説明

シクロデキストリン誘導体およびその製造方法並びにレジスト材料

【課題】高い耐熱性を有するアダマンタン化合物に由来の基が導入されてなる新規なシクロデキストリン誘導体、その製造方法、及び微細なパターンを高精度に、かつ安定して形成することのできるレジスト材料の提供。
【解決手段】6から8個のグルコースからなるシクロデキストリンの、グルコース単位の少なくとも1つの水酸基が下記式(a)で表わされる基とエーテル結合しているシクロデキストリン誘導体。


〔式中、R4は、アルキル基を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロデキストリン誘導体およびその製造方法、並びにレジスト材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子などの集積回路素子の製造には、フォトリソグラフィー技術が広く用いられており、このフォトリソグラフィー技術においては、近年の集積回路素子の更なる高集積化の要請があることから、露光光として、従来から用いられていた、例えばKrFエキシマレーザー光およびArFエキシマレーザー光などに代えて、これらのエキシマレーザー光よりも短波長の光である極端紫外線(EUV:Extreme Ultra−Violet)を用いることによって形成すべき回路パターンの微細化に対応することが検討されている。
【0003】
而して、フォトリソグラフィープロセスにおいて露光光として極端紫外線を用いるに際しては、非晶性、成膜性、耐熱性、剛直性および極端紫外線に対する感応性を有すると共に、低LER(Line Edge Roughness)、すなわち膜面荒れの程度が少なく、微細なパターンを高精度に、かつ安定して形成することのできるレジスト材料の開発が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Mitsuru Ueda et al.Macromolecules,43,2832(2010)
【非特許文献2】Huining Xiao et al.Tetrahedron Letters.,51,2351(2010)
【非特許文献3】Khan,A.R;Forgo,P.;Stine,K.J.;D’Souza,V.T.Chem.Rev.,98,1977,(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情を背景とし、極端紫外線を露光光とするフォトリソグラフィー用のレジスト材料としては低分子量の化合物が有用であることに基づいて、発明者らが研究を重ね、低分子量の化合物であって分子中に多数の水酸基を有するシクロデキストリンに対して、特異な特性を有することから種々の用途への利用が試みられているアダマンタン化合物に由来の基を導入することが可能であることを見出した結果、なされたものである。
【0006】
本発明の目的は、アダマンタン化合物に由来の基が導入されてなる新規なシクロデキストリン誘導体およびその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、高い耐熱性を有すると共に、容易に成膜することができるシクロデキストリン誘導体およびその製造方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、低LERであり、従って微細なパターンを高精度に、かつ安定して形成することのできるレジスト材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシクロデキストリン誘導体は、下記化学式(1)で表されることを特徴とする。
【0008】
【化1】

【0009】
〔式中、R1 〜R3 は、それぞれ独立に水素原子または下記化学式(a)で表わされる基を示す。nは6〜8の整数である。また、複数のR1 〜R3 のうちの少なくとも1つは下記式(a)で表わされる基である。〕
【0010】
【化2】

【0011】
〔式中、R4 は、アルキル基を示す。〕
【0012】
本発明のシクロデキストリン誘導体においては、前記化学式(a)で表わされる基の含有率が7%以上であることが好ましい。
【0013】
本発明のシクロデキストリン誘導体の製造方法は、下記化学式(2)で表わされる化合物と、下記化学式(3)で表わされる化合物とを水酸化ナトリウムの存在下において、化学式(2)で表わされる化合物における全水酸基1molに対して化学式(3)で表わされる化合物が0.1mol以上となる条件で反応させることにより、請求項1または請求項2に記載のシクロデキストリン誘導体を得ることを特徴とする。
【0014】
【化3】

