説明

シクロデキストリンを含むグリコペプチド抗生物質組成物

【課題】所望されない特性を減少させるグリコペプチド抗生物質の新規の薬学的組成物を提供する。
【解決手段】シクロデキストリン、および脂質化したグリコペプチド抗生物質またはそれらの薬学的に受容可能な塩を含む、組成物。あるいは水性シクロデキストリンキャリア、および治療有効量の脂質化したグリコペプチド抗生物質、またはその薬学的に受容可能な塩を含む、薬学的組成物。組成物は、水をさらに含んでもよく、粉末であっても、凍結乾燥した粉末であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の優先権)
本出願は、2000年5月2日に出願された米国仮出願番号60/201,178;および全て2000年6月22日に出願された米国仮出願番号60/213,415;同60/213,410;同60/213,417;同60/213,146;同60/213,428;および2000年8月18日に出願された米国仮出願番号60/226,727(これらの出願は、本明細書中でその全体が参考として援用される)に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、シクロデキストリンおよび治療的有効量のグリコペプチド抗生物質を含む新規の薬学的組成物に関する。本発明はまた、このような薬学的組成物を使用して、哺乳動物における細菌性疾患を処置するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(技術水準)
グリコペプチド抗生物質およびその脂質化誘導体は、当該分野で周知である(非特許文献1を参照のこと)。これらのグリコペプチド化合物は、哺乳動物における広範な種々の細菌性疾患を処置するために非常に有効な抗生物質である。しかし、哺乳動物に投与される場合、いくつかのグリコペプチド抗生物質は、所望されない特性(例えば、過剰な組織蓄積、腎毒性、ヒスタミン放出(レッドマン症候群(Red Man Syndrome))および脈管刺激)を示す。従って、これらの所望されない特性を減少させるグリコペプチド抗生物質の新規の薬学的組成物についての必要性が存在する。
【非特許文献1】Glycopeptide Antibiotics、R.Nagarajan編、Marcel Dekker Inc.New York(1994)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1) シクロデキストリン、および脂質化したグリコペプチド抗生物質またはそれらの薬学的に受容可能な塩を含む、組成物。
(項目2) 水をさらに含む、項目1に記載の組成物。
(項目3) 粉末である、項目1に記載の組成物。
(項目4) 凍結乾燥した粉末である、項目1に記載の組成物。
(項目5) 水性シクロデキストリンキャリア、および治療有効量の脂質貸したグリコペプチド抗生物質、またはその薬学的に受容可能な塩を含む、薬学的組成物。
(項目6) 項目5に記載の薬学的組成物であって、該薬学的組成物は、以下:
(a)治療有効量の脂質化したグリコペプチド抗生物質、またはこれらの薬学的受容可能な塩;
(b)1重量%〜40重量%のシクロデキストリン;および
(c)60重量%〜99重量%の水(但し、該組成物の成分の合計が100重量%となる)、
を含む、組成物。
(項目7) 前記シクロデキストリンがヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンであるか、またはスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンである、項目5に記載の薬学的組成物。
(項目8) 前記シクロデキストリンが、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンである、項目7に記載の薬学的組成物。
(項目9) 前記シクロデキストリンが、前記組成物の約5重量%〜約35重量%である、項目6に記載の薬学的組成物。
(項目10) 前記シクロデキストリンが、前記組成物の約10重量%〜約30重量%である、項目9に記載の薬学的組成物。
(項目11) 前記グリコペプチド抗生物質が、脂質化されたグリコペプチド抗生物質である、項目6に記載の薬学的組成物。
(項目12) 項目1に記載の薬学的組成物であって、前記グリコペプチド抗生物質が、以下の式I:
【化1】


の化合物、あるいは、それらの薬学的に受容可能な塩、立体異性体、またはプロドラッグであって、ここで、
は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環式および−R−Y−R−(Z)からなる群より選択され;あるいは、Rは、−R−Y−R−(Z)、R、−C(O)R、または−C(O)−R−Y−R−(Z)で必要に応じて置換されたサッカリド基からなる群より選択され;
は、水素または−R−Y−R−(Z)、R、−C(O)Rもしくは−C(O)−R−Y−R−(Z)で必要に応じて置換されたサッカリド基であり;
は、−OR、−NR、−O−R−Y−R−(Z)、−NR−R−Y−R−(Z)、−NR、または−O−Rであり;あるいは、Rは、1つ以上のホスホノ基を含む、窒素連結置換基、酸素連結置換基、または硫黄連結置換基であり;
は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、−R−Y−R−(Z)、−C(O)Rおよび−R−Y−R−(Z)、R、−C(O)R、または−C(O)−R−Y−R−(Z)で必要に応じて置換されたサッカリド基からなる群より選択され;
は、水素、ハロ、−CH(R)−NR、−CH(R)−NR、−CH(R)−NR−R−Y−R−(Z)、−CH(R)−R、−CH(R)−NR−R−C(=O)−R、および1つ以上のホスホノ基を含む置換基からなる群より選択され;
は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、−R−Y−R−(Z)、−C(O)Rおよび−NR−R−Y−R−(Z)で必要に応じて置換されたサッカリド基からなる群より選択され、またはRおよびRは、RおよびRが結合した原子と一緒に結合され得、−NR−R−Y−R−(Z)で必要に応じて置換された複素環式環を形成し;
は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、−R−Y−R−(Z)、および−C(O)Rからなる群より選択され;
は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールおよび複素環式からなる群より選択され;
は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールおよび複素環式からなる群より選択され;
10は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールおよび複素環式からなる群より選択され;またはRおよびR10は結合され、−Ar−O−Ar−を形成し、ここでArおよびArは、独立して、アリーレンまたはヘテロアリーレンであり;
11は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールおよび複素環式からなる群より選択され、またはR10およびR11は、R10およびR11が結合した炭素原子および窒素原子と一緒に結合され、複素環式環を形成し;
12は、以下からなる群より選択される:水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環式、−C(O)R、−C(NH)R、−C(O)NR、−C(O)OR、−C(NH)NRおよび−R−Y−R−(Z)、またはR11およびR12は、R11およびR12が結合している窒素原子と一緒に結合して、複素環式環を形成し;
13は、水素または−OR14からなる群より選択され;
14は、水素、−C(O)Rおよびサッカリド基から選択され;
各Rは、独立して、アルキレン、置換アルキレン、アルケニレン、置換アルケニレン、アルキニレンおよび置換アルキニレンからなる群より選択され;
各Rは、独立して、共有結合、アルキレン、置換アルキレン、アルケニレン、置換アルケニレン、アルキニレンおよび置換アルキニレンからなる群より選択され、但し、Zが水素であるとき、Rは共有結合性でなく;
各Rは、独立して、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環式および−C(O)Rからなる群より選択され;
各Rは、独立して、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールおよび複素環式からなる群より選択され;
は、サッカリド基であり;
各Rは、独立して、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、または複素環式であり;
は、N連結アミノサッカリドまたはN連結複素環であり;
、XおよびXは、独立して、水素またはクロロから選択され;
各Yは、独立して、酸素、硫黄、−S−S−、−NR−、−S(O)−、−SO−、−NRC(O)−、−OSO−、−OC(O)−、−NRSO−、−C(O)NR−、−C(O)O−、−SONR−、−SOO−、−P(O)(OR)O−、−P(O)(OR)NR−、−OP(O)(OR)O−、−OP(O)(OR)NR−、−OC(O)O−、−NRC(O)O−、−NRC(O)NR−、−OC(O)NR−、−C(=O)−および−NRSONR−からなる群より選択され;
各Zは、独立して、水素、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリールおよび複素環式から選択され;
nは、0、1または2であり;そして
xは、1または2である、
組成物。
(項目13) 項目1〜10のいずれかに記載の薬学的組成物であって、前記脂質化されたグリコペプチド抗生物質が、以下の式II:
【化2】


を有し、あるいはそれらの薬学的に受容可能な塩、立体異性体、またはプロドラックであり、ここで、
19が水素であり;
20が−R−Y−R−(Z)、R、−C(O)R、または−C(O)−R−Y−R−(Z)であり;
そして、R、Y、R、Z、x、R、R、およびRは、項目7で定義されたものである、組成物。
(項目14) 細菌疾患を有する哺乳動物を処置する方法であって、該方法は、該哺乳動物に、請求項1〜13のいずれか1項に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目15) 哺乳動物における細菌疾患を処置する方法であって、該方法は、該哺乳動物に、治療有効量のグリコペプチド抗生物質を、シクロデキストリンと組み合わせて投与する工程を包含する、方法。
(項目16) 哺乳動物に投与したときに、脂質化グリコペプチド抗生物質の組織蓄積を減少するための方法であって、該方法は、該グリコペプチド抗生物質を、シクロデキストリンおよび治療有効量の該グリコペプチド抗生物質またはそれらの薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物中で該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目17) 哺乳動物に投与したときに、脂質化グリコペプチド抗生物質によって生じる腎毒性を減少するための方法であって、該方法は、該グリコペプチド抗生物質を、シクロデキストリンおよび治療有効量の該グリコペプチド抗生物質またはそれらの薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物中で該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目18) 哺乳動物に投与したときに、脂質化グリコペプチド抗生物質によって生成されるヒスタミンの放出を減少するための方法であって、該方法は、該グリコペプチド抗生物質を、シクロデキストリンおよび治療有効量の該グリコペプチド抗生物質またはそれらの薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物中で該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目19) 哺乳動物に投与したときに、脂質化グリコペプチド抗生物質によって生じる血管刺激を減少するための方法であって、該方法は、該グリコペプチド抗生物質を、シクロデキストリンおよび治療有効量の該グリコペプチド抗生物質またはそれらの薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物中で該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(発明の要旨)
本発明は、シクロデキストリンおよび治療的有効量のグリコペプチド抗生物質を含む新規の薬学的組成物を提供する。驚くべきことに、哺乳動物に投与される場合、本発明の薬学的組成物は、シクロデキストリンを含まない薬学的組成物と比較して、以下の特性の1以上を示す:(a)グリコペプチド抗生物質の組織蓄積の減少、(b)腎毒性の減少、(c)ヒスタミン放出(レッドマン症候群)の減少および(d)脈管刺激の減少。
【0005】
グリコペプチドの所望されない効果(例えば、腎毒性)を減少させることによって、シクロデキストリンと組み合わせたグリコペプチドの投与は、グリコペプチドについての治療ウインドウを増大させ、そしてより多い投与量を可能にする。
【0006】
従って、この組成物の局面の1つにおいて、本発明は、シクロデキストリンおよび治療的有効量のグリコペプチド抗生物質、またはその薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物に関する。この好ましい組成物は、凍結乾燥粉末または滅菌粉末の形態であり得る。
【0007】
この組成物の別の局面において、本発明は、シクロデキストリン水溶液および治療的有効量のグリコペプチド抗生物質、またはその薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物に関する。
【0008】
別の好ましい実施形態において、この薬学的組成物は、以下を含む:
(a)治療的有効量のグリコペプチド抗生物質、またはその薬学的に受容可能な塩;
(b)1〜40重量%のシクロデキストリン;および
(c)60〜99重量%の水(但し、組成物中の成分は合計100重量%である)。
【0009】
好ましくは、本発明の薬学的組成物に使用されるシクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンまたはスルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンである。より好ましくは、このシクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンである。好ましくは、このシクロデキストリンは、この処方物の約90重量%まで、そして代表的には約1〜40重量%;好ましくは、約5〜35重量%;より好ましくは、約10〜30重量%を構成する。
【0010】
好ましくは、本発明の薬学的組成物中に使用されるグリコペプチド抗生物質は、脂質化グリコペプチド抗生物質である。好ましくは、このグリコペプチド抗生物質は、治療的有効量でこの薬学的組成物中に存在する。
【0011】
好ましい実施形態において、本発明において使用されるグリコペプチド抗生物質は、式Iの化合物:
【0012】
【化3】


