説明

サーボトラック検査装置及びサーボライタ

【課題】 磁気テープ記録媒体のサーボパターンのドロップアウト検査を高分解能で、かつ、フォーマットタイプが相違する多種の磁気テープ記録媒体を一台で検査することができるサーボトラック検査装置を提供することを目的とするものである。
【解決手段】 磁気テープ記録媒体(MT)を長手方向に走行させるテープ走行部(20)と、通過する磁気テープ記録媒体(MT)からサーボトラックの構成単位であるストライプを検出してその波形信号(H)をアナログ出力する検出器(31)と、波形信号(H)を、その波形周期より細かい時間間隔(Δt)でデジタルサンプリングして離散信号(J)を出力するA/D変換器(35)と、離散信号(J)のうち極大値を示す極大値信号(K)を抽出する極大値抽出器(42)と、極大値信号(K)を登録されている極大値情報(Fn)に照らし合わせる照合器(43)と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気テープ記録媒体の走行を制御するために書き込まれたサーボトラックを検査する装置に関し、特に、サーボトラックのドロップアウト(DO)を高分解能で検出することができるサーボトラック検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気テープ記録媒体には、データが記録される領域とは別領域にサーボトラックが、磁気テープ記録媒体の走行方向に沿って書き込まれている。
このサーボトラックに基づいて、データを記録・再生する磁気ヘッドが磁気テープ記録媒体をトレースすることから、サーボトラックは、的確に検出されるように鮮明に書き込まれている必要がある。もし、このサーボトラックの書き込みに不鮮明な部分(ドロップアウト)が存在すると、サーボトラックの検出が不安定となりデータ処理の信頼性が低下する。
このため、サーボトラックは、磁気テープ記録媒体の製造時点で書き込まれるとともに、サーボトラック検査装置によりドロップアウトが存在していないことを確認する品質管理がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−367101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、磁気テープ記録媒体におけるデータ処理の信頼性をさらに向上させるため、サーボトラックを構成する最小単位のストライプの一つ一つのレベルまで検査できるように、検査の分解能を向上させたいとする要望が高まっている。
しかし、従来のドロップアウトの検査は、書き込みが不鮮明なサーボトラックの領域(出力が規定値に対して70%を下回る領域)が数十ストライプ以上連続して(距離にして数mmレベルで)存在しなければ検出できないといった、極めて分解能や感度の低いものであった。これは、磁気ヘッドとして用いられるインダクションヘッドの応答性が低いことにより、分解能を向上させるのに限界があったためである。
【0004】
さらに、サーボトラックのサーボパターンのフォーマットタイプは、磁気テープ記録媒体の規格ごとに相違するものであり、磁気テープ記録媒体を製造するメーカーにおいては、その規格ごとに複数のサーボトラック検査装置を備える必要があった。このため、磁気テープ記録媒体の製造設備に投資する金額の上昇を招くとともに、製造ラインを規格の異なる磁気テープ記録媒体に切り替える場合は、そのシステムの変更に多大な労力を要し生産性が低下する問題があった。
【0005】
そこで本発明は、以上の問題点を解決することを目的としてなされたものであり、構成単位であるストライプのレベルまで高分解能にサーボトラックのドロップアウトの検査をすることができるとともに、サーボトラックのフォーマットタイプが相違する多種の磁気テープ記録媒体を一台で検査することができるサーボトラック検査装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記した目的を達成するために創案されたものであり、まず請求項1に記載の発明は、磁気テープ記録媒体に書き込まれたサーボトラック(ST)を検査するサーボトラック検査装置において、前記磁気テープ記録媒体を長手方向に走行させるテープ走行部と、通過する前記磁気テープ記録媒体から前記サーボトラックの構成単位であるストライプを検出してその波形信号をアナログ出力する検出器と、前記波形信号をその波形周期より細かい時間間隔でデジタルサンプリングして離散信号を出力するA/D変換器と、前記離散信号のうち極大値を示す極大値信号を抽出する極大値抽出器と、前記極大値信号を登録されている極大値情報に照らし合わせる照合器と、を備えることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、サーボトラックを構成する最小単位であるストライプのレベルまで分解能を向上させてドロップアウトの有無を確認する検査が可能になる。
