説明

サーボ書込み方法及びディスク記憶装置

【課題】マルチスパライルサーボパターンを有効に使用したセルフサーボ書込み動作を実現できるサーボ書込み方法を提供することにある。
【解決手段】ディスクドライブ20において、CPU27により、予め記録されたマルチスパイラルサーボパターンを使用して、ファイナルパターンをディスク媒体10上に記録するためのセルフサーボ書込み方法が開示されている。CPU27は、指定のスパイラルサーボパターンを使用して、ヘッド22をファイナルパターンを書き込むための目標位置に位置決めする位置決め処理と、指定のスパイラルサーボパターンに基づいて、ファイナルパターンに含まれるセクタアドレスデータを生成する生成処理とを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にディスク記憶装置に関し、マルチサーボスパイラルパターンを使用して、ディスク媒体上に製品用サーボパターンを記録するサーボ書込み技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ハードディスクドライブなどのディスク記憶装置(以下、ディスクドライブと表記する場合がある)では、磁気記録媒体であるディスク媒体上には、ヘッドの位置決め制御(サーボ制御)に使用されるサーボパターン(サーボデータ)が記録されている。
【0003】
ディスクドライブは、ヘッドに含まれるリードヘッドにより読出されたサーボパターンを使用して、ディスク媒体上での目標位置(目標トラック)にヘッドを位置決め制御する。リードヘッドは、目標位置からデータの読出す動作を実行する。また、ヘッドに含まれるライトヘッドは、目標位置にデータを書き込む動作を実行する。
【0004】
サーボパターンは、ディスクドライブの製造工程に含まれるサーボ書き込み工程により、ディスク媒体上に記録される。サーボ書き込み工程の効率化を図るために、予めベースパターンが記録されたディスク媒体をディスクドライブに組み込み、当該ベースパターンに基づいて、ディスク媒体上にサーボパターンを記録するセルフサーボ書込み方式が注目されている。セルフサーボ書込み方法は、製品として出荷されるディスクドライブによりディスク媒体上にサーボパターンを書き込む方法である。
【0005】
近年、セルフサーボ書込み方式では、ベースパターンとしてマルチスパライルサーボパターンを使用して、ディスク媒体上に放射状サーボパターンを記録する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2を参照)。マルチスパライルサーボパターンは、複数のスパイラル(螺旋状)サーボパターン(以下、単にスパイラルパターンと表記する場合がある)から構成されている。
【0006】
放射状サーボパターンは、同心円状トラックを構成する製品用サーボパターンであり、製品として出荷されるディスクドライブにおいて、ヘッド位置決め制御に使用されるサーボパターン(以下、ファイナルパターンと表記する場合がある)である。
【特許文献1】米国特許公報USP5,668,679(1997年)
【特許文献2】米国特許公報USP6,965,489(2005年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マルチスパライルサーボパターンの各スパイラルパターンには、位置誤差信号を再生するためのバーストデータとシンクマークのみが記録されている。ディスクドライブは、マルチスパライルサーボパターンを、ヘッドのトラッキング(位置決め)動作に使用するだけである。
【0008】
しかしながら、マルチスパライルサーボパターンを使用して、トラッキング動作だけでなく、ファイナルパターンを記録するときに必要なセクタアドレスを生成できれば、マルチスパライルサーボパターンを有効に使用したセルフサーボ書込みを実現できる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、マルチスパライルサーボパターンを有効に使用したセルフサーボ書込み動作を実現できるサーボ書込み方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の観点に従ったサーボ書込み方法は、ディスク媒体、当該ディスク媒体に対してデータの読出しと書き込みを行なうためのヘッド、及び前記ヘッドを移動させるためのヘッド移動手段を有するディスク記憶装置において、前記ディスク媒体上に記録されたマルチスパイラルサーボパターンを使用して、放射状サーボパターンからなるファイナルパターンを前記ディスク媒体上に記録するためのサーボ書込み方法であって、前記ディスク媒体上の内周領域または外周領域の