説明

サーマルプリンタ

【課題】 記録される画像の濃度ムラを防止する。
【解決手段】 各搬送ローラ対14、16は、モータ24、26により駆動され、記録紙12を把持して搬送する。システムコントローラ22は、搬送方向下流側の搬送ローラ対の搬送トルクが、上流側の搬送ローラ対の搬送トルクよりも大きくなるように、各モータ24、26への印可電圧を調節し、記録紙12に張力を付与する。画像の記録を行う際、サーマルヘッド18は、張力の付与された記録紙12を押し下げ、搬送ローラ対14、16のそれぞれが記録紙12を把持する2つの把持位置を結ぶラインを横切る記録位置に移動される。サーマルヘッド18が記録位置に移動されると、記録紙12はその張力によってサーマルヘッド18を押し戻そうとする。これにより、サーマルヘッド18と記録紙12とが圧接され画像の記録を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発熱素子が主走査方向に沿って並べて配列されたサーマルヘッドを備え、搬送手段により前記主走査方向と直交する副走査方向に搬送される記録紙に対し、サーマルヘッドを圧接させて画像の熱記録を行うサーマルプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の発熱素子が主走査方向に並べられたサーマルヘッドを用い、記録紙を副走査方向に搬送しながら、画像をライン記録するサーマルプリンタが知られている。サーマルプリンタは、サーマルヘッドを記録紙に圧接させた状態で各発熱素子を発熱させて画像の熱記録を行う。このため、サーマルプリンタでは、サーマルヘッドと対向する位置にプラテンローラを設け、このプラテンローラにより記録紙を背面側から支持している。
【0003】
また、記録紙をロール状に巻いた記録紙ロールを、印字ヘッドへ向けて付勢することで、プラテンローラの代用とした装置もある(下記特許文献1参照)。これをサーマルプリンタに応用し、サーマルヘッドを直接記録紙ロールに押しつけるようにすれば、プラテンローラを設けずに済むので、小型化、低コスト化が可能となる。
【特許文献1】実開昭62−94046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の装置は、サーマルヘッドをプラテンローラや記録紙ロールに押しつけるようにして記録を行うので、これらの周面に凹凸があると、サーマルヘッドが均一な圧力で記録紙に押し当てられず、濃度ムラなどの原因となってしまい問題であった。
【0005】
本発明は、サーマルヘッドを均一な圧力で記録紙に押し当て、濃度ムラを防止できるサーマルプリンタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のサーマルプリンタは、サーマルヘッドを挟んで記録紙の搬送方向の上流側及び下流側の2点で記録紙を支持することにより、記録紙の記録面とサーマルヘッドとが接触したときに、サーマルヘッドの近傍における記録紙の搬送パスの形状が前記記録面とサーマルヘッドとの接触位置を頂点とした略V字形状になるように前記搬送パスを屈曲させる記録紙支持手段と、記録紙支持手段によって前記搬送パスを屈曲させた状態で、前記上流側及び下流側から記録紙に対してテンションを与えて、前記記録面をサーマルヘッドへ押し当てるテンション付与手段とを備えたことを特徴としている。
【0007】
前記テンション付与手段は、サーマルヘッドの上流側と下流側とにそれぞれ配置され、記録紙をニップして搬送する第1及び第2の搬送ローラであり、これら各搬送ローラの搬送トルク差によって前記テンションを発生させることが好ましい。
【0008】
また、前記第1及び第2の搬送ローラのニップ位置と前記接触位置の3点がそれぞれ三角形の頂点となるように、前記各搬送ローラ及び前記サーマルヘッドを配置することにより、前記記録紙支持手段を、前記各搬送ローラで兼用させることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、記録紙のテンションにより、サーマルヘッドと記録紙とを圧接させた。このため、プラテンローラや記録紙ロールにサーマルヘッドを押しつけて、記録紙とサーマルヘッドとを圧接させる場合と比較すると、プラテンローラや記録紙ロールの周面の凹凸によらず、サーマルヘッドを均一な圧力で記録紙に押し当てることができる。これにより、画像の濃度ムラを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に、本発明を適用したカラー感熱プリンタの概略的な構成図を示す。カラー感熱プリンタ(以下、プリンタと称する。)10には、カラー感熱記録紙(以下、記録紙と称する。)12の搬送路上に、搬送ローラ14、16、サーマルヘッド18、光定着器20が配置されている。これらは、システムコントローラ22によって制御される。
