説明

ザクロ新芽、ザクロ新芽由来の調製物およびそれらを含む組成物

ザクロ新芽調製物が開示される。ザクロ新芽およびザクロ新芽調製物、ならびにそれを含む食品製造物または飼料製造物を製造する方法も開示される。1つの態様によれば、(a)ザクロ新芽を提供すること;および(b)ザクロ新芽を加工し、それにより、ザクロ新芽調製物を製造することを含むザクロ新芽調製物を製造する方法が提供される。別の態様によれば、(a)ザクロの種子を、新芽が現れるまで暗所で発芽させること;(b)新芽を光にさらし、その結果、露光された新芽を得ること;(c)露光された新芽を暗所でインキュベーションすること;および(d)ザクロ新芽を収穫し、それにより、ザクロ新芽を製造することを含むザクロ新芽を製造する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、ザクロの新芽、および、ザクロの新芽に由来する調製物に関連し、より具体的には、特に限定されないが、それらの使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
ザクロ(Punica granatum L.)は世界中で広く栽培されており、その可食部がこれまで、食品産業においてだけでなく、伝統的薬において広範囲に使用されている。例えば中国人は、ザクロを、抗菌用途、抗炎症用途および止血用途での伝統的製造物として使用している。機能性食品産業では、ザクロはスーパーフルーツの新規なカテゴリーに含まれる。したがって、ザクロは、引きつけるような味覚とともに、格段に優れた栄養的豊かさおよび抗酸化特性を含む。
【0003】
ザクロ果実の可食部(総果実重量の約50%)は、80%の果汁に富む果肉と、20%の真の種子とを含む果汁に富む種子(仮種皮)から構成される。新鮮なザクロ果汁は、糖(すなわち、フルクトースおよびグルコース)、有機酸(例えば、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸および酒石酸など)、カルシウム、アミノ酸(主にグルタミン酸およびアスパラギン酸)、ペクチン、アスコルビン酸および可溶性ポリフェノール[主に、アントシアニン類(例えば、シアニジン−3−グルコシド、シアニジン−3,5−ジグルコシドおよびデルフィンジン−3−グルコシドなど)、カテキン類および他のフラボノイド類、没食子酸およびエラグ酸およびそれらの誘導体]を含有する。実際、仮種皮のみから得られる果汁は微量のエラグタンニンのみを含有するだけであるが、皮を含む果実全体から得られる果汁はエラグタンニンが豊富である[Gilら、J Agric Food Chem(2000) 48:4581〜4589]。ザクロの種子は、脂質、タンパク質、粗繊維、ペクチンおよび糖の豊富な供給源である。そのうえ、ザクロの種子は、ステロイドエストロゲンのエストロン、イソフラボンフィトエストロゲンのゲニステインおよびダイゼイン、ならびに、フィトエストロゲン性のクメストロールを含有する[Kasaiら、J Nutr Sci Vitaminol(2006) 52(5):383〜8;米国特許第6,361,807号]。ザクロの皮はフェノール系化合物の豊富な供給源であるが、ザクロの皮は非常に渋い。
【0004】
ザクロ果実の種々の部分からの抽出物は、果汁からの抽出物[Gilら、上掲;Aviramら、Am J Clin Nutr(2007) 71:1062〜1076]、種子からの抽出物[Wangら、J Nat Prod(2004) 67:2096〜2098]および皮からの抽出物[Singhら、J Agric Food Chem(2002) 50:81〜86]を含めて、強い抗酸化活性を示すことが以前から示されている。さらに、ザクロの樹皮は、エラグタンニンおよびガロタンニンが非常に多いことが示されている[Tanakaら、Chem Pharm Bull(1986) 34:656〜663]。
【0005】
米国特許第6,977,089号は、アテローム性動脈硬化、動脈関連状態の処置のために、また、患者における脳卒中または心臓発作の発生を低下させるために、ザクロ果実全体(内側および外側の皮ならびに種子を含む)からのザクロ抽出物を開示する。
【0006】
米国特許第6,800,292号は、皮膚科学的障害を処置するための、果樹抽出物(例えば、ザクロ)を含む皮膚科学的薬剤を開示する。この抽出物は、果実、果実の表皮もしくは外皮、種子、樹皮、葉、根または茎から得ることができる。
【0007】
米国特許第6,818,234号は、鎮痛および消炎のために有用な1つ以上の果実抽出物(例えば、ザクロ)を含有する食品サプリメントを開示する。米国特許第6,818,234号によれば、この食品サプリメントは、溶液(例えば、果汁)を限外ろ過膜に通し、その後、逆浸透膜に通すことを含むプロセスによって植物から抽出される。
【0008】
さらなる関連技術がhttp://ccne.mofcom.gov.cn/206573/p1270843.htmlに列挙される。
【発明の開示】
【0009】
本発明のいくつかの実施形態の1つの態様によれば、ザクロ新芽調製物が提供される。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態の1つの態様によれば、ザクロ新芽調製物を製造する方法が提供され、この場合、この方法は、(a)ザクロ新芽を提供すること;および(b)ザクロ新芽を加工し、それにより、ザクロ新芽調製物を製造することを含む。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態の1つの態様によれば、ザクロ新芽を製造する方法が提供され、この場合、この方法は、(a)ザクロの種子を、新芽が現れるまで暗所で発芽させること;(b)新芽を光にさらし、その結果、露光された新芽を得ること;(c)露光された新芽を暗所でインキュベーションすること;および(d)ザクロ新芽を収穫し、それにより、ザクロ新芽を製造することを含む。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、(a)が6日間〜13日間行われ、(b)が30分間〜8時間行われ、(c)が24時間〜48時間行われる。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態の1つの態様によれば、請求項4に記載される方法に従って製造されるザクロ新芽が提供される。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態の1つの態様によれば、30μM TE/g新鮮重量よりも高い抗酸化活性を含むザクロ新芽が提供される。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態の1つの態様によれば、請求項1、6または7に記載されるザクロ調製物またはザクロ新芽を含む食品製造物または飼料製造物が提供される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、調製物の抗酸化活性が30μM TE/g新鮮重量よりも高い。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、提供することが、請求項4に記載される方法に従って行われる。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗酸化活性が少なくとも50μM TE/g新鮮重量である。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、抗酸化活性が少なくとも70μM TE/g新鮮重量である。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の調製物または新芽は親水性抗酸化物質を含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、親水性抗酸化物質の活性が少なくとも70μM TE/g新鮮重量である。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態によれば、親水性抗酸化物質はビタミンCを含む。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ビタミンCの含有量が少なくとも0.3mg/g新鮮重量である。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、親水性抗酸化物質はフェノール系化合物を含む。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、フェノール系化合物は没食子酸を含む。