ここで、極大値情報とは、サーボトラックのフォーマットタイプに一意的に対応する情報であって、予めサーボトラック検査装置に登録されているものである。そして、この極大値情報と、検出器で検出された波形信号とが照合させることによりサーボトラックのドロップアウトの有無の確認が実行される。
これにより、複数のストライプの配列からなりサーボトラックにおける繰り返しの単位となるフレームにおいて、このフレームが規定数のストライプから構成されるか否かといった確認を行なうことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のサーボトラック検査装置において、前記波形信号のノイズ周波数成分を除去する濾波器を有することを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、極大値信号の検出精度が向上する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のサーボトラック検査装置において、前記サーボトラックのフォーマットタイプ情報を入力する入力部と、入力された前記フォーマットタイプ情報に基づき択一的に選択される複数の前記極大値情報を記憶することが可能な記憶器と、を備えることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、サーボトラックのフォーマットタイプの異なる複数種類の磁気テープ記録媒体の検査が、一台のサーボトラック検査装置で可能になる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のサーボトラック検査装置において前記検出器はMRヘッドであることを特徴とする。
【0013】
応答性の高いMRヘッドを用いることにより、前記波形信号の検出を高精度に実施することができる。
【0014】
請求項5に記載のサーボライタにおいては、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載されるサーボトラック検査装置と、前記計測部よりも上流側で走行する前記磁気テープ記録媒体に対し前記サーボトラックを書き込むサーボパターン書込部と、が設けられていることを特徴とする。
【0015】
かかる構成によれば、磁気テープ記録媒体にサーボトラックを書き込みつつ、連続してその書き込まれたサーボトラックのドロップアウトの有無について検査することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るサーボトラック検査装置により以下に示す優れた効果を奏する。
すなわち、本発明に係るサーボトラック検査装置により検査を受けて合格を受けた磁気テープ記録媒体は、データ処理の信頼性が高いものであることが保証され商品価値が向上する。
さらに、フォーマットタイプが異なる規格の磁気テープ記録媒体を複数種類生産する場合であっても、この規格にあわせてサーボトラック検査装置を複数台備える必要がなくなり、設備投資金額の節減及び生産性の向上に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1から図5を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は本実施形態におけるタイミングベースド方式によるサーボトラック検査装置の基本構成を示すブロック図である。図2(a)は、磁気テープ記録媒体MTにおいて、データを記録/再生するデータバンドDB、及び書き込まれているサーボトラックSTを示す図である。図2(b)(c)は、タイミングベースド方式におけるサーボトラックSTのサーボパターンのフォーマットタイプを例示する図である。図3は、入力部51から入力される入力情報Inの詳細を示す図である。図4(a)はサーボトラックSTの長手方向に沿って、その構成単位であるストライプSの断面を模式的に示す図であり、図4(b)はストライプSを検出した検出器31が出力する波形信号Hを示す図であり、図4(c)は波形信号Hをデジタルサンプリングにより離散信号化した後、濾波器41でノイズ成分の除去処理を行った後の波形を示す図であり、図4(d)はノイズ成分の除去処理を行った波形の1周期分を拡大して示す図であり、図4(e)は離散信号Jにおいて時間信号tjに対する強度信号Ajとして示すテーブルであり、図4(f)は離散信号Jの中から、極大値を示す極大値信号Kを抽出して示すテーブルである。
【0018】
(サーボトラックの説明)
最初に、本実施形態に係るサーボトラック検査装置の説明に先立って、図2を参照して、タイミングベースド方式によるサーボトラックの説明を行う。
図2(a)に示すように、磁気テープ記録媒体MTには、その幅方向(図中の上下方向)にデータが記録される領域として、データバンドDB(DB1,DB2,DB3,DB4)が多数(図では4つ)形成されている。さらに、これらデータバンドDB(DB1,DB2,DB3,DB4)のそれぞれは、さらに複数のデータトラック(図示せず)に細分されている。
