サーマル・プローブ
【課題】プローブチップ(tip)の交換が可能であり、さらに、必要に応じて最適なプローブチップ、加熱装置及びカンチレバーの組み合わせが選択可能なサーマル・プローブ並びにその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明のサーマル・プローブ2は、支持素子21、導電パターン22及びプローブチップ(tip)23を備える。導電パターン22は、支持素子21上に設置されて、複数の湾曲部221を有する。プローブチップ23は、ベース231及びプローブ先端232を有する。ベース231は、第一表面S1及び第一表面S1に対応する第二表面S2を有する。プローブ先端232は、第一表面S1に設置され、第二表面S2は、導電パターン22に接続される。前記湾曲部221の少なくとも一部は、第一表面S1に接触せしめられる。
【解決手段】本発明のサーマル・プローブ2は、支持素子21、導電パターン22及びプローブチップ(tip)23を備える。導電パターン22は、支持素子21上に設置されて、複数の湾曲部221を有する。プローブチップ23は、ベース231及びプローブ先端232を有する。ベース231は、第一表面S1及び第一表面S1に対応する第二表面S2を有する。プローブ先端232は、第一表面S1に設置され、第二表面S2は、導電パターン22に接続される。前記湾曲部221の少なくとも一部は、第一表面S1に接触せしめられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブに関し、特に走査型サーマル・プローブ(thermal probe)に関する。
【背景技術】
【0002】
原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy, AFM)、または走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscopy, SPM)は、走査機構と動作及び微細プローブ機構の顕微技術を有することから、すでにナノテクノロジー及びバイオ医学研究において重要な精密機器となっている。
【0003】
図1は、従来の走査型プローブを使用して試料表面を測定する状態を示した図である。試料11の表面がプローブ12によりスキャンされる際、発光素子13が光束(例えば、レーザー光)をプローブ12のカンチレバー(cantilever)121に照射する。前記光束は反射して、光センサー素子14(例えば、発光ダイオード)がそれを受光する。コントロールフィードバック回路15は、光センサー素子14によって変換された信号を受けて、スキャン機構16をフィードバック制御して移動させ、さらに、試料11の位置を調整することで、プローブチップ(tip)122と試料11の表面の間に、ある種の交互作用が働き一定値を維持するようになっている。試料11の位置を調整する際の当該微調整データは試料の表面との交互作用のデータであり、通常測定するのは試料11の表面構造の形状である。
【0004】
したがって、ナノテクノロジー及びバイオ医学研究において使用される原子間力顕微鏡法の機能を向上させるためには、新たなプローブの設計と製作が必要である。このため、走査型プローブは、原子間力顕微鏡法の技術核心である。
また、走査型サーマル・プローブ顕微鏡法(Scanning thermal probe microscopy,SThM)は、原子間力顕微鏡を基本とした他の技術である。原子間顕微鏡と異なる点は、走査型サーマル・プローブ顕微鏡は、加熱可能なサーマル・プローブを有する点である。このサーマル・プローブを利用して、スキャニングを行うと、試料表面の温度分布が得られる。この技術の発明によって、材料の熱分析の尺度がサブミクロン及びミクロンの尺度にまで広がった。
【0005】
しかしながら、現在多くの走査型サーマル・プローブの製作は、全てシリコンを使用した微小電気機械工程(MEMS)により行なわれている。すなわち、プローブチップ(tip)、加熱装置、カンチレバーはいずれもシリコン材料によって製作される。そのため、製造工程は比較的簡単である上に、品質もコントロールしやすい。しかしながら、プローブチップ(tip)の磨耗がある上、加熱装置の運用温度や測定時の到達可能温度は全て制限を受ける。また、サーマル・プローブのプローブチップ(tip)がスキャニングを行う時、試料表面との間で発生する作用により磨耗が生じる。もしプローブチップ(tip)の曲率半径が増大し続けると、撮像の解像度に影響する。異なる機能の必要性に応じてプローブチップ(tip)を交換する場合、従来のサーマル・プローブは、そのプローブチップ(tip)だけを交換することはできず、サーマル・プローブ全体を交換する必要があった。また、従来のプローブチップ(tip)、加熱装置及びカンチレバーは、単一のシリコン材料で製作されるため、必要に応じた最適なプローブチップ(tip)、加熱装置及びカンチレバーの組み合わせを選択することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、そのプローブチップ(tip)の交換が可能であり、さらに、必要に応じて最適なプローブチップ(tip)、加熱装置及びカンチレバーの組み合わせが選択できるサーマル・プローブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るサーマル・プローブは、
支持素子と、
前記支持素子に設置されて、複数の湾曲部を有する導電パターンと、
ベース及びプローブ先端を有して、前記ベースは、第一表面及び前記第一表面に対応する第二表面を有し、前記プローブ先端は前記第一表面に設置され、前記第二表面は前記導電パターンに接続され、前記導電パターンの前記湾曲部の少なくとも一部は、前記第一表面に接触せしめられたプローブチップ(tip)と、
を備えることを特徴とする。
すなわち、本発明のサーマル・プローブは、支持素子、導電パターン及びプローブチップ(tip)を備える。導電パターンは、支持素子に設置されて、複数の湾曲部を有する。プローブチップ(tip)は、ベース及びプローブ先端を有する。ベースは、第一表面及び第一表面に対応する第二表面を有する。プローブ先端は、ベースの第一表面に設置され、ベースの第二表面は、導電パターンに接続される。導電パターンの前記湾曲部の少なくとも一部は、ベースの第一表面に接触せしめられる。
【0008】
一実施例において、支持素子の材料はシリコンを含む。
【0009】
一実施例において、導電パターンの材料は、ニッケルとリンの合金、タングステン、プラチナ、カーボン、ニッケルとクロムの合金、金属酸化物、金属窒化物またはシリコンを含む。
【0010】
一実施例において、プローブチップ(tip)の材料は、ダイヤモンド、窒化チタン、窒化ケイ素、炭化ケイ素、セラミック、高分子材料、複合材料またはその組み合わせを含む。
【0011】
一実施例において、ベースとプローブ先端は一体成型である。
【0012】
一実施例において、プローブチップ(tip)は交換可能である。
【0013】
一実施例において、プローブ先端は導電パターンに接触するか、または、接触しない。
【0014】
