説明

シクロプロパン誘導体の生成方法

式(I)のシクロプロパン誘導体の調製方法であって、式(II)のオレフィンと式:CRのカルベンとを反応容器中、銅金属または銅酸化物の存在下、場合によっては溶媒の存在下で、反応させるステップを含み、式中、RおよびRはそれぞれ独立に、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、−C(O)R、または−NRであり;R、R、R、およびRはそれぞれ独立に、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルケニル、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、−C(O)R、−NR10、−SR11、−S(O)R11、または−SO11であり、あるいはRおよびRは上記に定義された通りであり、かつRとRは一緒になって環を形成し、その環はカルボシクリル、ヘテロシクリル、芳香族またはヘテロ芳香族であり;Rは、水素、ヒドロキシ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、または−NR10であり;Rは、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、またはヘテロシクリルであり;Rは、水素、ヒドロキシ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アリール、アリールオキシ、またはヘテロアリールであり;R10は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、またはC(O)R12であり;R11は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、またはヘテロシクリルであり;R12は、水素、ヒドロキシ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アリール、またはアリールオキシであり、連続プロセスである方法。


【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、銅金属または銅酸化物を触媒として使用して、カルベンをオレフィンに付加することにより、シクロプロパン誘導体を調製する方法に関する。
【0002】
シクロプロパン誘導体は、医薬活性化合物の生成において有用な中間体である。これらは、通常はロジウムまたはパラジウム錯体などの遷移金属錯体触媒の存在下で、カルベン部分をオレフィンに付加することにより作製される。ロジウムやパラジウムなどの金属のコストが高いため、このような触媒の使用を回避する代替方法が望ましい。
【0003】
さらに、金属錯体触媒を用いたカルベン付加反応の実施には、触媒を再使用し得るように触媒を生成物から分離するステップが必要である。分離ステップを必要とせず、したがって反応を簡単に、それ故に低コストで実現し得る触媒を見出すことは望ましい。これによって、所望のシクロプロパン誘導体の生成に使用される効率的な連続プロセスが可能になるはずである。
【0004】
カルベンのオレフィンへの接触付加は、先行技術、例えばDoyleによるChem. Rev. (1986年) 86巻、919〜39頁でよく確認されている。銅、銀、および金錯体触媒が、Diaz−RequejoおよびPerezによってJ. Organometallic Chemistry (2005年) 690巻、5441〜50頁で論じられている。シクロプロパン化におけるロジウムおよび銅触媒の使用が、欧州特許出願公開第0774461A1号明細書に記載されている。別の銅錯体触媒については、JACS (1973年) 95巻:10号、3300〜3310頁に記載されている。
【0005】
カルベンは、ジアゾ化合物からNが脱離することによって発生し得る。ジアゾ化合物の合成は、十分に確立している。例えば、ジアゾメタンは、N−メチル−N−ニトロソ−p−トルエンスルホンアミドから生成してもよく、ジアゾアセテートは、グリシンエステルのニトロソ化によって生成してもよい。ジアゾ化合物の反応については、以下の参考文献に記載されている。Brueckner、Reaktionsmechanismen、3版(2004年)、Spectrum Akad. Verlag. ISBN 3−8274−1579−9;Greiss、Annalen der Chemie、1858年、106巻、123頁;およびBollinger, Tuma, L.D. Synlett (1996年) 407頁。しかし、ジアゾ化合物は潜在的に危険な化合物である。Nの脱離によって、急速な反応が引き起こされ、大量の熱および潜在的爆発をもたらし得るため、その使用には大変な注意を払わなければならない。
【0006】
連続フローリアクターの使用が、WilesおよびWattsによってEur. J. Org. Chem. (2008年) 10巻、1655〜71頁に記載されている。
【0007】
工業規模で経済的かつ実際的である、シクロプロパン誘導体の合成方法が依然として求められている。容易に入手可能な出発材料から、経済的かつ実際的であるだけでなく、安全でかつ信頼性のある方法でシクロプロパンを合成する方法が、さらに求められている。さらに、工業規模でのシクロプロパン誘導体の生成が環境に及ぼす影響を、老廃物の発生、または老廃物を処理するのに使用されるエネルギーを最小限に抑制することによって低減することが目的である。
【0008】
驚くべきことに、本発明者らは、銅金属および銅酸化物が、特定のカルベンのオレフィンへの付加において触媒効果を有することを見出した。触媒作用の程度が、公知のロジウム金属錯体触媒の使用と比べて経済的に好ましい方法を可能にすることが見出された。
【0009】
したがって、本発明は、式(I)のシクロプロパン誘導体
【化1】



