説明

シアノアクリレート系瞬間接着剤用プライマー組成物

【解決手段】下記一般式(1)


(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、nは1.0で、R1が複数の異なる置換基を含む場合、それぞれ異なるR1を置換基として含むシラザン単位同士のモル比を表す。)
で表される三官能性(複合)シラザン化合物を有効成分とするシアノアクリレート系瞬間接着剤用プライマー組成物。
【効果】本発明のシアノアクリレート系瞬間接着剤用プライマー組成物をシリコーンゴム成形体の表面に処理することにより、シアノアクリレート系瞬間接着剤の優れた接着性を安定して発現させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアノアクリレート系瞬間接着剤を用いて接着を行うに当たり、難接着性のシリコーンゴム成形体に対しても接着力を発現できるプライマー組成物、即ち、瞬間接着剤の使用に先立ち、被着材のシリコーンゴム表面を処理する前処理剤(プライマー組成物)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シアノアクリレート系瞬間接着剤は速硬化性を有するので、工業用、家庭用の接着剤として普及しているが、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂のような難接着性の被着材に対しては充分な接着力が得られない。そこで、接着に先立ち、被着材表面をプライマーと称する前処理剤で処理することが一般に行われている。
【0003】
これらのプライマー処理に関しては、被着材の表面を予め無機あるいは有機塩基性物質、特にアミン類、アミド類等の有機塩基性物質を含有する処理剤を塗布する方法が提案されている(特許文献1:特公昭43−5004号公報、特許文献2:特公昭47−8718号公報、特許文献3:特公昭49−12094号公報、特許文献4:特開昭59−66471号公報、特許文献5:特開昭62−18485号公報、特許文献6:特開昭62−18486号公報、特許文献7:特開平5−140512号公報、特許文献8:特開平6−57218号公報参照)。
【0004】
また、上記に類似する含窒素化合物を含有するプライマーも提案されている(特許文献9:特公昭54−19416号公報、特許文献10:特公昭62−29471号公報、特許文献11:特公昭61−126190号公報、特許文献12:特開昭63−51489号公報、特許文献13:特開昭63−128090号公報、特許文献14:特開昭64−66222号公報、特許文献15:特開2003−41154号公報、特許文献16:特開2003−41200号公報参照)。
【0005】
しかし、上述のアミン類や有機塩基性物質の中には接着力が向上しないものもあったり、最も難接着性の被着材とされているシリコーン系樹脂、特にシリコーンゴム成形体に対しては、文献上は接着できたとあっても、実際に追試してみたときには、接着力がほとんど得られなかったり、接着力が不充分であることがあった。
【0006】
そして、たとえシリコーンゴム成形体に対して接着力向上効果を示しても、同一グレードの基材でも接着力のばらつきが大きく、ましてグレードが違えば接着力が大きく低下することもあった。このように、ある特定の基材でも場合により接着力が大きくばらついたり、グレードの違いにより接着力が大きく低下して安定しないことは、実際の接着作業にあっては不都合となる場合が多く、常に一定の充分な接着力が得られることが強く望まれている。
【0007】
更に、上述のアミン類や有機塩基性物質を含有するプライマーの多くは、特有のアミン臭やピリジン臭があったり、接着時の急速硬化に起因する発熱で発泡することもあり、これらも不都合な点であった。
【0008】
【特許文献1】特公昭43−5004号公報
【特許文献2】特公昭47−8718号公報
【特許文献3】特公昭49−12094号公報
【特許文献4】特開昭59−66471号公報
【特許文献5】特開昭62−18485号公報
【特許文献6】特開昭62−18486号公報
【特許文献7】特開平5−140512号公報
【特許文献8】特開平6−57218号公報
【特許文献9】特公昭54−19416号公報
【特許文献10】特公昭62−29471号公報
【特許文献11】特公昭61−126190号公報
【特許文献12】特開昭63−51489号公報
【特許文献13】特開昭63−128090号公報
【特許文献14】特開昭64−66222号公報
【特許文献15】特開2003−41154号公報
【特許文献16】特開2003−41200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、シアノアクリレート系瞬間接着剤の優れた接着性をシリコーン系樹脂、特にシリコーンゴム成形体に対しても安定して発現させることができ、かつ使用性に優れたシアノアクリレート系瞬間接着剤用プライマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者はこのような状況に鑑み、難接着性の被着材であるシリコーン系樹脂、特にシリコーンゴム成形体に対してシアノアクリレート系接着剤の優れた接着力を安定して発現させることができ、即乾性でプライマー養生期間が不要なため、シリコーンゴム成形体にプライマーを塗布した直後の接着剤塗布が可能で、プライマーと接着剤のライン塗工に最適であり、更に、有効成分自体の臭気も問題にならないほど小さく、プライマー処理後の接着操作時に接着部位に発泡を生じないという特徴も持ち合わせることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0011】
従って、本発明は、下記シアノアクリレート系瞬間接着剤用プライマー組成物を提供する。
請求項1:
下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、nは1.0で、R1が複数の異なる置換基を含む場合、それぞれ異なるR1を置換基として含むシラザン単位同士のモル比を表す。)
で表される三官能性(複合)シラザン化合物を有効成分とするシアノアクリレート系瞬間接着剤用プライマー組成物。
請求項2:
下記一般式(2)
【化2】