一実施例において、導電パターンは、以下のステップ、すなわち、支持素子にレジストを塗布するステップと、フォトリソグラフィー工程によってパターンを形成するステップと、金属層を設置するステップと、パターン以外の金属層及びレジストを取り除くことで導電パターンを形成するステップと、を実行することにより製造されるものである。
【0015】
一実施例において、サーマル・プローブはさらに、粘着層を備え、それは、第一表面及び、または第二表面に設置される。
【0016】
一実施例において、サーマル・プローブはさらに、台座を備え、支持素子は台座に設置されて、台座から突出し、プローブチップ(tip)は、支持素子の台座から離れた一端に設置される。
【発明の効果】
【0017】
本発明のサーマル・プローブは、上記の如く、支持素子、導電パターン及びプローブチップ(tip)を備える。導電パターンは、支持素子上に設置されて、複数の湾曲部を有する。プローブチップ(tip)は、ベース及びプローブ先端を有する。さらに、ベースは、第一表面及び第一表面に対応する第二表面を有する。プローブ先端は、第一表面に設置され、第二表面は、導電パターンに接続される。さらに、前記湾曲部の少なくとも一部は、第一表面に接触せしめられる。
このように、本発明においては、導電パターンの前記湾曲部によって、プローブチップ(tip)が固定されるため、加熱領域の導電パターンの金属導線の長さ、幅及び厚さをさまざまに変化させることにより、導電パターンの抵抗値を適切に調整した上で、導電パターンに電流を印加することで、加熱領域にジュール熱を発生させて、プローブチップ(tip)を全面的に加熱することが可能となる。このため、本発明のサーマル・プローブは、走査型プローブ顕微鏡及びその他の関連分野に応用が可能である。
また、本発明のサーマル・プローブは、必要に応じて、最適な『プローブチップ(tip)、導電パターン及び支持素子』の組み合わせを選択でき、さらに、磨耗時または異なる機能の必要性に対応するためプローブチップ(tip)を交換する時、各種の異なる材料及びサイズのプローブチップ(tip)を自由に採用でき、単一の材料やサイズに限る必要がない。また、本発明の一実施例において、プローブチップ(tip)の材料を単結晶ダイヤモンドとすることで、プローブチップ(tip)に対して、高硬度、高熱伝導性及び耐磨耗性の特性を付与することができる。したがって、プローブチップ(tip)が磨耗しにくく、プローブチップ(tip)の使用コストが節約できる。また、現在一般に使用されているプローブチップ(tip)は、加熱温度を高めることができず、プローブ先端が短小である。これは、すなわち、プローブ先端材料の熱伝導性の悪さの制限を受けて、加熱装置が発生させた熱エネルギーが伝達の過程において失われてしまうことに起因する。故に、本発明において、プローブチップ(tip)として単結晶ダイヤモンドを使用することにより、この問題を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の走査型プローブを使用して試料表面を測定する状態を示した説明図である。
【図2A】本発明の好適な実施例におけるサーマル・プローブの分解斜視図である。
【図2B】図2Aに示したサーマル・プローブの組み立て斜視図である。
【図2C】図2Aに示したサーマル・プローブの要部断面図である。
【図2D】本発明のサーマル・プローブの導電パターンの他の実施例を示す斜視図である。
【図3A】本発明のサーマル・プローブの導電パターンの製作過程の最初のステップを示した図である。
【図3B】図3Aに示した導電パターンの製作過程の次のステップを示した図である。
【図3C】図3Bのさらに次のステップを示した図である。
【図3D】図3Cのさらに次のステップを示した図である。
【図3E】図3Dのさらに次のステップを示した図である。
【図4A】本発明のサーマル・プローブの他の実施例を示した正面図である。
【図4B】図4Aに示したサーマル・プローブの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施例におけるサーマル・プローブについて説明する。
【0020】
図2A〜図2Cは、本発明の好適な実施例におけるサーマル・プローブ2の分解図、組み立て図及び断面図である。本発明のサーマル・プローブ2は、マイクロ電子デバイスの熱分析、不均質材料のサーマルマッピング(thermal mapping)、データ・ストレージ(data storage)、近接場光熱顕微鏡(Near-field photothermal microspectroscopy)、局部加熱(localized heating)及びマイクロナノ構造加工、修理等に応用することが可能であるが、ここでは、その使用分野を特に制限しない。このサーマル・プローブ2は、支持素子21、導電パターン22及びプローブチップ(tip)23を備える。また、支持素子21はこれをカンチレバーと読み替えてもよい。
【0021】
支持素子21の材料は、シリコンを含み、例えば、単結晶シリコンである。このうち、支持素子21の長さ、幅、高さのサイズは、例えば、450×60×4μmまたは350×60×3μmであるが、これに限るものではない。使用者は、サイズに制限されることなく、必要に応じたサイズの支持素子21を設計及び製作することが可能である。また、支持素子21は、フォトリソグラフィー工程(半導体製造工程)によって製作される。このフォトリソグラフィー工程は、レジスト塗布、リソグラフィー、(lithography)、エッチング(Etching)及びレジスト除去等のステップを含む。フォトリソグラフィー工程は、従来の製造工程であるため、ここでは再述しない。本実施例において、支持素子21は、二股に分かれた支持アームA、Bを有する場合を例とする。二股の支持アームA、Bとするメリットは、両者の間の空気を利用して断熱することで、熱エネルギーが材料を経て熱伝導し、失われるのを回避する点にある。
【0022】
また、支持素子21の形状は、図2A及び図2Bに限るものではない。使用者は、その必要に応じて、形状に限定されることなく、支持素子21を設計することも可能である。例えば、図2A及び図2Bの分かれた支持アームA、Bを使用しないで、一枚の支持アーム(図示はしない)を使用してもよい。ただし、一枚の支持アームを使用する場合は、支持アーム上の導電パターン22は、互いに電気的なショートを回避する形態とする必要がある。
【0023】
導電パターン22は、支持素子21上に設置されて、複数の湾曲部221を有して、加熱領域Cを形成する。この加熱領域Cは、導電パターン22上にプローブチップ(tip)23のベース231を設置すべき領域である。この導電パターン22の材料は、例えば、ニッケルとリンの合金、タングステン、プラチナ、カーボン、ニッケルとクロムの合金、金属酸化物(例えば、PbOまたはRuO2)、金属窒化物(例えば、TaN)またはシリコン(イオン注入によって電気抵抗特性を有する)等、何らかの導電性を制限する(電気抵抗特性を有する)機能を有する材料を含む。したがって、使用者は、その必要に応じて加熱領域Cの導電パターン22の金属導線の長さ、幅及び厚さを異ならせることにより、導電パターン22の電気抵抗値を調整した上、導電パターン22に電流を印加することで、加熱領域Cに所望のジュール熱を発生させ、プローブチップ(tip)23を全面的に加熱することができる。本実施例において、導電パターン22の材料は、ニッケルとリンの合金の場合を例とする。