【0015】
〔式中、nは6〜8の整数である。〕
【0016】
【化4】

【0017】
〔式中、R4 はアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。〕
【0018】
本発明のレジスト材料は、前記のシクロデキストリン誘導体を含有してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のシクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリン骨格を有する低分子量のものであると共に、アダマンタン化合物に由来の基を有するため、優れた耐熱性が得られると共に、アダマンタン化合物に由来の基の含有率が7%以上である場合には、有機溶剤に対する溶解性を有することから容易に成膜することが可能である。
また、本発明のシクロデキストリン誘導体は、極端紫外線に対して感度を有するものであり、しかも当該シクロデキストリン誘導体から得られる薄膜が低LERであって微細なパターンを高精度に、かつ安定して形成することができるものであることから、極端紫外線を露光光として用いるレジスト材料として有用である。
【0020】
本発明のシクロデキストリン誘導体の製造方法によれば、本発明のシクロデキストリン誘導体を容易に得ることができる。
また、本発明のシクロデキストリン誘導体の製造方法においては、水酸化ナトリウムの使用量によって得られるシクロデキストリン誘導体におけるアダマンタンに由来の基の含有率を制御することが可能である。
【0021】
本発明のレジスト材料によれば、本発明のシクロデキストリン誘導体を含有するものであることから、低LER(Line Edge Roughness)、すなわち膜面荒れの程度が少なく、従って微細なパターンを高精度に、かつ安定して形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1で得られたシクロデキストリン誘導体のIRスペクトルである。
【図2】実施例1で得られたシクロデキストリン誘導体のNMRスペクトルである。
【図3】実施例1で得られたシクロデキストリン誘導体のTGAデータである。
【図4】実施例2で得られたシクロデキストリン誘導体のNMRスペクトルである。
【図5】実施例3で得られたシクロデキストリン誘導体のNMRスペクトルである。
【図6】実施例4で得られたシクロデキストリン誘導体のNMRスペクトルである。
【図7】参考例1で得られたシクロデキストリン誘導体のIRスペクトルである。
【図8】参考例1で得られたシクロデキストリン誘導体のNMRスペクトルである。
【図9】参考例1で得られたシクロデキストリン誘導体のTGAデータである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
本発明のシクロデキストリン誘導体は、上記化学式(1)で表わされる化合物であり、アダマンタン化合物に由来の基を有することを特徴とするものである。
この本発明のシクロデキストリン誘導体は、当該シクロデキストリン誘導体を構成する繰り返し単位のすべてが同一の構成を有するものに限られず、各繰り返し単位におけるR1 〜R3 およびR4 が、その一部または全部が異なったものであってもよい。
【0025】
本発明のシクロデキストリン誘導体に係る化学式(1)において、R1 〜R3 は、それぞれ独立に水素原子または上記化学式(a)で表わされるアダマンタン化合物に由来の基(以下、「特定アダマンチル基」ともいう。)であり、また、複数のR1 〜R3 のうちの少なくとも1つは、特定アダマンチル基である。
ここに、本発明のシクロデキストリン誘導体においては、当該シクロデキストリン誘導体を構成する複数の繰り返し単位うちの少なくとも1つの繰り返し単位に係るR1 〜R3 のうちの少なくとも1が特定アダマンチル基であればよい。
【0026】
特定アダマンチル基に係る化学式(a)において、R4 は、アルキル基である。
化学式(a)におけるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
化学式(a)においては、R4 は、メチル基であることが好ましい。
【0027】
また、化学式(1)において、nは6〜8の整数であり、好ましくは7である。
【0028】
本発明のシクロデキストリン誘導体においては、シクロデキストリンにおける全水酸基に対するエーテル化率によって示される特定アダマンチル基の含有率が、7%以上であることが好ましく、更に好ましくは10%以上である。
ここに、特定アダマンチル基の含有率は、1H−NMRスペクトルに基づいて求めることができる。
【0029】
このような構成の本発明のシクロデキストリン誘導体は、原料化合物としてのシクロデキストリン化合物と、特定アダマンチル基を有する化合物とを反応させることにより得ることができる。
ここに、原料化合物としてのシクロデキストリン化合物の具体例としては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンが挙げられる。
【0030】
具体的には、本発明のシクロデキストリン誘導体は、上記化学式(2)で表わされるシクロデキストリン化合物(以下、「原料化合物(1)」ともいう。)と、上記化学式(3)で表わされる特定アダマンチル基を有する化合物(以下、「原料化合物(2)」ともいう。)とを、水酸化ナトリウムの存在下において反応させることにより得ることができる。
ここに、原料化合物(2)に係る化学式(3)において、Xはハロゲン原子である。この化学式(3)に係るXとしては、例えば臭素原子、塩素原子およびヨウ素原子などが挙げられる。
【0031】
原料化合物(1)と、原料化合物(2)との使用量は、原料化合物(1)中の水酸基1molに対して原料化合物(2)が0.1mol以上とされ、好ましくは0.1〜5.0mol、更に好ましくは0.5〜1.0molである。
【0032】
水酸化ナトリウムの使用量は、原料化合物(1)中の水酸基1molに対して0.1〜2.0molであることが好ましく、更に好ましくは0.3〜1.0molである。
水酸化ナトリウムの使用量が過小および過大である場合には、いずれの場合においても、得られるシクロデキストリン誘導体において、特定アダマンチル基の含有率を制御することができなくなるおそれがある。
【0033】
水酸化ナトリウムの存在下における原料化合物(1)と原料化合物(2)との反応は、適宜の溶媒中において、適宜の触媒を用いることによって行うことができる。
【0034】
溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルフィド(DMS)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)などを用いることができる。
【0035】
また、触媒としては、例えばテトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラフェニルアンモニウムブロマイド、テトラブチルフォスフォニウムブロマイドなどを用いることができる。
触媒の使用量は、0.5〜1.0mol%であることが好ましい。
【0036】
また、反応条件としては、例えば反応温度が0〜100℃であり、反応時間が1〜72時間である。
【0037】
本発明のシクロデキストリン誘導体の合成プロセスの一例を、下記反応式(1)に示す。
【0038】
【化5】