【0011】
記録紙12は、周知のように、支持体上に、上層から順に、Y(イエロー),M(マゼンタ),C(シアン)の各色に発色する3つの感熱発色層を層設したものである。記録紙12は、最上層となるイエロー感熱発色層の熱感度が最も高く、最下層のシアン感熱発色層の熱感度が最も低い。
【0012】
また、深層の感熱発色層を加熱する際に上層の感熱発色層の未発色部分が発色しないように、イエロー及びマゼンタの各感熱発色層には、それぞれ特有な波長域の光による光定着性が付与されており、各感熱発色層は、画像が熱記録された後、それぞれの波長の光が照射されることにより光定着される。イエロー感熱発色層は、発光ピークの波長が約420nmの青紫色の光であるイエロー定着光が照射されると発色能力を消失し、マゼンタ感熱発色層は、発光ピークの波長が約365nmの近紫外線であるマゼンタ定着光が照射されると発色能力を消失する。
【0013】
記録紙12は長尺であり、ロール状に巻かれた記録紙ロール13としてプリンタ10にセットされ、図示しない給紙ローラにより搬送路上に引き出される。搬送路上に引き出された記録紙12は、搬送ローラ14、16によって、記録紙ロール13から搬送路へ送り出す送り方向と、記録紙ロール13へ巻き戻す戻し方向とに往復搬送される。プリンタ10は、この往復搬送の間に、イエロー,マゼンタ,シアンの画像の熱記録と、熱記録済みの記録紙12の光定着とを行う。
【0014】
搬送ローラ14は、キャプスタンローラ14aとニップローラ14bとからなり、駆動モータ24によって駆動される。搬送ローラ14は、キャプスタンローラ14aとニップローラ14bとにより記録紙12をニップし、駆動モータ24が正転すると記録紙12を送り方向に搬送し、駆動モータ24が逆転すると記録紙12を戻し方向に搬送する。同様に、搬送ローラ16は、記録紙12をニップするキャプスタンローラ16aとニップローラ16bとからなり、駆動モータ26が正転すると記録紙12を送り方向に搬送し、駆動モータ26が逆転すると記録紙12を戻し方向に搬送する。
【0015】
この駆動モータ24、26としては、印加電圧に応じて回転方向及び回転トルクが決まるDCモータが使用される。各駆動モータ24、26は、システムコントローラ22によって制御されるモータドライバ34、36から電圧を印可されて回転する。システムコントローラ22は、記録紙12を送り方向に搬送する際は駆動モータ24、26をともに正転させ、戻し方向に搬送する際は駆動モータ24、26をともに逆転させる。
【0016】
また、システムコントローラ22は、記録紙12を送り方向に搬送する際に、駆動モータ26への供給電圧を駆動モータ24への供給電圧よりも高くする。こうすることで、搬送方向下流側の搬送ローラ16による記録紙12の搬送トルクが、上流側の搬送ローラ14による記録紙12の搬送トルクよりも大きくなり、このトルク差によって搬送ローラ14、16の間の記録紙12は搬送方向(副走査方向)へと牽引されテンションが付与される。同様に、システムコントローラ22は、記録紙12を戻し方向に搬送する際に、駆動モータ24への供給電圧を駆動モータ26への供給電圧よりも高くして、搬送ローラ14、16の間の記録紙12にテンションを付与する。
【0017】
搬送ローラ14、16の間にはサーマルヘッド18が配置されている。サーマルヘッド18には、多数の発熱素子を記録紙12の幅方向(主走査方向)に沿ってライン状に配列した発熱素子アレイ18aが設けられている。サーマルヘッド18は、システムコントローラ22によって駆動制御され、印画する画像に応じて各発熱素子を発熱させて、画像を熱記録する。
【0018】
サーマルヘッド18は、カムやギア、並びにモータなどから構成される移動機構38を介してプリンタ本体に取り付けられ、図2(A)に示す退避位置と、同図(B)に示す記録紙値との間で移動自在に保持される。退避位置は、サーマルヘッド18を記録紙12から離し、記録紙12の記録面上方に配置する位置である。画像の記録を行わないとき、サーマルヘッド18は、この退避位置にセットされる。
【0019】