【0019】
そして、各データバンドDB(DB1,DB2,DB3,DB4)の領域の境界部分には、サーボトラックST(ST1,ST2,ST3,ST4,ST5)が書き込まれている。
これらサーボトラックSTのうち1つを拡大すると図2(b)又は図2(c)に示すように、サーボ信号は、同一形状のフレームNi,Nkが所定の間隔で繰り返すサーボパターンを形成している。そして、このフレームNi,Nkは、傾斜する複数のストライプSから構成されている。なお、図面においてフレームNi,Nkは、多数(図2(b)では10本、図2(c)では15本)のストライプSから構成されているが、これは例示したものであって、少なくとも相互に傾斜する2以上のストライプSの対を含むものであればよい。
【0020】
ところで、磁気テープ記録媒体MT上で、データを記録する場合、磁気ヘッドは、検知したサーボトラックSTの位置情報に基づいて、データバンドDB内に重なりが生じないようにデータを書き込む。また、磁気テープ記録媒体MT上のデータを再生する場合は、磁気ヘッドは、検知したサーボトラックSTの位置情報に基づいて、特定のデータトラックを正確にトレースしてデータを読み取ることになる。
このように、サーボトラックSTは、磁気テープ記録媒体MT上にデータを記録/再生する際に、磁気ヘッドを駆動させる基準となるので、サーボトラックSTはその構成単位であるストライプSが鮮明に書き込まれてドロップアウトの無いことが要求される。そして、少なくとも、サーボトラックSTの繰り返しの単位であるフレームNi,Nkのレベルでのドロップアウトが存在する磁気テープ記録媒体MTは、検査により排除されなければならない。
【0021】
(サーボトラック検査装置の説明)
図1に示すように本実施形態に係るサーボトラック検査装置10は、テープ走行部20と、計測部30と、処理部40と、入力部51と、表示部52とから構成され、通過する磁気テープ記録媒体MTからサーボトラックSTの構成単位であるストライプSを検出してドロップアウトの有無を高分解能で計測する検査装置である。
【0022】
テープ走行部20は、送出リール21と、巻取リール22とから構成され、磁気テープ記録媒体を所定の速度で幅方向にぶれを生じさせることなく走行させるものである。
送出リール21は、サーボトラックST(図2(a)参照)が書き込まれている磁気テープ記録媒体MTが巻回されている場合と、サーボトラックSTが書き込まれていない磁気テープ記録媒体MTが巻回されている場合とが考慮され得る。前者の場合は、後記するサーボパターン書込部25は不要である。一方後者の場合においては、サーボパターン書込部25によりサーボトラックSTが磁気テープ記録媒体MTに書き込まれることとなる。
【0023】
巻取リール22は、この送出リール21から引き出されて走行する磁気テープ記録媒体MTを巻き取るものである。なお、磁気テープ記録媒体MTは、所定のテープ走行速度vでむらなく、さらに幅方向にぶれることもなく二つのリール21,22間を走行するものとする。
【0024】
サーボパターン書込部25は、パターン書込器23と、書込ドライバ24とから構成され、サーボトラックSTの構成単位であるストライプSを所定の時間間隔で磁気テープ記録媒体MTに書き込むものである。前記したように、サーボトラック検査装置10は、サーボパターン書込部25が付加されている場合と無い場合が考慮され得るが、サーボパターン書込部25が付加されている場合は、サーボトラックSTの書き込み機能を優先してサーボライタ10と呼ぶこともある。
パターン書込器23の磁気テープ記録媒体MTとの接触面には、図2(b)(c)に示される書込ヘッド23b,23cようにストライプSのサーボパターンに対応する磁気ギャップGが形成されている。そしてこの磁気ギャップGからは、磁場が漏れ、これに近接する磁気テープ記録媒体MTの磁気層の磁化の方向を変化させる。
【0025】
書込ドライバ24は、書込動作周波数fにて磁気ギャップGから発生する磁場の方向を動的に変化させるものである。ちなみに図2(b)(c)に示されるサーボパターンは、書込ドライバ24を書込動作周波数f1で5周期分連続書き込ませた後、書込動作周波数f2(<f1)で1周期分書き込ませるといった動作を連続して得られるものである。なお、隣接するストライプS,S,S…の間隔は、この書込動作周波数f(f1,f2)と、磁気テープ記録媒体MTのテープ走行速度vとの関係により決定される。
【0026】
ところで、テープ走行部20は、磁気テープ記録媒体MTの走行安定性を実現するために、図示しないキャプスタンローラを磁気テープ記録媒体MTに添接させて走行駆動力を与える形態も取り得る。
