説明

サーマルプリンタ

【課題】用紙駆動系などを変更することなく、異なる印字密度のサーマルヘッドを搭載できるものとする。
【解決手段】ストローブ信号に基づいて発熱素子が発熱駆動されるサーマルヘッド112が取付けられるヘッドブラケット115と、駆動パルス信号に基づいて駆動される印字用紙搬送用のステッピングモータ131と、ストローブ信号を発生するヘッド制御装置133と、駆動パルス信号を発生するモータ制御装置134とを備えるサーマルプリンタ101において、ヘッドブラケット115には、300dpi又は203dpiのサーマルヘッド112が設置でき、モータ制御装置134はステッピングモータ131を印字用紙PTの移送速度の変動が所定の値以下である平滑駆動状態搬送でき、ヘッド制御装置133はストローブ信号をサーマルヘッドが所定の印字密度での印字を行える周期であって、駆動パルス信号の周期と関連付けられない非同期状態で出力できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーマルプリンタに係り、特に異なる印字密度を備えた複数種のサーマルヘッドから特定の印字密度のサーマルヘッドを選択して組み付けるに際して、用紙送り機構部を変更することなく共通の筐体を使用することができるサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタとして商品に貼付するラベルを印刷するハンディタイプのものがある。このようなサーマルプリンタは、バーコード等の商品コードシンボルを含む商品情報等を表示したラベルを印刷する。そして、このサーマルプリンタでは、使用目的に応じた印字密度、例えば300dpi(dot per inch)や、203dpi(同:8dots/mm)のサーマルヘッドを搭載して印字が行われる。このようなサーマルプリンタではサーマルヘッドは感熱紙等の印字幅いっぱいの幅である主走査方向に前記印字密度で発熱素子を並べたものが使用される。
【0003】
サーマルヘッドを使用したサーマルプリンタの印字状態について説明する。図8はサーマルヘッドによる印字状態を示す模式図である。印字用紙500に文字501等が印字されるとき、その1ライン502に着目する。
【0004】
300dpiのサーマルヘッドで印字される場合、サーマルヘッドの1つの発熱素子は、1インチ/300=0.0847mmの幅寸法を備えるため、1画素503の主走査方向の寸法は、0.0847mmとなる。そしてこの例では、印字される画素の縦横比を1:1とするため、画素503の副走査方も主走査方向と同じ寸法0.0847mmとしている。このため、サーマルヘッドで1ライン分の印字を行う間の時間に用紙が0.0847mmだけ移動される。
【0005】
一方、203dpiのサーマルヘッドを使用する場合には、画素504の寸法は、1インチ/203=0.125mmとなるから、サーマルヘッドで1ライン分の印字を行う間に用紙を副走査方向に0.125mmだけ移動させる必要がある。
【0006】
このように、サーマルプリンタでは、印字用紙の副走査方向の移動量は使用するサーマルヘッドの印字密度によって調整されることとなる。
【0007】
サーマルプリンタにおいて、サーマルヘッドは、所定の周波数のストローブ信号に同期して1ラインずつ印字が実行される。一方、用紙の搬送は、駆動パルス信号で間欠駆動されるステッピングモータを駆動源とする駆動ローラ、例えばプラテンで行われている。そして、ステッピングモータは、ストローブ信号のタイミングと同期した駆動パルス信号で間欠駆動され、サーマルヘッドの1ライン分の印字に対応して一定角度回転する。このため、ステッピングモータの制御装置は、前記ストローブ信号に同期してステッピングモータ駆動用のパルス信号を発生するようにしている。
【0008】
図9は、サーマルヘッドのストローブ信号及びプラテンを駆動するステッピングモータの駆動パルス信号のタイミングを示す模式図であり、(a)は203dpiの場合、(b)は300dpiの場合を示すものである。この場合、いずれの印字密度においても、ストローブ信号とパルス信号とは同期して発生されている。
【0009】
そして、プラテンは前記パルス信号で駆動されるステッピングモータで駆動されるので、プラテンでの間欠駆動量を主走査方向の印字密度と同じ値に調整するため、ステッピングモータとプラテンの間には、歯車列などの変速機が配置される。
【0010】
例えば、プラテンの半径をr(mm)、ステッピングモータのストローブ信号1パルスに対応する回転角度をθ(rad)、サーマルヘッドの印字密度をN(dpi)としたとき、前記変速装置の変速比Rは、2πr・R=24.5/N、の関係を満たす必要がある。