一方、記録位置は、搬送ローラ14、16のそれぞれが記録紙12をニップする2つのニップ位置を結ぶラインを横切るようにサーマルヘッド18を配置する位置である。画像の記録を行う際、サーマルヘッド18は、記録紙12を押し下げるようにして、この記録位置に移動される。このとき、2つのニップ位置と発熱素子アレイ18aとの3点がそれぞれ三角形の頂点となるように配置され、記録紙12の搬送パスの形状が発熱素子アレイ18aを頂点とした略V字形状に屈曲される。
【0020】
前述のように、搬送ローラ14、16間の記録紙12にはテンションが付与されているので、サーマルヘッド18が記録位置に移動されると、記録紙12はそのテンションによってサーマルヘッド18を押し戻そうとする。これにより、サーマルヘッド18と記録紙12とが圧接され画像の記録を行うことができる。このように、プリンタ10では、プラテンローラや記録紙ロールによって記録紙12を背面側から支持することなく、記録紙12のテンションによってサーマルヘッド18と記録紙12とを圧接させている。
【0021】
図1において、サーマルヘッド18の送り方向下流側には、光定着器20が配置されている。光定着器20は、イエロー定着光を放射するイエロー定着ランプ20aと、マゼンタ定着光を放射するマゼンタ定着ランプ20bとからなる。イエロー定着ランプ20aは、発光波長のピークが約420nm付近にある蛍光ランプであり、記録済みのイエロー感熱発色層を光定着させる。マゼンタ定着ランプ20bは、発光波長のピークが約365nm付近にある蛍光ランプであり、記録済みのマゼンダ感熱発色層を光定着させる。
【0022】
光定着器20の送り方向下流側には、カッタ40が配置されている。熱記録及び光定着が終了した記録エリアは、カッタ40に送られて、1枚のシートにカットされて、プリンタ10外へ排紙される。
【0023】
以下、上記構成による作用について説明する。プリンタ10は、プリント指示に応じ、記録紙ロール13から記録紙12を引き出して搬送路に送り出す。搬送路に送り出された記録紙12は、搬送ローラ14、16によって、送り出し方向に搬送される。
【0024】
このとき、システムコントローラ22は、搬送ローラ16による記録紙12の搬送トルクを、搬送ローラ14による記録紙12の搬送トルクよりも大きくして、テンションを付与した状態で記録紙12を搬送する。そして、この搬送中の記録紙12にサーマルヘッド18が押し当てられて、イエロー画像が記録される。イエロー画像が記録された記録済み部分は、光定着器20に送られてイエロー定着ランプ20aによってイエローの光定着がなされる。イエローの光定着が終了すると、搬送方向が反転され、記録紙12の記録エリアがサーマルヘッド18を通過するまで戻し方向へ搬送される。
【0025】
記録紙12が所定位置まで戻し方向に搬送された後、再び搬送方向が逆転し、マゼンタ画像の熱記録が開始される。イエロー画像の記録の際と同様に、システムコントローラ22は、搬送ローラ16による記録紙12の搬送トルクを、搬送ローラ14による記録紙12の搬送トルクよりも大きくして、テンションを付与した状態で記録紙12を搬送する。そして、この搬送中の記録紙12にサーマルヘッド18が押し当てられて、マゼンダ画像が記録される。マゼンタ画像の熱記録が終了すると、記録済み部分が光定着器20に送られて、マゼンタ定着ランプ20bによってマゼンタの光定着が行われる。
【0026】
このマゼンタの光定着後、再度記録紙12が所定位置まで戻されて、シアン画像が熱記録される。このシアン画像の熱記録の際も、テンションの付与された記録紙12にサーマルヘッド18が押し当てられて画像の熱記録が行われる。シアン画像の熱記録後、記録済み部分がカッタ40へ送られてプリンタ外へ排紙される。記録紙12の未記録部分は、記録紙ロール13に巻き取られる。
【0027】
このように、プリンタ10では、テンションを付与した状態で記録紙を搬送し、ここにサーマルヘッドを押し当て、記録紙のテンションによってサーマルヘッドと記録紙とを圧接させている。このため、プラテンローラや記録紙ロールにより記録紙を背面側から支持して、サーマルヘッドを、プラテンローラや記録紙ロールに押しつけることによって、記録紙とサーマルヘッドとを圧接させる場合と比較すると、プラテンローラや記録紙ロールの周面の凹凸によらず、サーマルヘッドを均一な圧力で記録紙に押し当てることができる。これにより、画像の濃度ムラを防止することができる。
【0028】
