説明

シクロスポリンAの誘導体

A,B,RおよびRが明細書に規定された一般式(I)の化合物およびその製剤としての使用を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の説明
本願は2008年12月31日付け出願の米国仮出願第61/142,068号の優先権の利点を主張するものであり、その内容のすべてをここに参照して援用する。
【0002】
技術分野
本明細書に開示するものは、新規化合物、それを含む組成物、その製造方法、合成中の中間体、およびその治療としての使用、例えば抗ウイルス剤としての使用である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
シクロスポリンAは、その免疫抑制活性および抗真菌剤、抗寄生虫剤および抗炎症剤を含む広範囲の治療用途ならびに抗HIV活性にて周知である。シクロスポリンAおよび特定の誘導体が抗HCV活性を有するとして報告されている、Watashi et al, Hepatology, 2003, 38: 1282-1288, Nakagawa et al, Biochem. Biophys. Res. Commun. 2004, 313: 42-7, and Shimotohno and K. Watashi, 2004, American Transplant Congress, Abstract No. 648 (American Journal of Transplantation 2004, Volume 4, Issue s8, Pages 1-653)を参照。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ヒドロキシル基を4−位に導入して修飾したシクロスポリンA(シクロスポリン)誘導体が文献で知られている。例えば、[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAが欧州特許第484,281号明細書に記載され、HIV−I複製に対して活性であると述べられている。3−エーテル/チオエーテル[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA誘導体が、米国特許第5,948,755号、第5,994,299号、第5,948,884号および第6,583,265号;国際公開第2006/039668号および第07/041631号に記載されている。4−位に(4−アセトキシ−N−メチルロイシン)および1−位に(3’−アセトキシ−N−メチル−Bmt)を有する特定のシクロスポリンA誘導体が、国際公開第2006/039668号、米国特許第7,196,161B2号明細書およびCarry et al, Synlett (2004), No. 2, pages 316-320に記載されている。4−位に(4−アセトキシ−N−メチルロイシン)を有するシクロスポリンA誘導体が、国際公開第98/49193号、米国特許第5,977,067号明細書およびCarry et al, Synlett (2004), No. 2, pages 316-320に記載されている。これら化合物は、生物学的活性を有するものとして記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の開示
本発明の一つの態様は、一般式(I)の化合物を提供するものである:
【0006】
【化1】

【0007】
式中のAは(E)−CH=CHRまたは−CHCHRであり、Rはメチル、−CHSH、−CH(チオアルキル)、−CH(カルボキシル)、−CHアルコキシカルボニル、カルボキシルまたはアルコキシカルボニルを示し;
【0008】
Bはエチル、1−ヒドロキシエチル、イソプロピルまたはn−プロピルを示し;
【0009】
は水素、低級アルキル、アリルまたは−XR10を示し;
【0010】
は−C(=O)R21を示し;
【0011】
Xは−S(=O)−または酸素を示し、nは0,1または2であり;
【0012】
10は、1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上のR基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
2〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル;
2〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキニル;
3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるシクロアルキル;または
2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシカルボニルを示し;
【0013】
は、ハロゲン;ヒドロキシ;アルコキシ;カルボキシル;アルコキシカルボニル;−NR、−NR(CHNR;ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されたフェニル;5または6個の環原子および窒素、硫黄および酸素からなる群から選択された同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を有する飽和または不飽和の複素環からなる群から選択され、ここで複素環が環の炭素原子によりアルキルに結合され;
【0014】
およびRは同じかまたは異なり、それぞれ
水素;
1〜6個の炭素原子を有し、1個以上の同じか異なる基Rにより任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
2〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルケニルもしくはアルキニル;
1〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキルにより任意に置換される3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル;
ハロゲン、アルコキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1〜5個の置換基により任意に置換されるフェニル基;
5もしくは6個の環原子および窒素、硫黄および酸素からなる群から選択された同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を有し、飽和もしくは不飽和の複素環であり、ハロゲン、アルコキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換され得る複素環を示すか;または
およびRは、これらが結合した窒素原子と共に、4〜6個の環原子を有する飽和または不飽和の複素環を形成し、該環は窒素、酸素および硫黄からなる群から選択された他のヘテロ原子を任意に含有し、アルキル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択された同じか異なる1〜4個の置換基により任意に置換されることができ;
【0015】
は水素または1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを示し;
【0016】
はハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニルまたは−NRを示し;
【0017】
およびRは同じかまたは異なり、それぞれ水素または1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを示し;
【0018】
21は水素または1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上の基R22により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
2〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル;
2〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキニル;
3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるシクロアルキル;
−OR11, −SR11, −NR1213
アミノカルボニル、N−モノ(低級アルキル)アミノカルボニルもしくはN,N−ジ(低級アルキル)アミノカルボニル;
ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1〜5個の置換基により任意に置換されるフェニル;または
4〜6個の環原子および窒素、硫黄および酸素からなる群から選択された同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を有する飽和もしくは不飽和の複素環であり、ハロゲン、アルコキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される複素環を示し;
【0019】
11は:
1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上の基R23により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1〜5個の置換基により任意に置換されるフェニル基を示し;
【0020】
12およびR13は同じかまたは異なり、それぞれ:
水素;
1〜6個の炭素原子を有し、アミノ、N−モノアルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、チオアルキル、カルボキシおよびアルコキシカルボニルからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
2〜6個の炭素原子を有し、アミノ、N−モノアルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、チオアルキル、カルボキシおよびアルコキシカルボニルからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル;
2〜6個の炭素原子を有し、アミノ、N−モノアルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、チオアルキル、カルボキシおよびアルコキシカルボニルからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキニル;
ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるフェニル;
フェニル環がハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるベンジル基を示すか;または
12およびR13は、これらが結合した窒素原子と共に、4〜6個の環原子を有する飽和もしくは不飽和の複素環を形成し、該環が窒素、酸素および硫黄からなる群から選択された他のヘテロ原子を任意に含有し、アルキル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択された同じか異なる1〜4個の置換基により任意に置換されることができ;
【0021】
22およびR23は同じかまたは異なり、それぞれハロゲン;ヒドロキシ;アルコキシ;カルボキシル;アルコキシカルボニル;アミノ;N−モノアルキルアミノ;N,N−ジアルキルアミノ;−S(=O)アルキル;−S(=O)アリール;3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるシクロアルキル;ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるフェニル;または
4,5もしくは6個の環原子および窒素、硫黄および酸素からなる群から選択された同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を有する飽和もしくは不飽和の複素環であり、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換され得る複素環を示し;
【0022】
pは0,1または2であり;
【0023】
mは2から4の整数であり;または
【0024】
薬学的に許容し得る塩またはその溶媒和物である。
【0025】
特定の場合においては、置換基A,B,RおよびRが、光学異性体および/または立体異性体に関与し得る。これら形態の全てが本発明に包含される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の他の態様は、一般式(I)の化合物と薬学的に許容し得る賦形剤、担体または希釈剤とを含む組成物を提供する。
【0027】
本発明の他の態様は、一般式(I)の化合物の薬学的に許容し得る塩を提供する。薬学的に許容し得る塩の例としては、アルカリ金属、例えばナトリウム、カリウムもしくはリチウムとの塩、またはアルカリ土類金属、例えばマグネシウムもしくはカルシウムとの塩、アンモニウム塩もしくは窒素塩基、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルアミン、プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、ベンジルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−ベンジルフェノールエチルアミン、N,N´−ジベンジルエチレンジアミン、ジフェニレンジアミン、ベンズヒドリルアミン、キニン、コリン、アルギニン、リジン、ロイシンまたはジベンジルアミンの塩が挙げられる。
【0028】
本発明の他の態様は、式(I)の化合物または式(I)の化合物を含有する組成物を使用して、感染症、神経変性疾患、虚血/再かん流損傷、炎症性疾患または自己免疫疾患を治療または予防する方法を提供する。該方法は、通常疾患または疾病を有する被検体にかかる疾患または疾病を治療または予防するのに有効な量の化合物または組成物を投与することを備える。典型的な感染は、HCVまたはHIV感染および本明細書に詳細に記載する他のものを含む。
【0029】
本発明の他の態様は、治療用の式(I)の化合物または式(I)の化合物を含有する組成物を提供する。
【0030】
本発明の他の態様は、感染症、神経変性疾患、虚血/再かん流損傷、炎症性疾患または自己免疫疾患の治療または予防用の式(I)の化合物または式(I)の化合物を含有する組成物を提供する。
【0031】
本発明の他の態様は、薬剤の製造における式(I)の化合物または式(I)の化合物を含有する組成物を提供する。
【0032】
本発明の他の態様は、感染症、神経変性疾患、虚血/再かん流損傷、炎症性疾患または自己免疫疾患の治療または予防用の薬剤の製造における使用のための式(I)の化合物または式(I)の化合物を含有する組成物を提供する。
【0033】
詳細な説明
定義
本明細書に開示の化合物および複合体に関する場合、以下の用語は特記せぬ限り以下の意味を有する。
【0034】
「シクロスポリン」は、当業者に既知のあらゆるシクロスポリン化合物またはその誘導体とする。例えばRuegger et al., 1976, HeIv. Chim. Acta. 59: 1075-92; Borel et al., 1977, Immunology 32: 1017-25を参照し、その内容のすべてを本明細書に参照して援用する。式(I)の典型的な化合物は、シクロスポリンの誘導体である。特記しない限り、本明細書に記載のシクロスポリンは、シクロスポリンAであり、本明細書に記載のシクロスポリン誘導体は、シクロスポリンAの誘導体である。
【0035】
以下に使用するシクロスポリンの命名法および番号付け方式は、J. Kallen et al., "Cyclosporins: Recent Developments in Biosynthesis, Pharmacology and Biology, and Clinical Applications", Biotechnology, second edition, H. -J. Rehm and G. Reed, ed., 1997, p 535-591により使用されるものであり、以下に示す:
位置 シクロスポリンA中のアミノ酸
1 N−メチル−ブテニル−トレオニン(MeBmt)
2 [α]−アミノ酪酸(Abu)
3 サルコシン(Sar)
4 N−メチル−ロイシン(MeLeu)
5 バリン(Val)
6 N−メチル−ロイシン(MeLeu)
7 アラニン(Ala)
8 (D)−アラニン((D)−Ala)
9 N−メチル−ロイシン(Me−Leu)
10 N−メチル−ロイシン(Me−Leu)
11 N−メチルバリン(Me−Val)
【0036】
これは以下に示すような式(I)の化合物の飽和環状炭素原子に相当する:
【化2】

