がタッチパネルディスプレイ21の操作中に基台3上に置いた財布やカード挿入口22に挿入したカード等の持ち物を検出することができるので、利用者が操作後にこれらの持ち物を取り忘れることを防止することができる。
【0079】
また、本発明の第1実施形態は、タッチパネルディスプレイ21は、カメラ14,15によって利用者の立ち位置に人が撮影された場合にバックライトを点灯して画面を明るく表示し、カメラ14,15によって利用者の立ち位置に人が撮影されなかったときにバックライトを消灯するバックライト機能を有する場合について説明したが、この場合に限るものではない。例えば、タッチパネルディスプレイ21は、例えばカメラ14,15によって利用者の立ち位置に人が撮影されなかったときに広告を画面に表示する広告表示機能を有していても良い。このように構成すると、タッチパネルディスプレイ21が利用者に使用されていないときには、広告表示機能によってコンビニエンスストアの商品の宣伝等を行うことにより、タッチパネルディスプレイ21の画面を有効に活用することができる。
【0080】
また、本発明の第2実施形態は、通帳リーダライタ26が下部筐体2のうちカード挿入口22の隣の空いている部分に配置され、硬貨出入口34が下部筐体2のうち生体認証装置16とレシート発行機構25との間の空いている部分に配置された場合について説明したが、この場合に限らず、通帳リーダライタ26及び硬貨出入口34を下部筐体2に配置しなくても良い。
【0081】
この場合、自動取引装置1は、例えば図23(a)、(b)に示すように基台3の右側方に設置された基台3Aと、この基台3Aと基台3との間に設置され、基台3と一体に設けられた基台3Bと、基台3Aの上面に固定された下部筐体2Aと、この下部筐体2Aの上部に取付けられた上部筐体4Aと、基台3Bの上面に固定された筐体2Bとを備えている。そして、通帳リーダライタ26は例えば上部筐体4Aに設けられ、硬貨出入口34は例えば筐体2Bに設けられている。
【0082】
なお、基台3,3Bの上面には、例えば図24に示すように下部筐体2、支持片5、ガイダンスホン17、及び筐体2Bの各周囲の形状に合わせて部分的にくり抜かれ、L字型に形成された天板33Aが設置されており、基台3Aの上面には、例えば図23(a)に示すように下部筐体2Aの周囲の形状に合わせて部分的にくり抜かれた天板32Aが設置されている。
【符号の説明】
【0083】
1 自動取引装置(ATM)
2、2A 下部筐体
2B 筐体
3,3A,3B 基台
4、4A 上部筐体
14,15 カメラ
16 生体認証装置
18,19 センサ
20 ステレオスピーカ
21 タッチパネルディスプレイ
21A スリット
22 カード挿入口
23 フリッカーランプ
24 紙幣出入口
25 レシート発行機構
26 通帳リーダライタ
27 パーティション
28 セカンドディスプレイ
31 バックパネル
32,32A,33,33A 天板
34 硬貨出入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面を表示して利用者の操作を促す画面操作部と、この画面操作部が受けた操作に応じて前記利用者の所定の動作を受付ける受付部とを有する端末装置を備え、この端末装置を通じて前記利用者にサービスを提供するサービス提供システムにおいて、
前記端末装置は、
前記受付部が設けられた下部筐体と、
この下部筐体を固定する基台と、
前記下部筐体の上部に取付けられ、前記画面操作部が設けられた上部筐体とを備え、
前記画面操作部は縦長に形成され、
前記上部筐体は、前記画面操作部の形状に合わせて縦長の板状に形成され、前記利用者に対面した状態において前記利用者から離れる方向に傾斜するように配置されたことを特徴とするサービス提供システム。
【請求項2】
請求項1に記載のサービス提供システムにおいて、
前記端末装置は、前記利用者に対して現金の取引を行う自動取引装置から成り、
前記基台は、現金を収納する金庫を有し、
前記受付部は、
前記利用者が携帯するカードを挿入するカード挿入口と、
現金を出入する現金出入口とを有することを特徴とするサービス提供システム。
【請求項3】
請求項2に記載のサービス提供システムにおいて、
前記自動取引装置は、
近接した人を検知する人検知手段と、
この人検知手段によって複数の人が検知された場合に、この検知された複数の人の中から前記利用者と不審者とを判別する判別手段とを有し、
前記画面操作部は、前記判別手段によって前記利用者と前記不審者が判別された場合に、前記利用者に注意を喚起する映像を前記画面に表示する注意喚起手段を有することを特徴とするサービス提供システム。
【請求項4】
請求項3に記載のサービス提供システムにおいて、
前記人検知手段は、
前記自動取引装置から第1の所定の距離に近接した人を検知する第1のセンサと、
前記自動取引装置から第2の所定の距離に近接した人を検知し、この第2の所定の距離が前記第1の所定の距離よりも大きく設定された第2のセンサとから成り、
前記判別手段は、前記第1のセンサによって検知された人を前記利用者であると判別し、前記第1のセンサが検知した後に前記第2のセンサによって検知された人を前記不審者であると判別することを特徴とするサービス提供システム。
【請求項5】
請求項3に記載のサービス提供システムにおいて、
前記人検知手段は、前記上部筐体の上部に設けられたステレオカメラから成り、
前記判別手段は、このステレオカメラによって撮影された映像から前記検知された複数の人の位置関係を取得し、前記検知された複数の人のうち前記ステレオカメラからの距離が最も近い人を前記利用者、及びこの利用者の背後にいる人を前記不審者であると判別し、
前記注意喚起手段は、前記ステレオカメラによって撮影された映像を前記画面に表示することを特徴とするサービス提供システム。
【請求項6】
請求項5に記載のサービス提供システムにおいて、
前記注意喚起手段は、前記不審者の顔を囲む枠を表示して当該顔の動きを追跡する顔枠表示手段を含むことを特徴とするサービス提供システム。
【請求項7】
請求項3ないし6のいずれか1項に記載のサービス提供システムにおいて、
前記注意喚起手段は、前記画面操作部が受けた操作のうち所定の操作に応じて前記利用者に注意を喚起する映像をポップアップすることを特徴とするサービス提供システム。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のサービス提供システムにおいて、
前記画面操作部は、
前記受付部が前記所定の動作を受付けるときに、前記所定の動作に対応する動画を前記所定の動作に連動するように表示することを特徴とするサービス提供システム。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項に記載のサービス提供システムにおいて、
前記上部筐体は、前記下部筐体から取外し可能に設けられたことを特徴とするサービス提供システム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図3】
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