【0011】
従って、所定の印字密度のサーマルヘッドを使用するラインプリンタにおいては、前記条件を満たすように選択されたプラテン、変速機、ステッピングモータが搭載され、これらは印刷対象の大きさ、必要とされる印字速度などに応じて選択される。
【0012】
このため、異なる印字密度のサーマルヘッドを使用する異なるサーマルプリンタでは、取り付けられたサーマルヘッドの印字密度に対応した異なる間欠駆動量が得られる別異の駆動系がそれぞれ使用されることになる。
【0013】
特許文献1には、変速装置を使用したサーマルプリンタとして、記録用紙を駆動するキャプスタンとモータの間にギア群を配したサーマルプリンタが記載されている。この例では、印字用紙の速度を検出して、基準速度からのずれに基づいてサーマルヘッドの発熱素子の発熱量を制御する。
【0014】
【特許文献1】特開2005−161788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、このようなサーマルプリンタでは、製造される同一シリーズのサーマルプリンタとして同一の筐体に異なる印字密度のサーマルヘッドを搭載した、異なる仕様のものを提供する場合がある。例えば同一シリーズのサーマルプリンタに、203dpiのサーマルヘッドを備えたものと、300dpiのサーマルヘッドを備えたものとが提供されている。このような場合、サーマルプリンタは、同一の筐体に異なる印字密度のサーマルヘッドを搭載して複数種類のサーマルプリンタとして製造される。
【0016】
そして、このように異なる印字密度のサーマルヘッドを搭載するとき、サーマルヘッドの駆動を制御するストローブ信号として一方の印字密度に対応した一種類の周波数のストローブ信号を使用すると、他の印字密度のサーマルヘッドを搭載したサーマルプリンタでは、副走査方向の間欠移送量、即ち副走査方向の印字密度が主走査方向の印字密度と適合しないことになる。そのため、変速機の変速比を変更して、使用するサーマルヘッドの印字密度に適合するよう用紙の間欠移送量を変更することが一般的になされる。
【0017】
しかしながら、このようなサーマルプリンタを製造するに際しては、コスト削減のため、同一仕様のプラテン、ステッピングモータ、及び変速装置を備えた駆動系を使用した共通の筐体を使用することが望まれる。
【0018】
そこで、本発明は、用紙の駆動系などのハードウエア構成を変更することなく、異なる印字密度のサーマルヘッドを搭載できるサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明において、前記の課題を解決するための手段は、主走査方向に発熱素子が所定の印字密度で配列され、ストローブ信号に基づいて前記発熱素子が発熱駆動されるサーマルヘッドが取付けられるサーマルヘッド取付部と、駆動パルス信号に基づいて駆動され印字用紙を副走査方向に移送するステッピングモータと、前記ストローブ信号を発生するヘッド制御部と、前記駆動パルス信号を発生するモータ制御部と、を備えるサーマルプリンタにおいて、前記サーマルヘッド取付部には、異なる印字密度の複数種のサーマルヘッドから選択した1つのサーマルヘッドが選択されて設置可能に構成され、前記モータ制御部は、前記ステッピングモータを前記印字用紙の移送速度の変動が所定の値以下である平滑駆動状態で駆動可能に構成され、前記ヘッド制御部は、前記ストローブ信号を移送される用紙の移送速度に対して前記サーマルヘッドが所定の印字密度での印字を行える周期であって、前記駆動パルス信号の周期と関連付けられない非同期状態で出力可能に構成されていることを特徴とするサーマルプリンタである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ステッピングモータはモータ制御部によって印字用紙の移送速度の変動が所定の値以下である平滑駆動状態であり略等速度で駆動される一方、取り付けられたサーマルヘッドは、ヘッド制御部によって発生されるストローブ信号であり、取り付けられたサーマルヘッドに対応する印字密度での印字を行う周期であって、駆動パルス信号と非同期状態のストローブ信号で駆動されるから、所定印字密度のサーマルヘッドを取り付ける場合には、印字用紙の搬送速度に対して副走査方向の印字密度が所定の値となるよう、サーマルヘッドのストローブ信号を設定すればよく、同一の搬送系を備える筐体に異なる印刷密度のサーマルヘッドを選択して設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。本実施の形態例では、サーマルプリンタは、感熱紙が巻回されて形成された用紙ロールを内部に収納し、サーマルヘッドによる印刷を行う感熱式の携帯プリンタである。
