説明

シクロヘキシレン基を含むポリマーおよび負の光学的分散を有するフィルムにおけるポリマーの使用

【課題】シクロヘキシレン基を含むポリマーおよび負の光学的分散を有するフィルムにおけるポリマーの使用を提供する。
【解決手段】本発明は、負の光学的分散を有する複屈折フィルムにおける使用に特に適切で、シクロヘキシレン基を含む新規なポリマーと、それらを含む新規な配合物およびポリマーフィルムと、光学的、電気光学的、電子的、半導体または発光部品または装置における該ポリマー、配合物およびフィルムの使用とに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負の光学的分散を有する複屈折フィルムにおける使用に特に適切で、シクロヘキシレン基を含む新規なポリマーと、それらを含む新規な配合物およびポリマーフィルムと、光学的、電気光学的、電子的、半導体または発光部品または装置における該ポリマー、配合物およびフィルムの使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
負の光学的リターデーション分散を示す異方性光学的フィルムに対する要求がある。例えば、負の分散の複屈折材料で作製された1/4波長フィルムは大部分が色消しとなる。そのような1/4波長フィルムを利用する反射型LCDなどの装置は、着色されていない暗状態を有することとなる。現在のところ、この効果を達成するために、そのような装置は2枚の位相差フィルムを使用しなければならない。
【0003】
そのような負の分散の複屈折フィルムの分散能は多くの方法で決定できるが、しかしながら、1つの一般的な方法は、450nmにおける光学的リターデーションを測定し、これを550nmにおいて測定される光学的リターデーションによって除する(R450/R550)ことである。負のリターデーション分散フィルムの軸上リターデーションが550nmにおいて137.5nmであり、R450/R550の値が0.82の場合、可視光の全ての波長に対して、そのようなフィルムは大部分が1/4波長フィルムとなり、このフィルムを例えば円偏光子として使用する液晶ディスプレイ装置(LCD:liquid crystal display)は、実質的に黒色の外観を有することとなる。一方、軸上が137.5nmで作製されたフィルムが通常の正の分散(典型的には、R450/R550=1.13)を有すると、1つの波長(550nm)に対してのみ1/4波長フィルムとなり、このフィルムを例えば円偏光子として使用するLCD装置は、紫色の外観を有することとなる。この情報を表すもう一つの方法は、複屈折における変化を波長の関数としてプロットすることである。図1に、商業的に入手可能な反応性メソゲンRM257(メルク社、ダルムスタット市、ドイツ国)より作製され重合されたフィルムについて、波長に対する典型的な複屈折のプロットを示す。この化合物についてR450/R550は、ほぼ1.115である。
【0004】
棒形状で光学的に異方性の分子より形成される異方性の光学的フィルムにおいて、リターデーション分散の原因は、異方性分子の2つの屈折率n、n(ただし、nは長分子軸に平行な方向における「異常屈折率」であり、nは長分子軸に垂直な方向における「通常屈折率」である)が波長により異なる割合で変化し、可視波長スペクトルの青色端に向かってnがnよりも急速に変化するという事実による。低いかまたは負のリターデーション分散を有する材料を調製する1つの方法は、n分散が増加されn分散が減少された分子を設計することである。これを図2に概略的に示す。そのような取り組みは、負の複屈折および正の分散を有するLCならびに正の複屈折および負の分散を有する化合物を与えることによって先行技術において示されてきた。
【0005】
化合物が重合性であるか、または、例えば、重合性メソゲン化合物(「反応性メソゲン(reactive mesogen)」または「RM」としても既知)を含む重合性ホスト材料と混合されている場合、負の分散を有する異方性光学的ポリマーフィルムを調製することが可能である。これは、それの中間相において重合性材料を均一に配向させ、例えば、熱またはUV照射に曝露することで、その場で重合し、それによって、巨視的に均一な配向を恒久的に固定することにより容易に行うことができる。適切な重合方法は当業者に既知であり、文献に記載されている。
【0006】
光学的フィルムを調製するために、負の分散を有しコートが可能な材料を使用することが先行技術に記載示されている。例えば、特開2005−208416号公報(特許文献1)および国際特許出願公開第2006/052001号パンフレット(特許文献2)には、負の分散を有するポリマーフィルムを調製するために、「カルド」核基を有する化合物を主として基礎とする重合性材料が開示されている。
【0007】
また、溶媒キャストまたは押出ポリマーフィルムを延伸することによっても、負の分散を有する光学的フィルムを得ることができると先行技術で報告されている。例えば、A.UchiyamaおよびT.Yatabe、Journal of Polymer Science、Part B:Polymer Physics、41巻、1554〜1562頁(2003年)(非特許文献1)、Jpn.J.Appl.Phys.、42巻、5665〜5669頁(2003年)(非特許文献2)および国際特許出願公開第00/26705号パンフレット(特許文献3)には、負の分散を有する延伸された光学的ポリマーフィルムが開示されている。これらの文献においては、「カルド」基を使用して、ポリマーの延伸方向に直交する方向に幾つかの高屈折率成分を導入することが報告されている。
【0008】
他の文献には、本質的に正および負の複屈折を有するポリマー成分を組み合わせることによって、延伸ポリマーフィルムの光学的特性を制御できることが開示されている。この光学的効果は、2種類の相溶性ポリマーを組み合わせてポリマーブレンドを作製する(例えば、H.SaitoおよびT.Inoue、Journal of Polymer Science、Part B:Polymer Physics、25巻、1629〜1636頁(1987年)(非特許文献3);または、K.Kuboyama、T.KurodaおよびT.Ougizawa、Macromol.Symp.249〜250、641〜646(2007年)(非特許文献4)参照)か、または、1種類のホモポリマー中において、2種類のポリマー部分またはセグメント;即ち、本質的に正の複屈折である一方のセグメントおよび本質的に負の複屈折である他方のセグメントを組み合わせる(例えば、A.UchiyamaおよびT.Yatabe、Jpn.J.Appl.Phys.42巻、6941〜6945頁(2003年)(非特許文献5)参照)かのいずれかによって達成できる。
【0009】
用語「本質的に正」および「本質的に負」の複屈折は、ポリマーフィルムの光学的特性を記述するために使用される。本質的に正の複屈折を有する延伸ポリマーフィルムの例としては、次が挙げられる:ポリカーボネート類、ポリアリレート類、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリアリルスルホン、ポリアミド−イミド類、ポリイミド類、ポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、セルロース。本質的に負の複屈折を有する延伸ポリマーフィルムの例としては、次が挙げられる:スチレン、アクリル酸エステルポリマー類、メタクリル酸エステルポリマー類、アクリロニトリルポリマー類。
【0010】
固有複屈折は以下の通り定義される。
【0011】
【数1】

