説明

シクロスポリンの投与のための親水性二成分系

【課題】親油性医薬化合物であるシクロスポリンの経口、局所(topical)、局部(local)および他の投与経路に使用できる組成物の提供。
【解決手段】シクロスポリン、親水相(但し、低分子量のモノ−またはポリ−オキシアルカンジオールの、C1〜5アルキルまたはテトラヒドロフルフリル・ジ−または部分エーテルではなく)、および界面活性剤(但し、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーではない)を含んで成る二成分医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口ならびに局所(topical)、局部(local)および他の投与経路に好適な、親油性医薬化合物を含有する医薬組成物に関する。本発明は特に、親水相、および1種またはそれ以上の界面活性剤を含んで成るが、親油相は有さないシクロスポリンの二成分製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
高度に親油性の医薬化合物は、製剤化における大きな目標である。哺乳動物消化管の含有物を含む水性媒体中における低溶解性の故に、それらは、経口投与または経膜的吸収を必要とする他の経路によって投与された場合に、低いかまたは変化性の生物学的利用能を有する場合が多い。そのような医薬化合物の例は、免疫抑制薬シクロスポリンおよびFK506(タクロリマス)(tacrolimus);プロテアーゼインヒビター、例えばリトナヴィール(ritonavir);中枢神経系薬、例えばチアガビン(tiagabine);および抗炎症薬、例えばジリュートン(zileuton)および他の5−リポキシゲナーゼインヒビターを包含する。
【0003】
親油性化合物を製剤化する1つの方法は、それらを、水と混合した際にエマルジョンを形成するグリセリド担体と合わせることである。エマルジョンは、例えば、Cavanakの米国特許第4388307号に記載されており、それの商業的な例は、シクロスポリン含有製剤SANDIMMUNE(R)経口液剤である。この製品は、乳化剤LABRAFIL(R)(ポリオキシエチル化核油(kernel oil))、オリーブ油およびアルコールを、100mg/mLの濃度で存在する化合物シクロスポリンAと一緒に含んで成る。Cavanakは、そのようなグリセリド担体が、溶液からの薬剤の沈殿のような物理的安定性の問題を解決するのに有用であり、より高い血漿濃度を可能にする場合もあることを示唆している。
【0004】
最近、親油性化合物の好ましいビヒクルは、水性媒体に曝露された場合に、攪拌を殆どまたは全く必要とせずに微細な水中油滴型エマルジョンを形成するいわゆる「自己乳化薬剤送達系」であることが示されている。自己乳化特性は、そのような薬剤を、硬質ゼラチンまたは軟質弾性カプセルのような濃縮形態で投与することを可能にし、消化管において微細エマルジョンが形成されると考えられる。さらに、自己乳化製剤は、経口投与された場合に、医薬化合物の吸収の速度および程度の両方を向上させ、血漿濃度プロフィールにおける変化を減少させることが示唆されている(S.A.Charmanら、Pharmaceutical Research 9(1):87〜93(1992)、およびN.H.Shahら、International Journal of Pharmaceutics 106:15〜23(1994)を参照)。さらに、自己乳化予備濃縮物と水性媒体とを合わせることによって製造されるエマルジョンは、それらの小さい液滴直径の故に、従来のエマルジョンと比較した場合に、向上した物理的安定性を有する。
【0005】
以前に開示されている自己乳化系は、(i)中鎖トリグリセリドとノニオン界面活性剤との混合物、(ii)植物油と、部分グリセリド、例えば、ポリグリコール化グリセリドまたは中鎖モノ−およびジグリセリドとの混合物、あるいは(iii)植物油と、ノニオン界面活性剤、例えば、ポリソルベート80またはPEG−25グリセリルトリオレエートとの混合物を、親油性薬剤と組み合わせたものを包含する。前記SANDIMMUNE(R)シクロスポリン製剤を包含する他の製剤は自己乳化性であることを特徴とする。しかしながら、これらは、溶媒が容易に逸出するゼラチンカプセルに充填するようなある種の使用に適さないようにしてしまう相当な量の可溶化剤またはエタノールのような溶媒をさらに含有する。
【0006】
