説明

シクロペンタノンの製造方法

少なくとも次の段階(i)〜(iii):i) シクロペンテンを含有する混合物G(i)を準備する段階;ii) 液状又は超臨界状のN2O又はガス混合物G(ii)の全体積に対してN2Oを少なくとも20体積%含有する液化された又は超臨界状のガス混合物G(ii)を準備する段階;iii) 混合物G(i)を、液状又は超臨界状のN2O又は液化された又は超臨界状の混合物G(ii)と接触させて、シクロペンタノンを含有する混合物G(iii)を得る段階を有するにおいて、混合物G(i)が、混合物G(i)の全質量に対して少なくとも25質量%及び多くても95質量%のシクロペンテンを含有することを特徴とする、シクロペンタノンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロペンテンを多くても95質量%まで含有する混合物から出発する、シクロペンタノンの製造方法に関する。シクロペンテンの他に、前記混合物は他の溶剤を含有してもよく、その際、例えば他の炭化水素が混合成分として有利である。本発明の場合に、シクロペンタノンはN2Oとの反応により得られ、その際、純粋なN2O又はN2Oを含有する混合物を液状又は超臨界状の形で使用する。さらに、本発明は、シクロペンタノンを製造するための、特に大規模工業的に得られる、シクロペンテンを含有する混合物、例えば有利に炭化水素混合物の使用に関し、その際、同様に大規模工業的に生じる、N2O含有ガス混合物が反応のために使用される。
【0002】
シクロペンタノンは、現在では大規模工業的に、ほとんど専ら高温でアジピン酸の接触環化によって製造されている。この反応はシクロペンタノンの良好な収率を提供するが、使用したアジピン酸の約42%は二酸化炭素と水との形で失われてしまう。この低い原子効率は特にこの方法の経済性を低めている。確かに、この製造はアジピン酸エステルから出発することもできるが、原子効率はこの場合もなお低い。
【0003】
文献では、他の方法として、実験室規模でシクロペンテンをN2Oで酸化させることを提案している。GB 649,680は、アルケン、例えばシクロヘキセン又はシクロヘプテンをN2Oと反応させることを開示している。もちろん、この文献の実施例では、シクロペンテンとN2Oとの反応が明確には記載されてはいない。実施例中でN2Oと反応させる、置換されていない他のオレフィンは、純粋な化合物として使用されるか又は溶剤のジメチルアニリンと一緒に使用される。
【0004】
GB 649,680と同等のUS 2,636,898は、実施例において、シクロペンテンとN2Oとの反応を同様にわずかに開示しているだけである。この実施例でも、置換されていないオレフィンを専ら純粋な形で溶剤の添加なしでN2Oと反応させている。
【0005】
F. S. Bridson-Jones et al.は、J. Chem. Soc., S. 2999-3008 (1951)において、オレフィンとN2Oとの反応を記載していて、その際、例えばシクロヘキセンをシクロヘキサノンへ反応させている。この場合でも、シクロヘキセンはそれ自体で例えば付加的な溶剤を添加せずに使用されている。同様に、例えばエチレン、アセナフチレン及びメチレンシクロブタンの反応が記載されていて、その際シクロヘキサン又はデカリンを溶剤として使用している。
【0006】
K. A. Dubkov et al.著React. Kinet. Catal. Lett., Vol. 77, No. 1, p. 197-205 (2002)も、純粋な、99%のシクロペンテンと純粋なN2O(純粋、医薬品等級)との反応が記載されている。既に全ての他の引用された文献と同様に、反応の際に溶剤は使用していない。同様にこの反応において、シクロペンテンの他に他の炭化水素は存在していない。
【0007】
新規の学術論文(G. L. Panov et al.著, "Non-Catalytic Liquid Phase Oxidation of Alkenes with Nitrous Oxide. 1. Oxidation of Cyclohexene to Cyclohexanone", React. Kinet. Catal. Lett. Vol. 16, No. 2 (2002) p. 401-405,及びK. A. Dubkov et al.著, "Non-Catalytic Liquid Phase Oxidation of Alkenes with Nitrous Oxide. 2. Oxidation of Cyclopentene to Cyclopentanone", React. Kinet. Catal. Lett. Vol. 77, No. 1 (2002) p. 197-205)には、同様にオレフィン系化合物の一酸化二窒素による酸化が記載されている。E. V. Starokon et al.の学術論文"Liquid Phase Oxidation of Alkenes with Nitrous Oxide to Carbonyl Compounds" in Adv. Synth. Catal. 2004, 346, 268 - 274も、液相でのアルケンの一酸化二窒素による酸化のメカニズム研究を内容としている。