式中、nおよびnは、それぞれ、ポリマー分子鎖の異常および通常率である。
【0012】
ポリマーフィルムの複屈折は2つの基本的な要因に依存する:第1に、ポリマー骨格の状態を決定する、例えば、キャスト、アニールおよび延伸などのフィルムを調製するために使用される各種プロセス、第2に、高分子材料の固有複屈折である。固有複屈折の大きさおよび符号は、官能基の分極率と、主鎖に対するこれらの基の配置とに依存する。例えば、大部分が骨格に直交する方向を向いており、より分極性のフェニル基を有する脂肪族骨格をポリスチレンは有する。同様に、ポリアクリロニトリルは、脂肪族骨格と、大部分が骨格に直交する方向を向いており、高度に分極性のニトリル基とを有する。後者のいずれのポリマーも負の固有複屈折を示す。言い換えれば、配向したポリマー骨格に対する発色団の向きによって、固有複屈折の符号が決定される。本質的に負の複屈折性ポリマーについては、分極性基または発色団の遷移モーメントがポリマー骨格より離れる方向を向いていなければならない。これは、国際特許出願公開第2007/075264号パンフレット(特許文献4)において更に議論されている。
【0013】
キャストポリマーフィルムの複屈折を測定する方法は、J.S.Machell、J.GreenerおよびB.A.Contestable、Macromolecules、23巻、1号(1990年)(非特許文献6)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−208416号公報
【特許文献2】国際特許出願公開第2006/052001号パンフレット
【特許文献3】国際特許出願公開第00/26705号パンフレット
【特許文献4】国際特許出願公開第2007/075264号パンフレット
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】A.UchiyamaおよびT.Yatabe、Journal of Polymer Science、Part B:Polymer Physics、41巻、1554〜1562頁(2003年)
【非特許文献2】Jpn.J.Appl.Phys.、42巻、5665〜5669頁(2003年)
【非特許文献3】H.SaitoおよびT.Inoue、Journal of Polymer Science、Part B:Polymer Physics、25巻、1629〜1636頁(1987年)
【非特許文献4】K.Kuboyama、T.KurodaおよびT.Ougizawa、Macromol.Symp.249〜250、641〜646(2007年)
【非特許文献5】A.UchiyamaおよびT.Yatabe、Jpn.J.Appl.Phys.42巻、6941〜6945頁(2003年)
【非特許文献6】J.S.Machell、J.GreenerおよびB.A.Contestable、Macromolecules、23巻、1号(1990年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、文献に開示される材料の多くは、例えば、ポリマーの延伸軸に平行および垂直な方向を向く基の間の分極率の差が十分には大きくなく、そのため、複屈折分散を低下させる単位を比較的高い濃度で高分子材料が含有しなければならず、通常、該単位はポリマー混合物全体において高額な構成要素であるなどの欠点を有している。
【0017】
従って、合成が容易で、低減されたコストで入手でき、良好な加工性を有し、溶解性および熱的特性などの改良された特性を有し負の光学的分散を有するポリマーフィルムの調製に適切な材料に対する要求が依然としてある。
【0018】
従って、上述の優位な特性を示し、先行技術の材料の欠点を有しておらず、負の光学的分散を有するポリマーフィルムにおいて使用するために、新規で改良された材料を提供することを本発明の目的とする。本発明のもう一つの目的は、専門家が入手可能で負の分散を有する材料およびポリマーフィルムの蓄積を広げることである。他の目的は、以下の記載より専門家には直ちに明らかである。
【0019】
これらの目的は、本発明において特許請求される通りの化合物、材料およびフィルムを提供することによって達成できることが見出された。
【0020】
特に、これは、軸方向に置換されたシクロヘキサンジオール類を使用して、負の分散を示す光学的フィルム中に加工でき、コポリマーにおいて効果的なセグメントを調製することによって達成できることが見出された。
【0021】
延伸ポリマーフィルムにおいて負の複屈折分散を達成には、通常屈折率の波長分散が異常屈折率の波長分散より大きくなければならない。本質的に負の複屈折性ポリマーまたはポリマーのセグメントによって、ポリマーの通常屈折率の波長分散を増加することが可能となる。従って、負の複屈折分散を示すポリマーフィルムは、適切な分子比の本質的に負および本質的に正の複屈折性セグメントから構成されなければならない。本質的に負の複屈折性セグメントによって延伸フィルムの複屈折が減少するため、ポリマーにおける本質的に負の複屈折性セグメントの量を最小限に抑えることが有利である。フィルムの分散を低下するのに寄与するポリマーセグメントの「効率」を最大とするためには、セグメントが高度に分極性の基を有していなければならいと仮定し、分極性の基は大部分が主鎖に直交する方向を向いていなければならず、更に、この好ましい方向に該基が留まるように該基の方向が制約されなければならないと仮定することは妥当である。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は式Iの化合物に関する。
【0023】
【化1】

式中、
kは、それぞれの出現において互いに独立に、0または1であり、ただし、少なくとも1つの繰り返し単位におけるkは1であり、
mは、それぞれの出現において互いに独立に、0または1であり、
nは、1より大きい整数であり、
、Rは、それぞれ互いに独立に、直鎖状、分岐状または環状で、1〜20個、好ましくは1〜12個のC原子を有するアルキレン(該基は無置換であるか、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されており、ただし、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれの場合で互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−SO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR00−、−CY=CY−または−C≡C−で置き換えられていてもよい。)、または、単結合であり、
、Yは、それぞれ互いに独立に、H、F、Cl、CNまたはRであり、
、R00は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルであり、
、Xは、それぞれ互いに独立に、好ましくは、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−(CHn1−、−(CFn1−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CY=CY−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−、−CR00−および単結合から成る群より選択される連結基であり、
n1は、1、2、3、4、5または6であり、
、Bは、それぞれ互いに独立に、好ましくは、−C≡C−、−CY=CY−、置換されていてもよい芳香族またはヘテロ芳香族基、および、前述の組み合わせから成る群より選択される高い分極率を有する2価の基であり、
、Uは、それぞれ互いに独立に、Hまたは式IIの1価の基であり、ただし、星印は、それぞれ、隣接する基BまたはBへの連結を表し、
