説明

サーモトレーサを用いる流体流量計

流体は導管内を流動する。流速を測定するために流体を導管内の加熱位置において時間依存加熱強度で加熱する。導管内を流動する流体中の音の速度は加熱位置から下流側で複数の感知位置において測定される。流体の流速は、複数の感知位置おいて測定される音の速度に検出される時間依存性の遅延から決定される。一実施の形態では、流速を決定するのに用いられる加熱強度の変動の周波数が流速および/または他の環境に従って自動的に選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流量計および流量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行時間を用いて流体の流量を測定することが知られている。熱飛行時間測定では、流体は局所的に加熱される。次いで、温度が異なる位置で測定され、流体の流動によって局所的に加熱された流体元素が輸送される速さが検出される。この公知の測定法では、流体は導管を通して輸送され、導管の壁部または内部に取り付けられた温度センサを用いてセンサに接触している流体の温度が測定される。この測定方法の短所は、温度結果が一部分導管の性質と流速以外の流体の性質とによって決まる点にある。導管の寸法と流速を低減させほど、これら他の性質への依存性が増し測定の精度に影響する。
【0003】
他の公知の流体流量測定技術は超音波飛行時間測定法である。この技術では、超音波が流れに対しておよび流れに沿ってそれぞれ一定距離を通過するのに要する時間間隔が測定される。流速は、これら測定された時間間隔の間の差と超音波が伝搬する距離とから計算される。時間の測定に制約があるので、この技術が正確であるのは流速が十分に高い場合に限られている。
【0004】
本出願の出願時には未公開であった国際特許出願第PCT2007/NL050550号公報パンフレットには、時間に正弦曲線状に依存する加熱パターンを持つレーザーで流体を加熱し、流体中の音の速度を下流側で測定することにより伝搬速度を検出することにより流体の流速を測定できることが記載されている。
【0005】
米国特許出願公開第2005/0005710号明細書から、流体に熱パルスを当て、下流側で流体中の光の速度を測定して飛行時間を検出することにより流速を測定することが公知である。しかしながら、このパルスによる測定は、非常に小さな流れは拡散と区別できないため、非常に小さな流れを測定することができない。
【0006】
欧州特許第1014093号明細書は、流体を加熱し、導管に沿って異なる位置に配置された複数の温度センサにおいて検出された加熱による温度変化の遅延時間を測定することにより流速を測定することが開示されている。小さな流速についての使用が言及されており、洗濯機のような家電機器への応用が記載されている。最小流速は10−2m/secを優に超えている。周期的加熱パターンおよび確率的加熱パターンの使用が記載されている。周期的加熱パターンを使用する場合、検出された温度変動の間の位相差が遅延時間の測定に用いられる。しかしながら、そのような従来の測定方法は多数の周期の周期的加熱パターンを必要としている。確率的な加熱パターンを使用する場合、相関を用いて遅延を決定している。相関はまた測定時間を必要とする。いずれの場合も、流速が低い場合は、信頼性のある測定を行なうにはかなりの時間を必要とすることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
就中、本発明の目的は、流速以外の流体の性質にほとんど、あるいはまったく依存せず、少なくとも低流速に対して適している流体流速計および流体流速測定法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
時間に正弦曲線状に依存する加熱パターンを備える時間依存加熱強度で導管中の流体を加熱することにより10−4m/s〜10−2m/sの範囲内の非常に小さな流速を測定することが可能であることが見出された。
【0009】
本発明の一態様によれば、流速の測定は、
−導管内に流体流動を起こし、
−前記導管内の加熱位置において、それぞれ周波数の異なる複数の加熱パターンを同時に用いる時間依存加熱強度で前記流体を加熱し、
−前記加熱位置の下流で複数の感知位置において前記導管内を流体流動する流体の局所的温度に依存する前記液体の局所的性質を遠隔測定し、
−前記性質の変動の周波数成分の位相値および振幅値を一定の時間間隔内においてそれぞれ異なる周波数について反復計算し、その際、前記性質の測定結果から計算された位相値および振幅値の補正値を見積もり、該見積値から前回の反復から得られた前記成分の見積値を引き算することを連続的に反復し、かつ