【0022】
サーマルプリンタ101の概略構造について説明する。図1は実施形態例に係るサーマルプリンタの外観を示す斜視図、図2はカバーが開いた状態のサーマルプリンタの外観を示す斜視図である。
【0023】
サーマルプリンタ101は、直方体形状の外観形状を有しており、サーマルプリンタ101の印字機能、用紙送り機能をなす各機構部は、ハウジング102内に収納されている。ハウジング102は、感熱紙からなる印字用紙PTを巻き取った用紙ロールPRを収納することができる内部構造を有しており、用紙ロールPRを内部に導入できるように上面に開口部106が形成されている。開口部106にはカバー107が回動自在に配置され、開口部106は前記カバー107を開閉することにより開状態、又は閉状態にされる。
【0024】
前記カバー107は、開口部106の一辺をなすハウジング102の奥側辺108に取り付けられており、カバー107を閉じた状態で、カバー107の先端である外側辺111と、開口部106の一辺である手前側辺109との間にサーマルプリンタ101の幅方向に印字された印字用紙PTを取り出すための細長い隙間部が形成される。この隙間部は、用紙排出口110として機能する。
【0025】
また、ハウジング102の一側面には、接続コネクタ部103及びバッテリ収納部104が配置されている。
【0026】
なお、用紙排出口111から排出された印字用紙PTをカットするため、用紙排出口111を構成するハウジング102の手前側辺109やカバー107の外側辺110を鋭利な形状に形成することができる。
【0027】
ハウジング102の内部には、用紙ロールPRを着脱自在に収納可能な用紙収納部105が形成されている。用紙ロールPRは、ロール軸をサーマルプリンタ101の幅方向に向けた状態で用紙収納部105に収納され、プラテン117によって引き出されて用紙排出口111(図1参照)に向けて搬送される。このプラテン117に対向してサーマルヘッド112が配置されている。
【0028】
サーマルヘッド112は、下方に配置されたヘッドブラケット115に着脱できるように配置されている。ヘッドブラケット115は、ハウジング102に固定され、サーマルヘッド112をサーマルプリンタ101の奥側上方に付勢する。また、サーマルヘッド112のサーマルプリンタ101の奥側には、ヘッドカバー116が隣接配置される。ヘッドカバー116は、ハウジング102に必要に応じて装着され、サーマルヘッド112を付勢してサーマルヘッド112の振動を防止する。
【0029】
サーマルヘッド112は、所定の複数の密度で発熱素子列114が一列に配置されて構成されている。
【0030】
この例では、前述した300dpiのものと、203dpiのものから選択して装着することができる。また、サーマルヘッド112は、ヘッド制御部であるヘッド制御装置133(図3参照)の制御に基づいて発熱素子列114が発熱することで、印字用紙PTを加熱し印字を行う。サーマルヘッド112はヘッドブラケット115に着脱自在に配置され、この例では、203dpiのものと、300dpiのものとを選択して配置することができる。
【0031】
また、ハウジング102の内部には、駆動ギア119が配置されている。駆動ギア119は、モータ制御部であるモータ制御装置134に制御されて駆動するステッピングモータ131(図3参照)を駆動源として回動する。
【0032】
カバー107において、プラテン117の近傍には、用紙抑えローラ118が配置されている。プラテン117及び用紙抑えローラ118はいずれも、サーマルプリンタ101の幅方向に回転軸を向けて回動自在となっている。
【0033】
プラテン117は、カバー107が閉じられた状態で前記サーマルヘッド112の発熱素子列114と接する位置に位置決めされてカバー107に配置されている。サーマルプリンタ101の正面側からみてプラテン117の左側には、プラテン117と一体に回動する従動ギア119aが接続されている。
【0034】
従動ギア119aは、カバー107が閉じられた状態になると前記駆動ギア119と噛み合い、駆動ギア119に駆動される。用紙抑えローラ118は、カバー107が閉じられた状態でヘッドカバー116と接する位置に位置決めされるようにカバー107に接続されている。カバー107が閉じられると、カバー107に取り付けられている従動ギア119aは、前記駆動ギア119と噛合し、従動ギア119aに連結されたプラテン117を回転駆動する。本例において、駆動ギア119、従動ギア119aとは変速機132(図3参照)を構成する。