【0024】
また、図2A及び図2Bに示したように、支持アームA、B上の導電パターン22の幅は、例えば、15μmである。導電パターン22の湾曲部221の幅は、例えば、3μmであるが、これに限るものではない。使用者は、その必要に応じて、異なる幅の導電パターン22を設計及び製作することも可能である。また、図2Aの導電パターン22は単なる一例を挙げたに過ぎない。導電パターン22は、例えば、図2Dに示したように、その他のパターンも可能である。さらに、この導電パターン22はこれを加熱手段と読み替えてもよい。
【0025】
以下、図3Aから図3Eを参照しながら、本発明の導電パターン22の製作過程について説明する。
【0026】
導電パターン22の製造方法は、以下のステップを備える。まず、図3Aに示したように、支持素子21を用意する。さらに、図3Bに示したように、支持素子21上に、レジストRを塗布する。次に、図3Cに示したように、フォトリソグラフィー工程によってパターンPを形成する。さらに、図3Dに示したように、金属層Mを設置する。最後に、図3Eに示したように、パターンP以外の金属層M及びレジストRを除去することで、導電パターン22が形成される。本実施例においては、無電解メッキ(electroless plating)技術を利用して、金属層Mを設置する。金属のリフトオフ(lift-off)の製造工程を組み合わせて、不要な金属層Mを除去して、残ったものがすなわち必要な金属導線(導電パターン22)である。上述中、無電解メッキのメリットは、あらかじめ導電層を設置する必要がないという点である(電気メッキの場合には、あらかじめ導電層を設置する必要がある)。リフトオフ製造工程では、溶剤によってレジストRを剥離することにより、レジストRに覆われていない金属層Mが保留される。さらに、レジストR上に堆積された材料が除去され、最後に、導電パターン22が形成される。ただし、導電パターン22は、その他の、例えば、電気メッキ、蒸着またはスパッタリング等の方法によっても製作できる。
【0027】
さらに、図2A〜図2Cを参照しながら説明する。プローブチップ(tip)23は、ベース231及びプローブ先端232を有する。この場合、ベース231とプローブ先端232は一体成型であっても、一体成型でなくてもよい。一体型でない場合には、ベース231とプローブ先端232を半導体用の接着剤を用いて接着することが好ましい。この接着はプローブチップ(tip)23を導電パターン22上、或は支持素子21上に接着する必要のある場合も同様とする。以上の接着は必要に応じて剥がすことが可能なものとすることが好ましい。ベース231は、第一表面S1及び第一表面S1に対応する第二表面S2を有する。そして、プローブ先端232は、ベース231の第一表面S1に設置される。ここで、プローブチップ(tip)23の材料は、例えば、ダイヤモンド、窒化チタン(TiN)、窒化ケイ素(Si3N4)、炭化ケイ素(SiC)、または、その他の導電性を有さないセラミック、高分子材料、複合材料またはその組み合わせである。上述の材料は、いずれも高硬度、高熱伝導性及び耐磨耗性の特性を有する。したがって、その必要に応じて、適切な材料を選択して、サーマル・プローブ(感熱プローブ)2のプローブチップ(tip)23にすることができる。さらに、各種の異なる材料及びサイズのプローブチップ(tip)23も、サーマル・プローブ(感熱プローブ)2に適用できる。本実施例において、ベース231とプローブ先端232は一体成型であるが、これに限定されるものではない。本実施例におけるベース231とプローブ先端232の材料はいずれも単結晶ダイヤモンドである。単結晶ダイヤモンドは、高硬度、高熱伝導性及び耐磨耗性の特性を有する。現在一般に使用されているプローブチップ(tip)は、加熱温度を高めることができず、プローブ先端が短小である。これは、すなわち、プローブ先端材料の熱伝導性の悪さにより制限を受けて、加熱装置が発生させた熱エネルギーが伝達の過程において失われてしまうことに起因する。故に、プローブチップ(tip)に単結晶ダイヤモンドを使用することにより、上述の問題を解決できる。ただし、プローブチップ(tip)23の材料を上述の数種類に限る必要はない。サーマル・プローブ2の導電パターン22が加熱性能を有することを利用して、例えばプローブチップ(tip)23の材料として、溶解する材料を使用し、これを導電パターン22で溶融させることで、サーマル・プローブ2を、ナノレベルまたはマイクロレベルのグルーガンまたはスポット溶接ガンとして使用することも可能である。
【0028】
図2B及び図2Cに示したように、プローブチップ(tip)23は、導電パターン22の上に設置されて、ベース231の第二表面S2と導電パターン22を接続させる。さらに、導電パターン22の前記湾曲部221は、折り曲げて第一表面S1に接続させるようにする。ここで、導電パターン22の前記湾曲部221がプローブチップ(tip)23の保持手段となることで、プローブチップ(tip)23を挟んで設置(固定)することができる。この場合、走査型電子顕微鏡及びマイクロ・ロボットアームを利用して操作し、導電パターン22の延伸性を利用して、導電パターン22の前記湾曲部221を折り曲げることで、前記湾曲部221をプローブチップ(tip)23に圧接させ、前記湾曲部221を、図A及び図Bに示したように、プローブチップ(tip)23に固定することができる。このため、各種の異なる材料及びサイズのプローブチップ(tip)23の使用が可能であり、それらを導電パターン22上にしっかりと設置できる。さらに、プローブチップ(tip)23は、磨耗または異なる機能の必要性から交換が必要な場合、他のプローブチップ(tip)に交換でき、サーマル・プローブ2全体を廃棄する必要がない。そのため、サーマル・プローブ2のコスト支出を節約することができる。また、本発明のサーマル・プローブ2は、必要に応じて、最適な『プローブチップ(tip)、導電パターン及び支持素子』の組み合わせが選択できる。さらに、磨耗した場合や異なる機能が必要な場合には、プローブチップ(tip)23の交換が可能なだけでなく、さらに、各種の異なる材料及びサイズのプローブチップ(tip)を自由に選択、使用でき、単一材料、サイズのものに限らずともよい。
【0029】
さらに、導電パターン22は、プローブ先端232に接触させることも、プローブ先端232に接触させないことも可能である。もし、導電パターン22をプローブ先端232に接触させた場合、プローブ先端232の加熱速度はより速く、プローブチップ(tip)23の加熱時間を短縮することが可能である。
【0030】
サーマル・プローブ2はさらに、粘着層(図示はしない)を備えるようにしてもよく、この粘着層は、第一表面S1及び、または第二表面S2に設置され、導電パターン22とプローブチップ(tip)23の間に介在せしめられる。これにより、粘着層は、導電パターン22と支持素子21をさらに堅固に連結させる。この粘着層は、例えば、瞬間接着剤(シアノアクリレートCyanoacrylate)またはエポキシ樹脂等である。
【0031】