【0037】
「アルキル」は、特に11個までの炭素原子を有する一価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基、より詳細には1〜8個の炭素原子、さらにより詳細には1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基を指す。炭素水素鎖は、直鎖または分岐鎖のいずれかである。この用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、tert−オクチル等のような基により例示される。
【0038】
「アルキレン」は、直鎖または分岐鎖とし得る特に11個までの炭素原子、より詳細には1〜6個の炭素原子を有する二価の飽和脂肪族ヒドロカルビル基を指す。この用語は、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)、プロピレン異性体(例えば、−CHCHCH−および−CH(CH)CH−)等のような基により例示される。
【0039】
「アルケニル」は、一つの実施形態では11個までの炭素原子、別の実施形態では2〜8個の炭素原子、他の実施形態では2〜6個の炭素原子を有する一価のオレフィン系不飽和ヒドロカルビル基を指し、直鎖または分岐鎖とすることができ、少なくとも1部位または1〜2部位のオレフィン系不飽和を有する。いくつかの実施形態において、アルケニル基はエテニル(−CH=CH)、n−プロペニル(−CHCH=CH)、イソプロペニル(−C(CH)=CH)、ビニルおよび置換ビニル等を含む。
【0040】
「アルケニレン」は、特に11個までの炭素原子、より詳細には2〜6個の炭素原子を有する二価のオレフィン系不飽和ヒドロカルビル基を指し、直鎖または分岐鎖とすることができ、少なくとも1部位、特に1〜2部位のオレフィン系不飽和を有する。この用語は、エテニレン(−CH=CH−)、プロペニレン異性体(例えば、−CH=CHCH−、−CH=C(CH)−)等のような基により例示される。
【0041】
「アルキニル」は、特に11個までの炭素原子、より詳細には2〜6個の炭素原子を有するアセチレン系不飽和ヒドロカルビル基を指し、直鎖または分岐鎖とすることができ、少なくとも1部位、特に1〜2部位のアセチレン系不飽和を有する。アルキニル基の特定の非制限の例として、アセチレン、エチニル(−C≡CH)、プロパルギル(−CHC=CH)等が挙げられる。
【0042】
「アルコキシ」は、Rがアルキル基である基−OR基を指す。アルキル基は11個までの炭素原子を有し、より詳細には低級アルキル基として1〜8個の炭素原子、さらにより詳細には1〜6個の炭素原子を有する。特定のアルコキシ基の一例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、1,2−ジメチルブトキシ等が挙げられる。
【0043】
「N−アルキルアミノ」は、基H−NR’−を指し、ここでR’は水素およびアルキル基から選択される。アルキル基は11個までの炭素原子を有し、より詳細には低級アルキルとして1〜8個、さらにより詳細には1〜6個の炭素原子を有する。
【0044】
「アルコキシカルボニル」は、アルコキシがここに規定するようなものであるラジカル−C(=O)−アルコキシを指す。
【0045】
「アリル」は、ラジカルHC=C(H)−C(H)−を指す。
【0046】
「アミノ」は、ラジカル−NHを指す。
【0047】
「アリール」は、任意に置換される芳香族炭化水素基、例えばフェニルを指す。
【0048】
「アリールアミノ」は、R’が水素、アリールおよびヘテロアリールであるアリールNR’−基を指す。
【0049】
「Bmt」は2(S)−アミノ−3(R)−ヒドロキシ−4(R)−メチル−6(E)−オクテン酸を指す。
【0050】
「Cpd」は化合物を意味する。
【0051】
「カルボキシル」は、ラジカル−C(=O)OHを指す。
【0052】
「N,N−ジアルキルアミノ」は、ラジカル-NRR'を意味し、RおよびR’は独立して本明細書に規定するようなアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、置換シクロヘテロアルキル、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリーを示す。
【0053】
「ハロゲン」または「ハロ」は、クロロ、ブロモ、フルオロまたはヨードを指す。
【0054】
「ヘテロアリール」は、任意に置換される飽和または不飽和複素環式ラジカルを指す。一般に、複素環は4〜7個の環原子、例えば5または6個の環原子を含有する。ヘテロアリールの例として、チエニル、フリル、ピローリル、オキサジニル、チアジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、モルホリニル、ピラゾリル、テトラヒドロフリルオキサジアゾリル、チアジアゾリルおよびイソキサゾリルが挙げられる。
【0055】
「ヒドロキシ」は、ラジカル−OHを指す。
【0056】
「チオアルキル」は、Rがアルキル基である基−SRを指す。アルキル基は11個までの炭素原子を有し、より詳細には低級アルキル基として1〜8個の炭素原子、さらにより詳細には1〜6個の炭素原子を有する。一例として、限定しないが、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ等が挙げられる。
【0057】
「薬学的に許容し得る塩」は、生物学的特性を保持し、薬学的使用に対し毒性または不所望なものでない本明細書に開示した化合物のあらゆる塩を指す。かかる塩は、当業界で周知の種々の有機または無機の対イオンから生じるものとする。かかる塩としては、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、スルファミン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンチルプロピオン酸、グリコール酸、グルタル酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、ソルビン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ピクリン酸、桂皮酸、マンデル酸、フタル酸、ラウリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1、2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ショウノウ酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2、2、2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、安息香酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、キナ酸、ムコン酸等のような有機または無機酸で形成した酸付加塩;(2)親化合物に存在する酸性プロトンが(a)金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン若しくはアルミニウムイオン、またはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、リチウム、亜鉛およびバリウムの水酸化物のようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニアにより置換されるか、または(b)有機塩基、例えば脂肪族、脂環式または芳香族有機アミン、例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、N−メチルグルカミンピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウム等と配位する際に形成された塩が挙げられる。
【0058】
かかる塩は、ほんの一例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム等をさらに含み、また化合物が塩基官能価を含む場合、非毒性の有機または無機酸の塩、例えば塩酸塩および水素酸塩のようなヒドロハライド、硫酸塩、リン酸塩、スルファミド酸塩、硝酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、シクロペンチルプロピオン酸塩、グリコール酸塩、グルタル酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、琥珀酸塩、ソルビン酸塩、アスコルビン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)ベンゾエート、ピクリン酸塩、ケイ皮酸塩、マンデル酸塩、フタル酸塩、ラウリン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシレート))、エタンスルホン酸塩、1、2−エタン−二硫酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシラート)、4−クロロベンゼンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、4−トルエンスルホン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、4−メチルビシクロ[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸塩、グルコヘプタン酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、トリメチル酢酸塩、tert−ブチル酢酸塩、ラウリル硫酸塩、グルコン酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、キニン塩酸は、ムコン酸塩等を含む。
【0059】
「生理的に許容し得るカチオン」という用語は、酸性官能基の非毒性で、生理的に許容し得る陽イオン性の対イオンを指す。かかるカチオンは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウムおよびテトラアルキルアンモニウム等により例示される。
【0060】
「溶媒和物」は、化学量論的または非化学量論的量の非共有結合分子間力によって結合した溶媒をさらに含む本明細書に開示した化合物またはその塩を指す。溶媒が水の場合、溶媒和物は水和物である。
【0061】
同じ分子式を有するが、原子の結合の性質若しくは配列または原子の空間配置が異なる化合物を「異性体」と称することは理解すべきである。原子の空間配置が異なる異性体を「立体異性体」と称する。
【0062】
互いに鏡像でない立体異性体は「ジアステレオ異性体」と称し、互いに重ね合わせることができない鏡像のものは「鏡像異性体」と称する。化合物が非対称中心を有する場合、例えば4つの異なる基に結合される場合、一対の鏡像異性体が可能である。鏡像異性体は、その非対称中心の絶対的な配置を特徴とすることができ、カー ン・インゴ ルド・プレローグ順位則(Cahn et al, 1966, Angew. Chem. 78: 413-447, Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 5: 385-414 (errata: Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 5:511); Prelog and Helmchen, 1982, Angew. Chem. 94: 614-631, Angew. Chem. Internal. Ed. Eng. 21 : 567-583; Mata and Lobo, 1993, Tetrahedron: Asymmetry 4: 657-668) によって(R)または(S)を示すか、若しくは分子が偏光の平面を回転する方法を特徴とすることができ、右旋性または左旋性を示す(即ち、それぞれ(+)−または(−)−異性体とする)。キラル化合物は、個々の鏡像異性体またはその混合物のいずれかとして存在することができる。同等割合の鏡像異性体を含有する混合物を、「ラセミ混合物」と称する。
【0063】
特定の実施形態において、本明細書に開示の化合物が1つ以上の非対称中心を有することができる;従ってかかる化合物を(R)もしくは(S)−鏡像異性体またはその混合物として産生することができる。他に示さない限り、例えば式の任意の位置に立体化学の指定により、明細書および請求項における特定の化合物の記載または命名法は、それぞれ鏡像異性体および混合物の双方、ラセミ化合物またはその他のものを含有することを意図する。立体化学の決定および立体異性体の分離方法が当業界で周知である。特定の実施形態において、本発明は本明細書に記載した化合物の塩基での処理による立体異性体を提供する。
【0064】
特定の実施形態において、本明細書に開示の化合物は、「立体化学的に純粋」である。立体化学的に純粋な化合物は、当業者に「純粋」として認識される立体科学的純度のレベルを有する。当然、この純度のレベルは100%未満である。特定の実施形態において、「立体化学的に純粋」とは、代替異性体を実質的に有さない化合物を示す。特定の実施形態において、化合物は他の異性体を85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%または99.9%有さない。
【0065】
「サルコシン」または「Sar」は、当業者に既知の−N(Me)CHC(=O)−の構造を有するアミノ酸残基を指す。当業者は、サルコシンをN−メチルグリシンとして認識する場合がある。
【0066】
ここで用いる「被検体」および「患者」の用語を本明細書では互換的に使用する。「被検体」(“subject”および“subjects”)という用語は、動物、いくつかの実施形態においては非霊長類(例えばウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットおよびマウス)、霊長類(例えばカニクイザルのようなサル、チンパンジーおよびヒト)およびヒトを含む哺乳類を指す。他の実施形態において、被検体は家畜(例えば、ウマ、ウシ、ブタ等)またはペット(例えばイヌまたはネコ)である。一つの実施形態において、被検体はヒトである。
【0067】
ここで用いる「治療薬(“therapeutic agent”および“therapeutic agents”)」という用語は、疾病もしくはその1つ以上の兆候の治療、処置もしくは改善に使用し得るあらゆる薬剤を指す。特定の実施形態において、「治療薬」という用語は、本明細書に開示の化合物を指す。特定の他の実施形態において、「治療薬」という用語は、本明細書に開示の化合物を指さない。一つの実施形態において、治療薬は疾病もしくはその1つ以上の兆候の治療、処置、予防もしくは改善に有用であることが既知か、以前からもしくは最近使用されている薬剤である。
【0068】
「治療に有効な量」とは、疾患を治療するため被検体に投与するとき、かかる疾患の治療を行うに十分である化合物、複合体または組成物の量を意味する。「治療有効量」は、とりわけ化合物、疾患およびその重篤度ならびに治療すべき被検体の年齢、体重等に応じて変えることができる。
【0069】
「THF」はテトラヒドロフランを意味する。
【0070】
あらゆる疾患または疾病の「治療する」または「治療」は、一つの実施形態において、被検体に存在する疾患または疾病を改善することを指す。他の実施形態において、「治療する」または「治療」は、被検体によって見分けにくい少なくとも一つの物理的パラメータを改善することを指す。さらに他の実施形態において、「治療する」または「治療」は、物理的(例えば、識別可能な兆候の安定化)もしくは生理学的(例えば、物理的パラメータの安定化)またはその両方のいずれかで疾患または疾病を調節することを指す。さらに他の実施形態において、「治療する」または「治療」は、疾患または疾病の発症を遅延することを指す。
【0071】
ここで用いる「予防薬(“prophylactic agent”および“prophylactic agents”)」の用語は、疾病もしくはその1つ以上の兆候の予防に使用し得るあらゆる薬剤を指す。特定の実施形態において、「予防薬」の用語は、本明細書に開示の化合物を指す。特定の他の実施形態において、「予防薬」の用語は、本明細書に開示の化合物でないものとする。一つの実施形態において、予防薬は疾患の発症、発達、進行および/もしくは重篤度を予防もしくは妨げるのに有用であることが知られているか、以前からもしくは最近使用されている薬剤である。
【0072】
ここで用いる「予防(“prevent”、“preventing”および“prevention”)」の用語は、療法(例えば予防薬または治療薬)の投与または療法の組み合わせ(例えば予防薬または治療薬の組み合わせ)の投与による被検体における疾病の一つ以上の兆候の再発、発症または発達の予防を指す。
【0073】
ここで用いる「予防に有効な量」という熟語は、疾患と関連のある1つ以上の兆候の発達、再発もしくは発症の予防をもたらすか、他の療法(例えば、他の予防薬)の予防効果を増強もしくは改善するのに十分な療法(例えば予防薬)の量を指す。
【0074】
「ラベル」という用語は、物品の直接容器上の記入、印刷または図画の物体の表示、例えば薬学的な活性剤を含有するバイアルに表示された資料を指す。
【0075】
「ラベル付け」という用語は、あらゆる物品、またはその容器、包装紙若しくはかかる物品を伴うあらゆるものに対する全てのラベルおよび他の記入、印刷もしくは図画の物体、例えば薬学的な活性剤の容器に伴うか関連した添付文書、指示のビデオテープもしくはDVDを指す。
【0076】
化合物
一つの実施形態において、上記式(I)の化合物を提供するもので、ここで:
【0077】
Aは、(E)−CH=CHRまたは−CHCHRであり、式中のRはメチル、−CHSH、−CH(チオアルキル)、−CH(カルボキシル)または−CHアルコキシカルボニルを示し;
【0078】
Bは、エチル、1−ヒドロキシエチル、イソプロピルまたはn−プロピルを示し;
【0079】
は、水素、低級アルキル、アリルまたは−XR10を示し;
【0080】
は、−C(=O)R21を示し;
【0081】
Xは、−S(=O)−または酸素を示し、nは0,1または2であり;
【0082】
10は、
1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上の基Rにより任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
2〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル;
2〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキニル;
3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるシクロアルキル;または
2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシカルボニルを示し;
【0083】
は、ハロゲン;ヒドロキシ;アルコキシ;カルボキシル;アルコキシカルボニル;−NR、−NR(CHNR;ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるフェニル;5または6個の環原子および窒素、硫黄および酸素からなる群から選択された同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を有し、飽和または不飽和の複素環で、環の炭素原子によってアルキルに結合して複素環からなる群から選択され;
【0084】
およびRは同じかまたは異なり、それぞれ:
水素;
1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上のR基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルケニルもしくはアルキニル;
1〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキルにより任意に置換される3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル;
ハロゲン、アルコキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1〜5個の置換基により任意に置換されるフェニル;
5または6個の環原子および窒素、硫黄および酸素からなる群から選択された同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を有し、飽和もしくは不飽和の複素環であり、ハロゲン、アルコキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される複素環を示すか;または
およびRは、これらが結合した窒素原子と共に、4〜6個の環原子を有する飽和もしくは不飽和の複素環を形成し、前記環は窒素、酸素および硫黄からなる群から選択された他のヘテロ原子を任意に含有し、またアルキル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択された同じか異なる1〜4個の置換基により任意に置換することができ;
【0085】
は、水素または1〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキルを示し;
【0086】
は、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニルまたは−NRを示し;
【0087】
およびRは同じかまたは異なり、それぞれ水素または1〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキルを示し;
【0088】
21は:水素または1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上の基R22により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
2〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル;
2〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキニル;
3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるシクロアルキル;
アミノカルボニル、N−モノ(低級アルキル)アミノカルボニルまたはN,N−ジ(低級アルキル)アミノカルボニル;
ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1〜5個の置換基により任意に置換されるフェニル;または
4〜6個の環原子および窒素、硫黄および酸素からなる群から選択された同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を有し、飽和もしくは不飽和の複素環で、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される複素環を示し;
【0089】
22は:
ハロゲン;ヒドロキシ;アルコキシ;カルボキシル;アルコキシカルボニル;アミノ;N−モノアルキルアミノ;N,N−ジアルキルアミノ;−S(=O)アルキル;−S(=O)アリル;3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるシクロアルキル;ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1〜5個の置換基により任意に置換されるフェニル;または4,5または6個の環原子および窒素、硫黄および酸素からなる群から選択された同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を有し、飽和もしくは不飽和の複素環で、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される複素環を示し;
【0090】
pは、0,1または2であり;
【0091】
mは、2〜4の整数であり;
【0092】
またはその薬学的に許容し得る塩もしくは溶媒和物である。
【0093】
特定の実施形態において、Aは(E)−CH=CHRを示す。さらなる実施形態において、Aは−CHCHRを示す。一つの実施形態において、Aは(E)−CH=CHRを示す。
【0094】
一つの実施形態において、Aは(E)−CH=CHRまたは−CHCHRであり、式中のRはメチル、−CHSH、−CH(チオアルキル)、−CH(カルボキシル)または−CH(アルコキシカルボニル)を示す。
【0095】
一つの実施形態において、Rはメチルを示す。
【0096】
一つの実施形態において、Bはエチルを示す。
【0097】
一つの実施形態において、Rは水素または−XR10を示す。他の実施形態において、Rはメチルを示す。
【0098】
特定の実施形態において、R10は基Rにより任意に置換される1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを示す。さらなる実施形態において、R10は基Rにより任意に置換されるメチルまたはエチルを示す。さらなる実施形態において、R10は基Rにより置換されたエチルを示す。他の実施形態において、R10はメチルを示す。
【0099】
特定の実施形態において、Rは−NRを示し、ここでRおよびRは同じかまたは異なり、それぞれ水素または1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキルを示す。さらなる実施形態において、Rは−NRを示し、ここでRおよびRはそれぞれメチルまたはエチルを示す。またさらなる実施形態において、Rは−NRを示し、ここでRおよびRはそれぞれメチルを示す。
【0100】
いくつかの実施形態において、Xは酸素、硫黄または窒素である。特定の実施形態において、Xは酸素または硫黄である。さらなる実施形態において、Xは酸素である。またさらなる実施形態において、Xは硫黄である。
【0101】
特定の実施形態において、R21は1〜4個の炭素原子を有し、1個以上の基R22により任意に置換される直鎖または分岐鎖のアルキルを示す。さらなる実施形態において、R21は基R22により任意に置換されるメチルを示す。またさらなる実施形態において、R21はメチルを示す。
【0102】
さらなる実施形態において、R21は:
1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上の基R23により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
3〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル;
−OR11,−SR11もしくは−NR1213を示す。
【0103】
一つの実施形態において、R22はアルコキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノまたはN,N−ジアルキルアミノを示す。さらなる実施形態において、R22はアミノ、N−モノアルキルアミノまたはN,N−ジアルキルアミノを示す。またさらなる実施形態において、R22はN,N−ジアルキルアミノを示す。またさらなる実施形態において、R22はN,N−ジアルキルアミノまたはN,N−ジエチルアミノ基を示す。
【0104】
一つの実施形態において、R11は:
1〜6個の炭素原子を有し、基R23により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、アミノ、N−アルキルアミノよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1〜5個の置換基により任意に置換されるフェニル基を示す。
【0105】
一つの実施形態において、R23はハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1つ以上の置換基により任意に置換されるフェニル基を示す。他の実施形態において、R23はN,N−ジアルキルアミノ、またはN,N−ジアルキルアミノにより任意に置換されるフェニルを示す。
【0106】
特定の実施形態において、R12およびR13は同じかまたは異なり、それぞれ:
水素;
1〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル;
フェニル環がハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1〜5個の置換基により任意に置換されるベンジルを示すか;または
【0107】
12およびR13は、これらが結合した窒素原子と共に、4〜6個の環原子を有する飽和複素環を形成し、該環が窒素、酸素および硫黄からなる群から選択された他のヘテロ原子を任意に含有し、また同じか異なる1個以上のアルキル基により任意に置換することができる。
【0108】
他の実施形態において、R12およびR13は同じか異なり、それぞれ水素;1〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;3〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル;フェニル環がハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個または2個の置換基により任意に置換されるベンジルを示すか;またはR12およびR13は、これらが結合した窒素原子と共に、4〜6個の環原子を有する飽和複素環を形成し、該環がさらなる窒素原子を任意に含有し、また同じか異なる1個以上のアルキル基により任意に置換することができる。
【0109】
さらに他の実施形態において、R12およびR13は同じかまたは異なり、それぞれ水素;1〜6個の炭素原子を有し、アミノ、N−モノアルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、チオアルキル、カルボキシおよびアルコキシカルボニルからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖または分岐鎖のアルキル;3〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル;フェニル環がアルコキシにより任意に置換されるベンジルを示すか;またはR12およびR13は、これらが結合した窒素原子と共に、4〜6個の環原子を有する飽和複素環を形成し、該環がさらなる窒素原子を任意に含有し、また同じか異なる1個以上のアルキル基により任意に置換することができる。
【0110】
特定の実施形態において、式(I)の化合物を提供し、この場合Aは(E)−CH=CHCHを示し;Bはエチルを示し;Rは水素または−XR10を示し;Xは酸素または硫黄を示し;R10はアルキル(例えばメチル)を示し;R21は1〜4個の炭素原子を有し、1個以上の基R22により任意に置換される直鎖または分岐鎖のアルキルを示す。さらなる実施形態において、R21は基R22により任意に置換されるメチルを示す。またさらなる実施形態において、R21はメチルを示す。
【0111】
特定の実施形態において、式(I)の化合物を提供し、ここの場合Aは(E)−CH=CHCHを示し;Bはエチルを示し;Rは水素または−XR10を示し;Xは酸素または硫黄を示し;R10はアルキル(例えばメチル)を示し;R21は、1〜4個の炭素原子を有し、1個以上の基R22により任意に置換される直鎖または分岐鎖のアルキルを示し、R22はアルコキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノまたはN,N−ジアルキルアミノを示す。さらなる実施形態において、R22はアミノ、N−モノアルキルアミノまたはN,N−ジアルキルアミノを示す。またさらなる実施形態において、R22はN,N−ジアルキルアミノを示す。またさらなる実施形態において、R22はN,N−ジメチルアミノまたはN,N−ジエチルアミノを示す。
【0112】
特定の実施形態において、式(I)の化合物を提供し、この場合Aは(E)−CH=CHCHを示し;Bはエチルを示し;Rは水素または−XR10を示し;Xは酸素または硫黄を示し;R10はアルキル(例えばメチル)を示し;R21は基R22により任意に置換される低級アルキルを示し;R22はN,N−ジアルキルアミノ(例えばN,N−ジメチルアミノまたはN,N−ジエチルアミノ)を示す。
【0113】
特定の実施形態において、式(I)の化合物を提供し、ここで:
【0114】
Aは、(E)−CH=CHCHを示し;
【0115】
Bは、エチルを示し;
【0116】
は、水素または−XR10を示し;
【0117】
Xは、酸素または硫黄を示し;
【0118】
10は、アルキル(例えばメチル)を示し;
【0119】
21は:
1〜4個の炭素原子を有し、基R22により任意に置換される直鎖または分岐鎖のアルキル;
−OR11、−SR11または−NR1213を示し;
【0120】
11はニトロにより置換されたフェニルまたはベンジルを示し;
【0121】
12およびR13は同じかまたは異なり、それぞれ:
水素;
1〜6個の炭素原子を有し、アミノ、N−モノアルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、チオアルキル、カルボキシおよびアルコキシカルボニルからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
1〜4個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルケニルを示すか;または
12およびR13は、これらが結合した窒素原子と共に、4〜6個の環原子を有する飽和複素環を形成し、該環が他の窒素原子を任意に含有し、またアルキル(例えばメチル)により任意に置換することができ;
【0122】
22はN,N−ジアルキルアミノ(例えばN,N−ジメチルアミノ)を示し;
【0123】
22は、アルコキシ(例えばメトキシ)により任意に置換されたフェニルを示すか;またはR23はN,N−ジアルキルアミノ(例えばN,N−ジメチルアミノ)を示す。
【0124】
一つの実施形態において、提供される式(I)の化合物は以下から選択される:
化合物 名称
A [(R)−メトキシ−Sar][4’−アセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA
B [(R)−メチルチオ−Sar][4’−N,N’−ジメチルアミノアセトキシ−N−メチルロイシン]−シクロスポリンA
C [4’−N,N’−ジメチルアミノアセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA
D [4’−N,N’−ジエチルアミノアセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA
E [4’−アセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA
F [4’−トリメチルアセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA
G [4’−プロピオニルオキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA
H [4’−ブチリルオキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA
I [4’−イソブチリルオキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA
J [4’−(トランス−2−メチル−2−ブテノイル)オキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA
K [4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA p−ニトロフェニル−4’−カーボネート
L [4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA N,N−ジメチル−4’−カルバメート
M [4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA N,N−ジエチル−4’−カルバメート
N [4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA N−メチル−4’−カルバメート
O [4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA N−エチル−4’−カルバメート
P [4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA N−アリル−4’−カルバメート
Q [4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA N−(n−ブチル)−4’−カルバメート
R [4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA N−(n−ヘキシル)−4’−カルバメート
S [4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA N−ベンジル−4’−カルバメート
T [4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]4シクロスポリンA N−(p−メトキシベンジル)−4’−カルバメート
U [4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA アゼチジン−4’−カルバメート
V [4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA ピロリジン−4’−カルバメート
W [4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA ピペリジン−4’−カルバメート
X [4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA S−ベンジル−4’−チオカーボネート
Y [4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA 4−メチル−l−ピペラジン−4’−カルバメート
Z [4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA N,N−ジメチルエチレンジアミン−4’−カルバメート
【0125】
以後、文字AからZを用いて上記化合物を同定する。
【0126】
上記化合物AからJは、親構造としてのシクロスポリンAの誘導体として命名し、化合物KからZはカーボネートおよびカルバメート誘導体として命名する。これら化合物は、異なる親構造を使用した代わりの命名法によって命名し得ることが理解される。例えば、[4’−アセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAという名称の化合物Eはまた、[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA 4’−アセテートと称することができ、以下の式の化合物であり:
【化3】

また[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA N,N−ジメチル−4’−カルバメートという名称の化合物Lは[4’−(N,N−ジメチルアミノカルボニル)オキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAと称することができ、以下の式の化合物である:
【化4】

【0127】
式(I)の化合物を当業者に明白なあらゆる方法によって調製、分離または得ることができる。典型的な調製方法を後述する例で詳細に説明する。
【0128】
本発明の特徴によると、式(I)の化合物を下記の式(II)の化合物の脱保護によって調製することができる:
【化5】

【0129】
ここで、R30は保護基を示し、該保護基を水素で置換するようにする。保護基は、選択的に除去することができるあらゆる基、例えばアシル保護基(例えばアセチル、トリクロロアセチル)またはベンゾイル基とすることができる。反応は、他の基に対し最小の影響で保護基の除去を可能とする条件下で生じる。例えば、保護基がアセチルの場合、保護基をナトリウムメトキシドのような金属アルコキシドとの反応によって除去することができる。RおよびR30がそれぞれアシルを示す場合、Rに影響を及ぼすことなくR30を水素と置換することができる。生成物を直接結晶化によるか、またはその後のシリカゲルまたは逆相媒体を使用したクロマトグラフィー法によって分離することができる。
【0130】
特定の実施形態において、式(II)の化合物を提供するもので、ここでRおよびR30が共にアセチルを示す場合、Rは水素、チオメチル、メトキシ、アセトキシまたはエチレン−(2,2−ジエチルアミノ)以外のものである。
【0131】
上記式(II)の化合物は、下記の式(III)の化合物を式(R21CO)Oの無水物と塩基(例えばピリジン)およびN,N−ジメチルアミノピリジンのような求核触媒の存在下ジクロロメタンのような溶媒中で約0℃から約25℃の間の温度にて反応させることにより調製することができる。
【化6】