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、没食子酸の含有量が少なくとも16mg/g乾燥重量である。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、フェノール系化合物はプニカラギン類を含む。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、プニカラギン類の含有量が少なくとも4mg/g乾燥重量である。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、フェノール系化合物はフラボノイド類を含む。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、フラボノイド類の含有量が少なくとも19mg/g乾燥重量である。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、フェノール系化合物はエラグ酸を含む。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、エラグ酸の含有量が少なくとも23mg/g乾燥重量である。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の調製物または新芽は親油性抗酸化物質を含む。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、親油性抗酸化物質の活性が少なくとも0.6μM TE/g新鮮重量である。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、親油性抗酸化物質はビタミンEを含む。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ビタミンEの含有量が少なくとも0.40mg/g新鮮重量である。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、親油性抗酸化物質はカロテノイド類を含む。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光は日光を含む。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光は280nm〜400nmの波長範囲の紫外光を含む。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、光は、放射照度が少なくとも30W/mである380nm〜750nmの波長範囲の人工光を含む。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の調製物は顆粒化形態である。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の調製物は粉末形態である。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の調製物はペースト形態である。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の調製物は液体形態である。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ホモジネート化によって加工が行われる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ホモジネート化が有機酸の存在下で行われる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態によれば、有機酸は食品用有機酸である。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態によれば、食品用有機酸はクエン酸である。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態によれば、クエン酸は0.1%〜0.2%の濃度である。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態によれば、乾燥によって加工が行われる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態によれば、浸透脱水によって乾燥が行われる。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態によれば、凍結乾燥によって乾燥が行われる。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態によれば、真空乾燥によって乾燥が行われる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の食品製造物または飼料製造物は、ゼリー、ソース、シロップ、レリッシュ、ワイン、シリアル、フレーク、バー、スナック、スプレッド、ペースト、ディップ、細粉物、ポリッジ、飲料物、輸液、浸出液、チンキ剤、抽出物および果汁からなる群から選択される。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本発明の食品製造物または飼料製造物は、乾燥新芽、新鮮新芽、冷凍新芽、焼き新芽、煮込み新芽、油で揚げられた新芽、押出し成形された新芽、すりつぶされた新芽、マリネにされた新芽、および、ピクルスにされた新芽からなる群から選択される。
【0056】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【図1A−F】図1A〜図1Fは、本教示の食品調製物がザクロ果実から作製される例示的なプロセスを例示するフローチャートである。このプロセスは1kgの新鮮なザクロ果実から始まり(図1A)、その新鮮な果汁を抽出することができる(図1B)。約50gの種子を、皮および廃棄物からの分離(図1D)によって果汁抽出残渣から得ることができる(図1C)。次いで、これらの50gの種子を発芽させ(これは、例えば、本明細書中下記の材料および方法の節において記載される)、約150gのザクロ新芽を作製する(図1E)。その後、食品調製物が、例えば、凍結乾燥もしくは浸透脱水によって、または、新芽全体もしくは子葉のみのホモジネート化によってこのザクロ新芽から製造される(図1F)。注目すべきことに、乾燥により、およそ20g〜30gの乾燥物が得られ、浸透脱水により、およそ30g〜35gの乾燥物が得られ、一方、ホモジネート化により、およそ150gのザクロ全体由来のホモジネート、または、およそ50gの子葉由来のホモジネートが得られる。重要なことに、これらの新芽調製物は、同じ果実から得られるザクロ果汁に加えて得られる(+符号によって示される)。
【図1G−I】図1G〜図1Iは、本教示のいくつかの実施形態と比較される、(例えば、背景の節において記載される)従来の方法によるザクロ果汁の作製を比較するフローチャートである。図1Gは、果汁を果実全体または仮種皮から絞ることによってザクロ果汁を製造するための従来法を示す。このザクロ果汁は、水溶性の抗酸化物質が豊富であるが、親油性の抗酸化物質(例えば、ビタミンE)を全く有しない;図1Hは、種子抽出物(種子油)がザクロ果汁に加えられる別の従来法を示す。この添加により、果汁は親油性の抗酸化物質が富化されるが、総抗酸化活性に対する大きな影響はなく、また、苦い味覚が果汁に加わることがある;図1Iは、本教示のいくつかの実施形態による方法を示す。例えば、ザクロ新芽調製物をザクロ果汁に加えることにより、果汁は、親油性抗酸化物質が富化され、総抗酸化活性が2倍になる。
【図2】図2A〜図2Bは、ザクロ新芽の出現を示す画像である。図2Aは、子葉、胚軸(胚の茎)および幼根(胚の根)を含むザクロ新芽を示す。図2Bは、多孔性パーライト基体におけるザクロ新芽の成長を示す。
【図3】ブロッコリー、アルファルファおよびダイズに由来する他の市販されている生育新芽と比較されるザクロ新芽の抗酸化活性を示す棒グラフである。すべての新芽を同じ生育条件のもとで成長させた。
【図4】図4A〜図4Cは、ザクロ新芽に対する成長段階および照明条件の影響を示す図である。図4Aは、種子から新芽までの異なる成長段階におけるザクロ新芽の抗酸化活性を示す線グラフである。さらに、グラフは、新芽の抗酸化活性に対する照明の影響を例示する。図4B〜図4Cは、ザクロ新芽の出現を、暗所で終始成長させた場合(図4B)、または、日光に3時間さらすこと、その後、暗所でさらに24時間成長させた場合(図4C)において示す画像である。