また、図4A及び図4Bは、本発明のサーマル・プローブ2の他の実施例を示す図である。このサーマル・プローブ(感熱プローブ)2はさらに、台座24を備える。支持素子21は、台座24に設置されて、その一端が台座24から突出する。さらに、プローブチップ(tip)23は、支持素子21の台座24から遠い一端に設置される。この場合、台座24と支持素子21は一体成型され、その材料としてはシリコンが含まれる。
【0032】
本発明のサーマル・プローブ2は、加熱領域Cの導電パターン22の金属導線の長さ、幅及び厚さの違いによって、導電パターン22の電気抵抗を調整することができる。さらに、導電パターン22に電流を印加することで、加熱領域Cにジュール熱を発生させることにより、プローブチップ(tip)23を全面的に加熱することができる。また、導電パターン22の延伸性を利用して、その湾曲部221を湾曲させて、プローブチップ(tip)23に圧接させることにより、前記湾曲部221をプローブチップ(tip)23に固定するようにする。したがって、各種の異なる材料及びサイズのプローブチップ(tip)23であっても、区別なく導電パターン22の上に設置できる。さらに、プローブチップ(tip)23が、磨耗または異なる機能の必要性により交換が必要な場合、他のプローブチップ(tip)に交換でき、サーマル・プローブ2全体を廃棄する必要がない。したがって、サーマル・プローブ2のコスト支出を節約できる。また、本発明のサーマル・プローブ2は、必要に応じて、最適な『プローブチップ(tip)、導電パターン及び支持素子』の組み合わせが選択でき、磨耗時または異なる機能の必要性に応じてプローブチップ(tip)23を交換できる上、各種の異なる材料及びサイズのプローブチップ(tip)を自由に適用可能であり、単一の材料やサイズに限らずともよい。
【0033】
このように、本発明のサーマル・プローブは、支持素子、導電パターン及びプローブチップ(tip)を備える。導電パターンは、支持素子上に設置されて、複数の湾曲部を有する。プローブチップ(tip)は、ベース及びプローブ先端を有し、ベースは第一表面及び第一表面に対応する第二表面を有する。プローブ先端は、第一表面に設置され、第二表面は導電パターンに接続される。前記湾曲部の少なくとも一部は、第一表面に接触せしめられる。したがって、導電パターンの前記湾曲部によってプローブチップ(tip)が固定される。さらに、加熱領域の導電パターンの金属導線の長さ、幅及び厚さの違いによって導電パターンの電気抵抗値を適切に調整し、導電パターンに電流を印加することで、加熱領域にジュール熱を発生させて、プローブチップ(tip)の全面的な加熱を行うことができる。したがって、本発明のサーマル・プローブは、走査型プローブ顕微鏡及びその他の関連領域に応用できる。
【0034】
また、本発明のサーマル・プローブは、必要に応じて。最適な『プローブチップ(tip)、導電パターン及び支持素子』の組み合わせが選択できる。さらに、磨耗時や異なる機能の必要性に応じてプローブチップ(tip)を交換することが可能である。さらに、各種の異なる材料及びサイズのプローブチップ(tip)を区別なく適用することが可能であり、単一の材料やサイズに限られない。また、本発明の実施例において、プローブチップ(tip)の材料を単結晶ダイヤモンドとすることで、サーマル・プローブに対して高硬度、高熱伝導性及び耐磨耗性の特性を付与することができる。したがって、サーマル・プローブが磨耗しにくく、サーマル・プローブの使用コストが節約できる。また、現在一般に使用されているプローブチップ(tip)は、加熱温度を高めることができず、プローブ先端が短小である。これは、すなわち、プローブ先端材料の熱伝導性の悪さによる制限を受けて、加熱装置が発生させた熱エネルギーが伝達の過程において失われてしまうことに起因する。故に、単結晶ダイヤモンドを使用するプローブチップ(tip)を用いることにより、この問題を解決できる。
【0035】
以上、本発明の実施例を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更などがあっても、本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は以上の如く構成したので、プローブチップの交換が可能であり、必要に応じて、最適なプローブチップ、導電パターン(加熱装置に相当)及び支持素子(カンチレバーに相当)の組み合わせの選択が可能なサーマル・プローブを提供し得るものである。
【符号の説明】
【0037】
11 試料
12 プローブ
121 カンチレバー
122 プローブチップ(tip)
13 発光素子
14 光センサー素子
15 コントロールフィードバック回路
16 スキャン機構
2 サーマル・プローブ
21 支持素子
22 導電パターン
221 湾曲部
23 プローブチップ(tip)
231 ベース
232 プローブ先端
24 台座
A、B 支持アーム
C 加熱領域
M 金属層
P パターン
R レジスト
S1 第一表面
S2 第二表面
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブに関し、特に走査型サーマル・プローブ(thermal probe)に関する。
【背景技術】
【0002】
原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy, AFM)、または走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscopy, SPM)は、走査機構と動作及び微細プローブ機構の顕微技術を有することから、すでにナノテクノロジー及びバイオ医学研究において重要な精密機器となっている。
【0003】
図1は、従来の走査型プローブを使用して試料表面を測定する状態を示した図である。試料11の表面がプローブ12によりスキャンされる際、発光素子13が光束(例えば、レーザー光)をプローブ12のカンチレバー(cantilever)121に照射する。前記光束は反射して、光センサー素子14(例えば、発光ダイオード)がそれを受光する。コントロールフィードバック回路15は、光センサー素子14によって変換された信号を受けて、スキャン機構16をフィードバック制御して移動させ、さらに、試料11の位置を調整することで、プローブチップ(tip)122と試料11の表面の間に、ある種の交互作用が働き一定値を維持するようになっている。試料11の位置を調整する際の当該微調整データは試料の表面との交互作用のデータであり、通常測定するのは試料11の表面構造の形状である。
【0004】
したがって、ナノテクノロジー及びバイオ医学研究において使用される原子間力顕微鏡法の機能を向上させるためには、新たなプローブの設計と製作が必要である。このため、走査型プローブは、原子間力顕微鏡法の技術核心である。
また、走査型サーマル・プローブ顕微鏡法(Scanning thermal probe microscopy,SThM)は、原子間力顕微鏡を基本とした他の技術である。原子間顕微鏡と異なる点は、走査型サーマル・プローブ顕微鏡は、加熱可能なサーマル・プローブを有する点である。このサーマル・プローブを利用して、スキャニングを行うと、試料表面の温度分布が得られる。この技術の発明によって、材料の熱分析の尺度がサブミクロン及びミクロンの尺度にまで広がった。