あるいはその薬学的に受容可能な塩、立体異性体またはプロドラッグであり、ここで:
は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環式および−R−Y−R−(Z)からなる群より選択されるか;またはRは、−R−Y−R−(Z)、R、−C(O)Rもしくは−C(O)−R−Y−R−(Z)で必要に応じて置換されたサッカリド基であり;
は、水素、または−R−Y−R−(Z)、R、−C(O)Rもしくは−C(O)−R−Y−R−(Z)で必要に応じて置換されたサッカリド基であり;
は、−OR、−NR、−O−R−Y−R−(Z)、−NR−R−Y−R−(Z)、−NR、もしくは−O−Rであるか;またはRは、1以上のホスホノ基を含む窒素結合置換基、酸素結合置換基もしくは硫黄結合置換基であり;
は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、−R−Y−R−(Z)、−C(O)R、および−R−Y−R−(Z)、R、−C(O)Rもしくは−C(O)−R−Y−R−(Z)で必要に応じて置換されたサッカリド基からなる群より選択され;
は、水素、ハロ、−CH(R)−NR、−CH(R)−NR、−CH(R)−NR−R−Y−R−(Z)、−CH(R)−R、−CH(R)−NR−R−C(=O)−R、および1以上のホスホノ基を含む置換基からなる群より選択され;
は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、−R−Y−R−(Z)、−C(O)Rおよび−NR−R−Y−R−(Z)で必要に応じて置換されたサッカリド基からなる群より選択されるか、またはRおよびRは連結されて、これらが結合する原子と共に−NR−R−Y−R−(Z)で必要に応じて置換された複素環式環を形成し得;
は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、−R−Y−R−(Z)および−C(O)Rからなる群より選択され;
は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールおよび複素環式からなる群より選択され;
は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールおよび複素環式からなる群より選択され;
10は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールおよび複素環式からなる群より選択されるか;またはRおよびR10は、連結されて−Ar−O−Ar−を形成し、ここで、ArおよびArは、独立してアリーレンまたはヘテロアリーレンであり;
11は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールおよび複素環式からなる群より選択されるか、またはR10およびR11は連結されて、これらが結合する炭素原子および窒素原子と共に複素環式環を形成し;
12は、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環式、−C(O)R、−C(NH)R、−C(O)NR、−C(O)OR、−C(NH)NRおよび−R−Y−R−(Z)からなる群より選択されるか、またはR11およびR12は連結されて、これらが結合する窒素原子と共に複素環式環を形成し;
13は、水素または−OR14からなる群より選択され;
14は、水素、−C(O)Rおよびサッカリド基から選択され;
各Rは、アルキレン、置換アルキレン、アルケニレン、置換アルケニレン、アルキニレンおよび置換アルキニレンからなる群から独立して選択され;
各Rは、共有結合、アルキレン、置換アルキレン、アルケニレン、置換アルケニレン、アルキニレンおよび置換アルキニレンからなる群より独立して選択され、但し、Rは、Zが水素である場合には共有結合ではない;
各Rは、水素、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環式および−C(O)Rからなる群より独立して選択され;
各Rは、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールおよび複素環式からなる群より独立して選択され;
は、サッカリド基であり;
各Rは、独立して、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、置換アルキニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリールまたは複素環式であり;
は、N結合アミノサッカリドまたはN結合複素環式であり、
、XおよびXは、水素または塩素から独立して選択され;
各Yは、酸素、硫黄、
【0013】
【化4】


からなる群より独立して選択され;
各Zは、水素、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロアリールおよび複素環式から独立して選択され;
nは、0、1または2であり;そして
xは、1または2である。
【0014】
好ましくは、Rは、−R−Y−R−(Z)、R、−C(O)Rまたは−C(O)−R−Y−R−(Z)で必要に応じて置換されたサッカリド基である。より好ましくは、Rは、
【0015】
【化5】


でサッカリド窒素上で置換されたアミノサッカリド基である。より好ましくは、Rはまた、4−(4−クロロフェニル)ベンジルまたは4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンジルでサッカリド窒素上で置換されたアミノサッカリド基であり得る。
【0016】
より好ましくは、Rは、以下の式のサッカリド基であって:
【0017】
【化6】


ここで、R15は、−R−Y−R−(Z)、R、−C(O)Rもしくは−C(O)−R−Y−R−(Z)であって;そしてR16は、水素またはメチルである。
【0018】
好ましくは、R15は、
【0019】
【化7】


である。好ましくは、R15はまた、4−(4−クロロフェニル)ベンジルまたは4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンジルであり得る。
【0020】
好ましくは、Rは、水素である。
【0021】
好ましくは、Rは、−OR;−NRである。より好ましくは、Rは、
【0022】
【化8】


である。なおより好ましくは、Rは、−OHである。
【0023】
好ましくは、R、RおよびRは、各々独立して、水素または−C(O)Rから選択される。より好ましくは、R、RおよびRは、各々水素である。
【0024】
好ましくは、Rは、水素、−CH−NHR、−CH−NR、−CH−NH−R−Y−R−(Z)、または1つもしくは2つのホスホノ基を含む置換基である。Rが、ホスホノ含有置換基である場合、Rは、好ましくは、式−CH−NH−R−P(O)(OH)の基であり、ここでRは、本明細書中に定義される通りである。この式において、Rは、好ましくはアルキレン基である。特に好ましいR置換基としては、N−(ホスホノメチル)アミノメチル;N−(2−ヒドロキシ−2−ホスホノエチル)アミノメチル;N−カルボキシメチル−N−(2−ホスホノエチル)アミノメチル;N,N−ビス(ホスホノメチル)−アミノメチル;N−(3−ホスホノプロピル)アミノメチルなどが挙げられる。
【0025】
好ましくは、Rが、ホスホノ含有置換基でない場合、Rは、水素、−CH−NHR、−CH−NRまたは−CH−NH−R−Y−R−(Z)である。Rはまた、好ましくは、
【0026】
【化9】


であり得る。より好ましくは、Rは、水素である。
【0027】
好ましくは、Rは、−CHC(O)NH、−CHCOOH、ベンジル、4−ヒドロキシフェニルまたは3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルである。
【0028】
好ましくは、Rは、水素またはアルキルである。
【0029】
好ましくは、R10は、アルキルまたは置換アルキルである。さらに好ましくは、R10は、天然に存在するアミノ酸の側鎖(例えば、イソブチル)である。
【0030】
好ましくは、R11は、水素またはアルキルである。
【0031】
好ましくは、R12は、水素、アルキル、置換アルキルまたは−C(O)Rである。R12はまた、好ましくは、水素;−CHCOOH;−CH−[CH(OH)]CHOH;−CHCH(OH)CHOH;−CHCHNH;−CHC(O)OCHCH;−CH−(2−ピリジル);−CH−[CH(OH)]COOH;−CH−(3−カルボキシフェニル);(R)−C(O)CH(NH)(CHNH;−C(O)Ph;−C(O)CHNHC(O)CH;E−CHCH−S−(CHCH=CH(CHCH;または−C(O)CHである。
【0032】
好ましくは、XおよびXは、それぞれクロロである。
【0033】
好ましくは、Xは、水素である。
【0034】
好ましくは、各Yは、以下からなる群から独立して選択される:酸素、硫黄、−S−S−、−NR−、−S(O)−、−SO−、−NRC(O)−、−OSO−、−OC(O)−、−NRSO−、−C(O)NR−、−C(O)O−、−SONR−、−SOO−、−P(O)(OR)O−、−P(O)(OR)NR−、−OP(O)(OR)O−、−OP(O)(OR)NR−、−OC(O)O−、−NRC(O)O−、−NRC(O)NR−、−OC(O)NR−および−NRSONR−。さらに好ましくは、Yは、酸素、硫黄または−NR−である。
【0035】
好ましくは、nは、0または1であり、そしてさらに好ましくは、nは、1である。
【0036】
本発明における使用のためのグリコペプチド抗生物質の別の好ましい群は式II:
【0037】
【化10】


の抗生物質あるいはその薬学的に受容可能な塩、立体異性体またはプロドラッグであり、
ここで:
19は、水素であり;
20は、−R−Y−R−(Z)、R、−C(O)R、または−C(O)−R−Y−R−(Z)であり;そして
、Y、R、Z、x、R、R、およびRは、本明細書中に記載されるいずれかの値または好ましい値を有する。
【0038】
好ましくは、R20は、以下:
【0039】
【化11】