【図5】図5A〜図5Jは、親油性抗酸化物質および親水性抗酸化物質を、それらの活性を測定するためのザクロ新芽またはザクロ新芽調製物から抽出するために使用されたプロセスを概略的に示すフローチャートである。図5A〜図5Bは、酢酸塩緩衝液(pH4.3)においてホモジネート化された新鮮なザクロ新芽を示す;図5Cは、3回の連続する一連のアセトンによるホモジネートの抽出/脱水(それぞれの工程の後で、遠心分離および上清の回収が行われる)を示す;図5Dは、3回の抽出からのアセトン−水の上清画分をプールすることを示す;図5Eは、脱水されたペレットをヘキサンで3回抽出することを示し、上清を回収してプールした;図5Fは、微量の親油性化合物を、ヘキサンとの分配によって、プールされたアセトン−水抽出物から抽出することを示す;図5G〜図5Hは、微量の親水性化合物を抽出するために水との別の分配に供される、この操作から得られた非極性画分を示す;図5I〜図5Jは、得られた2つのサンプル、すなわち、親水性画分(水/アセトン抽出物、図5I)および親油性画分(ヘキサン抽出物、図5J)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、ザクロの新芽、および、ザクロの新芽に由来する調製物に関連し、より具体的には、特に限定されないが、それらの使用に関連する。
【0059】
本発明の原理および操作は、図面および添付された説明を参照してより良く理解することができる。
【0060】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるまたは実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行される。また、本明細書中で用いられる表現および用語は説明のためであり、従って限定として見なされるべきではないことを理解しなければならない。
【0061】
本発明を実施に移しているとき、本発明者らは、ザクロ新芽およびザクロ新芽由来の調製物が、渋さまたは苦さを伴うことなく、抗酸化活性の格段に高い供給源を含むことを発見している。この抗酸化活性は親水性抗酸化物質および親油性抗酸化物質の両方を含み、ザクロの果実または種子、ブロッコリーの新芽、アルファルファの新芽、ダイズの新芽、イチゴおよびアボカドの果実の抗酸化活性よりも著しく高い。従って、ザクロ新芽およびザクロ新芽由来の調製物は、高い栄養価を含む食品製造物、飼料製造物および/または食品添加物として役立ち得る。
【0062】
本明細書中下記で、また、下記の実施例の節で示されるように、本発明者らは、暗所、明所、暗所サイクル(図4A)で生育させられる本発明のザクロ新芽(図2A〜図2B)がおよそ75μM TE/g新鮮重量の総抗酸化活性を含むことを示している。この抗酸化活性は、ブロッコリー、ダイズおよびアルファルファの新芽の抗酸化活性の10倍であり(図3)、イチゴ果実の抗酸化活性の3倍〜4倍であり(表2、本明細書中下記)、アボカド果実よりも著しく高い(表2、本明細書中下記)。本発明の様々なザクロ新芽の抗酸化活性は親水性成分(例えば、ビタミンC、フェノール系化合物)および親油性成分(例えば、ビタミンE、カロテノイド類)を含み、これらのザクロ新芽から得られる調製物は抗酸化物質の豊富な供給源を提供する。ザクロ新芽調製物は、ビタミンCおよびビタミンE、フェノール系化合物(これには、没食子酸、エラグ酸、プニカラギン類、フラボノイド類が含まれる)を含めて、親水性抗酸化物質および親油性抗酸化物質の両方を含むことが示された(本明細書中下記の表1〜表3、および、図1A〜図1Iを参照のこと)。これらの発見のすべてが、食品製造物、飼料製造物および/または栄養補助食品として使用されるザクロ新芽およびザクロ新芽由来の調製物の使用を実質的なものにしている。
【0063】
従って、本発明の1つの態様によれば、ザクロ新芽調製物を製造する方法が提供され、この場合、この方法は、ザクロ新芽を提供すること、および、そのザクロ新芽を加工し、それにより、ザクロ新芽調製物を製造することを含む。
【0064】
本明細書中で使用される用語「ザクロ」は、プニカ・グラナツム(Punica granatum)と交換可能に使用される。
【0065】
本明細書中で使用される用語「ザクロ新芽」は、発芽中の種子から、少なくとも2枚の葉(すなわち、子葉)を有する幼植物体にまでおよぶザクロ植物の成長段階を示す。本教示によるザクロ新芽は、少なくとも1対の子葉、胚軸(胚の茎)および幼根(胚の根)、または、新芽全体を含む。
【0066】
本明細書中で使用される語句「ザクロ新芽調製物」は、植物膜の少なくとも何らかの破壊が存在する、ザクロ新芽に由来する組成物を示す。
【0067】
ザクロ新芽は下記のように製造することができる。本方法は、ザクロの種子を、新芽が現れるまで暗所で発芽させること;その新芽を光にさらし、その結果、光にさらされた新芽を得ること;光にさらされた新芽を暗所でインキュベーションすること;および、そのザクロ新芽を収穫し、それにより、ザクロ新芽を製造することを含む。
【0068】
ザクロの種子は、例えば、www.thompson−morgan.com、http://seedrack.comから市販されている。
【0069】
あるいは、ザクロの種子を、仮種皮だけまたはザクロ果実全体のどちらかから得ることができる。仮種皮が、皮を分離した後でザクロから得られ、その後、(下記で詳しく記載されるように、また、図1A〜図1Dに記載されるように)、仮種皮が、果汁を得るために取り出され、種子が、残留する果肉残渣から分離される。種子が、ザクロ果実全体から得られることになる場合、果実全体(皮を含む)が、典型的には、果汁を抽出するために最初に圧搾され、その後、種子が、残留する果肉残渣を含む全ザクロ廃棄物から分離される。
【0070】
次いで、種子は、果汁を含む残留果肉物からの分離によってきれいにされ、種皮が、例えば、アルカリ消化(例えば、20%のアルカリ溶液、例えば、NaOHまたはKOHなど)を使用して薄くされ、種子が、部分的に消化された果肉から、粗い表面に対して擦ることによって機械的に分離される。そのようなプロセスは、種子が(種子の発芽能に影響を及ぼし得る)40℃を超えて加熱されることを防止するために、低温条件下(例えば、氷中)で行われることが得策である。発芽のための種子を中和し、得るために、硫酸を使用することができ、その後、水による洗浄が行われる。種子は、さらなる重量変化が観測されなくなるまで(重量測定精度、50gの種子サンプルあたり±0.1g)、典型的には2日間〜3日間、約22℃〜28℃で大気中で乾燥することができる。これらの種子は、発芽のために使用可能な状態であり、1年間〜2年間に至るまで約4℃で貯蔵することができる。
【0071】
次いで、種子は、子葉を伴った新芽が現れるまで暗所において、(本明細書中下記の実施例の節の実施例1で詳しく記載されるように)制御された温度および湿度で、空気の利用を可能にする、(詳しくは本明細書中下記で記載されるように)生育培地に浸された固体担体に(例えば、1cmあたり4個〜5個の種子の密度で)播かれる。典型的には、子葉を伴った新芽が、6日〜21日の範囲、6日〜18日の範囲、または、6日〜13日の範囲で現れる。1つの例示的な実施形態において、この範囲は6日〜18日を含む。
【0072】
ザクロ新芽を発芽させるための1つの好適な生育培地は典型的には、水(例えば、水道水)を単に含有するだけである。水道水の地域特性に依存して、水のさらなる精製が、水から塩分を除くために、および/または、塩素、有機残渣もしくは他の混入物を除くために要求される場合がある。例示的な実施形態において、水は微生物混入物を含まない。
【0073】
典型的には、ザクロ新芽は、空気の利用を提供する非栄養性の固体担体において、例えば、水が供給されたスポンジ、スポンジ様物体、寒天、網、ペーパータオル、吸取紙、バーミキュライト、パーライトなどにおいて発芽し続ける。さらに、非栄養性の固体担体は、例えば、オランダ国特許第1001570号に記載されるなどのパッド、シートまたは粒子の形態で適用され得るセルロースを含むことができる。
【0074】
ザクロ新芽の発芽は典型的には、15℃〜35℃の範囲の温度、20℃〜30℃の範囲の温度、または、22℃〜27℃の範囲の温度で行われる。そのうえ、ザクロの種子は、少なくとも70%の高湿度、少なくとも80%の高湿度、少なくとも90%の高湿度、または、少なくとも100%の高湿度で発芽される。1つの例示的な実施形態において、湿度は少なくとも90%である。発芽は好適には、本明細書中に開示されるような制御された温度および湿度を有する発芽用の小部屋または発芽室において行われる。発芽は、巻いた子葉が種皮から現れる新芽の段階まで行われ、典型的には、種皮が新芽から落ちるまで行われる。
【0075】