【0039】
〔式中、R1 〜R3 は、それぞれ独立に水素原子または下記化学式(a)で表わされる基を示し、nは6〜8の整数である。また、複数のR1 〜R3 のうちの少なくとも1つは下記式(a)で表わされる基である。R4 は、アルキル基を示し、Xは、ハロゲン原子を示す。〕
【0040】
以上のような本発明のシクロデキストリン誘導体は、シクロデキストリン骨格を有する低分子量のものであると共に、アダマンタン化合物に由来の基を有するため、優れた耐熱性が得られると共に、特定アダマンタン基の含有割合が7%以上である場合には、有機溶剤に対する溶解性を有することから容易に成膜することが可能である。
また、本発明のシクロデキストリン誘導体は、極端紫外線に対して感度を有するものであり、しかも当該シクロデキストリン誘導体から得られる薄膜が低LERであって微細なパターンを高精度に、かつ安定して形成することができるものであることから、極端紫外線を露光光として用いるレジスト材料として有用である。
【0041】
本発明のレジスト材料は、本発明のシクロデキストリン誘導体を含有することを特徴とするものである。
具体的には、例えば本発明のシクロデキストリン誘導体と共に、極端紫外線などの放射線が照射されることにより酸を発生する感放射線性酸発生剤と、当該感放射線性発生剤から生じる酸のレジスト膜(レジスト被膜)中における拡散現象を制御するための酸拡散制御剤と、有機溶剤と、必要に応じて例えば界面活性剤および増感剤などの任意成分を含有するものである。
ここに、本発明のレジスト材料は、当該レジスト材料を構成する本発明のシクロデキストリン誘導体が1種単独または2種以上が組み合わされてなるものであってもよい。
【0042】
本発明のレジスト材料において、本発明のシクロデキストリン誘導体の含有割合は、1〜30質量%であることが好ましい。
本発明のシクロデキストリン誘導体の含有割合が過小である場合には、薄膜が形成不能になるおそれがある。一方、本発明のシクロデキストリン誘導体の含有割合が過大である場合には、均一な薄膜が形成不能になるおそれがある。
【0043】
前記感放射線性発生剤は、電子線および極端紫外線等の放射線などの光を照射したときに、本発明のレジスト材料中において酸を発生する物質であり、本発明のレジスト材料に光を照射した場合には、当該本発明のレジスト材料を構成する本発明のシクロデキストリン誘導体における、酸解離性を有する特定アダマンチル基が解離することとなる。
感放射線性発生剤としては、酸発生効率および耐熱性の観点から、例えばオニウム塩、ジアゾメタン化合物、スルホンイミド化合物およびその他の非イオン性酸発生剤などが好適に用いられる。これらの化合物は、単独で用いることもでき、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0044】
感放射線性発生剤の具体例としては、例えば下記一般式(B−1)で表わされるスルホニルオキシイミド化合物が挙げられる。
【0045】
【化6】