この欠点を解決する自己乳化製剤が、Hauerらの米国特許第5342625号に開示されている。これらの製剤において、シクロスポリンの「ミクロエマルジョン予備濃縮物」が、(I)親水相、(II)親油相、および(III)界面活性剤、ならびに任意の増粘剤、酸化防止剤または他の賦形剤と、薬剤とを合わせることによって形成される。遺憾なことに、これらの三成分製剤の複雑さが、それらを高価なものとし、製造を困難なものにしている。
【0007】
従って、前記の三成分より容易に製造できる、シクロスポリンのような親油性薬剤の製剤が必要とされている。OrbanらのPCT国際公開番号第WO92/09299号は、プロピレングリコール、エタノール、およびポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含んで成る均質シクロスポリン含有製剤を開示し、一方、FleckらのPCT国際公開番号第WO94/23733号は、CREMOPHORおよび/またはTRANSCUTOLを含有するシクロスポリン製剤を開示している。しかし、物理的安定性、所望の薬物動態、および/または製造容易性の好ましい組み合わせを付与する他の製剤が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4388307号明細書
【特許文献2】米国特許第5342625号明細書
【特許文献3】国際公開第92/09299号
【特許文献4】国際公開第94/23733号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】S.A.Charmanら、Pharmaceutical Research 9(1):87〜93(1992)
【非特許文献2】N.H.Shahら、International Journal of Pharmaceutics 106:15〜23(1994)
【発明の概要】
【0010】
驚くべきことに、(i)親水相、および(ii)界面活性剤または界面活性剤の混合物を含んで成る賦形剤の簡単な二成分系を使用することによって、シクロスポリンのような親油性化合物の投与に関連する多くの問題が解決されることが見い出された。特に、本発明は、シクロスポリン化合物を、親水性溶媒相および1種またはそれ以上の界面活性剤との組み合わせにおいて含有するが、親油性溶媒は含有しない医薬組成物を提供する。親水相が、低分子量モノ−またはポリオキシアルカンジオールの、C〜Cアルキルまたはテトラヒドロフルフリル・ジ−または部分エーテル以外のものであり、界面活性剤が、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー以外のものであるそのような二成分製剤は、新規である。さらに、本発明のシクロスポリン含有製剤は、安定であり、製造が容易であり、それらの薬物動態特性によって商業的に魅力のあるものである。
【0011】
本明細書において使用される「二成分系」、「二成分組成物」、および「賦形剤の二成分系」という用語は、1種類またはそれ以上の有効成分の他に、少なくとも1種類の親水性溶媒および少なくとも1種類の界面活性剤を含有するが、親油性溶媒は含有しない製剤および組成物を意味する。そのような組成物は、追加の補助剤を含有することができるが、それらが親油性溶媒相を含有しない限り、「二成分」であると理解される。
【0012】
本発明の医薬組成物を製造するために、本発明の二成分系が、シクロスポリン化合物のような親油性有効成分と組み合わされる。本明細書において使用される「シクロスポリン」という用語は、1種またはそれ以上のシクロスポリン、特に、引用によりここに援用するHarriらの米国特許第4117118号に記載されるシクロスポリンAを意味する。
【0013】
所望であれば、先行技術の三成分賦形剤系を使用する組成物に生物学的に等価の本発明の二成分組成物を選択することができる;即ち、等量の有効成分を含有するそのような二成分および三成分組成物を、同等の試験対象に別々に投与した際に、三成分組成物によるのとほぼ同量の有効成分が、本発明の組成物によって試験対象の血流に送達される。送達される薬剤の量(または、他の薬物動態特性)は、当分野における既知の方法、例えば、最大血漿濃度(Cmax)、最大血漿濃度に達するまでの投与後の時間(Tmax)、および時間経過における血漿濃度の総体または時間推移(the integral or time−course)(曲線下の領域、またはAUC)によって測定することができる。
【0014】