−前記感知位置の各位置に対して前記周波数の選択された一つの周波数、または前記周波数の選択された範囲について計算された複数の位相値の間の差から流速を決定する
ことにより行なわれる。
【0010】
一実施の形態では、流体は導管内においてこの流体が流動する導管の壁部から離れた位置において局所的に加熱される。こうすることにより加熱時の壁部の効果を取り除くことが可能になる。例えば、前記位置に集中または少なくとも収束するレーザーを使用することができ、あるいはマイクロ波加熱源もしくは電熱線などを使用することができる。
【0011】
本発明のこれらおよび他の態様および有利な態様は、下記の図面を参照した例示的な実施の形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】流速測定装置を示す図である。
【図2】位置の関数としての温度を示す図である。
【図3】時間の関数としての音速を示す図である。
【図4】時間の関数としての音速を示す図である。
【図5】測定回路を示す図である。
【図6】流速測定のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は流速測定装置を示す。この流速測定装置は導管10、導管10の壁部に取り付けられた一連のセンサ群12a−d、およびレーザー装置14を備える。レーザー装置14は、センサ群12a−dのうちの一つ、すなわち一連のセンサ群の2番目の位置における導管10内の焦点領域内に焦点を合わされる。この焦点領域は導管10の壁部から離れている。すなわち、壁部の内側の空間の一部は焦点領域を包囲しているがその一部ではない。
【0014】
操作時は、流体は導管10内を矢印16により指し示される方向に流れ、センサ群12a−dを順次通過するとともにレーザー装置の焦点が合わされている焦点領域を通過する。一実施の形態では、導管の直径は、可能な流速範囲内で層流プロファイルが生じるように選択される。この実施の形態では、レーザー装置14はこのプロファイルにおいて最大流が生じる点に、または流速がプロファイルの最大値から、所定の割合、例えば10%より大きく逸れない点に焦点が合わされることが好ましい。
【0015】
レーザー装置14は稼働されるとパルス状もしくは正弦曲線状の強度のような、時間依存強度を持つレーザーを生成する。放射線の波長はレーザーパルスからの放射線の少なくとも一部分が流体によって吸収される結果、流体が局所的に加熱される。流体が導管10内を移動するにつれて、焦点領域を通過する異なる流体部分が異なる程度に加熱される。流動の結果、加熱された流体部分は導管10内をセンサ12c−dに沿って移動する。
【0016】
操作は非常に狭い導管10内で実施することができる。一実施の形態では、直径1mmの導管を用いた。もちろん、例えば10mmの、より大きい直径を用いることもできる。また、より小さい直径を用いてもよいが、加熱時の焦点の大きさにより下限がある。
【0017】
図2は、流体が正弦曲線状に時間依存するレーザー線強度を用いて加熱されたときに、流動方向に沿う導管10を通る仮想線に沿う位置の関数としての流体の理論的温度を示す。正弦曲線状のパターンが生じる理由は、種々の移動する流体部分が加熱される際にその加熱の程度が正弦曲線状時間依存性をもって変動するからである。正弦曲線状パターンの振幅は、熱拡散効果により、焦点領域からの距離と共に減衰する。
【0018】
センサ群12a−dは音速センサ群であり、好ましくは超音速センサ群である。これらはそれ自体公知であり、音を生成し、反射された音を受けるように構成されていれる。一実施の形態では、40MHzの音声周波数が使用される。音を流体に適用しほぼ同じ位置の流体から戻る音を受け取る反射構造の一例が説明されているけれども、それに替えて、送信構造を用いることもでき、あるいは異なる位置に配置された送信機および受信機を持つ反射構造を用いることもできる。
【0019】
センサ群12a−dにより生成された音は導管10の中を流れる流体を伝搬し、例えば導管の壁部に反射して戻り、センサ群12a−dにより受信される。センサ群12a−dはこの反射を検出する。この反射から流体中の音の速度の指標が、例えば音のパルスの送信と受信の間の遅延から、決定される。流体中の音の速度は温度によって決まる。各センサ群12a−dによって検出される音の速度の変化はセンサ群12a−dに隣接する加熱された部分の通過を示す。
【0020】