発芽後、ザクロ新芽は光にさらされ、その結果、露光された新芽が得られる。用いることができる例示的な光のnm範囲には、280nm〜750nmが含まれ、これは、日光、人工光または紫外光に対応する。例えば、ザクロ新芽を、日中の任意の時間において、また、任意の天候条件のもとで、日光が届く任意の場所(すなわち、室内または屋外)に置くことができる。同様に、ザクロ新芽は、例えば、かすかな室内光または薄暗い光を含めて、人工光にさらすことができ、例えば、波長が380nm〜750nmにおよび、放射照度が少なくとも20W/cm、少なくとも30W/cm、少なくとも40W/cm、または、少なくとも50W/cmである人工光にさらすことができる。さらに、ザクロ新芽は、波長が280nm〜400nmにおよぶ紫外光、または、波長が280nm〜315nmにおよぶ紫外光(すなわち、UV−B)、または、波長が315nm〜400nmにおよぶ紫外光(すなわち、UV−A)にさらすことができる。1つの例示的な実施形態によれば、新芽は、約10℃を超える温度で光にさらされる。
【0076】
本教示によれば、ザクロ新芽は、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、または、少なくとも8時間、光にさらされる。
【0077】
露光後、ザクロ新芽は、(本明細書中下記で詳しく記載される)最大の抗酸化活性を有するザクロ新芽を得るように、暗所でさらにインキュベーションされる。そのようなインキュベーションは、少なくとも6時間、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、または、少なくとも48時間、行うことができる。
【0078】
ザクロ新芽が発芽し、成長すると、ザクロ新芽が収穫される。ザクロ新芽の収穫は、新芽全体(子葉、胚軸および幼根を含む)を集めることによる基体からの分離によって行われる。あるいは、ザクロ新芽の一部を切り取ることができる(例えば、子葉、子葉と胚軸、など)。ザクロ新芽の収穫は、切断、引抜き、摘み取りまたはもぎ取り(これらに限定されない)を含めて、当該分野で知られているいずれかの方法を使用して行うことができる。ザクロ新芽を収穫する前に、新芽の成長が、例えば、ザクロ新芽を約4℃に約7日間にわたって冷却することによって停止させられ得ることが理解される。さらに、ザクロ新芽を収穫した後で、収穫物は、(本明細書中下記でさらに詳しく記載されるように)消費または加工の前の冷却された環境で維持することができる。
【0079】
本明細書中上記で述べられたように、ザクロ新芽が手元に得られた後、新芽はそのままで使用することができ、または、抗酸化物質が豊富な調製物を製造するためにさらに加工することができる。
【0080】
本明細書中で使用されるように、用語「抗酸化物質」は、酸化反応を阻害、防止、低下、または、改善することができる物質の一群をいう。例示的な抗酸化物質には、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE、ビタミンA、B群ビタミン(例えば、ビタミンB)、フラボノイド類、セレンおよびカロテノイド類(例えば、β−カロテン)が含まれる。
【0081】
本明細書中で使用されるように、語句「抗酸化活性」は、フリーラジカル(例えば、生理学的環境で見出されるフリーラジカルなど)を中和する作用をいう。
【0082】
ザクロ新芽は、本明細書中上記で記載されたように、その全体を加工することができる。あるいは、ザクロ新芽の、抗酸化物質が多い部分を加工することができる(例えば、子葉など)。新芽は典型的には、例えば、乾燥、ホモジネート化、破砕または抽出を行うことによって加工することができる。新芽を加工するための様々な方法が当該分野では広く知られており(例えば、米国特許第6,686,517号、米国特許第5,725,895号、国際公開WO2004/043886(これらは参照によって本明細書中に組み込まれる)を参照のこと)、これらは同様に、本発明のザクロ新芽に適用することができる。
【0083】
従って、本教示によれば、ザクロ新芽を乾燥することができる。当該分野で知られているいずれかの乾燥プロセスを、新芽を乾燥するために使用することができ、例えば、浸透脱水、凍結乾燥、不活性ガス乾燥、空気乾燥または真空乾燥などを使用することができる。
【0084】
例えば、ザクロ新芽は、バイオマスが重量で5%未満の水分を含有するまで、ザクロ新芽を市販の空気乾燥機に入れることによって約50℃で空気乾燥することができる。あるいは、凍結乾燥を、例えば、オイルの酸敗化のために、空気乾燥に対して感受性である新芽のために使用することができる。新芽は、バイオマスが重量で5%未満の水分を含有するまで、新芽を真空乾燥機に入れることによって凍結乾燥することができ、また、真空下で凍結されて乾燥することができる。
【0085】
乾燥された新芽は、バルク固体物としてさらなる加工のために貯蔵されるか、または、所望されるメッシュサイズの粉末に粉砕することによって顆粒化形態もしくは粉末形態にさらに加工される。
【0086】
あるいは、ザクロ新芽をホモジネート化することができる。当該分野で知られている方法はどれも、ザクロ新芽をホモジネート化するために用いることができる。例えば、新芽を、(液体の緩衝液を何ら加えることなく)そのままの状態でホモジネート化することができ、または、例えば、プロテアーゼ阻害剤を含む場合があるホモジネート化緩衝液が補充されてホモジネート化することができ(例えば、国際公開WO2004/043886を参照のこと)、または、チンキ剤を形成するために等体積のエタノールを加えてホモジネート化することができる。任意のタイプのホモジナイザーを使用することができ、例えば、ブリンクマン・ポリトロン・ホモジナイザー(例えば、米国特許第5968567号を参照のこと)を使用することができる。
【0087】
本教示の例示的な実施形態では、食品用有機酸(例えば、クエン酸)が、ザクロ新芽のホモジネート化を達成するために、約0.5%〜3%の濃度または約1%〜2%の濃度で加えられる。本教示ではまた、50mMの濃度での酢酸塩緩衝液(pH4.3)におけるホモジネート化が適用される。他の食品用有機酸、例えば、酢酸、乳酸、リンゴ酸、リン酸、塩酸、アスコルビン酸などもまた、本教示に従って加えることができる。
【0088】
得られたホモジネート化物は、典型的には液体形態またはペースト形態であり、得られたホモジネート化物から特定のタンパク質および/または分画物(例えば、親油性抗酸化物質または親水性抗酸化物質)を抽出および/または精製するためにさらに使用することができる。親水性分画物および親油性分画物を抽出するために当該分野で知られている方法はどれも適用することができる。例えば、アセトンおよびヘキサンを使用する段階的抽出と、水溶性部分および水不溶性部分の繰り返される分配とを用いる方法(これは本明細書中下記の実施例の節で詳しく記載される)を使用することができる。同様に、タンパク質を抽出するために当該分野で知られている通常の条件および技術はどれも適用することができる(例えば、抽出、沈殿化)。
【0089】
抽出はまた、例えば、極性有機溶媒または非極性有機溶媒を使用することなどによって行うことができる。
【0090】
本明細書中上記で言及されたように、また、下記の実施例の節で詳しく示されるように、ザクロ新芽およびザクロ新芽由来の調製物は、高い栄養価を提供し、特に、抗酸化活性の豊富な供給源である。
【0091】
ザクロ新芽は、抗酸化活性を、1グラムの新鮮重量の新芽物あたり少なくとも20μMトロロックス当量(TE)、少なくとも30μM TE、少なくとも40μM TE、少なくとも50μM TE、少なくとも60μM TE、少なくとも70μM TE、または、少なくとも80μM TEのレベルで含むことが理解される。同様に、ザクロ新芽調製物は、抗酸化活性を、1グラムの新鮮重量の新芽物あたり少なくとも20μM TE、少なくとも30μM TE、少なくとも40μM TE、少なくとも50μM TE、少なくとも60μM TE、少なくとも70μM TE、または、少なくとも80μM TEのレベルで含む。
【0092】
本発明の具体的な実施形態によれば、ザクロ新芽およびザクロ新芽調製物は親水性抗酸化物質および親油性抗酸化物質の両方を含む。
【0093】
本明細書中で使用されるように、用語「親水性抗酸化物質」は、油性媒体よりも水性媒体において大きい溶解度を有する抗酸化化合物をいう。例示的な親水性抗酸化物質には、ビタミンCおよびフェノール系化合物(これには、没食子酸、エラグ酸、プニカラギン類およびフラボノイド類が含まれる)が含まれる。
【0094】
本明細書中で使用されるように、用語「親油性抗酸化物質」は、水性媒体よりも油性媒体において大きい溶解度を有する抗酸化化合物をいう。例示的な親油性抗酸化物質には、ビタミンEファミリーおよびカロテノイド類が含まれる。
【0095】