である。好ましくは、R20はまた、4−(4−クロロフェニル)ベンジルまたは4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンジルであり得る。
【0040】
本発明における使用のためのグリコペプチド抗生物質のなお別の好ましい群は、グリコペプチド抗生物質A82846B(クロロオリエンチシン A(chloroorienticin A)またはLY264826としても公知である)の誘導体である。例えば、R.Nagarajanら、J.Org.Chem.、1988、54、983−986;およびN.Tsujiら、J.Antibiot.、1988、41、819−822を参照のこと。このグリコペプチドの構造は、A82846Bが、さらなるアミノ糖(すなわち、式I中のR位に結合する4−エピ−バンコサミン)を含み、そして式I中のR位に結合するジサッカリド部分においてバンコサミンの代わりに4−エピ−バンコサミンをさらに含むことを除けば、バンコマイシンに類似する。例えば、この化合物の好ましい群は、A82846BのN−アルキル化誘導体;またはそれの薬学的に受容可能なキャリアである。例えば、好ましい化合物は、ジサッカリド部分の4−エピ−バンコサミンのアミノ基に4−(4−クロロフェニル)ベンジル基または4−(4−クロロベンジルオキシ)ベンジル基が結合したA82846Bの誘導体である。
【0041】
本発明の薬学的組成物は、細菌疾患を処置するために非常に有効である。従って、この方法の局面の1つにおいて、本発明はまた、哺乳動物における細菌疾患を処置する方法に関し、この方法は、シクロデキストリンおよび治療有効量のグリコペプチド抗生物質、またはその薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物を哺乳動物に投与する工程を包含する。本方法は、本明細書中に記載される薬学的組成物のためのそれぞれの好ましい実施形態を含む。
【0042】
別の本発明の局面において、本発明は、哺乳動物に投与した場合、グリコペプチド抗生物質の組織蓄積を減少する方法に関し、この方法は、シクロデキストリンおよび治療有効量のグリコペプチド抗生物質、またはその薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物中のグリコペプチド抗生物質を哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0043】
本発明はまた、哺乳動物に投与した場合、グリコペプチド抗生物質によって生じる腎毒性を減少するための方法に関し、この方法は、シクロデキストリンおよび治療有効量のグリコペプチド抗生物質、またはその薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物中のグリコペプチド抗生物質を哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0044】
本発明はまた、哺乳動物に投与した場合、グリコペプチド抗生物質によって生じるヒスタミン放出を減少するための方法に関し、この方法は、シクロデキストリンおよび治療有効量のグリコペプチド抗生物質、またはその薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物中のグリコペプチド抗生物質を哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0045】
本発明はまた、哺乳動物に投与した場合、グリコペプチド抗生物質によって生じる血管刺激を減少するための方法に関し、この方法は、シクロデキストリンおよび治療有効量のグリコペプチド抗生物質、またはその薬学的に受容可能な塩を含む薬学的組成物中のグリコペプチド抗生物質を哺乳動物に投与する工程を包含する。
【0046】
1つの実施形態に従って、本発明の上記される方法は、シクロデキストリン水溶液および治療有効量のグリコペプチド抗生物質を含む薬学的組成物中のグリコペプチドを哺乳動物に投与することによって実施され得る。
【0047】
好ましくは、本発明の方法に従って、シクロデキストリン対グリコペプチドの重量比は、約0.5:1〜20:1の範囲であり、そしてさらに好ましくは、約1:1〜約10:1の範囲である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
(発明の詳細な説明)
本発明は、新規の薬学的組成物およびこのような組成物を使用して哺乳動物における細菌疾患を処置する方法に関する。本発明の化合物、組成物および方法を記載する場合、以下の用語は、他に示されない限り、以下の意味を有する。
【0049】
(定義)
用語「アルキル」は、好ましくは、1〜40個の炭素原子、さらに好ましくは、1〜10個の炭素原子、そしてなおさらに好ましくは、1〜6個の炭素原子を有するモノラジカル分枝飽和炭化水素鎖または非分枝飽和炭化水素鎖をいう。この用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、n−ヘキシル、n−デシル、テトラデシルなどのような基によって例示される。
【0050】
用語「置換アルキル」は、以下からなる群から選択される、1〜8個の置換基、好ましくは、1〜5個の置換基、そしてさらに好ましくは、1〜3個の置換基を有する、上で定義されるようなアルキル基をいう:アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、チオケト、カルボキシ、カルボキシアルキル、チオアリルオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、−SOH、グアニド、および−SO−ヘテロアリール。
【0051】
用語「アルキレン」は、好ましくは、1〜40個の炭素原子、好ましくは、1〜10個の炭素原子、より好ましくは、1〜6個の炭素原子を有するジラジカル分枝飽和炭化水素鎖または非分枝飽和炭化水素鎖をいう。この用語は、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)、プロピレン異性体(例えば、−CHCHCH−および−CH(CH)CH−)などのような基によって例示される。
【0052】
用語「置換アルキレン」は、以下からなる群から選択される、1〜5個の置換基そして好ましくは、1〜3個の置換基を有する、上記されるアルキレン基をいう:アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシ、カルボキシアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリールおよび−SO−ヘテロアリール。さらに、このような置換アルキレン基としては、アルキレン基における2つの置換基が縮合して、アルキレン基に縮合した、1つ以上のシクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、複素環式またはヘテロアリール基を形成するアルキレン基が挙げられる。好ましくは、このような縮合基は、1〜3個の縮合環状構造を含む。さらに、用語置換アルキレンとしては、1〜5個のアルキレン炭素原子が、酸素、硫黄または−NR−で置換されたアルキレン基が挙げられ、ここでRは、水素またはアルキルである。置換アルキレンの例は、クロロメチレン(−CH(Cl)−)、アミノエチレン(−CH(NH)CH−)、2−カルボキシプロピレン異性体(−CHCH(COH)CH−)、エトキシエチル(−CHCHO−CHCH−)などである。
【0053】
用語「アルカリール」は、−アルキレン−アリール基および−置換アルキレン−アリール基をいい、ここで、アルキレン、置換アルキレンおよびアリールは、本明細書中に定義される。このようなアルカリル基は、ベンジル、フェネチルなどによって例示される。
【0054】
用語「アルコキシ」は、アルキル−O−基、アルケニル−O−基、シクロアルキル−O−基、シクロアルケニル−O−基およびアルキニル−O−基をいい、ここでアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびアルキニルは、本明細書中に定義される通りである。好ましいアルコキシ基は、アルキル−O−であり、例として、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソ−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、1,2−ジメチルブトキシなどが挙げられる。
【0055】
用語「置換アルコキシ」は、置換アルキル−O−基、置換アルケニル−O−基、置換シクロアルキル−O−基、置換シクロアルケニル−O−基および置換アルキニル−O−基をいい、ここで置換アルキル、置換アルケニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニルおよび置換アルキニルは、本明細書中に定義される通りである。
【0056】
用語「アルキルアルコキシ」は、−アルキレン−O−アルキル基、アルキレン−O−置換アルキル基、置換アルキレン−O−アルキル基および置換アルキレン−O−置換アルキル基をいい、ここで、アルキル、置換アルキル、アルキレンおよび置換アルキレンは、本明細書中に定義される通りである。好ましくは、アルキルアルコキシ基は、アルキレン−O−アルキルであり、例として、メチレンメトキシ(−CHOCH)、エチレンメトキシ(−CHCHOCH)、n−プロピレン−イソ−プロポキシ(−CHCHCHOCH(CH)、メチレン−t−ブトキシ(−CH−O−C(CH)などが挙げられる。
【0057】
用語「アルキルチオアルコキシ」は、−アルキレン−S−アルキル基、アルキレン−S−置換アルキル基、置換アルキレン−S−アルキル基および置換アルキレン−S−置換アルキル基をいい、ここでアルキル、置換アルキル、アルキレンおよび置換アルキレンは、本明細書中に定義される通りである。好ましいアルキルチオアルコキシ基は、アルキレン−S−アルキルであり、そして例としては、メチレンチオメトキシ(−CHSCH)、エチレンチオメトキシ(−CHCHSCH)、n−プロピレン−イソ−チオプロポキシ(−CHCHCHSCH(CH)、メチレン−t−チオブトキシ(−CHSC(CH)などが挙げられる。
【0058】
用語「アルケニル」は、好ましくは、2〜40個の炭素原子、さらに好ましくは、2〜10個の炭素原子、そしてなおさらに好ましくは、2〜6個の炭素原子を有し、そして少なくとも1つおよび好ましくは、1〜6部位のビニル不飽和を有する、モノラジカルの、分枝不飽和炭化水素基または非分枝不飽和炭化水素基をいう。好ましいアルケニル基としては、エテニル(−CH=CH)、n−プロペニル(−CHCH=CH)、イソ−プロペニル(−C(CH)=CH)などが挙げられる。
【0059】
用語「置換アルケニル」は、以下からなる群から選択される、1〜5個の置換基そして好ましくは、1〜3個の置換基を有する、上記されるようなアルケニル基をいう:アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、チオケト、カルボキシ、カルボキシアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリールおよび−SO−ヘテロアリール。
【0060】
用語「アルケニレン」は、好ましくは、2〜40個の炭素原子、さらに好ましくは、2〜10個の炭素原子、そしてなおさらに好ましくは、2〜6個の炭素原子を有し、そして少なくとも1つおよび好ましくは、1〜6部位のビニル不飽和を有する、ジラジカルの、分枝不飽和炭化水素基または非分枝不飽和炭化水素基をいう。この用語は、エテニレン(−CH=CH−)、プロペニレン異性体(例えば、−CHCH=CH−および−C(CH)=CH−)などの基によって例示される。
【0061】
用語「置換アルケニレン」は、以下からなる群から選択される1〜5個の置換基そして好ましくは、1〜3個の置換基を有する、上記されるようなアルケニレン基をいう:アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシ、カルボキシアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリールおよび−SO−ヘテロアリール。さらに、このような置換アルケニレン基としては、アルケニレン基における2つの置換基が縮合して、アルケニレン基に縮合した、1つ以上のシクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、複素環式またはヘテロアリール基を形成するアルケニレン基が挙げられる。
【0062】
用語「アルキニル」は、好ましくは、2〜40個の炭素原子、さらに好ましくは、2〜20個の炭素原子、そしてなおさらに好ましくは、2〜6個の炭素原子を有し、そして少なくとも1つおよび好ましくは、1〜6部位のアセチレン(三重結合)不飽和を有する、モノラジカルの不飽和炭化水素をいう。好ましいアルキニル基としては、エチニル(−C≡CH)、プロパルギル(−CHC≡CH)などが挙げられる。
【0063】
用語「置換アルキニル」は、以下からなる群から選択される、1〜5個の置換基、そして好ましくは1〜3個の置換基を有する、上記されるようなアルキニル基をいう:アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボキシ、カルボキシアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリールおよび−SO−ヘテロアリール。
【0064】
用語「アルキニレン」は、好ましくは、2〜40個の炭素原子、さらに好ましくは、2〜10個の炭素原子、そしてなおさらに好ましくは、2〜6個の炭素原子を有し、そして少なくとも1つ、および好ましくは1〜6部位のアセチレン(三重結合)不飽和を有する、ジラジカル不飽和炭化水素をいう。好ましいアルキニレン基としては、エチニレン(−C≡C−)、プロパルギレン(−CHC≡C−)などが挙げられる。
【0065】
用語「置換アルキニレン」は、以下からなる群から選択される、1〜5個の置換基、そして好ましくは1〜3個の置換基を有する、上記されるようなアルキニレン基をいう:アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、チオケト、カルボキシ、カルボキシアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリールおよび−SO−ヘテロアリール。
【0066】
用語「アシル」は、基HC(O)−、アルキル−C(O)−、置換アルキル−C(O)−、シクロアルキル−C(O)−、置換シクロアルキル−C(O)−、シクロアルケニル−C(O)−、置換シクロアルケニル−C(O)−、アリール−C(O)−、ヘテロアリール−C(O)−および複素環式−C(O)−をいい、ここで、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環式は本明細書中に定義される通りである。
【0067】
用語「アシルアミノ」または「アミノカルボニル」は、基−C(O)NRRをいい、ここで、それぞれのRは、独立して水素、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環式であるか、または両方のR基が結合して複素環式基(例えば、モルホリノ)を形成し、ここで、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリールおよび複素環式は、本明細書中に定義される通りである。
【0068】
用語「アミノアシル」は、基−NRC(O)Rをいい、ここで、それぞれのRは、独立して水素、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、または複素環式であり、ここで、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリールおよび複素環式は、本明細書中に定義される通りである。
【0069】
用語「アミノアシルオキシ」または「アルコキシカルボニルアミノ」は、基−NRC(O)ORをいい、ここで、それぞれのRは、独立して水素、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、または複素環式であり、ここで、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリールおよび複素環式は、本明細書中に定義される通りである。
【0070】
用語「アシルオキシ」は、基アルキル−C(O)O−、置換アルキル−C(O)O−、シクロアルキル−C(O)O−、置換シクロアルキル−C(O)O−、アリール−C(O)O−、ヘテロアリール−C(O)O−、および複素環式−C(O)O−であり、ここで、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキルアリール、ヘテロアリールおよび複素環式は、本明細書中に定義される通りである。
【0071】
用語「アリール」は、単一環(例えば、フェニル)または複数の縮合(融合)した環を有する6〜20個の炭素原子の不飽和芳香族炭素環式をいい、ここで、少なくとも1つの環が芳香族(例えば、ナフチル、ジヒドロフェナントレニル、フルオレニル、またはアントリル(anthryl))である。好ましいアリールとしては、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。
【0072】
アリール置換についての定義によって他に制限されない限り、このようなアリール基は、必要に応じて、以下からなる群から選択される1〜5個の置換基、好ましくは1〜3個の置換基で置換され得る:アシルオキシ、ヒドロキシ、チオール、アシル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換アルキル、置換アルコキシ、置換アルケニル、置換アルキニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アシルアミノ、アルカリール、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシ、カルボキシアルキル、シアノ、ハロ、ニトロ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環式、ヘテロシクロオキシ、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、スルホンアミド、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、およびトリハロメチル。好ましいアリール置換基としては、アルキル、アルコキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、トリハロメチル、およびチオアルコキシが挙げられる。
【0073】
用語「アリールオキシ」は、基アリール−O−をいい、ここでアリール基は、上記で定義される通りであり、また上記で定義される必要に応じて置換されたアリール基を含む。
【0074】
用語「アリーレン」は、上記で定義されるアリール(置換アリールを含む)由来のジラジカルをいい、そしてこれは1,2−フェニレン、1,3−フェニレン、1,4−フェニレン、1,2−ナフチレンなどによって例示される。
【0075】
用語「アミノ」は、基−NHをいう。
【0076】
用語「置換アミノ」は、基−NRRをいい、ここで、それぞれのRは、独立して水素、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アルキニル、置換アルキニル、アリール、ヘテロアリール、および複素環式からなる群から選択され、ただし両方のRが水素であることはない。
【0077】
「アミノ酸」は、D、LまたはDL形態の天然に存在するアミノ酸(例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Hyl、Hyp、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、およびVal)のいずれかをいう。天然に存在するアミノ酸の側鎖は当該分野で周知であり、例えば、水素(例えば、グリシンにおけるように)、アルキル(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリンにおけるように)、置換アルキル(例えば、スレオニン、セリン、メチオニン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニンおよびリジンにおけるように)、アルカリール(例えば、フェニルアラニンおよびトリプトファンにおけるように)、置換アリールアルキル(例えば、チロシンにおけるように)、ならびにヘテロアリールアルキル(例えば、ヒスチジンにおけるように)が挙げられる。