基準位置から前記ヘッドを移動させて、前記マルチスパイラルサーボパターンに含まれる指定のスパイラルサーボパターンを探索する処理と、前記指定のスパイラルサーボパターンを使用して、前記ヘッドを前記ファイナルパターンを書き込むための目標位置に位置決めする位置決め処理と、前記指定のスパイラルサーボパターンに基づいて、前記ファイナルパターンに含まれるセクタアドレスデータを生成する生成処理と、前記ヘッドにより、前記セクタアドレスデータを含む前記ファイナルパターンを前記目標位置に書き込む書き込み処理とを有する手順を実行する構成である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、マルチスパライルサーボパターンを使用して、トラッキング動作だけでなくセクタアドレスを生成するため、マルチスパライルサーボパターンを有効に使用したセルフサーボ書込み動作を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0013】
(サーボトラックライタ及びディスクドライブの構成)
図1は、本実施形態に関するサーボ書込み工程で使用されるサーボトラックライタ(STW)の要部を示す図である。サーボ書込み工程とは、ディスクドライブの製造工程において、ディスク媒体10上にサーボパターン(サーボデータ)を書き込む工程である。
【0014】
一般的に、サーボトラックライタは、クリーンルーム内に設置されて、データが全く書き込まれていないディスク媒体10上にサーボパターンを書き込む。サーボトラックライタは、図1に示すように、サーボパターンを書き込むためのサーボヘッド12と、ヘッド駆動機構13と、コントローラ14と、書き込み制御回路15と、クロックヘッド16と、マスタクロック回路17とを有する。
【0015】
コントローラ14は、ヘッド駆動機構13を制御して、スピンドルモータ11により回転しているディスク媒体10上の指定位置までサーボヘッド12を移動して位置決めする。書き込み制御回路15は、サーボヘッド12にサーボデータを送る。このサーボデータにより、サーボヘッド12は、ディスク媒体10上の指定位置にサーボパターンを書き込む。
【0016】
ここで、本実施形態では、サーボトラックライタにより、ディスク媒体10上には、図5に示すように、スパイラル状のサーボパターンが、ベースパターン501として書き込まれる。実際には、複数本のスパイラルサーボパターン(以下、スパイラルパターン)からなるマルチスパイラルサーボパターンが、ベースパターン501としてディスク媒体10に書き込まれる。
【0017】
さらに、本実施形態では、セルフサーボ書込み(self-servo write)方法により、ディスク媒体10には、図2に示すように、放射状のサーボパターンが書き込まれる。放射状のサーボパターンは、同心円状のサーボトラックを構成する。
【0018】
セルフサーボ書込み工程では、サーボトラックライタにより、ペースパターン501が書き込まれたディスク媒体10が、図4に示すように、ディスクドライブ20に組み込まれる。この製品として出荷予定のディスクドライブ20は、ディスク媒体10に記録されたベースパターン501に基づいてヘッド22を位置決め制御し、放射状のサーボパターンであるファイナルパターン(製品用サーボパターン)を書き込む。
【0019】
ファイナルパターンは、図2に示すように、同心円状のサーボトラックを構成する放射形状の各サーボセクタ100からなる。換言すれば、各サーボトラックは、周方向に一定間隔で配置された複数(ここでは、8個)のサーボセクタ100から構成される。各サーボセクタ100は、図3に示すように、プリアンブル101、サーボマーク102、セクタアドレス103、シリンダ(トラック)アドレス104、及びサーボバーストパターン(A〜D)105を含む。
【0020】
ディスクドライブ20は、図4に示すように、ヘッド22を搭載しているアクチュエータ(ヘッド移動機構)21と、ヘッドアンプ回路23と、回路基板24とを有する。ヘッド22は、ディスク媒体10からデータ(サーボパターンも含む)を読出すためのリードヘッド22R、及びディスク媒体10からデータを書き込むためのライトヘッド22Wを有する。
【0021】
アクチュエータ21は、後述するモータドライバ28から供給される電流により駆動するボイスコイルモータ(VCM)を有する。アクチュエータ21は、VCMの回転駆動力により、ヘッド22をディスク媒体10上の半径方向に移動させる。
【0022】
回路基板24には、サーボコントローラ26を含むリード/ライト(R/W)チャネル25、マイクロプロセッサ(CPU)27、モータドライバ28、及びディスクコントローラ(HDC)29が実装されている。