初めに記載したように、本発明の二成分系は、親水相、および1種類またはそれ以上の界面活性剤を含んで成る。特に指定されない限り、「親水成分」という用語は、水あるいは医薬的に許容される親水性の溶媒、化合物、担体、賦形剤または希釈剤を意味する。「親水相」という用語は、組成物の親水性の部分を意味し、その相は、単一成分であっても成分の混合物であってもよい。
【0015】
本明細書において使用される「界面活性剤」という用語は、1種またはそれ以上の界面活性剤を含んで成る本発明の組成物の一部分を意味する。界面活性剤は、既知の医薬的に許容されるどのような界面活性剤であってもよく、ノニオン、アニオン、およびカチオン界面活性剤を包含する。単一の界面活性剤、または界面活性剤の混合物を使用することができる。
【0016】
特に指定されない限り、全てのパーセンテージは、医薬組成物の全重量に基づく重量%である。
【0017】
[発明の詳細な説明]
本発明の二成分組成物において、親水相は、低分子量モノ−またはポリ−オキシアルカンジオールのC〜Cアルキルまたはテトラヒドロフルフリル・ジ−または部分エーテル以外の、シクロスポリンを溶解することができる1種またはそれ以上の既知の医薬的に許容される親水性溶媒または賦形剤を含んで成る。親水性化合物の好適な種類は、例えば、ポリエチレングリコールを包含する医薬的に許容されるアルコールを包含する。
【0018】
本発明の組成物に有用な、特定の親水相成分は、限定されないが、水;エタノール;ベンジルアルコール;プロピレングリコール;約1000までの分子量を有する低分子量ポリエチレングリコール;グリセロール;およびジメチルイソソルバイドを包含する。これらの中で、無水エタノール、特にプロピレングリコールが好ましい親水相成分である。しかし、ある状況においては、エタノールおよび他の相対的に揮発性の溶媒を製剤から除去して、それらのいくつかの欠点を避けるのが望ましい場合もある。それらの欠点は、(i)経口投与のためにカプセルに充填した場合の、ある種のカプセル材料(例えば、軟質ゼラチン)との不相溶性、(ii)時間経過における溶媒の損失および製剤不安定性、(iii)製造の間の溶媒損失、および(iv)溶媒の患者不耐性の可能性を包含し、そのような場合には、高揮発性の溶媒を含まないかまたは実質的に含まない本発明の製剤が本質的に好ましい。あるいは、半固形物として本発明の組成物を製造し、それらを軟質弾性カプセルではなく硬質ゼラチンカプセルに入れることによって、充填物−カプセル不相溶性(fill−capsule incompatibilities)を避けることができ、それによって、エタノールおよび同様の溶媒の使用が可能になる。
【0019】
1種またはそれ以上の親水性溶媒を含んで成る親水相は、一般に、医薬組成物の約10重量%〜約90重量%を構成する。使用される正確な量は、使用される1種またはそれ以上の親水性化合物の性質、存在する有効成分の量および種類、投与形態、ならびに当分野において既知の他の要因によって変化する。好ましくは、親水相は、本発明の医薬組成物の約20重量%〜約80重量%、より好ましくは約30重量%〜約60重量%を構成する。非水性の親水成分が使用される場合は、水を、組成物の全重量に対して、約0.5%〜約10%、好ましくは、約1%〜約5%のレベルで、製剤中に含有することができる。
【0020】
本発明の二成分系は、前記親水相と共に、少なくとも1種類の界面活性剤も含んで成る。理論に縛られるわけではないが、界面活性剤は、胃腸液のような水性媒体と接触した際に、有効成分の溶解度を増加させることによって、ミセル系またはミクロ懸濁液(microsuspension)の形成を補助すると考えられ、このミセルまたはミクロ懸濁液系に存在する粒子の大きさはミクロン未満(マイクロメートル未満)であり、時間と共に変化し得る。エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー以外の、ノニオン、アニオン、カチオン界面活性剤を包含する既知の医薬的に許容される界面活性剤を使用することができる。ノニオン界面活性剤が好ましく、特に、親水性/親油性バランス(HLB)が10またはそれ以上のノニオン界面活性剤が好ましい。あるいは、高および低HLB界面活性剤のある種の組み合わせを使用することもでき;好ましくは、そのような混合界面活性剤が、集合体界面活性剤HLBが(使用される割合によって検量される場合に)、10より上のままであるような比率で使用される。
【0021】