の調製方法であって、式(II)のオレフィン
【化2】



と式:CRのカルベンとを反応容器中、銅金属または銅酸化物の存在下、場合によっては溶媒の存在下で、反応させるステップを含み、式中、
およびRはそれぞれ独立に、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、−C(O)R、または−NRであり;
、R、R、およびRはそれぞれ独立に、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルケニル、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、−C(O)R、−NR10、−SR11、−S(O)R11、または−SO11であり、あるいはRおよびRは上記に定義された通りであり、かつRとRは一緒になって環を形成し、その環はカルボシクリル、ヘテロシクリル、芳香族またはヘテロ芳香族であり;
は、水素、ヒドロキシ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、または−NR10であり;
は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、またはヘテロシクリルであり;
は、水素、ヒドロキシ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アリール、アリールオキシ、またはヘテロアリールであり;
10は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、またはC(O)R12であり;
11は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、またはヘテロシクリルであり;
12は、水素、ヒドロキシ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アリール、またはアリールオキシであり、
連続プロセスである、方法を提供する。
【0010】
本明細書では、C〜Cアルキルは、1個から6個の炭素原子を含むアルキル基を意味する。それは、分岐状でも直鎖状でもよい。典型的には、C〜Cアルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基である。例としては、メチルエチル、プロピル、プロピル、ブチル、ブチル、およびブチルが挙げられる。別段の指定のない限り、アルキル基は、置換されていても非置換でもよい。
【0011】
本明細書では、C〜Cアルケニルは、2個〜6個の炭素原子および少なくとも1個のC=C結合を含むアルキル基を意味する。それは、分岐していても分岐していなくてもよい。典型的には、C〜Cアルケニル基である。例としては、エテニル、プロペニル、およびブテニルが挙げられる。アルケニル基が2個以上のC=C結合を含む場合、好ましくは共役している。別段の指定のない限り、アルケニル基は、置換されていても非置換でもよいが、好ましくは非置換である。
【0012】
本明細書では、C〜Cアルコキシは、酸素原子を介して結合している上記に定義したC〜Cアルキル基を意味する。同様に、C〜Cアルコキシ基は、酸素原子を介して結合している上記に定義したC〜Cアルキル基である。
【0013】
本明細書では、アリールは、単環式、二環式、または三環式の芳香族炭化水素環系を意味する。アリールとしては、アリール基が単環式のカルボシクリル基またはヘテロシクリル基に縮合している縮合環系が挙げられる。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、およびアントラシル基が挙げられる。フェニルが好ましい。別段の指定のない限り、アリール基は、置換されていても非置換でもよい。
【0014】
本明細書では、アリールオキシは、酸素原子を介して結合している上記に定義したアリール基を意味する。
【0015】
本明細書では、ヘテロアリールは、少なくとも1つの環がO、N、およびSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、単環式、二環式、または三環式の芳香族環系を意味する。ヘテロアリールとしては、ヘテロアリール基が単環式のカルボシクリル基またはヘテロシクリル基に縮合している縮合環系が挙げられる。典型的には、いずれか1つの芳香族環に1個または2個、好ましくは1個のヘテロ原子を含む。好ましくは、単環式系である。例としては、ピリジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピロリル、フラニル、チエニル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、およびイソチアゾリルが挙げられる。チエニルおよびフラニルが特に好ましく、より好ましくはチエニルである。別段の指定のない限り、ヘテロアリール基は、置換されていても非置換でもよいが、好ましくは非置換である。
【0016】
本明細書では、カルボシクリル基は、飽和または不飽和非芳香族炭化水素環である。典型的には、3個〜7個の炭素原子を有する。好ましくは、飽和炭化水素環(すなわち、シクロアルキル基)である。好ましくは、5個または6個の炭素原子を有する。例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが挙げられる。別段の指定のない限り、カルボシクリル基は、置換されていても非置換でもよいが、好ましくは非置換である。
【0017】
本明細書では、ヘテロシクリルは、典型的には5個〜10個の炭素原子を有し、炭素原子の1個または複数、例えば1、2、または3個が、N、O、およびSから選択されるヘテロ原子で置換されている、飽和または不飽和の非芳香族単環式炭素環式環を意味する。飽和ヘテロシクリル基が好ましい。例としては、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ジオキソラニル、チアゾリジニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、ジオキサニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、およびチオキサニルが挙げられる。別段の指定のない限り、ヘテロシクリル基は、置換されていても非置換でもよいが、好ましくは非置換である。
【0018】
本明細書では、ハロゲンはフッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。好ましくは、フッ素または塩素、より好ましくは塩素である。
【0019】
基は、基の1個または複数の水素原子が異なる部分で置き換えられているとき置換されている。置換されている場合、典型的には、基は1個または2個、好ましくは1個の置換基を有する。置換基はそれ自体、さらに置換されていてはいけない。典型的な置換基は、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、−C(O)R13、または−NR14であり、ここで、R13は、水素、ヒドロキシ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アリール、またはアリールオキシであり;R14はそれぞれ独立に、水素、C〜Cアルキル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、またはヘテロシクリルである。
【0020】