【0024】
【化2】

、Rは、それぞれ互いに独立に、直鎖状、分岐状または環状で、1〜20個、好ましくは1〜12個のC原子を有するアルキル(該基は無置換であるか、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されており、ただし、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれの場合で互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−SO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR00−、−CY=CY−または−C≡C−で置き換えられていてもよい。)、または、単結合であり、
、Xは、それぞれ互いに独立に、Xの意味の1つを有し、
は、それぞれの出現において互いに独立に、Xの意味の1つを有し、
oは、0、1、2、3、4または5であり、
GはRの意味の1つを有するか、または、式IIIの2価の基であり、
【0025】
【化3】

、Xは、それぞれ互いに独立に、Xの意味の1つを有し、
、Aは、それぞれ互いに独立に、置換されていてもよい炭素環状、ヘテロ環状、芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
は、それぞれの出現において互いに独立に、Xの意味の1つを有し、および
pは、0、1、2または3である。
【0026】
本発明は、更に、上および下で記載される通りの1種類以上の化合物を含む配合物に関する。
【0027】
本発明は、更に、上および下で記載される通りの化合物または配合物より得ることができる複屈折性ポリマーフィルムに関する。
【0028】
本発明は、更に、R450/R550が1未満の複屈折性ポリマーフィルムに関し、ただし、R450は450nmの波長における光学的軸上リターデーションであり、R550は550nmの波長における光学的軸上リターデーションであり、前記フィルムは上および下で記載される通りの化合物または配合物より得ることができる。
【0029】
本発明は、更に、光学的、電子的および電気光学的部品および装置において、好ましくは、負の光学的分散を有する光学的フィルム、リターダーまたはコンペンセータにおける上および下で記載される通りの化合物、配合物およびポリマーフィルムの使用に関する。
【0030】
本発明は、更に、上および下で記載される通りの化合物、配合物またはポリマーフィルムを含む光学的、電子的または電気光学的部品または装置に関する。
【0031】
前記装置および部品としては、限定することなく、電気光学的ディスプレイ、LCD、光学的フィルム、偏光子、コンペンセータ、ビームスプリッター、反射フィルム、配向層、カラーフィルター、ホログラフィック素子、ホットスタンプ箔、着色画像、装飾またはセキュリティーマーク、LC顔料、接着剤、非線形光学(NLO:non−linear optic)装置、光学的情報記憶装置、電子装置、有機半導体、有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)、集積回路(IC:integrated circuit)、薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)、無線識別(RFID:Radio Frequency Identification)タグ、有機発光ダイオード(OLED:organic light emitting diode)、有機発光トランジスタ(OLET:organic light emitting transistor)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、有機光起電(OPV:organic photovoltaic)装置、有機太陽電池(O−SC:organic solar cell)、有機レーザーダイオード(O−レーザー:organic laser diode)、有機集積回路(O−IC:organic integrated circuit)、照明装置、センサー装置、電極材料、光導電体、光検出器、電子写真記録装置、キャパシタ、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、導電性基材、導電性パターン、光導電体、電子写真用途、電子写真記録、有機記憶装置、バイオセンサー、バイオチップ、複数の波長において同様の位相シフトを必要とする光電子装置、複合CD/DVD/HD−DVD/ブルーレイ、読み出し、書き込み、再書き込みデータ記憶システム、またはカメラが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】先行技術の反応性メソゲンより作製され重合されたフィルムについて、波長に対する複屈折のプロットを示す。
【図2】n分散が増加されn分散が減少されたことを示す、低いかまたは負のリターデーション分散を有するモデル分子の波長に対する屈折率のプロットを示す。
【図3a】負の光学的分散を有する化合物について、波長に対する複屈折のプロットを示す。
【図3b】正の光学的分散を有する化合物について、波長に対する複屈折のプロットを示す。
【図4】本発明によるポリマーの構造を例示的および概略的に図解する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<用語の定義>
用語「フィルム」としては、機械的に安定で、剛直または柔軟な、自己支持性または自立性フィルム、ならびに、支持基板上または2枚の基板間のコーティングまたは層が挙げられる。
【0034】
用語「ポリマー」は高い相対分子量の分子を意味し、その構造は低い相対分子量の分子より実際または概念上で誘導される単位の複数の繰り返しを本質的に含む。用語「単位」、「繰り返し単位」および「モノマー単位」は構造上の繰り返し単位(CRU:constitutional repeating unit)を意味し、ポリマーを構成する繰り返しの最小の構造上の単位である(PAC、1996年、68巻、2291頁参照)。
【0035】
用語「共役」は、sp−混成(またはsp−混成でもよい)を有するC原子を主に含有する化合物を意味し、ヘテロ原子により置き換えられていてもよい。最も単純な場合で、これは、例えば、C−C単結合と二重結合(または三重結合)とを交互に有する化合物であるが、1,3−フェニレンなどの単位を有する化合物も挙げられる。この文意において、「主に」は、共役の中断に至る場合もある自然に(自発的に)生じる欠陥を有する化合物を依然として共役化合物と見なすことを意味する。
【0036】
他に明言しない限り、分子量は、ポリスチレン標準に対してゲル透過クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)によって決定される数平均分子量Mまたは重量平均分子量Mとして与えられる。重合度(n)は数平均重合度を意味し、n=M/Mとして与えられ、ただし、Mは単一の繰り返し単位の分子量である。
【0037】
分子レベルにおいて、液晶の複屈折は分極率の異方性(Δα=α−α)に依存する。「分極率」は、原子または分子中の電子分布を歪めることができる容易さを意味する。電子の数がより多く、電子雲がより拡散しているほど分極率は増加する。分極率は、例えば、Jpn.J.Appl.Phys.42巻、(2003年)3463頁に記載される方法を使用して計算できる。
【0038】
液晶または複屈折性材料の層の、ある波長における「光学的リターデーション」R(λ)(nmにおいて)は、その波長における複屈折率Δn(λ)および層厚みd(nmにおいて)の積として、下式に従い定義される。
【0039】
【数2】