また、このテープ走行部20は、磁気テープ記録媒体MTを幅方向にぶれさせることなく走行させるものであるが、仮にそのような幅方向のぶれが発生したとしても、この磁気テープ記録媒体MTのエッジ位置を検出するなどして、その後の処理においてこのぶれを適切に補正処理する機能を有する場合もある。
【0027】
計測部30は、検出器31と、検出器ドライバ32と、増幅器33と、A/D変換器35とから構成され、通過する磁気テープ記録媒体MT上のストライプS,S,S…をテープ走行方向に順次検出し、各ストライプS毎に検出された波形信号Hをデジタルサンプリングして処理部40に出力するものである。
【0028】
検出器31は、走行する磁気テープ記録媒体MTに接するように配置され、書き込まれているサーボトラックSTに対し、検出器31の通過軌道n(図2b参照)がストライプS,S,S…に交差するものである。そして、図2(b)に示される通過軌道nの断面を図4(a)のように示すと、検出器31は、図4(b)に示すように、磁気テープ記録媒体MTが走行すると交差するストライプSの境界部分における磁化の変化を検知し、その変化量に比例した信号強度を有する波形信号Hをアナログ信号として出力する。
【0029】
具体的な検出器31としては、高応答性(時定数が小さいこと)で知られるMR(magneto resistive)ヘッドが挙げられるが、さらに高応答性を有し磁化の変化量に比例した信号強度のアナログ信号を出力する機能を発揮するものであればこれに限定されるものでない。なおMRヘッドはとは、外部磁界が変動すると電気抵抗が変動する性質を利用したものである。
ここで、図4(b)に示される波形信号Hのピークトップが、現実のストライプSの境界より遅れて検出されるのは、この検出器31の時定数に大きく関係している。すなわち、この時定数が大きくなる程、ピークトップは遅れて検出されるとともに、強度も小さく検出されて、波形信号Hはピーク形状がブロードでS/N比の悪い波形となる。一方、時定数がより小さい検出器31を用いることができれば、図4(b)で示される波形信号Hよりも、さらにシャープで強度の大きなピークが得られることとなりピーク検出精度の向上に寄与する。
このように、検出器31の時定数は、磁気テープ記録媒体MTのドロップアウト検査を実施する上でピークの位置・強度の良・不良を判断する上で重要なファクターであるので図3に示すように、装置特性情報Un(後記する入力情報Inに含まれる)として入力項目となる。
【0030】
検出器ドライバ32は、前記したように検出器31が動作するように、パワーを供給するものである。
増幅器33は、検出器31から出力された微弱なアナログ信号である波形信号Hを増幅するものである。
【0031】
A/D変換器35は、検出器31からアナログ出力された波形信号H(図4(b)参照)をその波形周期より細かい時間間隔Δtでデジタルサンプリングした離散信号Jを出力するものである(図4(e)に示すものは、デジタルサンプリング後、濾波器41でノイズ成分がさらに除去されたものである)。
【0032】
処理部40は、濾波器41と、極大値抽出器42と、照合器43と、記憶器44と、周辺機器接続端子45とから構成され、計測部30から入力した離散信号Jに基づき、サーボトラックSTの構成単位であるストライプSのドロップアウトの有無の判定を行うものである。
【0033】
入力部51は、具体的には、図示しない作業者に操作されるキーボード、マウス、入力タブレット等である。この入力部51からは、図3に示されるような入力情報Inが入力される。この入力情報Inは、さらにフォーマットタイプ情報Qn、装置制御情報Rn、装置特性情報Un、判定情報Tnに分類される。
【0034】
フォーマットタイプ情報Qnとは、図2(b)(c)のように区別されるような、サーボトラックのパターンタイプ、フレームNi,Nkの規定寸法、規定アジマス角等である。
装置制御情報Rnとは、図1に示されるテープ走行速度v、書込動作周波数f、及び制御補正定数等である。
装置特性情報Unとは、検出器31の磁気ヘッドの時定数、ゲイン特性及び信号処理回路のフィルタ特性に関する情報である。
これらフォーマットタイプ情報Qn、装置制御情報Rn及び装置特性情報Unの入力に基づき、記憶器44に記憶されている複数の極大値情報Fnの中から、ドロップアウト検査の対象となるサーボトラックSTのパターンに対応する極大値情報Fnが、択一的に選択される。しかし、これらのうち装置制御情報Rn及び装置特性情報Unに関しては、変動要素がフォーマットタイプ情報Qnと比べて微細であるので考慮から外される場合もある。
【0035】
極大値情報Fnとは、図2(a)に示されるサーボトラックSTの図2(b)又は(c)に例示されるような多種のフォーマットタイプに対し一意的に対応する情報である。具体的には、特定のサーボトラックSTが検出器31(図1参照)で検出されたときの波形信号H(図4(b)参照)のピークトップの位置や強度等の情報が含まれ、予めサーボトラック検査装置10の記憶器44に登録されているものである。そして、この極大値情報Fnと、検出器31で検出された波形信号Hとを照合させることによりサーボトラックSTのドロップアウトの有無が確認できる。