【0078】
用語「カルボキシ」は、−COOHをいう。
【0079】
糖ペプチドに関連する場合、用語「C末端」は、当該分野で周知である。例えば、式Iの糖ペプチドについて、C末端は基Rによって置換されている位置である。
【0080】
用語「ジカルボキシ置換アルキル」は、2つのカルボキシ基で置換されているアルキル基をいう。この用語としては、例示の目的で、−CH(COOH)CHCOOHおよび−CH(COOH)CHCHCOOHが挙げられる。
【0081】
用語「カルボキシアルキル」または「アルコキシカルボニル」は、基「−C(O)O−アルキル」、「−C(O)O−置換アルキル」、「−C(O)O−シクロアルキル」、「−C(O)O−置換シクロアルキル」、「−C(O)O−アルケニル」、「−C(O)O−置換アルケニル」、「−C(O)O−アルキニル」および「−C(O)O−置換アルキニル」をいい、ここで、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、および置換アルキニルアルキニルは、本明細書中に定義される通りである。
【0082】
用語「シクロアルキル」は、単一の環式環または複数の縮合環を有する3〜20個の炭素原子の環式アルキル基をいう。このようなシクロアルキル基としては、例示の目的として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチルなどの単一環構造、またはアダマンタニルなどの複数環構造が挙げられる。
【0083】
用語「置換シクロアルキル」は、以下からなる群から選択される1〜5個の置換基、好ましくは1〜3個の置換基を有するシクロアルキル基をいう:アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、チオケト、カルボキシ、カルボキシアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、および−SO−ヘテロアリール。
【0084】
用語「シクロアルケニル」は、単一の環式環および少なくとも1点の内部不飽和を有する4〜20個の炭素原子の環式アルケニル基をいう。適切なシクロアルケニル基の例としては、例えば、シクロブト−2−エニル、シクロペント−3−エニル、シクロオクト−3−エニルなどが挙げられる。
【0085】
用語「置換シクロアルケニル」は、以下からなる群から選択される1〜5個の置換基、そして好ましくは1〜3個の置換基を有するシクロアルケニル基をいう:アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、チオケト、カルボキシ、カルボキシアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、および−SO−ヘテロアリール。
【0086】
用語「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードをいう。
【0087】
「ハロアルキル」は、本明細書中で定義される1〜4個のハロ基によって置換される、本明細書中で定義されるアルキルをいい、これらのハロ基は、同じであっても異なっていても良い。代表的なハロアルキル基としては、例示の目的で、トリフルオロメチル、3−フルオロドテシル、12,12,12−トリフルオロドデシル、2−ブロモオクチル、3−ブロモ−6−クロロヘプチルなどが挙げられる。
【0088】
用語「ヘテロアリール」は、1〜15個の炭素原子および少なくとも1つの環(1つよりも多くの環が存在する場合)の中に1〜4個の酸素、窒素、およびイオウから選択されるヘテロ原子がある芳香族基をいう。
【0089】
ヘテロアリール置換についての定義によって他に制限されない限り、このようなヘテロアリール基は、必要に応じて、以下からなる群から選択される1〜5個の置換基、好ましくは1〜3個の置換基で置換され得る:アシルオキシ、ヒドロキシ、チオール、アシル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、置換アルキル、置換アルコキシ、置換アルケニル、置換アルキニル、置換シクロアルキル、置換シクロアルケニル、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アシルアミノ、アルカリール、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシ、カルボキシアルキル、シアノ、ハロ、ニトロ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環式、ヘテロシクロオキシ、アミノアシルオキシ、オキシアシルアミノ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、およびトリハロメチル。好ましいアリール置換基としては、アルキル、アルコキシ、ハロ、シアノ、ニトロ、トリハロメチル、およびチオアルコキシが挙げられる。このようなヘテロアリール基は、単一環(例えば、ピリジルまたはフリル(furyl))、あるいは複数の縮合環(例えば、インドリジニルまたはベンゾチエニル)を有し得る。好ましいヘテロアリールとしては、ピリジル、ピロリルおよびフリルが挙げられる。
【0090】
「ヘテロアリールアルキル」は、(ヘテロアリール)アルキル−をいい、ここで、ヘテロアリールおよびアルキルは本明細書中で定義した通りである。代表的な例としては、2−ピリジルメチルなどが挙げられる。
【0091】
用語「ヘテロアリールオキシ」は、基ヘテロアリール−O−をいう。
【0092】
用語「ヘテロアリーレン」は、上記で定義されるヘテロアリール(置換ヘテロアリールを含む)由来のジラジカル基をいい、これは、基2,6−ピリジレン、2,4−ピリジレン、1,2−キノリニレン(quinolinylene)、1,8−キノリニレン、1,4−ベンゾフラニレン、2,5−ピリジニレン(pyridnylene)、2,5−インドレニルなどが例示される。
【0093】
用語「複素環」または「複素環式」は、1〜40個の炭素原子および1〜10個のヘテロ原子、好ましくは1〜4個のヘテロ原子(窒素、イオウ、リン、および/、または酸素から選択される)を環の中に有する、単一環または複数縮合環を有する、モノラジカルの飽和もしくは不飽和基をいう。
【0094】
複素環式置換基についての定義によって他に制限されない限り、このような複素環式基は、必要に応じて、以下からなる群から選択される1〜5個の置換基、好ましくは1〜3個の置換基で置換される:アルコキシ、置換アルコキシ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アシル、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、置換アミノ、アミノアシル、アミノアシルオキシ、オキシアミノアシル、アジド、シアノ、ハロゲン、ヒドロキシ、ケト、チオケト、カルボキシ、カルボキシアルキル、チオアリールオキシ、チオヘテロアリールオキシ、チオヘテロシクロオキシ、チオール、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、複素環式、ヘテロシクロオキシ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、ニトロ、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、−SO−ヘテロアリール、−SO−アルキル、−SO−置換アルキル、−SO−アリール、オキソ(=O)、および−SO−ヘテロアリール。このような複素環式基は、単一環または複数の縮合環を有し得る。好ましい複素環式としては、モルホリノ、ピペリジニルなどが挙げられる。
【0095】
窒素複素環および窒素複素環式の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチルピリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン(phenanthridine)、アクリジン、フェナントロリン、イソチアゾール、フェナジン、イソオキサゾール、フェノキサジン、フェノチアジン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドリン、モルホリノ、ピペリジニル、テトラヒドロフラニルなど、ならびにN−アルコキシ−窒素含有複素環。
【0096】
複素環式の別のクラスは、「クラウン化合物」として公知であり、これは、式[−(CH−)A−]の1つ以上の繰り返し単位を有する複素環式化合物の特定のクラスをいい、ここで、aは、2以上であり、そしてAは、それぞれ別々の出現でO、N、SまたはPであり得る。クラウン化合物の例としては、例示のみの目的で、[−(CH−NH−]、[−((CH−O)−((CH−NH)]などが挙げられる。代表的に、このようなクラウン化合物は、4〜10個のヘテロ原子および8〜40個の炭素原子を有し得る。
【0097】
用語「ヘテロシクロオキシ」は、基複素環式−O−をいう。
【0098】
用語「チオヘテロシクロオキシ」は、基複素環式−S−をいう。
【0099】
用語「オキシアシルアミノ」または「アミノカルボニルオキシ」は、基−OC(O)NRRをいい、ここで、それぞれのRは、独立して水素、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリール、または複素環式であり、ここで、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリールおよび複素環式は本明細書中に定義される通りである。
【0100】
用語「ホスホノ」は、−PO−をいう。
【0101】
用語「プロドラッグ」は、当該分野で十分理解されており、そして哺乳動物系において、本発明の薬学的に活性な化合物に転換される化合物を含む。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、1980、第16巻、Mack Publishing Company,Easton,Pennsylvania,61および424を参照のこと。
【0102】
用語「サッカリド基」は、酸化、還元または置換されたサッカリドモノラジカルをいい、これはこのサッカリド部分の任意の原子を介して(好ましくはアグリコン炭素原子を介して)糖ペプチドもしくは他の化合物に共有結合している。この用語は、アミノ含有サッカリド基を含む。代表的なサッカリドとしては、例示の目的として、ヘキソース(例えば、D−グルコース、D−マンノース、D−キシロース、D−ガラクトース、バンコサミン、3−デスメチルバンコサミン、3−エピ−バンコサミン、4−エピ−バンコサミン、アコサミン(acosamine)、アクチノサミン(actinosamine)、ダウノサミン(daunosamine、3−エピ−ダウノサミン、リストサミン(ristosamine)、D−グルカミン、N−メチル−D−グルカミン、D−グルクロン酸、N−アセチル−D−グルコサミン、N−アセチル−D−ガラクトサミン、シアル酸、イズロン酸、L−フコースなど);ペントース(例えば、D−リボースまたはD−アラビノース);ケトース(例えば、D−リブロースまたはD−フルクトースなど);ジサッカリド(例えば、2−O−(α−L−バンコサミル)−β−D−グリコピラノース、2−O−(3−デスメチル−α−L−バンコサミニル)−β−D−グルコピラノース、スクロース、ラクトース、またはマルトースなど);誘導体(例えば、アセタール、アミン、アシル化、硫酸化およびリン酸化された糖);2〜10個のサッカリド単位を有するオリゴサッカリドが挙げられる。この定義の目的として、これらのサッカリドを、慣習的な3文字命名法を使用して参照し、そしてこれらのサッカリドは、開いた形態か、またはそれらのピラノース形態かのいずれかであり得る。
【0103】
用語「アミノ含有サッカリド基」または「アミノサッカリド」は、アミノ置換基を有するサッカリドをいう。代表的なアミノ含有サッカリドとしては、L−バンコサミン、3−デスメチル−バンコサミン、3−エピ−バンコサミン、4−エピ−バンコサミン、アコサミン、アクチノサミン、ダウノサミン、3−エピ−ダウノサミン、リストサミン、N−メチル−D−グルカミンなどが挙げられる。
【0104】
用語「スピロ結合シクロアルキル基」は、両方の環に共通の1つの炭素原子を介して別の環に結合するシクロアルキル基をいう。
【0105】
所定の化合物に関する場合、用語「立体異性体」は、当該分野で十分理解されており、そして同じ分子式を有する別の化合物をいい、ここで、別の化合物を構成する原子は、空間においてその原子が配向する方向と異なるが、ここで、別の化合物におけるこの原子は、どの原子が他のどの原子に結合するかという点に関して、所定の化合物における原子に似ている(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、または幾何異性体)。例えば、MorrisonおよびBoyde
Organic Chemistry、1983、第4版、Allyn and Bacon,Inc.,Boston,Mass、123頁を参照のこと。
【0106】
用語「スルホンアミド」は、式−SONRRの基をいい、ここで、それぞれのRは、独立して水素、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリールまたは複素環式であり、ここで、アルキル、置換アルキル、アリール、ヘテロアリールおよび複素環式は、本明細書中に定義される通りである。
【0107】
用語「チオール」は、基−SHをいう。
【0108】
用語「チオアルコキシ」は、基−S−アルキルをいう。
【0109】
用語「置換チオアルコキシ」は、基−S−置換アルキルをいう。
【0110】
用語「チオアリールオキシ」は、基アリール−S−をいい、ここで、アリール基は、上記で定義した通りであり、また上記で定義したように必要に応じて置換されるアリール基を含む。
【0111】
用語「チオヘテロアリールオキシ」は、基ヘテロアリール−S−をいい、ここで、ヘテロアリール基は上記で定義される通りであり、また上記で定義したように必要に応じて置換されるアリール基を含む。
【0112】
用語「チオエーテル誘導体」は、本発明の糖ペプチド化合物をいうために使用される場合、チオエーテル(−S−)、スルホキシド(−SO−)およびスルホン(−SO−)を含む。
【0113】
1つ以上の置換基を含む上記の任意の基に関して、このような基は、立体的に現実性がないか、および/または合成的に実現不可能な、いずれの置換または置換型を含まないことが当然理解される。さらに、本発明の化合物は、これらの化合物の置換から生じる全ての立体化学異性体を含む。
【0114】
「シクロデキストリン」とは、アミロースにおけると同様に、α結合によって1、4位に結合した6個以上のα−D−グルコピラノースユニットを含有する環状分子のことをいう。β−シクロデキストリンまたはシクロヘパトアミロースは、7個のα−D−グルコピラノースユニットを含有する。本明細書中で使用される場合、用語「シクロデキストリン」はまた、シクロデキストリン誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルおよびスルホブチルエーテルシクロデキストリンなど)をも含む。このような誘導体は、例えば、米国特許第4,727,064号および同第5,376,645号に記載される。さらに、ヒドロプロピル−β−シクロデキストリンおよびスルホブチル−β−シクロデキストリンは、市販されている。1つの好ましいシクロデキストリンは、FTIRで測定して約4.1〜5.1の置換の程度を有するヒドロキシプロピルβ−シクロデキストリンである。このようなシクロデキストリンは、Cerestar(Hammond,Indiana,USA)から、CavitronTM82003の名称で入手可能である。
【0115】
用語「水性シクロデキストリンキャリアー」とは、シクロデキストリンおよび水を含む水性シクロデキストリン溶液のことをいう。
【0116】
「グリコペプチド」とは、必要に応じて糖類基で置換された多環ペプチドコア(例えば、バンコマイシン)によって特徴付けられるオリゴペプチド(例えば、ヘプタペプチド」抗生物質のことをいう。この定義に含まれるグリコペプチドの例は、Raymond C.RaoおよびLouise W.Crandallによる「Glycopeptides Classification,Occurrence,and Discovery」(「Drugs and the Pharmaceutical Sciences」第63巻、Ramakrishnan Nagarajan編、Marcal Dekker,Inc.出版)に見出され得る。グリコペプチドのさらなる例は、米国特許第4,639,433号;同第4,643,987号;同第4,497,802号;同第4,698,327号;同第5,591,714号;同第5,840,684号;同第5,843,889号;EP0802199;EP0801075;EP0667353;WO97/28812;WO97/38702;WO98/52589;WO98/52592;およびJ.Amer.Chem.Soc.,1996、118、13107−13108;J.Amer.Chem.Soc.,1997、119,12041−12047;およびJ.Amer.Chem.Soc.,1994,116,4573−4590に開示される。代表的なグリコペプチドには、A477、A35512、A40926、A41030、A42867、A47934、A80407、A82846、A83850、A84575、AB−65、アクタプラニン(Actaplanin)、アクチノイジン(Actinoidin)、アルダシン(Ardacin)、アボパルシン(Avoparcin)、アズレオマイシン(Azureomycin)、バルヒマイシン(Balhimycin)、クロロオリエンチエイン(Chloroorientiein)、クロロポリスポリン(Chloropolysporin)、デカプラニン(Decaplanin)、N−デメチルバンコマイシン(N−demethylvancomycin)、エレモマイシン(Eremomycin)、ガラカルジン(Galacardin)、ヘルベカルジン(Helvecardin)、イズペプチン(Izupeptin)、キブデリン(Kibdelin)、LL−AM374、マンノペプチン(Mannopeptin)、MM45289、MM47756、MM47761、MM49721、MM47766、MM55260、MM55266、MM55270、MM56597、MM56598、OA−7653、オレンチシン(Orenticin)、パルボジシン(Parvodicin)、リストセチン(Ristocetin)、リストマイシン(Ristomycin)、シンモニシン(Synmonicin)、テイコプラニン(Teicoplanin)、UK−68597、UK−69542、UK−72051、バンコマイシン(Vancomycin)などとして同定されるものが含まれる。本明細書において使用される用語「グリコペプチド」または「グリコペプチド抗生物質」はまた、糖部分が存在しない(すなわち、グリコペプチドのアグリコンシリーズ)上記のグリコペプチドの一般的なクラスを含むことが意図される。例えば、バンコマイシン上のフェノールに付加された二糖類部分の穏やかな加水分解による除去は、バンコマイシンアグリコンを与える。また用語「グリコペプチド抗生物質」の範囲内に含まれるものは、上記のグリコペプチドの一般的なクラスの合成誘導体(アルキル化およびアシル化誘導体を含む)である。さらに、この用語の範囲内には、さらなる糖鎖残基(特に、アミノグリコシド)を、バンコサミンと同様にさらに付加したグリコペプチドがある。
【0117】
用語「脂質化グリコペプチド」とは、具体的には、脂質置換基を含有するように合成により改変されたグリコペプチド抗生物質のことをいう。本明細書中で使用される場合、用語「脂質置換基」とは、5個以上の炭素原子、好ましくは、10個〜40個の炭素原子を含有する任意の置換基のことをいう。この脂質置換基は、必要に応じて、ハロ、酸素、窒素、硫黄、およびリン(phosphorous)から選択される1〜6個の異種原子を含有し得る。脂質化グリコペプチド抗生物質は、当該分野で周知である。例えば、米国特許第5,840,684号;同第5,843,889号;同第5,916,873号;同第5,919,756号;同第5,952,310号;同第5,977,062号;同第5,977,063号;EP667,353、WO98/52589、WO99/56760、WO00/04044、WO00/39156を参照のこと(これらの開示は、その全体が本明細書中で参考として援用される)。
【0118】
「バンコマイシン」とは、以下の式を有するグリコペプチド抗生物質のことをいう。
【0119】
【化12】