【0132】
或いはまた、式(III)の化合物を塩化アシル(R21COCl)とトリエチルアミンのような塩基の存在下ジクロロメタンのような溶媒中約0℃から約25℃の間の温度にて反応させてもよい。いずれかのアシル化方法用の他の溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、酢酸エチルおよびメチル−t−ブチルエーテルが挙げられる。特定の実施形態において、式(III)の化合物を提供する。
【0133】
30が保護基(例えばアセチル、トリクロロアセチル)またはベンゾイル基を示す上記式(III)の化合物は、下記の式(IV)の化合物をハロゲン化テトラアルキルアンモニウム、例えばフッ化テトラブチルアンモニウムまたは酸性条件下で脱保護することによって調製することができる:
【化7】

【0134】
ここで、Pは保護基、例えばシリル基(トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリルまたはtert−ブチルジメチルシリル)を示す。特定の実施形態において、式(IV)の化合物を提供する。
【0135】
上記式(IV)の化合物は、下記の式(V)の化合物を式(R21CO)Oの無水物で塩基(例えばピリジン)およびN,N−ジメチルアミノピリジンのような求核触媒の存在下ジクロロメタンのような溶媒中約0℃から約25℃の間の温度にて処理することによって調製することができる:
【化8】

【0136】
ここで、Pは保護基、例えばシリル基(トリメチルシリル、トリイソプロピルシリルまたはtert−ブチルジメチルシリル等)を示す。或いはまた、式(V)の化合物をハロゲン化アシル(R21COCl)とトリエチルアミンのような塩基の存在下ジクロロメタンのような溶媒中約0℃から約25℃の間の温度にて反応させてもよい。いずれかのアシル化方法用の他の溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、酢酸エチルおよびメチル−t−ブチルエーテルが挙げられる。特定の実施形態において、式(V)の化合物を提供する。
【0137】
上記式(V)の化合物は、下記の式(VI)の化合物を塩化シリル(例えば塩化トリメチルシリル)またはシリルトリフレート(例えばトリイソプロピルシリルトリフレートまたはtert−ブチルジメチルシリルトリフレート)と塩基(例えばピリジン、2,6−ルチジンまたはトリエチルアミン)およびのN,N−ジメチルアミノピリジンのような求核触媒の存在下ジクロロメタンのような溶媒中約0℃から約25℃の間の温度にて反応させることにより調製することができる。
【化9】