(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、R2はメチル基又は水素原子、R3は炭素数1〜6の二価炭化水素基であり、n、mはn+m=1.0で、R1、R2、R3が複数の異なる置換基を含む場合、それぞれ異なるR1又は異なる[CH2=C(R2)C(=O)O−R3−]を置換基として含むシラザン単位同士のモル比を表す。)
で表される三官能性複合シラザン化合物を有効成分とするシアノアクリレート系瞬間接着剤用プライマー組成物。
請求項3:
一般式(2)で示される三官能性複合シラザン化合物のR1がメチル基、R3がプロピレン基であることを特徴とする請求項2記載のプライマー組成物。
請求項4:
一般式(2)で示される三官能性複合シラザン化合物のR2がメチル基であることを特徴とする請求項2又は3記載のプライマー組成物。
請求項5:
シラザン化合物を溶媒に溶解した0.01〜20質量%濃度の溶媒溶液からなる請求項1乃至4のいずれか1項記載のプライマー組成物。
請求項6:
シリコーンゴム成形体の処理用である請求項1乃至5のいずれか1項記載のプライマー組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシアノアクリレート系瞬間接着剤用プライマー組成物をシリコーンゴム成形体の表面に処理することにより、シアノアクリレート系瞬間接着剤の優れた接着性を安定して発現させることができる。
また、本発明のシアノアクリレート系瞬間接着剤用プライマー組成物は即乾性でプライマー養生期間が不要なため、シリコーンゴム成形体にプライマーを塗布した直後の接着剤塗布が可能で、プライマーとシアノアクリレート系接着剤のライン塗工に最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のシアノアクリレート系瞬間接着剤用プライマー組成物の有効成分は、下記一般式(1)
【化3】

(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、nは全シラザン単位の合計として1.0であり、R1が複数の異なる置換基を含む場合、それぞれ異なるR1を置換基として含むシラザン単位同士のモル比を表す。)
で表される三官能性(複合)シラザン化合物である。
【0014】
シリコーンゴム成形物の表面に本発明のプライマー組成物を塗布すると、プライマー有効成分の三官能性複合シラザン化合物は、一般にSi−NH結合の加水分解縮合反応性が非常に高いため、下記反応式(3)
【化4】

(式中、R1は炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、nはR1が複数の異なる置換基の場合、それらのモル比を表す。)
のようにシリコーンゴムの主成分であるシロキサンポリマーや該シリコーンゴム組成物中に補強性充填材として一般的に配合されているシリカの表面に多数含有されるSi−OH(シラノール)基と迅速に結合する。
【0015】
残留しているSi−NH(シラザン)結合は、空気中の湿気やシリコーンゴム成形体中に含有される水分とも迅速に反応し、下記反応式(4)
【化5】

(式中、R1は炭素数1〜10の一価炭化水素基である。)
のように新たなシラノール基を発生させる。これに別の三官能性複合シラザン化合物が反応式(3)と同様の反応を繰り返していくので、高次元的な非常に強固な結合体を形成していく。
【0016】
最終的には、シリコーンゴム中のシロキサンポリマーやシリカの元々シラノール基が存在していた部分に微細なレジン状物質が多数結合したような形態となり、その表面にはシラノール基はもとより、炭素数1〜10の一価炭化水素基R1で覆われることになり、本発明者は、このような形態が難接着とされるシリコーンゴム成形物へのシアノアクリレート系瞬間接着剤の接着性を発現させる要因であると推測している。即ち、シリコーンゴム成形物の表面には、上述のようにシラノール基や炭素数1〜10の一価炭化水素基R1を含有する微細なレジン状物質が多数、強固に結合しており、これとシアノアクリレート系瞬間接着剤の主成分である2−シアノアクリレート誘導体が反応し、接着を発現すると考えられる。また、前述の先行技術文献で開示されているように、シアノアクリレート系瞬間接着剤の主成分である2−シアノアクリレート誘導体は塩基性物質の共存で硬化促進されるが、本発明のプライマー組成物では、反応式(3),(4)で塩基性のアンモニアが副生するので、これが硬化促進効果を担っていると考えられる。
【0017】
ここで、一般式(1)の三官能性(複合)シラザン化合物のR1は炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、この具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基などの非置換一価炭化水素基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基等の上記一価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がハロゲン原子やシアノ基で置換された置換アルキル基等の置換一価炭化水素基が挙げられる。これらの中では、レジン状物質の強固な結合性の点からメチル基が好ましい。立体的により小さな置換基のほうが、縮合反応性が高いことが知られている。
【0018】
また、本発明のプライマー組成物は、下記一般式(2)で示される、シラザン単位の一部として(メタ)アクリロキシ基含有一価炭化水素基を置換基として有するシラザン単位を含有する三官能性複合シラザン化合物を有効成分とすることもできる。
【化6】