バンコマイシン誘導体を記載する場合、用語「Nvan−」は、置換基が、バンコマイシンのバンコサミン部分のアミノ基に共有結合していることを示す。同様に、用語「Nleu−」は、置換基がバンコマイシンのロイシン部分のアミノ基に共有結合していることを示す。
【0120】
「任意の」または「必要に応じて」とは、引き続いて記載される事象または状況は、起こってもよいし起こらなくてもよいこと、およびその記載は、その事象または状況が起こる場合およびそれが起こらない場合を含むことを意味する。例えば、「必要に応じて置換された」とは、基が、記載された置換基で置換されていても良いし置換されていなくても良いことを意味する。
【0121】
本明細書中で使用される場合、用語「不活性有機溶媒」または「不活性溶媒」または「不活性希釈液」とは、それが溶媒または希釈液として使用される反応条件下で、本質的に不活性な溶媒または希釈液を意味する。不活性溶媒または希釈液として使用され得る材料の代表的な例は、例として、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(「THF」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、クロロホルム(「CHCl」)、塩化メチレン(またはジクロロメタンすなわち「CHCl」)、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、ジオキサン、ピリジンなどが含まれる。特に断らない限り、本発明の反応において使用される溶媒は、不活性な溶媒である。
【0122】
用語「窒素連結」または「N−連結」とは、基または置換基が、化合物(例えば、式Iの化合物)の残りの部分に、その基または置換基の窒素への結合を介して結合していることを意味する。用語「酸素連結」とは、基または置換基が、化合物(例えば、式Iの化合物)の残りの部分に、その基または置換基の酸素への結合を介して結合していることを意味する。用語「硫黄連結」とは、基または置換基が、化合物(例えば、式Iの化合物)の残りの部分に、基または置換基の硫黄への結合を介して結合していることを意味する。
【0123】
「薬学的に受容可能な塩」とは、親化合物の生物学的有効性および特性を維持し、そして用量が投与される場合に生物学的にまたはその他の様式で有害ではないする塩を意味する。本発明の化合物は、それぞれ、アミノ基およびカルボキシル基の存在のため、酸および塩基の両方を形成し得る。
【0124】
薬学的に受容可能な塩基付加塩は、無機および有機塩基から調製され得る。無機塩基から誘導される塩には、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩が含まれるが、これらに限定されない。有機塩基から誘導される塩には、一級、二級、および三級アミン、天然に存在する置換アミンを含む置換アミン、ならびに環状アミンの塩が含まれ、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N−アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、およびN−エチルピペリジンを含むが、これらに限定されない。他のカルボン酸誘導体、例えば、カルボン酸アミド(カルボキサミド、低級アルキルカルボキサミド、ジ(低級アルキル)カルボキサミドなどを含む)が、本発明の実施に有用であることもまた理解されるべきである。
【0125】
薬学的に受容可能な酸付加塩は、無機および有機酸から調製され得る。無機酸から誘導される塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが含まれる。有機酸から誘導される塩には、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などが含まれる。
【0126】
本発明の化合物は、代表的には、1つ以上のキラル中心を有する。従って、本発明は、ラセミ混合物、ジアステレオマー、エナンチオマーおよび1つ以上の立体異性体が濃縮された混合物を含むことを意図する。記載されかつ特許請求される本発明の範囲は、化合物のラセミ体ならびに個々のエナンチオマーおよびその非ラセミ混合物を包含する。
【0127】
本明細書中で使用される場合、用語「処置」は、動物、特に哺乳動物、より特定にはヒトにおける状態または疾患の任意の処置を含み、そして以下:
(i)その疾患に対する素因があり得るが、未だその疾患を有するとは診断されていない被験体において、その疾患または状態が発生することを防止すること;
(ii)疾患または状態を阻害すること(すなわち、その発症を阻止すること);その疾患または状態を軽減すること(すなわち、その状態を退行させること);あるいは、その疾患により生じる状態(すなわち、その疾患の症状)を軽減すること、
を含む。
【0128】
用語「広いスペクトルの(broad spectrum)抗菌剤を用いる処置により軽減される疾患状態」または「細菌性疾患」とは、本明細書中で使用される場合、概して広いスペクトルの抗菌剤で有効に処置されると当該分野で一般的に認識される全ての疾患状態、ならびに本発明の特定の抗菌剤により有効に処置されることが見出された疾患状態を網羅することを意図する。このような疾患状態としては、病原性細菌(特に、ブドウ球菌(メチシリン感受性および耐性)、連鎖球菌(ペニシリン感受性および耐性)、腸球菌(バンコマイシン感受性および耐性)、およびクロストリジウムディフィシレ(Clostridium difficile)に罹患した哺乳動物の処置が挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
用語「治療的有効量」とは、本明細書中に規定されるような処置を必要とする哺乳動物に投与された場合に、このような処置を達成するのに十分な量をいう。この治療的有効量は、被験体および処置される疾患状態、罹患の重篤度ならびに投与の様式によって変化し、そして当業者により慣習的に決定され得る。
【0130】
用語「保護基」または「ブロック基」とは、化合物の1つ以上のヒドロキシル基、チオール基、アミノ基、カルボキシ基もしくはその他の基に結合した場合に、これらの基において望ましくない反応が起きるのを防止する任意の基をいい、そしてこれらの保護基は、従来の化学的工程または酵素的工程により除去されてヒドロキシル基、チオ基、アミノ基、カルボキシ基またはその他の基を回復し得る。使用される特定の除去可能なブロック基は、重要ではなく、そして好ましい除去可能なヒドロキシルブロック基としては、アリル、ベンジル、アセチル、クロロアセチル、チオベンジル、ベンジリデン、フェナチル、t−ブチルジフェニルシリルのような従来の置換基、およびヒドロキシル官能基上に化学的に導入され得、かつその後、生成物の性質に適合性の穏やかな条件で化学的もしくは酵素的のいずれかの方法により選択的に除去され得る任意の他の基が挙げられる。保護基は、T.W.GreeneおよびG.M.Wuts,「Protecting Groups in Organic Synthesis」第3版,1999,(John Wiley and Sons,N.Y.)により詳細に開示される。
【0131】
好ましい除去可能なアミノブロック基としては、t−ブチル(buty)オキシカルボニル(t−BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBZ)、フルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)、アリルオキシカルボニル(ALOC)などのような、生成物の性質に適合性の従来の条件により除去され得る従来の置換基が挙げられる。
【0132】
好ましいカルボキシ保護基としては、メチル、エチル、プロピル、t−ブチルなどのようなエステル(これらは、生成物の性質に適合性の穏和な条件により除去され得る)が挙げられる。
【0133】
(一般的合成手順)
本発明において使用されるグリコペプチド抗菌剤は、市販されているかまたは以下の一般的方法および手順を使用して、容易に入手可能な出発物質から調製され得る。典型的または好ましいプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が与えられる場合、他に明示されない限り、他のプロセス条件もまた使用され得ることが理解される。最適な反応条件は、使用される特定の反応物または溶媒によって変化し得るが、このような条件は、慣用的な最適化手順により当業者に決定され得る。
【0134】
さらに、当業者に明らかであるように、従来の保護基は、特定の官能基が所望でない反応を受けるのを防ぐために必要であり得る。特定の官能基に適切な保護基の選択ならびに保護および脱保護に適切な条件の選択は、当該分野で周知である。例えば、多数の保護基、ならびにそれらの導入および除去は、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts,「Protective Groups
in Organic Synthesis」第3版,Wiley,New York,1999、および書中に引用される参考文献に記載される。
【0135】
以下の反応スキームにおいて、グリコペプチド化合物は、以下のように、ボックス「G」として簡略化された形で示され、この「G」は、[C]を付された、カルボキシ末端、[V]を付されたバンコサミン(vancosamine)アミノ末端、[N]を付された「非糖質」アミノ末端(ロイシンアミン部分)、および必要に応じて、[R]を付されたレゾルシノール部分を示す。
【0136】
【化13】