溶媒は、ジアゾ化合物およびオレフィンを溶解するのに適したものから選択される。溶媒は、反応条件下で不活性であるべきである。したがって、飽和溶媒が好ましい。特に好ましい溶媒としては、ジクロロエタンおよびジクロロメタンが挙げられる。溶媒は、溶媒の混合物でもよい。基質(ジアゾ化合物およびオレフィン)が与えられた場合、当業者は、適切な溶媒を、その溶解性、および提案された溶媒中での反応に対して不活性を通法で試験することによって決定することができる。しかし、溶媒が存在しないことが好ましい。
【0021】
本明細書では、銅金属は、少なくとも90重量%のCu(O)原子を含む固体金属を意味する。Cu(O)原子は、元素状銅と定義し得る。好ましくは、金属は、少なくとも95重量%のCu(O)原子を含む。より好ましくは少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または最も好ましくは少なくとも99.5重量%のCu(O)原子を含む。好ましくは、金属は純粋、または少なくとも実質的に純粋な銅金属である。銅金属が触媒効果を有しているので、上記の反応においては、触媒をさらに必要としない。典型的には、本発明の方法では、上記の銅金属を除く触媒は使用されない。
【0022】
銅金属は、適切な任意の形態、例えば銅金属粒子、基材粒子の銅金属コーティング、反応容器内側の銅金属コーティング、または反応容器自体であり得る。上記のコーティングは、ナノ粒子の形であってもよい。
【0023】
銅金属は、当技術分野において公知である技法で塗布してもよい。例えば、反応容器の内側が銅金属でコーティングされている場合、反応容器を経由して溶融銅金属を注いでもよい。銅金属が基材粒子上に存在する場合、基材表面に銅塩、例えばCuClを被着させ、例えばNaBHまたは水素を高温で使用して、それを還元することによって、銅金属を塗布してもよい。
【0024】
本明細書では、銅酸化物は、固体CuOまたはCuOを意味する。好ましくは、銅酸化物はCuOである。銅酸化物は、適切な任意の形態、例えば銅酸化物粒子、基材粒子の銅酸化物コーティング、または反応容器内側の銅酸化物コーティングであり得る。
【0025】
銅酸化物は、当技術分野において公知である技法で塗布してもよい。例えば、銅金属は、空気中の酸素または他の酸化剤の存在下で容易に酸化させることができるので、単に酸素含有ガスを銅金属表面に流すだけで、銅酸化物を生成し得る。一例は、銅(または銅でコーティングされた)反応容器を経由して空気を流すことである。別の例は、乳酸銅の還元により、銅金属にCuO薄膜を電着させることである。
【0026】
銅金属もしくは銅酸化物粒子、または基材粒子の銅金属もしくは銅酸化物コーティングが使用される場合、前記粒子を、支持構造、例えば微細メッシュ状のかごで反応容器の内側の適切な位置に保持してもよい。粒子を支持構造内で使用する1つの利点は、リアクター全域に及ぶ圧力低下が引き起こされることである。これによって、リアクターを通過する反応混合物の流れの乱れが増大し、試薬の混合が改善される。連続プロセスは、出発材料を反応容器に連続的に添加し得、かつ生成物を反応容器から連続的に抜き取り得るプロセスを意味する。物質の添加と抜き取りとの比は、反応体積を特定のレベルで維持するものである。言い換えれば、連続反応は、反応体積の定常状態が実現されている反応である。例えば、式(II)のオレフィンを連続的に添加し得、かつ式(I)のシクロプロパン誘導体を反応容器から連続的に抜き取り得る。したがって、連続プロセスはバッチプロセスとは異なる。連続プロセスは、1つまたは複数のフィード流の反応容器への添加、および生成物流の反応容器空の抜き取りを伴うものである。生成物流には、少なくとも所望の生成物、例えば式(I)のシクロプロパン誘導体が含まれる。
【0027】
反応容器は、独特の装置または装置の一部分を意味し、定義された反応がその中で行われるものである。
【0028】
式:CRのカルベンは、式NCRのジアゾ化合物(式中、RおよびRは上記に定義された通りである)から現場で発生されることが好ましい。このプロセスでは、Nが発生する。現場での発生とは、カルベンのオレフィンへの付加が行われる反応容器中での発生を意味する。このプロセスの出発材料はジアゾ化合物であり、反応種はカルベン化合物である。
【0029】
式NCRのジアゾ化合物と式(II)のオレフィンとの合成方法は、先行技術で直接にまたは直接記載される合成との類似性によって教示されている。
【0030】
典型的には、RおよびRはそれぞれ独立に、水素、C〜Cアルキル、−C(O)R、または−NRである。好ましくは、RおよびRはそれぞれ独立に、水素、−C(O)R、または−NRである。より好ましくは、RおよびRはそれぞれ独立に、水素、−C(O)R、または−NRであり、ここでRはヒドロキシまたはC〜Cアルコキシ(好ましくは、メチルまたはエチル)であり、Rはそれぞれ、水素である。RおよびRの一方が−NRであるとき、RおよびRの他方は水素であることが好ましい。RおよびRがそれぞれ、−COMeである;RおよびRがそれぞれ、−COEtである;Rは−COMeであり、RはHである;Rは−COMeであり、RはHである;Rは−NHであり、RはHである、組合せが特に好ましい。
【0031】
典型的には、R、R、R、およびRはそれぞれ独立に、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、カルボシクリル、またはヘテロシクリルであり、あるいはRおよびRは上記に定義された通りであり、かつRおよびRは一緒になって環を形成し、その環はカルボシクリル、ヘテロシクリル、芳香族またはヘテロ芳香族である。RおよびRが一緒になって環を形成することが好ましい。
【0032】
およびRが環を形成するとき、環は芳香族またはヘテロ芳香族であることが好ましい。より好ましくは、ヘテロ芳香族、例えばフランまたはチオフェンであり、最も好ましくはチオフェンである。RおよびRが環を形成するとき、RおよびRはそれぞれ、好ましくは水素またはC〜Cアルキルであり、最も好ましくは水素である。最も好ましくは、式(II)のオレフィンはチオフェンである。
【0033】
およびRが環を形成しないとき、典型的にはR、R、R、およびRはそれぞれ独立に、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、アリールまたはヘテロアリールである。好ましくは、R、R、R、およびRはそれぞれ、水素、C〜Cアルケニル、またはアリールである。より好ましくは、Rは、水素、C〜Cアルケニル、またはアリールであり、R、R、およびRはそれぞれ、水素である。さらにより好ましくは、Rは、水素、エテニル、またはフェニルであり、R、R、およびRはそれぞれ、水素である。
【0034】
は、典型的にはヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、またはアリールオキシである。好ましくは、RはヒドロキシまたはC〜Cアルコキシである。より好ましくは、Rは、ヒドロキシ、メトキシ、またはエトキシである。
【0035】
はそれぞれ、典型的には水素またはC〜Cアルキルである。好ましくは、所与の窒素原子の少なくとも1つのRは水素である。より好ましくは、所与の窒素原子のRは両方とも水素である。
【0036】
は、典型的にはヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、またはアリールオキシである。好ましくは、RはヒドロキシまたはC〜Cアルコキシである。より好ましくは、Rは、ヒドロキシ、メトキシ、またはエトキシである。
【0037】
10はそれぞれ、典型的には水素またはC〜Cアルキルである。好ましくは、所与の窒素原子の少なくとも1つのR10は水素である。より好ましくは、所与の窒素原子のR10は両方とも水素である。
【0038】
11は、典型的には水素、C〜Cアルキル、またはアリールである。好ましくは、R11は、水素、C〜Cアルキル、例えばメチルもしくはエチル、またはフェニルである。
【0039】