好適な界面活性剤の例は、限定されないが、ヒマシ油のような天然または水素化植物油のポリオキシエチレン誘導体;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば、モノ−、ジーおよびトリ−ラウリル、パルミチル、ステアリル、ならびにオレイルエステル;アルキル/ジアルキル硫酸塩、スルホン酸塩、またはスルホ琥珀酸塩、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびスルホ琥珀酸ジオクチルナトリウム;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;燐脂質、例えばレシチン;天然植物油トリグリセリドおよびポリアルキレンポリオールのエステル交換反応生成物;ソルビタン脂肪酸エステル;ペンタエリトリトール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテルおよびエステル等を包含する。界面活性剤は、単一で、または組み合わせにおいて、使用することができる。
【0022】
医薬的に許容されるどのような界面活性剤でも本発明の二成分系に使用することができるが、特定の界面活性剤が好ましい。これらは、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、例えば、ポリオキシエチレングリセロールトリリシノレエート、ポリオキシル35ヒマシ油(CREMOPHOR(R)EL、BASF Corporationから入手可能)、およびポリオキシル40水素化ヒマシ油(CREMOPHOR(R)RH40、BASF Corporationから入手可能);ポリオキシエチレン(20)ソルビタンのモノ脂肪酸エステル、例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(TWEEN(R)80)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(TWEEN(R)60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート(TWEEN(R)40)、およびポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(TWEEN(R)20)(全てICI Surfactants,Wilmington,Delawareから入手可能);ポリオキシエチレングリコール200モノステアレート(MYRJ(R)52、Calgene Chemicals,Skokie,Illinoisから入手可能);10またはそれ以上のHLBを有するポリグリセロールエステル、例えばデカグリセリルモノ−およびジオレエート;およびこれらの組み合わせを包含する。ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体CREMOPHOR(R)ELおよびCREMOPHOR(R)RH40が特に好ましい。
【0023】
ある場合には(本発明の組成物が下記のような半固形物として製造される場合)、少なくとも1種類の追加の低HLB界面活性剤を、1種またはそれ以上の前記の高HLB界面活性剤と一緒に使用するのが特に好ましい。使用できる低HLB補助界面活性剤の例は、限定されないが、ポリグリセロールオレエート(例えばCAPROL(R)10G40);レシチン;グリセリルモノオレエートまたはモノリノレエート混合物(例えばMYVEROL(R)18−99または18−92);プロピレングリコールラウレート;およびソルビタンオレエート、例えば、ソルビタンモノオレエート(SPAN(R)80)、ソルビタントリオレエート(SPAN(R)85)、およびソルビタンセスキオレエート(SPAN(R)20)(全てICI Surfactants,Wilmington,Delawareから入手可能)を包含する。これらのうちソルビタンオレエート、特にSPAN(R)80が好ましい低HLB補助界面活性剤であり、CREMOPHOR(R)と組み合わせて使用される場合に最も特に好ましい。
【0024】
界面活性剤相は一般に、組成物の重量の約10%〜90%を構成する。好ましくは、界面活性剤が組成物の重量の約20%〜約70%、より好ましくは約40%〜約60%を構成する。
【0025】
有効成分、例えばシクロスポリンは、通常、組成物の重量の約0.03%〜約15%の量において存在する。好ましい実施態様においては、有効成分が約5重量%〜約15重量%、特に好ましくは約10重量%〜約13重量%の量において存在する。しかし、有効成分の特定のレベルは、投与形態および患者の体格および状態を含む、医薬分野において既知の要因によって選択されることが意図される。
【0026】