【0035】
本例では、用紙ロールPRは、用紙収納部105内に配置され、レバー122で取り付け取り外し可能に配置され、その間隔を用紙ロールPRの間隔にあわせて変更できる2枚のガイドフェンス121の間に配置されている。
【0036】
次にサーマルプリンタ101の制御系について説明する。図3は実施例に係るプリンタの制御系を示すブロック図である。
【0037】
本例では、サーマルプリンタ101には、サーマルヘッド112にストローブ信号、印字信号を含む印字制御信号を出力するヘッド制御装置133と、ステッピングモータ131に駆動パルス信号を出力するモータ制御装置134と、サーマルプリンタ101全体を制御する印字制御装置135とを備えている。また、サーマルプリンタ101には、前記ヘッドブラケット115に取り付けられたサーマルヘッド112が300dpiのものであるか、203dpiのものであるかを検出する印字密度検出装置136と、印字用紙PTの位置を検出する用紙位置検出装置138と、前記用紙位置検出装置138の検出結果に基づいて印字開始時において、前回印字終了時における用紙の位置と、今回印字を開始すべき印字用紙の位置とのずれを補正するずれ量補正部137とを備える。
【0038】
このようなサーマルプリンタ101では、用紙収納部105に用紙ロールPRを収納して印字用紙PTを引き出して、カバー107を閉じると、引き出された印字用紙PTはサーマルヘッド112及びプラテン117の間に挟まれ、かつ、ヘッドカバー116及び用紙抑えローラ118の間に挟まれる。この状態で印字制御装置135の制御下、ステッピングモータ131がモータ制御装置134の制御によって駆動されると、印字用紙PTは、用紙ロールPRからサーマルヘッド112を経由して用紙排出口111に向かう方向に搬送される。また、印刷部としてのサーマルヘッド112は、ヘッド制御装置133の制御に基づいて発熱素子列114を発熱させることによって、搬送される印字用紙PTに対し所定の内容を印刷する。
【0039】
次に同一の筐体に異なる印字密度のサーマルヘッド取り付ける場合について説明する。
【0040】
上述したように、本例に係るサーマルプリンタ101には、300dpiのサーマルヘッド及び203dpiのサーマルヘッドから1つのサーマルヘッドを選択して取り付けることができる。
【0041】
上述のように、サーマルプリンタ101のヘッドブラケット115には、取り付けられたサーマルヘッドの印字密度を検出する印字密度検出装置136を備えている。この例では、印刷密度の異なるサーマルヘッド112におけるヘッドブラケット115への取付部の形状を異なるようにしておき、印字密度検出装置136は、この形状の違いによりオンオフされるスイッチ部材で構成するものとしている。
【0042】
また、ヘッド制御装置133は、印字密度300dpiと、印字密度203dpiとに適合する2種類の周波数のストローブ信号を前記印字密度検出装置136の検出結果に基づいて出力する。
【0043】
また、本例では、モータ制御装置134は、サーマルヘッドの印字密度にかかわらず、ステッピングモータ131を、印字用紙の移送速度の変動が所定の値以下である平滑駆動状態とし、略一定速度で駆動する。
【0044】
次に、ステッピングモータ131の平滑駆動状態について説明する。図4はステッピングモータの駆動状態を示す模式図である。ステッピングモータは、駆動パルス信号に基づいて、図4(a)に示すように、間欠駆動される。即ち所定周期t1ごとに一定の角度だけ回転するように制御される。
【0045】
本例では、ステッピングモータ131は、図4(b)に示すように、角速度の変動及び印字用紙の移送速度が印字に支障がない程度に略一定となるような平滑状態で駆動される。そして、このステッピングモータの角速度を、印字用紙を送る速度として適当な所定の値とする。即ち、モータ制御装置134は、発生するパルス信号のパルス周期を所定値t2とし、ステッピングモータを略等速回転するようにする。これにより、ステッピングモータ131を角速度の変化の程度が印字に支障のない一定値以下の値となるように脈動運転する。
【0046】
なお、この速度は、サーマルヘッドの印字密度にかかわらず一定とし、高い方の印字密度、本例では、300dpiのサーマルヘッドで印字を行うのに適した値例えばV(inch/sec)とする。
【0047】