12は、典型的にはヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、またはアリールオキシである。好ましくは、R12は、ヒドロキシ、またはC〜Cアルコキシ、例えばメトキシもしくはエトキシである。
【0040】
本発明の一実施形態において、本方法をさらに単純化し、したがって方法のコストを低減するために、上述する銅金属を反応容器の一部分としてもよい。これによって、別個の触媒材料を反応容器に添加し、生成物流から分離する必要がなくなる。それに応じて、本発明の方法は、典型的には反応容器中で実施され、その反応容器の内面の一部分は銅金属である。好ましくは、前記反応容器の内面は、実質的に、好ましくは完全に銅金属である。より好ましくは、前記反応容器はそれ自体が銅金属である。反応容器は、その最も単純な形態として銅管であってもよい。
【0041】
反応容器の内面の一部分とは、任意の量を意味する。しかし、好ましい量は、反応容器中の反応混合物の体積に対する銅表面積という体積に対する表面積の比で定義し得る。内径Dmmの管では、これは、(Dπ)/[(D/2)π)mm/mmである。例えば、内径1mmの管では、その比は4mm/mmまたは4000m/mである。典型的には、反応容器中の反応混合物の体積当たりの銅表面積は、少なくとも500m/mである。好ましくは、少なくとも1000m/mである。銅金属が必ずしも反応容器の内面の一部分でない本発明の実施形態においても、反応容器中の反応混合物の体積当たりの銅表面積は、典型的には少なくとも500m/m、好ましくは少なくとも1000m/mである。
【0042】
前述のように、Nがジアゾ化合物から脱離して、カルベンが生じると、大量の熱および潜在的な爆発がもたらされ得る。カルベンはそれ自体、非常に反応性が高く、その反応エネルギーを急速に放出し、反応混合物の温度の急速な上昇を引き起こす。このような反応は、例えば低温またはカルベンの低希釈によって制御されない限り、「暴走」し、または生成物の選択性を失う可能性がある。したがって、ジアゾ化合物の反応を取り扱う際には大変な注意を払わなければならない。本発明の好ましい方法では、ジアゾ化合物をカルベンに変換し、次いで単離することなく、オレフィンに付加して、シクロプロパン誘導体を生成する。したがって、本発明の反応は、反応「暴走」爆発のリスクを最小限に抑制する状態および機器を使用して実施されることが好ましい。典型的には、本発明の反応は反応容器中で実施され、その反応容器はマイクロリアクターである。
【0043】
本明細書では、マイクロリアクターはマイクロまたはミニリアクターを意味する。これらはそれぞれ、通常のサイズのリアクターとは反応チャネル構造の寸法および構成が異なるだけである。
【0044】
本明細書では、マイクロリアクターは、特徴的寸法(チャネル幅および深さ、またはプレート幅)がマイクロメートルからミリメートルの小型化リアクターである。特徴的寸法は、マイクロリアクターを通る反応混合物の流れと直角をなす寸法である。典型的には、特徴的寸法は20mm以下である。特徴的寸法は、好ましくは0.01mm〜10mm、より好ましくは0.5〜2mmである。
【0045】
いくつかのマイクロリアクターを並列に組み合わせて、微細構造リアクターを形成してもよい。したがって、反応に利用可能な容積は、マイクロリアクターの直径および長さによって決まり、微細構造リアクターが使用される場合、並列チャネルの寸法および並列チャネルの数によって決まる。マイクロリアクターまたは微細構造リアクターの全容積は、典型的には1ml〜1m、好ましくは10ml〜50リットルの範囲にある。
【0046】
好ましくは、マイクロリアクターは、水力直径20mm以下のチャネルを有するリアクターと定義される。水力直径Dは、4A/Uと定義され、式中、Aはリアクターチャネルの断面積であり、Uは前記断面の周囲長である。水力直径は、より好ましくは0.01mm〜10mm、さらにより好ましくは0.5〜2mmである。
【0047】
丸い管では、水力直径Dは管の直径に等しい。長方形の断面を有する長方形の管では、水力直径は4LW/2(L+W)に等しく、式中、Lは長方形の最長の辺の長さであり、Wは長方形の幅である。正方形の管という特殊な場合では、水力直径DはLに等しい。環形では、水力直径は、D=(4.0.25π(D−D))/π(D−D)=D−Dであり、式中、Dは環形の外径であり、Dは内径である。しかし、一般式4A/U(式中、Aはリアクターチャネルの積であり、Uは前記断面の周囲長である)によって、任意の形状のリアクターチャネルについて水力直径の算出が可能になることに留意されたい。
【0048】
本発明の方法で使用されるマイクロリアクターは、連続プロセスに適している。本発明による方法で使用される反応装置は、フィード流を受ける流路および生成物流を放出する流路を別々に備えた小型化リアクターを含む。
【0049】
マイクロリアクターは、反応物質が入り、連続的に流動することを可能にするデバイスからなる。反応物質はデバイス中で互いに接触し、化学反応がチャネルまたは2枚のプレート間のような限られた狭い空間で起こることが可能になる。マイクロリアクターの1つ(プレートの場合)または2つ(チャネルまたは溝の場合)の寸法は、熱移動および/または物質移動の特徴的時間が非常に短くなるように選択される。したがって、高速の反応および熱移動を制御された形で取り扱うことができる。熱は、反応物質または生成物と接触しない熱移動流体に移動し、または熱移動流体から移動する。
【0050】
いくつかのマイクロリアクターを並列に組み合わせて、微細構造リアクターを形成してもよい。入ってくる反応物質は、個々のマイクロリアクターへのマニホールドシステムまたは他の分配システムに分配される。微細構造リアクターはそれぞれ、入ってくる反応物質および/または反応媒体を混合するための混合域を備えてもよい。微細構造リアクターはそれぞれ、反応媒体が十分に変換することを可能にするための滞留域を備えてもよい。微細構造リアクターは、十分な生成能力を得るためにナンバリングアップの概念によりいくつかの並列サブユニット(混合域および滞留域)で構築してもよく、またはそれらを備えてもよい。一例は、例えば多チャネルモノリス型リアクターである。
【0051】
マイクロリアクター、マイクロミキサー、マイクロ熱交換器は、例えばドイツ(すなわち:IMM、Mainz、およびForschungszentrum Karlsruhe)および米国(すなわち:MITおよびDuPont)で開発されている。
【0052】
本発明の方法は、例えばモノリス型リアクター、HEXリアクター、またはプリント回路熱交換リアクターなどの多チャネル微細構造リアクターで行われることが好ましい。チャネルの水力直径は、好ましくは0.01〜10mm、より好ましくは0.1〜1mmである。液体の流れは、一相系でも多相系でもよい。チャネルの長さは、所望の滞留時間によって決まり、例えば0.01秒〜1000秒、好ましくは1秒〜100秒まで変わり得る。
【0053】
好ましくは、マクロリアクターの内面は実質的に、好ましくは完全に銅金属である。より好ましくは、マイクロリアクター自体が銅金属である。
【0054】
マイクロリアクターは、高い物質移動および高い熱移動能を反応にもたらす。プロセスをマイクロリアクターで実施することによって、安全性の懸念が低減され、危険な状態の存在が最小限に抑制される。爆発の危険が無くなり、または少なくとも爆発のリスクが劇的に低減される。実際、マイクロリアクターを使用する1つの利点は、より厳しい条件、例えばより高い温度およびより高い濃度の試薬の使用が可能になることである。これによって、反応収率が上がり、例えば以前から公知のより効率的なロジウム錯体触媒より効率的でない触媒の使用が経済的に実行可能になる。
【0055】