例示として、本発明において有用な脂質化(lipidated)グリコペプチド化合物は、以下の反応:
【0137】
【化14】


(ここでAは、Rから炭素原子1個を引いたものを表し、そしてR、R、Y、Zおよびxは、本明細書中に定義される通りである)に示されるような還元的アルキル化により調製され得る。この反応は、代表的には、最初に1当量のグリコペプチド(すなわち、バンコマイシン)を、過剰(好ましくは1.1〜1.3当量)の所望のアルデヒドと、過剰(好ましくは約2.0当量)の3級アミン(例えば、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)など)の存在下で接触させることにより行われる。この反応は、代表的には、不活性希釈剤(例えば、DMFまたはアセトニトリル/水)中で、周囲温度にて約0.25〜2時間、対応するイミンおよび/またはヘミアミナールの形成が実質的に完了するまで行われる。得られたイミンおよび/またはヘミアミナールは、典型的には単離されないが、インサイチュで金属水素化物還元剤(例えば、水素化シアノホウ素ナトリウムなど)と反応させて対応するアミンを得る。この反応は、好ましくは、このイミンおよび/またはヘミアミナールを、過剰(好ましくは約3当量)のトリフルオロ酢酸と接触させ、次いで約1〜1.2等量の還元剤と周囲温度でメタノールまたはアセトニトリル/水中で接触させることにより行われる。得られたアルキル化生成物は、沈殿および/または逆相HPLCのような従来の手順により容易に精製される。驚くべきことに、トリアルキルアミンの存在下でイミンおよび/またはヘミアミナールを形成し、次いで還元剤との接触の前にトリフルオロ酢酸で酸性化することにより、還元的アルキル化反応の選択性が大きく改善される。すなわち、糖質(例えば、バンコサミン)のアミノ基における還元的アルキル化は、N末端(例えば、ロイシニル基)における還元的アルキル化に対して、少なくとも10:1、より好ましくは20:1だけ優勢になる。
【0138】
この還元的アルキル化プロセスは、代表的には、以下のような適切な溶媒または溶媒の組合せの存在下で行われる:例えば、ハロゲン化炭化水素(例えば、塩化メチレン)、直鎖または分岐鎖エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼンまたはトルエン)アルコール(メタノール、エタノール、またはイソプロパノール)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、水、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミドン、テトラメチルウレア、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド(diethylformamide)(DMF)、1−メチル−2−ピロリジノン、テトラメチレンスルホキシド、グリセロール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、N,N−ジメチルプロピレンウレア(DMPU)またはジオキサン。好ましくは、アルキル化は、アセトニトリル/水、またはDMF/メタノール中で行われる。
【0139】
好ましくは、還元(すなわち、還元剤での処理)は、例えば、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、またはブタノール)、水などのようなプロトン性溶媒の存在下で行われる。
【0140】
本発明の還元的アルキル化プロセスは、反応混合物の凝固点から還流温度までの任意の適切な温度で行われ得る。好ましくは、この反応は、約0℃〜約100℃の範囲の温度で行われる。より好ましくは、約0℃〜約50℃の範囲の温度、または約20℃〜約30℃の範囲の温度である。
【0141】
本発明の還元的アルキル化プロセスにおいて任意の適切な塩を使用し得る。適切な塩としては、三級アミン(例えば、ジイソプロピルエチレンアミン、N−メチルモルホリン、またはトリエチルアミン)などが挙げられる。
【0142】
任意の適切な酸を用いて、反応混合物を酸性化し得る。適切な酸としては、カルボン酸(例えば、酢酸、トリクロロ酢酸、クエン酸、ギ酸、またはトリフルオロ酢酸)、無機酸(例えば、塩酸、硫酸、またはリン酸)などが挙げられる。好ましい酸は、トリフルオロ酢酸である。
【0143】
本発明の還元的アルキル化プロセスを実施するための適切な還元剤は、当該分野において公知である。任意の適切な還元剤を本発明の方法に用い得るが、ただしこれは、グリコペプチドに存在する官能基と適合性である。例えば、適切な還元剤としては、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素、ピリジン/ボラン、水素化ホウ素ナトリウム、および水素化ホウ素亜鉛が挙げられる。還元はまた、水素供給源(例えば、水素ガス、またはシクロヘキサジエン(cycloheadiene))の存在下、遷移金属触媒(例えば、パラジウム、または白金)の存在下で実施され得る。例えば、Advanced Organic Chemistry,第4版,John Wiley&Sons,New York(1992),899〜900を参照のこと。
【0144】
アミノ基を有する任意のグリコペプチドは、これらの還元的アルキル化反応において用いられ得る。これらのグリコペプチドは、当該分野において周知であり、市販されているか、または慣用的手順を用いて単離され得るかのいずれかである。適切なグリコペプチドは、例えば、米国特許第3,067,099号;同第3,338,786号;同第3,803,306号;同第3,928,571号;同第3,952,095号;同第4,029,769号;同第4,051,237号;同第4,064,233号;同第4,122,168号;同第4,239,751号;同第4,303,646号;同第4,322,343号;同第4,378,348号;同第4,497,802号;同第4,504,467号;同第4,542,018号;同第4,547,488号;同第4,548,925号;同第4,548,974号;同第4,552,701号;同第4,558,008号;同第4,639,433号;同第4,643,987号;同第4,661,470号;同第4,694,069号;同第4,698,327号;同第4,782,042号;同第4,914,187号;同第4,935,238号;同第4,946,941号;同第4,994,555号;同第4,996,148号;同第5,187,082号;同第5,192,742号;同第5,312,738号;同第5,451,570号;同第5,591,714号;同第5,721,208号;同第5,750,509号;同第5,840,684号;および同第5,843,889号において開示される。好ましくは、上記反応において用いられるグリコペプチドは、バンコマイシンである。
【0145】
上記の反応性のアルキル化反応に用いられるアルデヒドおよびケトンはまた、当該分野において周知であり、市販されているか、または商業的に利用可能な出発物質および市販の試薬を用いる慣用的な手順により調製され得るかのいずれかである(例えば、March、Advanced Organic Chemistry,第4版,John Wiley&Sons,New York(1992)およびここにおいて引用される参考文献を参照のこと)。上記において示される以外のアルデヒド(例えば、式HC(O)−Rのアルデヒドを含み、ここでRは、本明細書において定義される通りである)およびケトンを、このアルキル化反応に用い得る。
【0146】
必要である場合、アミノアルキル側鎖は、グリコペプチド(例えば、バンコマイシン)のレゾルシノール部分にマンニッヒ反応を介して導入され得る。この反応にいおいて、式NHRR’のアミン(ここで、RおよびR’のうち1つまたは両方は、アルキルもしくは置換アルキル基、または1つ以上のホスホノ基を含む基である)、およびアルデヒド(CHO)(例えば、ホルマリン(ホルムアルデヒドの供給源))は、塩基性条件下でグリコペプチドと反応して、以下に示すようなグリコペプチド誘導体を与える(このスキームにおいて、レゾルシノール部分は、明確化のために示される)。
【0147】
【化15】