【0005】
しかしながら、現在多くの走査型サーマル・プローブの製作は、全てシリコンを使用した微小電気機械工程(MEMS)により行なわれている。すなわち、プローブチップ(tip)、加熱装置、カンチレバーはいずれもシリコン材料によって製作される。そのため、製造工程は比較的簡単である上に、品質もコントロールしやすい。しかしながら、プローブチップ(tip)の磨耗がある上、加熱装置の運用温度や測定時の到達可能温度は全て制限を受ける。また、サーマル・プローブのプローブチップ(tip)がスキャニングを行う時、試料表面との間で発生する作用により磨耗が生じる。もしプローブチップ(tip)の曲率半径が増大し続けると、撮像の解像度に影響する。異なる機能の必要性に応じてプローブチップ(tip)を交換する場合、従来のサーマル・プローブは、そのプローブチップ(tip)だけを交換することはできず、サーマル・プローブ全体を交換する必要があった。また、従来のプローブチップ(tip)、加熱装置及びカンチレバーは、単一のシリコン材料で製作されるため、必要に応じた最適なプローブチップ(tip)、加熱装置及びカンチレバーの組み合わせを選択することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、そのプローブチップ(tip)の交換が可能であり、さらに、必要に応じて最適なプローブチップ(tip)、加熱装置及びカンチレバーの組み合わせが選択できるサーマル・プローブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るサーマル・プローブは、
支持素子と、
前記支持素子に設置されて、複数の湾曲部を有する導電パターンと、
ベース及びプローブ先端を有して、前記ベースは、第一表面及び前記第一表面に対応する第二表面を有し、前記プローブ先端は前記第一表面に設置され、前記第二表面は前記導電パターンに接続され、前記導電パターンの前記湾曲部の少なくとも一部は、前記第一表面に接触せしめられたプローブチップ(tip)と、
を備えることを特徴とする。
すなわち、本発明のサーマル・プローブは、支持素子、導電パターン及びプローブチップ(tip)を備える。導電パターンは、支持素子に設置されて、複数の湾曲部を有する。プローブチップ(tip)は、ベース及びプローブ先端を有する。ベースは、第一表面及び第一表面に対応する第二表面を有する。プローブ先端は、ベースの第一表面に設置され、ベースの第二表面は、導電パターンに接続される。導電パターンの前記湾曲部の少なくとも一部は、ベースの第一表面に接触せしめられる。
【0008】
一実施例において、支持素子の材料はシリコンを含む。
【0009】
一実施例において、導電パターンの材料は、ニッケルとリンの合金、タングステン、プラチナ、カーボン、ニッケルとクロムの合金、金属酸化物、金属窒化物またはシリコンを含む。
【0010】
一実施例において、プローブチップ(tip)の材料は、ダイヤモンド、窒化チタン、窒化ケイ素、炭化ケイ素、セラミック、高分子材料、複合材料またはその組み合わせを含む。
【0011】
一実施例において、ベースとプローブ先端は一体成型である。
【0012】
一実施例において、プローブチップ(tip)は交換可能である。
【0013】
一実施例において、プローブ先端は導電パターンに接触するか、または、接触しない。
【0014】
一実施例において、導電パターンは、以下のステップ、すなわち、支持素子にレジストを塗布するステップと、フォトリソグラフィー工程によってパターンを形成するステップと、金属層を設置するステップと、パターン以外の金属層及びレジストを取り除くことで導電パターンを形成するステップと、を実行することにより製造されるものである。
【0015】
一実施例において、サーマル・プローブはさらに、粘着層を備え、それは、第一表面及び、または第二表面に設置される。
【0016】
一実施例において、サーマル・プローブはさらに、台座を備え、支持素子は台座に設置されて、台座から突出し、プローブチップ(tip)は、支持素子の台座から離れた一端に設置される。
【発明の効果】
【0017】
本発明のサーマル・プローブは、上記の如く、支持素子、導電パターン及びプローブチップ(tip)を備える。導電パターンは、支持素子上に設置されて、複数の湾曲部を有する。プローブチップ(tip)は、ベース及びプローブ先端を有する。さらに、ベースは、第一表面及び第一表面に対応する第二表面を有する。プローブ先端は、第一表面に設置され、第二表面は、導電パターンに接続される。さらに、前記湾曲部の少なくとも一部は、第一表面に接触せしめられる。
このように、本発明においては、導電パターンの前記湾曲部によって、プローブチップ(tip)が固定されるため、加熱領域の導電パターンの金属導線の長さ、幅及び厚さをさまざまに変化させることにより、導電パターンの抵抗値を適切に調整した上で、導電パターンに電流を印加することで、加熱領域にジュール熱を発生させて、プローブチップ(tip)を全面的に加熱することが可能となる。このため、本発明のサーマル・プローブは、走査型プローブ顕微鏡及びその他の関連分野に応用が可能である。
また、本発明のサーマル・プローブは、必要に応じて、最適な『プローブチップ(tip)、導電パターン及び支持素子』の組み合わせを選択でき、さらに、磨耗時または異なる機能の必要性に対応するためプローブチップ(tip)を交換する時、各種の異なる材料及びサイズのプローブチップ(tip)を自由に採用でき、単一の材料やサイズに限る必要がない。また、本発明の一実施例において、プローブチップ(tip)の材料を単結晶ダイヤモンドとすることで、プローブチップ(tip)に対して、高硬度、高熱伝導性及び耐磨耗性の特性を付与することができる。したがって、プローブチップ(tip)が磨耗しにくく、プローブチップ(tip)の使用コストが節約できる。また、現在一般に使用されているプローブチップ(tip)は、加熱温度を高めることができず、プローブ先端が短小である。これは、すなわち、プローブ先端材料の熱伝導性の悪さの制限を受けて、加熱装置が発生させた熱エネルギーが伝達の過程において失われてしまうことに起因する。故に、本発明において、プローブチップ(tip)として単結晶ダイヤモンドを使用することにより、この問題を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の走査型プローブを使用して試料表面を測定する状態を示した説明図である。
【図2A】本発明の好適な実施例におけるサーマル・プローブの分解斜視図である。
【図2B】図2Aに示したサーマル・プローブの組み立て斜視図である。
【図2C】図2Aに示したサーマル・プローブの要部断面図である。
【図2D】本発明のサーマル・プローブの導電パターンの他の実施例を示す斜視図である。
【図3A】本発明のサーマル・プローブの導電パターンの製作過程の最初のステップを示した図である。
【図3B】図3Aに示した導電パターンの製作過程の次のステップを示した図である。
【図3C】図3Bのさらに次のステップを示した図である。