銅で作製されるマイクロリアクターの利点は、マイクロリアクターの製造コストである。このようなデバイスは完全に1つの材料で作製されるので、より単純である。さらに、銅は、機械加工が容易でかつ化学エッチングが容易である材料であり、したがってデバイスを容易にかつ比較的低コストで製造し得る。銅はそれ自体、低コスト原材料である。
【0056】
カルベンは反応性の高い種であり、事実上すべて、寿命が1秒を下回るものである。シクロプロパン誘導体が生成されるカルベンとオレフィンとの反応は、望ましくない副反応であるカルベンの二量化と競合して起こる。カルベンの二量化の機会を低減するために、通常は、カルベンを発生させるジアゾ化合物を低濃度で用いて反応を実施する。溶媒中のジアゾ化合物の典型的な濃度は、0.5〜5重量%、好ましくは1から2重量%である。それに応じて、反応を実施するのに大量の溶媒が必要となるはずである。したがって、溶媒が存在する本方法においては、無駄を省くために、溶媒をリサイクルことが好ましい。これは、溶媒の一部分を生成物流から分離し、分離された溶媒にジアゾ化合物を添加し、溶媒中のジアゾ化合物を、反応容器中、フィード流にフィードすることを意味する。溶媒は、典型的には当技術分野において公知である方法により蒸留で生成物から分離される。
【0057】
好適な溶媒は、本発明のシクロプロパン化反応に干渉しないもの、例えば飽和溶媒である。好ましい溶媒を当業者が選択することができる。
【0058】
さらに、オレフィンに付加させて、シクロプロパン誘導体を生成させる速度を上げるには、ジアゾ化合物と比べてオレフィンのモル割合が高いことが好ましい。それに応じて、生成物流には未反応のオレフィンが含まれることになる。したがって、無駄を省くために、溶媒のリサイクルと同じ理由で、未反応のオレフィンをリサイクルことが好ましい。これは、未反応のオレフィンを生成物流から分離し、未反応のオレフィンを反応容器に戻すことを意味する。オレフィンは、典型的には当技術分野において公知である方法により蒸留で生成物から分離される。
【0059】
好ましくは、ジアゾ化合物はオレフィンに可溶である。この場合、反応では、溶媒は必要でない。当業者は、所与のジアゾ化合物が所与のオレフィンに可溶であるかどうかを、ルーチンの実験で判断することができる。例は、チオフェンに溶解するジアゾ酢酸エチルである。このような方法の利点は、他の溶媒を必要としないことである。したがって、無駄になる溶媒または式(II)のオレフィンはほとんどなく、または好ましくは全くない。というのは、リサイクルすることができ、試薬としてカルベンと反応させることができるからである。言い換えれば、溶媒を存在させないことが好ましい。
【0060】
上述されたように、式NCRのジアゾ化合物は、当技術分野において公知である方法で作製してもよい。一般にジアゾ化合物の使用に伴う1つの危険は、Nの脱離によって、極めて発熱的で爆発的な反応でジアゾ化合物が分解する可能性があることである。したがって、ジアゾ化合物の貯蔵および輸送を最小限に抑制することが望ましい。このようにする1つの方法は、ジアゾ化合物が必要とされる直前に調製することによるものである。本発明の一実施形態において、ジアゾ化合物はそれ自体、連続プロセスで生成される。好ましくは、本発明の方法は、式NCRのジアゾ化合物を連続プロセスで生成し、かつ式(I)のシクロプロパンを連続的に調製するステップを含む。言い換えれば、ジアゾ化合物の出発材料から式(I)のシクロプロパン誘導体への連続プロセスがある。このプロセスは、ジアゾ化合物を生成し、ジアゾ化合物をカルベンによってオレフィンと反応させて、シクロプロパン誘導体を得るものである。
【0061】
ジアゾ化合物の生成は、典型的には複数のステップを必要とするものである。好ましいジアゾ化合物は、ジアゾ酢酸エチル(NCHCOEt)である。その調製は、典型的にはi)チオフェンを含む水に、グリシンエステル塩を溶解し、ii)水にとかしたNaNOを添加し、その後に続いてiii)硫酸を添加して、ジアゾ移動をもたらすものである。これらの3つのステップは連続的に実施されてもよい。式(II)のオレフィンとの連続反応用の反応容器に、生成されたジアゾ酢酸エチルをフィード流として連続的に供給してもよい。
【0062】
完全連続反応を使用する利点は、使い易さ、プロセスの全効率、および潜在的に爆発性の材料の貯蔵および輸送が回避されることである。
【0063】
ジアゾ化合物を使用する別の問題点は、その生成に使用される反応が、典型的には極めて発熱性のステップ、例えばジアゾ移動を伴うものであるが、これらの反応は、通常の反応容器中で、したがって低温で実施されることである。例えば、ジアゾ酢酸エチルのジアゾ移動による合成は、通常は−23℃で実施される。この反応のジアゾ移動が、急速な熱移動による、より高い温度で操作することができる環境で実施される場合、制御された安全な形で反応速度を増大することができる。
【0064】
発生した熱を急速に消散させることができる環境を、マイクロリアクターによって実現することができる。したがって、式NCRのジアゾ化合物は、少なくとも1つのマイクロリアクターを利用するプロセスで生成させることが好ましい。式NCRのジアゾ化合物は、ジアゾ移動を伴うプロセスで生成させることが好ましい。式NCRのジアゾ化合物がジアゾ移動を伴うプロセスで生成される場合、少なくともこのステップをマイクロリアクターで実施することが好ましい。ジアゾ化合物合成におけるすべてのステップは、マイクロリアクターまたは一連のマイクロリアクターで実施することがより好ましい。
【0065】
ジアゾ化合物を生成する際に使用するのに適したマイクロリアクターは、それが銅金属を含むという要件がない点以外は、上述された通りである。
【0066】
したがって、本発明は、一連の2つ以上のマイクロリアクターで実施されてもよい。反応系は、2つ以上の連続マイクロリアクターではなく、2つ以上の連続微細構造リアクターを代わりに備えることが可能であることが理解されよう。
【0067】
一実施形態において、本発明の方法のすべてのステップは、反応性の高いまたは有害な中間体の停滞が少なく、方法を安全に実施することができるように、一続きのマイクロリアクターで実施される。このようなプロセスの別の利点は、不安定な中間体の直接変換の結果として生産性または収率が改善されることである。
【0068】
典型的には、本発明の方法において、カルベンのオレフィンへの付加は50〜300℃、好ましくは100〜200℃の温度で実施される。
【0069】
典型的には、本発明の方法において、カルベンのオレフィンへの付加は、大気圧から150バール、好ましくは100バールの圧力で実施される。
【0070】
典型的には、本発明の方法において、カルベンのオレフィンへの付加は、滞留時間0.5秒〜20分間、好ましくは1秒〜10分間、より好ましくは5秒〜5分間、さらにより好ましくは10秒〜3分間で実施される。滞留時間は、反応混合物が反応容器中で過ごすのに費やした平均時間である。連続プロセスにおいては、反応混合物が反応容器を流動するので、これを、反応混合物が反応容器を通過するのに要する時間として測定することができる。
【0071】
典型的には、本発明の方法において、カルベンのオレフィンへの付加は、溶媒中のジアゾ化合物の濃度が0.5〜5重量%、好ましくは1〜2重量%で実施される。オレフィンの濃度は、典型的にはジアゾ化合物の濃度より高く、例えば典型的には0.5〜5重量%、好ましくは1〜2重量%である。好ましくは、オレフィンは無溶媒で使用される。オレフィンとジアゾ化合物の相対濃度は、フィード流中におけるリアクターに供給される各成分の量で決まるものである。典型的には、式(II)のオレフィンと式NCRのジアゾ化合物のモル比は、1〜20、好ましくは2〜10、より好ましくは3〜5である。
【0072】
本発明の好ましい実施形態は、上述されたプロセスであり、式(I)のシクロプロパン誘導体は、式(I’)のシクロプロパン誘導体
【化3】