用いられる場合、ホスホノ置換化合物(例えば、ホスホノ置換アミン、アルコール、または、チオール)は、市販されるか、または市販の出発物質および試薬を用いる慣用的な手順により調製され得るかのいずれかである。例えば、Advanced Organic Chemistry,Jerry March、第4版,1992,John Wiley&Sons,New York,959項;およびFrank R.Hartley(編)The Chemistry of Organophosphorous Compounds,vol.1〜4,John Wiley and Sons, New York(1996)を参照のこと。アミノメチルホスホン酸は、Aldrich Chemical Company、Milwaukee、Wisconsinから市販される。
【0148】
本発明の化合物を調製するためのさらなる詳細および他の方法は、以下の実施例において記載される。
【0149】
(薬学的組成物)
本発明の薬学的組成物は、グリコペプチド抗生物質、およびシクロデキストリン化合物を含む。好ましくは、本発明の薬学的組成物は、細菌性疾患の治療的または予防的処置のための非経口投与のために処方される。
【0150】
例示として、糖タンパク質抗生物質(好ましくは、薬学的に受容可能な塩の形態)は、水性シクロデキストリン溶液と混合して、本発明の組成物を形成し得る。このような薬学的組成物は、代表的に約1〜40重量%のシクロデキストリンおよび治療的有効量のグリコペプチド抗生物質を含む。
【0151】
必要に応じて、薬学的組成物は、他の薬学的に受容可能な成分(例えば、緩衝液、界面活性剤、抗酸化剤、粘度改変剤、保存剤など)を含み得る。これらの成分の各々は、当該分野において周知である。例えば、米国特許第5,985,310号を参照のこと。本明細書の処方物における使用に適切な他の成分は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mace Publishing Company,Philadelphia,PA,第17版(1985)において見出され得る。好ましい実施形態において、水性シクロデキストリン溶液はさらに、ブドウ糖(好ましくは、5%ブドウ糖)を含む。
【0152】
本発明において用いられるグリコペプチド抗生物質は、広い投薬量範囲にわたって有効であり、代表的に治療有効量で投与され得る。しかし、実際に投与される化合物の量は、医師によって、関連する状況(処置されるべき状態、選択される投与経路、投与される実際の化合物およびその相対活性、個々の患者の年齢、体重、および応答、患者の症状の重症度など)を考慮して、決定されることが理解される。
【0153】
適切な用量は、一般的に0.01〜100mg/kg/日、好ましくは、0.1〜50mg/kg/日の範囲である。平均70kgのヒトに対して、これは、0.7mg〜7g/日、または好ましくは、7mg〜3.5g/日の量になる。ヒトに対するより好ましい用量は、約500mg/日〜約2g/日である。
【0154】
以下の処方物の例は、本発明の代表的な薬学的組成物を例示する。
【0155】
(処方物例A)
以下の組成を有する注射用調製物を調製する:
成分
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
グリコペプチド抗生物質 0.1〜5.0g
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン 1〜25g
5%水性ブドウ糖溶液(滅菌) q.s.100mLまで
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
上記成分を、ブレンドし、0.5N HClまたは0.5N NaOHを用いて、pHを3.5±0.5に調整する。
【0156】
(処方物例B)
本実施例は、本発明の化合物を含む代表的な薬学的組成物の調製を例示する。
【0157】
以下の組成を有する注射に適切な凍結溶液を、調製する:
凍結溶液
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
活性化合物 250mg〜1000mg
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン 250mg〜10g
賦形剤(例えば、ブドウ糖) 0〜50g
注射用水 10〜100mL
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン 対 活性化合物の重量比は、代表的に約1:1〜約10:1である。
【0158】
(代表的な手順:)ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンおよび賦形剤(存在する場合)を、注射用の水の約80%に溶解し、そして活性化合物を添加し、溶解する。pHを1M水酸化ナトリウムで、4.7±0.3に調整し、次いで容量を最終容量の95%までなる注射用水で調整する。pHをチェックして、必要な場合、調整し、容積を注射用の水で最終用量に調整する。次いで処方物を0.22μmフィルターを通して滅菌濾過し、無菌条件下で滅菌バイアルに入れる。このバイアルにフタをし、標識をして凍結保存する。
【0159】
(処方物例C)
本実施例は、本発明の化合物を含む代表的な薬学的組成物の調製を例示する。
【0160】
注射用溶液を調製するのに有用な凍結乾燥した以下の組成を有する粉末を、調製する:
凍結乾燥した粉末
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
活性化合物 250mg〜1000mg
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン 250mg〜10g
賦形剤(例えば、マンニトール
ショ糖、および/またはラクトース) 0〜50g
緩衝剤(例えば、クエン酸) 0〜500mg
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン 対 活性化合物の重量比は、代表的に約1:1〜約10:1である。
【0161】
(代表的手順:)ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンおよび賦形剤および/または緩衝剤を(存在する場合)、注射用の水の約60%に溶解する。活性化合物を添加し、そして溶解し、そしてpHを1M 水酸化ナトリウムで、4.0〜5.0に調整し、そして容量を最終容量の95%になるまで注射用水で調整する。pHをチェックして、必要な場合、調整し、容積を注射用の水で最終用量に調整する。次いで処方物を0.22μmフィルターを通して滅菌濾過し、無菌条件下で滅菌バイアルに入れる。次いで適切な凍結乾燥サイクルを用いて、この処方物を凍結乾燥する。このバイアルにフタをし(必要に応じて不完全真空または乾燥窒素下で)、標識して室温下または冷蔵下で保存する。
【0162】
(処方物例D)
本実施例は、本発明の化合物を含む代表的な薬学的組成物の調製を例示する。
【0163】
注射用溶液を調製するのに有用な以下の組成を有する滅菌粉末を、調製する:滅菌粉末
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
活性化合物 250mg〜1000mg
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン 250mg〜10g
賦形剤 必要に応じて
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン 対 活性化合物の重量比は、代表的に約1:1〜約10:1である。
【0164】
(代表的手順:)ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンおよび活性化合物(および任意の賦形剤)を適切な滅菌容器中に分散させ、そしてこの容器を密封(必要に応じて不完全真空または乾燥窒素下で)し、標識をして室温下または冷蔵下で保存する。
【0165】
(代表的な処方物CおよびDの患者への投与)
上記の処方物例HおよびIに記載される薬学的処方物は、適切な医療従事者によって、患者に静脈内投与され得、グラム陽性感染を処置または予防し得る。投与について、上記処方物は、以下のように再構成され、そして/または希釈剤(例えば、5%ブドウ糖または滅菌生理食塩水)で希釈され得る:
(代表的手順):処方物例Cの凍結乾燥粉末(例えば、1000mgの活性化合物を含む)を、20mLの滅菌水で再構成し、得られた溶液をさらに80mLの滅菌生理食塩水で、100mL輸液バッグ中において希釈する。次いでこの希釈した溶液を患者に、30〜120分かけて静脈内投与する。
【0166】
(有用性)
本発明の薬学的組成物は、医療処置において有用であり、そして生物学的活性(抗細菌活性を含む)を示し、これは、本明細書に記載される試験を利用する際に、実証され得る。このような試験は、当業者に周知であり、そしてLorian「Antibiotics in Laboratory Medicine」,第4版,Williams and Wilkins(1991)において援用および記載される。
【0167】
従って、本発明は、動物における細菌性疾患および感染性疾患(特にグラム陽性微生物に起因する疾患)を処置するための方法を提供する。グリコペプチド抗生物質に依存して、本発明の組成物は、メチシリン耐性ブドウ球菌に起因する感染を処置するのに特に有用である。
【0168】
本発明の薬学的組成物を用いて処置される動物は、微生物に感受性であるかまたは微生物に感染し得るかのいずれかである。処置の方法は、代表的に動物に治療有効量のグリコペプチド抗生物質化合物を含む薬学的組成物を投与する工程を包含する。
【0169】
本方法を実施するにあたって、薬学的組成物は、1日あたり単回用量で投与され得るか、1日あたり複数回用量で投与され得る。処置レジメンは、長時間(例えば、数日間または1〜6週間)にわたる投与を必要とし得る。投与用量あたりの量または投与される全体の量は、感染の性質および重篤度、患者の年齢、および全般的な健康状態、患者の抗生物質に対する耐性、および感染した微生物のような因子に依存する。
【0170】
他の特性の中でも、哺乳動物に投与される場合、本発明の薬学的組成物は、シクロデキストリンを含まない薬学的組成物と比較して、以下:(a)グリコペプチド抗生物質の減少した組織集積、(b)減少した腎毒性、(c)減少したヒスタミン放出(Red Man Syndrome)、および(d)減少した血管過敏、の特性の1つ以上を示すことが見出されている。さらに、シクロデキストリンは、特定のグリコペプチド抗生物質(例えば、脂質化(lipidated)グリコペプチド抗生物質)の水溶性を増大させることが見出されている。
【0171】
以下の合成的および生物学的実施例は、本発明を例示するために提供され、本発明の範囲を限定するようには解釈されるべきでない。
【実施例】
【0172】
(実施例)
以下の実施例において、以下の略語は、以下の意味を有する。定義されない任意の略語は、一般に受け入れられている意味を有する。他に記述のない限り、全ての温度は、摂氏温度である。
ACN= アセトニトリル
BOC,Boc=tert−ブトキシカルボニル
DIBAL−H=ジイソブチルアルミニウム水素化物
DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン
DMF=N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO=ジメチルスルホキシド
eq.=当量
EtOAc=酢酸エチル
Fmoc=9−フルオレニルメトキシカルボニル
HOBT=1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物
Me=メチル
PyBOP=ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
TEMPO=2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ、フリーラジカル
TFA=トリフルオロ酢酸
THF=テトラヒドロフラン
TLC,tlc=薄層クロマトグラフィ
以下の実施例において、バンコマイシン塩酸塩半水和物を、Alpharma,Inc.Fort Lee,NJ 07024(Alpharma AS,Oslo Norway)から購入した。他の試薬および反応物は、Aldrich Chemical Co.,Milwaukee, WI 53201から入手可能である。
【0173】
(一般的手順A)
(バンコマイシンの還元的アルキル化)
バンコマイシン(1当量)および所望のアルデヒド(1.3当量)のDMF中における混合物にDIPEA(2当量)を添加した。反応物を1〜2時間、周囲の温度で撹拌し、逆相HPLCによってモニターした。メタノールおよびNaCNBH(1当量)を溶液に添加し、続いてTFA(3当量)を添加した。撹拌を周囲温度でさらに1時間撹拌し続けた。反応が完了した後、メタノールを減圧下で除去した。残渣をアセトニトリル中で沈殿させた。濾過により、粗生成物を得、次いでこれを逆相HPLCによって精製した。所望ならば、他のグリコペプチド抗生物質をこの手順において使用し得る。
【0174】
(実施例1)
(化合物Aの調製)
(式II(ここで、Rは−OH;RはN−(ホスホノメチル)−アミノメチル;R19は水素であり;そしてR20は、−CHCH−NH−(CHCH)である)
(アミノメチル)ホスホン酸(3.88g、35mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(6.1ml、35mmol)を水中(40ml)で合わせ、均一になるまで撹拌した。次いでアセトニトリル(50ml)およびホルムアルデヒド(HO中37%溶液;0.42ml、05.6mmol)をこの反応混合物に添加した。約15分後、NVAN−デシルアミノエチルバンコマイシントリストリフルオロ酢酸塩(10.0g、5.1mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(6.1ml、35mmol)の両方をこの反応混合物に添加した。反応物を室温で約18時間撹拌し、ここでアセトニトリルを減圧下で除去し、残渣を凍結乾燥した。得られた固体を水(100mL)で粉砕し、濾過により集め、減圧下で乾燥し、そして分取用逆相HPLCにより精製して、表題化合物を得た。MS(MH+)(計算値)1756.6;MS(MH+)(実測値)1756.6。
【0175】
(実施例2)
(薬学的組成物の調製)
注射可能な薬学的組成物を、以下のように調製し得る。
【0176】
【表1】