一実施の形態では、送信と受信の間の遅延はこれらのパルスが壁部からN回(例えば、N=3または)反射された後に生成されるパルス、すなわち導管10の内部を複数回往復移動したパルスについて測定される。これにより感度がます。センサ群12a−dは導管10の壁部に一体化されているが、そうする代わりに、センサ群12a−dを壁部の外部に取り付けたものを用いてもよい。別の実施の形態では、壁部の厚さは壁部の厚さ方向のパルスの伝搬時間が導管10の内部の流体を通る伝搬時間よりも長くなるように選択される。これにより流体を通って伝搬するパルスを区別するのが容易になる。壁部の厚さは、導管10の内部の流体を通ってN回(Nは例えば3または4)往復する伝搬時間よりも壁部を貫通する伝搬時間の方が長くなるほど大きいのが好ましい。これによりこのように伝搬したパルスの検出が簡単になる。
【0021】
図3は焦点領域の下流のセンサ群12c−dの2つにおける理論的に測定された時間の関数としての音速を正弦曲線状時間依存レーザー照射強度に対して示す。図から観察できるように、2つのセンサ群12c−dにおける音速の変化の位相は異なる。これは流体の部分が第1のセンサ12cに隣接する位置から第2のセンサ12dに隣接する位置に流動するのに必要な時間によるものである。音速の変化の振幅も変化するが、これは熱拡散効果による。
【0022】
図4も、同じ2つのセンサ12c−dにおける時間の関数としての理論的に測定された音速を示すが、この場合はより高い時間周波数を有す売る正弦曲線状時間依存レーザー照射強度に対して示す。図から観察できるように、音速変化の周波数はそれに応じてより高い。音速変化の振幅は熱拡散効果が相対的に増加するためより小さくなる。
【0023】
時間の関数としての正弦曲線状加熱パターンを用いると、熱拡散を計上できるという利点がある。これは熱拡散が予測可能な効果を持つためである。これに対して、パルス化された加熱を用いると、特に流速が小さいときに、流体の流動と拡散とを区別することがより困難になる。その結果、10−4m/sのように遅い流れを直径1mmの導管内で、すなわち、約1μl/分(10−4×1/6cm/sec)の流れを測定することができる。パルス化された加熱パターンでは、測定可能な流動の下限はずっと高く、典型的には、1m/s、少なくとも10−2m/secである。従って、正弦曲線状加熱は下流の2個所における測定と組み合わせると、10−4〜10−2m/secの範囲、特に10−4〜10−2m/secの範囲の流速を測定することが可能となる。
【0024】
図5は測定回路を示す。この回路はセンサ群12a−d、レーザー制御回路22、センサ群12a−dに接続されたデータ処理回路20およびレーザー制御回路20を備える。データ処理回路20は適切にプログラムされた回路であって、I/Oインターフェース接続がセンサ群12a−dとレーザー制御回路22とに接続されている。ここで用いられているように、「回路」は、回路構造自体と、回路構造が必要な機能を実行するようにプログラムしたプログラムと組み合わされた回路構造との双方を含む。データ処理回路20はレーザー制御回路22にレーザー装置14が時間依存強度、例えば正弦曲線状時間依存強度を持つレーザー光線を発生させるように構成されている。
【0025】
さらに、データ処理回路20はセンサ群12a−dから音速測定結果を読み出しこれらのデータを処理するように構成されている。一実施の形態では、結果の処理は、焦点領域の下流の2つのセンサ群12c−dに対して、結果に示された音速の変化の時間変動の間の位相差を決定することを含む。この位相差から、データ処理回路20は2つのセンサ群12c−d間の(所定の)距離を位相差で除することにより流速を計算する(これは位相差がセンサ12c−dからの音速結果中の同じ位相の点同士の間の時間差として表現されることを前提とする。あるいはまた、位相を表現するのに正弦曲線状変動の期間の割合が用いられている場合は、データ処理回路は距離と正弦曲線状変動の周波数との積を位相差で除する。)
【0026】
第1の実施の形態では、所定の固定周波数の制限曲線状時間従属性を持つレーザー光線が用いられる。固定周波数は正確に測定することができるある範囲の流速を規定する。この範囲は、例えば熱拡散効果により制約される。熱拡散による熱輸送が流体流動による熱輸送に比較して顕著になると、位相差と流速との間の単純な関係の正確さが低下する。この範囲は、レーザー照射強度の正弦曲線状変動の周波数をより低く選択することにより、低流速側にシフトさせることが可能である。使用可能な最大周波数は流体の体積流量の二乗に比例する(そして流体密度および熱容量に比例し、熱伝導度および導管の直径の四乗に反比例する)。周波数についての範囲の規定は、例えば、所望の最低精度を特定し、操作をシミュレートして周波数のその精度で測定できる流速の範囲を決定することにより実行することができる。あるいはまた、解析的分析または較正測定を用いてその範囲を決定してもよい。
【0027】
第2の実施の形態では、データ処理回路20はこの周波数を測定結果に応じて適合させるように構成される。これは、実際の可能な流速の範囲が大きく、単一の周波数により定義される正確に測定可能な流速の任意の範囲を超えて拡大されている場合に、有利である。