であり、式中、R、R、およびRは上述された通りである。
【0073】
本発明の特に好ましい実施形態は、上述されたプロセスであり、式(I)のシクロプロパン誘導体は、式(Ia)のシクロプロパン誘導体
【化4】



であり、式(II)のオレフィンはチオフェンであり、式:CRのカルベンはエトキシカルボニルカルベン(:CHCOEt)であり、式NCRのジアゾ化合物はジアゾ酢酸エチル(NCHCOEt)である。
【0074】
式(Ia)のシクロプロパン誘導体は、立体異性体(steroismers)(Ib)〜(Ie)を有する。
【化5】



【0075】
本発明の方法で生成された式(Ia)のシクロプロパン誘導体の主な立体異性体は、(Ib)および(Ic)である。化合物(Ib)が特に好ましい。式(Ib)または(Ic)のシクロプロパン誘導体は、(Ia)の生成された他の立体異性体から単離されてもよい。単離は、通常の技法で実施されてもよい。本発明の好ましい実施形態は、上記に定義したプロセスであり、(Ib)のシクロプロパン誘導体
【化6】



を式(Ia)のシクロプロパン誘導体から単離するステップをさらに含む。
【0076】
本発明の好ましい実施形態は、式(Ia)のシクロプロパン誘導体
【化7】



の調製方法であって、チオフェンと、ジアゾ酢酸エチル(NCHCOEt)から現場で発生させたCHCOEtとを銅金属マイクロリアクター中で反応させ、式(Ia)のシクロプロパン誘導体を連続して調製するステップを含み、ここで、チオフェンは溶媒として働き、リサイクルされ、ジアゾ酢酸エチルは、少なくとも1つのマイクロリアクターを利用して連続プロセスで生成される、方法である。好ましくは、方法は、(Ib)のシクロプロパン誘導体
【化8】



を式(Ia)のシクロプロパン誘導体から単離するステップをさらに含む。
【0077】
本発明のもう1つの好ましい実施形態は、上述されたプロセスであり、式(Ib)のシクロプロパン誘導体とヒドロキシド供与体とを反応させて、式(III)の化合物
【化9】