【0046】
〔上記式中、R5 は、アルキレン基、アリーレン基、アルコキシレン基、シクロアルキレン基、不飽和結合を有する環状骨格を含むシクロアルキレン基等の2価の基を示し、R6 はハロゲン原子、シクロアルキル基で置換されていてもよいアルキル基、アルキル基、エステル結合を有する基で置換されていてもよいシクロアルキル基、ハロゲン原子またはアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示す。〕
【0047】
本発明において、スルホニルオキシイミド化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0048】
スルホニルオキシイミド化合物の具体例としては、N−(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(10−カンファースルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−トルエンスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(ノナフルオロ−n−ブタンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ベンゼンスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−{(5−メチル−5−カルボキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)スルホニルオキシ}スクシンイミドなどを挙げることができる。
【0049】
前記他の非イオン性酸発生剤としては、スルホニルジアゾメタン化合物が好ましい。スルホニルジアゾメタン化合物としては、例えば、下記一般式(B−2)で表される化合物を挙げることができる。
【0050】
【化7】

【0051】
〔上記式中、各R7 は、相互に独立にアルキル基、アリール基、ハロゲン置換アルキル基、ハロゲン置換アリール基等の1価の基を示す。〕
【0052】
スルホニルジアゾメタン化合物の具体例としては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキサンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4―ジメチルベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−t−ブチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−クロロベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、メチルスルホニル・4−トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキサンスルホニル・4−トルエンスルホニルジアゾメタン、シクロヘキサンスルホニル・1,1−ジメチルエタンスルホニルジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエタンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1−メチルエタンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(3,3−ジメチル−1,5−ジオキサスピロ[5.5]ドデカン−8―スルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,4−ジオキサスピロ[4.5]デカン−7−スルホニル)ジアゾメタンなどを挙げることができる。
【0053】
前記オニウム塩としては、フッ素原子で置換されてもよいベンゼンスルホン酸を発生するものを使用できる。
【0054】
前記オニウム塩化合物の具体例としては、下記一般式(B−3)および一般式(B−4)で表される化合物を挙げることができる。
【0055】
【化8】

【0056】
〔上記式(B−3)中、R8 およびR9 は、相互に独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基であるか、あるいは、R8 およびR9 が相互に結合して式中のヨウ素原子とともに環状構造を形成していてもよい。上記式(B−4)中、R10、R11およびR12は、相互に独立に、置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基であるか、あるいは、R10、R11およびR12のいずれか2つが相互に結合して式中のイオウ原子とともに環状構造を形成しており、残りの1つが置換されていてもよい炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、または置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基であってもよい。また、一般式(B−3)および上記一般式(B−4)中、X’- はR13−SO3またはR14−COOHを示し、R13およびR14はそれぞれ独立にフッ素原子、水酸基、アルコキシル基およびカルボキシル基で置換されてもよいアルキル基または芳香族誘導体に由来の基を示す。〕
【0057】
一般式(B−3)および上記一般式(B−4)に係る好ましいR13−SO3としては、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、10−カンファースルホネート、2−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、2,4−ジフルオロベンゼンスルホネート、パーフルオロベンゼンスルホネート、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、2−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)エタンスルホネートを挙げることができる。
【0058】
感放射線性発生剤の含有割合は、本発明のシクロデキストリン誘導体100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましい。
【0059】
前記酸拡散制御剤は、本発明のレジスト材料を構成する感放射線性発生剤から生じる酸のレジスト膜(レジスト被膜)中における拡散現象を制御することによって非露光領域において化学反応が生じることを抑制する作用を有するものである。
酸拡散制御剤としては、含窒素有機化合物または感光性塩基性化合物などが好適に用いられる。これらの化合物は、単独で用いることもでき、また2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0060】
前記含窒素有機化合物としては、例えば、下記一般式(C−1)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(i)」という。)、下記一般式(C−2)で表される同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(ii)」という。)、窒素原子を3個以上有するポリアミノ化合物や重合体(以下、これらをまとめて「含窒素化合物(iii)」という。)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物などを挙げることができる。
【0061】
【化9】