(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、R2はメチル基又は水素原子、R3は炭素数1〜6の二価炭化水素基であり、n、mは全シラザン単位の合計としてn+m=1.0で、R1、R2、R3が複数の異なる置換基を含む場合、それぞれ異なるR1又は異なる[CH2=C(R2)C(=O)O−R3−]を置換基として含むシラザン単位同士のモル比を表す。)
【0019】
ここで、R1、R2の具体例は上記の通りである。また、一般式(2)の三官能性複合シラザン化合物のR3は、炭素数1〜6の二価炭化水素基であり、この具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基等のアルキレン基、エテニレン基、プロペニレン基等のアルケニレン基、o−フェニレン基、m−フェニレン基、p−フェニレン基等の二価炭化水素基が挙げられ、これらの中では入手の容易さからメチレン基、プロピレン基が好ましい。R2はメチル基又は水素原子であるので、一般式(2)の下記置換基(5)
【化7】

はメタクリロキシメチル基、アクリロキシメチル基、γ−メタクリロキシプロピル基、γ−アクリロキシプロピル基が好ましく例示される。
【0020】
一般式(1)の三官能性(複合)シラザン化合物のnは当該三官能性クロロシランの仕込みモル比に相当するものであり、単独の三官能性クロロシランを用いた時はn=1.0(100mol%)、複数の三官能性クロロシランを用いた時はそれらモル比の合計が1.0(100mol%)になることを表している。
【0021】
また、一般式(2)の三官能性複合シラザン化合物のn、mも当該三官能性クロロシラン同士の仕込みモル比に相当するものであり、即ち、n、mは、R1、R2、R3が複数の異なる置換基を含む場合、それぞれ異なるR1又は異なる[CH2=C(R2)C(=O)O−R3−]を置換基として含むシラザン単位同士のモル比であって、それらモル比の合計が1.0(100mol%)になることを表している。ここで、n/mは任意に設定できるが、好ましくはn/m=1.0/0〜0.5/0.5であり、より好ましくはn/m=0.9/0.1〜0.7/0.3である。シリコーンゴム成形物の表面に生成する微細なレジン状物質に対するシアノアクリレート系瞬間接着剤の濡れ性を考慮するとmは大きいほうが好ましいと考えられるが、実際には、mに比べてnが小さいとレジン状物質が比較的大きく、柔らかくなる傾向があり、こうなると結合が強固にならないため、シアノアクリレート系瞬間接着剤の接着性が劣る場合がある。
【0022】
三官能性(複合)シラザン化合物の合成法としては、クロロシランとアンモニアの反応による常法を用いることができる。具体的には、所定の三官能性クロロシラン混合液を適当な溶剤に溶解し、撹拌下所定温度で過剰量のアンモニアガスを徐々に吹き込み、反応終了後、副成する塩化アンモニウムをろ別し、溶剤留去すれば良い。プライマー組成物とする際に使用する溶媒を反応溶媒として用いれば、溶媒留去せずそのまま濃度調整してプライマー組成物とすることもできる。
【0023】
プライマー組成物の溶媒としては、三官能性(複合)シラザン化合物を分解させてしまう活性水素を持つアルコール類やアミン類等の溶媒は使用できないが、それ以外の通常の有機溶媒が使用できる。また、被着材がシリコーンゴムであることから、溶剤にはシリコーン樹脂との相溶性も要求される。n−へキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、工業用ガソリン等の脂肪族飽和炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等の揮発性ジメチルシロキサンオリゴマー類が例示される。これらの溶剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用することも可能である。本発明のプライマー組成物には即乾性を持たせる必要があるため、揮発性の高いn−へキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、ヘキサメチルジシロキサンが好ましい。一方、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類も使用可能だが、三官能性(複合)シラザン化合物が湿気で分解しやすいので、吸湿性の高い溶剤は避けたほうがよい。