を生成するステップをさらに含む。
【0078】
以下の実施例は、本発明の例示であり、限定するものではない。
【0079】
[実施例]
[調製例1]
[トシルアジドの合成」
200mlの水にとかした35g(0.5モル)のアジ化ナトリウムの溶液を2リットルのエルレンマイヤーフラスコに加え、400mlの90%含水エタノールで希釈した。撹拌しながら、この溶液に、1リットルの99%エタノールにとかした96g(0.50モル)の塩化p−トルエンスルホニルの温かい(45℃)溶液を添加した。添加時に、塩化ナトリウムが分離した。反応混合物を室温で2.5時間撹拌した。ロータリーエバポレーターを用いて、溶媒の大部分を35℃(15mm)で除去する。分液漏斗中で、残渣と1.2リットルの水を混合すると、油状のp−トルエンスルホニルアジドが分離した。この油を100mlずつの水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。吸引濾過によって、50g(塩化p−トルエンスルホニルに基づいて60%)の純粋で無色のp−トルエンスルホニルアジドが得られ、5°で放置すると完全に結晶化した。
【0080】
[調製例2]
[ジアゾマロン酸ジメチルの合成]
9.9g(0.075モル)のマロン酸ジメチル、50mlの無水アセトニトリル、および7.6g(0.075モル)のトリエチルアミン(沸点88.5〜90.5℃)を、滴下漏斗、還流冷却器、およびメカニカルスターラ(Rushton)を備えた300mlの2重ジャケット付きフラスコに添加した。混合物の温度を20℃に調整し、激しく撹拌しながら、50mlのCHCN中14.8g(0.075モル)のp−トルエンスルホニルアジドを15分間かけて滴下する。添加すると、反応混合物が38〜40℃に温まり、黄色を帯びる。混合物を室温で2.5時間撹拌した後、溶媒を35℃(12mm)で蒸発させた。部分的に結晶質の残渣を100mlのエーテルで粉末にし、不溶性の残渣を含めて、混合物を500mlの分液漏斗に移した。混合物を50mlの水酸化カリウム(2N)溶液および50mlの水酸化カリウム(0.5N)溶液で連続的に洗浄した。黄橙色エーテル相を無水硫酸ナトリウムで無水にし、残渣が恒量に至るまで、溶媒を35°(15mm)で蒸発させた。黄橙色ジアゾエステルの重量は5gであった。生成物をHNMR分光法でチェックし、純度約90%であることがわかった。
【0081】
[調製例3]
[マイクロリアクターでのジアゾ酢酸エチル(EDA)の合成]
10%グリシンエステル塩溶液、10%NaNO溶液、および5%HSO溶液をそれぞれ、冷水中で調製した。最初に、グリシンエステル溶液(10%)およびチオフェンをSS316 T−ミキサーで混合した。この2相の混合物に、第2のT−ミキサーでNaNO(10%)を混合した。この混合物に、第3のT−ミキサーで5%HSOを混合した。次いで、内径1.27mmおよび容積8mlのSS316(ステンレス鋼)管状マイクロリアクターに、反応混合物を通した。氷水浴を使用して、マイクロリアクターの温度を5℃に設定した。化学物質はすべて、HPLCポンプを使用して投入した。生成物を5%NaHCO溶液で回収した。水およびチオフェンを含有する2相の反応混合物を分別し、GCを用いて、有機相を分析した。NaNO/グリシンエステル塩のモル比は1.2であった。HSO/グリシンエステル塩のモル比は0.06であった。チオフェン/グリシン溶液の体積比は3であった。滞留時間は1分であった。収率は70%であった。
【0082】
[比較例1]
アクリル酸ブチルとジアゾマロン酸ジメチルの反応をモル比10で、冷却器を装備したバッチ式リアクター中で実施した。様々な条件を試験し、結果を以下に示す。GC MSおよびNMRを使用して、分析を実施した。(DCE=ジクロロエタン)
【0083】
【表1】



【0084】
[比較例2]
ジクロロエタン(DCE)中1mmolのジアゾマロン酸ジエチル(DEDM)に、110℃で10mmolのスチレンを添加した。銅管の銅金属小片を切り取り、反応混合物に添加した。ジアゾマロン酸ジエチルを滴下しなかった。所望の生成物を、良好な収率(50%)で生成した。生成物のHNMRを、アルドリッチ(Aldrich)から供給される市販の試料のHNMRと比較する。H−NMR(CDCl,300MHz):δ=0,84(t,3H,CH);1,30(t,3H,CH);1,71(m,1H)、2,19(m,1H)、3,22(m,1H);3,83(m,2H,CH)、4,25(m,2H,CH);7,26(m,5H,Phe)。
【0085】
[実施例1]
DCE中50%スチレン溶液と4%DEDM溶液を必要とされた比で、T−ミキサー中で混合した。内径1.65mmおよび容積8.6mlのスプリング式銅の管をリアクターとして使用した(触媒としても働く)。リアクターを油浴に入れ、温度を120〜220℃の間で変えた。
【0086】
【表2】



【0087】
【表3】



【0088】
[比較例3]
トルエン中25%スチレン溶液と4%DEDM溶液を必要とされた比で、ステンレス鋼T−ミキサー中で一緒に混合した。内径1.27mmおよび容積4.28mlのスプリング式ステンレス鋼の管をリアクターとして使用した。リアクターを油浴に入れ、温度を160〜220℃の間で変えた。
【0089】
【表4】



【0090】
容積8.5mlのステンレス鋼リアクターを使用して、上記の反応を繰り返した。
【0091】
【表5】



【0092】
[実施例2]
溶媒としてトルエンを使用し、同じ銅管を使用したが、2か月の非使用期間後であった点以外は、実施例1の手順を繰り返した。
【0093】
トルエン中25%スチレン溶液および4%DEDM溶液を必要とされた比で、T−ミキサー中で一緒に混合した。内径1.65mmおよび容積8.6mlの同じ銅管を、上記のようにリアクターとして使用した。
【0094】
【表6】



【0095】
結果から、数回使用した後の銅管は、まだ以前と同じように作動するように見える。
【0096】
[実施例3]
溶媒としてトルエンを使用した点以外は、実施例1の手順を繰り返した。反応中に、ジアゾマロネートは分解し、Nガスを生成し、これがリアクターの一定の容積を占有する。したがって、実際の滞留時間(RT)は、測定された時間より短い。DEDMの濃度ならびに反応の圧力および温度から、理想気体の法則(PV=nRT)を用いて、実際の滞留時間を算出した。
【0097】
【表7】



【0098】
[実施例4]
溶媒としてトルエンを使用した点以外は、実施例1の手順を繰り返した。実際の滞留時間は、実施例3と同様にして算出した。
【0099】
【表8】



【0100】
[実施例5]
溶媒としてトルエンを使用した点以外は、実施例1の手順を繰り返した。実際の滞留時間は、実施例3と同様にして算出した。
【0101】
【表9】