所望であれば、本発明の組成物が、他の医薬的に許容される賦形剤、例えば、増粘剤、充填剤、希釈剤、風味剤、着色剤、酸化防止剤、抗細菌剤または抗菌剤のような防腐剤などをさらに含有することができる。そのような添加剤が存在する場合、それらは一般に組成物の約0.01重量%〜約10重量%を構成する。好適な増粘剤は、当分野で既知のもの、例えば、医薬的に許容されるポリマーおよび/または無機増粘剤を包含する。そのような薬剤は、限定されないが、ポリアクリレートホモ−およびコ−ポリマー;セルロースおよびセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン;ポリビニル樹脂;およびシリケートを包含し、これらのうちポリビニルピロリドンが好ましい。
【0027】
所望であれば、より多い割合の適切な増粘剤または凝固剤を添加することによって、液体製剤ではなく半固体製剤として、本発明の組成物を製造することができる。このような製剤は硬質ゼラチン(軟質ゼラチンに対して)カプセルに対する充填剤として特に有用であり得る。理論に縛られるわけではないが、これらの凝固剤は、前記のように使用される場合に、組成物の物理的特性を改質するが、有効成分の溶媒または可溶化剤として有意に機能することはないと考えられる。
【0028】
半固体組成物の製造に好適な凝固剤は、限定されないが、約1000より上の分子量を有するポリエチレングリコール、例えば、PEG1450およびPEG3350;ステアリルアルコール;およびコロイド二酸化珪素(CAB−O−SIL(R)M−5、Cabot,Tuscola,Illinoisから入手可能)を包含する。これらのうち、PEG3350が最も好ましい。約8%〜約25%の凝固剤、より好ましくは約10%〜約15%の凝固剤を添加することによって、半固体状態を得るのが好ましい。必要とされる凝固剤の実際的な量は、存在する他の賦形剤の物理的特性に依存し;例えば、補助剤MYRJ(R)52は界面特性および増粘特性の両方を有し、追加の凝固剤の必要性を減少させる。
【0029】
本発明の医薬組成物は、当分野で既知の方法によって投与することができる。そのような方法は、限定されないが、本発明の組成物と、水、ミルクまたはジュースのような水性媒体とを混合することによって形成される懸濁剤の経口投与;本発明の組成物が直接的に封入された軟質弾性または硬質ゼラチンカプセルの形態において;静脈、筋肉、腹膜、胸骨、皮下、および関節注射または点滴を包含する非経口投与;または、軟膏、滴剤、または経皮パッチのような局所投与;を包含する。肺および眼の表面を含む皮膚または粘膜への投与を目的とする局所製剤は、本発明の組成物から直接的に製造されるか、または本発明の適切な組成物と水性希釈剤とを合わせることによって製造される懸濁液またはミクロ懸濁液から製造される。そのような局所製剤は、例えば、有効成分のコンシステンシー(consistency)または吸収速度を改質するために、必要に応じて追加の賦形剤を含有することができる。
【0030】
本発明の組成物の製造において、完全な溶解を確実にするために、前記成分を混合または軽い攪拌によってどのような順序で混合してもよい。
【0031】
本発明の医薬組成物および製剤は、所望される治療効果を付与するのに必要とされる、充分な量において、および充分な時間にわたって、投与される。治療的に有効な特定の投与レベルは、治療される特定の症状、障害の程度、特定の有効成分の活性、使用される特定の製剤、投与の時間および方法、治療期間、ならびに医学分野において既知の他の要因を含む多くの要因に依存する。
【0032】
単に例示的なものであって、本発明の範囲を限定するものではない下記実施例を参照することによって、本発明がより深く理解されるであろう。
【0033】
[組成物の製造]
有効成分(ここではシクロスポリンA)と、指定される賦形剤とを、指定される割合において、合わせることによって、本発明の代表的な組成物を製造した。各々の場合において、初めに親水相成分を合わせ、均質になるまで混合した。次に、界面活性剤相の成分を攪拌しながら加え、混合物が均質になるまで混合を継続した。混合を継続しながら、シクロスポリンを加え、完全に溶解されるまで混合した。次に、存在する場合には、付加的な、親水性溶媒、界面活性剤、および他の補助剤を、混合しながら加えて、所望の最終の割合を得た。PEGを増粘剤/凝固剤として使用する半固体組成物の場合は(実施例16〜24に示す)、PEGを添加前に約45℃に加熱し、シクロスポリン含有混合物と混合した。
【0034】
前記手順を使用して、実施例1〜24の組成物を製造した。
【実施例1】
【0035】
【表1】