光学的リターデーションRは、複屈折性材料を通過する際にS偏光およびP偏光が進む光路長の違いをナノメータで表す。「軸上」リターデーションとは、サンプル表面に対して垂直入射におけるリターデーションを意味する。
【0040】
用語「負の(光学的)分散」は、波長(λ)の増加に伴い複屈折率(Δn)の大きさも増加する反転複屈折分散を示す複屈折性または液晶材料または層を言う。即ち、|Δn(450)|<|Δn(550)|またはΔn(450)/Δn(550)<1であり、ただし、Δn(450)およびΔn(550)は、それぞれ450nmおよび550nmの波長で測定された材料の複屈折率である。対照的に、「正の(光学的)分散」は、|Δn(450)|>|Δn(550)|またはΔn(450)/Δn(550)>1を有する材料または層を意味する。また、例えば、A.Uchiyama、T.Yatabe「Control of Wavelength Dispersion of Birefringence for Oriented Copolycarbonate Films Containing Positive and Negative Birefringent Units」J.Appl.Phys.42巻、6941〜6945頁(2003年)も参照。
【0041】
これを、図3aにおいて例示的に表される通り、それの波長に対する複屈折のプロットに示す。対照的に、正の光学的分散を有する典型的な化合物の波長に対する複屈折のプロットを図3bに表す。
【0042】
ある波長における光学的リターデーションは、上記[R(λ)=Δn(λ)・d]の通り、複屈折率および層厚みの積として定義されるため、光学的分散は、比Δn(450)/Δn(550)により「複屈折分散」として、または、比R(450)/R(550)により「リターデーション分散」のいずれかとして表現でき、ただし、R(450)およびR(550)は、それぞれ450nmおよび550nmの波長で測定される材料のリターデーションである。波長によって層厚みdは変化しないため、R(450)/R(550)はΔn(450)/Δn(550)に等しい。よって、負または反転分散を有する材料または層はR(450)/R(550)<1または|R(450)|<|R(550)|を有し、正または正常分散を有する材料または層はR(450)/R(550)>1または|R(450)|>|R(550)|を有する。
【0043】
本発明において、他に明言しない限り、「光学的分散」はリターデーション分散、即ち、比(R(450)/R(550)を意味する。
【0044】
材料のリターデーション(R(λ))は分光エリプソメータ、例えば、J.A.Woollam社製M2000分光エリプソメータを使用して測定できる。この装置は、典型的には、370nm〜2000nmの波長範囲にわたって、複屈折性サンプル、例えば、石英の光学的位相差をナノメータで測定できる。このデータより、材料の分散(R(450)/R(550)またはΔn(450)/Δn(550))を計算することが可能である。
【0045】
これらの測定を行うための方法は、2006年10月、N.SinghによるNational Physics Laboratory(ロンドン、英国)、表題「Spectroscopic Ellipsometry、Part1−Theory and Fundamentals、Part 2−Practical Examples and Part 3−measurements」で提示された。J.A.Woollam社(リンカーン市、ネブラスカ州、アメリカ合衆国)によって出版されたRetardation Measurement(RetMeas)Manual(2002年)and Guide to WVASE(2002年)(Woollam Variable Angle Spectroscopic Ellipsometer)に記載される測定手順に従う。他に明言しない限り、この方法を、本発明で記載される材料、フィルムおよび装置のリターデーションを決定するために使用する。
【0046】
<本発明の詳細な記載>
上で引用される先行技術文献においては、負の固有複屈折を有するポリマーを使用して負の分散フィルムを作製する一般的な実現可能性が示されている。しかしながら、本質的に負の複屈折を誘発する単位が光学的フィルムの全体的な光学的特性に与える効果を増加させる必要性が依然としてある。これは、コストを低減し、そのような基がポリマーフィルムの物理的特性に与えることもある任意の可能性のある有害な効果を最小限に抑えるいずれのためにも、プレポリマー混合物における、これらのより高額な単位の濃度を最小限に抑えるためである。
【0047】
ここで、本発明においては、軸方向に置換されたシクロヘキサン単位またはそのような単位の改変体を、コポリマー中で加工でき負の分散の光学的フィルムを与えるセグメントとして使用できることが見出された。負の分散に対して寄与するコポリマーの単位は、本質的に負の複屈折を有していなければならない。延伸コポリマーの通常屈折率の波長分散を増加するのに該単位が最大限に寄与するよう、これらの単位を設計することが有利である。もう1つの重大な設計基準は、該単位の高度に分散性の部分がポリマー主鎖と成す角度が実質的に直交でなければならないことである。もう1つの重要な設計基準は、主鎖に対して横方向を向く基の分散力が高くなければならないことである。これは、そのような基の分極率を増加させることによって達成できる。式Iにおける軸方向に置換されたシクロヘキサン単位は、これらの2つの基準を満足する。
【0048】
上の基準は、本発明による式Iのポリマー(コポリマー)を提供することによって実現された。これらのポリマー(コポリマー)は、図4において例示的および概略的に示される通り、2つの区別される分子部分より主に成る:ポリマー主鎖において低い複屈折を有する(式Iにおけるシクロヘキサン環)セグメントAを有する第1のモノマー単位と、横方向において高い複屈折を有する1個以上の基B(式Iにおける基B1、2)とである。コモノマー単位C(式Iにおける基G)は、負の分散に対して有意には寄与しない。
【0049】
例えば、フェニルアセチレン基などの高度に分極性の基を有する軸方向に置換されたシクロヘキサンの場合、分極性のフェニルアセチレン基の方向は、SP混成の炭素原子の周りの4面体配置によって決定される。トランス−1,4−ジエチニル−1,4−ジオールの合成および立体化学はX線によって確認されており、C.E.WagnerおよびK J.Shea、Organic Letters 6巻、3号、313〜316頁(2004年)に開示されており、椅子形立体配置におけるシクロヘキサン環に対するアセチレン基の方向が示されている。しかしながら、本発明の概念は、横方向に二置換されたシクロヘキサン単位に限定されるものではない。また、シクロヘキサンに対する分極性の基の方向に関する同一の議論は、一置換されたシクロヘキサン単位についても有効である。
【0050】
式Iにおいて、高い分極率を有する基B1、2は、1個以上のサブ基B(該基は、パイ共役直線状基、芳香族およびヘテロ芳香族基より選択される。)から、好ましくは主に、非常に好ましくは排他的に成る。
【0051】
好ましくは、基B1、2は、1個以上のサブ基B(好ましくは180°の範囲内で、120°以上の結合角を有する基より選択される。)から、非常に好ましくは排他的に成る。適切で好ましいサブ基Bとしては、限定することなく、−C≡C−基などのsp−混成C原子を含む基、または、例えば、1,4−フェニレン、ナフタレン−2,6−ジイル、インダン−2,6−ジイルまたはチエノ[3,2−b]チオフェン−2,5−ジイルなどの、それらと隣接する基にパラ位で接続されている2価の芳香族基が挙げられる。更に可能なサブ基Bとしては、−CH=CH−、−CY=CY−および−CH=CR−が挙げられ、ただし、Y、Y、Rは、上で与えられる意味を有する。
【0052】
基B1、2は、好ましくは、パイ共役を有するサブ基Bから本質的に成り、高い分極率および高い屈折率を有する。ポリマー主鎖中のシクロヘキシレン環は低い分極率および低い屈折率を有するため、結果として、式Iのポリマーは負のリターデーション分散を示す。
【0053】
好ましくは、式Iにおける基B1、2は、−C≡C−、置換されていてもよい1,4−フェニレンおよび置換されていてもよい9H−フルオレン−2,7−ジイルから成る群より選択される1個以上の基を含む。サブ基Bは、好ましくは、−C≡C−、置換されていてもよい1,4−フェニレンおよび置換されていてもよい9H−フルオレン−2,7−ジイルから成る群より選択され、ただし、フルオレン基において、9位のH原子はカルビルまたはヒドロカルビル基で置き換えられていてもよい。
【0054】
非常に好ましくは、式Iにおける基B1、2は、−C≡C−、−C≡C−C≡C−、−C≡C−C≡C−C≡C−、−C≡C−C≡C−C≡C−C≡C−、
【0055】
【化4】