【0138】
この反応は、一般に高レベルの位置選択性で生じる。
【0139】
本発明のさらなる特徴によると、式(I)の化合物は、上記式(VI)の化合物を式(R21CO)Oの無水物と金属触媒の存在下反応させることによって調製することができる。金属触媒の例としては、ビスマス(III)化合物、例えばトリフルオロメタンスルホン酸ビスマス(III);スカンジウム(III)化合物、例えばスカンジウムトリフレート;インジウム(III)化合物、例えばインジウムトリフレート;シリル化合物、例えばトリメチルシリルトリフレート;有機スズ触媒(通常選択的なアシル化反応用の軽度な条件下);ハロゲン化亜鉛(II)、例えば塩化亜鉛が挙げられる。反応をビスマス(III)トリフルオロメタンスルホネートのようなビスマス(III)化合物を用いて行うことが好ましい。反応は、通常式(R21CO)Oの無水物そのものを溶媒として使用するか、非プロトン性溶媒中にて行う。溶媒の例としては、ジクロロメタン、トルエン、アセトニトリルおよびテトラヒドロフラン(THF)が挙げられる。反応は通常約−20℃から80℃、好ましくは約0℃から約25℃で行う。
【0140】
式(VI)の化合物は、当業者に既知の方法、例えば米国特許第5,948,884号、第5,994,299号および第6,583,265号、国際公開第99/32512号および第99/67280号に開示された方法に従って調製することができる。これら参考文献の内容をすべてここに参照して援用する。
【0141】
本発明のさらなる特徴によれば、Xが硫黄である一般式(I)、(II)、(III)、(IV)または(V)の化合物は、−XR10を水素により置換した一般式(I)、(II)、(III)、(IV)または(V)の対応する化合物を強塩基で処理してポリアニオンを形成し、その後ポリアニオンを硫黄親電子物質で処理して基−S−R10を導入することにより調製することができる。かかる硫黄親電子物質の例として、式R10−S−S−R10のジスルフィドまたはHalがハロゲンである式R10−S−Halのスルフェニルハライドが挙げられる。通常、反応を不活性雰囲気(例えば窒素またはアルゴン)下低温(例えば約−80℃から約−35℃)にて不活性溶剤、特にテトラヒドロフラン、ジオキサン、t−ブチルメチルエーテルおよびジエチルエーテルのような非プロトン性溶媒中で行う。有効な塩基の例として、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、LDA/n―ブチルリチウム、ナトリウムアミド/アンモニアおよびリチウムN,N−トリメチルシリルアミン/塩化セシウムが挙げられる。硫黄親電子物質の添加後、検査前に温度を大気条件まで徐々に上げる。
【0142】
本発明のさらなる特徴によれば、Xが酸素である一般式(I)、(II)、(III)、(IV)または(V)の化合物は、Xが硫黄である式(I)、(II)、(III)、(IV)または(V)の対応する化合物を1)適当な溶媒中過剰量の式Ar−(アルキレン)−OHの適切なアルコールまたは2)酢酸中に酢酸水銀で処理し、その後過剰量の式R10−OHのアルコールを添加することによって調製することができる。通常、反応はブレンステッド酸によって達成され、上昇した温度(例えば50から60℃)にてテトラヒドロフランおよびジオキサンのような不活性溶媒の存在下で行う。プロトン供与酸の例としては、硫酸、塩酸、トルエンスルホン酸およびカンファースルホン酸が挙げられる。一つの実施形態において、酢酸中の酢酸水銀を用いてほぼ鏡像異性的に純粋なR異性体を産生する。
【0143】
本発明の更なる特徴によれば、Xが−S(O)およびnが1もしくは2、またはR22が−S(=O)アルキルもしくは1−S(=O)アリールおよびpが1もしくは2である一般式(I)、(II)、(III)、(IV)もしくは(V)の化合物は、Xが硫黄またはR22がチオアルキルもしくはチオアリルである式(I)、(II)、(III)、(IV)もしくは(V)の対応する化合物を不活性溶媒中酸化剤を用いて、0℃から溶媒の還流温度までの温度で酸化することにより調製する。有機もしくは無機の酸化剤を使用して有機硫化物をスルホキシドもしくはスルホンに酸化することができる。この変換に用いるのに優れた酸化剤は、過酸化水素、クロム酸、硝酸、二酸化マンガン、オゾン、過酸、二酸化セレニウム、ナトリウム過ヨウ素酸塩、メタ−クロロパーオキシ安息香酸、超原子価ヨウ素試薬、過ホウ酸ナトリウムおよび四酸化二窒素である。クロロホルムもしくはジクロロメタンのようなハロゲン化溶媒、またはハロゲン化溶媒およびアルコールの溶媒混合物を通常使用する。Sc(OTf)、タングステン酸ナトリウムおよびVO(acac)2のような金属触媒を用いて酸化を容易にすることができる。尿素−過酸化水素を用いて過酸化水素を置換することができる。スルホキシドはまた、相転移触媒を用いる異質条件下硫化物を過ヨウ素酸ナトリウムで酸化することにより作成することができる。
【0144】
が−XR10を示し、R10が1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる一個以上の基Rによって置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキルを示し、Rが−NRおよび−NR(CHNRである式(II)の化合物は、R10が1〜6個の炭素原子を有し、1個以上のヒドロキシにより置換する直鎖もしくは分岐鎖のアルキルである式(II)の対応する化合物から選択的なヒドロキシの酸化を行い、続いて式HNRまたはHNR(CHNRの化合物での還元的アミノ化を行うことによって調製することができる。選択的酸化は、例えばデス・マーチン・ペルヨージナン、クロロクロム酸ピリジニウム、重クロム酸ピリジニウム、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ、過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウムまたはN−メチルモルホリンN−オキシドを使用して行うことができる。
【0145】
上述したように、本明細書に開示の化合物は中性型または塩の形態とすることができる。塩の形態は当業者に既知のあらゆる塩形態とすることができる。特に有用な塩形態は、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、塩化物、メタンスルホン酸塩またはプロピオン酸塩と配位するものである。
【0146】
本明細書に開示の化合物を塩基部分で置換する場合、酸付加塩を形成することができる。酸付加塩を調製するのに使用し得る酸は、遊離塩基と組み合わせた際に薬学的に許容し得る塩、即ち陰イオンが塩の製薬学的な投与量で被検体に非毒性である塩を産生するものを含む。本発明の範囲内の薬学的に許容し得る塩は、以下の酸に由来するものである:塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸および硝酸のような無機酸;および酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンチルプロピオン酸、グリコール酸、グルタル酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、ソルビン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ピクリン酸、桂皮酸、マンデル酸、フタル酸、ラウリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1、2−エタン−ジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、ショウノウ酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ[2、2、2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert−ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、安息香酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、キナ酸、ムコン酸等の有機酸である。
【0147】
対応する酸付加塩としては、塩酸塩および臭化水素酸塩のようなヒドロハライド、硫酸塩、リン酸塩、スルファミン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、シクロペンチルプロピオン酸塩、グリコール酸塩、グルタル酸塩、ピルビン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、琥珀酸塩、ソルビン酸塩、アスコルビン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸塩、ピクリン酸塩、ケイ皮酸塩、マンデル酸塩、フタル酸塩、ラウリン酸塩、メタンスルホン酸塩(メシラート)、エタンスルホン酸塩、1、2−エタン−ジスルホン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシラート)、4−クロロベンゼンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、4−トルエンスルホン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、4−メチルビシクロ[2,2,2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸塩、グルコヘプトン酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、トリメチル酢酸塩、tert−ブチル酢酸塩、ラウリル硫酸塩、グルコン酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、キニン酸塩、ムコン酸塩等が挙げられる。
【0148】
本発明の更なる特徴によると、本明細書に開示の化合物、例えば式(I)の化合物の酸付加塩は、既知の方法の適応または適合による遊離塩基と適当な酸の反応によって調製することができる。例えば、本発明の化合物の酸付加塩は、遊離塩基を水溶液、水溶性アルコール溶液または適当な酸を含有する他の適当な溶媒に溶解し、溶液を蒸発して塩を分離することによるか、または遊離塩基および酸を有機溶媒中で反応させ、ここで塩を直接分離するかまたは溶液の濃縮によって得ることができるかのいずれかによって調製することができる。
【0149】
本明細書に開示の化合物、例えば式(I)の化合物の酸添加塩は、既知の方法の適応または適合により塩から再生することができる。例えば、式(I)の化合物の親化合物をその酸付加塩からアルカリ、例えば重炭酸ナトリウム水溶液またはアンモニア水溶液で処理することによって再生することができる。
【0150】
本明細書に開示の化合物、例えば式(I)の化合物を酸性部分で置換する場合、塩基付加塩を形成することができる。本発明の範囲内で例えばアルカリおよびアルカリ土類金属塩を含む薬学的に許容し得る塩は、以下の塩基に由来するものである:水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、水酸化バリウム;および脂肪族、脂環式または芳香族有機アミンのような有機アミン、例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、リジン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N-ベンジルフェノールエチルアミン、N-メチルグルカミンピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、水酸化テトラメチルアンモニウム等。
【0151】
本明細書に開示の化合物、例えば式(I)の化合物の金属塩は、水性または有機溶媒中で所定金属の水素化物、水酸化物、炭酸塩または類似の反応性化合物を遊離酸形態の化合物と接触させることによって得ることができる。用いる水性溶媒は、水とするか、水と有機溶媒の混合物とすることができ、特定の実施形態において、有機溶媒はメタノールまたはエタノールのようなアルコール、アセトンのようなケトン、テトロヒドロフランのような脂肪族エーテルまたは酢酸エチルのようなエステルである。このような反応は、通常大気温度で行うが、所要に応じて加熱しながら行ってもよい。
【0152】
本明細書に開示の化合物、例えば式(I)の化合物のアミン塩は、アミンを水性または有機溶媒中に遊離酸形態の化合物と接触させることによって得ることができる。適当な水性溶媒は、水および水とメタノールもしくはエタノールのようなアルコール、テトラヒドロフランのようなエーテル、アセトニトリルのようなニトリルまたはアセトンのようなケトンとの混合物を含む。アミノ酸塩を同様に調製することができる。
【0153】
本明細書に開示の化合物、例えば式(I)の化合物の塩基付加塩は、塩から既知の方法の適応または適合により再生することができる。 例えば、式(I)の化合物の親化合物をその塩基付加塩から酸、例えば塩酸での処理によって再生することができる。
医薬品組成物および投与法
【0154】
本明細書に開示の方法に用いる式(I)の化合物を、特定の実施形態において一般式(I)の少なくとも一つの化合物を含有する医薬品組成物を適切であれば塩形態で単独または希釈剤またはアジュバンドのような一つ以上の互換性および製薬学的に許容し得る担体若しくは他の抗HCV剤との組み合わせの形態で使用して投与することができる。臨床診療において、本発明のシクロスポリン化合物をあらゆる従来の経路、特に経口、非経口、直腸または吸入(例えばエアゾールの形状)によって投与することができる。一つの実施形態において、本明細書に開示の化合物を経口投与する。
【0155】
経口投与用の固体組成物として、錠剤、丸剤、硬いゼラチンカプセル、粉末または顆粒を使用することができる。これら組成物において、本発明に係る活性製品をサッカロース、ラクトースまたは澱粉のような一つ以上の不活性希釈剤またはアジュバントと混合する。
【0156】
これら組成物は、希釈剤以外の物質、例えばステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤または放出制御用のコーティングを含有することができる。
【0157】
水または液体パラフィンのような不活性希釈剤を含有する経口投与用の液体組成物として、薬学的に許容し得る溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップおよびエリキシルを使用することができる。これら組成物はまた、希釈剤以外の物質、例えば湿潤剤、甘味剤または香味剤を含有することができる。
【0158】
非経口投与用の組成物はエマルジョンまたは滅菌溶液とすることができる。溶媒または賦形剤として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、特にオリーブ油もしくは注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルを使用することが可能である。これら組成物はまた、アジュバント、特に湿潤剤、等張剤、乳化剤、分散剤および安定剤を含有することができる。殺菌は、いくつかの方法、例えば細菌フィルターの使用、放射線または加熱によって実施することができる。これらは、使用時に滅菌水またはあらゆる他の注射可能な滅菌媒体に溶解し得る滅菌固体組成物の形状で調製することもできる。
【0159】
直腸投与用の組成物は、有効成分に加えてカカオバター、半合成グリセリドまたはポリエチレングリコールのような賦形剤を含有する坐薬または直腸カプセルである。
【0160】
組成物はまたエアゾールとすることができる。液体エアゾールの形状での使用のためには、組成物が安定な滅菌溶液または使用時に非発熱性の滅菌水、食塩水もしくはあらゆる他の薬学的に許容し得る賦形剤に溶解した固体組成物とすることができる。直接吸入すべき乾燥エアゾールの形状での使用のためには、有効成分を微粉砕し、水溶性の固形希釈剤または賦形剤、例えばデキストラン、マンニトールまたはラクトースと混合する。
【0161】
一つの実施形態において、本明細書に開示の組成物は医薬品組成物または単一ユニット投与形態である。本発明の医薬品組成物および単一ユニット投与形態は、予防または治療に有効な量の一つ以上の予防薬または治療薬(例えば式(I)の化合物または他の予防薬または治療薬)と、通常一つ以上の薬学的に許容し得る担体または賦形剤とを含む。特定の実施形態および本件において、「薬学的に許容し得る」という用語は、動物、特にヒトにおける使用に関して連邦政府または州政府の監督官庁により承認されたか、米国薬局方または他の通常認識された薬局方に記載されたものを意味する。「担体」という用語は、治療剤を投与する際の希釈剤、アジュバント(たとえばフロイントアジュバント(完全および不完全))、賦形剤またはビヒクルを指す。このような製剤担体は、滅菌液体、例えば水と、落花生油、大豆油、鉱油、胡麻油等のような石油、動物、野菜または合成由来のものを含む油である。特定の実施形態において、医薬品組成物を静脈内に投与する場合、水が担体である。食塩水溶液、デキストロースおよびグリセロール水溶液を、特に注射可能な溶液に対する液体担体として用いることもできる。適当な薬剤担体の例が、Remington 's Pharmaceutical Sciences, 16th, 18th and 20th eds., Mack Publishing, Easton PA (1980, 1990 & 2000)に記載されている。
【0162】
典型的な医薬品組成物および投薬形態は、一つ以上の賦形剤を含有する。適当な賦形剤が薬学における当業者に周知であり、適当な賦形剤の非制限例として澱粉、グルコース、ラクトース、サッカロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。特定の賦形剤が医薬品組成物または投薬形態への取り込みに適切であるかどうかは、限定しないが投薬形態を被検体に投与する方法および投薬形態中の特定の活性成分を含む当業界で周知の様々な要因に依存する。組成物または単一ユニット投薬形態は、必要に応じて、少量の湿潤剤、乳化剤またはpH緩衝剤を含有することもできる。
【0163】
本発明のラクトースの無い組成物は、当業界で周知で、例えば米国薬事法(USP)SP(XXI)/NF(XVI)に記載された賦形剤を含有することができる。一般に、ラクトースの無い組成物は、薬学的に互換性があり、製薬学的に許容し得る量の活性成分、結合剤/充填剤および潤滑剤を含有する。典型的なラクトースの無い投薬形態は、活性成分、微結晶性セルロース、アルファ澱粉およびステアリン酸マグネシウムを含有する。
【0164】
本発明は、さらに活性成分を含有する無水の医薬品組成物および投薬形態を包含し、その理由は水がいくつかの化合物の分解を促進することができるからである。例えば、水の添加(例えば5%)は、貯蔵寿命または長期に渡る製剤の安定性のような特徴を決定するために、製剤業界において長期保存をシミュレーションする手段として幅広く受け入れられている。例えばJens T. Carstensen, Drug Stability: Principles & Practice, 2d. Ed., Marcel Dekker, NY, NY, 1995, pp. 379-80を参照。実際、水および熱はいくつかの化合物の分解を加速する。従って、水の製剤への作用が非常に重要であり、その理由は水分および/または湿気が通常製剤の製造、取扱い、包装、保管、出荷および使用中に直面するからである。
【0165】
本発明の無水医薬品組成物および投薬形態は、無水または低水分含有成分および低水分または低湿気条件を用いて調製することができる。ラクトースと、一級または二級のアミンを有する少なくとも一つの活性成分とを含有する医薬品組成物および投薬形態は、特定の実施形態において、製造、包装および/または保存中に実質的な水分および/または湿気との接触が予期される場合に無水である。
【0166】
無水医薬品組成物は、その無水性が維持されるように調製し、保存すべきである。従って、無水組成物は、これらを適当な処方キットに包含し得るように水への暴露を防ぐことが知られた材料を使用して包装する。適当な包装の例は、限定しないが、密封したフォイル、プラスチック、ユニット投与容器(例えばバイアル)、ブリスターパックおよびストリップパックを含む。
【0167】
本発明はさらに、活性成分が分解する速度を減少する一つ以上の化合物を含有する医薬品組成物および投薬形態を包含する。かかる化合物は、ここで「安定剤」と称し、限定しないがアスコルビン酸のような酸化防止剤、pH緩衝剤または塩緩衝剤を含む。
【0168】
医薬品組成物および単一ユニット投薬形態は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、持続性放出製剤等の形状をとることができる。経口処方剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等のような標準の担体を含むことができる。このような組成物および投薬形態は、一つの実施形態において予防または治療に有効な量の精製された形態の予防薬または治療薬を、被検体への適切な投与用形態を付与するのに適した量の担体と共に含有する。製剤は投与様式に適しているべきである。一つの実施形態において、医薬品組成物または単一ユニット投薬形態は無菌で、動物被検体のような被検体、一つの実施形態においてはヒト被検体のような哺乳類の被検体への投与に適した形状である。
【0169】
本発明の医薬品組成物は、その意図する投与ルートに互換性を有するように処方される。投与ルートの例は、限定しないが、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、筋肉内、皮下、経口、口腔、舌下、吸入、鼻腔内、経皮、局所、経粘膜、腫瘍内、滑膜生内および直腸の投与を含む。特定の実施形態において、組成物をヒトへの静脈内、皮下、筋肉内、経口、鼻腔内または局所投与に適合した医薬品組成物として常法に従って処方する。一実施形態において、医薬品組成物をヒトへの皮下投与用に常法に従って処方する。通常、静脈内投与用の組成物は、滅菌された等張性水性緩衝剤の溶液である。所要に応じて、組成物はまた可溶化剤および注射部位の痛みを和らげるためのリグノカインのような局所麻酔薬を含んでもよい。
【0170】
投薬形態の例としては、限定しないが、錠剤;カプレット;軟ゼラチンカプセルのようなカプセル;カシェ;トローチ;菱形剤;分散液;坐薬;軟膏;湿布(湿布薬);ペースト;粉末;包帯;クリーム;絆創膏;溶液;パッチ;エアゾール(例えば点鼻薬または吸入器);ゲル;懸濁液(例えば水性または非水性の液体懸濁液、水中油型エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョン)、溶液およびエリキシルを含む被検体への経口または粘膜投与に適した液体投薬形態;被検体への非経口投与に適した液体投薬形態;および被検体への非経口投与に適した液体投薬形態を提供するために再構築し得る無菌の固体(例えば結晶性または非結晶性の固体)が挙げられる。
【0171】
本発明の投薬形態の組成物、形状および種類は、通常その使用に応じて異なる。例えば、ウイルス感染の初期治療に用いる投薬形態は、同じ感染の維持療法に用いる投薬形態より多い量の一つ以上の活性成分を含有することができる。同様に、非経口投薬形態は同じ疾病または疾患を治療するのに用いる経口投薬形態より少ない量の一つ以上の活性成分を含有することができる。本発明に包含される特定の投薬形態および互いに異なる他の方法は、当業者に直ちに明白である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 20th ed., Mack Publishing, Easton PA (2000)を参照。
【0172】
一般に、本発明の組成物の成分はユニット投薬形態、例えば乾燥凍結粉末または水の無い濃縮物として活性剤の量を示すアンプルまたは小袋のような密封した容器に個々に供給されるか、または一緒に混合される。組成物を点滴によって投与すべき場合、それは滅菌製薬品質の水または食塩水を含有する点滴ボトルで分注することができる。組成物を注射によって投与する場合、注射用の滅菌水または食塩水のアンプルを提供することができるので、成分を投与前に混合してもよい。
【0173】
本発明の典型的な投薬形態は、本明細書に開示の化合物またはその薬学的に許容し得る塩、溶媒和物または水和物を、一日一回の服用で朝にまたは一つの態様においてはその日に摂取する食べ物との分割投与で、一日当たり約0.1mgから約1000mgの範囲内で含有する。特定の実施形態において、本発明の投薬形態は約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、2.0、2.5、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、100、200、250、500または1000mgの活性型シクロスポリンを有する。
【0174】
経口投薬形態
経口投与に適した本明細書に開示の医薬品組成物は、限定しないが、限定はしないが、錠剤(例えば咀嚼錠)、カプレット、カプセルおよび液体(例えば風味をつけたシロップ)のような個別の投薬形態として示すことができる。このような投薬形態は所定量の活性成分を含有し、当業者に周知の薬学方法によって調製することができる。一般的にRemington’s Pharmaceutical Sciences, 20th ed., Mack Publishing, Easton PA (2000)を参照。
【0175】
特定の実施形態において、経口投薬形態は固体であり、前項に詳細に記載したように無水成分を用いる無水条件下で調製される。しかしながら、本発明の範囲は無水の固形経口投薬形態を超えて拡大する。このようにさらなる形態を本明細書に記載する。
【0176】
本発明の典型的な経口投薬形態は、従来の薬学的配合技術に従って活性成分を少なくとも一つの賦形剤と密接に混合することによって調製する。賦形剤は、投与に望まれる調製形態に応じて多種多様な形態をとることができる。例えば、経口液体またはエアゾール投薬形態の使用に適した賦形剤は、限定しないが、水、グリコール、油、アルコール、香料、防腐剤および着色剤を含む。固体経口投薬形態(例えば粉末、錠剤、カプセルおよびカプレット)の使用に適した賦形剤は、限定しないが、澱粉、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤および崩壊剤を含む。
【0177】
投与の容易さのため、錠剤およびカプセルが最も有利な経口投薬ユニット形態を示し、この場合固体賦形剤を用いる。必要に応じて、錠剤を標準の水性または非水性の技術によってコーティングすることができる。このような投薬形態をあらゆる薬学方法によって調製することができる。一般に、医薬品組成物および投薬形態は、活性成分を液体担体、微粉細固体担体またはその両方と均一且つ密接に混合し、その後必要に応じて生成物を所望の体裁に成形することによって調製することができる。
【0178】
例えば、錠剤を圧縮または成形によって調製することができる。圧縮錠剤は、適当な機械で粉末または顆粒のような自由流動形態の活性成分を、任意に賦形剤と混合して圧縮することによって調製することができる。成形錠剤は、不活性の液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適当な機械で成形することによって製造することができる。
【0179】
本発明の経口投与形態に使用し得る賦形剤の例としては、限定しないが、結合剤、充填剤、崩壊剤および潤滑剤が挙げられる。医薬品組成物および投薬形態の使用に適した結合剤は、限定しないが、穀物澱粉、ポテトデンプンまたは他の澱粉、ゼラチン、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、粉末トラガカントゴム、グアーゴム、セルロースおよびその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、α澱粉、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えばNo.2208、2906、2910)、微結晶性セルロースおよびそれらの混合物のような天然および合成のゴムを含む。
【0180】
本明細書に開示の医薬品組成物および投薬形態の使用に適した充填剤の例は、限定しないが、タルク、炭酸カルシウム(例えば顆粒または粉末)、微結晶性セルロース、粉末セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、澱粉、α澱粉およびそれらの混合物を含む。本発明の医薬品組成物中の結合剤または充填剤は、通常医薬品組成物または投薬形態の約50から約99重量%で存在する。
【0181】
微結晶性セルロースの適当な形態は、限定しないが、AVICEL PH 101、AVICEL PH 103 AVICEL RC 581、AVICEL PH 105(FMC Corporation, American Viscose Division, Avicel Sales, Marcus Hook, PAから入手可能)およびそれらの混合物として販売されている物質を含む。特定の結合剤は、AVICEL RC 581として販売されている微結晶性セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物である。適当な無水または低水分賦形剤または添加剤は、AVICEL PH103およびSTARCH 1500LMを含む。
【0182】
崩壊剤を本発明の組成物に用いて、水性環境にさらした際に崩壊する錠剤を提供する。過剰の崩壊剤を含有する錠剤は保管中崩壊する一方、少なすぎる含有量のものは所望の速度または所望の条件下で崩壊しない場合がある。従って、活性成分の放出を有害に変えるのに過剰でもなく、非常に少なくもない十分な量の崩壊剤を用いて本発明の固体投薬形態を形成するべきである。使用する崩壊剤の量は、製剤の種類に基づいて異なり、当業者に容易に認められる。典型的な医薬品組生物は、約0.5から約15重量%の崩壊剤、特に約1から約5重量%の崩壊剤を含有する。
【0183】
本発明の医薬品組成物および投薬形態に使用し得る崩壊剤は、限定しないが、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、ナトリウム澱粉グリコレート、ジャガイモまたはタピオカの澱粉、α澱粉、他の澱粉、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ゴムおよびそれらの混合物を含む。
【0184】