【実施例2】
【0036】
【表2】

【実施例3】
【0037】
【表3】

【実施例4】
【0038】
【表4】

【実施例5】
【0039】
【表5】

【実施例6】
【0040】
【表6】

【実施例7】
【0041】
【表7】

【実施例8】
【0042】
【表8】

【実施例9】
【0043】
【表9】

【実施例10】
【0044】
【表10】

【実施例11】
【0045】
【表11】

【実施例12】
【0046】
【表12】

【実施例13】
【0047】
【表13】

【実施例14】
【0048】
【表14】

【実施例15】
【0049】
【表15】

【実施例16】
【0050】
【表16】

【実施例17】
【0051】
【表17】

【実施例18】
【0052】
【表18】

【実施例19】
【0053】
【表19】

【実施例20】
【0054】
【表20】

【実施例21】
【0055】
【表21】

【実施例22】
【0056】
【表22】

【実施例23】
【0057】
【表23】

【実施例24】
【0058】
【表24】

【実施例25】
【0059】
本発明の組成物の経口生物学的利用能を、絶食したビーグル犬において下記のように評価した。
【0060】
実施例1〜24の組成物、ならびに市販のシクロスポリン製剤SANDIMMUNE(R)経口液(100mg/mL)およびOPTORAL(R)経口液体(100mg/mL)から成る対照サンプルを、各イヌに50mgのシクロスポリンAを与える量で、対象に投与した(実施例16〜24の組成物は、硬質ゼラチンカプセルにおいて投与された)。血中濃度データを、各々のイヌにおいて5mg/kg投与量に標準化した。
【0061】
一般的実験において、6匹のイヌを絶食させ、次に、t=0において、1種類の組成物を投与した。投与後15、30、60および90分において、ならびに2、4、6、9、12、15および24時間において、血液サンプルを採取し、シクロスポリンの血中濃度に関して分析した。これらのデータから、最大血清濃度(Cmax)、最大血清濃度に達するまでの投与からの時間(Tmax)、および全吸収量(AUC)、ならびに各々の標準偏差が算出され、下記表1に示される。
【0062】
【表25】

【0063】
SANDIMMUNE(R)経口液に関しては、Cmaxが849.2±156.1ng/mLであり、AUCが4517.0±1318.7ng・時/mLであった。OPTORAL(R)経口液に関しては、Cmaxが1045.6±138.0ng/mlであり、AUCが5371.3±461.1ng・時/mLであった。実施例1〜23の製剤、および前記の2種類の商業的に入手可能なシクロスポリン製剤の、CmaxまたはAUCの値において、統計的に有意な差異は見い出されなかった。
【実施例26】
【0064】
他の生物学的利用能の試験が、ヒトにおいて、ある種の本発明の半固体組成物を、商業的に入手可能なシクロスポリン製剤NEORAL(R)(300mgSEC)と比較することによって行われた。試験組成物を硬質ゼラチンカプセルにおいて投与し、前記のように一定の間隔においてデータを集めた。結果を下記表2に示す。その表において、NEORAL(R)に関する比較データに対する、試験組成物に関する対数変換(log−transformed)CmaxおよびAUCデータの割合として、生物学的利用能が算出されている(「CI」は各々の生物学的利用能の統計的信頼区間を意味する。)
【0065】
【表26】