【0024】
本発明のプライマー組成物の有効成分である三官能性(複合)シラザン化合物濃度は特に限定されないが、極端に低濃度であると接着性が発現しないことがあるし、濃過ぎる場合には空気中の湿気やシリコーンゴム成形体中に含有される水分が不足して反応式(4)が十分に進行せず、シリコーンゴム成形物の表面に生成する微細なレジン状物質が強固な結合とならないことがある。通常は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%の濃度が適当である。
【0025】
更に本発明のプライマー組成物には、必要なら着色材、安定化剤、可塑剤、増粘剤、界面活性剤、防腐剤、硬化促進剤等の各成分を添加してもよい。
【0026】
被着材のシリコーンゴム成形体は特に限定されず、熱硬化タイプ、室温硬化タイプ、有機過酸化物架橋タイプ、縮合架橋タイプ、ヒドロシリル化架橋タイプ、紫外線架橋タイプ、ミラブルタイプ、液状タイプ等、あらゆるものに適用可能である。また、被着面へのプライマー塗布方法としては、筆、刷毛、布、紙、スポンジ、ローラー等を使用する塗布、スプレー塗布、ディスペンス、ディッピングなどの手段がいずれも採用可能である。
【0027】
シアノアクリレート系瞬間接着剤としては、アルキル−2−シアノアクリレート、シクロアルキル−2−シアノアクリレート、アルコキシアルキル−2−シアノアクリレート、アルケニル−2−シアノアクリレート、アルキニル−2−シアノアクリレートなどの2−シアノアクリレート誘導体を主剤とし、必要に応じ、重合防止剤、安定剤、増粘剤、耐熱性付与剤、可塑剤、着色剤、チクソトロピー性改善剤、pH調整剤、エチレンカーボネート、有機溶剤、フィラー、増粘目的以外の合成樹脂などを含んだものが用いられる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例と比較例によりこの発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、配合量の単位は質量部である。
【0029】
[合成例1]
撹拌装置、温度計、ガス導入管、冷却器を備えた1Lの四つ口フラスコを用意し、アンモニアガスと窒素の一定濃度混合ガスが供給されるように、アンモニアボンベと窒素ラインから前記ガス導入管までを配管でつないだ。四つ口フラスコの内部を窒素置換し、n−ヘプタン500gと、三官能性クロロシランとしてメチルトリクロロシラン15.0g(0.10mol)を仕込み、混合溶解させた。反応原液撹拌下、これに50Vol%のアンモニア/窒素混合ガスを連続的に供給した。この時、ガス導入管の端部が反応原液の液面より下部になるように調整し、アンモニア/窒素混合ガスと反応原液を効率的に接触させた。発熱を伴いながら白色微粉体の塩化アンモニウムが生成したので、四つ口フラスコを氷水で冷却し、25℃以下を保った。ここで、冷却器からの排気に水で濡らしたpH試験紙を接触させると、酸性を示した。
【0030】
反応原液が塩化アンモニウムでスラリー状となり、発熱がおさまった後もアンモニア/窒素混合ガスの供給を続け、アンモニアが25g(1.47mol)導入されたところで冷却器からの排気に水で濡らしたpH試験紙を接触させると、アルカリ性を示していたので、アンモニアの供給を止めた。この後、引き続き窒素ガスのみをガス導入管から供給し、反応原液スラリーを40℃まで加温して過剰のアンモニアを除去した。室温まで冷却後、密閉型加圧ろ過器で塩化アンモニウムをろ別し、ケーキは100gのn−ヘプタンで洗浄、この洗浄液はろ液と混合し、503gの三官能性複合シラザン化合物のn−ヘプタン溶液を得た。
【0031】
この三官能性シラザン化合物のn−ヘプタン溶液を分析したところ、平均構造が下記式(6)
【化8】

で、濃度は約1.5質量%であった。
【0032】
[合成例2]
合成例1において、三官能性クロロシランとしてメチルトリクロロシラン13.5g(0.09mol)、γ−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン2.6g(0.01mol)の混合物とした以外は同様に実施し、511gの三官能性複合シラザン化合物のn−ヘプタン溶液を得た。
【0033】
この三官能性複合シラザン化合物のn−ヘプタン溶液を分析したところ、平均構造が下記式(7)
【化9】