本発明の医薬品組成物および投薬形態に使用し得る潤滑剤は、限定しないが、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(例えば落花生油、綿実油、ヒマワリ油、胡麻油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天およびそれらの混合物を含む。さらなる潤滑剤として、例えばシロイドシリカゲル(W.R. Grace社から製造されているAEROSIL 200)、合成シリカの凝固エアゾール(Degussa社から市販されている)、CABO SIL(Cabot社から販売されている発熱性の二酸化ケイ素製品)およびそれらの混合物が挙げられる。少しでも使用する場合、潤滑剤はそれらが組み込まれる医薬品組成物または投薬形態の約1重量%未満の量にて通常使用される。
【0185】
遅延放出投薬形態
式(I)の化合物のような活性成分を放出制御手段または当業者に周知の送達装置によって投与することができる。一例として、限定しないが、米国特許第3,845,770号、第3,916,899号、第3,536,809号、第3,598,123号、第4,008,719号、第5,674,533号、第5,059,595号、第5,591,767号、第5,120,548号、第5,073,543号、第5,639,476号、第5,354,556号、第5,639,480号、第5,733,566号、第5,739,108号、第5,891,474号、第5,922,356号、第5,972,891号、第5,980,945号、第5,993,855号、第6,045,830号、第6,087,324号、第6,113,943号、第6,197,350号、第6,248,363号、第6,264,970号、第6,267,981号、第6,376,461号、第6,419,961号、第6,589,548号、第6,613,358号および第6,699,500号に記載されたものが挙げられ、それぞれここに参照して援用する。このような投薬形態を用いて、例えば所望の放出プロフィールを異なる割合で提供するために浸透圧法、多層コーティング、微粒子、リボソーム、微小球またはそれらの組み合わせを使用した一つ以上の活性成分の徐放または放出制御を提供することができる。本明細書に記載のものを含む当業者に既知の適当な放出制御製剤を、本発明の活性成分での使用に関し容易に選択することができる。従って、本発明は限定しないが放出制御に適合した錠剤、カプセル、ゲルカプセルおよびカプレットのような経口投与に適した単一ユニット投薬形態を包含する。
【0186】
全ての放出制御製剤製品は、非制御対応物により達成されるもの超えて薬物療法を改善するといった共通の目的を有する。理想的には、薬物治療に最適に設計された放出制御調剤の使用が、最小限の時間で疾患を治療または制御するための最小限の薬剤物質を用いることを特徴とする。放出制御製剤の利点として、薬物の延長した活性、減少した投薬回数および上昇した被検体への対応性が挙げられる。さらに、制御放出製剤を使用して、薬物の血液レベルのような作用または他の特徴の発症時間に影響を及ぼすことができ、従って副作用(例えば逆作用)の発生に影響を及ぼすことができる。
【0187】
大抵の放出制御製剤は、まず所望の治療効果を速やかにもたらす量の薬物(活性成分)を放出し、このレベルの治療的または予防的な効果を長期間に渡って維持する薬物の他の量を段階的且つ絶えず放出するように設計される。この一定レベルの薬物を体内で維持するために、薬物は体内から代謝、分泌される薬物量を置き換えるような速度にて投薬形態から放出される必要がある。活性成分の放出制御は、限定しないが、pH、温度、酵素、水または他の生理的条件もしくは化合物を含む様々な条件によって刺激されることができる。
【0188】
特定の実施形態において、薬物を静脈内点滴、移植可能な浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソームまたは他の投与様式を使用して投与することができる。一つの実施形態においては、パンプを使用することができる(Sefton, 1987, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14: 201; Buchwald et al, 1980, Surgery 88: 507; Saudek et al, 1989, N. Engl. J. Med. 321 : 574を参照)。他の実施形態においては、ポリマー物質を用いることができる。さらに他の実施形態において、放出制御システムを施術者により決められた、即ち全身服用量の画分のみを必要とする適切な部位で被検体に配置することができる(例えばGoodson, Medical Applications of Controlled Release, vol. 2, pp. 115-138 (1984)を参照)。他の放出制御システムがLangerによる論評(Langer, 1990, Science 249: 1527-1533)に記載されている。活性成分を固体内部マトリックス、例えば、外部の重合膜、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルと塩化ビニルとの共重合体、塩化ビニリデン、エチレンおよびプロピレン、イオノマポリエチレンテレフタレート、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコール三元共重合体および体液に不溶なエチレン/ビニルオキシエタノール共重合体により包囲されたポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化または未可塑化のポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、炭酸シリコーン共重合体、アクリル酸およびメタクリル酸のエステルのヒドロゲルのような親水性重合体、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコールおよび架橋した部分加水分解ポリ酢酸ビニルに分散させることができる。次いで、活性成分は放出速度制御ステップにおいて外部重合膜を介して拡散する。このような非経口組成物における活性成分の割合は、その特定の性質ならびに被検体の必要性に非常に依存する。
【0189】
非経口投薬形態
固体の無水経口投薬形態を使用することができるが、本発明はまた非経口投薬形態を提供する。非経口投薬形態を被検体に、限定しないが皮下、静脈内(急速静注法を含む)、筋肉内および動脈内を含む様々なルートによって投与することができる。かかる投与は通常汚濁物に対する被検体の自然免疫能を回避するため、一つの実施形態における非経口投薬形態は、滅菌であるかまたは被検体への投与前に滅菌することができる。非経口投薬形態の例としては、限定しないが、注射に備えた溶液、注射用の薬学的に許容し得るビヒクルに溶解または懸濁された乾燥生成物、注射に備えた懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。
【0190】
本発明の非経口投薬形態を提供するのに使用し得る適当なビヒクルが当業者に周知である。一例として、限定しないが、注射用水USP;塩化ナトリウム注射、リンゲル注射、デキストロース注射、デキストロースおよび塩化ナトリウム注射および乳酸化リンガー注射のような水性ビヒクル;エチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのような水混和性ビヒクル;ならびにトウモロコシ油、綿実油、落花生油、胡麻油、オレイン酸エチル、イソプロピルミリステートおよび安息香酸ベンジルのような非水性ビヒクルが挙げられる。
【0191】
本明細書に開示の一つ以上の活性成分の溶解度を上昇する化合物を本発明の非経口投薬形態に混入することもできる。
【0192】
経皮、局所および粘膜の投薬形態
一つの実施形態において、固体の無水経口投薬形態を使用することができる。他の態様において、経皮、局所および粘膜の投薬形態を提供する。本発明の経皮、局所および粘膜の投薬形態は、限定しないが、点眼薬、スプレー、エアゾール、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、溶液、エマルジョン、懸濁液、または他の当業者に知られた形態を含む。例えば、Remington 's Pharmaceutical Sciences, 16th, 18th and 20th eds., Mack Publishing, Easton PA (1980, 1990 & 2000); およびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms, 4th ed., Lea & Febiger, Philadelphia (1985)を参照。口腔内の粘膜組織を治療するのに適した投薬形態をうがい薬または経口ゲルとして処方することができる。さらに、経皮投薬形態は、皮膚に適用し、特定の期間着用して所望量の活性成分の浸透を可能にすることができる「蓄積タイプ」または「マトリックスタイプ」のパッチを含む。
【0193】
本発明に包含される経皮、局所および粘膜投薬形態を提供するのに使用し得る適当な賦形剤(例えば担体および希釈剤)および他の成分が製剤の当業者に周知であり、所定の医薬品組成物または投薬形態を適用する特定の組織に依存する。その事実を考慮して、典型的な賦形剤としては、限定しないが、非毒性および薬学的に許容し得るローション、チンキ、クリーム、エマルジョン、ゲルまたは軟膏を形成するための水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン1 ,3−ジオール、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、鉱油およびそれらの混合物が挙げられる。また、必要に応じて、保湿剤または湿潤剤を医薬品組成物および投薬形態に添加することができる。このような追加成分の例が当業界で周知である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th、18thおよび20th ed., Mack Publishing, Easton PA (2000)を参照。
【0194】
治療すべき特定の組織に応じて、追加の成分を本発明の活性成分での治療前、それと共に、またはその後に使用することができる。例えば、浸透促進剤を使用して活性成分の組織への送達を助けることができる。適当な浸透促進剤は、限定しないが、アセトン;エタノール、オレイルおよびテトラヒドロフリルのような種々のアルコール;ジメチルスルホキシドのようなアルキルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドンのようなピロリドン; Kollidon品質(ポビドン、ポリビドン);尿素;ならびにTween80(ポリソルベート80)およびSpan60(ソルビタンモノステアレート)のような種々の水溶性または不溶性の糖エステルを含む。
【0195】
医薬品組成物もしくは投薬形態のpHまたは医薬品組成物もしくは投薬形態を適用する組織のpHを調節して一つ以上の活性成分の送達を改善することもできる。同様に、溶媒担体の極性、そのイオン強度または緊張力を調整して送達を改善することができる。また、ステアリン酸塩のような化合物を医薬品組成物または投薬形態に添加して、送達を改善するように一つ以上の活性成分の親水性または親油性を有利に変更することができる。この点に関して、ステアリン酸塩は、製剤用の脂質ビヒクル;乳化剤または界面活性剤;および送達促進剤または浸透促進剤として機能を果たすことができる。活性成分の異なる塩、水和物または溶媒和物を使用して得られる組成物の物性をさらに調整することができる。
【0196】
被検体の疾患を治療または予防する方法
本明細書に開示の化合物、例えば一般式(I)の化合物はサイクロフィリンと称する酵素に作用し、その触媒活性を阻害することができる。従って、他の態様において、本明細書に開示の化合物または組成物、例えば式(I)の化合物または式(I)の化合物を含有する組成物を必要とする被検体に投与することを備えるサイクロフィリンを阻害する方法を提供する。サイクロフィリンは、ヒト、酵母、バクテリア、原生動物、後生動物、昆虫、植物またはウイルスを含む広範囲の異なる生命体に生じる。感染性生命体の場合、本発明の化合物によるサイクロフィリン触媒活性の阻害が、しばしば生命体に対する抑制効果をもたらす。さらに、ヒトにおけるサイクロフィリンの触媒活性は多くの異なる疾患状態において役割を果たす。該触媒活性の阻害は、しばしば治療効果と関連する。従って、本明細書に記載の特定の化合物を、HCVおよびHIVが原因であるもの(以下に詳細に記載する)ならびに菌類の病原体、原生動物およびメタゾア寄生体が原因であるものを含む感染の治療に使用することができる。さらに、本明細書に開示の特定の化合物を使用してアルツハイマー病、パーキンソン病および神経障害のような神経変性疾患を治療することができる。本明細書に開示の化合物の他の使用は、脊髄もしくは頭部の損傷後の麻痺性障害または心筋梗塞症後の心臓障害のような虚血および再かん流に関連する組織の損傷に対する保護である。さらに、本明細書に開示の化合物は、損傷または他の根本的な病状、例えば緑内障の目の神経の障害による再生プロセス、例えば髪、肝臓、歯肉または神経組織の再生を誘発することができる。
【0197】
本明細書に開示の特定の化合物を使用して慢性炎症性疾患および自己免疫疾患を治療することができる。免疫抑制薬として、本明細書に開示の特定の化合物が免疫介在性の組織または臓器の移植拒否の予防のために投与する際に有用である。また、本明細書に開示の特定の化合物による免疫反応の調節は、慢性関節リウマチ、全身紅斑性狼瘡、高イムノグロブリンE血症、橋本甲状線炎、多発性硬化症、汎発性強皮症、重症筋無力症、1型糖尿病、ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、糸球体腎炎のような自己免疫疾患の治療における有効性を見出された。さらなる使用は、炎症性のおよび過剰増殖性の皮膚病ならびに免疫を介する疾患の皮膚症状、例えば乾癬、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎および湿疹性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、類天疱瘡、表皮水泡症、蕁麻疹、血管浮腫、脈管炎、紅斑、皮下気腫、紅斑性狼瘡、にきびおよび円形脱毛症;角結膜炎、春季カタル、角膜炎、ヘルペス性角膜炎、円錐角膜、角膜上皮ジストロフィー、角膜白斑、眼天疱瘡、モーレン潰瘍、強膜炎、グレーブス眼症、フォークト−コヤナギ−ハラダ症候群、類肉腫症、多発性骨髄腫等の様々な眼病(自己免疫やその他);COPD、喘息(例えば、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性の喘息、外部喘息および塵喘息)、特に慢性的または常習的な喘息(例えば、遅発型喘息および気道過敏症)、気管支炎、アレルギー性鼻炎等の疾患を含む閉塞性気道疾患;胃潰瘍、虚血性疾患および血栓症が原因の脈管損害のような粘膜および血管の炎症の治療および予防を含む。さらに、本明細書に開示の特定の化合物によって過剰増殖性血管病、例えば内膜平滑筋細胞増殖、再狭窄および血管閉塞、特に生物学的または機械的に介在する血管損傷を治療または予防することができる。他の治療可能な疾患は、限定しないが、虚血腸管疾患;炎症性腸疾患、壊死性腸炎、熱傷と関連する腸の病変およびロイコトリエンB4を介在する疾患;腸の炎症/アレルギーである小児脂肪便症、直腸炎、好酸性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病および潰瘍性大腸炎;消化管と関係の薄い症状を有する食品関連のアレルギー疾患(例えば片頭痛、鼻炎および湿疹);腎疾患である間質性腎炎、グッドパスチャー症候群、容血性尿毒症症候群および糖尿病性ネフロパシ;神経系の疾患である多発性筋炎、ギラン・バレー症候群、メニエール病、多発性神経炎、多発性神経炎、単発神経炎および神経根神経病;内分泌疾患である甲状腺機能亢進症およびバセドー病;血液疾患である赤芽球癆、無形成性貧血、再生不良性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、無顆粒球症、悪性貧血、巨大赤芽球性貧血および赤血球形成不全;骨疾患である骨粗鬆症;呼吸器疾患である類肉腫症、肺線維症および原因不明の間質性肺炎;皮膚病である皮膚筋炎、尋常性白斑、尋常性魚鱗癬、光線過敏症および皮膚T細胞リンパ腫;循環疾患である動脈硬化、アテローム性動脈硬化症、大動脈炎症候群、結節性多発性動脈炎および心筋症;膠原病である硬皮症、ヴェゲナーの肉芽腫およびシェーグレン症候群;脂肪過多;好酸性筋膜炎;歯周病である歯肉、歯周組織、歯槽骨および歯のセメント質の病変;ネフローゼ症候群である糸球体腎炎;脱毛の予防もしくは毛芽の提供および/または髪生成の促進および、育毛による男性型脱毛症または老人性脱毛症;筋ジストロフィー;膿皮症およびセザリー症候群;アジソン病;活性酸素の介在された疾患、例えば臓器損傷である保存、移植または虚血性疾患(例えば、血栓症および心臓の梗塞)に応じて生じる臓器(例えば心臓、肝臓、腎臓および消化管)の虚血-再かん流傷害;薬物または放射線が原因の腸の疾患であるエンドトキシン−ショック、偽膜性大腸炎および大腸炎;腎疾患である虚血性急性腎不全および慢性腎不全;肺-酸素または薬物が原因の肺疾患である中毒症(例えば、パラコートおよびブレオマイシン)、肺癌および肺気腫;眼性疾患である白内障、鉄症、網膜炎、網膜色素変性、老人性黄斑変性症、硝子体瘢痕化および角膜アルカリ熱傷;皮膚炎である多形性紅斑、線状IgA水疱症およびセメント皮膚炎;ならびに他の歯肉炎、歯周炎、敗血症、膵炎、環境汚染(例えば大気汚染)、老化、発癌、癌の転移および高山病が原因の疾患;ヒスタミンまたはロイコトリエン−C4放出によって原因となられる疾患;口腔、皮膚、目、外陰部、関節、副睾丸、肺、腎臓等に影響を及ぼすベーチェット病である腸、血管または神経ベーチェット病、ならびにベーチェット病を含む。さらに、本明細書に開示の特定の化合物は、肝臓疾患、例えば免疫原性の疾病(例えば、自己免疫肝炎、原発性胆汁性肝硬変および硬化性胆管炎からなる群のような慢性自己免疫肝疾患)、肝臓部分的切除、急性肝壊死、肝硬変(例えばアルコール性肝硬変)、肝不全である劇症肝炎、遅発性肝不全および急性肝不全の慢性肝疾患の治療および予防に有用である。
【0198】
一つの実施形態において、本発明は被検体の炎症性または免疫性の障害を治療または予防する方法を提供するもので、AおよびBが上記に規定したようなもので、Rは水素を示し、Rは−C(=O)R21を示し、R21は1〜3個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキルまたはn−ブチルを示す上記一般式(I)の化合物またはその薬学的に許容し得る塩または溶媒和物を被検体に投与することを備える。この実施形態の一つの態様において、Rは−C(=O)R21を示し、R21は1〜3個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル(例えばメチル)を示す。この実施形態の他の態様において、Aは(E)−CH=CHCHを示し、Bはエチルを示し、Rは水素を示し、Rは−C(=O)R21を示し、R21は1〜4個の炭素原子を有する直鎖アルキルを示す。この方法の化合物は新規で、本発明のさらなる実施形態を形成する。
【0199】
免疫抑制特性を有する上記式(I)の化合物は、免疫不全患者(例えばHIVまたはAIDSを有する患者)の治療に適していない場合があることが理解される。
【0200】
被検体のHCVおよび/またはHIV感染の治療または予防方法
本発明は、本明細書に開示の化合物または組成物、例えば式(I)の化合物または式(I)の化合物を含有する組成物を必要とする被検体のウイルス感染の治療または予防のために使用する方法を提供する。一般に、該方法は有効量の化合物または組成物を被検体に投与してウイルス感染を治療または予防する工程を備える。特定の実施形態において、ウイルス感染はHCV感染もしくはHIV感染またはHCVおよびHIV重感染である。
【0201】
特定の実施形態において、被検体はHCVに感染したか、またはHCVの感染の危険性があるあらゆる被検体とすることができる。感染または感染の危険性は、当業界の熟練者に適切であると考えられるあらゆる技術に従って決定することができる。特定の実施形態において、被検体はHCVに感染したヒトである。
【0202】
HCVは当業者に知られたあらゆるHCVとすることができる。現在、当業者に知られているHCVの少なくとも6つの遺伝子型および少なくとも50個の亜類型が存在する。HCVは当業者に既知のあらゆる遺伝子型または亜類型とすることができる。特定の実施形態において、HCVは依然として特徴付けられていない遺伝子型または亜類型とする。特定の実施形態において、被検体は単一の遺伝子型のHCVに感染させたものとする。特定の実施形態において、被検体は複数の亜類型または多数の遺伝子型のHCVに感染させたものとする。
【0203】
特定の実施形態において、HCVは遺伝子型1で、あらゆる亜類型とすることができる。例えば、特定の実施形態において、HCVは亜類型1a、1bまたは1cである。遺伝子型1のHCV感染は、現在のインターフェロン療法に対し反応が薄いと考えられる。本発明の方法は、遺伝子型1のHCV感染の療法に有利であることができる。
【0204】
特定の実施形態において、HCVは遺伝子型1以外のものである。特定の実施形態において、HCVは遺伝子型2で、あらゆる亜類型とすることができる。例えば、特定の実施形態において、HCVは亜類型2a、2bまたは2cである。特定の実施形態において、HCVは遺伝子型3で、あらゆる亜類型とすることができる。例えば、特定の実施形態において、HCVは亜類型3a、3bまたは3cである。特定の実施形態において、HCVは遺伝子型4で、あらゆる亜類型とすることができる。例えば、特定の実施形態において、HCVは亜類型4aである。特定の実施形態において、HCVは遺伝子型5で、あらゆる亜類型とすることができる。例えば、特定の実施形態において、HCVは亜類型5aである。特定の実施形態において、HCVは遺伝子型6で、あらゆる亜類型とすることができる。例えば、特定の実施形態において、HCVは亜類型6a、6b、7b、8b、9aまたは11aである。例えばSimmonds, 2004, J Gen Virol. 85: 3173-88; Simmonds, 2001, J. Gen. Virol. 82: 693-712を参照とし、ここに参考として完全に援用する。
【0205】
特定の実施形態において、被検体は一度もHCV感染に対する療法または予防を受けたことがない。さらなる実施形態において、被検体は以前にHCV感染に対する療法または予防を受けたことがある。例えば、特定の実施形態において、被検体はHCV療法に反応していない。実際、最近のインターフェロン療法下で、50%までまたはそれ以上のHCV被検体者が療法に反応していない。特定の実施形態において、被検体は療法を受けたことがあるが、ウイルス感染またはその一つ以上の症状を患った被検体とすることができる。特定の実施形態において、被検体は療法を受けたことがあるが、持続性ウイルス性応答の達成に乏しい被検体とすることができる。特定の実施形態において、被検体はHCV感染の療法を受けたことがあるが、療法12週間後HCVのRNAレベルにおける2log10減少を示すのに失敗したものである。療法12週間後の血清HCVのRNAにおける2log10減少を越えるのを示さない被検体は、97〜100%の確立で反応しないと考えられる。本明細書に開示の化合物は最近のHCV療法以外の機構によって働くため、これら化合物はこのような非応答者を治療するのに効果的であるべきだと考えられる。
【0206】
特定の実施形態において、被検体は療法に伴う一つ以上の有害事象のためHCV療法を中断した被検体である。特定の実施形態において、被検体は最近の療法が示されない被検体である。例えば、HCVに対する特定の療法は、神経精神病学的事象を伴う。インターフェロン(IFN)−αとリバビリンは高い割合のうつ病を伴う。うつ病の症状は、数々の医学的障害において比較的悪い結果と関連している。自殺、自殺および殺人願望、うつ病、薬物中毒の再発/過剰摂取および攻撃的な行動を含む生死に関わるか、致命的な神経精神病学的事象が、HCV療法中の被検体に過去の精神的な障害の有無にかかわらず生じる。インターフェロン誘発うつ病は、慢性C型肝炎の治療、特に精神医学的障害を有する被検体に対し制限がある。精神的な副作用は、インターフェロン療法にて一般的で、HCV感染の最近の療法の中断の約10%から20%の原因となる。
【0207】
従って、本発明はうつ病のような神経精神病学的現象の危険性が最近のHCV療法での治療に禁忌を示す被検体におけるHCV感染の治療または予防方法を提供する。本発明はまた、うつ病のような神経精神病学的現象、またはその危険性が最近のHCV療法での治療の中断を示す被検体におけるHCV感染の治療または予防方法を提供する。本発明はさらに、うつ病のような神経精神病学的現象またはその危険性が最近のHCV療法の服用量減少を示す被検体におけるHCV感染の治療または予防方法を提供する。
【0208】
また最近の療法は、インターフェロンもしくはリバビリンまたはその両方またはあらゆるインターフェロンまたはリバビリンの投与用製剤製品の他の成分に対して過敏な被検体において禁忌を示す。最近の療法は、異常血色素症(例えばサラセミアメジャー、鎌状赤血球貧血)を有する被検体および最近の療法の血液学的な副作用からの危険性にある他の被検体には示されない。一般的な血液学的副作用は、骨髄抑制、好中球減少および血小板減少を含む。さらに、リバビリンは赤血球に対し毒性であり、溶血を伴う。従って、本発明はまた、インターフェロンもしくはリバビリンまたはその両方に敏感な被検体、異常血色素症、例えばサラセミアメジャーおよび鎌状赤血球貧血症を有する被検体、ならびに最近の療法の血液学的副作用の危険性の他の被検体におけるHCV感染の治療または予防方法を提供する。
【0209】
特定の実施形態において、被検体は本発明方法の投与前にHCV療法を受け、その療法を中断した。さらなる実施形態において、被検体は療法を受け、その療法を本発明方法の投与と共に受け続ける。本発明の方法は、当業者の判断に従ってHCVに対する他の療法と同時投与することができる。有利な実施形態において、本発明の方法または組成物をHCVに対する他の療法の減少した服用量と同時投与することができる。
【0210】
特定の実施形態において、本発明はインターフェロンでの治療では効果がない被検体を治療する方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態において、被検体はインターフェロン、インターフェロンα、ペグインターフェロンα、インターフェロンとリバビリン、インターフェロンαとリバビリンおよびペグインターフェロンαとリバビリンからなる群から選択される一つ以上の薬剤での治療に応答するのに失敗した被検体とすることができる。いくつかの実施形態において、被検体はインターフェロン、インターフェロンα、ペグインターフェロンα、インターフェロンとリバビリン、インターフェロンαとリバビリンおよびペグインターフェロンαとリバビリンからなる群から選択される一つ以上の薬剤での治療に若干応答した被検体とすることができる。
【0211】
さらなる実施形態において、本発明は妊婦または妊娠の可能性がある被検体におけるHCV感染の治療方法を提供するもので、その理由は最近の療法がまた妊婦に禁忌を示すからである。
【0212】
特定の実施形態において、本発明の方法または組成物を肝臓移植後の被検体に投与する。C型肝炎は米国において肝臓移植の主因であり、肝臓移植を経た多くの被検体は移植後も依然としてHCV陽性のままである。本発明は、このようなHCVを再発した被検体を本発明に開示された化合物または組成物で治療する方法を提供する。特定の実施形態において、本発明はHCV感染の再発を予防するため、肝臓移植前、移植中または移植後の被検体を治療する方法を提供する。
【0213】
一般式(I)のシクロスポリン化合物は、レトロウイルス疾病、特にAIDSおよびAIDSに伴う症候群の予防および疾患に特に有用とすることができる。予防は、特にHIVウイルス、詳細には一次感染後に生じる数ヶ月または数年に疾病を発症する危険性を示す無症候性血清反応陽性者の被検体の治療を意味すると解釈される。この態様において、本発明に係る一般式(I)のシクロスポリン化合物はあらゆる細胞毒性または細胞増殖抑制作用の無い濃度で抗レトロウイルス活性を示す。
【0214】
本発明の特定の実施形態において、被検体はHIVに感染しているか、または感染の危険性があるあらゆる被検体とすることができる。感染または感染の危険性は、当業界の熟練者により適切であると考えられるあらゆる技術に従って決定することができる。特定の実施形態において、被検体はHIVに感染したヒトである。HIVは当業者に既知のあらゆるHIVとすることができる。
【0215】
本発明の特定の実施形態において、被検体は一度もHIV感染に対する治療または予防を受けたことがない。本発明のさらなる実施形態において、被検体は以前HIV感染に対する治療または予防を受けた。例えば、特定の実施形態において、被検体はHIV療法に応答しなかった。特定の実施形態において、被検体は療法を受けたことがあるが、ウイルス感染またはその一つ以上の症状を患った被検体とすることができる。特定の実施形態において、被検体は療法を受けたことがあるが、持続性ウイルス応答を達成するのに失敗した被検体とすることができる。
【0216】
特定の実施形態において、被検体は療法に伴う一つ以上の有害事象のためHIV療法を中断した被検体である。特定の実施形態において、被検体は最近の療法が示されていない被検体である。特定の実施形態において、被検体はHIV療法を受け、その療法を本発明方法の投与前に中断した。さらなる実施形態において、被検体は療法を受け、その療法を本発明方法の投与と共に受け続ける。本発明の方法は、当業者の判断に従ってHIVに対する他の療法と同時投入することができる。有利な実施形態において、本発明の方法または組成物をHIVに対する他の療法の減少服用量と同時に投与することができる。
【0217】
特定の実施形態において、本発明はHIVに対する治療に効果が無い被検体を治療する方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態において、被検体は一つ以上のHIVに対する治療薬での治療に応答するのに失敗した被検体とすることができる。いくつかの実施形態において、被検体は一つ以上のHIVに対する治療薬での治療に若干応答した被検体とすることができる。
【0218】
特定の実施形態において、被検体はHCVとHIVの重感染であるか、その危険性がある。例えば、米国において、HIV被検体の30%はHCVと重感染し、証拠としてHIVに感染した人々はC型肝炎感染のより速いコースを有すること示すMaier and Wu, 2002, World J Gastroenterol 8: 577- 57がある。本発明の方法を用いてこのような被検体におけるHCV感染を治療または予防することができる。これら被検体におけるHCVの排除が末期肝臓疾患による死亡率を低下すると考える。実際、進行性の肝臓疾患の危険性が重篤なAIDS指標免疫不全を有する被検体において有さない者より高い。例えばLesens et al, 1999, J. Infect. Dis. 179: 1254-1258を参照。有利なことに、本発明の化合物はHIV被検体においてHIVを抑制することを示した。例えば、米国特許第5,977,067号、第5,994,299号、第5,948,884号、第6,583,265号、国際公開第99/32512号および第99/67280号を参照し、その内容をここに参考として完全に援用する。したがって、特定の実施形態において、本発明は必要とする被検体におけるHIV感染およびHCV感染の治療または予防方法を提供する。