【0062】
〔上記式中、複数のR15は、相互に独立に、水素原子、置換されていてもよい、直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいアラルキル基を示す。〕
【0063】
【化10】

【0064】
〔上記式中、複数のR16は、相互に独立に、水素原子、置換されていてもよい、直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいアラルキル基を示し、L’は単結合若しくは炭素数1〜6のアルキレン基、エーテル基、カルボニル基またはアルコキシカルボニル基を示す。〕
【0065】
含窒素化合物(i)としては、ジ(シクロ)アルキルアミン類、トリ(シクロ)アルキルアミン類、トリアルコールアミン等の置換アルキルアミン類、アニリン類等の芳香族アミン類を挙げることができる。
【0066】
含窒素化合物(iii)としては、例えば、トリアジン類、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、2−ジメチルアミノエチルアクリルアミドの重合体等を挙げることができる。
【0067】
前記アミド基含有化合物としては、例えば、下記一般式(C−3)で表される化合物を挙げることができる。
【0068】
【化11】

【0069】
〔上記式中、複数のR17は、相互に独立に、水素原子、置換されていてもよい、直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいアラルキル基を示し、複数のR17は互いに結合し複素環式構造を形成してもよい。R18は置換基を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状アルキル基、置換されていてもよいアリール基、または置換されていてもよいアラルキル基を示す。〕
【0070】
前記ウレア化合物としては、例えば、尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等を挙げることができる。
【0071】
前記含窒素複素環化合物としては、例えば、イミダゾール類、ピリジン類、ピペラジン類、ピペリジン類、トリアジン類、モルホリン類のほか、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等を好適例として挙げることができる。
【0072】
酸拡散制御剤の含有割合は、本発明のシクロデキストリン誘導体100質量部に対して15質量部以下であることが好ましい。
【0073】
前記有機溶剤としては、本発明のレジスト材料を構成する他の構成要素を溶解可能なものが用いられる。
【0074】
有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−プロピル、乳酸i−プロピル等の乳酸エステル類;ぎ酸n−アミル、ぎ酸i−アミル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸n−アミル、酢酸i−アミル、プロピオン酸i−プロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;γ−ブチロラクン等のラクトン類;などが挙げられる。
【0075】
有機溶剤の含有割合は、レジスト材料における全固形分濃度が5〜70質量%となる量であることが好ましい。
【0076】
このような構成の本発明のレジスト材料は、例えば本発明のシクロデキストリン誘導体と共に、感放射線性酸発生剤、酸拡散制御剤、および必要に応じて任意成分を、適宜の溶媒に溶解し、好ましくは得られた溶液を孔径0.2μmのフィルターによってろ過することによって製造することができる。
また、このようにして得られた本発明のレジスト材料は、例えば、レジスト材料を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布などの適宜の塗布方法によって、シリコンウエハーなどの基板上に塗布することによってレジスト膜(レジスト被膜)を形成し、そのレジスト膜に対して極端紫外線などの露光によって所期のレジストパターンを形成し、適宜の現像液によって現像処理をする、フォトリソグラフィープロセスに好適に用いられる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0078】
〔実施例1〕
(シクロデキストリン誘導体の合成例)
容量50mLのナスフラスコに、化学式(2)においてnが7の化合物であるβ−シクロデキストリン(以下、「β−CD」ともいう。)0.23g(0.2mmol)と、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」ともいう。)10mLとを仕込み、β−CDをNMPに溶解させた。この溶液に、水酸化ナトリウム0.1g(β−CD中の水酸基4.2mmolに対して当量)と、テトラブチルアンモニウムブロミド(以下、「TBAB」ともいう。)0.058g(β−CDの水酸基に対して5mol%)、と、化学式(3)においてXが臭素原子であってR4 がメチル基の化合物であるアダマンチルブロモアセテート(以下、「BMA」ともいう。)1.2g(β−CD中の水酸基4.2mmolに対して当量)とを添加し、温度40℃の条件で20時間撹拌することによって反応させた。
反応が完了した後、反応溶液をクロロホルムで希釈し、0.1N塩酸で1回、水道水で2回洗浄し、有機相を回収した。その後、回収した有機相を乾燥剤として無水硫酸マグネシウムを用いて乾燥処理した。乾燥剤をろ別し、減圧留去後、貧溶媒としてエーテルを用いて沈殿させ、沈殿を回収し、室温にて24時間かけて減圧乾燥することにより、反応生成物0.0822gを得た。なお、得られた反応生成物の質量は、NMPを含むものである。
得られた反応生成物は、IR分析および 1H−NMR分析の結果から、下記化学式(1−1)で表される化合物(以下、「シクロデキストリン誘導体(1)」ともいう。)であることが確認された。
このシクロデキストリン誘導体(1)において、特定アダマンタン基の含有率(β−CDにおける全水酸基に対するエーテル化率)は39%であることが確認された。
また、シクロデキストリン誘導体(1)について、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって分子量および分子量分布を確認したところ、数平均分子量(Mn)は1200であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
【0079】
【化12】