具体的な実施形態によれば、ザクロ新芽またはザクロ調製物における親水性抗酸化物質の活性は、1グラムの新鮮重量あたり少なくとも30μM TE、少なくとも50μM TE、少なくとも70μM TE、少なくとも90μM TE、少なくとも110μM TE、少なくとも130μM TE、少なくとも150μM TE、または、少なくとも200μM TEを含む。
【0096】
本発明の親水性抗酸化物質はビタミンC(アスコルビン酸)を含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、ザクロ新芽またはザクロ調製物におけるビタミンCの含有量は、1グラムの新鮮重量あたり少なくとも0.1mg、少なくとも0.2mg、少なくとも0.3mg、少なくとも0.4mg、または、少なくとも0.5mgを含む。
【0097】
本発明の親水性抗酸化物質はさらに、没食子酸、エラグ酸、プニカラギンAおよびプニカラギンB(エラグタンニン)、ならびに、フラボノイド類(遊離型および結合型)をはじめとするフェノール系化合物を含む。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ザクロ新芽またはザクロ調製物における総フェノール系化合物の含有量は、1グラムの新鮮重量あたり少なくとも7の没食子酸当量(GAE)、少なくとも8のGAE、少なくとも9のGAE、少なくとも10のGAE、少なくとも20のGAE、少なくとも30のGAE、少なくとも40のGAE、または、少なくとも60のGAEを含む。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ザクロ新芽またはザクロ調製物における没食子酸の含有量は、1グラムの乾燥重量あたり少なくとも12mg、少なくとも14mg、少なくとも16mg、少なくとも18mg、または、少なくとも20mgを含む。
【0100】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ザクロ新芽またはザクロ調製物におけるプニカラギン類の含有量は、1グラムの乾燥重量あたり少なくとも1mg、少なくとも2mg、少なくとも3mg、少なくとも4mg、少なくとも5mg、または、少なくとも6mgを含む。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ザクロ新芽またはザクロ調製物におけるフラボノイド類の含有量は、1グラムの乾燥重量あたり少なくとも15mg、少なくとも17mg、少なくとも19mg、少なくとも21mg、または、少なくとも23mgを含む。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ザクロ新芽またはザクロ調製物におけるエラグ酸の含有量は、1グラムの乾燥重量あたり少なくとも17mg、少なくとも19mg、少なくとも21mg、少なくとも23mg、少なくとも25mg、または、少なくとも27mgを含む。
【0103】
1つのさらなる実施形態によれば、ザクロ新芽およびザクロ調製物は親油性抗酸化物質を含む。ザクロ新芽またはザクロ調製物における親油性抗酸化物質の活性は、1グラムの新鮮重量あたり少なくとも0.1μM TE、少なくとも0.2μM TE、少なくとも0.4μM TE、少なくとも0.6μM TE、少なくとも0.8μM TE、または、少なくとも2.0μM TEを含む。
【0104】
本発明の親油性抗酸化物質はビタミンEを含む。本発明のいくつかの実施形態によれば、ザクロ新芽またはザクロ調製物におけるビタミンEの含有量は、1グラムの新鮮重量あたり少なくとも0.1mg、少なくとも0.2mg、少なくとも0.3mg、少なくとも0.4mg、または、少なくとも0.5mgを含む。
【0105】
本発明の親油性抗酸化物質はさらにカロテノイド類を含む。
【0106】
本教示によれば、理論にとらわれることはないが、抗酸化物質の種々のレベルおよび活性が種々のザクロ新芽調製物において存在することが理解される。従って、親水性抗酸化物質および親油性抗酸化物質の最大レベルが、乾燥された調製物において、特に、凍結乾燥された調製物において示される。さらに、子葉のホモジネートが、新芽全体のホモジネートと比較して、親水性抗酸化活性および親油性抗酸化活性のより大きいレベルを示す。
【0107】
抗酸化性レベルは、当該分野で知られているいずれかの方法を使用して求めることができ、そのような方法には、本明細書中下記の実施例1で記載されるようなTEAC(トロロックス当量抗酸化能)、TRAP(総ラジカル捕捉抗酸化パラメーター)およびFRAP(第二鉄還元抗酸化力)が含まれる(例えば、Pellegriniら、J Nutr.(2003) 133:2812〜2819を参照のこと)。これらの抗酸化性レベルは、ザクロ新芽およびザクロ新芽由来の調製物に存在する抗酸化物質の総レベルに関連する。親水性化合物および親油性化合物についての抗酸化性レベルを求めるための方法には、TEAC法およびORAC(酸素ラジカル吸収能)法が含まれる[例えば、Huangら、J.Agric.Food Chem.(2002) 50:1815〜1821を参照のこと]。
【0108】
ザクロ新芽およびザクロ調製物は、オイル(少なくとも3%w/w、少なくとも5%w/w、少なくとも7%w/w、少なくとも9%w/w、少なくとも10%w/w、少なくとも15%w/w、少なくとも20%w/w、または、少なくとも30%w/w)をさらに含み、また、栄養繊維(nutritional fiber)をさらに含むことが理解される。
【0109】
本発明のさらなる態様において、ザクロ新芽またはザクロ由来の調製物は食品製造物または飼料製造物に含まれる(例えば、乾燥物、液体、ペースト)。食品製造物または飼料製造物は、本発明のザクロ新芽もしくはその一部分、または、これらの新芽から作製される調製物を含有する何らかの摂取可能な調製物である。従って、本発明の新芽または調製物は、ヒト(または動物)が消費するために好適である。すなわち、本発明の新芽または調製物は食用に適する。本発明の飼料製造物はさらに、動物が消費するために適合化された飲料物を含む。
【0110】
ヒトが消費するために、新芽は典型的には土壌を含まない。本明細書中上記で記載されたように、ザクロ新芽は典型的には、土壌で生育させるのではなく、水が補充された固体担体(例えば、スポンジ)で生育させる。従って、通常、そのような新芽は、食用に適さない土壌を除くために洗浄される必要がない。新芽が粒子状の固体担体(例えば、土壌、バーミキュライト、パーライトまたはセルロースなど)で生育される場合、洗浄することが、ヒトが消費するために好適な新芽を達成するために要求され得る。
【0111】
そのようなザクロ新芽は、輸送および販売のための好適な容器に詰めることができる。典型的には、そのような容器は、濡れたパットを底に含有し、時には保存剤を含有するプラスチック製の箱または瓶である。輸送のために、光にさらされることを制限し、一方で、機械的保護バリアを提供する容器を使用することができる。販売のためには、光が通り抜けることを可能にし、また、機械的保護バリアを提供する容器が使用される場合がある。容器は典型的には、複数のそのような新芽を含有し、この場合、新芽は好ましくは、消費できる状態にある。容器は、1cmあたり少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、または、少なくとも8個、または、少なくとも10個のザクロ新芽を含有することができる。本発明のザクロ新芽を含有する食品製造物は、多様なタイプの容器(例えば、とりわけ、瓶、袋および箱など)で貯蔵および輸送することができる。
【0112】
ザクロ新芽はそのままで消費され得ることが理解される。これらの新芽は、引きつけるような味覚を有しており、そのまま食することができ、あるいは、フレッシュサラダ、飲物またはサンドイッチを作るために使用することができる。あるいは、新芽は、消費する前に乾燥、加熱調理、煮ること、冷凍、焼くこと、煮込むこと、油で揚げること、押出し成形、すりつぶし、マリネ、凍結乾燥、または、ピクルスにすることができる。
【0113】
同様に、ザクロ新芽調製物は、そのままで(例えば、スプレッドとして)消費することができ、あるいは、既存の食品製造物または新しい食品製造物に加えることができる。ザクロ食品製造物を含む例示的な食品製造物には、パン、ゼリー、ソース、シロップ、レリッシュ、ワイン、茶、スープ、シリアル、フレーク、バー、スナック、スプレッド、ペースト、ディップ、細粉物、ポリッジ、飲料物、カクテル、輸液、浸出液、チンキ剤、抽出物、チューインガム、チョコレート、デザート、アイスクリームおよび果汁が含まれるが、これらに限定されない。様々な方法が、そのような製造物を食品に添加または配合するために当業者には知られている。例えば、
www.palvelu.fi/evi/files/55_519_470.pdf
を参照のこと。
【0114】