【0219】
投薬およびユニット投薬形態
ヒトの治療において、医師は予防または治療処置に従って、かつ治療すべき被検体に特異的な年齢、体重、感染の段階および他の要因に従って最も適切であると考えられる薬量学を決定する。一般に、投与量は成人において約1〜約1500mg/日、若しくは約50〜約1300mg/日または約100〜約1100mg/日である。一つの実施形態において、投与量は約250〜約1000mg/日である。
【0220】
さらなる態様において、本発明は必要とする被検体に有効量の本明細書に開示の化合物またはその薬学的に許容し得る塩をHIVおよび/またはHCVに対する高い治療指数で投与することにより被検体のHIVおよび/またはHCV感染を治療または予防する方法を提供する。治療指数は、当業者に既知のあらゆる方法、例えば以下の実施例に記載した方法に従って測定することができる。特定の実施形態において、治療指数は化合物が有毒である濃度対HIVおよび/またはHCVに有効である濃度の比率である。毒性は、細胞毒性(例えばIC50またはIC90)および致死量(例えばLD50またはLD90)を含む当業者に既知のあらゆる技術によって測定することができる。同様に、有効濃度は、効果的な濃度(例えばEC50またはEC90)および有効投与量(例えばED50またはED90)を含む当業者に既知のあらゆる技術によって測定することができる。特定の実施形態において、同様の測定値を比率(例えばIC50/EC50、IC90/EC90、LD50/ED50またはLD90/ED90)で比較する。特定の実施形態において、治療指数は2.0、5.0、10.0、15.0、20.0、25.0、50.0、75.0、100.0、125.0、150.0と同じ程度またはそれ以上とすることができる。
【0221】
障害またはその一つ以上の兆候の予防または治療に有効な本発明の化合物または組成物の量は、疾病または疾患の特徴ならびに重篤度、活性成分の投与経路によって異なる。回数および投薬量はまた、投与された特異的療法(例えば治療薬または予防薬)、障害、疾病または疾患の重篤度、投与経路ならびに被検体の年齢、身体、体重、反応および過去の病歴に応じた各被検体に特異的な因子によって異なる。有効投与量は、生体外または動物モデルの試験システムに由来した投与量―応答曲線から推定することができる。
【0222】
典型的な組成物の投与量として、被検体またはサンプル重量のkg当たり活性成分の量mgまたはμg(例えば約10μg/kgから約50μg/kg、約100μg/kgから25mg/kgまたは100μg/kgから約10mg/kg)が挙げられる。本明細書に開示の特定の化合物に対して、被検体に投与する投薬量は通常、活性成分の重量に基づいて被検体の体重の1kg当たり約0.140mgから約3mgである。特定の態様において、被検体に投与する投薬量は、被検体の体重に対し約0.20mg/kgから約2.00mg/kg、または約0.30mg/kgから約1.50mg/kgである。
【0223】
一般に、本明細書に記載した疾患に対する本明細書に開示の組成物の推薦される一日の投与量範囲は、一回で一日一度の服用量または一日に分割した服用量として与えて、一日あたり約0.1mgから約1500mgの範囲内である。一つの実施形態において、一日の服用量は等しく分割した服用量で一日二回投与する。一日の投与量範囲は特に約50mg/日から約1300mg/日、より詳細には約100mg/日から約1100mg/日、またはさらにより詳細には約250mg/日から約1000mg/日であるべきである。いくつかの場合において、本明細書に開示した範囲外の活性成分の投与量を使用する必要がある場合があり、当業者に明白である。さらに臨床医または治療医師が療法を被検体の反応と共に中断、調整または終了するかどうかを知っているか留意すべきである。
【0224】
種々の治療に有効な量を異なる疾病および疾患に適用することができ、当業者が容易に分かる。同様に、かかる障害を予防、管理、治療または改善するのに十分であるが、本発明の組成物と関連する副作用を生じるのに不十分であるかまたは減少するのに十分な量はまた、上記投薬量および投薬回数スケジュールに包含される。さらに、被検体に本明細書に開示の組成物を複数の投薬量で投与する場合、全ての投薬量が同じである必要はない。例えば、被検体に投与する服用量を増やして組成物の予防または治療効果を改善するか、または減らして特定の被検体が経験する一つ以上の副作用を軽減することができる。
【0225】
特定の実施形態において、被検体の障害またはその一つ以上の兆候を予防、治療、管理または改善するために投与する本明細書に開示の組成物または活性成分の重量に基づく本明細書に開示の組成物の投与量は、被検体の体重の約0.1mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約10mg/kgまたは約15mg/kg若しくはそれ以上である。他の実施形態において、本明細書に開示の組成物の服用量、すなわち被検体の障害またはその一つ以上の兆候を予防、治療、管理または改善するために投与する本明細書に開示の組成物の服用量は、約0.1mg〜約200mg、約0.1mg〜約100mg、約0.1mg〜約50mg、約0.1mg〜約25mg、約0.1mg〜約20mg、約0.1mg〜約15mg、約0.1mg〜約10mg、約0.1mg〜約7.5mg、約0.1mg〜約5mg、約0.1〜約2.5mg、約0.25mg〜約20mg、約0.25〜約15mg、約0.25〜約12mg、約0.25〜約10mg、約0.25mg〜約7.5mg、約0.25mg〜約5mg、約0.5mg〜約2.5mg、約1mg〜約20mg、約1mg〜約15mg、約1mg〜約2mg、約1mg〜約10mg、約1mg〜約7.5mg、約1mg〜約5mgまたは約1mg〜約2.5mgの単位投与量である。
【0226】
特定の実施形態において、治療または予防は本明細書に開示の化合物または組成物の一つ以上の負荷量と、それに続く一つ以上の維持量で開始することができる。かかる実施形態において、負荷量は例えば1日〜48週間または1日から5週間において約60〜約400mg/日または約100〜約200mg/日とすることができる。負荷量の後に一つ以上の維持量とすることができる。それぞれの維持量は、独立して約5mg/日〜約1500mg/日または約10mg/日から約200mg/日、より詳細には約25mg/日から約150mg/日の間、さらにより詳細には約25mg/日から約80mg/日の間とすることができる。特定の実施形態において、維持量を毎日投与し、単一の服用量または分割服用量として投与することができる。
【0227】
特定の実施形態において、本明細書に開示の化合物または組成物の服用量を投与して被検体の血液または血清中に活性成分の定常濃度を達成することができる。定常濃度は、当業者に利用可能な技術による測定によって決定することができるか、または身長、体重および年齢のような被検体の身体的な特徴に基づくことができる。特定の実施形態において、本明細書に開示の化合物または組成物の十分な量を投与して被検体の血液または血清中に約300〜約4000ng/mL、約400〜約1600ng/mLまたは約600〜約1200ng/mLの定常濃度を達成する。1〜5日間負荷量を投与して約1200〜約8000ng/mLまたは約2000〜約4000ng/mLの定常血液または血清濃度を達成することができる。維持量を投与して被検体の血液または血清中に約300〜約4000ng/mL、約400〜約1600ng/mLまたは約600〜約1200ng/mLの定常濃度を達成することができる。
【0228】
特定の実施形態において、本発明の同じ組成物の投与を繰り返すことができ、投与を少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2ヵ月、75日、3ヵ月または6ヵ月に分けることができる。他の実施形態において、同じ予防薬または治療薬の投与を繰り返すことができ、投与を少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2ヵ月、75日、3ヵ月または6ヵ月に分けることができる。
【0229】
特定の態様において、本発明は本明細書に開示の化合物またはその薬学的に許容し得る塩を投与に適当な形状で含有する単位投与量を提供する。かかる形状を上に詳細に記載する。特定の実施形態において、単位投与量は活性成分約1〜約1500mg、約5〜約250mgまたは約10〜約50mgを含有する。特定の実施形態において、単位投与量は約1、5、10、25、50、100、125、250、500または1000mgの活性成分を含有する。かかる単位投与量は当業者によく知られている技術に従って調製することができる。
【0230】
併用療法
本発明は、HIVおよび/またはHCV感染の治療または予防に効果的な第二薬剤を必要とする被検体に投与することを備えた治療または予防の方法を提供する。第二薬剤は、HIVおよび/またはHCV感染の治療または予防に効果的な当業者に既知のあらゆる薬剤とすることができる。第二薬剤は、現在当業者に既知の第二薬剤とするか、または第二薬剤はHIVおよび/またはHCVの治療または予防のため最近開発された第二薬剤とすることができる。特定の実施形態において、第二薬剤はHIVおよび/またはHCVの治療または予防に現在承認されている。
【0231】
特定の実施形態において、本明細書に開示の化合物を第二薬剤と組み合わせて投与する。さらなる実施形態において、第二薬剤を2つの第二薬剤と組み合わせて投与する。なおさらなる実施形態において、第二薬剤を二つ以上の第二薬剤と組み合わせて投与する。
【0232】
適当な第二薬剤としては、HCV酵素の小分子で、経口の生物学的に利用可能な阻害薬、ウイルスRNAを攻撃する核酸に基づく薬剤、宿主免疫反応を調節し得る薬剤が挙げられる。典型的な第二薬剤は、(i)現在承認されている治療薬(ペグインターフェロンとリバビリン)、(ii)HCV酵素標的化合物、(iii)ウイルスゲノム標的療法(例えばRNA干渉またはRNAi)および(iv)リバビリン、インターフェロン(ESfF)およびToll受容体作用薬のような免疫調節性剤を含む。
【0233】
特定の実施形態において、第二薬剤はNS3−4Aプロテアーゼの調節薬である。NS3−4Aプロテアーゼは、NS3タンパク質のアミノ末端ドメインおよび小NS4A補因子を含むヘテロ二量体プロテアーゼである。その活性はウイルスRNA複製複合体の成分を生成するために重要である。
【0234】
一つの有用なNS3−4Aプロテアーゼ阻害剤は、BILN2061(Ciluprevir; Boehringer Ingelheim)、すなわちペプチド産物阻害剤の大環状模倣体である。BILN2061での臨床試験を中止(臨床前の心臓毒性)したにもかかわらず、それはヒトで試験すべき最初のNS3阻害剤であった。Lamarre et al., 2003, Nature 426: 186-189を参照とし、ここに参考として完全に援用する。
【0235】
他の有用なNS3−4Aプロテアーゼ阻害剤は、VX−950(Vertex/Mitsubishi)、すなわちNS3−4Aプロテアーゼのプロテアーゼ開裂産物由来のペプチド模倣薬の阻害剤である。ケトアミドによる酵素の活性部位において安定化すると考えられる。例えば、Lin et al, 2005, J Biol Chem. Manuscript M506462200 (epublication); Summa, 2005, Curr Opin Investig Drugs. 6: 831-7を参照とし、内容をここに完全に援用した。
【0236】
特定の実施形態において、第二薬剤はHCV NS5Bの調節薬、RNA依存RNAポリメラーゼ(RdRp)である。NS5Bタンパク質内に含まれるRdRpはRNA鋳型を使用してRNAを合成する。この生化学活性は哺乳類細胞に存在しない。
【0237】
RdRpの一つの有用な調節剤は、NM283(Valopicitabine; Idenix/Novartis)であり、これはHCV感染の治療または予防のための第2相試験におけるNM107(2’−C−メチル−シチジン)の経口プロドラッグ(バリンエステル)である。例えば、米国特許第20040077587号明細書を参照とし、内容をここに参考として完全に援用した。
【0238】
RdRpの他の有用な調節剤は、7−デアザヌクレオシドの類似体を含む。例えば、7−デアザ−2’−C−メチル−アデノシンは、優れた薬物動態学的特徴を有するC型肝炎ウイルス複製の有力且つ選択的な阻害剤である。Olsen et al., 2004, Antimicrob. Agents Chemother. 48: 3944-3953の内容をここに完全に参考として援用した。
【0239】
さらなる実施形態において、第二薬剤はNS5Bの非ヌクレオシド調節剤である。NS5B阻害剤のヌクレオシド阻害剤(NNI)の少なくとも三つの異なる種類が診療所で評価されている。
【0240】
NS5Bの有用な非ヌクレオシド調節剤は、JTK−003およびJTK−009を含む。JTK−003は第2相まで発展している。NS5Bの有用な非ヌクレオシド調節剤は、ベンゾイミダゾールまたはインドール核に基づく6,5−融合複素環化合物を含む。例えば、Hashimoto et al、国際公開第20040077587号明細書を参照とし、内容をここに参考として完全に援用した。
【0241】
さらなる有用なポリメラーゼNNIは、R803(Rigel)と、HCV−371、HCV−086およびHCV−796(ViroPharma/Wyeth)を含む。追加の有用なNNIは、NS5Bポリメラーゼの可逆性アロステリックな阻害剤で、ベンゾイミダゾールに基づく阻害剤によって占領された部位に近接しているが、明らかに異なる部位に結合するチオフェン誘導体を含む。例えば、Biswal, et al, 2005, J. Biol. Chem. 280: 18202-18210を参照。
【0242】
さらに本発明の方法に有用なNNIは、ベンゾ−1,2,4−チアジアジンのようなベンゾチアジアジンを含む。ベンゾ−1,2,4−チアジアジンの誘導体はHCVのRNAポリメラーゼの高度に選択的な阻害剤であることが示された。Dhanak, et al, 2002, J. Biol. Chem. 277: 38322-38327の内容をここに完全に参照して援用する。
【0243】
本発明の方法にさらに有用なNNIおよびその機構が、LaPlante et al, 2004 Angew Chem. Int. Ed. Engl. 43: 4306-4311; Tomei et al, 2003, J. Virol. 77: 13225-13231 ; Di Marco et al, 2005, J. Biol. Chem. 280: 297 '65- 70; Lu, H., WO 2005/000308; Chan et al, 2004, Bioorg. Med. Chem. Lett. 14: 797-800; Chan et al, 2004, Bioorg. Med. Chem. Lett. 14: 793-796; Wang et al, 2003, J. Biol. Chem. 278: 9489-9495; Love, et al, 2003, J. Virol. 11: 7575-7581; Gu et al, 2003, J. Biol. Chem. 278: 16602-16607; Tomei et al, 2004, J. Virol. 78: 938-946; and Nguyen et al, 2003, Antimicrob. Agents Chemother. 47: 3525-3530に記載され;内容をここに完全に参照して援用する。
【0244】
さらなる実施形態において、第二薬剤はHCVポリヌクレオチドを対象にする小抑制RNA(siRNA)または短ヘアピン型RNA(shRNA)のようなHCVのRNAと干渉し得る薬剤である。組織培養において、ウイルスゲノムに向けられたsiRNAおよびベクターコード化短ヘアピン型RNAであるshRNAは、HCVレプリコンの複製を効果的にブロックする。例えば、Randall et al, 2003, Proc. Natl Acad. Sci. USA 100: 235-240を参照とし、内容をここに完全に援用した。
【0245】
さらなる実施形態において、第二薬剤は被検体の免疫反応を調節する薬剤である。例えば、特定の実施形態において、第二薬剤はインターフェロン(IFN)、ペグインターフェロン、IFNとリバビリンまたはベグインターフェロンとリバビリンのようなHCV感染に対して現在承認された治療薬とすることができる。特定の実施形態において、インターフェロンはIFNα、IFN2αおよびIFNα2b、特にペグインターフェロンα2a(PEGASYS(登録商標))またはペグインターフェロンα2b(PEG−INTRON(登録商標))を含む。
【0246】
さらなる実施形態において、第二薬剤はToll様受容体(TLR)の調節薬である。TLRは内在的な抗ウイルス反応を刺激する標的であると考えられる。適当なTLRとして、限定しないが、TLR3、TLR7、TLR8およびTLR9が挙げられる。トール様受容体はバクテリア、ウイルスおよび寄生虫のような微生物の侵入の存在を察知すると考えられる。それらはマクロファージ、単球、樹枝細胞およびB細胞を含む免疫細胞によって発現する。TLRの刺激または活性化は、抗菌性遺伝子、炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの誘導によって急性炎症性反応を開始することができる。
【0247】
特定の実施形態において、第二薬剤はCpGモチーフを含有するポリヌクレオチドである。非メチル化CpGモチーフを含有する合成オリゴヌクレオチドは、TLR−9の有力な作用薬である。これらオリゴヌクレオチドでの樹枝細胞の刺激は、腫瘍壊死因子-α、インターロイキン−12およびIFN−αの産生をもたらす。TLR−9リガンドはまた、B細胞増殖および抗体分泌の有力な刺激剤である。一つの有用なCpG含有オリゴヌクレオチドは、診療所にて評価されたCPG−10101(Actilon; Coley Pharmaceutical Group)である。
【0248】
TLRの他の有用な調節薬はANA975(Anadys)である。ANA975は、TLR−7により作動すると考えられ、誘導による強力な抗ウイルス反応およびIFN−αのような炎症性サイトカインの放出を誘発することが既知である。
【0249】
他の実施形態において、第二薬剤はCelgosivirである。Celgosivirはα-グルコシダーゼI阻害剤であり、宿主に従うグリコシル化により作動する。前臨床研究において、CelgosivirはIFNαとリバビリンと強力な相乗効果を示す。例えば、Whitby et al, 2004, Antivir Chem Chemother. 15(3): 141-51を参照。Celogosivirは、現在カナダにおいて慢性HCV患者の第二相単剤療法研究で評価されてる。
【0250】
さらなる免疫調節性剤およびその機構または標的がSchetter & Vollmer, 2004, Curr. Opin. Drug Discov. Dev. 7: 204-210; Takeda et al, 2003, Annu. Rev. Immunol. 21 : 335-376; Lee et al, 2003, Proc. Natl Acad. Scull USA 100: 6646-6651; Hosmans et al, 2004, Hepatology 40 (Suppl. 1), 282 A; および米国特許第6,924,271号に記載され、その内容をここに参照として援用する。
【0251】
特定の実施形態において、本発明は式(I)の化合物をHIV感染の治療または予防に効果的な第二薬剤と組み合わせて投与する方法を提供する。第二薬剤は、HIV感染の治療に効果的な当業者に既知のあらゆる薬剤とすることができる。第二薬剤は現在既知であるか、最近開発されたものとすることができる。
【0252】
特定の実施形態において、本発明の第二薬剤を式(I)の化合物と調製または包装することができる。当然、当業者の判断に従ってこのような共製剤が薬剤の活性または投与方法のいずれかと干渉しない場合にのみ、第二薬剤を式(I)の化合物と調製した。特定の実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を別途に処方する。当業者の便宜のため、これらを一緒に包装するか、別途に包装することができる。
【0253】
第二薬剤の投与量を本発明の併用療法に使用すべきである。特定の実施形態において、HCV感染の予防または治療に使用されてきたか、または現在使用されているものより少ない投与量を本発明の併用療法に使用する。推薦される第二薬剤の投与量を当業者の知識から得ることができる。臨床用に承認された第二薬剤に対して、推薦される投与量は、例えばGoodman & Gilman's The Pharmacological Basis Of Basis Of Therapeutics 9th ed., Hardman et al, eds., McGraw-Hill, New York (1996); Physician 's Desk Reference (PDR) 57th ed., Medical Economics Co., Inc., Montvale, NJ (2003)に記載され、内容をここに参照して援用する。
【0254】
様々な実施形態において、治療薬(例えば式(I)の化合物および第二薬剤)を5分間隔未満、30分間隔未満、1時間間隔、約1時間間隔、約1時から2時間の間隔、約2時間から3時間の間隔、約3時間から4時間の間隔、約4時間から5時間の間隔、約6時間から7時間の間隔、約7時間から8時間の間隔、約8時間から9時間の間隔、約9時間から10時間の間隔、約10時間から11時間の間隔、約11時間から12時間の間隔、約12時間から18時間の間隔、約18時間から24時間の間隔、約24時間から36時間の間隔、約36時間から48時間の間隔、約48時間から52時間の間隔、約52時間から60時間の間隔、約60時間から72時間の間隔、約72時間から84時間の間隔、約84時間から96時間の間隔または約96時間から120時間の間隔で投与する。特定の実施形態において、二つ以上の治療薬を同じ特許ビジットの範囲内で投与する。
【0255】
特定の実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を周期的に投与する。周期療法は、一定期間の第一の治療薬(例えば第一の予防薬または治療薬)の投与、その後一定期間の第二治療薬(例えば第二の予防薬または治療薬)の投与、その後一定期間の第三治療薬(例えば第三の予防薬または治療薬)の投与等を含み、これら薬剤の一つに対する耐性の進展を低減し、薬剤の一つの副作用を回避または減少し、および/または治療の効力を改善するためにこの一連の投与、即ちサイクルを繰り返すことである。
【0256】
特定の実施形態において、同じ薬剤の投与を繰り返すことができ、投与を少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2ヵ月、75日、3ヵ月または6ヵ月に分けることができる。他の実施形態において、同じ薬剤の投与を繰り返すことができ、投与を少なくとも1日、2日、3日、5日、10日、15日、30日、45日、2ヵ月、75日、3ヵ月または6ヵ月の間に分けることができる。
【0257】
特定の実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を患者、例えばヒトのような哺乳類に順番に、また式(I)の化合物が他の薬剤と共に作用して他の投与のものの場合より上昇した利点を提供し得るような時間隔内で投与する。例えば、第二の活性剤を同時または異なる時点で任意の順番で順次投与することができる;しかしながら、同時に投与しない場合、所望の治療または予防効果を付与するようにこれらを十分に近い時間で投与すべきである。一つの実施形態において、式(I)の化合物および第二活性剤は、それらの効果を重複する時点で発揮する。それぞれの第二活性剤をあらゆる適切な形状およびあらゆる適当な経路で別途投与することができる。他の実施形態において、式(I)の化合物を第二活性剤の投与前、その最中またはその後に投与する。
【0258】
様々な実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を約1時間未満の間隔、約1時間の間隔、約1時間から約2時間の間隔、約2時間から約3時間の間隔、約3時間から約4時間の間隔、約4時間から約5時間の間隔、約5時間から約6時間の間隔、約6時間から約7時間の間隔、約7時間から約8時間の間隔、約8時間から約9時間の間隔、約9時間から約10時間の間隔、約10時間から約11時間の間隔、約11時間から約12時間の間隔、24時間の間隔以下または48時間の間隔以下で投与する。他の実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を同時に投与する。
【0259】
他の実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を約2〜3日の間隔、約4〜6日の間隔、約1週間の間隔、約1〜2週間の間隔、2週間を超える間隔で投与する。
【0260】
特定の実施形態において、式(I)の化合物および第二薬剤を患者に周期的に投与する。周期的な療法は、一定期間の第一薬剤の投与、その後の一定期間の第二薬剤の投与および/または第三薬剤ならびにこの一連の投与の繰り返しを含む。周期的な療法は治療薬の一つ以上への耐性の進展を減少し、治療薬の一つの副作用を回避または減少し、および/または治療の効力を改善することができる。
【0261】
特定の実施形態において、式(I)の化合物および第二活性剤を約3週間未満、2週間に約1回、10日おきに約1回または1週間に1回の周期で投与する。一回の周期は、周期あたり約90分間、周期あたり約1時間、周期当たり約45分間にわたる点滴による式(I)の化合物および第二薬剤の投与を含む。それぞれの周期は、少なくとも1週間の休止、少なくとも2週間の休止、少なくとも3週間の休止を含むことができる。投与する周期の数は、約1〜約12周期、より一般的には約2〜約10周期、より一般的には約2〜約8周期である。
【0262】
他の実施形態において、複数の治療単位を同時に患者に投与する、即ち第二薬剤の個々の投与量を式(I)の化合物が第二活性剤と共に作動し得るような時間隔で別々に投与する。例えば、一つの成分を二週間毎に一回または三週間毎に一回投与し得る他の成分と組み合わせて一週間に一回投与することができる。換言すれば、治療薬を同時にまたは同じ日に投与しない場合でも、投薬計画を同時に実施する。
【0263】
第二薬剤は式(I)の化合物と付加的または相乗的に働くことができる。一つの実施形態において、式(I)の化合物を同じ医薬品組成物で一つ以上の第二薬剤と同時に投与する。他の実施形態において、式(I)の化合物を別個の医薬品組成物で一つ以上の第二薬剤と同時に投与する。さらに他の実施形態において、式(I)の化合物を第二薬剤の投与前またはその後に投与する。本発明は、同じか異なる投与経路、例えば経口および非経口による式(I)の化合物および第二薬剤の投与を意図する。特定の実施形態において、式(I)の化合物を限定しないが毒性を含む有害な副作用を潜在的に生じる第二薬剤と共に同時に投与する場合、第二薬剤を有害な副作用が誘発される閾値以下の投与量で有利に投与することができる。
【0264】
キット
本発明はまた、HIVおよび/またはHCV感染の治療または予防の方法に用いるためのキットを提供する。キットは、本明細書に開示の医薬化合物または組成物と、細菌感染の治療または予防の使用に関する健康管理供給者に情報を提供する説明書とを含むことができる。説明書は、印刷形状、フロッピー(登録商標)ディスク、CDもしくはDVDのような電子媒体形状、または該説明書を入手し得るウェブサイトアドレスの形状で提供することができる。本明細書に開示の化合物または組成物の単位投与量は、被検体に投与した際に化合物または組成物の治療または予防に有効な血漿レベルを被検体にて少なくとも1日間維持し得るような投与量をふくむことができる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示の化合物または組成物を滅菌した水性医薬品組成物または乾燥粉末(例えば凍結乾燥)の組成物として含むことができる。一つの実施形態において、化合物は式(I)によるものである。
【0265】
いくつかの実施形態において、適当な包装を提供する。ここで用いる「包装」はシステムに慣習的に使用され、被検体への投与に適した本明細書に開示の化合物または組成物を一定の限度内で保持することができる固体マトリックスまたは材料を指す。このような材料として、ガラスおよびプラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリカーボネイト)のボトル、バイアル、紙、プラスチックおよびプラスチック箔積層包装材料等が挙げられる。eビーム滅菌技術を用いる場合、包装は内容物の滅菌を可能とするに十分低い密度を有するべきである。
【0266】
本発明のキットはまた、本明細書に開示の化合物または組成物に加えて、上記方法に記載したような化合物または組成物との使用のための第二薬剤または第二薬剤を含有する組成物を含有することができる。
【0267】
以下の実施例は本発明に用いる式(I)の典型的な化合物の合成を示し、以下の参考例はその調製における中間体の合成を示す。これらの例は本発明の範囲を限定するものとして意図するものでなく、また構成するものでもない。本発明は特に本明細書に記載されたようなもの以外で実施することができること明白である。本発明の数々の修正変更が、本明細書の教示を考慮して可能であり、したがって本発明の範囲内にある。
【0268】
実施例1
ナトリウムメトキシド(25重量%、2.5モル当量)のメタノール溶液を[3’−アセトキシ−N−メチル−Bmt][2’−メトキシ−Sar][4’−アセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(275mg)のメタノール溶液に添加し、生成した混合物を室温で24時間撹拌した。次いで、酢酸を添加して過剰量のナトリウムメトキシドを中和した。メタノールを減圧下で取り除き、残渣を分取クロマトグラフィーを用いて精製して[(R)−メトキシ−Sar][4’−アセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(化合物A)を得た。H NMRは5.83,7.13,7.74および7.89ppmでピークを示した。
【0269】
同様の方法で処理することによって、以下の化合物を調製した:
【表1】