【0080】
シクロデキストリン誘導体(1)のIR分析および 1H−NMR分析の結果を下記に示すと共に、IRスペクトルを図1およびNMRスペクトルを図2に示す。
【0081】
○IR(KrS,cm-1):
3465(νO−H)
2914(νC−H)
1741(νC=O)
1145,1092,1031(νC−O−C)
【0082】
1H NMR(500MHz,DMSO−d6 ,TMS)δ(ppm):
1.50−2.18(m,195.33,Hh −Hz
4.80(s,7,Ha
【0083】
(シクロデキストリン誘導体の特性)
得られたシクロデキストリン誘導体(1)について、熱安定性、有機溶剤に対する溶解性および成膜性について下記の手法によって確認をした。
【0084】
(1)熱安定性(耐熱性)
熱重量分析(TGA)によって熱安定性(耐熱性)を確認したころ、Tdi が107.4℃であり、Td5.2%188.2℃であり、Td10.2%が191.4℃であることが確認された。TGAデータを図3に示す。
ここに、「Tdi」とは、熱分解開始温度であり、「Td5.2%」とは、5%重量熱分解損失温度であり、「Td10.2%」とは、10%重量熱分解損失温度である。
【0085】
(2)有機溶剤に対する溶解性
シクロデキストリン誘導体(1)50mgを有機溶剤1mLに添加することによってシクロデキストリン誘導体(1)の有機溶剤に対する溶解性を確認したところ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)および乳酸エチルには、室温(25℃)条件下において溶解し、また、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)には、加温条件下において溶解することが確認された。一方、濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液には溶解性を有さないことが確認された。
【0086】
(3)成膜性
シクロデキストリン誘導体(1)50mgがプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)1mLに溶解されてなる溶液、シクロデキストリン誘導体(1)50mgがジグライム1mLに溶解されてなる溶液、およびシクロデキストリン誘導体(1)50mgが乳酸エチル1mLに溶解されてなる溶液を調製し、得られた各溶液を用いて下記の手法によって膜を形成することによって成膜性を目視にて確認したところ、膜を均一に形成できることが確認された。
ここに、膜の形成は、シリコンウエハー上に溶液をスピンコートする手法によって行った。
【0087】
〔実施例2〕
実施例1のシクロデキストリン誘導体の合成例において、β−CDの使用量を2mmol、水酸化ナトリウムの使用量を42mmol、BMAの使用量を14mmol(β−CD中の水酸基に対して1/3当量)とすると共に、TBABの使用量を、β−CDの使用量が変更したことに応じてβ−CDの水酸基に対して5mol%となる量に変更したこと以外は当該実施例1のシクロデキストリン誘導体の合成例と同様にして反応生成物を得た。
得られた反応生成物は、IR分析および 1H−NMR分析の結果から、上記化学式(1−1)で表され、特定アダマンタン基の含有率(β−CDにおける全水酸基に対するエーテル化率)が76.9%である化合物(以下、「シクロデキストリン誘導体(2)」ともいう。)であることが確認された。
また、シクロデキストリン誘導体(2)について、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって分子量および分子量分布を確認したところ、数平均分子量(Mn)は1404であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
シクロデキストリン誘導体(2)のNMRスペクトルを図4に示す。
【0088】
得られたシクロデキストリン誘導体(2)について、有機溶剤に対する溶解性について実施例1と同様の手法によって確認をした。
【0089】
シクロデキストリン誘導体(2)の有機溶剤に対する溶解性については、シクロデキストリン誘導体(2)50mgを有機溶剤1mLに添加することによってシクロデキストリン誘導体(2)の有機溶剤に対する溶解性を確認したところ、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、エチルアセテート、乳酸エチル、クロロホルム、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)およびプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)には、室温(25℃)条件下において溶解し、また、メタノールおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)には、室温(25℃)条件下においてその一部が溶解することが確認された。一方、エチルエーテルおよび濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液には溶解性を有さないことが確認された。