【0028】
図6は、データ処理回路20により実行される操作のフローチャートを示す。第1のステップ51において、データ処理回路20は最初の周波数を選択する。第2のステップ52において、データ処理回路20はレーザー装置に正弦曲線状時間依存強度を持つ放射線を生成させる。第3のステップ53において、データ処理回路20はセンサ群12c,dから結果を読み出し、可能ならばこれらの結果から流速を計算する。第4のステップ54において、データ処理回路20は流速が存在する場合はその流速が選択された周波数により定義される範囲(典型的には選択された周波数が少なくとも所定の精度の測定を可能にする範囲)内であるか否かを検査する。流速がその範囲内であれば、データ処理回路20は第5のステップ55を実行し、計算された流速を出力する。範囲内でなければ、データ処理回路20は第6のステップ56を実行し、それに関連する範囲が流速を含むように(例えば、第3のステップ53からの予備的見積もりに基づいて、予めプログラムされた流速に対する許容し得る周波数の二乗依存性を用いることにより、または許容し得る周波数が見つかるまで周波数を減少させることにより)新しい周波数を選択し、第2のステップ52に戻る。
【0029】
一実施の形態では、データ処理回路20は、複数の異なる周波数に対する暫定的な流速測定を実行し、異なる周波数に対する暫定的な流速測定の結果を比較する(「暫定的(tentative)」という用語は、測定の少なくとも一部分を実行するが、誤った加熱周波数が用いられているため流速の正確な測定ではないかも知れないことを意味する)。この実施の形態では、データ処理回路20は、暫定的測定結果が、最も近い他の周波数に対する暫定的測定結果と異ならないか、またはこの暫定的測定結果から所定の許容誤差(例えば1%、5%または10%)を越えて異なることがないような新しい周波数を選択する。あるいはまた、暫定的測定結果が所定の許容誤差を越えない、複数の周波数に対する結果の平均値を計算してもよい。
【0030】
一実施の形態では、データ処理回路20は、複数の異なる周波数に対する暫定的流速測定を順次行なうようにするか、または異なる周波数の加熱パターンの組み合わせである、時間の関数としての加熱強度で加熱することにより暫定的流速測定を実行するように構成してもよい。後者の場合、データ処理回路20は複数の加熱パターンの組み合わせに対する応答から異なる周波数に対する応答を例えばフーリエ解析により抽出することができる。
【0031】
加熱パターンに対して広範囲の周波数を用いることができる。一実施の形態では、0.1ヘルツ〜100ヘルツの範囲の周波数を用いた。一実施の形態では、異なる周波数を用いることが避けられており、任意の使用周波数は同時に使用される他の周波数の整数倍である。これにより測定精度を低下し得るような非線形歪みが低減される。関連性のない広範囲の周波数を同時に使用すると異なる周波数における応答の検出が複雑になる。
【0032】
一実施の形態では、加熱パターンの組み合わせに対する応答は、最小周波数加熱パターンの全周期よりも短い期間を持つような時間間隔における時間の関数として測定される。測定された応答、すなわち、音速値はその時間間隔内における多数の時点において、例えば1000サンプル/秒のサンプルレートでサンプリングすることができる。
【0033】
この実施の形態では、測定された応答は多数のステップで処理される。第1のステップにおいて、応答は時間間隔内において測定される。第2のステップにおいて、加熱パターンの周波数における応答の周波数成分の振幅値および位相値の第1次の見積もりがその時間間隔内の測定された応答から決定される。これは、例えば、応答に加熱パターの周波数に対する時間依存位相ベクトルを乗じ、積を測定時間間隔にわたって平均(例えば合計)することにより行なうことができる。その周波数に対する振幅値および位相値の第1次の見積もりをこの平均ベクトルから導くことができる。これを同じ測定応答を用いて全ての加熱パターンの周波数について繰り返してもよい。
【0034】
第3のステップにおいて、見積もられた振幅値および位相値により定義された見積り応答信号が測定された応答から減算される。第3のステップの後、測定された応答の代わりに前回の第3のステップにおいて得られた差に適用して、第2および第3のステップを複数回繰り返し、振幅値および位相値に対する高次の補正値が連続的に得られる。そのような反復を所定回数行なってもよく、あるいは第2および第3のステップを、すべての周波数に対する補正値の振幅値が閾値未満に低下するまで、反復してもよい。各周波数に対して必要回数のそのような反復を実行すると、第1次の見積もりおよび順次高次の補正値が加算されてその周波数に対する振幅値と位相値が得られる。