【0008】
アルケンと一酸化二窒素からのカルボニル化合物の合成は、多様な国際特許出願にも記載されている。WO 03/078370は、脂肪族アルケンと一酸化二窒素からのカルボニル化合物の製造方法を開示している。この反応は20〜350℃の範囲内の温度で、0.01〜100atmの圧力で実施される。このWO 03/078374は、シクロヘキサノンを製造する相応する方法を開示している。WO 03/078372の場合には、4〜5個のC原子を有する環状ケトンを製造する。WO 03/078375の場合には、このプロセス条件下で、環状ケトンを7〜20個のC原子を有する環状アルケンから製造する。WO03/078371は、置換アルケンからの置換ケトンの製造方法を開示している。WO 04/000777は、ジアルケン及びポリアルケンを一酸化二窒素と反応させて、相応するカルボニル化合物にする方法を開示している。一酸化二窒素の清浄化は、この文献では述べられていない。
【0009】
上記に引用した学術論文中に記載されたように、純粋な出発物質の使用は、反応メカニズムの解明のためには大いに価値があるが、実際にいくつかの欠点と関連している。例えば前記した高い純度のシクロペンテンは、極めて高い工業的手間をかけて得られるにすぎない。シクロペンテンを不可欠に大規模工業的量で生じる工業的プロセスの場合には、このシクロペンテンは他の炭化水素、例えばシクロペンタンとの混合物の形で存在する。同等の沸点のために、例えば蒸留による方法を用いた分離は、著しい費用に結びつく。
【0010】
従って、本発明の根底をなす課題の一つは、シクロペンタノン製造の際に出発物質として、例えば大規模工業的方法で生じるような、多くても95質量%のシクロペンテンを有する混合物の形で存在するシクロペンテンを使用することができる方法を提供することであった。
【0011】
従って、本発明は、少なくとも次の段階(i)〜(iii):
(i) シクロペンテンを含有する混合物G(i)を準備する段階;
(ii) 液状又は超臨界状のN2O又はガス混合物G(ii)の全体積に対してN2Oを少なくとも20体積%含有する液化された又は超臨界状のガス混合物G(ii)を準備する段階;
(iii) 混合物G(i)を、液状又は超臨界状のN2O又は液化された又は超臨界状の混合物G(ii)と接触させて、シクロペンタノンを含有する混合物G(iii)を得る段階を有するシクロペンタンノンの製造方法において、
混合物G(i)が、混合物G(i)の全質量に対して少なくとも25質量%及び多くても95質量%のシクロペンテンを含有することを特徴とする、シクロペンタノンの製造方法に関する。
【0012】
有利に液状N2O又は液化された混合物G(ii)が使用される。
【0013】
DE 103 19 489.4は、酸化剤として一酸化二窒素の使用下でのシクロペンタノンの製造方法を開示している。液状又は超臨界状の一酸化二窒素の使用はしかしながらそこには述べられていない。
【0014】
基本的に、混合物G(i)はシクロペンテンに加えて他の化合物を含有することができる。特に、(iii)による接触の際に同様にN2Oと反応することができる化合物も適している。この場合、原則としてN2Oと反応することができるが、(iii)により選択された反応条件でN2Oに対して不活性である化合物が有利である。本発明の範囲内で使用されるような「不活性」の概念は、(iii)により選択された反応条件でN2Oと反応しないか又はシクロペンテンとN2Oとの反応に比べて、(iii)から生じる混合物中で、N2Oとの反応生成物は、(iii)から生じる混合物の全質量に対してそれぞれ、多くても15質量%まで、有利に多くても10質量%まで、特に有利に多くても5質量%まで含有する程度に限定的に反応する化合物を表す。
【0015】
従って、本発明は、前記したような、混合物G(i)がシクロペンテンに加えて、(iii)の接触の際にN2Oに対して不活性の少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする方法にも関する。