本発明のザクロ新芽は、飼料製造物としてそのまま使用することができ、あるいは、消費のために飼料製造物と配合され得るか、または、飼料製造物と混合され得ることが理解される。ザクロ新芽またはザクロ調製物を含む例示的な飼料製造物には、穀粒、シリアル(例えば、オートムギ(例えば、ブラックオート)、オオムギ、コムギ、ライムギ、モロコシ、トウモロコシなど)、野菜、マメ科植物(特に、ダイズ)、根菜およびキャベツ、または、生草(例えば、牧草または干し草など)が含まれるが、これらに限定されない。
【0115】
本明細書中上記で述べられたように、本発明のザクロ新芽およびザクロ調製物は無味であるか、または、特有の味を有しないかのどちらかであり、料理もしくはレシピに対する味不活性な補助物として都合良く使用することができ、または、時には、新しい風味をレシピおよび料理に加えるために使用することができる。そのうえ、本発明のザクロ新芽調製物は、食品の栄養価を親水性抗酸化物質および親油性抗酸化物質の組合せにより高めるための食品添加物として使用することができる。
【0116】
本発明の食品製造物または飼料製造物はまた、さらなる添加物(例えば、甘味剤、風味剤、着色剤、保存剤、栄養添加物(例えば、ビタミンおよびミネラルなど)、香辛料、アミノ酸(すなわち、必須アミノ酸)、乳化剤、pH制御剤(例えば、酸味剤など)、親水コロイド、消泡剤および離型剤、粉改良剤または粉補強剤、ふくらまし粉または膨張剤、凝集剤、ガスおよびキレート化剤など)を含むことができ、それらの有用性および効果が当該分野では広く知られている。Merriani−Webster’s Collegiate Dictionary(第10版、1993年)を参照のこと。
【0117】
本発明の抽出物または化合物を含む組成物はさらに、1つ以上の消費可能なキャリアを使用する栄養補助食品として投与するために製剤化することができる。「消費可能なキャリア」は、本明細書中では、任意の食品、食品成分または食品添加物として、または、ヒト使用のためであれ、もしくは動物使用のためであれ、経口投与のための活性な薬剤の錠剤化、カプセル化または他の製剤化のために利用される任意の賦形剤として定義される。様々な具体的な添加物が当業者には広く知られており、様々なところに、例えば、米国薬局方などに列挙される。栄養補助食品については、抽出物を、当該分野では常套的な方法に従って混合することができる。栄養補助食品を、液体、粉末または固体ピルの形態(これらに限定されない)を含めて、様々な形態で調製することができる。
【0118】
本発明のザクロ新芽およびザクロ調製物は全体的な健康のために消費することができるが、酸化ストレスに関連する状態(例えば、アテローム性動脈硬化、糖尿病、ガン、心臓血管疾患、肝臓疾患など)の影響を受けやすい対象者にとって、また、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病など)を発症する危険性がある個体にとって特に好都合であり得る。
【0119】
本出願から成熟する特許の存続期間の期間中には、多くの関連する抗酸化剤が開発されることが予想され、抗酸化剤の用語の範囲は、すべてのそのような新しい技術を先験的に包含することが意図される。
【0120】
本明細書で使用する場合、用語「約」は±10%を示す。
【0121】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0122】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0123】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0124】
本明細書で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0125】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0126】
数値範囲が本明細書で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0127】
本明細書で使用される場合、用語「方法」は、与えられたタスクを達成するための様式、手段、技術および手順を意味し、限定されないが、化学、薬理学、生物学、生物化学、および医学の分野の当業者に知られているかまたはその当業者が既知の様式、手段、技術および手順から容易に開発する方式、手段、技術および手順を含んでいる。
【0128】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0129】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0130】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0131】
(実施例1)
抗酸化物質の格段に優れた供給源としてのザクロ新芽およびザクロ新芽由来の調製物
材料および実験手法
ザクロ新芽を得る方法および抗酸化性食品調製物をザクロ新芽から調製する方法
【0132】
下記の工程を、抗酸化性調製物をザクロ新芽から製造するために行った:
およそ50gのザクロ種子を1kgの新鮮なザクロ果実から得た。
【0133】
ザクロ種子を、アルカリ消化を使用する果汁含有果肉残渣物からの分離によってきれいにした。すなわち、10mlの20%アルカリ溶液(NaOHまたはKOH)を、果肉物および種子を含む果汁絞り後のおよそ70gの残渣に加えた。種子の発芽能に影響を及ぼし得る40℃を超えて塊が加熱されることを防止するために、その塊を(氷浴で保たれた容器において)冷却条件のもとで十分に混合し、その後、種子を、部分的に消化された果肉から、粗い表面に対して擦ることによって機械的に分離した。硫酸(5N)を中和のためにその塊に加え、得られた種子を水で洗浄した。全てが一緒になって、アルカリ消化および機械的皮剥離により、種皮の薄化がもたらされた。
【0134】
この種子は、使用まで、すなわち、1年〜2年に至るまで約4℃で貯蔵された。
【0135】
種子を、水道水を染み込ませた多孔性のスポンジ様基体において、巻いた子葉が種皮から現れる新芽の段階まで、典型的には、種皮が新芽から落ちるまで暗所において22℃〜27℃で発芽させた。
【0136】
次いで、新芽を、3時間〜5時間、明るい日光、かすかな室内光、または、長波長の紫外線照射にさらした。
【0137】
新芽を、さらに約24時間〜48時間、暗所において18℃〜21℃でインキュベーションした。
【0138】
子葉を(抗酸化性の調製物を製造するために、別々に、胚軸の上部分と一緒に、または、新芽全体に含まれて)収穫することを、下記の方法の1つをさらに用いて、基体からの分離および/または新芽からの切り取りによって行った。
【0139】
半液体のペースト様ホモジネートを得るための、食品用有機酸(クエン酸)を0.2%w/wの濃度で加えることによる収穫物全体のホモジネート化。
【0140】
乾燥を、粉末にさらに粉砕されるか、または、顆粒として残される顆粒化された乾燥物を得るために、真空乾燥、凍結乾燥または浸透脱水によって、収穫された新芽組織との直接的な空気接触を伴うことなく行った。
【0141】
総抗酸化活性の測定
TEAC(トロロックス当量抗酸化能)アッセイ
この方法は、先に記載されたように行われ[Vinokur,Y.およびRodov,V.(2006).Acta Horticulturae 709:53〜60]、抗酸化性分子が長寿命のABTS・(特徴的な吸収を734nmに有する青緑色の発色団)を消去する能力に基づいており、この能力がトロロックス(水溶性のビタミンEアナログ)の能力と比較された。事前に形成されたラジカルカチオンに抗酸化物質を加えることにより、このラジカルカチオンがABTSに還元され、これにより、脱色が測定される。ABTS・ラジカルカチオンを生成させるための反応混合物は、0.1%の硫酸により酸性化されたエタノール中に0.15mMの2,2’−アジノ−ビス−(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)ジアンモニウム塩(ABTS)および0.075mMのラジカル開始剤2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(AAPH)を含有した。脱色試験を、10μLの試験サンプルを1mLのABTS・の酸性化エタノール溶液に加えることによってプラスチック製キュベットにおいて行い、室温での15分のインキュベーションの後で734nmにおける光学的濃度として、ブランクサンプルとの比較で測定した。6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸(トロロックス、ビタミンEの水溶性誘導体)の1mM溶液を、1gの新鮮重量あたりのトロロックスのμMの単位でトロロックス当量抗酸化能(TEAC)として表した。