さらに、この極大値情報Fnは、図2(b)(c)に例示されるようにサーボトラックSTのフォーマットタイプが異なれば、それぞれに対応する別個の極大値情報Fnがドロップアウトの検査に適用されることとなる。
このドロップアウトの検査により、サーボトラックSTの繰り返し単位であるフレームNi,Nkにおいて、このフレームNi,Nkが規定数のストライプSから構成されるか否かといった確認を行なうことができる。
【0036】
判定情報Tnとは、後記する照合器43で用いられ、磁気テープ記録媒体MT上のストライプSの印字の鮮明・不鮮明(具体的には、強度信号Ajが検出許容範囲内か否か)を判定する基準となるOK/NG閾値、この判定により良品または不良品として取り扱われる磁気テープ記録媒体MTの単位長さを示す判定長、一回の検査で連続的に判定処理される磁気テープ記録媒体MTの長さを示す処理テープ長等である。
【0037】
表示部52は、入力部51による操作を視覚的に行えるように、前記したフォーマットタイプ情報Qn、装置制御情報Rn、装置特性情報Un及び判定情報Tnの入力をメニュー選択できるようにしたものである。また、磁気テープ記録媒体MTの不良・良品の判断結果をその位置情報とともに表示する。
【0038】
濾波器41は、波形信号Hに含まれる低周波、又は高周波のノイズ成分を除去するものである。具体的には、計測部30から入力した離散信号Jをフーリエ展開し低周波成分及び高周波成分を除去する。ここで、検出器31から出力された波形信号Hは、図4(b)に示すように、高周波ノイズ(ギザギザ部分)と低周波ノイズ(うねり部分)を含むものである。このようなノイズを含む波形信号Hが濾波器41を通過すると図4(c)に示すように正確な波形が得られることとなる。
【0039】
極大値抽出器42は、図4(f)に示されるようにデジタルサンプリングされた離散信号Jのなかから極大値を示す極大値信号Kを抽出するものである。
【0040】
照合器43は、極大値抽出器42で抽出された極大値信号Kと、記憶器44の中から選択された極大値情報Fnとを照合して、極大値信号Kの中で、まず時間信号tjに欠落がないか、強度信号Ajが判定情報Tnで定める閾値で定められる所定の強度を有しているか判断し、条件を満たさない場合はドロップアウトと判定するものである。
【0041】
記憶器44は、サーボトラックSTのサーボパターンに対応する複数の極大値情報Fnを格納して登録するものである。そして、入力部51で入力されたフォーマットタイプ情報Qnに基づき対応する極大値情報Fnが、記憶器44に登録されている複数の極大値情報Fnのなかから択一的に選択されることとなる。
【0042】
周辺機器接続端子45は、サーボトラック検査装置10と、周辺機器であるCDドライブ、FDドライブ又はインターネット上のWebサーバ等とを接続する端子であって、これらに存在する極大値情報Fnを記憶器44にロードするものである。
【0043】
次に図1及び図5を参照して本実施形態に係るサーボトラック検査装置10の動作説明を行う。図5は、本発明に係るサーボトラック検査装置の動作説明を行うフローチャートである。
まず、作業者により入力部51から入力情報Inが入力される(S11)。この入力された入力情報Inのうちフォーマットタイプ情報Qn、装置制御情報Rn及び装置特性情報Unより、記憶器44のなかから極大値情報Fnが選定される(S12)。
次に、テープ走行部20によって磁気テープ記録媒体MTが走行開始するとともに(S13)、検出器31により磁気テープ記録媒体MTに書き込まれているサーボトラックSTのストライプSが検出されその波形信号Hがアナログ出力される(S14)。
【0044】
次に、アナログ出力された波形信号Hは、増幅器33により増幅された後、A/D変換器35により、波形周期より細かい時間間隔Δtでデジタルサンプリングされる(S15)。そして、時間間隔Δtでデジタルサンプリングされた離散信号Jは、濾波器41にかけられて高周波及び低周波のノイズ成分の除去処理が施される(S16)。
【0045】
次に、極大値抽出器42において、波形信号Hの離散信号Jの中から極大値を示す極大値信号Kが抽出される(S17)。
【0046】
次に、照合器43において、記憶器44において選択された極大値情報Fnと、極大値信号Kとを照合して、時間信号tjに抜けがないか強度信号Aj(図4参照)が判定情報Tn(図3参照)で定められた閾値の所定の範囲内にあるかどうかを基準にエラー検出を行う(S18)。このような照合・エラー検出作業が、磁気テープ記録媒体MTの所定の判定長を超えるまで繰り返される(S19)。そして、この所定の判定長を単位に磁気テープ記録媒体MTの良・不良が判定され、エラー検出があればエラー通知される(S20、S21)。そして、このような判定が磁気テープ記録媒体MTが所定の処理テープ長に達するまで繰り返される(S22)。