【0016】
不活性化合物として、本発明の範囲内で、アルカン、例えばシクロペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン又はベンゼン又はアルキルベンゼン、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼン又はエーテル、例えばメチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル又はエステル、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、安息香酸メチル又はニトリル、例えばアセトニトリル、ベンゾニトリル又はアルコール、例えばブタノール、2−エチルヘキサノール、エタノール又はフェノール類、例えばフェノール、クレゾール又はアミン、例えばアニリン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン又は2種以上の前記化合物からなる混合物又は前記種類の2種以上の化合物からなる混合物が適している。
【0017】
(iii)により選択された反応条件でN2Oと反応しない化合物が特に有利である。
【0018】
本発明による方法の関連する有利な実施態様の範囲内で、出発混合物G(i)として、溶剤の存在でジシクロペンタジエンの分解及び部分水素化から得られかつシクロペンテンを含有する混合物が使用され、その際、前記溶剤は前記の不活性化合物から選択される。有利に、この場合、部分水素化のためにジシクロペンタジエンとトルエンとからなる2:1混合物が使用される。この方法は、例えばJP 2000053597 Aに記載されていて、この文献はこれに関して本願明細書の文脈に完全に援用される。JP 200053597の場合には、シクロペンタジエンは芳香族炭化水素、有利にトルエンの存在でジシクロペンタジエンの熱分解により得られ、この場合に転化率は98%である。得られたガスは、パラジウム/酸化アルミニウム触媒が充填されている特殊鋼反応管内へ案内される。前記ガスは前記反応管の出口で冷却器によって凝結される。
【0019】
本発明による方法のさらに有利な実施態様の場合に、混合物G(i)は、前記混合物G(i)の全質量に対して少なくとも99質量%まで炭化水素からなる。炭化水素の他に、従って、前記混合物G(i)はなお多くても1質量%まで少なくとも1種の他の化合物を含有することができ、この場合、特に前記の炭化水素とは異なる、少なくとも1種の前記の不活性の有利な化合物を多くても1質量%まで含有することができる。他の化合物も、(iii)によるシクロペンテンの反応を妨げない条件で、多くても1質量%まで含むことができる。
【0020】
本発明の範囲内で使用される「炭化水素混合物」の概念は、それぞれ非置換の炭化水素であり、従ってC及びHの原子だけからなる化合物からなる混合物を表す。本発明の範囲内で使用される炭化水素混合物は、この場合、それぞれの混合物G(i)の全質量に対して多くても1質量%まで他の化合物を含有する。さらに、前記混合物は、多くても0.5質量%まで、さらに有利に多くても0.1質量%まで、さらに有利に多くても0.01質量%まで、殊に有利に多くても0.001質量%まで他の化合物を含有する。それぞれ使用された試験方法の測定精度の範囲内で他の化合物を含有しない混合物G(i)が特に有利である。
【0021】
有利な実施態様の場合に、混合物G(i)は(iii)により選択された反応条件で液状又は超臨界状である。特にこの場合、周囲温度及び大気圧で液状である混合物G(i)が有利である。この場合、例えばそれぞれ含まれる化合物が周囲温度及び大気圧で液状である混合物を挙げることができる。同様に、周囲温度及び大気圧で液状であり、かつこの場合に例えば周囲温度及び大気圧で固形又はガス状であるが、周囲温度及び大気圧で混合物G(i)中に溶解して存在する少なくとも1種の化合物を含有する混合物も考えられる。
【0022】
本発明による方法の同様に有利な実施態様の範囲内で、少なくとも99質量%までC5炭化水素と5個より多い炭素原子を有する炭化水素とからなる混合物G(i)が使用される。シクロペンテンの他に、従って少なくとも1種の他のC5炭化水素又は5個より多い炭素原子を有する少なくとも1種の炭化水素又は少なくとも1種の他のC5炭化水素と5個より多い炭素原子を有する少なくとも1種の炭化水素とからなる混合物をG(i)中に含有することができる。
【0023】