また、ヘッド制御装置133は、上述したように、取り付けられたサーマルヘッドの印字密度に合わせてストローブ信号を変更する。即ち、ヘッド制御装置133は、印字密度検出装置136での検出結果に基づいてストローブ信号の周期を調整する。例えば、サーマルヘッドが300dpiであるときには、副走査方向の印字密度が300dpiとなるよう、ストローブ信号の周期をV×300/secとする。また、サーマルヘッドが203dpiであるときには、ストローブ信号の周期をV×203/secとする。
【0048】
これにより、取り付けられたサーマルヘッドの印字密度に合わせて副走査方向への印字速度を自動的に変更することができる。ここで、サーマルヘッドを制御するためのストローブ信号と、ステッピングモータの駆動パルス信号とは同期させる必要がない。
【0049】
ここで、ステッピングモータをストローブ信号と同期しない平滑状態で駆動した場合、各用紙において、印字位置がずれてしまうことがある。
【0050】
図5は実施例に係るプリンタの印字用紙の移送量と印字ラインの状態を示す模式図である。この例では、印字密度300dpiで駆動する場合においては、サーマルヘッドは、0ラインからnラインまで印字を行う。ここで、nは、用紙長によって定まる値であり、1つのラインは、サーマルヘッドの発熱素子が1つのストローブ信号に対応して発熱して描画する1列に対応する。
【0051】
この場合、搬送速度は印字タイミングに対応しており、1枚目の用紙の終了位置、即ち2枚目の用紙の開始位置と0ラインの印字位置とが一致する。このため、1枚目、及び2枚目において、同じ位置での印字を行うことができる。
【0052】
一方、印字密度203dpiでの印刷の場合には、300dpiの場合と異なり、1枚目の用紙の印字開始位置である1ラインの位置と、2枚目の用紙の印字開始位置である1ラインの位置とが異なる。これは、引用紙の移送速度と、サーマルヘッドのストローブ信号とが対応しておらず、印字用紙によって開始位置がずれてしまっているからである。即ち、この例では、1枚目の0ラインが上辺に、1ラインが上辺からaの個所に位置しているのに対し、2枚目の0ラインは上辺からb2の個所に、1ラインが上辺からb2+aの個所に位置してしまっている。
【0053】
このような状態になると、定まった印字領域内に印刷が求められている場合に不具合が発生する。即ち、連続した用紙を切り取って複数枚数の用紙とするため、所定の長さで切断できるミシン目が入っている印刷用紙や、所定の長さ寸法の剥離ラベル用紙が連続して貼付された印刷用紙を印刷対象として印字を行うと、印字された文字が印字領域から外れてしまうことになる。
【0054】
このずれは、連続する2枚の印字用紙の間でみると微少な寸法であるが、多数の印字用紙に連続して印字を行うと、このずれが累積して大きなずれとなるため、1枚の印刷用紙ごとに位置の補正を行う必要がある。
【0055】
そこで、本例では、このずれ量を補正するため、ずれ量補正部137と用紙位置検出装置138とを設けている。以下このずれ量の補正について説明する。
【0056】
まず、補正を行わない場合について説明する。図6はサーマルプリンタにおける印字のずれを示すものであり、(a)は印字状態を示す模式図、(b)は(a)中のB部の拡大模式図である。
【0057】
同一寸法の複数の剥離ラベル310,320,330…が、隙間なく連続して配置された印字用紙300にバーコード311,321,…を印字する。また、この例では、サーマルヘッド112は、印字密度203dpiであり、印字用紙300は、印字密度300dpiのサーマルヘッドに適合する前記速度Vで図中上方に向け一枚ずつ搬送され、サーマルヘッドは、この速度Vで副走査方向に300dpiで印字できるストローブ信号で駆動される。これにより、ストローブ信号S1に従って副走査方向に203dpiで印字がなされる。
【0058】
1枚目の剥離ラベル310についてみると、上辺313からdだけ離れた領域311にバーコード312が印字される。しかし、図6(b)に示すように、剥離ラベル310に印字される最後のnラインと下辺との間隔は、b1(b1<ライン間寸法a:a=1/203インチ)だけ離れていている。そして、一方2枚目の剥離ラベル320についてみると、0ラインは、2枚目の剥離ラベルの上辺からb2(b2=a−b1)、1ラインは上辺からb2+aの個所に印字されることになる。このため、2枚目の剥離ラベル320には、上辺323からe(e≠d)だけ離れた領域321にバーコード322が印字される。
【0059】
次に本例に係るずれの補正を行う場合について説明する。
【0060】