【0270】
実施例2
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(200mg)および無水酢酸(0.035mL)の混合物のジクロロメタン溶液をトリフルオロメタンスルホン酸ビスマス(III)四水和物で処理し、生成した混合物を室温で2.5日にわたって撹拌した。粗生成物はシリカゲルカラムを使用したクロマトグラフィーによって精製して[4’−アセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(化合物E)を得た。H NMRは7.14,7.51,7.61および7.89ppmでピークを示し;LC MS 631.0 (M+2)/2であった。
【0271】
同様の方法で処理することによって、以下の化合物を調製した:
【0272】

【0273】

【0274】

【0275】

【0276】

【0277】
実施例3
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(210mg,0.172mmol)、トリエチルアミン(0.144mL,1.03mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(126mg,1.03mmol)を0℃で乾燥したジクロロメタンに溶解した。炭酸ビス(4‐ニトロフェニル)(157mg,0.52mmol) を添加し、混合物を30分間撹拌した。冷浴を取り除き、反応物を室温で36時間撹拌した。混合物を水で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。有機層を塩水で洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、濾過し、シリカゲルで濃縮した。ヘプタン中の10%メタノール/酢酸エチルの勾配混合物の0〜100%で溶離するフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、橙色固体として[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAp−ニトロフェニル4’−カーボネート(化合物K)を得た。

【0278】
実施例4
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAp−ニトロフェニル4’−カルボネート(化合物K)(80mg,0.059mmol)を乾燥THFに溶解した。容器を排気し、アルゴンを再充填し、次いでトリエチルアミン(0.040mL,0.289mmol)、その後ジメチルアミン(0.145mL,0.289mmol)を添加した。すぐに黄色に変わった反応混合物を室温で30分間撹拌した。シリカゲルを添加し、溶媒を蒸発した。ヘプタン中の5%メタノール/酢酸エチルの勾配混合物の0〜100%で溶離するフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製して、橙色固体として[4‘−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]4シクロスポリンA N,N−ジメチル−4’−カルバメート(化合物L)を得た。

【0279】
同様の方法で処理することによって、以下の化合物を調製した:
【0280】

【0281】

【0282】

【0283】

【0284】

【0285】

【0286】

【0287】

【0288】

【0289】

【0290】

【0291】

【0292】

【0293】

【0294】
参考例1
カンファースルホン酸を[3’−アセトキシ−N−メチル−Bmt][2’−アセトキシ−Sar][4’−アセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(130mg)のメタノール(2mL)溶液に添加し、生成した混合物を50℃で5時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウムおよび塩水で洗浄し、次いで濃縮して[3’−アセトキシ−N−メチル−Bmt][(R)−メトキシ−Sar]−[4’−アセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAを得た。H NMRは5.65ppmでサルコシン陽子を示した。
【0295】
参考例2
酢酸水銀(100mg)を[3’−アセトキシ−N−メチル−Bmt][2’−チオフェニル−Sar]−[4’−アセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(100mg)の氷酢酸溶液に添加し、生成した混合物を50℃で3時間撹拌した。その後、溶媒を取り除き、残渣を酢酸エチルに溶解し、炭酸水素ナトリウムの飽和溶液、次いで塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒の除去後、最終生成物をH NMRによって分析し、[3’−アセトキシ−N−メチル−Bmt][2’−アセトキシ−Sar]−[4’−アセトキシ−N−メチルロイシン]−シクロスポリンAを得た。
【0296】
参考例3
N,N−ジメチルアミノピリジン(310mg)、臭化テトラエチルアンモニウム(0.35mg)および無水酢酸(0.16mL)を[2’−チオフェニル−Sar]−[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(550mg)の乾燥ジクロロメタン溶液に添加した。生成した混合物を室温で約2.5日間撹拌した。次いで、反応混合物を酢酸エチルで希釈し、水および塩水で洗浄し、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムを使用し、酢酸エチルおよびヘキサンの混合物で溶離するクロマトグラフィーによって精製して[3’−アセトキシ−N−メチル−Bmt][2’−チオフェニル−Sar][4’−アセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAを得た。
【0297】
参考例4
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(1.22g)の乾燥したt−ブチルメチルエーテル(TBME)溶液をナトリウムアミド(1.0g)の液体アンモニア(30mL)懸濁液に−33℃で不活性雰囲気下添加した。生成した混合物を−33℃で不活性雰囲気下90分間撹拌した。その後、フェニルジスルフィド(4.4g)を添加し、反応混合物を−33℃で不活性雰囲気下さらに2時間撹拌した。その後、反応混合物をTBMEおよび水で希釈し、十分に混合し、層を分離した。有機層を塩水で洗浄し、その後濃縮した。残渣はシリカゲルカラムを使用し、まず酢酸エチルおよびヘプタンの混合物で、その後酢酸メタノールおよび酢酸エチルの混合物で溶離するクロマトグラフィーにより精製して[2’−チオフェニル−Sar]−[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAを得た。
【0298】
参考例5
ヨウ化カリウム(20mg,1.1等量)、ジイソプロピルエチルアミン(0.02mL,1.1等量)およびジメチルアミン(0.06mL,2.0MのTHF溶液,1.1等量)を[3’−アセトキシ−N−メチル−Bmt][2’−メチルチオ−Sar][4’−クロロアセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(100mg)の乾燥アセトニトリル溶液に添加し、生成した混合物を室温で40時間撹拌した。反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。有機抽出物を一緒にし、塩水で洗浄し、その後濃縮した。粗生成物はシリカゲルカラムを使用し、ヘプタン中の酢酸エチルで溶離するクロマトグラフィーによって精製して[3’−アセトキシ−N−メチル−Bmt][2’−メチルチオ−Sar]−[4’−N’N−ジメチルアミノアセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAを得た。
【0299】
また同様の方法で処理することにより、[3’−アセトキシ−N−メチル−Bmt][4’−N’N−ジメチルアミノアセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAおよび[3’−アセトキシ−N−メチル−Bmt][4’−N’N−ジエチルアミノアセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAを調製した。
【0300】
参考例6
クロロ酢酸無水物(120mg,10等量)およびピリジン(0.06mL,10等量)を4−ジメチルアミノピリジン(0.01g,1.0等量)を含有する[3’−アセトキシ−N−メチル−Bmt][2’−メチルチオ−Sar]−[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(90mg)のジクロロメタン溶液に添加し、生成した混合物を室温で5時間撹拌した。クロロ酢酸無水物(0.05g,5.0等量)およびピリジン(0.03mL,5.0等量)の第二バッチを添加し、反応混合物を12時間撹拌した。クロロ酢酸無水物(0.05g,5.0等量)およびピリジン(0.03mL,5.0等量)の第三バッチを添加し、反応混合物を12時間撹拌した後、クロロ酢酸無水物(0.05g,5.0等量)およびピリジン(0.03mL,5.0等量)の最終バッチを添加し、反応混合物をさらに12時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルおよび水で希釈し、層を分離した。有機層を1.0N塩酸の冷水、飽和重炭酸ナトリウムの冷水、塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒の除去後、残渣はシリカゲルカラムを使用し、酢酸エチルおよびヘプタンで溶離するクロマトグラフィーによって精製して[3’−アセトキシ−N−メチル−Bmt][2’−メチルチオ−Sar]−[4’−クロロアセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAを得た。
【0301】
また同様の方法で処理することにより、[3’−アセトキシ−N−メチル−Bmt][4’−クロロアセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAを調製した。
【0302】
参考例7
スカンジウムトリフルオロメタンスルホネート(11mg,0.33等量)を[3’−アセトキシ−N−メチル−Bmt][2’−メチルチオ−Sar][4’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(100mg)のジクロロメタン溶液に添加し、生成した混合物を室温で一晩撹拌した。粗反応混合物を直接12gのシリカゲルカートリッジに装填し、ヘプタン中の酢酸エチルで溶離した。所望の生成物を含有する画分を統合し、減圧下濃縮し、真空乾燥して[3’−アセトキシ−N−メチル−Bmt][2’−メチルチオ−Sar][4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAを得た。
【0303】
参考例8
無水酢酸(0.07mL,10等量)および4−ジメチルアミノピリジン(0.044g,5等量)を[2’−メチルチオ−Sar]−[4’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(100mg)のピリジン溶液に添加し、生成した混合物を室温で60時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチルおよび水で希釈し、層を分離した。有機層を1.0N塩酸の冷水、飽和重炭酸ナトリウムの水溶液、塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒の除去後、残渣はシリカゲルカラムを使用し、酢酸エチルおよびヘプタンで溶離するクロマトグラフィーによって精製して[3’−アセトキシ−N−メチル−Bmt][2’−メチルチオ−Sar]−[4’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAを得た。
【0304】
参考例9
トリエチルアミン(0.06mL,2.2等量)およびtert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(0.05mL,1.1等量)を[2’−メチルチオ−Sar]−[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(250mg)の乾燥ジクロロメタン溶液に添加した。生成した混合物を室温で約2.5時間撹拌した。その後、反応混合物を濃縮し、残渣はシリカゲルカラムを使用し、酢酸エチル中ヘプタンおよび5%メタノールの混合物で溶離するクロマトグラフィーによって精製して[2’−メチルチオ−Sar]−[4’−tert−ブチルジメチルシロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAを得た。
【0305】
参考例10
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA(5.0g)の乾燥t−ブチルメチルエーテル(TBME)溶液をナトリウムアミド(4.0g)の液体アンモニア(125mL)懸濁液に−33℃で不活性雰囲気下添加した。生成した混合物を−33℃で不活性雰囲気下90分間撹拌した。その後、メチルジスルフィド(7.7g)を添加し、反応混合物を−33℃で不活性雰囲気下さらに2時間撹拌した。その後、反応混合物をTBMEおよび水で希釈し、十分に混合し、層を分離した。有機層を塩水で洗浄し、次いで濃縮した。残渣はシリカゲルカラムを使用し、まず酢酸エチルおよびヘプタンの混合物で、その後酢酸メタノールおよび酢酸エチルの混合物で溶離するクロマトグラフィーによって精製して[2’−メチルチオ−Sar]−[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAを得た。
【0306】
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンAを欧州特許第484,281号に開示された方法に従って調製し、開示物を特にここに参照して援用した。
【0307】
HCV活性
式(I)の化合物をHCVに対する活性についてKriger et al, 2001 , Journal of Virology 75: 4614-4624, Pietschmann et al, 2002, Journal of Virology 76: 4008-4021に記載されたようなものを応用した方法を使用し、また米国特許第6,630,343号に記載されたようなHCVのRNA構築物を使用して試験した。化合物を、ヒト肝癌細胞株ET(lub ubi neo/ET)、安定したルシフェラーゼ(LUC)レポータを含有するHCVのRNAレプリコンにおいて検査した。HCVのRNAレプリコンETは、ホタルルシフェラーゼ(LUC)の産生を促進するHCVの5’末端(HCV内部リボソーム結合配列(IRES)およびHCVコアタンパク質の最初の数個のアミノ酸を有する)、ユビキチンおよびネオマイシンホスホトランフェラーゼ(NeoR)融合タンパク質を含有する。ユビキチンの開裂はLUCおよびNeoRタンパク質を放出する。EMCVのIRES要素は、HCV構造タンパク質NS3−NS5の翻訳を制御する。NS3タンパク質はHCVポリタンパク質を開裂してHCV複製に必要な成熟NS3、NS4、NS4B、NS5AおよびNS5Bタンパク質を放出する。レプリコンの3’末端に本物のHCVの3’NTRがある。LUCレポータの活性はHCV複製レベルに直接比例し、陽性対照の抗ウイルス化合物はLUCの端点を使用した再現可能な抗ウイルス反応をもたらす。
【0308】
化合物を、それぞれ0.03〜3μMまたは1〜100μMの範囲の5つの半対数希釈濃度(half−log concenrations)でDMSOに溶解した。ET株の亜密集培地を細胞数(細胞毒性)または抗ウイルス活性の分析専用の96穴プレートに播種し、次の日化合物を適切な穴に添加した。72時間後の細胞が依然亜密集のとき細胞を処理した。抗ウイルス活性をEC50およびEC90として示し、ウイルス複製をそれぞれ50%および90%減少するのに有効な化合物の濃度である。化合物のEC50およびEC90値をLUC活性由来のHCVのRNAレプリコンとして評価したHCVのRNAレベルから導く。細胞毒性をIC50およびIC90として示し、それぞれ細胞生存率を50%および90%だけ阻害する化合物の濃度である。化合物のIC50およびIC90値を、比色分析を用いて細胞数および細胞毒性の指標として算出した。LUCレポータの活性はヒト細胞株におけるHCVのRNAレベルと直接比例する。HCVレプリコンアッセイを、インターフェロン−α−2bを陽性対照として用いる平行実験において検証した。シクロスポリンをまた比較の目的で試験した。特定の実施形態において、式(I)の化合物は、ヒト肝臓細胞でHCV複製をシクロスポリンよりも広い範囲で強く阻害する。さらに細胞毒性のレベルを考えたとき、特定の実施形態において、式(I)の化合物はシクロスポリンより幅広い安全性の限界(抗ウイルスIC50対細胞毒性EC50)を示す。
【0309】
HIV活性
また、式(I)の化合物を、ヒト免疫不全ウイルス−1(HIV)に対する抗レトロウイルス活性についてヒトT−リンパ芽細胞株、CEM−SSのHIV株であるHIV−IIIB(Weislow et al., 1989, J. Natl. Cancer Inst. 81:577-586)での感染を使用して試験した。このMTS細胞保護作用アッセイにおいて、それぞれの実験は細胞対照の穴(細胞のみ)、ウイルス対照の穴(細胞とウイルス)、薬物毒性の穴(細胞と薬物のみ)、薬物比色対照の穴(薬物のみ)および実験の穴(薬物、細胞とウイルス)を含む。化合物をまずDMSOに溶解し、20または2μMのいずれかの高濃度から始める6つの半対数希釈を使用して試験した。HRV−IRFをそれぞれの穴に約90%の細胞殺滅を感染後6日で与えるように決めたウイルス量である50μLの容積で添加した。アッセイ終了時、アッセイプレートを可溶性テトラゾリウム系色素MTS(CellTiter 96試薬、Promega)で染色して細胞生存率を求め、化合物の毒性を定量化した。MTSを代謝的に活性な細胞のミトコンドリア酵素によって代謝して細胞生存率および化合物の細胞毒性の定量分析を提供する可溶性ホルマザン生成物を得る。陽性対照としてジドブジン(3’−アジド−3’−デオキシチミジンまたはAZT)を使用した並列実験においてアッセイを認証した。アッセイは、化合物のEC50(ウイルス複製を50%阻害する濃度)、IC50(細胞成長の50%阻害をもたらす濃度)および選択指数(IC50/EC50)の決定を含む。
【0310】
シクロフィリン結合活性
式(I)の化合物のシクロフィリン阻害結合を、Quesniauxその他 (Quesniaux et al., 1987, Eur. J Immunol. 27: 1359-1365)に記載された方法を応用した競合ELISAを使用して求めた。D−Lys−シクロスポリンA(D−Lys−Cs)に結合したスクシニルスペーサの活性化エステルを、8位のD−リジル残基によってウシ血清アルブミン(BSA)に結合した。BSAを0.1MのpH9.0のホウ酸塩緩衝剤(1.4mL中4mg)に溶解した。ジメチルホルムアミド(0.6mL)に溶解した100倍のモル過剰なD−Lys−CsをBSAに激しい撹拌下滴加した。カップリング反応を室温で温和な撹拌下2から3時間実行し、共役物をリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS,pH7.4)に対して広範囲に透析した。共役タンパク質のアリコートのアセトン沈殿後、共有結合したD−Lys−Csはアセトン溶液に残存せず、シクロスポリンの共有結合の範囲を算出した。
【0311】
マイクロタイタープレートをD−Lys−Cs−BSA共役物で被覆した(24時間40℃でPBS中2pg/mL)。プレートをTween(登録商標)/PBSで、またPBSのみで洗浄した。非特異的な結合をブロックするため、2%BSA/PBS(pH7.4)をウェルに添加し、37℃で2時間培養した。試験すべき化合物の5倍の希釈系列を別途のマイクロタイタープレート中のエタノールで作成した。出発濃度はヒト組み換えシクロフィリンでのアッセイのため0.1mg/mLであった。0.1μg/mLのシクロフィリン溶液198μLをマイクロタイターに添加し、その直後に2μLの希釈したシクロスポリンA(参考化合物として使用)または本明細書に開示した化合物を添加した。シクロスポリンAの無い被覆BSA−Cs複合体およびシクロフィリンの間の反応を一晩4℃で平衡にした。シクロフィリンを、PBSを含有する1%BSAに希釈し、4℃で一夜培養した抗シクロフィリンラビット免疫血清で検出した。プレートを上記のように洗浄した。次いで、結合したラビット抗体を、1%BSA−PBSに希釈し、37℃で2時間培養したアルカリホスファターゼに共有結合したヤギの抗ラビットIgGによって検出した。プレートを上記のように洗浄した。4−ニトロフェニルホスフェート(pH9.8のジエタノールアミン緩衝剤中1g/1)を用いて37℃で1〜2時間培養した後、酵素反応は分光光度計を使用して405nmで分光測光法によって測定した。結果を本明細書に開示の化合物およびシクロスポリンAのそれぞれ50%の阻害を達成するのに必要とされる濃度におけるLog10差であるシクロフィリン結合比率として表わした。
【0312】
結果は以下の通りである:式(I)の代表的な化合物のシクロフィリンを阻害する能力を示す化合物AからFは0.35以下のシクロフィリンA結合比率を有し、シクロフィリンBは0.21以下の結合比率を有する。
【0313】
式(I)の化合物を、Jurkat細胞におけるT細胞刺激(IL−2)について抗CD3および抗CD28の共刺激で試験した。全ての化合物は10μM(n=2)から出発して0.0015μMの0.5−Log9点の滴定を有する。シクロスポリンA(コントロール)は、また500ng/mLから始めて0.5−Log9点の滴定を有する。試験すべき全ての化合物をジメチルスルホキシドに溶解した。細胞毒性を平行Almar Blueプレートで評価した。Jurkat細胞を96穴プレートの190μLの成長培地中に一穴あたり2×10細胞で播種した。細胞をRPMI1640培地、10%ウシ胎仔血清およびL−グルタミン中37℃で5%二酸化炭素を用いて培養した。培養から1時間後、細胞を固定抗CD3(0.4μg/穴)、抗CD28可溶(2μg/mL)で刺激した。6時間後、試料の上清を採取し、−80℃にて保存した。上清試料50μLをLuminex(登録商標)1−plexアッセイを用いてIL−2について試験した。
【0314】
次のIL−2活性の結果を得た:化合物Eに対するEC50値は、0.01μM未満である。化合物GおよびHに対するEC50値は、0.1μM未満である。化合物AおよびIからLに対するEC50値は、0.1から0.9μMである。化合物B、CおよびDに対するEC50値は、10μMを超える。シクロスポリンAに対するEC50値は、2.7ng/mLである。試験した式(I)の化合物のいずれも細胞毒性を示さなかった。
【0315】
ミトコンドリア膜透過性遷移
ミトコンドリア膜透過性遷移(MPT)を、Ca2+によって誘導されたミトコンドリアの膨張を測定することによって求めた。方法はBlattnerその他, 2001, Analytical Biochem., 295: 220に記載された方法を応用した。ミトコンドリアをリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)で潅流して血液を除去したラットの肝臓からサッカロース系緩衝剤におけるおだやかな均質化を用いた標準の方法を使用して調製し、その後分画遠心法によってまず細胞破片を取り除き、次いでミトコンドリアをペレットにした。膨張が150マイクロモルのCa2+(塩化カルシウムの濃縮溶液から添加)によって誘発され、535〜540nmでの散乱を測定することによってモニターした。代表的な化合物を膨張が誘発される5分前に添加した。EC50を式(I)の化合物の有無での膨張を比較することによって求めた。
【0316】
上記の試験において、化合物AからWは10μM以下のEC50値を与え、式(I)の化合物のミトコンドリアへの浸透およびMPTの阻害能力を示した。化合物Xは30μMを超える値を付与した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)
【化1】