【0035】
この方法では、より高い周波数の振幅値および位相値が典型的には最初に収束し、その後より低い周波数の振幅値および位相値が高い周波数により歪みなしに見積もり可能である。これにより、最も低い周波数加熱パターンの期間と同じまたはそれより短くてもよい測定時間間隔を用いて正確な振幅値と位相値の見積もり値とを得るのが可能となる。
【0036】
測定された流速は以後のメッセージのための最初の周波数の選択を制御するのに用いることができる。一実施の形態では、データ処理回路20は、測定された流速が増加した周波数と関連する範囲の値を有する場合(例えば、増加した周波数が十分に正確な流速測定を提供する場合)選択された周波数を増加する。より高い周波数を設定することは、測定に要する時間を低減する利点を有する。
【0037】
レーザー照射強度の正弦曲線状時間依存性が用いられている実施の形態が説明されたが、他の形態の時間依存性を使用してもよい。一例では、周波数帯域制限時間依存性が適用され、流速はこの時間依存性がセンサ群12c,dにおいて観察される際の遅延から決定される。さらなる実施の形態では、時間依存性は流速に従って帯域をシフトするように変えることができる。他の実施の形態では、測定後のセンサ群12c,dからの信号に予想された流速に依存して(例えばローパスフィルタを用いてフィルタリングすることにより)帯域制限が課される。これらの実施の形態では、フローチャートの周波数を用いて帯域幅を設定することができる。
【0038】
センサの一つ12bを用いて加熱をモニタすることができる。一実施の形態では、データ処理回路20は、このセンサ12bから得られた測定結果を用いてフィードバックループにおいて照射強度を制御する。強度変動の振幅または強度自体を例えばフィードバック制御して、少なくとも所定の音速変動が実行される。センサのもう一つ12aを用いて音速の変化から逆流を検出する。逆流が検出されると、データ処理回路20は弁を制御して例えば逆流を調節または遮断することができる。
【0039】
一実施の形態では、吸収材料源を導管10に接合して、レーザー装置14からの放射線を吸収する材料を放出するように構成されている。従って、それ自体放射線を吸収しない流体における測定も可能である。
【0040】
別の実施の形態では、レーザー装置14が省かれ、その代わりに音速に影響する材料源が追加されている。操作において、この材料源は流動流体中に時間に依存する速度で材料を添加し、加熱する代わりに標識を提供する。このようにして、流速を測定することができる。しかしながら、これと比較して、レーザー照射の使用は焦点領域と導管の壁部との間の接触を必要としないという利点がある。従って、導管の影響をなくすことができる。
【0041】
飛行時間が流体中の音の速度に依存する測定により測定される実施の形態を説明したが、流体中の光の速度に依存する測定のように、他の性質の遠隔測定を用いて飛行時間を決定してもよい。
【0042】
レーザー装置に対する別の代替手段として、例えば、音波源、RF電磁波照射源、マイクロ波源、放射能源を用いた照射のような、他の無接触加熱技術を用いてもよい。また、抵抗加熱線を用いてもよく、あるいは流体が導電性の場合は、誘導加熱を用いてもよい。それぞれの場合、熱は導管10の壁部から離れた領域に集中して適用されることが好ましい。集中された源が好ましいが、他の源、例えば最大強度照射を壁部から離れた、所定の大きさおよび形状を持つ領域にわたって提供する源を用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
−導管と、
−前記導管内の加熱位置において、流体を加熱するように構成されたヒーターと、
−前記導管内を流体流動する前記流体の局所温度に依存する前記流体の局所的性質を、前記加熱位置の下流の複数の感知位置において遠隔測定するように構成されたセンサと、
−データ処理回路と、を備え、前記データ処理回路は
−前記ヒーターが、それぞれ周波数の異なる複数の加熱パターンを同時に用いて、前記流体を加熱し、
−所定時間間隔内に前記センサから前記性質の測定結果を得、
−前記性質の変動の周波数成分の位相値と振幅値を前記時間間隔内において、それぞれ異なる周波数について反復計算し、その際、前記性質の測定結果から計算された位相値および振幅値の補正値を見積もり、該見積値から前回の反復から得られた前記成分の見積値を引き算することを連続的に反復し、かつ
−前記感知位置の各位置に対して前記周波数の選択された一つの周波数、または前記周波数の選択された範囲について計算された複数の位相値の間の差から流速を決定する
ように構成されていることを特徴とする流体流量計。
【請求項2】
前記センサは、前記流体を前記導管の流動方向に対して横断して通過する音の速度を測定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体流量計。