図7はサーマルプリンタにおける印字のずれを示すものであり、(a)は印字状態を示す模式図、(b)は(a)中のB部の拡大模式図である。本例では、印字用紙400の印字に際して、用紙位置検出装置138で1枚目の剥離ラベル410と、次の剥離ラベル420との境界である剥離ラベル420の上辺423を検出して、ずれ量補正部137からこの検出タイミングでヘッド制御装置133から2枚目の剥離ラベル420の印字を行う新たなストローブ信号S2を発生させる。ストローブ信号S2は前記ストローブ信号S1と位相をずらし、剥離ラベル420印字用のストローブ信号S2による0ラインが前記上辺423と一致するものとする。
【0061】
以上説明したように、本実施の形態例によれば、サーマルプリンタの組立に際してサーマルヘッドを取り付ければ、印字密度検出装置136がサーマルヘッドの印字密度を検出し、ヘッド制御装置133は、取り付けられたサーマルヘッドの印字密度に適合した周波数のストローブ信号を出力するから、同一の搬送系を備える筐体に異なる印刷密度のサーマルヘッドを選択して設置することができる。また、本例によれば、異なる印字密度のサーマルヘッドを選択して取り付けたとしても、印字位置が補正されるので、印字用紙の正しい位置に印刷を行うことができる。
【0062】
なお、上記例では、印字密度203dpiのサーマルヘッドを取り付けた場合も、印字密度300dpiのサーマルヘッドを取り付けた場合もステッピングモータを平滑駆動状態としたが、300dpiのサーマルヘッドを取り付けた場合には、ステッピングモータをサーマルヘッド駆動用のストローブ信号に同期した間欠運動状態とし、印字密度203dpiのサーマルヘッドを取り付けた場合に平滑運動とし、前記ずれ量補正処理を行うようにしてもよい。
【0063】
また、前記駆動パルス信号で実現可能な副走査方向の印字密度をNとし、前記取り付けられるサーマルヘッドの印字密度をnとし、Nがnで割り切れるとき、ヘッド制御部の発生するストローブ信号と、モータ制御部が発生する駆動パルス信号とを同期状態とすることができる。即ち、前記駆動パルス信号で実現可能な副走査方向の印字密度をN(例えば400dpi)とする。このとき、前記取り付けられるサーマルヘッドの印字密度をn(例えば200dpi)とすると、N(400)はn(200)で割り切れるので、前記モータ制御部で前記ステッピングモータは、用紙を前記印字密度Nに対応するストロークで間欠移送する間欠駆動状態とする。この場合、ヘッド制御部はストローブ信号を前記駆動パルス信号に同期させ、2つの駆動パルス信号に対して1つのストローブ信号を発生させる同期状態として出力することができる。なお、印字密度400dpiのサーマルヘッドを使用する場合には、ヘッド制御部は、1つの駆動パルス信号に対して1つのストローブ信号を同期させて発生する。このような制御を行うことにより、画素の大きさはいずれのサーマルヘッドを使用した場合にも縦横同じとなる。このようにすれば、印字密度400dpiのサーマルヘッドと、印字密度200dpiのサーマルヘッドを同一の筐体で実現することができる。
【0064】
また、前記駆動パルス信号で実現可能な副走査方向の印字密度をNとし、前記取り付けられるサーマルヘッドの印字密度をnとし、Nがnで割り切れないときは、上述の実施例の場合に相当する。この場合は、駆動パルス信号で実現可能な副走査方向の印字密度はN(300dpi)であり、前記取り付けられるサーマルヘッドの印字密度はn(203dpi)である。この場合、N(300)はn(203)で割り切れないので、モータ制御部は、前記ステッピングモータを平滑駆動状態としヘッド制御部はストローブ信号を駆動パルス信号と非同期状態として出力する。
【0065】
そして、上記例では、選択することができるサーマルヘッドを2種類としたが、選択できるサーマルヘッドの種類は3種類以上とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施形態例に係るプリンタの外観を示す斜視図である。
【図2】カバーが開いた状態のプリンタの外観を示す斜視図である。
【図3】実施例に係るプリンタの制御系を示すブロック図である。
【図4】ステッピングモータの駆動状態を示す模式図である。
【図5】実施例に係るプリンタの印字用紙の移送量と印字ラインの状態を示す模式図である。
【図6】サーマルプリンタにおける印字のずれを示すものであり、(a)は印字状態を示す模式図、(b)は(a)中のB部の拡大模式図である。
【図7】サーマルプリンタにおける印字のずれを示すものであり、(a)は印字状態を示す模式図、(b)は(a)中のB部の拡大模式図である。
【図8】サーマルヘッドによる印字状態を示す模式図である。
【図9】サーマルヘッドのストローブ信号及びプラテンを駆動するステッピングモータの駆動パルス信号のタイミングを示す模式図であり、(a)は203dpiの場合、(b)は300dpiの場合を示すものである。