【0102】
[実施例6]
ジアゾ酢酸エチル(EDA;1重量%)のチオフェン溶液を調製した。溶液を、しばらく撹拌することによってまたは振盪することによって十分に混合した。次いで、HPLCポンプを使用して、一定の温度で油浴中に入れた内径1.65mmで容積4mlのスプリング式銅管を経由して、溶液をポンプで送り込んだ。流量を調整することによって、反応の滞留時間を制御した。反応混合物は、リアクターを通過した後、ステンレス鋼管を通過して、冷却された。圧力制御デバイスを使用して、リアクターにおける圧力を25バールに維持した。試料をガラスビンに回収し、GCで分析した。
【0103】
【表10】



【0104】
[実施例7]
容積8.5mlの銅管を使用した点以外は、実施例1の手順を繰り返した。
【0105】
【表11】



【0106】
[比較例4]
以下の温度で油浴中に入れられた丸底フラスコ中の3mlのチオフェンに、以下の触媒を添加した。触媒を入れたフラスコに、撹拌しながら2mlのチオフェン中1mmolのEDAの溶液を1時間かけて滴下した(下記の表を参照のこと)。次いで、試料を取り出し、GCで分析した。
【0107】
【表12】



【0108】
[実施例8]
ジアゾ酢酸エチル(EDA)のチオフェン溶液を調製した。溶液を、しばらく撹拌することによってまたは振盪することによって十分に混合した。次いで、HPLCポンプを使用して、平均直径250μmの銅粒子が入っている内径2.1mmおよび長さ25cmの充填管リアクターを経由して、溶液をポンプで送り込んだ。充填管リアクターを、一定の温度で油浴に入れた。流量を調整することによって、反応の滞留時間を制御した。反応混合物は、リアクターを通過した後、ステンレス鋼管を通過して、冷却された。圧力制御デバイスを使用して、リアクターにおける圧力を25バールに維持した。試料をガラスビンに回収し、ガスクロマトグラフィーで分析した。
【0109】
【表13】



【0110】
【表14】



【0111】
[実施例9]
5重量%のEDA溶液、および3.5重量%の平均直径150μmの銅粒子と平均直径300μmのAl(不活性材料)との混合物を使用した点以外は、実施例8の方法を繰り返した。
【0112】
【表15】



【0113】
[実施例10]
2重量%のEDA溶液、および3.5重量%の直径50から150μmのCuO粒子と平均直径300μmのAl(不活性材料)との混合物を使用した点以外は、実施例8の方法を繰り返した。
【0114】
【表16】



【0115】
[比較例5]
銅粒子が存在していない点以外は、実施例9の方法を繰り返した。所望のシクロプロピル生成物が生成しなかった。ダイマーしか認められなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のシクロプロパン誘導体
【化1】



の調製方法であって、式(II)のオレフィン
【化2】



と、式:CRのカルベンとを反応容器中、銅金属または銅酸化物の存在下、場合によっては溶媒の存在下で、反応させるステップを含み、式中、
およびRはそれぞれ独立に、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、−C(O)R、または−NRであり;
、R、R、およびRはそれぞれ独立に、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルケニル、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、−C(O)R、−NR10、−SR11、−S(O)R11、または−SO11であり、あるいは
およびRは上記に定義された通りであり、かつRとRは一緒になって環を形成し、その環はカルボシクリル、ヘテロシクリル、芳香族またはヘテロ芳香族であり;
は、水素、ヒドロキシ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、または−NR10であり;
は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、またはヘテロシクリルであり;
は、水素、ヒドロキシ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アリール、アリールオキシ、またはヘテロアリールであり;
10は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、ヘテロシクリル、またはC(O)R12であり;
11は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、またはヘテロシクリルであり;
12は、水素、ヒドロキシ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、アリール、またはアリールオキシであり、連続プロセスである方法。
【請求項2】
前記反応容器の内面の一部分が銅金属である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応容器がマイクロリアクターである、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
溶媒が存在し、前記溶媒がリサイクルされる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
溶媒が存在しない、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
式(II)の未反応のオレフィンがリサイクルされる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
式NCRのジアゾ化合物から、前記カルベンを現場で発生させるステップを含み、式中、RおよびRは請求項1に定義された通りである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
式NCRの前記ジアゾ化合物を連続プロセスで生成し、式(I)の前記シクロプロパン誘導体を連続して調製するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
式NCRの前記ジアゾ化合物が、少なくとも1つのマイクロリアクターを利用するプロセスで生成される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式(I)の前記シクロプロパン誘導体が、式(I’)のシクロプロパン誘導体
【化3】



であり、式中、R、R、およびRは請求項1に定義された通りである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
式(I)の前記シクロプロパン誘導体が、式(Ia)のシクロプロパン誘導体
【化4】



であり、式(II)の前記オレフィンがチオフェンであり、式:CRの前記カルベンがエトキシカルボニルカルベン(:CHCOEt)であり、式NCRの前記ジアゾ化合物がジアゾ酢酸エチル(NCHCOEt)である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
式(Ia)の前記シクロプロパン誘導体から、(Ib)のシクロプロパン誘導体
【化5】



を単離するステップをさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
式(Ia)のシクロプロパン誘導体
【化6】



を調製する方法であって、チオフェンと、ジアゾ酢酸エチル(NCHCOEt)から現場で発生させたCHCOEtとを銅金属マイクロリアクター中で反応させ、式(Ia)の前記シクロプロパン誘導体を連続して調製するステップを含み、
前記チオフェンは、リサイクルされ、前記ジアゾ酢酸エチルは、少なくとも1つのマイクロリアクターを利用した連続プロセスで生成される、方法。
【請求項14】
式(Ia)の前記シクロプロパン誘導体から、(Ib)のシクロプロパン誘導体
【化7】



を単離するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
式(Ib)の前記シクロプロパン誘導体とヒドロキシド供与体とを反応させて、式(III)の化合物
【化8】



を生成するステップをさらに含む、請求項12または請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2012−508721(P2012−508721A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536017(P2011−536017)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065075
【国際公開番号】WO2010/055106
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(505326209)ディーエスエム ファイン ケミカルズ オーストリア エヌエフジー ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー (13)
【Fターム(参考)】