【図3D】図3Cのさらに次のステップを示した図である。
【図3E】図3Dのさらに次のステップを示した図である。
【図4A】本発明のサーマル・プローブの他の実施例を示した正面図である。
【図4B】図4Aに示したサーマル・プローブの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施例におけるサーマル・プローブについて説明する。
【0020】
図2A〜図2Cは、本発明の好適な実施例におけるサーマル・プローブ2の分解図、組み立て図及び断面図である。本発明のサーマル・プローブ2は、マイクロ電子デバイスの熱分析、不均質材料のサーマルマッピング(thermal mapping)、データ・ストレージ(data storage)、近接場光熱顕微鏡(Near-field photothermal microspectroscopy)、局部加熱(localized heating)及びマイクロナノ構造加工、修理等に応用することが可能であるが、ここでは、その使用分野を特に制限しない。このサーマル・プローブ2は、支持素子21、導電パターン22及びプローブチップ(tip)23を備える。また、支持素子21はこれをカンチレバーと読み替えてもよい。
【0021】
支持素子21の材料は、シリコンを含み、例えば、単結晶シリコンである。このうち、支持素子21の長さ、幅、高さのサイズは、例えば、450×60×4μmまたは350×60×3μmであるが、これに限るものではない。使用者は、サイズに制限されることなく、必要に応じたサイズの支持素子21を設計及び製作することが可能である。また、支持素子21は、フォトリソグラフィー工程(半導体製造工程)によって製作される。このフォトリソグラフィー工程は、レジスト塗布、リソグラフィー、(lithography)、エッチング(Etching)及びレジスト除去等のステップを含む。フォトリソグラフィー工程は、従来の製造工程であるため、ここでは再述しない。本実施例において、支持素子21は、二股に分かれた支持アームA、Bを有する場合を例とする。二股の支持アームA、Bとするメリットは、両者の間の空気を利用して断熱することで、熱エネルギーが材料を経て熱伝導し、失われるのを回避する点にある。
【0022】
また、支持素子21の形状は、図2A及び図2Bに限るものではない。使用者は、その必要に応じて、形状に限定されることなく、支持素子21を設計することも可能である。例えば、図2A及び図2Bの分かれた支持アームA、Bを使用しないで、一枚の支持アーム(図示はしない)を使用してもよい。ただし、一枚の支持アームを使用する場合は、支持アーム上の導電パターン22は、互いに電気的なショートを回避する形態とする必要がある。
【0023】
導電パターン22は、支持素子21上に設置されて、複数の湾曲部221を有して、加熱領域Cを形成する。この加熱領域Cは、導電パターン22上にプローブチップ(tip)23のベース231を設置すべき領域である。この導電パターン22の材料は、例えば、ニッケルとリンの合金、タングステン、プラチナ、カーボン、ニッケルとクロムの合金、金属酸化物(例えば、PbOまたはRuO2)、金属窒化物(例えば、TaN)またはシリコン(イオン注入によって電気抵抗特性を有する)等、何らかの導電性を制限する(電気抵抗特性を有する)機能を有する材料を含む。したがって、使用者は、その必要に応じて加熱領域Cの導電パターン22の金属導線の長さ、幅及び厚さを異ならせることにより、導電パターン22の電気抵抗値を調整した上、導電パターン22に電流を印加することで、加熱領域Cに所望のジュール熱を発生させ、プローブチップ(tip)23を全面的に加熱することができる。本実施例において、導電パターン22の材料は、ニッケルとリンの合金の場合を例とする。
【0024】
また、図2A及び図2Bに示したように、支持アームA、B上の導電パターン22の幅は、例えば、15μmである。導電パターン22の湾曲部221の幅は、例えば、3μmであるが、これに限るものではない。使用者は、その必要に応じて、異なる幅の導電パターン22を設計及び製作することも可能である。また、図2Aの導電パターン22は単なる一例を挙げたに過ぎない。導電パターン22は、例えば、図2Dに示したように、その他のパターンも可能である。さらに、この導電パターン22はこれを加熱手段と読み替えてもよい。
【0025】
以下、図3Aから図3Eを参照しながら、本発明の導電パターン22の製作過程について説明する。
【0026】
導電パターン22の製造方法は、以下のステップを備える。まず、図3Aに示したように、支持素子21を用意する。さらに、図3Bに示したように、支持素子21上に、レジストRを塗布する。次に、図3Cに示したように、フォトリソグラフィー工程によってパターンPを形成する。さらに、図3Dに示したように、金属層Mを設置する。最後に、図3Eに示したように、パターンP以外の金属層M及びレジストRを除去することで、導電パターン22が形成される。本実施例においては、無電解メッキ(electroless plating)技術を利用して、金属層Mを設置する。金属のリフトオフ(lift-off)の製造工程を組み合わせて、不要な金属層Mを除去して、残ったものがすなわち必要な金属導線(導電パターン22)である。上述中、無電解メッキのメリットは、あらかじめ導電層を設置する必要がないという点である(電気メッキの場合には、あらかじめ導電層を設置する必要がある)。リフトオフ製造工程では、溶剤によってレジストRを剥離することにより、レジストRに覆われていない金属層Mが保留される。さらに、レジストR上に堆積された材料が除去され、最後に、導電パターン22が形成される。ただし、導電パターン22は、その他の、例えば、電気メッキ、蒸着またはスパッタリング等の方法によっても製作できる。
【0027】
さらに、図2A〜図2Cを参照しながら説明する。プローブチップ(tip)23は、ベース231及びプローブ先端232を有する。この場合、ベース231とプローブ先端232は一体成型であっても、一体成型でなくてもよい。一体型でない場合には、ベース231とプローブ先端232を半導体用の接着剤を用いて接着することが好ましい。この接着はプローブチップ(tip)23を導電パターン22上、或は支持素子21上に接着する必要のある場合も同様とする。以上の接着は必要に応じて剥がすことが可能なものとすることが好ましい。ベース231は、第一表面S1及び第一表面S1に対応する第二表面S2を有する。そして、プローブ先端232は、ベース231の第一表面S1に設置される。ここで、プローブチップ(tip)23の材料は、例えば、ダイヤモンド、窒化チタン(TiN)、窒化ケイ素(Si3N4)、炭化ケイ素(SiC)、または、その他の導電性を有さないセラミック、高分子材料、複合材料またはその組み合わせである。上述の材料は、いずれも高硬度、高熱伝導性及び耐磨耗性の特性を有する。したがって、その必要に応じて、適切な材料を選択して、サーマル・プローブ(感熱プローブ)2のプローブチップ(tip)23にすることができる。さらに、各種の異なる材料及びサイズのプローブチップ(tip)23も、サーマル・プローブ(感熱プローブ)2に適用できる。本実施例において、ベース231とプローブ先端232は一体成型であるが、これに限定されるものではない。本実施例におけるベース231とプローブ先端232の材料はいずれも単結晶ダイヤモンドである。単結晶ダイヤモンドは、高硬度、高熱伝導性及び耐磨耗性の特性を有する。現在一般に使用されているプローブチップ(tip)は、加熱温度を高めることができず、プローブ先端が短小である。これは、すなわち、プローブ先端材料の熱伝導性の悪さにより制限を受けて、加熱装置が発生させた熱エネルギーが伝達の過程において失われてしまうことに起因する。故に、プローブチップ(tip)に単結晶ダイヤモンドを使用することにより、上述の問題を解決できる。ただし、プローブチップ(tip)23の材料を上述の数種類に限る必要はない。サーマル・プローブ2の導電パターン22が加熱性能を有することを利用して、例えばプローブチップ(tip)23の材料として、溶解する材料を使用し、これを導電パターン22で溶融させることで、サーマル・プローブ2を、ナノレベルまたはマイクロレベルのグルーガンまたはスポット溶接ガンとして使用することも可能である。