【符号の説明】
【0067】
101 サーマルプリンタ、115 ヘッドブラケット(サーマルヘッド取付部) 112 サーマルヘッド、117 プラテン、131 ステッピングモータ、132 変速機、133 ヘッド制御装置、134 モータ制御装置、135 印字制御装置、136 印字密度検出装置、137 ずれ量補正部、138 用紙位置検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に発熱素子が所定の印字密度で配列され、ストローブ信号に基づいて前記発熱素子が発熱駆動されるサーマルヘッドと、このサーマルヘッドが取付けられるサーマルヘッド取付部と、
駆動パルス信号に基づいて駆動され印字用紙を副走査方向に移送するステッピングモータと、
前記ストローブ信号を発生するヘッド制御部と、
前記駆動パルス信号を発生するモータ制御部と、
を備えるサーマルプリンタにおいて、
前記モータ制御部は、前記印字用紙を所定の移送速度で移送でき、かつ、ステッピングモータの駆動速度の変動が所定の値以下である平滑駆動状態で駆動可能に構成され、
前記ヘッド制御部は、前記ストローブ信号を、前記移送される印字用紙に前記サーマルヘッドの印字密度に対応する印字密度で印字を行える周期であって、前記駆動パルス信号の周期と関連付けられない非同期状態で出力可能に構成されていることを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
前記サーマルヘッド取付部には、異なる印字密度の複数種のサーマルヘッドから選択した1つのサーマルヘッドが選択されて設置可能に構成され、
前記ヘッド制御部は、前記設置されたサーマルヘッドの印字密度に対応する周期のストローブ信号を出力可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記駆動パルス信号で実現可能な副走査方向の印字密度をNとし、前記取り付けられるサーマルヘッドの印字密度をnとし、Nがnで割り切れるとき、
前記モータ制御部は、前記ステッピングモータを前記平滑駆動状態又は用紙を前記印字密度Nに対応するストロークで間欠移送する間欠駆動状態とし、
前記ヘッド制御部は、ストローブ信号を前記駆動パルス信号に同期させた同期状態として出力することを特徴とする請求項1記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記駆動パルス信号で実現可能な副走査方向の印字密度をNとし、前記取り付けられるサーマルヘッドの印字密度をnとし、Nがnで割り切れないとき、
前記モータ制御部は、前記ステッピングモータを前記平滑駆動状態とし、
前記ヘッド制御部は、ストローブ信号を前記非同期状態として出力することを特徴とする請求項1記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記サーマルヘッド取付部に取付けられたサーマルヘッドの印字密度の値を検出する手段を備え、
前記ヘッド制御部は、前記検出された印字密度の値に基づいてストローブ信号を前記非同期状態又は前記同期状態として出力することを特徴とする請求項2又は3記載のサーマルプリンタ。
【請求項6】
前記サーマルヘッド取付部に取付けられたサーマルヘッドの印字密度の値を検出する手段を備え、
前記モータ制御部は、前記検出された印字密度の値に基づいてステッピングモータを前記円滑駆動状態又は前記間欠駆動状態とすることを特徴とする請求項2乃至5のいずれか記載のサーマルプリンタ。
【請求項7】
主走査方向の印字密度及び取り付けられるサーマルヘッドの印字密度にかかわらず、
前記ヘッド制御部は、常時ステッピングモータを前記平滑駆動状態とし、
前記ヘッド制御部は、ストローブ信号を前記非同期状態として出力することを特徴とする請求項1記載のサーマルプリンタ。
【請求項8】
印字終了時における用紙の移送量と、印字終了位置とのずれ量を検出して記憶する手段と、
次回印字開始時において前記ずれ量に基づいて印字開始位置を補正する補正手段と、を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか記載のサーマルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−172775(P2009−172775A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10957(P2008−10957)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】