また、シクロデキストリン誘導体(2)は、シクロデキストリン誘導体(2)50mgを水1mLに添加することにより、水には溶解性を有さないことが確認された。
【0090】
〔実施例3〕
実施例1のシクロデキストリン誘導体の合成例において、β−CDの使用量を4mmol、水酸化ナトリウムの使用量を42mmol(β−CD中の水酸基に対して1/3当量)、BMAの使用量を42mmol(β−CD中の水酸基に対して当量)とすると共に、TBABの使用量を、β−CDの使用量が変更したことに応じてβ−CDの水酸基に対して5mol%となる量に変更したこと以外は当該実施例1のシクロデキストリン誘導体の合成例と同様にして反応生成物を得た。
得られた反応生成物は、IR分析および 1H−NMR分析の結果から、上記化学式(1−1)で表され、特定アダマンタン基の含有率(β−CDにおける全水酸基に対するエーテル化率)が39.0%である化合物(以下、「シクロデキストリン誘導体(3)」ともいう。)であることが確認された。
また、シクロデキストリン誘導体(3)について、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって分子量および分子量分布を確認したところ、数平均分子量(Mn)は1206であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
シクロデキストリン誘導体(3)のNMRスペクトルを図5に示す。
【0091】
得られたシクロデキストリン誘導体(3)について、有機溶剤に対する溶解性について実施例1と同様の手法によって確認をした。
【0092】
シクロデキストリン誘導体(3)の有機溶剤に対する溶解性については、50mgを有機溶剤1mLに添加することによってシクロデキストリン誘導体(3)の有機溶剤に対する溶解性を確認したところ、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、テトラヒドロフラン(THF)、乳酸エチル、クロロホルムおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)には、室温(25℃)条件下において溶解し、また、アセトン、エチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)およびジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)には、室温(25℃)条件下においてその一部が溶解することが確認された。一方、エチルエーテル、n−ヘキサンおよび濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液には溶解性を有さないことが確認された。
また、シクロデキストリン誘導体(3)は、シクロデキストリン誘導体(3)50mgを水1mLに添加することにより、水には溶解性を有さないことが確認された。
【0093】
〔実施例4〕
実施例1のシクロデキストリン誘導体の合成例において、β−CDの使用量を6mmol、水酸化ナトリウムの使用量を42mmol、BMAの使用量を42mmolとすると共に、TBABの使用量を、β−CDの使用量が変更したことに応じてβ−CDの水酸基に対して5mol%となる量に変更したこと以外は当該実施例1のシクロデキストリン誘導体の合成例と同様にして反応生成物を得た。
得られた反応生成物は、IR分析および 1H−NMR分析の結果から、上記化学式(1−1)で表され、特定アダマンタン基の含有率(β−CDにおける全水酸基に対するエーテル化率)が36.9%である化合物(以下、「シクロデキストリン誘導体(4)」ともいう。)であることが確認された。
また、シクロデキストリン誘導体(4)について、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって分子量および分子量分布を確認したところ、数平均分子量(Mn)は1176であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
シクロデキストリン誘導体(4)のNMRスペクトルを図6に示す。
【0094】
〔参考例1〕
実施例1のシクロデキストリン誘導体の合成例において、β−CDの使用量を5mmol、水酸化ナトリウムの使用量を21mmol、BMAの使用量を21mmolとすると共に、TBABの使用量を、β−CDの使用量が変更したことに応じてβ−CDの水酸基に対して5mol%となる量に変更したこと以外は当該実施例1のシクロデキストリン誘導体の合成例と同様にして反応生成物4.633gを得た。なお、得られた反応生成物の質量は、NMPを含むものである。