(式中のAは(E)−CH=CHRまたは−CHCHRであり、Rはメチル、−CHSH、−CH(チオアルキル)、−CH(カルボキシル)、−CHアルコキシカルボニル、カルボキシルまたはアルコキシカルボニルを示し;
Bはエチル、1−ヒドロキシエチル、イソプロピルまたはn−プロピルを示し;
は水素、低級アルキル、アリルまたは−XR10を示し;
は−C(=O)R21を示し;
Xは−S(=O)−または酸素を示し、nは0,1または2であり;
10は、1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上のR基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
2〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル;
2〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキニル;
3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるシクロアルキル;または
2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシカルボニルを示し;
は、ハロゲン;ヒドロキシ;アルコキシ;カルボキシル;アルコキシカルボニル;−NR、−NR(CHNR;ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されたフェニル;5または6個の環原子および窒素、硫黄および酸素からなる群から選択された同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を有する飽和または不飽和の複素環からなる群から選択され、ここで複素環が環の炭素原子によりアルキルに結合され;
およびRは同じかまたは異なり、それぞれ
水素;
1〜6個の炭素原子を有し、1個以上の同じか異なる基Rにより任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
2〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルケニルもしくはアルキニル;
1〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキルにより任意に置換される3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル;
ハロゲン、アルコキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1〜5個の置換基により任意に置換されるフェニル基;
5もしくは6個の環原子および窒素、硫黄および酸素からなる群から選択された同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を有し、飽和もしくは不飽和の複素環であり、ハロゲン、アルコキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換され得る複素環を示すか;または
およびRは、これらが結合した窒素原子と共に、4〜6個の環原子を有する飽和または不飽和の複素環を形成し、該環は窒素、酸素および硫黄からなる群から選択された他のヘテロ原子を任意に含有し、アルキル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択された同じか異なる1〜4個の置換基により任意に置換されることができ;
は水素または1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを示し;
はハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニルまたは−NRを示し;
およびRは同じかまたは異なり、それぞれ水素または1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキルを示し;
21は水素または1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上の基R22により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
2〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル;
2〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキニル;
3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるシクロアルキル;
−OR11, −SR11, −NR1213
アミノカルボニル、N−モノ(低級アルキル)アミノカルボニルもしくはN,N−ジ(低級アルキル)アミノカルボニル;
ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1〜5個の置換基により任意に置換されるフェニル;または
4〜6個の環原子および窒素、硫黄および酸素からなる群から選択された同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を有する飽和もしくは不飽和の複素環であり、ハロゲン、アルコキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される複素環を示し;
11は1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上の基R23により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1〜5個の置換基により任意に置換されるフェニル基を示し;
12およびR13は同じかまたは異なり、それぞれ:
水素;
1〜6個の炭素原子を有し、アミノ、N−モノアルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、チオアルキル、カルボキシおよびアルコキシカルボニルからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
2〜6個の炭素原子を有し、アミノ、N−モノアルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、チオアルキル、カルボキシおよびアルコキシカルボニルからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル;
2〜6個の炭素原子を有し、アミノ、N−モノアルキルアミノ、N,N−ジアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシ、チオアルキル、カルボキシおよびアルコキシカルボニルからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキニル;
ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるフェニル;
フェニル環がハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるベンジル基を示すか;または
12およびR13は、これらが結合した窒素原子と共に、4〜6個の環原子を有する飽和もしくは不飽和の複素環を形成し、該環が窒素、酸素および硫黄からなる群から選択された他のヘテロ原子を任意に含有し、アルキル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択された同じか異なる1〜4個の置換基により任意に置換されることができ;
22およびR23は同じかまたは異なり、それぞれハロゲン;ヒドロキシ;アルコキシ;カルボキシル;アルコキシカルボニル;アミノ;N−モノアルキルアミノ;N,N−ジアルキルアミノ;−S(=O)アルキル;−S(=O)アリール;3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるシクロアルキル;ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるフェニル;または
4,5もしくは6個の環原子および窒素、硫黄および酸素からなる群から選択された同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を有する飽和もしくは不飽和の複素環であり、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換され得る複素環を示し;
pは0,1または2であり;
mは2から4の整数である)化合物またはその薬学的に許容し得る塩もしくは溶媒和物。
【請求項2】
前記一般式(I)におけるAは(E)−CH=CHRまたは−CHCHRであり、Rはメチル基、−CHSH、CH(チオアルキル)、CHアルコキシカルボニルを示し、
Bは、エチル、1−ヒドロキシエチル、イソプロピルまたはn−プロピルを示し;
は、水素、低級アルキル、アリルまたは−XR10を示し;
は、−C(=O)R21を示し;
Xは、−S(=O)−または酸素を示し、nは0,1または2であり;
10は、
1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上の基Rにより任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
2〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル;
2〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキニル;
3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるシクロアルキル;または
2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルコキシカルボニルを示し;
は、ハロゲン;ヒドロキシ;アルコキシ;カルボキシル;アルコキシカルボニル;−NR、−NR(CHNR;ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるフェニル;5または6個の環原子および窒素、硫黄および酸素からなる群から選択された同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を有し、飽和または不飽和の複素環で、環の炭素原子によってアルキルに結合して複素環からなる群から選択され;
およびRは同じかまたは異なり、それぞれ:
水素;
1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上のR基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルケニルもしくはアルキニル;
1〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキルにより任意に置換される3〜6個の炭素原子を有するシクロアルキル;
ハロゲン、アルコキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1〜5個の置換基により任意に置換されるフェニル;
5または6個の環原子および窒素、硫黄および酸素からなる群から選択された同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を有し、飽和もしくは不飽和の複素環であり、ハロゲン、アルコキシ、シアノ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される複素環を示すか;または
およびRは、これらが結合した窒素原子と共に、4〜6個の環原子を有する飽和もしくは不飽和の複素環を形成し、前記環は窒素、酸素および硫黄からなる群から選択された他のヘテロ原子を任意に含有し、またアルキル、フェニルおよびベンジルからなる群から選択された同じか異なる1〜4個の置換基により任意に置換することができ;
は、水素または1〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキルを示し;
は、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニルまたは−NRを示し;
およびRは同じかまたは異なり、それぞれ水素または1〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキルを示し;
21は:水素または1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上の基R22により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
2〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル;
2〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキニル;
3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシル、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるシクロアルキル;
アミノカルボニル、N−モノ(低級アルキル)アミノカルボニルまたはN,N−ジ(低級アルキル)アミノカルボニル;
ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1〜5個の置換基により任意に置換されるフェニル;または
4〜6個の環原子および窒素、硫黄および酸素からなる群から選択された同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を有し、飽和もしくは不飽和の複素環で、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アルコキシカルボニル、アミノ、アルキルアミノおよびジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される複素環を示し;
22はハロゲン;ヒドロキシ;アルコキシ;カルボキシル;アルコキシカルボニル;アミノ;N−モノアルキルアミノ;N,N−ジアルキルアミノ;−S(=O)アルキル;−S(=O)アリル;3〜6個の炭素原子を有し、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、N−モノアルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるシクロアルキル;ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1〜5個の置換基により任意に置換されるフェニル;または4,5または6個の環原子および窒素、硫黄および酸素からなる群から選択された同じか異なる1〜3個のヘテロ原子を有し、飽和もしくは不飽和の複素環で、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換される複素環を示し;
pは、0,1または2であり;
mは、2〜4の整数である請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容し得る塩もしくは溶媒和物。
【請求項3】
が水素または−XR10を示す請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Aが(E)−CH=CHRを示し、Rがメチルを示し、Bがエチル基を示す請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
21が、1〜4個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上の基R22により任意に置換される直鎖または分岐鎖のアルキルを示す請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
21が、1〜6個の炭素原子を有し、同じか異なる1個以上の基R22により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
3〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル;または
−OR11、−SR11もしくは−NR1213を示す請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
(a)R11が、1〜6個の炭素原子を有し、基R23により任意に置換される直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;または
ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるフェニル基を示し、
(b)R12およびR13は同じかまたは異なり、それぞれ
水素;
1〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキル;
2〜6個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル;
フェニル環がハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、シアノ、ニトロ、アミノ、N−アルキルアミノおよびN,N−ジアルキルアミノからなる群から選択された同じか異なる1個以上の置換基により任意に置換されるベンジルを示すか;または
12およびR13は、これらが結合した窒素原子と共に、4〜6個の環原子を有する飽和複素環を形成し、該環が窒素、酸素および硫黄からなる群から選択された他のヘテロ原子を任意に含有し、また同じか異なる1個以上のアルキルにより任意に置換し得る請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
[(R)−メトキシ−Sar][4’−アセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA;
[(R)−メチルチオ−Sar][4’−N,N’−ジメチルアミノアセトキシ−N−メチルロイシン]−シクロスポリンA;
[4’−N,N’−ジメチルアミノアセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA;
[4’−N,N’−ジエチルアミノアセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA;
[4’−アセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA;
[4’−トリメチルアセトキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA;
[4’−プロピオニルオキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA;
[4’−ブチリルオキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA;
[4’−イソブチリルオキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA;
[4’−(trans−2−メチル−2−ブテノイル)オキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA;
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA p−ニトロフェニル−4’−カーボネート;
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA N,N−ジメチル−4’−カルバメート;
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA N,N−ジエチル−4’−カルバメート;
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA N−メチル−4’−カルバメート;
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA N−エチル−4’−カルバメート;
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA N−アリル−4’−カルバメート;
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA N−(n−ブチル)−4’−カルバメート;
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA N−(n−ヘキシル)−4’−カルバメート;
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA N−ベンジル−4’−カルバメート;
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA N−(p−メトキシベンジル)−4’−カルバメート;
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA アゼチジン−4’−カルバメート;
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA ピロリジン−4’−カルバメート;
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA ピペリジン−4’−カルバメート;
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA S−ベンジル−4’−チオカルボネート;
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA 4−メチル−1−ピペラジン−4’−カルバメート;および
[4’−ヒドロキシ−N−メチルロイシン]シクロスポリンA N,N−ジメチルエチレンジアミン−4’−カルバメートからなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に規定された一般式(I)の化合物またはその薬学的に許容し得る塩もしくは溶媒和物と、薬学的に許容し得る賦形剤、担体もしくは希釈剤とを含有する組成物。
【請求項10】
被検体に請求項1〜8のいずれか一項に規定された一般式(I)の化合物またはその薬学的に許容し得る塩もしくは溶媒和物と任意に薬学的に許容し得る賦形剤、担体もしくは希釈剤とを投与することを備える被検体の疾病または疾患を治療または予防する方法。
【請求項11】
(a)下記の式(II);
【化2】

(式中のA,B,RおよびRは、請求項1に規定されるようなものであり、R30は保護基を示す)の化合物を脱保護して保護基R30を水素で置換する工程;または
(b)下記の式(VI);
【化3】

(式中のA,BおよびRは、請求項1に規定されるようなもの)の化合物を金属触媒の存在下式(R21CO)O(式中のR21は請求項1に規定されるようなもの)の無水物と反応させる工程を備える請求項1に規定されるような式(I)の化合物の製造方法。
【請求項12】
下記の式(II):
【化4】

(式中のA,B,RおよびRは、請求項1に規定するようなもので、R30は保護基を示し、RおよびR30が同時にアセチルを示す場合、Rは水素、チオメチル、メトキシ、アセトキシまたはエチレン−(2,2)−ジエチルアミノ以外のものである)の化合物。
【請求項13】
下記の一般式(III),(IV)または(V):
【化5】

【化6】

【化7】

(式中のA,B,RおよびRは、請求項1に規定されたようなもので、R30は保護基を示し、Pはシリル基を示す)の化合物。

【公表番号】特表2012−514023(P2012−514023A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544047(P2011−544047)
【出願日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/068017
【国際公開番号】WO2010/076329
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(508296370)サイネクシス,インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】