【0142】
親油性抗酸化活性および親水性抗酸化活性の測定
この手法が、先に記載されたように行われた[Vinokur,Y.およびRodov,V.(2006).Acta Horticulturae、709:53〜60]。簡単に記載すると、TEACアッセイの前に、親水性画分および親油性画分を、予備的な乾燥を行うことなく、(図5A〜図5Jに詳しく示されるように)ザクロ新芽から抽出した。この手法は、酢酸塩緩衝液、アセトンおよびヘキサンによる新芽の段階的抽出、ならびに、水溶性部分および水不溶性部分の繰り返される分配に基づいていた。最初に、新鮮なザクロ新芽を酢酸塩緩衝液(pH4.3)においてホモジネート化し、ホモジネートを、3回の連続する一連のアセトンにより抽出/脱水した(それぞれの工程の後で、遠心分離および上清の回収が行われた)。3回の抽出から得られるアセトン−水の上清画分をプールした。アセトン抽出後、脱水されたペレットをヘキサンで3回抽出し、それぞれの上清を集め、プールした。微量の親油性化合物を、ヘキサンとの分配によって、プールされたアセトン−水抽出物から抽出した。この操作から得られる非極性画分を、微量の親水性化合物を抽出するために水との別の分配に供した。分画物をプールした後、親水性画分(アセトン/水抽出物)および親油性画分(ヘキサン抽出物)の2つのサンプルを得た。分配段階まで、1つの新芽サンプルについての抽出工程のすべてが1本の遠心分離用試験管で行われた。分配には、サンプルあたり2本の試験管が必要であった。
【0143】
結果
本発明の教示を使用して、1キログラムのザクロ果実につき、約50gの種子が得られ、この種子を使用して、約150gのザクロ新芽が作製され、このザクロ新芽は、収穫したとき、約150gのホモジネートの食品調製物または20グラム〜30グラムの乾燥された食品調製物をもたらした(図1A〜図1Fを参照のこと)。表1(下記)に示されるように、得られた調製物(ホモジネートタイプまたは乾燥されたタイプ)は、親水性抗酸化物質およびフェノール系化合物が、新鮮なザクロ果実の可食部と比較して、または、ザクロ種子と比較して、50倍に至るまで富化された。これらの調製物はまた、ザクロ果汁の総抗酸化活性を少なくとも2倍高め(図1G〜図1Iを参照のこと)、また、ザクロ果汁と比較して、親水性抗酸化物質、親油性抗酸化物質およびフェノール系化合物の著しくより高いレベルを有した。
【0144】

【0145】
本教示に従って作製されたザクロ新芽(図2A〜図2B)はまた、抗酸化活性が非常に高まることが見出された。新鮮なザクロ新芽の総抗酸化活性はおよそ75μM TE/g新鮮重量であり、これは、ブロッコリー、ダイズおよびアルファルファの新芽の総抗酸化活性の10倍〜30倍であった(図3)。そのうえ、新鮮なザクロ新芽の抗酸化活性はイチゴ果実(ヒトの食事における豊富な抗酸化物質供給源の1つ)の抗酸化活性の3倍〜4倍であった(表2、下記)。ザクロ新芽の総抗酸化活性は他の栄養製造物の総抗酸化活性よりも著しく高く、例えば、オートムギの朝食用シリアル(3.1μM TE/g)、小麦ふすまタブレット(4.7μM TE/g)、シバムギタブレット(9.0μM TE/g)、トマトソース(1.4μM TE/g)、白ごま(皮を取った後、4.4μM TE/g)およびヒヨコマメ(2.3μM TE/g)などよりも著しく高かった。まとめると、本発明のザクロ新芽およびザクロ新芽由来の調製物は非常に高い抗酸化活性を含む。
【0146】

【0147】
実施例2
ザクロ新芽における抗酸化物質のレベルが成長段階および照明によって影響される
材料および実験手法
ザクロ新芽を得る方法および抗酸化性食品調製物をザクロ新芽から調製する方法
実施例1(上記)に記載される通り。
【0148】
抗酸化活性の測定
実施例1(上記)に記載される通り。
【0149】
結果
ザクロ新芽の抗酸化活性が、種子から新芽までの成長の経過を通じて変化する。未発芽のザクロ種子は約10μM TE/g新鮮重量の抗酸化活性を含んでいた(図4A)。抗酸化物質のレベルが種子発芽の早期段階(発根)では低下したが、その後、特に子葉の展開により、約30μM TE/g新鮮重量に至るまで増大した。新芽が暗所に置かれたままであった場合、抗酸化物質のさらなる蓄積が遅くなるが、照明下では、抗酸化物質のレベルが増大し続け(図4A)、その後、色が、短期間の露光を行い、その後、暗所でインキュベーションした後では緑黄色から赤色に変化し(図4B〜図4C)、または、連続した露光の後では緑色に変化した(データは示されず)。
【0150】
抗酸化物質の蓄積速度が光の強度に依存した(図4A)。5時間の日光照明が、抗酸化活性における大きな増大(およそ75μM TE/g新鮮重量、図4A)をザクロ新芽において誘導するために十分であった。同様に、波長が365nmの紫外光(UV−A)または312nmの紫外光(UV−B)に(光の強度に依存して)30分間〜3時間さらすことにより、ザクロ新芽における抗酸化物質の蓄積が高まった(データは示されず)。かすかな室内光にさらすこともまた、抗酸化活性における増大(およそ45μM TE/g新鮮重量、図4A)を誘導するために十分であった。
【0151】
ザクロ新芽の高い抗酸化活性は主として、新芽の子葉に起因していた。ザクロ新芽の使用のための最適な成長段階は、若い子葉を有する新芽であった。しかしながら、抗酸化活性のレベルが新芽成長のより進んだ段階(真の葉の形成)では低下しなかった(データは示されず)。それにもかかわらず、成長のより進んだ段階では、新芽は、食感の変化(特にその木質化に関連づけられる組織荒れ)のために、加工にはあまり適していなかった(データは示されず)。
【0152】
実施例3
ザクロ新芽およびザクロ新芽由来の抽出物における活性成分
材料および実験手法
ザクロ新芽を得る方法および抗酸化性食品調製物をザクロ新芽から調製する方法
実施例1(上記)に記載される通り。
【0153】
HPLC分析
HPLC装置:フォトダイオードアレイ検出器(DAD)と、カラムPhenomenex Synergi Hydro−RP(250x4.6mm、4μm粒子サイズ)とを有するAgilent 1100 HPLC。流速:1.0mL/分。移動相A:Milli−Q水における1%ギ酸;移動相B:アセトニトリル。移動相プログラム:18分かけて5%Bから15%Bへ、その後、2分かけて65%Bに増大する;5分かけて5%Bに戻し、5分間の再平衡化。温度:30℃、注入体積:10μL、260nmでのUV検出。
【0154】
結果
表2(本明細書中上記)に詳しく記載されるように、ザクロ新芽に存在する抗酸化物質は、主として親水性抗酸化物質(HAOX)であることが見出された。親水性化合物はアスコルビン酸(ビタミンC)およびフェノール系化合物(例えば、没食子酸、エラグ酸、フラボノイドグリコシドおよびプニカラギン類など、表3(下記)を参照のこと)を含んでいた。HPLC分析では、フェノール系画分の主要部分がエラグ酸によって表されることが示された(およそ23mg/g乾燥重量、表3(下記)を参照のこと)。これらのフェノール系化合物はそれらの高い生物学的利用能について広く知られており、また、抗菌活性を含む。
【0155】

【0156】
親水性抗酸化物質のほかに、ザクロ新芽はまた、親油性抗酸化物質(LAOX)が多いことが見出された(本明細書中上記の表2を参照のこと)。ザクロ新芽における親油性抗酸化物質含有量は、アボカド果実の親油性抗酸化物質含有量に近いか、または、アボカド果実の親油性抗酸化物質含有量よりも高いことが見出され、また、ビタミンE(トコフェロール類)およびカロテノイド類を含むことが見出された。
【0157】
ザクロ新芽をホモジネート化または乾燥のどちらかによって加工することにより、抗酸化物質の豊富な供給源である調製物がもたらされた。親水性抗酸化物質、親油性抗酸化物質、ザクロオイルおよびフェノール類の最高の供給源が、ザクロ種子を凍結乾燥するプロセスによって記録された(本明細書中上記の表1を参照のこと)。しかしながら、(子葉だけまたは新芽全体の)浸透脱水、ホモジネート化もまた、新鮮なザクロ果実との比較において、または、未発芽の種子との比較において、高いレベルの抗酸化物質およびオイルをもたらした(本明細書中上記の表1を参照のこと)。従って、ザクロ新芽または子葉単独は、天然の親水性抗酸化物質および親油性抗酸化物質の両方が多い食品調製物に役立ち得る。
【0158】
まとめると、ザクロ新芽およびザクロ新芽由来の調製物の健康価値が、特に、ビタミンC(アスコルビン酸)、フェノール系化合物(例えば、没食子酸、エラグ酸、プニカラギン類およびフラボノイド類)、ビタミンE(トコフェロール類)、カロテノイド類および栄養繊維に関係づけられる。