得られた反応生成物は、IR分析および 1H−NMR分析の結果から、上記化学式(1−1)で表され、特定アダマンタン基の含有率(β−CDにおける全水酸基に対するエーテル化率)が6%である化合物(以下、「シクロデキストリン誘導体(5)」ともいう。)であることが確認された。
また、シクロデキストリン誘導体(5)について、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって分子量および分子量分布を確認したところ、数平均分子量(Mn)は866であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.29であった。
シクロデキストリン誘導体(5)のIR分析および 1H−NMR分析の結果を下記に示すと共に、IRスペクトルを図7およびNMRスペクトルを図8に示す。
【0095】
○IR(KrS,cm-1):
3355(νO−H)
2925(νC−H)
1734(νC=O)
1155,1080,1028(νC−O−C)
【0096】
1H NMR(500MHz,DMSO−d6 ,TMS)δ(ppm):
1.50−2.18(m,195.33,Hh −Hz
4.80(s,7,Ha
【0097】
得られたシクロデキストリン誘導体(5)について、熱安定および有機溶剤に対する溶解性について実施例1と同様の手法によって確認をした。
【0098】
シクロデキストリン誘導体(5)の熱安定性(耐熱性)については、 熱重量分析(TGA)によって熱安定性(耐熱性)を確認したころ、Tdi が107℃であり、Td5.2%が188℃であり、Td10.2%が191℃であることが確認された。TGAデータを図9に示す。
【0099】
シクロデキストリン誘導体(5)の有機溶剤に対する溶解性については、シクロデキストリン誘導体(5)50mgを有機溶剤1mLに添加することによってシクロデキストリン誘導体(5)の有機溶剤に対する溶解性を確認したところ、ジメチルスルホキシド、メタノール、テトラヒドロフラン、エチルアセテート、乳酸エチル、エチルエーテル、クロロホルム、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、n−ヘキサン、ジグライム、プロピレングリコールモノメチルエーテル、濃度2.38質量%の水酸化テトラメチルアンモニウムには溶解性を有さないことが確認された。
また、シクロデキストリン誘導体(5)は、シクロデキストリン誘導体(5)50mgを水1mLに添加することにより、水には室温(25℃)条件下においてその一部が溶解することが確認された。
【0100】
実施例1〜実施例4によれば、水酸化ナトリウムの使用量を調整することによって得られるシクロデキストリン誘導体の特定アダマンタン基の含有率(シクロデキストリンにおける全水酸基に対するエーテル化率)を制御することができることが確認された。なお、BMAの使用量によっては得られるシクロデキストリン誘導体の特定アダマンタン基の含有率(シクロデキストリンにおける全水酸基に対するエーテル化率)を制御することができないことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表されることを特徴とするシクロデキストリン誘導体。
【化1】


〔式中、R1 〜R3 は、それぞれ独立に水素原子または下記化学式(a)で表わされる基を示す。nは6〜8の整数である。また、複数のR1 〜R3 のうちの少なくとも1つは下記式(a)で表わされる基である。〕
【化2】


〔式中、R4 は、アルキル基を示す。〕
【請求項2】
前記化学式(a)で表わされる基の含有率が7%以上であることを特徴とする請求項1に記載のシクロデキストリン誘導体。
【請求項3】
下記化学式(2)で表わされる化合物と、下記化学式(3)で表わされる化合物とを水酸化ナトリウムの存在下において、化学式(2)で表わされる化合物における全水酸基1molに対して化学式(3)で表わされる化合物が0.1mol以上となる条件で反応させることにより、請求項1または請求項2に記載のシクロデキストリン誘導体を得ることを特徴とするシクロデキストリン誘導体の製造方法。
【化3】


〔式中、nは6〜8の整数である。〕
【化4】


〔式中、R4 はアルキル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。〕
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のシクロデキストリン誘導体を含有してなることを特徴とするレジスト材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−28744(P2013−28744A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166737(P2011−166737)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【Fターム(参考)】