なお、本発明は、記録紙のテンションによって、サーマルヘッドと記録紙とを圧接させればよいので、上述した構成に限定されるものではない。例えば、図3(A)に示すように、サーマルヘッド18の上流側及び下流側にそれぞれ記録紙12を背面側から支持する支持ローラ44、46を設け、これら支持ローラ44、46間の記録紙12にサーマルヘッド18を押し当ててもよい。また、同図(B)に示すように、支持ローラに代えて支持台54、56を設け、これら支持台54、56間の記録紙12にサーマルヘッド18を押し当ててもよい。支持台54、56は、それぞれそ上面が記録紙12を支持する支持面であり、記録紙12と擦れ合ったときに記録紙12を痛めないように滑らかな曲面となっている。なお、図3においては、上述した実施形態と同様の部材については同様の符号を付して説明を省略する。
【0029】
また、上記実施形態では、記録紙の搬送方向が送り方向であるか、戻し方向であるかにかかわらず、搬送中の記録紙にテンションを付与する例で説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、サーマルヘッドを記録紙に押し当てる間、すなわち、画像の記録を行う間、記録紙にテンションを付与しサーマルヘッドと圧接させればよいので、例えば、上記実施形態のように、記録紙を送り方向に搬送する間に画像の記録を行う場合には、この搬送を行う間にのみテンションを付与してもよい。
【0030】
なお、上記実施形態では、加熱により自己発色するカラー感熱記録紙を用いたカラー感熱プリンタを例に説明をしたが、サーマルヘッドによってインクシートを加熱し、インクを記録紙に熱転写して画像を記録する熱転写型のサーマルプリンタに本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】カラー感熱プリンタの概略を示す構成図である。
【図2】サーマルヘッドが記録紙に押し当てられる様子を示す説明図である。
【図3】記録紙の張力によりサーマルヘッドと記録紙とを圧接させる構成の例を表す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
10 カラー感熱プリンタ
12 カラー感熱記録紙
14、16 搬送ローラ
14a、16a キャプスタンローラ
14b、16b ニップローラ
18 サーマルヘッド
18a 発熱素子アレイ
20 光定着器
22 システムコントローラ
24、26 駆動モータ
34、36 モータドライバ
38 移動機構
44、46 支持ローラ
54、56 支持台


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発熱素子が主走査方向に沿って並べて配列されたサーマルヘッドを備え、前記主走査方向と直交する副走査方向に搬送される記録紙に対し、前記サーマルヘッドを圧接させて画像の熱記録を行うサーマルプリンタにおいて、
前記サーマルヘッドを挟んで前記記録紙の搬送方向の上流側及び下流側の2点で前記記録紙を支持することにより、前記記録紙の記録面と前記サーマルヘッドとが接触したときに、前記サーマルヘッドの近傍における前記記録紙の搬送パスの形状が前記記録面と前記サーマルヘッドとの接触位置を頂点とした略V字形状になるように前記搬送パスを屈曲させる記録紙支持手段と、
前記記録紙支持手段によって前記搬送パスを屈曲させた状態で、前記上流側及び下流側から前記記録紙に対してテンションを与えて、前記記録面を前記サーマルヘッドへ押し当てるテンション付与手段とを備えたことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記テンション付与手段は、前記サーマルヘッドの上流側と下流側とにそれぞれ配置され、前記記録紙をニップして搬送する第1及び第2の搬送ローラであり、これら各搬送ローラの搬送トルク差によって前記テンションを発生させることを特徴とする請求項1記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記第1及び第2の搬送ローラのニップ位置と前記接触位置の3点がそれぞれ三角形の頂点となるように、前記各搬送ローラ及び前記サーマルヘッドを配置することにより、前記記録紙支持手段を、前記各搬送ローラで兼用させたことを特徴とする請求項2記載のサーマルプリンタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−150673(P2006−150673A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−342345(P2004−342345)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】