から成る群より選択され、
式中、rは、0、1、2、3または4であり、Lは下に記載される通りの意味を有する。
【0056】
式IにおけるXおよびXは、好ましくは、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−または−O−CO−O−である。
【0057】
式IにおけるRおよびRは、好ましくは、単結合である。Rおよび/またはRが単結合を表さない場合、それらは、好ましくは、1〜20個のC原子、好ましくは1〜15個のC原子を有するアルキレンを表し、該基は、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されていてもよく、ただし、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれの場合で互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−NR−CO−O−、−O−CO−NR−、−NR−CO−NR−、−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられていてもよい。
【0058】
好ましい基R1、2は、例えば、−(CHp1−、−(CHCHO)q1−CHCH−、−CHCH−S−CHCH−または−CHCH−NH−CHCH−または−(SiR00−O)p1−であり、ただし、p1は2〜12の整数であり、q1は1〜3の整数であり、RおよびR00は上で与えられる意味を有する。非常に好ましい基R1、2は、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、トリデシレン、テトラデシレン、ペンタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシ−ブチレン、エチレン−チオエチレン、エチレン−N−メチル−イミノエチレン、1−メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレンおよびブテニレンである。
【0059】
式IIにおいて、Zは、好ましくは、単結合である。指数oは、好ましくは、0、1または2である。XおよびXは、好ましくは、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−または−O−CO−O−である。RおよびRは、好ましくは、1〜12個のC原子を有するアルキルまたはアルケニルである。
【0060】
特に好ましくは、基U、Uは、それぞれ互いに独立に、Hであるか、または、以下のサブ式から成る群より選択される。
【0061】
【化5】

式中、R’およびR”は1〜12個のC原子を有するアルキルまたはアルケニルであり、X’およびX”は、それぞれ互いに独立に、−O−、−CO−O−、−O−CO−または単結合であり、星印は、それぞれ、隣接する基BまたはBへの連結を表す。
【0062】
式IIIの基Gにおいて、芳香族およびヘテロ芳香族基A1,2は、単核、即ち、1個のみの芳香族環を有していても(例えば、フェニルまたはフェニレンなど)、多核、即ち、2個以上の縮合環を有していても(例えば、ナフチルまたはナフチレンなど)構わない。25個までのC原子を有する単環式、二環式または三環式の芳香族またはヘテロ芳香族基が特に好ましく、また、該基は縮合環を含んでいてもよく、置換されていてもよい。
【0063】
好ましい芳香族基A1,2としては、限定することなく、ベンゼン、ビフェニレン、トリフェニレン、[1,1’:3’,1”]ターフェニル−2’−イルエン、ナフタレン、アントラセン、ビナフチレン、フェナントレン、ピレン、ジヒドロピレン、クリセン、ペリレン、テトラセン、ペンタセン、ベンゾピレン、フルオレン、インデン、インデノフルオレン、スピロビフルオレンなどが挙げられる。
【0064】
好ましいヘテロ芳香族基A1,2としては、限定することなく、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、テトラゾール、フラン、チオフェン、セレノフェン、オキサゾール、イソキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾールなどの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジンなどの6員環、およびカルバゾール、インドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、プリン、ナフタイミダゾール、フェナントライミダゾール、ピリダイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、ベンゾキサゾール、ナフトキサゾール、アントロキサゾール、フェナントロキサゾール、イソキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、キノリン、イソキノリン、プテリジン、ベンゾ−5,6−キノリン、ベンゾ−6,7−キノリン、ベンゾ−7,8−キノリン、ベンゾイソキノリン、アクリジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾピリダジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、フェナジン、ナフチリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントリジン、フェナントロリン、チエノ[2,3b]チオフェン、チエノ[3,2b]チオフェン、ジチエノチオフェン、ジチエノピリジン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾチアジアゾチオフェンなどの縮合系、または、それらの組み合わせが挙げられる。
【0065】
1〜4などの非芳香族炭素環式およびヘテロ環式基としては、飽和(「完全に飽和」とも言う)、即ち、それらは単結合で接続されたC原子またはヘテロ原子のみを含有するもの、および、不飽和(「部分的に飽和」とも言う)、即ち、それらは二重結合で接続されたC原子またはヘテロ原子も含むものが挙げられる。また、非芳香族環は、好ましくは、Si、O、NおよびSより選択される1個以上のヘテロ原子も含んでよい。
【0066】
非芳香族炭素環式およびヘテロ環式基A1,2は、単核、即ち、1個のみの環を有する(例えば、シクロヘキサンなど)、または、多核、即ち、2個以上の縮合環を有する(例えば、デカヒドロナフタレンまたはビシクロオクタンなど)のいずれでも構わない。完全に飽和している基が特に好ましい。更に、25個までのC原子を有する単環式、二環式または三環式の非芳香族基が好ましく、該基は縮合環を含んでいてもよく、置換されていてもよい。5員、6員、7員または8員の炭素環式環が非常に好ましく、ただし、1個以上のC原子はSiで置き換えられていてもよく、および/または、1個以上のCH基はNで置き換えられていてもよく、および/または、1個以上の隣接していないCH基は−O−および/または−S−で置き換えられていてもよく、それら全ては置換されていてもよい。
【0067】
好ましい非芳香族環A1,2としては、限定することなく、シクロペンタン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフラン、ピロリジンなどの5員環、シクロヘキサン、シリナン、シクロヘキセン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、1,3−ジオキサン、1,3−ジチアン、ピペリジンなどの6員環、シクロヘプタンなどの7員環、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、インダン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン−1,3−ジイル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−1,4−ジイル、スピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル、オクタヒドロ−4,7−メタノ−インダン−2,5−ジイルなどの縮合系、または、それらの組み合わせが挙げられる。
【0068】
特に好ましい基AおよびAは、1,4−フェニレン(ただし、1個、2個または3個のCH基はNで置き換えられていてもよい。)またはシクロヘキシレン−1,4−ジイル(ただし、1個または2個の隣接していないCH基はOおよび/またはSで置き換えられていてもよい。)より選択され、ただし、これら全ての環は無置換であるか、1個、2個、3個または4個の基Lで置換されている。
【0069】
式IIIにおいて、Zは、好ましくは、−CHCH−、−CR00−および単結合より選択される。指数pは、好ましくは、0、1または2、最も好ましくは、0または1である。XおよびXは、好ましくは、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−または単結合である。
【0070】
特に好ましい2価の基Gは以下のサブ式から成る群より選択され、該基は末端O原子を介して隣接する基に接続されている。
【0071】
【化6】