上の成分を、ブレンドし、そしてpHを0.5N HClまたは0.5N NaOHを用いて3.5±0.5に調整した。
【0177】
(実施例3)
(本発明の組成物に取り込まれ得るグリコペプチド(式II、ここでRは、−OH;RはH;R19は水素、およびR20は4−(4−クロロフェニル)ベンジル)の調製)
3Lの3つ口フラスコを、コンデンサー、窒素入口およびオーバーヘッド機械撹拌装置に取りつけた。このフラスコを、窒素環境下で粉砕A82846B酢酸塩(20.0g、1.21×10−5モル)およびメタノール(1000mL)で満たし、4’−クロロビフェニルカルボキシアルデヒド(2.88g、1.33×10−2mol、1.1当量)をこの撹拌混合物へ添加し、次いでメタノール(500mL)を添加した。最後に、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(0.84g、1.33×10−2mol、1.1当量)を、メタノール(500mL)添加後に添加した。得られた混合物を、加熱して還流した(約65℃)。
【0178】
1時間の還流後、この反応混合物は、均質になった。還流25時間後、熱源を取り除き、そして透明な反応混合物を、pHメーターで測定した(58℃で6.67)。1NのNaOH(22.8ml)を、滴下して、pHを9.0(54.7℃)まで調製した。このフラスコを、蒸留ヘッドに備え付け、そして混合物を、40℃〜45℃の間のポット温度を維持する間、部分減圧下で322.3gの重量まで濃縮した。
【0179】
蒸留ヘッドを、500mLのイソプロパノール(IPA)を含むさらなる漏斗へ配置した。IPAを、1時間にわたって、室温で溶液に滴下した。約1/3のIPAを添加した後、粒状の沈殿物が形成された。残りのIPAを、沈殿が開始した後、より速い速度で添加した。フラスコを、重量測定し、そして714.4グラムのIPA/メタノールスラリーを保持していることがわかった。
【0180】
フラスコを、スチールヘッドに再び備え付け、部分減圧下で蒸留して、残留メタノールを除去した。得られたスラリー(377.8g)を、一晩フリーザーで冷却した。粗生成物を、ポリプロピレンパッドを介して濾過し、そして25mLの冷IPAで2回リンスした。5分間漏斗で吸引乾燥した後、この物質を真空オーブンに配置して、40℃で乾燥した。明るい桃色の固体(22.87g(理論=22.43g))を回収した。標準に対するHPLC分析は、粗固体中に表記化合物(4−[4−クロロフェニル]ベンジル−A82846B)の68.0%の重量パーセントを示した。これは、69.3%の補正した粗収率に換算される。
【0181】
この反応の生成物を、Zorbax SB−C18カラムを利用する逆相HPLCによって、紫外光(UV;230nm)検出で分析した。時間=0分で95%水性緩衝液/5%CHCNから時間30分で40%水性緩衝液/60%CHCNで構成される20分の勾配溶媒系を使用し、ここでこの水性緩衝液は、TEAP(1000mlの水において5ml CHCN、3ml リン酸)である。
【0182】
中間体A82846B酢酸塩は、米国特許第5、840、684号に記載されるように調製され得る。
【0183】
(実施例4)
(抗細菌活性の測定)
(A.抗細菌活性のインビトロでの測定)
(1.最小阻害濃度(MIC)の測定)
この手順を、グリコペプチド抗生物質の抗細菌特性を評価するために使用し得る。細菌株を、American Type Tissue Culture Collection(ATCC)、Stanford University
Hospital(SU)、Kaiser Permanente Regional Laboratory in Berkeley(KPB)、Massachusetts General Hospital(MGH)、the
Centers for Disease Control(CDC)、the San Francisco Veterans’Administration Hospital(SFVA)またはthe University of California San Francisco Hospital(UCSF)のいずれかから得た。バンコマイシン耐性腸球菌を、テイコプラニンに対するその感受性に基づいてVan AまたはVan Bとして表現型測定した。Van A、Van B、Van C1またはVan C2として遺伝子型測定したいくつかのバンコマイシン耐性腸球菌を、Mayo Clinicから得た。
【0184】
最小阻害濃度(MIC)を、マイクロ希釈ブロス(microdilution broth)手順においてNCCLSガイドラインのもとで測定した。慣用的に、この化合物を、96ウェルマイクロタイタープレート中のミュラー−ヒントンブロスへ連続希釈した。細菌株の一晩培養を、600nmでの吸光度に基づいて希釈し、その結果、各ウェルの最終濃度は、5×10cfu/mLであった。プレートを、35℃インキュベーターに戻した。次の日(またはEnterococci株の場合は24時間)、MICを、プレートの視覚検査によって測定した。初期スクリーニングにおいて慣用的に試験された株としては、メチシリン感受性Staphylococcus aureus(MSSA)、メチシリン耐性Staphylococcus aureus、メチシリン感受性Staphylococcus epidermidits(MSSE)、メチシリン耐性Staphylococcus epidermidits(MRSE)バンコマイシン感受性Enterococcus faecium(VSE Fm)、バンコマイシン感受性Enterococcus faecalis(VSE Fs)、テイコプラニン耐性でもあるバンコマイシン耐性Enterococcus faecium(VREFm Van A)、テイコプラニン感受性であるバンコマイシン耐性Enterococcus faecium(VRE
Fm Van B)、テイコプラニン耐性でもあるバンコマイシン耐性Enterococcus faecalis(VRE Fs Van A)、テイコプラニン感受性であるバンコマイシン耐性Enterococcus faecalis(VRE Fs Van B)、Van A遺伝子型のenterococcus gallinarium(VRE Gm Van A)、Van C−1遺伝子型のenterococcus gallinarium(VRE
Gm Van C−1)、Van C−2遺伝子型のenterococcus casseliflavus(VRE Cs Van C−2)、Van C−2遺伝子型のenterococcus flavescens(VRE Fv Van C−2)、およびペニシリン感受性Streptococcus
pneumoniae(PSSP)およびペニシリン耐性Streptococcus pneumoniae(PSRP)が挙げられる。PSSPおよびPSRPはミュラー−ヒントンブロスにおいて十分に増殖し得ないので、これらの株を用いるMICを、脱線維素血液寒天プレートまたは血液寒天プレートのいずれかを補充したTSAブロスを使用して測定した。次いで、上記の株に対して有意な活性を有する化合物を、臨床的な分離菌のより大きなパネル(上記の種およびメチシリンに感受性および耐性の両方の非種分化されたコアグラーゼ陰性Staphylococcus(MS−CNSおよびMR−CNS)を含む)におけるMIC値について試験した。さらに、これらを、グラム陰性生物(例えば、Escherichia coliおよびPseudomonas aeruginosa)に対するMICについて試験した。
【0185】
(2.殺傷時間の測定)
細菌を殺傷するのに必要な時間を測定するための実験を、Lorian、「Antibiotics in Laboratory Medicine」、第4版、WilliamsおよびWilkins(1991)に記載されるように行った。これらの実験を、ブドウ球菌株および腸球菌株の両方を用いて通常に行った。
【0186】
簡単には、いくつかのコロニーを、寒天プレートから選択し、そして約1.5×10CFU/mLの濁度を達成するまで一定撹拌下で35℃で増殖させた。次いで、このサンプルを、約6×10CFU/mLまで希釈し、そして一定撹拌を持続して35℃でインキュベートした。種々の時間で、アリコートを除去し、そして5回の10倍連続希釈を実施した。この注入プレート法を使用して、コロニー形成単位(CFU)の数を測定した。
【0187】
一般的に、上の試験におけるグリコペプチド抗生物質活性のインビトロ試験は、本発明の薬学的組成物における使用に適切である。
【0188】
(B.抗細菌活性のインビボ測定)
(1.マウスにおける急性許容研究)
これらの研究において、本発明の薬学的組成物を、静脈内または皮下のいずれかで投与し、そして5〜15分間観察した。有害な影響がない場合、用量を第2群のマウスにおいて増加した。この用量増加は、死亡が生じるか、または用量が最大になるまで続けた。一般的に、投与は20mg/kgで始まり、そして最大許容用量(MTD)を達成するまで各回20mg/kg毎増加した。
【0189】
(2.マウスにおける生物学的利用能)
マウスに本発明の化合物を治療用量(一般的に、約50mg/kg)で静脈内または皮下で投与した。動物群を、変形ケージに置き、その結果、尿および糞を分析のために収集し得た。動物群(n=3)を、種々の時間(10分、1時間および4時間)で屠殺した。血液を心臓穿刺によって収集し、次いで器官(肺、肝臓、心臓、脳、腎臓および脾臓)を収集した。組織を、重量測定し、そしてHPLC分析のために調製した。組織ホモジネートおよび流体のHPLC分析を使用して、試験化合物濃度、すなわちIiIの存在を測定した。代謝産物をまた、この際に測定した。
【0190】
(3.マウス敗血症モデル)
このモデルにおいて、細菌の適切な毒性株(最も一般的に、S.aureus、またはE.FaecalisまたはE.Faecium)を、マウス(1群あたりN=5〜10)に腹腔内投与した。この細菌を、ブタ胃ムチンと組み合わせて、毒性を高めた。細菌の用量(通常10〜10)は、3日間にわたって全てのマウスにおいて死亡を誘導するのに十分であった。細菌を投与して1時間後、本発明の薬学的組成物を、IVまたは皮下のいずれかで単一用量で投与した。各用量を5〜10匹のマウスの群に投与した。その用量は、代表的には、最大約20mg/kgから最小1mg/kg未満の範囲であった。陽性コントロール(バンコマイシンおよびバンコマイシン感受性株)を、各実験において投与した。約50%の動物を助ける用量を、この結果から計算した。
【0191】
(4.好中球減少性大腿モデル)
このモデルにおいて、本発明の薬学的組成物の抗細菌活性を、細菌の適切な毒性株(最も一般的に、バンコマイシンに感受性もしくは耐性のS.aureus、またはE.FaecalisまたはE.Faecium)に対して評価した。最初にマウスを、0日目および2日目に200mg/kgでのシクロホスファミドの投与によって、好中球減少性にした。4日目に、これらのマウスを、単一用量の細菌のIM注射によって左前大腿に感染させた。次いでこのマウスに、細菌感染1時間後、試験化合物を投与し、種々の時間(通常、1、2.5、4および24時間)後で、これらのマウスを屠殺し(1時点あたり3匹)、そして大腿を摘出し、ホモジナイズし、そしてCFU(コロニー形成単位)の数をプレーティングによって測定した。血液をまた、血液中のCFUを測定するためにプレーティングした。
【0192】
(5.薬物速度論研究)
本発明の化合物が血液から除去される速度を、ラットまたはマウスのいずれかにおいて測定し得る。ラットにおいて、試験動物に、頸静脈においてカテーテル挿入した。この試験化合物を尾静脈注射を介して投与し、そして種々の時点(通常、5、15、30、60分および2、4、6および24時間)で、血液をカテーテルから抜き取った。マウスにおいて、この試験化合物をまた、尾静脈注射を介して、かつ種々の時点で投与した。通常、血液を心臓穿刺によって得た。残留試験化合物の濃度を、HPLCによって測定した。
【0193】
一般的に、本発明の薬学的組成物は、上の試験においてインビボで活性であり、そして広い活性スペクトルを示した。
【0194】
(実施例5)
(組織蓄積の測定)
(A.放射線標識された化合物を使用する組織分布)
この手順を使用して、10mg/kgでの静脈内注入後の、雄ラットおよび雌ラットの両方における放射線標識された試験化合物の組織分布、排出および代謝を試験する。雄および雌Sprague−Dawleyラット(1化合物あたり性別あたりn=2)に、それぞれ、静脈内注入(約2分)を介して10mg/kg(400μCi/kg)および12.5mg/kg(100μCi/kg)でH−標識された試験化合物を投薬した。試験化合物を、2.5mg/mL溶液として5%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン中に処方する。尿および糞を24時間の期間にわたってケージ収集する。投薬24時間後、動物を屠殺し、そして組織を摘出する。血清、尿および組織を、液体シンチレーション計数の前に酸化によって総放射能について分析する。尿および選択された組織サンプルを抽出し、そして潜在的な代謝産物の存在に対する放射能フロー検出器を備える逆相HPLCによって分析する。
【0195】
(B.単一投薬後の組織蓄積)
この手順を使用して、注入による単一用量投与後のラットにおける試験化合物の組織分布を評価する。雄Sprague−Dawleyラット(1用量群あたりn=3)を、50mg/kgの試験化合物で投薬する。2つの処方:30%PEG400および10%スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンを使用する。尿サンプルを24時間にわたってケージ収集した。血液サンプルを血清化学測定および血清濃度測定のために収集した。肝臓および腎臓を、組織学評価のために摘出した。1つの腎臓および肝臓の一部を、UV検出器を備える逆相HPLCを使用して濃度分析のためホモジナイズする。尿および血清サンプルにおける薬物濃度を、LC−MS分析によって測定する。
【0196】
(C.複数投薬後の組織分布)
この手順を使用して、静脈注入によって複数の用量投与後の、ラットにおける試験化合物の潜在的組織蓄積を評価する。雄および雌Sprague−Dawleyラット(1用量群あたり性別あたりn=4)に、7日間、1日あたり12.5、25および50mg/kg試験化合物を投薬する。動物を、最後の用量投与後、1日目に屠殺する(1用量群あたり性別あたりn=3)。1投薬群あたり1性別あたりの1匹の動物を、回収動物として保持し、そして最終用量の投与後7日目に屠殺する。試験化合物を、5%ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンまたは1%スクロース/4.5%ブドウ糖中に処方する。尿サンプルを、投薬後1日および7日でケージ収集する。血液サンプルを血清化学および濃度測定のために回収する。肝臓および腎臓を組織学評価のために摘出する。1つの腎臓および肝臓の一部を、UV検出器を備える逆相HPLCを使用する濃度分析のためにホモジナイズする。尿および血清サンプルにおける薬物濃度を、LC−MS分析によって測定する。
【0197】
腎毒性、ヒスタミン放出および血管刺激を、当業者に周知の手順を使用して測定し得る。
【0198】
(実施例5)
(組織蓄積および腎毒性の測定)
雌Sprague−Dawleyラット(1群あたり3匹)に、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンまたは5%ブドウ糖/水またはビヒクルのいずれかに処方した化合物A(50mg/kg)を投薬した。この表示用量を、2分の静脈内注入を介して10mL/kgの容量で投与した。24時間で、この動物を屠殺し、そして血清および組織サンプルを収集した。この結果を、表1および2に示す。
【0199】
【表2】


表1に示すように、化合物Aの尿回収は、シクロデキストリンを含む処方において有意に高かった;そして肝臓および腎臓蓄積は、このような処方においては有意に低かった。
【0200】
【表3】


表2の結果は、シクロデキストリンを含む処方が、シクロデキストリンを含まない処方と比較して有意に低い腎毒性を有したことを示す。
【0201】
本発明は、それらの特定の実施形態を参照して記載されているが、種々の変更がなされ得、そして等価が本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく置換され得ることが当業者によって理解されるべきである。さらに、多くの改変がなされて、本発明の特定の状況、物質、組成物、プロセス、プロセス工程、目的、趣旨および範囲に適合され得る。このような全ての改変は、本明細書に添付の特許請求の範囲内であることが意図される。さらに、本明細書中に引用される刊行物、特許、および特許文書は全て、参考として個々に援用されると同様に、その全体が本明細書中に参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載されるような組成物。

【公開番号】特開2008−231109(P2008−231109A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97622(P2008−97622)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【分割の表示】特願2001−579844(P2001−579844)の分割
【原出願日】平成13年5月1日(2001.5.1)
【出願人】(500154711)セラヴァンス, インコーポレーテッド (129)
【Fターム(参考)】