【0159】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0160】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ザクロ新芽調製物。
【請求項2】
(a)ザクロ新芽を提供すること;および
(b)前記ザクロ新芽を加工し、それにより、ザクロ新芽調製物を製造すること
を含むザクロ新芽調製物を製造する方法。
【請求項3】
30μM TE/g新鮮重量よりも高い抗酸化活性を含む、請求項1に記載の調製物。
【請求項4】
(a)ザクロの種子を、新芽が現れるまで暗所で発芽させること;
(b)前記新芽を光にさらし、その結果、露光された新芽を得ること;
(c)前記露光された新芽を暗所でインキュベーションすること;および
(d)前記ザクロ新芽を収穫し、それにより、ザクロ新芽を製造すること
を含むザクロ新芽を製造する方法。
【請求項5】
(a)が6日間〜13日間行われ、(b)が30分間〜8時間行われ、(c)が24時間〜48時間行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項4に記載される方法に従って製造されるザクロ新芽。
【請求項7】
30μM TE/g新鮮重量よりも高い抗酸化活性を含むザクロ新芽。
【請求項8】
前記提供することが、請求項4に記載される方法に従って行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
請求項1、6または7に記載されるザクロ調製物またはザクロ新芽を含む食品製造物または飼料製造物。
【請求項10】
前記抗酸化活性が少なくとも50μM TE/g新鮮重量である、請求項3または7に記載のザクロ調製物またはザクロ新芽。
【請求項11】
前記抗酸化活性が少なくとも70μM TE/g新鮮重量である、請求項3または7に記載のザクロ調製物またはザクロ新芽。
【請求項12】
前記調製物または新芽は親水性抗酸化物質を含む、請求項1、6、7または9に記載のザクロ調製物、新芽、食品製造物または飼料製造物。
【請求項13】
前記親水性抗酸化物質の活性が少なくとも70μM TE/g新鮮重量である、請求項12に記載のザクロ調製物、新芽、食品製造物または飼料製造物。
【請求項14】
前記親水性抗酸化物質はビタミンCを含む、請求項12に記載のザクロ調製物、新芽、食品製造物または飼料製造物。
【請求項15】
前記ビタミンCの含有量が少なくとも0.3mg/g新鮮重量である、請求項14に記載のザクロ調製物、新芽、食品製造物または飼料製造物。
【請求項16】
前記親水性抗酸化物質はフェノール系化合物を含む、請求項12に記載のザクロ調製物、新芽、食品製造物または飼料製造物。
【請求項17】
前記フェノール系化合物は没食子酸を含む、請求項16に記載のザクロ調製物、新芽、食品製造物または飼料製造物。
【請求項18】
前記没食子酸の含有量が少なくとも16mg/g乾燥重量である、請求項17に記載のザクロ調製物、新芽、食品製造物または飼料製造物。
【請求項19】
前記フェノール系化合物はプニカラギン類を含む、請求項16に記載のザクロ調製物、新芽、食品製造物または飼料製造物。
【請求項20】
前記プニカラギン類の含有量が少なくとも4mg/g乾燥重量である、請求項19に記載のザクロ調製物、新芽、食品製造物または飼料製造物。
【請求項21】
前記フェノール系化合物はフラボノイド類を含む、請求項16に記載のザクロ調製物、新芽、食品製造物または飼料製造物。
【請求項22】
前記フラボノイド類の含有量が少なくとも19mg/g乾燥重量である、請求項21に記載のザクロ調製物、新芽、食品製造物または飼料製造物。
【請求項23】
前記フェノール系化合物はエラグ酸を含む、請求項16に記載のザクロ調製物、新芽、食品製造物または飼料製造物。
【請求項24】
前記エラグ酸の含有量が少なくとも23mg/g乾燥重量である、請求項23に記載のザクロ調製物、新芽、食品製造物または飼料製造物。
【請求項25】
前記調製物または新芽は親油性抗酸化物質を含む、請求項1、6、7または9に記載のザクロ調製物、新芽、食品製造物または飼料製造物。
【請求項26】
親油性抗酸化物質の活性が少なくとも0.6μM TE/g新鮮重量である、請求項25に記載のザクロ調製物、新芽、食品製造物または飼料製造物。
【請求項27】
前記親油性抗酸化物質はビタミンEを含む、請求項25に記載のザクロ調製物、新芽、食品製造物または飼料製造物。
【請求項28】
前記ビタミンEの含有量が少なくとも0.40mg/g新鮮重量である、請求項27に記載のザクロ調製物、新芽、食品製造物または飼料製造物。
【請求項29】
前記親油性抗酸化物質はカロテノイド類を含む、請求項25に記載のザクロ調製物、新芽、食品製造物または飼料製造物。
【請求項30】
前記光は日光を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項31】
前記光は280nm〜400nmの波長範囲の紫外光を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項32】
前記光は、放射照度が少なくとも30W/mである380nm〜750nmの波長範囲の人工光を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項33】
前記調製物は顆粒化形態である、請求項1または9に記載のザクロ調製物、食品製造物または飼料製造物。
【請求項34】
前記調製物は粉末形態である、請求項1または9に記載のザクロ調製物、食品製造物または飼料製造物。
【請求項35】
前記調製物はペースト形態である、請求項1または9に記載のザクロ調製物、食品製造物または飼料製造物。
【請求項36】
前記調製物は液体形態である、請求項1または9に記載のザクロ調製物、食品製造物または飼料製造物。
【請求項37】
前記加工がホモジネート化によって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項38】
前記ホモジネート化が有機酸の存在下で行われる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記有機酸は食品用有機酸である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記食品用有機酸はクエン酸である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記クエン酸は0.1%〜0.2%の濃度である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記加工が乾燥によって行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項43】
前記乾燥が浸透脱水によって行われる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記乾燥が凍結乾燥によって行われる、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記乾燥が真空乾燥によって行われる、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
ゼリー、ソース、シロップ、レリッシュ、ワイン、シリアル、フレーク、バー、スナック、スプレッド、ペースト、ディップ、細粉物、ポリッジ、飲料物、輸液、浸出液、チンキ剤、抽出物および果汁からなる群から選択される、請求項9に記載の食品製造物または飼料製造物。
【請求項47】
乾燥新芽、新鮮新芽、冷凍新芽、焼き新芽、煮込み新芽、油で揚げられた新芽、押出し成形された新芽、すりつぶされた新芽、マリネにされた新芽、および、ピクルスにされた新芽からなる群から選択される、請求項9に記載の食品製造物または飼料製造物。

【図1A−F】
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【図1G−I】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−534488(P2010−534488A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518807(P2010−518807)
【出願日】平成20年7月27日(2008.7.27)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001033
【国際公開番号】WO2009/016620
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(510128465)
【Fターム(参考)】