【0072】
【化7】

式中、iは1〜12、好ましくは4〜8の整数である。
【0073】
基B1、2およびA1、2上の置換基Lは、好ましくは、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)NR00、−C(=O)X、−C(=O)OR、−C(=O)R、−NR00、−OH、−SF、置換されていてもよいシリル、1〜12個、好ましくは1〜6個のC原子を有するアリールまたはヘテロアリール、および、直鎖状または分岐状で1〜12個、好ましくは1〜6個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシより選択され、ただし、1個以上のH原子はFまたはClで置き換えられていてもよく、ただし、RおよびR00は式Iにおいて定義される通りであり、Xはハロゲンである。
【0074】
好ましい置換基Lは、F、Cl、CN、NOまたは直鎖状または分岐状で1〜12個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ(ただし、アルキル基はペルフルオロ化されていてもよい。)、または、P−Sp−(ただし、Pは重合性基であり、Spはスペーサー基または単結合である。)より選択される。
【0075】
非常に好ましい置換基Lは、F、Cl、CN、NO、CH、C、C(CH、CH(CH、CHCH(CH)C、OCH、OC、COCH、COC、COOCH、COOC、CF、OCF、OCHF、OCまたはP−Sp−、特には、F、Cl、CN、CH、C、C(CH、CH(CH、OCH、COCHまたはOCF、最も好ましくは、F、Cl、CH、C(CH、OCHまたはCOCHまたはP−Sp−より選択される。
【0076】
【化8】

ただし、Lは、それぞれ独立に、上で与えられる意味の1つを有する。
【0077】
基R3、4は、好ましくは、直鎖状、分岐状または環状で、1〜40個、好ましくは1〜25個のC原子を有するアルキルより選択され、該基は無置換であるか、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されており、ただし、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれの場合で互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−COO−、−OCO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−SO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR00−、−CY=CY−または−C≡C−で置き換えられていてもよく、ただし、YおよびYは、それぞれ互いに独立に、H、F、ClまたはCNであり、RおよびR00は、それぞれ互いに独立に、H、または、置換されていてもよく1〜20個のC原子を有する脂肪族または芳香族炭化水素である。
【0078】
非常に好ましくは、R3、4は、C〜C20−アルキル、C〜C20−オキサアルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20−アルキニルおよびC〜C20−フルオロアルキルより選択される。
【0079】
アルキルまたはアルコキシ基、即ち、末端CH基が−O−によって置き換えられている場合、直鎖状でも分枝状でもよい。それは、好ましくは、直鎖状で2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個の炭素原子を有し、従って、好ましくは、例えば、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシ、ヘプトキシ、またはオクトキシ、更に、メチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ノノキシ、デコキシ、ウンデコキシ、ドデコキシ、トリデコキシまたはテトラデコキシである。
【0080】
オキサアルキル、即ち、1個のCH基が−O−によって置き換えられている場合、好ましくは、例えば、直鎖状の2−オキサプロピル(即ち、メトキシメチル)、2−(即ち、エトキシメチル)または3−オキサブチル(即ち、2−メトキシエチル)、2−、3−、または4−オキサペンチル、2−、3−、4−、または5−オキサヘキシル、2−、3−、4−、5−、または6−オキサヘプチル、2−、3−、4−、5−、6−または7−オキサオクチル、2−、3−、4−、5−、6−、7−または8−オキサノニルまたは2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−または9−オキサデシルである。
【0081】
1個以上のCH基が−CH=CH−で置き換えられているアルキル基は、直鎖状でも分枝状でもよい。それは、好ましくは、直鎖状で2〜10個のC原子を有し、従って、好ましくは、ビニル、プロパ−1−、またはプロパ−2−エニル、ブタ−1−、2−またはブタ−3−エニル、ペンタ−1−、2−、3−またはペンタ−4−エニル、ヘキサ−1−、2−、3−、4−またはヘキサ−5−エニル、ヘプタ−1−、2−、3−、4−、5−またはヘプタ−6−エニル、オクタ−1−、2−、3−、4−、5−、6−またはオクタ−7−エニル、ノナ−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−またはノナ−8−エニル、デカ−1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−またはデカ−9−エニルである。
【0082】
特に好ましいアルケニル基は、C〜C−1E−アルケニル、C〜C−3E−アルケニル、C〜C−4−アルケニル、C〜C−5−アルケニルおよびC−6−アルケニル、特に、C〜C−1E−アルケニル、C〜C−3E−アルケニルおよびC〜C−4−アルケニルである。特に好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E−プロペニル、1E−ブテニル、1E−ペンテニル、1E−ヘキセニル、1E−ヘプテニル、3−ブテニル、3E−ペンテニル、3E−ヘキセニル、3E−ヘプテニル、4−ペンテニル、4Z−ヘキセニル、4E−ヘキセニル、4Z−ヘプテニル、5−ヘキセニル、6−ヘプテニルなどである。5個までのC原子を有する基が一般に好ましい。
【0083】
1個のCH基が−O−により、および1個が−CO−により置き換えられているアルキル基において、これらの基は、好ましくは、隣り合っている。従って、これらの基は、一緒となってカルボニルオキシ基−CO−O−またはオキシカルボニル基−O−CO−を形成する。好ましくは、この基は直鎖状で、2〜6個のC原子を有する。それは、従って、好ましくは、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、アセチルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、2−アセチルオキシエチル、2−プロピオニルオキシエチル、2−ブチリルオキシエチル、3−アセチルオキシプロピル、3−プロピオニルオキシプロピル、4−アセチルオキシブチル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、プロポキシカルボニルメチル、ブトキシカルボニルメチル、2−(メトキシカルボニル)エチル、2−(エトキシカルボニル)エチル、2−(プロポキシカルボニル)エチル、3−(メトキシカルボニル)プロピル、3−(エトキシカルボニル)プロピル、4−(メトキシカルボニル)−ブチルである。
【0084】
2個以上のCH基が−O−および/または−COO−で置き換えられているアルキル基は、直鎖状または分岐状でよい。それは、好ましくは、直鎖状で、3〜12個のC原子を有する。従って、それは、好ましくは、ビス−カルボキシ−メチル、2,2−ビス−カルボキシ−エチル、3,3−ビス−カルボキシ−プロピル、4,4−ビス−カルボキシ−ブチル、5,5−ビス−カルボキシ−ペンチル、6,6−ビス−カルボキシ−ヘキシル、7,7−ビス−カルボキシ−ヘプチル、8,8−ビス−カルボキシ−オクチル、9,9−ビス−カルボキシ−ノニル、10,10−ビス−カルボキシ−デシル、ビス−(メトキシカルボニル)−メチル、2,2−ビス−(メトキシカルボニル)−エチル、3,3−ビス−(メトキシカルボニル)−プロピル、4,4−ビス−(メトキシカルボニル)−ブチル、5,5−ビス−(メトキシカルボニル)−ペンチル、6,6−ビス−(メトキシカルボニル)−ヘキシル、7,7−ビス−(メトキシカルボニル)−ヘプチル、8,8−ビス−(メトキシカルボニル)−オクチル、ビス−(エトキシカルボニル)−メチル、2,2−ビス−(エトキシカルボニル)−エチル、3,3−ビス−(エトキシカルボニル)−プロピル、4,4−ビス−(エトキシカルボニル)−ブチル、5,5−ビス−(エトキシカルボニル)−ヘキシルである。
【0085】
CNまたはCFで一置換されているアルキルまたはアルケニル基は、好ましくは、直鎖状である。CNまたはCFによる置換は、任意の所望の位置でよい。
【0086】
ハロゲンによって少なくとも一置換されているアルキルまたはアルケニル基は、好ましくは、直鎖状である。ハロゲンは、好ましくは、FまたはClで、多置換の場合、好ましくは、Fである。また、結果として生じる基はペルフルオロ化された基も含む。一置換の場合、FまたはCl置換は任意の所望の位置でよいが、好ましくはω位である。末端F置換を有する特に好ましい直鎖状の基の例は、フルオロメチル、2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル、5−フルオロペンチル、6−フルオロヘキシルおよび7−フルオロヘプチルである。しかしながら、Fの他の位置が除外されるものではない。
【0087】
3、4は、アキラルでもキラル基でもよい。特に好ましいキラル基は、例えば、2−ブチル(即ち、1−メチルプロピル)、2−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルヘキシル、2−プロピルペンチル、特に、2−メチルブチル、2−メチルブトキシ、2−メチルペントキシ、3−メチルペントキシ、2−エチルヘキソキシ、1−メチルヘキソキシ、2−オクチルオキシ、2−オキサ−3−メチルブチル、3−オキサ−4−メチルペンチル、4−メチルヘキシル、2−ヘキシル、2−オクチル、2−ノニル、2−デシル、2−ドデシル、6−メトキシオクトキシ、6−メチルオクトキシ、6−メチルオクタノイルオキシ、5−メチルヘプチルオキシカルボニル、2−メチルブチリルオキシ、3−メチルバレロイルオキシ、4−メチルヘキサノイルオキシ、2−クロロプロピオニルオキシ、2−クロロ−3−メチルブチリルオキシ、2−クロロ−4−メチルバレリルオキシ、2−クロロ−3−メチルバレリルオキシ、2−メチル−3−オキサペンチル、2−メチル−3−オキサヘキシル、1−メトキシプロピル−2−オキシ、1−エトキシプロピル−2−オキシ、1−プロポキシプロピル−2−オキシ、1−ブトキシプロピル−2−オキシ、2−フルオロオクチルオキシ、2−フルオロデシルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチル、2−フルオロメチルオクチルオキシである。2−ヘキシル、2−オクチル、2−オクチルオキシ、1,1,1−トリフルオロ−2−ヘキシル、1,1,1−トリフルオロ−2−オクチルおよび1,1,1−トリフルオロ−2−オクチルオキシが非常に好ましい。
【0088】
好ましいアキラルな分岐状の基は、イソプロピル、イソブチル(即ち、メチルプロピル)、イソペンチル(即ち、3−メチルブチル)、イソプロポキシ、2−メチル−プロポキシおよび3−メチルブトキシである。
【0089】
上および下で定義される基において、RおよびR00は、好ましくは、H、直鎖状または分岐状で1〜12個のC原子を有するアルキルより選択される。ハロゲンは、F、Cl、BrまたはI、好ましくは、FまたはClである。基−CY=CY−は、好ましくは、−CH=CH−、−CF=CF−または−CH=C(CN)−である。基−CR00−は、好ましくは、−C(CH−である。
【0090】
式Iのポリマーにおいて、繰り返し単位の個数nは全体で、好ましくは3以上、非常に好ましくは10以上、最も好ましくは20以上であり、好ましくは500以下、非常に好ましくは1,000以下、最も好ましくは2,000以下である。
【0091】
全ての繰り返し単位におけるk(即ち、出現する指数kの全て)が1を表す式Iのポリマーが更に好ましい。
【0092】
全ての繰り返し単位におけるm(即ち、出現する指数mの全て)が1を表す式Iのポリマーが更に好ましい。
【0093】
式Iのポリマーとしては、ホモポリマー、および、統計的またはランダムコポリマー、交互コポリマーおよびブロックコポリマーなどのコポリマー、ならびに、それらの組み合わせが挙げられる。
【0094】
式Iのポリマーおよびそれらを調製するために使用されるモノマーは、それ自身は既知で、文献および、例えば、Houben−Weyl編、Methoden der organischen Chemie、Thieme−Verlag社、Stuttgart市などの有機化学の標準的な著作に記載されている方法に従うか、または、類似して合成できる。モノマーを調製するための特に適切な方法は、米国特許第6,203,724号明細書に開示されているか、または、それより誘導できる。また、合成の更に適切な方法は、下および例においても記載されている。
【0095】
例えば、式Iのホモポリマーまたはコポリマーは、式IMの1種類以上のモノマーを、それぞれ互いと、または、式IIIMの1種類以上のモノマーと反応させることによって調製できる。
【0096】
【化9】