で、濃度は約1.4質量%であった。
【0034】
[合成例3]
合成例1において、三官能性クロロシランとしてメチルトリクロロシラン10.5g(0.07mol)、γ−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン7.8g(0.03mol)の混合物とした以外は同様に実施し、523gの三官能性複合シラザン化合物のn−ヘプタン溶液を得た。
【0035】
この三官能性複合シラザン化合物のn−ヘプタン溶液を分析したところ、平均構造が下記式(8)
【化10】

で、濃度は約1.7質量%であった。
【0036】
[合成例4]
合成例1において、三官能性クロロシランとしてメチルトリクロロシラン13.5g(0.09mol)、γ−アクリロキシプロピルトリクロロシラン2.5g(0.01mol)の混合物とした以外は同様に実施し、505gの三官能性複合シラザン化合物のn−ヘプタン溶液を得た。
【0037】
この三官能性複合シラザン化合物のn−ヘプタン溶液を分析したところ、平均構造が下記式(9)
【化11】

で、濃度は約1.4質量%であった。
【0038】
[実施例1〜7、比較例1〜7]
合成例1〜4の三官能性(複合)シラザン化合物のn−ヘプタン溶液、シランカップリング剤としてメチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、縮合触媒としてテトラブトキシチタン、硬化促進剤としてメチルトリス(n−ブチルアミノ)シラン、溶剤としてn−ヘプタンを表1に従って混合し、各プライマー組成物を得た。
【0039】
被着材としては、下記2点のシリコーンゴムシートを用意した。
(A−1)信越化学工業(株)製ミラブル型シリコーンゴム「KE−951−U」を100質量部に、信越化学工業(株)製有機過酸化物加硫剤「C−8」を2質量部混練して、165℃で10分間プレスキュア、200℃で4時間ポストキュアした2mmシート
(A−2)付加反応硬化型の信越化学工業(株)製射出成形用液状シリコーンゴム「KE−1950−50A/B」を50質量部/50質量部で混練して、120℃で10分間プレスキュア、200℃で4時間ポストキュアした2mmシート
【0040】
シアノアクリレート系瞬間接着剤としては、下記2点を用意した。
(B−1)(株)アルテコ製「アルテコM」
(B−2)(株)アルテコ製「アルテコD」
【0041】
各シリコーンゴムシートに、各実施例、各比較例のプライマー組成物を少量刷毛で塗布し、直後に各シアノアクリレート系瞬間接着剤を1滴滴下し、縦10mm×横10mm×厚さ2mmの三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製ポリブチレンテレフタレート樹脂「ノバデュラン5010R5」の板を接着させ、50gの加重を掛けて室温放置した。24時間後、ポリブチレンテレフタレート樹脂をシリコーンゴムから引き剥がした時、ゴムが破壊(凝集破壊100%)した場合(表1では◎で表記)及び一部界面剥離がみられるが大部分が凝集破壊しており、十分な接着強度が得られた場合(表1では○で表記)を合格とし、シリコーンゴムと接着剤の界面から剥離した場合(表1では×で表記)を不合格とした。
結果を表1に示す。なお、実施例と同一番号の比較例は、類似のシランカップリング剤を用い、有効成分量をほぼ同等としたものである。
【0042】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、nは1.0で、R1が複数の異なる置換基を含む場合、それぞれ異なるR1を置換基として含むシラザン単位同士のモル比を表す。)
で表される三官能性(複合)シラザン化合物を有効成分とするシアノアクリレート系瞬間接着剤用プライマー組成物。
【請求項2】
下記一般式(2)
【化2】

(式中、R1は同一又は異種の炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、R2はメチル基又は水素原子、R3は炭素数1〜6の二価炭化水素基であり、n、mはn+m=1.0で、R1、R2、R3が複数の異なる置換基を含む場合、それぞれ異なるR1又は異なる[CH2=C(R2)C(=O)O−R3−]を置換基として含むシラザン単位同士のモル比を表す。)
で表される三官能性複合シラザン化合物を有効成分とするシアノアクリレート系瞬間接着剤用プライマー組成物。
【請求項3】
一般式(2)で示される三官能性複合シラザン化合物のR1がメチル基、R3がプロピレン基であることを特徴とする請求項2記載のプライマー組成物。
【請求項4】
一般式(2)で示される三官能性複合シラザン化合物のR2がメチル基であることを特徴とする請求項2又は3記載のプライマー組成物。
【請求項5】
シラザン化合物を溶媒に溶解した0.01〜20質量%濃度の溶媒溶液からなる請求項1乃至4のいずれか1項記載のプライマー組成物。
【請求項6】
シリコーンゴム成形体の処理用である請求項1乃至5のいずれか1項記載のプライマー組成物。

【公開番号】特開2010−121077(P2010−121077A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297538(P2008−297538)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】