【請求項3】
前記ヒーターは前記導管内の前記流体を放射線の吸収により加熱するように構成された放射線源を備えることを特徴とする請求項1に記載の流体流量計。
【請求項4】
前記ヒーターは前記導管の壁部から分離された前記導管内の領域において最大照射強度を発生するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の流体流量計。
【請求項5】
前記ヒーターはレーザーを備えることを特徴とする請求項1に記載の流体流量計。
【請求項6】
前記データ処理回路は、選択された周波数または周波数範囲からの流速の暫定的測定結果が、前記複数の加熱周波数または周波数範囲の一つに最も近い他の周波数に対する暫定的測定結果から所定の差を超えないか否かによって、前記流速を決定するのに使用される前記周波数または周波数範囲が選択されるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の流体流量計。
【請求項7】
−導管内に流体流動を起こし、
−前記導管内の加熱位置において、それぞれ周波数の異なる複数の加熱パターンを同時に用いる時間依存加熱強度で前記流体を加熱し、
−前記加熱位置の下流で複数の感知位置において前記導管内を流体流動する流体の局所的温度に依存する前記液体の局所的性質を遠隔測定し、
−前記性質の変動の周波数成分の位相値および振幅値を一定の時間間隔内においてそれぞれ異なる周波数について反復計算し、その際、前記性質の測定結果から計算された位相値および振幅値の補正値を見積もり、該見積値から前回の反復から得られた前記成分の見積値を引き算することを連続的に反復し、かつ
−前記感知位置の各位置に対して前記周波数の選択された一つの周波数、または前記周波数の選択された範囲について計算された複数の位相値の間の差から流速を決定する
ことを特徴とする流体流動の測定を実施する方法。
【請求項8】
前記局所的性質は前記流体を前記導管の流動方向に対して横断して通過する音の速度であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
コンピュータプログラム製品であって、プログラム可能なコンピュータにより実行された際に前記コンピュータが
−前記ヒーターがそれぞれ異なる複数の周波数の複数の加熱パターンを同時に用いて前記流体を加熱し、
−前記加熱位置の下流で複数の感知位置において前記導管内を流体流動する流体の局所的温度に依存する前記液体の局所的性質を所定の時間間隔内に測定した結果を得、
−前記性質の変動の周波数成分の位相値および振幅値を前記時間間隔内においてそれぞれ異なる周波数について反復計算し、その際、前記性質の測定結果から計算された位相値および振幅値の補正値を見積もり、該見積値から前回の反復から得られた前記成分の見積値を引き算することを連続的に反復し、かつ
−前記感知位置の各位置に対して前記周波数の選択された一つの周波数、または前記周波数の選択された範囲について計算された複数の位相値の間の差から流速を決定する
ように動作させる指令を含むことを特徴とする流体流動の測定を実行するためのコンピュータプログラム製品。
【請求項10】
−導管に10−4m/s〜10−2m/sの範囲内の流速を持つ流体流動を起こし、
−前記導管内の加熱位置において、時間に正弦曲線状に依存する加熱パターンを備える時間依存加熱強度で前記流体を加熱し、
−前記導管内の加熱位置において、前記流体の局所的温度に従属する前記液体の局所的性質を遠隔測定し、
−前記導管内を流体流動する前記流体の局所的温度に依存する前記流体の局所的性質を前記加熱位置の下流で複数の感知位置において測定し、かつ、
−前記検出位置において測定された音速において検出される、加熱の際の加熱強度の時間依存性の遅延から前記流体の流速を決定する
ことを特徴とする流体の流れの測定を実行する方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−516853(P2011−516853A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502882(P2011−502882)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050171
【国際公開番号】WO2009/123455
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(506297485)ネーデルランデ オルガニサティー ヴール トゥーヘパストナツールウェテンスハペライク オンデルズーク テーエヌオー (30)
【Fターム(参考)】