【0097】
【化10】

式中、R1、2、X1、2、B1、2、U1、2は、式Iにおいて与えられる意味を有し、X5、6、A1、2、Zおよびpは、式IIIにおいて与えられる意味を有し、PおよびPは、それぞれ互いに独立に、反応性官能基を表す。
【0098】
およびPは、好ましくは、それぞれ互いと、または、他の官能基と縮合重合または付加重合反応できる官能基を表す。
【0099】
適切で好ましい重合性官能基P1、2としては、例えば、HO−、HWN−、HO−CW−NH−、HOOC−またはOCN−が挙げられ、ただし、WおよびWは、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜5個のC原子を有するアルキル、特には、H、メチル、エチルまたはn−ピロピルである。
【0100】
重合性基のタイプ、ポリマーの調製および作業方法に依存して、式Iおよびそれのサブ式における星印(*)は、例えば、HまたはOHまたは他の基などの対応する末端基を表してよい。
【0101】
式IMおよびIIIMのモノマーは、本発明のもう一つの態様である。
【0102】
例えば、ジオール類などのシクロヘキサンモノマーを適切なジカルボン酸と縮合でき、下のスキーム1に例示的に図解される通りコポリエステルを与える。
【0103】
【化11】

1,4−シクロヘキサンジオンを(2−フェニルエチニル)リチウムと反応させ、ジオールのシスおよびトランス異性体の混合物を与え、再結晶によってトランス異性体を単離し、ジオール(1.1)をドデカン二酸でエステル化し、ポリマー(1.2)を与えることで、コポリマー(1.2)を調製する。
【0104】
また、例えば、ホスゲン存在下において、もう一つの適切なジオールとシクロヘキサンジオール類を反応させることもでき、例えば、A.UchiyamaおよびT.Yatabe、J.Polym.Sci.Part B;Polym Phys 41巻、1554頁(2003年)によって開示される通り、コポリカーボネートを与える。1,4−シクロヘキサンジオール類からのポリマーの調製は、例えば、米国特許第4,985,536号明細書に記載されている。更に、1,4−シクロヘキサンジオール単位を含有するポリカーボネート類の調製は、例えば、英国特許出願公開第2 355 267号公報に記載されている。
【0105】
上および下に記載される通り、式Iのポリマー、それの前駆体、および、それを含む複屈折性ポリマーフィルムを調製する方法と、そこに使用され、それによって得られる新規な中間体と、式Iのポリマーまたはそれの前駆体を調製するためのそれらの使用とは、更に、本発明の態様である。
【0106】
式Iのポリマーは、好ましくは、正の複屈折および負(または「反転」)分散を有する。
【0107】
また、例えば、更なる反応性基を含む式IMまたはIIIMのモノマー単位を使用する場合、本発明によるポリマーおよびポリマーフィルムは架橋されても構わない。このタイプの式IMまたはIIIMの好ましいモノマー単位は、基B1、2およびA1、2の少なくとも1つが、それぞれ、少なくとも1つの重合性基P(該基は、ラジカルまたはイオン連鎖重合、重付加または重縮合などの重合反応に関与できるか、または、ポリマー類似反応において、例えば、縮合または付加により、ポリマー骨格にグラフトすることができる。)で置換されているものである。ラジカル、カチオンまたはアニオン重合などの連鎖重合反応のための重合性基Pが特に好ましい。アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、クロロアクリレート、シアノアクリレート、スチレン、スチリルオキシまたはビニルオキシ基などのC−C二重結合または三重結合を含む重合性基、および、オキセタンまたはエポキシ基などの開環反応によって重合できる重合性基が非常に好ましい。
【0108】
式Iのポリマーおよびポリマーフィルムは、既知の方法、例えば、ジアルコールおよび2価酸(例えば、式IMおよびIIIMから選択され、ただし、PおよびPはOHであり、その他はCOOHである。)の混合物を有する溶液中の重縮合によってポリエステルを与えるか、または、例えば、式IM(ただし、PがOHである。)より選択されるジアルコールと、ホスゲンガスとの界面重縮合よってポリカーボネートを与えることにより調製できる。
【0109】
本発明によるポリマーフィルムの厚みは、好ましくは、0.3〜5ミクロン、非常に好ましくは、0.5〜3ミクロン、最も好ましくは、0.7〜1.5ミクロンである。配向層としての使用には、0.05〜1、好ましくは0.1〜0.4ミクロンの厚みを有する薄膜が好ましい。
【0110】
本発明のポリマーフィルムおよび材料は、例えば、LCD中において広視野角におけるコントラストおよび輝度を改良し、色度を低減するために、リターデーションまたはコンペンセーションフィルムとして使用できる。それはLCDのスイッチ可能なLCセルの外側、または、通常、ガラス基板である基板間で使用でき、スイッチ可能なLCセルを形成し、スイッチ可能なLC媒体を含有する(セル内用途)。
【0111】
本発明のポリマーフィルムおよび材料は従来のLCディスプレイ中、例えば、DAP(deformation of aligned phases:配向相の変形)、ECB(electrically controlled birefringence:電気制御複屈折)、CSH(colour super homeotropic:有色スーパーホメオトロピック)、VA(vertically aligned:垂直配向)、VANまたはVAC(vertically aligned nematicまたはcholesteric:垂直配向ネマチックまたはコレステリック)、MVA(multi−domain vertically aligned:複数領域垂直配向)、PVA(patterned vertically aligned:パターン化垂直配向)またはPSVA(polymer stabilised vertically aligned:ポリマー安定化垂直配向)モードなどの垂直配向を有するディスプレイ;OCB(optically compensated bend cellまたはoptically compensated birefringence:光学的補償ベンドセルまたは光学的補償複屈折)、R−OCB(reflective OCB:反射OCB)、HAN(hybrid aligned nematic:ハイブリッド配向ネマチック)またはパイ−セル(π−cell)モードなどのベンドまたはハイブリッド配向を有するディスプレイ;TN(twisted nematic:ツイストネマチック)、HTN(highly twisted nematic:高度ツイストネマチック)、STN(super twisted nematic:スーパーツイストネマチック)、AMD−TN(active matrix driven TN:アクティブマトリクス駆動TN)モードなどのツイスト配向を有するディスプレイ;IPS(in plane switching:面内スイッチング)モードのディスプレイ、または光学的等方相においてスイッチするディスプレイにおいて使用できる。
【0112】
本発明の層、フィルムおよび材料は、好ましくは、光学的一軸フィルム(Aプレート、Cプレート、負のCプレート、Oプレート)、例えば、ツイスト1/4波長箔(QWF:quarter wave foil)、色消しリターダー、色消しQWFまたは半波長箔(HWF:half wave foil)などのツイスト光学的リターダー、および光学的二軸フィルムより選択される各種タイプの光学的フィルム用に使用できる。層および材料におけるLC相構造は、コレステリック、スメクチック、ネマチックおよびブルー相より選択できる。層におけるLC材料の配向は、ホメオトロピック、スプレイ、チルト、平面およびブルー相配向より選択できる。層は均一に配向しても、または、異なる配向のパターンを示しても構わない。
【0113】
フィルムは、LCDの視野角増大のための光学的コンペンセーションフィルムとして、または、輝度増強フィルムにおける部品として、更には、反射型または半透過型LCDにおける色消し素子として使用できる。更に好ましい用途および装置としては、
−複合CD/DVD/HD−DVD/ブルーレイなどで、読み出し、書き込み、再書き込みのデータ記憶システムを含む、複数の波長において同様の位相シフトを必要とする光電子装置におけるリターディング部品、
−カメラなどの光学的装置用の色消しリターダー、
−OLEDおよびLCDを含むディスプレイ用の色消しリターダー
が挙げられる。
【0114】
以下の例は、本発明を制限することなく説明することを意図している。また、以下に記載される方法、構造および特性は、本発明において特許請求されているが、先述の明細書または例において明らかには記載されていない材料にも適用または転用できる。
【0115】
上および下において、パーセンテージは重量パーセントである。全ての温度は摂氏度で与えられる。m.p.は融点を表し、cl.p.は透明点を表し、Tgはガラス転移温度を表す。更に、Cは結晶状態、Nはネマチック相、Sはスメクチック相、Iは等方相である。これらの記号の間のデータは転移温度を表す。Δnは589nmおよび20℃において測定される光学的異方性(Δn=n−n、ただし、nは分子の長軸に平行な屈折率を表し、nはそれに垂直な屈折率を表す)を表す。他に明言しない限り、光学的および電気光学的データは20℃で測定される。
【0116】
本明細書の記載および請求項において、他に明言しない限り、リターデーションおよび分散は上記の通りの方法によって決定される。
【0117】
他に明言しない限り、上および下で与えられる通りの重合性混合物の成分のパーセンテージは混合重合性混合物中の固形分の総量を言うもので、即ち、溶媒を含まない。
【実施例】
【0118】
<例1>
上のスキーム1に示される通り、コポリマー(1)を調製した。
【0119】
【化12】

<トランス−1,4−ビス−フェニルエチニル−シクロヘキサン−1,4−ジオール(1.1)の合成>
フェニルアセチレン(4.18ml、37.32mmol)を160mlのDME中に溶解した。溶液をドライアイス浴上で−78℃まで冷却した。シクロヘキサン(28.18ml、45.09mmol)およびTMEDA(5.42ml、37.32mmol)中の1.6Mのブチルリチウムの溶液を、ゆっくりと加えた。溶液を60分間攪拌した。1,4−シクロヘキサンジオン(2.00g、17.84mmol)を80mlのDME中に溶解し、およそ50分にわたり滴下で加えた。溶液を30分間攪拌し、次いで、塩化アンモニウムおよび氷の溶液中に注ぐ前に、放置して室温まで温めた。塩酸を加えて、溶液をpH0まで酸性とした。次いで、それをホイルで覆い、ドラフト内で5日間放置した。溶液をDCMで抽出し、水およびブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮して、薄茶色のオイルとして生成物を生じ、生成物を静置して結晶化した。
【0120】
生成物をDCM/ペトロールより再結晶化した。熱濾過によって、白色の固体として生成物(0.62g)を単離した。GCMSによれば100%純粋であった。1H NMR(7388.2)は、芳香族および−OH基について期待されるシグナルを示し、脂肪族は溶媒(DMSO/THF)のために不明瞭であり、TLCによれば1つのスポットであり(ベースライン上に非常に薄いスポットの可能性はある)、HPLCによれば僅かに不純物があった。
【0121】
最終化合物の構造をX線結晶学で検証し、それは最終生成物がトランス異性体であることを示した。
【0122】
<(1)の合成>
トリフルオロ酢酸無水物(0.52ml、3.73mmol)を、5mlのDCM中のドデカン二酸(0.43g、1.86mmol)の溶液に加えた。溶液を窒素下において30分間攪拌した。トランス−1,4−ビス−フェニルエチニル−シクロヘキサン−1,4−ジオール(1.1)(0.59g、1.86mmol)を50mlの三口フラスコに加え、2.5mlのDCM中で部分的に溶解した。先に作製した混合無水物を該アルコールに加え、反応物を一晩室温において攪拌した。引き続いて水を加え、反応物を約2時間攪拌した。層を分離し、水、炭酸水素ナトリウム溶液、水およびブラインで有機物を洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮して、暗褐色のオイルとして生成物を生じた(0.64g)。
【0123】
該オイルをアセトンおよび少量のペトロール中において溶解し、冷凍庫内で1週間放置したが、固形物は形成されなかった。溶液を氷上において攪拌し、メタノール(約250ml)およびHCl(約4ml)の溶液を加えた。溶液は濁りを生じ、冷凍庫内で一晩放置した。固形物が形成されたが、濾過するには微細過ぎた。真空下で溶液を濃縮して、DCMおよびペトロールを殆ど除去した。より大きな粒径を有する固形物が形成され、これを、濾液からの二次産物と合わせて回収した。GPCによって1305のポリマー質量が示され、5個の単位の鎖長が示唆された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物。
【化1】