【0066】
前記の結果は、本発明の二成分組成物が、親油性溶媒相を含有しないにもかかわらず、三成分製剤の生物学的利用能に相当する生物学的利用能を有するシクロスポリンを送達できることを示している。
【0067】
前記の詳細な説明および実施例は、例示的なものに過ぎず、請求の範囲およびその同等物によってのみ規定される本発明の範囲を限定するものであると理解すべきではない。開示されている実施態様に対する種々の変更および改質が、当業者に明らかであり、本発明の意図および範囲を逸脱することなく、そのような変更および改質を加えることができると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) シクロスポリン;
(b) 親水相;および
(c) 界面活性剤;
を含んで成り;
但し、(b)が低分子量のモノ−またはポリ−オキシアルカンジオールの、C1〜5アルキルまたはテトラヒドロフルフリル・ジ−または部分エーテルではなく、(c)がエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーではないことを条件とする;
二成分医薬組成物。
【請求項2】
シクロスポリンがシクロスポリンAである請求項1に記載の二成分組成物。
【請求項3】
親水相(b)が、水、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、グリセロール、ジメチルイソソルバイド、およびポリエチレングリコールから成る群から選択される親水成分を含んで成る請求項2に記載の二成分医薬組成物。
【請求項4】
親水相(b)が、プロピレングリコールを含んで成る請求項2に記載の二成分組成物。
【請求項5】
親水相(b)が、プロピレングリコールおよびエタノールの混合物を含んで成る請求項2に記載の二成分組成物。
【請求項6】
親水相(b)が、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびエタノールの混合物を含んで成る請求項2に記載の二成分組成物。
【請求項7】
界面活性剤(c)が、天然または水素化植物油のポリオキシエチレン誘導体;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;アルキル/ジアルキル硫酸塩、スルホン酸塩、またはスルホ琥珀酸塩;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;天然植物油トリグリセリドおよびポリアルキレンポリオールのエステル交換反応生成物;ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテルおよびエステル;ならびにそれらの混合物;から成る群から選択される請求項2〜6のいずれか1項に記載の二成分組成物。
【請求項8】
界面活性剤(c)が、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40水素化ヒマシ油、またはそれらの組み合わせを含んで成る請求項7に記載の二成分組成物。
【請求項9】
約1000を超える分子量を有するポリエチレングリコール;ステアリルアルコール;コロイド二酸化珪素;およびそれらの混合物;から成る群から選択される凝固剤をさらに含んで成る請求項8に記載の二成分組成物。
【請求項10】
燐脂質;天然植物油トリグリセリドおよびポリアルキレンポリオールのエステル交換生成物;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリグリセロールオレエート;グリセリルモノオレエート;グリセリルモノリノレエート;プロピレングリコールラウレート;およびそれらの混合物;から成る群から選択される補助界面活性剤をさらに含んで成る請求項8に記載の二成分組成物。
【請求項11】
約1000を超える分子量を有するポリエチレングリコール;ステアリルアルコール;コロイド二酸化珪素;およびそれらの混合物;から成る群から選択される凝固剤をさらに含んで成る請求項10に記載の二成分組成物。
【請求項12】
(a) 0.03重量%〜25重量%のシクロスポリン;
(b) 10重量%〜90重量%の親水相;および、
(c) 10重量%〜90重量%の界面活性剤;
を含んで成る請求項2に記載の二成分組成物。
【請求項13】
(a) 5重量%〜15重量%のシクロスポリン;
(b) 20重量%〜80重量%の親水相;および、
(c) 20重量%〜70重量%の界面活性剤;
を含んで成る請求項2に記載の二成分組成物。
【請求項14】
8%〜25%の凝固剤をさらに含んで成る請求項12または13に記載の二成分組成物。
【請求項15】
(a) シクロスポリンA;
(b) プロピレングリコール;および、
(c) ポリオキシエチレン−グリセロール−トリリシノレエートポリオキシル35ヒマシ油;
を含んで成る二成分医薬組成物。
【請求項16】
(a)、(b)、および(c)が、約10:40:50の重量比において存在する請求項15に記載の二成分組成物。
【請求項17】
(a) 10重量%〜15重量%の量のシクロスポリA;
(b) 5重量%〜15重量%の量のプロピレングリコール;
(c) 5重量%〜15重量%の量のエタノール;
(d) 30重量%〜50重量%の量のポリオキシエチレン−グリセロール−トリリシノレエートポリオキシル35ヒマシ油;
(e) 10重量%〜25重量%の量のソルビタンモノオレエート;
(f) 5重量%〜15重量%の量のポリエチレングリコール3350;
を含んで成る二成分医薬組成物。

【公開番号】特開2011−105754(P2011−105754A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−19503(P2011−19503)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【分割の表示】特願平10−539828の分割
【原出願日】平成10年3月12日(1998.3.12)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】