【0023】
リード/ライトチャネル25は、サーボパターン及びユーザデータのリード/ライト信号を処理する信号処理回路である。リード/ライトチャネル25は、リードヘッド22Rにより読出されたユーザデータを再生して、HDC29に送出する。また、リード/ライトチャネル25は、HDC29から出力されるユーザデータをライト信号に変換してヘッドアンプ回路23に出力する。
【0024】
サーボコントローラ26は、ベースパターン501やファイナルパターンを再生する機能を有する。具体的には、サーボコントローラ26は、セクタアドレス103やシリンダアドレス104を検出する検出部、ベースパターン501やサーボバーストパターン105を復調する復調部、及び当該検出部と復調部の各出力を使用して位置情報を生成する生成部などを含む。サーボコントローラ26は、ヘッド22のディスク媒体10上の位置を示す位置情報をCPU27に出力する。
【0025】
モータドライバ28は、CPU27の制御に従って、スピンドルモータ11、及びアクチュエータ21に含まれるボイスコイルモータを駆動する。CPU27は、ディスクドライブ20のメインコントローラであり、本実施形態に関するセルフサーボ書き込み動作を実行する機能を備えている。
【0026】
なお、図4は、ディスクドライブ20の構成の中で、本実施形態に関する構成のみを示している。また、サーボコントローラ26の一部は、HDC29に設けられている構成でもよい。この場合、リード/ライトチャネル25は、アドレスデータ103,104を検出する検出部及び復調部を含み、当該検出部と復調部の各出力をHDC29に出力する。HDC29は、位置情報を生成してCPU27に出力する。
【0027】
(セルフサーボ書き込み動作)
セルフサーボ書き込み工程では、CPU27は、ディスク媒体10上に記録されているベースパターン501である各スパイラルパターンをトラッキングパターンとして使用することで、ヘッド22をディスク媒体10上の目標位置に位置決めするトラッキングを行う。
【0028】
ヘッド22に含まれるライトヘッド22Wは、図2及び図3に示すように、製品として出荷されるディスクドライブ20に使用されるファイナルパターン(製品用サーボパターン)を、ディスク媒体10上に書き込む。ファイナルパターンは、同心円状のサーボトラックを構成する放射状サーボパターン(サーボセクタ100)である。
【0029】
ここで、ベースパターン501は、図1に示すようなサーボトラックライタにより、ディスク媒体10上に記録される。ベースパターン501は、図5に示すように、例えば200〜300本程度のスパイラルパターンから構成されている。1本のスパイラルパターンは、例えば10〜20回転程度の長さを持ち、1回のフルトラックシーク動作で、ディスク媒体10上に書き込まれる。
【0030】
1本のスパイラルパターンには、図6に示すように、シンクマーク601とバースト信号602との組が、繰り返し隙間なく記録されている。バースト信号602は、ヘッド22の位置誤差を検出するための信号である。なお、スパイラルパターンには、ファイナルパターンに含まれているセクタアドレス103やシリンダアドレス104に相当するデータは記録されていない。
【0031】
ベースパターン501は、図7に示すように、複数のスパイラルパターン702がそれぞれ平行かつ等間隔に配置されている構成である。なお、図7は、横軸を時間を示し、縦軸をディスク媒体10上の半径位置700(内周から外周の範囲)を示す。
【0032】
さらに、本実施形態では、図7及び図8に示すように、ディスク媒体10上の最内周には、同心円状のサーボトラックを構成する基準サーボパターン(以下、シードパターンと表記する)704が記録されている。このシードパターン704は、ファイナルパターンと同じ構成のサーボパターンである(図3を参照)。
【0033】
以下、図7から図10を参照して、本実施形態のセルフサーボ書き込み動作を説明する。
【0034】
まず最初に、CPU27は、ヘッド22をディスク媒体10上にロードした後、VCMに一定電流を供給することでアクチュエータ21を駆動して、ドライブ20の内部に設けられた内周ストッパに押し当てる。これにより、ヘッド22は、ディスク媒体10上の最内周領域に位置決めされる。
【0035】
この状態で、CPU27は、図8(A)に示すように、リードヘッド22Rによるリード動作を実行することにより、シードパターン704を探索する処理を実行する(ステップS1)。CPU27は、シードパターン704を発見すると、ヘッド22(リードヘッド22R)をシードパターン704からなるサーボトラックに位置決めするためのトラッキング動作に移行する(ステップS2)。