(式中、
kは、それぞれの出現において互いに独立に、0または1であり、ただし、少なくとも1つの繰り返し単位におけるkは1であり、
mは、それぞれの出現において互いに独立に、0または1であり、
nは、1より大きい整数であり、
、Rは、それぞれ互いに独立に、直鎖状、分岐状または環状で、1〜20個、好ましくは1〜12個のC原子を有するアルキレン(該基は無置換であるか、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されており、ただし、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれの場合で互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−SO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR00−、−CY=CY−または−C≡C−で置き換えられていてもよい。)、または、単結合であり、
、Yは、それぞれ互いに独立に、H、F、Cl、CNまたはRであり、
、R00は、それぞれ互いに独立に、Hまたは1〜12個のC原子を有するアルキルであり、
、Xは、それぞれ互いに独立に、好ましくは、−O−、−S−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR−、−OCH−、−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CFO−、−OCF−、−CFS−、−SCF−、−CHCH−、−(CHn1−、−(CFn1−、−CFCH−、−CHCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CY=CY−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−CH=CR−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−、−CR00−および単結合から成る群より選択される連結基であり、
n1は、1、2、3、4、5または6であり、
、Bは、それぞれ互いに独立に、好ましくは、−C≡C−、−CY=CY−、置換されていてもよい芳香族またはヘテロ芳香族基、および、前述の組み合わせから成る群より選択される高い分極率を有する2価の基であり、
、Uは、それぞれ互いに独立に、Hまたは式IIの1価の基であり、ただし、星印は、それぞれ、隣接する基BまたはBへの連結を表し、
【化2】

、Rは、それぞれ互いに独立に、直鎖状、分岐状または環状で、1〜20個、好ましくは1〜12個のC原子を有するアルキル(該基は無置換であるか、F、Cl、Br、IまたはCNで一置換または多置換されており、ただし、1個以上の隣接していないCH基は、それぞれの場合で互いに独立に、Oおよび/またはS原子が互いに直接連結しないようにして、−O−、−S−、−NH−、−NR−、−SiR00−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−、−O−CO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−SO−、−CO−NR−、−NR−CO−、−NR−CO−NR00−、−CY=CY−または−C≡C−で置き換えられていてもよい。)、または、単結合であり、
、Xは、それぞれ互いに独立に、Xの意味の1つを有し、
は、それぞれの出現において互いに独立に、Xの意味の1つを有し、
oは、0、1、2、3、4または5であり、
GはRの意味の1つを有するか、または、式IIIの2価の基であり、
【化3】

、Xは、それぞれ互いに独立に、Xの意味の1つを有し、
、Aは、それぞれ互いに独立に、置換されていてもよい炭素環状、ヘテロ環状、芳香族またはヘテロ芳香族基であり、
は、それぞれの出現において互いに独立に、Xの意味の1つを有し、および
pは、0、1、2または3である。)
【請求項2】
およびBが、−C≡C−、−C≡C−C≡C−、−C≡C−C≡C−C≡C−、−C≡C−C≡C−C≡C−C≡C−および下式から成る群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【化4】

(式中、rは、0、1、2、3または4であり、Lは、F、Cl、Br、I、−CN、−NO、−NCO、−NCS、−OCN、−SCN、−C(=O)NR00、−C(=O)X、−C(=O)OR、−C(=O)R、−NR00、−OH、−SF、置換されていてもよいシリル、1〜12個のC原子を有するアリール、および、直鎖状または分岐状で1〜12個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシより選択され、ただし、1個以上のH原子はFまたはClで置き換えられていてもよく、ただし、RおよびR00は請求項1において定義される通りであり、Xはハロゲンである。)
【請求項3】
およびRが単結合であることを特徴とする請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
およびUがHであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
1〜6が、−O−、−CO−、−CO−O−、−O−CO−および−O−CO−O−から選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
およびAが1,4−フェニレン(ただし、1個、2個または3個のCH基はNで置き換えられていてもよい。)またはシクロヘキシレン−1,4−ジイル(ただし、1個または2個の隣接していないCH基はOおよび/またはSで置き換えられていてもよい。)から選択され、ただし、これら全ての環は無置換であるか、または、1個、2個、3個または4個の請求項2において定義される通りの基Lで置換されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
2価の基Gが以下のサブ式から成る群より選択されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【化5】

【化6】

(式中、iは、1〜12、好ましくは4〜8の整数である。)
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物を含む複屈折性ポリマーフィルム。
【請求項9】
光学的、電子的および電気光学的部品および装置における、好ましくは、負の光学的分散を有する光学的フィルム、リターダーまたはコンペンセータにおける請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物およびポリマーフィルムの使用。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物またはポリマーフィルムを含む光学的、電子的または電気光学的部品または装置。
【請求項11】
電気光学的ディスプレイ、LCD、光学的フィルム、偏光子、コンペンセータ、ビームスプリッター、反射フィルム、配向層、カラーフィルター、ホログラフィック素子、ホットスタンプ箔、着色画像、装飾またはセキュリティーマーク、LC顔料、接着剤、非線形光学(NLO:non−linear optic)装置、光学情報記憶装置、電子装置、有機半導体、有機電界効果トランジスタ(OFET:organic field effect transistor)、集積回路(IC:integrated circuit)、薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)、無線識別(RFID:Radio Frequency Identification)タグ、有機発光ダイオード(OLED:organic light emitting diode)、有機発光トランジスタ(OLET:organic light emitting transistor)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、有機光起電(OPV:organic photovoltaic)装置、有機太陽電池(O−SC:organic solar cell)、有機レーザーダイオード(O−レーザー:organic laser diode)、有機集積回路(O−IC:organic integrated circuit)、照明装置、センサー装置、電極材料、光導電体、光検出器、電子写真記録装置、キャパシタ、電荷注入層、ショットキーダイオード、平坦化層、帯電防止フィルム、導電性基材、導電性パターン、光導電体、電子写真用途、電子写真記録、有機記憶装置、バイオセンサー、バイオチップ、複数の波長において同様の位相シフトを必要とする光電子装置、複合CD/DVD/HD−DVD/ブルーレイ、読み出し、書き込み、再書き込みデータ記憶システムまたはカメラより選択されることを特徴とする請求項10に記載の装置または部品。
【請求項12】
Aプレート、Cプレート、負のCプレートまたはOプレートより選択される光学的一軸フィルム、ツイスト光学的リターダー、ツイスト1/4波長箔(QWF:quarter wave foil)、光学的二軸フィルム、色消しリターダー、色消しQWFまたは半波長箔(HWF:half wave foil)、コレステリック、スメクチック、ネマチックまたはブルー相を有するフィルム、ホメオトロピック、スプレイ、チルト、平面またはブルー相配向を有するフィルム(該フィルムは均一に配向しているか、または、異なる配向のパターンを示す)であることを特徴とする請求項10に記載の光学的部品。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の化合物を調製する方法であって、式IMの1種類以上のモノマーを、それぞれ互いと、または、式IIIMの1種類以上のモノマーと反応させる方法。
【化7】

【化8】

(式中、R1、2、X1、2、B1、2、U1、2、A1、2、Z、pおよびX5、6は請求項1において与えられる意味を有し、PおよびPは、それぞれ互いに独立に、反応性官能基を表す。)

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−532155(P2012−532155A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518775(P2012−518775)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003655
【国際公開番号】WO2011/003505
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】