【0028】
図2B及び図2Cに示したように、プローブチップ(tip)23は、導電パターン22の上に設置されて、ベース231の第二表面S2と導電パターン22を接続させる。さらに、導電パターン22の前記湾曲部221は、折り曲げて第一表面S1に接続させるようにする。ここで、導電パターン22の前記湾曲部221がプローブチップ(tip)23の保持手段となることで、プローブチップ(tip)23を挟んで設置(固定)することができる。この場合、走査型電子顕微鏡及びマイクロ・ロボットアームを利用して操作し、導電パターン22の延伸性を利用して、導電パターン22の前記湾曲部221を折り曲げることで、前記湾曲部221をプローブチップ(tip)23に圧接させ、前記湾曲部221を、図A及び図Bに示したように、プローブチップ(tip)23に固定することができる。このため、各種の異なる材料及びサイズのプローブチップ(tip)23の使用が可能であり、それらを導電パターン22上にしっかりと設置できる。さらに、プローブチップ(tip)23は、磨耗または異なる機能の必要性から交換が必要な場合、他のプローブチップ(tip)に交換でき、サーマル・プローブ2全体を廃棄する必要がない。そのため、サーマル・プローブ2のコスト支出を節約することができる。また、本発明のサーマル・プローブ2は、必要に応じて、最適な『プローブチップ(tip)、導電パターン及び支持素子』の組み合わせが選択できる。さらに、磨耗した場合や異なる機能が必要な場合には、プローブチップ(tip)23の交換が可能なだけでなく、さらに、各種の異なる材料及びサイズのプローブチップ(tip)を自由に選択、使用でき、単一材料、サイズのものに限らずともよい。
【0029】
さらに、導電パターン22は、プローブ先端232に接触させることも、プローブ先端232に接触させないことも可能である。もし、導電パターン22をプローブ先端232に接触させた場合、プローブ先端232の加熱速度はより速く、プローブチップ(tip)23の加熱時間を短縮することが可能である。
【0030】
サーマル・プローブ2はさらに、粘着層(図示はしない)を備えるようにしてもよく、この粘着層は、第一表面S1及び、または第二表面S2に設置され、導電パターン22とプローブチップ(tip)23の間に介在せしめられる。これにより、粘着層は、導電パターン22と支持素子21をさらに堅固に連結させる。この粘着層は、例えば、瞬間接着剤(シアノアクリレートCyanoacrylate)またはエポキシ樹脂等である。
【0031】
また、図4A及び図4Bは、本発明のサーマル・プローブ2の他の実施例を示す図である。このサーマル・プローブ(感熱プローブ)2はさらに、台座24を備える。支持素子21は、台座24に設置されて、その一端が台座24から突出する。さらに、プローブチップ(tip)23は、支持素子21の台座24から遠い一端に設置される。この場合、台座24と支持素子21は一体成型され、その材料としてはシリコンが含まれる。
【0032】
本発明のサーマル・プローブ2は、加熱領域Cの導電パターン22の金属導線の長さ、幅及び厚さの違いによって、導電パターン22の電気抵抗を調整することができる。さらに、導電パターン22に電流を印加することで、加熱領域Cにジュール熱を発生させることにより、プローブチップ(tip)23を全面的に加熱することができる。また、導電パターン22の延伸性を利用して、その湾曲部221を湾曲させて、プローブチップ(tip)23に圧接させることにより、前記湾曲部221をプローブチップ(tip)23に固定するようにする。したがって、各種の異なる材料及びサイズのプローブチップ(tip)23であっても、区別なく導電パターン22の上に設置できる。さらに、プローブチップ(tip)23が、磨耗または異なる機能の必要性により交換が必要な場合、他のプローブチップ(tip)に交換でき、サーマル・プローブ2全体を廃棄する必要がない。したがって、サーマル・プローブ2のコスト支出を節約できる。また、本発明のサーマル・プローブ2は、必要に応じて、最適な『プローブチップ(tip)、導電パターン及び支持素子』の組み合わせが選択でき、磨耗時または異なる機能の必要性に応じてプローブチップ(tip)23を交換できる上、各種の異なる材料及びサイズのプローブチップ(tip)を自由に適用可能であり、単一の材料やサイズに限らずともよい。
【0033】
このように、本発明のサーマル・プローブは、支持素子、導電パターン及びプローブチップ(tip)を備える。導電パターンは、支持素子上に設置されて、複数の湾曲部を有する。プローブチップ(tip)は、ベース及びプローブ先端を有し、ベースは第一表面及び第一表面に対応する第二表面を有する。プローブ先端は、第一表面に設置され、第二表面は導電パターンに接続される。前記湾曲部の少なくとも一部は、第一表面に接触せしめられる。したがって、導電パターンの前記湾曲部によってプローブチップ(tip)が固定される。さらに、加熱領域の導電パターンの金属導線の長さ、幅及び厚さの違いによって導電パターンの電気抵抗値を適切に調整し、導電パターンに電流を印加することで、加熱領域にジュール熱を発生させて、プローブチップ(tip)の全面的な加熱を行うことができる。したがって、本発明のサーマル・プローブは、走査型プローブ顕微鏡及びその他の関連領域に応用できる。
【0034】
また、本発明のサーマル・プローブは、必要に応じて。最適な『プローブチップ(tip)、導電パターン及び支持素子』の組み合わせが選択できる。さらに、磨耗時や異なる機能の必要性に応じてプローブチップ(tip)を交換することが可能である。さらに、各種の異なる材料及びサイズのプローブチップ(tip)を区別なく適用することが可能であり、単一の材料やサイズに限られない。また、本発明の実施例において、プローブチップ(tip)の材料を単結晶ダイヤモンドとすることで、サーマル・プローブに対して高硬度、高熱伝導性及び耐磨耗性の特性を付与することができる。したがって、サーマル・プローブが磨耗しにくく、サーマル・プローブの使用コストが節約できる。また、現在一般に使用されているプローブチップ(tip)は、加熱温度を高めることができず、プローブ先端が短小である。これは、すなわち、プローブ先端材料の熱伝導性の悪さによる制限を受けて、加熱装置が発生させた熱エネルギーが伝達の過程において失われてしまうことに起因する。故に、単結晶ダイヤモンドを使用するプローブチップ(tip)を用いることにより、この問題を解決できる。