【0047】
以上述べたように、サーボトラック検査装置10が構成されることにより、磁気テープ記録媒体MTのドロップアウト検査がサーボトラックSTの構成単位であるストライプSレベルの高分解能で行なうことができる。
そして、図示しない操作者が入力部51から入力情報Inを入力するだけで、また必要に応じて外部から所望の極大値情報Fnをダウンロードすることにより一台のサーボトラック検査装置10にて複数のフォーマットタイプに対応したサーボトラックSTの検査を実施できる。このため、この検査においてサーボトラックSTのフォーマットタイプに依存してサーボトラック検査装置10を交換する必要がなくなる。また、このようなサーボトラック検査装置10において走行する磁気テープ記録媒体MTの上流側にサーボパターン書込部25を設けることにより、サーボパターンを書き込んだ直後にドロップアウト検査を行う事が出来るサーボライタが構成される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態におけるサーボトラック検査装置の基本構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は、第1実施形態に用いられる磁気テープ記録媒体の記録面を示す図であり、(b)(c)は、タイミングベースド方式におけるサーボトラックのサーボパターンのフォーマットタイプを例示する図である。
【図3】本発明のサーボトラック検査装置の入力部から入力される入力情報の詳細を示す図である。
【図4】(a)はサーボトラックSTの長手方向に沿って、その構成単位であるストライプの断面の磁化方向の相違を模式的に示す図であり、(b)はストライプを検出した検出器が出力する波形信号を示す図であり、(c)は波形信号をデジタルサンプリングにより離散信号化して、ノイズ成分の除去処理を行った後の波形を示す図であり、(d)はノイズ成分の除去処理を行った波形の1周期分を拡大して示す図であり、(e)は離散信号において時間信号tjに対する強度信号Ajとして示すテーブルであり、(f)は離散信号Jの中から、極大値を示す極大値信号Kを抽出して示すテーブルである。
【図5】本発明に係るサーボトラック検査装置の動作説明を行うフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
10 サーボトラック検査装置(サーボライタ)
20 テープ走行部
25 サーボパターン書込部
30 計測部
31 検出器
40 処理部
42 最大値抽出器
43 照合器
44 記憶器
51 入力部
n 極大値情報
n 入力情報
MT 磁気テープ記録媒体
i フレーム
n フォーマットタイプ情報
n 装置制御情報
S ストライプ
ST サーボトラック
n 判定情報
n 装置特性情報
f 書込動作周波数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気テープ記録媒体に書き込まれたサーボトラックを検査するサーボトラック検査装置において、
前記磁気テープ記録媒体を長手方向に走行させるテープ走行部と、
通過する前記磁気テープ記録媒体から前記サーボトラックの構成単位であるストライプを検出してその波形信号をアナログ出力する検出器と、
前記波形信号を、その波形周期より細かい時間間隔でデジタルサンプリングして離散信号を出力するA/D変換器と、
前記離散信号のうち極大値を示す極大値信号を抽出する極大値抽出器と、
前記極大値信号を登録されている極大値情報に照らし合わせる照合器と、を備えることを特徴とするサーボトラック検査装置。
【請求項2】
前記波形信号のノイズ周波数成分を除去する濾波器を有することを特徴とする請求項1に記載のサーボトラック検査装置。
【請求項3】
前記サーボトラックのフォーマットタイプ情報を入力する入力部と、
入力された前記フォーマットタイプ情報に基づき択一的に選択される複数の前記極大値情報を記憶することが可能な記憶器と、を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のサーボトラック検査装置。
【請求項4】
前記検出器はMRヘッドであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のサーボトラック検査装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載されるサーボトラック検査装置と、
前記検出器よりも上流側で、走行する前記磁気テープ記録媒体に対し、前記サーボトラックを書き込むサーボパターン書込部と、が設けられていることを特徴とするサーボライタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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