【0036】
次に、CPU27は、図8(B)に示すように、スパイラルサーボゲートSSGを使用して、スパイラルパターン702を探索する処理を実行する(ステップS3)。スパイラルサーボゲートSSGは、ディスク媒体10上に等間隔で記録されている各スパイラルパターン702を読出すためのタイミング信号であり、通常ではHDC29により生成される。
【0037】
探索処理は、具体的にはスパイラルサーボゲートSSGのタイミング位置を固定したまま、ヘッド22を外周方向800に徐々に移動させることで行う。図8(B)に示すように、リードヘッド22Rが、スパイラルパターン702を読み出せる位置(SSGのタイミング位置801)に到達したときに探索を終了する。
【0038】
CPU27は、スパイラルパターン702の探索が終了した時点からは、スパイラルパターン702を使用してヘッド22のトラッキング動作(位置決め動作)を実行する。即ち、CPU27は、スパイラルパターン702の探索が終了した時点から以降、シードパターン704を使用せずにトラッキング動作を行なう。
【0039】
図7は、トラッキング動作で使用するスパイラルパターン702と、書き込み対象であるファイナルパターン703の位置関係を示す(半径方向700)。本実施形態は、1本のファイナルパターン703に対して、2本のスパイラルパターン702が存在するフォーマットである。CPU27は、等間隔に配置されたN本のスパイラルパターン702を使用してヘッド22のトラッキング動作を実行し、ファイナルパターン703を書き込む(ステップS6)。
【0040】
ここで、前述したように、スパイラルサーボパターン702には、シリンダアドレスデータが含まれていない。このため、CPU27は、サーボゲートSSGの位置から得られる情報に基づいて、ヘッド22の半径位置を検出する。CPU27は、スパイラルパターン702の傾きに応じて、例えばサーボゲート701の位置から、例えば10から20シリンダ(トラック)分の相対位置情報を取得できる。CPU27は、例えば内周の固定位置(シードパターン704による基準位置)から、徐々に外周方向に移動(シーク)していく必要がある。
【0041】
以下、図9を参照して、ヘッド22を半径方向の任意の位置に、ヘッドを移動、即ちシークさせる方法を説明する。
【0042】
CPU27は、図9に示すように、サーボゲートSSGに基づいて、例えば番号N−1のスパイラルパターンを検出したヘッド22を、同一のスパイラルパターン(番号N−1)上を移動させるシーク動作902を実行させて、セクタ番号0の書き込み領域にトラッキングする(ステップS4)。CPU27は、後述するセクタアドレスを生成して、ヘッド22のライトヘッド22Wを使用して、セクタ番号0の書き込み領域にファイナルパターン703を書き込む(ステップS5,S6)。
【0043】
ここで、ファイナルパターン703を書き込み時には、ヘッド22のリードヘッド22Rは、その書き込み領域と重なるスパイラルパターン702を読出すことはできない。そこで、CPU27は、当該ファイナルパターン703の書き込み領域を回避させるように、ヘッド22を隣接のスパイラルパターン702(番号0)に乗り移るようなシーク動作901を実行させる。即ち、CPU27は、同一のスパイラルパターン702上のシーク動作902と、奇数番号と偶数番号のスパイラルパターン702の乗り換えを行なうシーク動作901とを繰り返すことにより、ファイナルパターン703の書き込み領域を使用しないシーク動作を行なう。
【0044】
次に、図10のステップS5に示す処理、即ち、書き込み対象であるファイナルパターン703に含まれるきセクタアドレス番号の生成方法を説明する。
【0045】
本実施形態では、ディスク媒体10上に記録されているマルチスパイラルサーボパターンに含まれるスパイラルパターン数は、書き込み対象のファイナルパターン703の数の2倍になるように設定されている。ここで、スパイラルパターンの番号をSPn(n=0,1,2,…)と表記する。また、ファイナルパターン703のセクタアドレス番号をFsctで表記する。
【0046】
ファイナルパターン703のセクタアドレス番号Fsctは、以下の式(1)により算出することができる。
【0047】
Fsct=int(SPn/2)…(1)
ここで、“ int ”は、小数点以下切り捨てを意味する。
【0048】
即ち、前記式(1)に示すように、スパイラルパターン番号SPnを、単純に1/2した値を、ファイナルパターン703のセクタアドレス番号Fsctとして設定できる。しかしながら、前述のシーク動作901,902を実行した場合に、ヘッド22が半径方向に移動するに従って、スパイラルパターン番号とファイナルパターンのセクタ番号とがずれてくる可能性がある。