【0035】
以上、本発明の実施例を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更などがあっても、本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は以上の如く構成したので、プローブチップの交換が可能であり、必要に応じて、最適なプローブチップ、導電パターン(加熱装置に相当)及び支持素子(カンチレバーに相当)の組み合わせの選択が可能なサーマル・プローブを提供し得るものである。
【符号の説明】
【0037】
11 試料
12 プローブ
121 カンチレバー
122 プローブチップ(tip)
13 発光素子
14 光センサー素子
15 コントロールフィードバック回路
16 スキャン機構
2 サーマル・プローブ
21 支持素子
22 導電パターン
221 湾曲部
23 プローブチップ(tip)
231 ベース
232 プローブ先端
24 台座
A、B 支持アーム
C 加熱領域
M 金属層
P パターン
R レジスト
S1 第一表面
S2 第二表面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持素子と、
前記支持素子上に設置されて、複数の湾曲部を有する導電パターンと、
ベース及びプローブ先端を有して、前記ベースは、第一表面及び前記第一表面に対応する第二表面を有し、前記プローブ先端は前記第一表面に設置され、前記第二表面は前記導電パターンに接続され、前記導電パターンの前記湾曲部の少なくとも一部は、前記第一表面に接触せしめられたプローブチップ(tip)と、
を備えることを特徴とするサーマル・プローブ。
【請求項2】
前記支持素子の材料は、シリコンを含むことを特徴とする請求項1に記載のサーマル・プローブ。
【請求項3】
前記導電パターンの材料は、ニッケルとリンの合金、タングステン、プラチナ、カーボン、ニッケルとクロムの合金、金属酸化物、金属窒化物またはシリコンを含むことを特徴とする請求項1に記載のサーマル・プローブ。
【請求項4】
前記プローブチップ(tip)の材料は、ダイヤモンド、窒化チタン、窒化ケイ素、炭化ケイ素、セラミック、高分子材料、複合材料またはその組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載のサーマル・プローブ。
【請求項5】
前記ベースと前記プローブ先端は一体成型であることを特徴とする請求項1に記載のサーマル・プローブ。
【請求項6】
前記プローブチップ(tip)は交換可能であることを特徴とする請求項1に記載のサーマル・プローブ。
【請求項7】
前記プローブ先端は前記導電パターンに接触するか、または、接触しないことを特徴とする請求項1に記載のサーマル・プローブ。
【請求項8】
支持素子上にレジストを塗布するステップと、
フォトリソグラフィー工程によってパターンを形成するステップと、
金属層を設置するステップと、
前記パターン以外の金属層及びレジストを取り除くことで前記導電パターンを形成するステップと、
の実行により製造された導電パターンであることを特徴とする請求項1に記載のサーマル・プローブ。
【請求項9】
前記サーマル・プローブはさらに、粘着層を備え、それは、前記第一表面及び、または前記第二表面に設置されることを特徴とする請求項1に記載のサーマル・プローブ。
【請求項10】
前記サーマル・プローブはさらに、台座を備えて、前記支持素子は前記台座に設置されて、前記台座から突出し、前記プローブチップ(tip)は、前記支持素子の前記台座から離れた一端に設置されることを特徴とする請求項1に記載のサーマル・プローブ。
【請求項1】
支持素子と、
前記支持素子上に設置されて、複数の湾曲部を有する導電パターンと、
ベース及びプローブ先端を有して、前記ベースは、第一表面及び前記第一表面に対応する第二表面を有し、前記プローブ先端は前記第一表面に設置され、前記第二表面は前記導電パターンに接続され、前記導電パターンの前記湾曲部の少なくとも一部は、前記第一表面に接触せしめられたプローブチップ(tip)と、
を備えることを特徴とするサーマル・プローブ。
【請求項2】
前記支持素子の材料は、シリコンを含むことを特徴とする請求項1に記載のサーマル・プローブ。
【請求項3】
前記導電パターンの材料は、ニッケルとリンの合金、タングステン、プラチナ、カーボン、ニッケルとクロムの合金、金属酸化物、金属窒化物またはシリコンを含むことを特徴とする請求項1に記載のサーマル・プローブ。
【請求項4】
前記プローブチップ(tip)の材料は、ダイヤモンド、窒化チタン、窒化ケイ素、炭化ケイ素、セラミック、高分子材料、複合材料またはその組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載のサーマル・プローブ。
【請求項5】
前記ベースと前記プローブ先端は一体成型であることを特徴とする請求項1に記載のサーマル・プローブ。
【請求項6】
前記プローブチップ(tip)は交換可能であることを特徴とする請求項1に記載のサーマル・プローブ。
【請求項7】
前記プローブ先端は前記導電パターンに接触するか、または、接触しないことを特徴とする請求項1に記載のサーマル・プローブ。
【請求項8】
支持素子上にレジストを塗布するステップと、
フォトリソグラフィー工程によってパターンを形成するステップと、
金属層を設置するステップと、
前記パターン以外の金属層及びレジストを取り除くことで前記導電パターンを形成するステップと、
の実行により製造された導電パターンであることを特徴とする請求項1に記載のサーマル・プローブ。
【請求項9】
前記サーマル・プローブはさらに、粘着層を備え、それは、前記第一表面及び、または前記第二表面に設置されることを特徴とする請求項1に記載のサーマル・プローブ。
【請求項10】
前記サーマル・プローブはさらに、台座を備えて、前記支持素子は前記台座に設置されて、前記台座から突出し、前記プローブチップ(tip)は、前記支持素子の前記台座から離れた一端に設置されることを特徴とする請求項1に記載のサーマル・プローブ。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【公開番号】特開2013−19887(P2013−19887A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−114310(P2012−114310)
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【出願人】(504455908)国立成功大学 (18)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【出願人】(504455908)国立成功大学 (18)
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