【0049】
そこで、本実施形態では、CPU27は、図9(B)に示すカウンタ910を使用し、スパイラルパターン番号とファイナルパターンのセクタ番号のずれを修正する。具体的には、CPU27は、以下のような計算処理を実行する。
【0050】
スパイラルパターン番号SPn及びセクタアドレス番号Fsct以外に、カウンタ910のカウント値をNcntとする。また、CPU27が、ヘッド22の位置決め制御時に、位置決めパラメータのインデックスとして使用する領域番号を、SPz(z=0,1,2,…)とする。
【0051】
CPU27は、カウンタ910のカウントアップ条件として、第1及び第2の条件を設定する。即ち、カウンタ910は、第1の条件として、サーボゲートSSGに基づいて、ヘッド22が2つのファイナルパターン703間の中央領域を通過するときのタイミング911でカウントアップする。また、カウンタ910は、第2の条件として、次のスパイラルパターン702に乗り移るときのタイミング912でカウントアップする。
【0052】
CPU27は、カウンタ910のカウント値Ncntで、スパイラルパターン番号SPnの直後に書き込まれるファイナルパターン703のセクタアドレス番号Fsctを、下記変換式(2)から算出する。
【0053】
Fsct=SPz+(Ncnt mod 2)…(2)
ここで、“ mod ”は、モジュロ演算子を意味する。
【0054】
即ち、CPU27は、ヘッド22のトラッキング動作時に、位置決めパラメータのインデックスとして使用する領域番号SPzを参照することで、前記式(2)からファイナルパターン703のセクタアドレス番号Fsctを算出する。
【0055】
また、スパイラルパターン番号SPnは、下記変換式(3)を使用して、カウント値Ncnt及び領域番号SPzを算出できる。
【0056】
SPn=SPz+int((Ncnt +3)/4)…(3)
以上のようにして本実施形態のセルフサーボ書き込み方法では、CPU27は、スパイラルパターン702に基づいて、ヘッド22をファイナルパターン703の書き込み領域に位置決めするときには、位置決めパラメータのインデックスとして領域番号SPzを使用する(前記変換式(3)を参照)。さらに、CPU27は、スパイラルパターン702の乗り換え回数(901)とスパイラルパターン702の番号Spnを使用して、ファイナルパターン703に含まれるセクタアドレス番号Fsctを算出する(前記変換式(2)を参照)。従って、製品として出荷されるディスクドライブ20において、ディスク媒体10上に、ベースパターン501に基づいて、製品として使用されるファイナルパターン703、即ち製品用サーボパターンを書き込むことができる。
【0057】
(変形例)
図11は、本実施形態の変形例に関する図である。
【0058】
本実施形態は、図9(A)に示すように、ヘッド22を内周から外周の半径方向800に、ヘッド22をシークさせながら、ファイナルパターン703を書き込む場合について説明している。これに対して、本変形例は、図11(A)に示すように、ヘッド22を外周から内周の半径方向1000に、ヘッド22を逆方向にシークさせながら、ファイナルパターン703を書き込む場合である。
【0059】
この逆方向シーク動作においても、図11(A)に示すように、CPU27は、同一のスパイラルパターン702上のシーク動作1002と、奇数番号と偶数番号のスパイラルパターン702の乗り換えを行なうシーク動作1001とを繰り返すことにより、ファイナルパターン703の書き込み領域を使用しないシーク動作を行なう。
【0060】
本変形例では、CPU27は、図11(B)に示すように、カウンタ910を使用してスパイラルパターン番号とファイナルパターンのセクタ番号のずれを修正する。この場合、シーク動作1002時には、ヘッド22が逆方向に進むため、ファイナルパターン703間の中央領域を通過するときのタイミング1011でカウントダウンさせる。一方、CPU27は、次のスパイラルパターン702に乗り移るときのタイミング1012では、ヘッド22が同じ方向に進むためカウントアップさせる。
【0061】
今仮に、カウンタ911のカウント値をMとした場合、カウント値はMとM−1が交互に繰り返される。本変形例においても、本実施形態の順方向シーク動作でのカウンタと同じカウンタ911を使用しているため、変換式は前述の式(2),(3)と同じ変換式となる。
【0062】
従って、本変形においても、本実施形態と同様に、スパイラルパターン702の乗り換え回数(1001)とスパイラルパターン702の番号Spnを使用して、ファイナルパターン703に含まれるセクタアドレス番号Fsctを算出できる。これにより、製品として出荷されるディスクドライブ20において、ディスク媒体10上に、ベースパターン501に基づいて、製品として使用されるファイナルパターン703、即ち製品用サーボパターンを書き込むことができる。
【0063】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に関するサーボトラックライタの要部を示す図。
【図2】本実施形態に関する本実施形態に関するディスク媒体上に記録されるファイナルパターンの状態を示す図。
【図3】本実施形態に関するファイナルパターンの構成を示す図。
【図4】本実施形態に関するディスクドライブの要部を示すブロック図。
【図5】本実施形態に関するマルチスパイラルサーボパターンの一例を示す図。
【図6】本実施形態に関するスパイラルパターンの構成を示す図。
【図7】本実施形態に関するスパイラルパターンとファイナルパターンとの位置関係を説明するための図。
【図8】本実施形態に関するスパイラルパターンの探索動作を説明するための図。
【図9】本実施形態に関するセクタアドレスの生成方法を説明するための図。
【図10】本実施形態に関するセルフサーボ書き込み動作の手順を説明するためのフローチャート。
【図11】本実施形態の変形例を説明するための図。
【符号の説明】
【0065】
10…ディスク媒体、11…スピンドルモータ、12…サーボヘッド、
13…ヘッド駆動機構、14…コントローラ、15…書き込み制御回路、
16…クロックヘッド、17…マスタクロック回路、20…ディスクドライブ、
21…アクチュエータ(ヘッド移動機構)、22…ヘッド、22R…リードヘッド、
22W…ライトヘッド、23…ヘッドアンプ回路、24…回路基板、
25…リード/ライトチャネル、26…サーボコントローラ、
27…マイクロプロセッサ(CPU)、28…モータドライバ、
29…ディスクコントローラ(HDC)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク媒体、当該ディスク媒体に対してデータの読出しと書き込みを行なうためのヘッド、及び前記ヘッドを移動させるためのヘッド移動手段を有するディスク記憶装置において、前記ディスク媒体上に記録されたマルチスパイラルサーボパターンを使用して、放射状サーボパターンからなるファイナルパターンを前記ディスク媒体上に記録するためのサーボ書込み方法であって、
前記ディスク媒体上の内周領域または外周領域の基準位置から前記ヘッドを移動させて、前記マルチスパイラルサーボパターンに含まれる指定のスパイラルサーボパターンを探索する処理と、
前記指定のスパイラルサーボパターンを使用して、前記ヘッドを前記ファイナルパターンを書き込むための目標位置に位置決めする位置決め処理と、
前記指定のスパイラルサーボパターンに基づいて、前記ファイナルパターンに含まれるセクタアドレスデータを生成する生成処理と、
前記ヘッドにより、前記セクタアドレスデータを含む前記ファイナルパターンを前記目標位置に書き込む書き込み処理と
を有する手順を実行することを特徴とするサーボ書込み方法。
【請求項2】
前記ディスク媒体上に予め記録された前記マルチスパイラルサーボパターンは、所定の本数の各スパイラルサーボパターンが並行かつ等間隔に配置された構成であり、
前記生成処理は、前記各スパイラルサーボパターンの本数に基づいて設定された番号を使用して、前記セクタアドレスデータを生成することを特徴とする請求項1に記載のサーボ書込み方法。
【請求項3】
前記位置決め処理は、
前記ヘッドを目標位置に位置決めするときに、同一のスパイラルサーボパターン上を移動させる第1のシーク動作と、隣接するスパイラルサーボパターン上に移動させる第2のシーク動作を実行することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載のサーボ書込み方法。
【請求項4】
前記生成処理は、前記各スパイラルサーボパターンの本数に基づいて設定された番号、及び前記第2のシーク動作の回数に基づいて、前記セクタアドレスデータを生成することを特徴とする請求項3に記載のサーボ書込み方法。
【請求項5】
前記ディスク媒体上に予め記録された前記マルチスパイラルサーボパターンは、1本のファイナルパターンに対して2本のスパイラルサーボパターンの比率で、前記各スパイラルサーボパターン並行かつ等間隔に配置された構成であり、
前記生成処理は、前記各スパイラルサーボパターンの本数に基づいて設定された番号、及び前記ヘッドが前記ファイナルパターンを書き込むための書き込み領域を通過するシーク回数に基づいて、順次割り当てるセクタ番号を前記セクタアドレスデータとして生成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のサーボ書込み方法。
【請求項6】
前記ディスク媒体上の内周領域または外周領域には、前記ヘッドを前記基準位置に設定するためのシードパターンが記録されており、
前記探索処理は、前記ヘッドを前記シードパターンに基づいて前記基準位置に位置決めし、前記基準位置から前記ヘッドを移動させることで、前記指定のスパイラルサーボパターンを探索することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のサーボ書込み方法。
【請求項7】
データの読出しと書き込みを行なうためのヘッドと、
前記ヘッドの位置決め制御を実行するためのベースパターンとして、複数のスパイラルサーボパターンから構成されるマルチスパイラルサーボパターンが記録されているディスク媒体と、
前記ヘッドを、前記ディスク媒体上の半径方向に移動させるためのヘッド移動手段と、
前記マルチスパイラルサーボパターンを使用して、放射状サーボパターンからなるファイナルパターンを前記ディスク媒体上に記録するためのサーボ書込み手段とを有し、
前記サーボ書込み手段は、
前記ディスク媒体上の内周領域または外周領域の基準位置から前記ヘッドを移動させて、前記マルチスパイラルサーボパターンに含まれる指定のスパイラルサーボパターンを探索する処理と、
前記指定のスパイラルサーボパターンを使用して、前記ヘッドを前記ファイナルパターンを書き込むための目標位置に位置決めする位置決め処理と、
前記指定のスパイラルサーボパターンに基づいて、前記ファイナルパターンに含まれるセクタアドレスデータを生成する生成処理と、
前記ヘッドにより、前記セクタアドレスデータを含む前記ファイナルパターンを前記目標位置に書き込む書き込み処理と
を有する手順を実行するように構成されていることを特徴とするディスク記憶装置。
【請求項8】
前記ディスク媒体上に予め記録された前記マルチスパイラルサーボパターンは、所定の本数の前記各スパイラルサーボパターンが並行かつ等間隔に配置された構成であり、
前記サーボ書込み手段は、
前記各スパイラルサーボパターンの本数に基づいて設定された番号を使用して、前記セクタアドレスデータを生成する生成処理を実行することを特徴とする請求項7に記載のディスク記憶装置。
【請求項9】
前記サーボ書込み手段は、
前記ヘッドを目標位置に位置決めするときに、同一のスパイラルサーボパターン上を移動させる第1のシーク動作と、隣接するスパイラルサーボパターン上に移動させる第2のシーク動作を実行する位置決め処理を実行することを特徴とする請求項7または請求項8のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項10】
前記サーボ書込み手段は、
前記各スパイラルサーボパターンの本数に基づいて設定された番号、及び前記第2のシーク動作の回数に基づいて、前記セクタアドレスデータを生成する生成処理を実行することを特徴とする請求項9に記載のディスク記憶装置。
【請求項11】
前記ディスク媒体上に予め記録された前記マルチスパイラルサーボパターンは、1本のファイナルパターンに対して2本のスパイラルサーボパターンの比率で、前記各スパイラルサーボパターン並行かつ等間隔に配置された構成であり、
前記サーボ書込み手段は、
前記各スパイラルサーボパターンの本数に基づいて設定された番号、及び前記ヘッドが前記ファイナルパターンを書き込むための書き込み領域を通過するシーク回数に基づいて、順次割り当てるセクタ番号を前記セクタアドレスデータとして生成する生成処理を実行することを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。
【請求項12】
前記ディスク媒体上の内周領域または外周領域には、前記ヘッドを前記基準位置に設定するためのシードパターンが記録されており、
前記サーボ書込み手段は、
前記ヘッドを前記シードパターンに基づいて前記基準位置に位置決めし、前記基準位置から前記ヘッドを移動させることで、前記指定のスパイラルサーボパターンを探索する探索処理を実行することを特徴とする請求項7から請求項11のいずれか1項に記載のディスク記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−15901(P2009−15901A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173275(P2007−173275)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】