従って、本発明は、前記したように、混合物G(i)がC5炭化水素と5個より多い炭素原子を有する炭化水素を少なくとも99質量%含有することを特徴とする方法も記載する。
【0024】
特に有利な5個より多い炭素原子を有する炭化水素として、既に不活性化合物の範囲内で挙げられた相応する炭化水素が使用される。
【0025】
既に前記したように、出発混合物G(i)として、有利に大規模工業的方法で生じるような混合物が使用される。本発明の範囲内で、この場合、少なくとも95質量%まで、さらに有利に少なくとも97質量%まで、殊に有利に少なくとも99質量%まで、C5炭化水素と、C6炭化水素と、C7炭化水素とからなる混合物が有利である。
【0026】
従って、本発明は前記したように、混合物G(i)が少なくとも99質量%までC5炭化水素とC6炭化水素又はC5炭化水素とC7炭化水素又はC5炭化水素とC6炭化水素とC7炭化水素とを含有することを特徴とする方法にも関する。
【0027】
本発明の範囲内で、この場合、混合物G(i)はシクロペンテンの他に少なくとも1種の他のC5炭化水素又は少なくとも1種のC6炭化水素又は少なくとも1種のC7炭化水素又は少なくとも1種の他のC5炭化水素と少なくとも1種のC6炭化水素とからなる混合物又は少なくとも1種の他のC5炭化水素と少なくとも1種のC7炭化水素とからなる混合物又は少なくとも1種の他のC5炭化水素と少なくとも1種のC6炭化水素と少なくとも1種のC7炭化水素とからなる混合物を含有することができる。
【0028】
本発明による方法の有利な実施態様の範囲内で、出発混合物G(i)として、スチームクラッカー又は精油所から得られかつシクロペンテンを含有する炭化水素混合物が使用される。この関連で、例えばスチームクラッカー装置からの、主にC5炭化水素及びC6炭化水素だけを含有するC5カットが有利である。6個より多い炭素原子を有する炭化水素は、大規模工業的に生じるC5カット中には含まれず、このC5カットはシクロペンテンの他に、例えば2−ブテン、イソペンタン、1−ペンテン、2−メチルブテン−1、トランス2−ペンテン、n−ペンタン、シス−2−ペンテン、2−メチルブテン−2、シクロペンタン、2,2−ジメチルブタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘキサン及びベンゼンを有する。一般に、スチームクラッカー装置からのC5カットは、シクロペンテンを5〜60質量%の範囲内で、有利に15〜50質量%の範囲内で含有する。
【0029】
従って、本発明は、前記したように、混合物G(i)がC5炭化水素とC6炭化水素とからなる混合物を少なくとも99質量%まで含有することを特徴とする方法も記載する。
【0030】
本発明の場合に、有利にC5カットとしてスチームクラッカー装置から得られる主にC5炭化水素とC6炭化水素とからなる混合物自体を使用することができる。有利に、主にC5炭化水素とC6炭化水素からなる混合物は、本発明による段階(iii)の反応の前に精製され、その際、有利にシクロペンテンと比較して低沸点化合物が分離される。この場合に考えられる全ての方法が使用可能であるが、混合物の蒸留による分離が有利である。
【0031】
本発明の範囲内で、この場合に、シクロペンテンよりも沸点の低いC5炭化水素及び/又はC6炭化水素を多くても10質量%まで含有する有利な混合物G(i)が得られる。精製すべき混合物G(i)中に場合により付加的に少なくとも1種のC4炭化水素が含有される場合には、有利に使用される蒸留によって、シクロペンテンよりも沸点の低いC4炭化水素及び/又はC5炭化水素及び/又はC6炭化水素を多くても10質量%まで含有する有利な混合物G(i)が得られる。本発明の範囲内で、この場合に、シクロペンテンよりも沸点の低いC5炭化水素及び/又はC6炭化水素を多くても5質量%まで、さらに有利に多くても3質量%まで、特に有利に多くても2質量%まで含有する特に有利な混合物G(i)が得られる。精製すべき混合物G(i)中に場合により付加的に少なくとも1種のC4炭化水素が含有される場合には、有利に使用される蒸留によって、シクロペンテンよりも沸点の低いC4炭化水素及び/又はC5炭化水素及び/又はC6炭化水素を多くても5質量%まで、さらに有利に多くても3質量%まで、特に有利に多くても2質量%まで含有する有利な混合物G(i)が得られる。
【0032】
従って、本発明は、前記したように、混合物G(i)が、混合物G(i)の全質量に対して、C5炭化水素及びC6炭化水素を少なくとも99質量%と、混合物G(i)の全質量に対して、シクロペンテンに比べて沸点の低い炭化水素を多くても2質量%含有することを特徴とする方法も記載する。
【0033】
本発明による方法の同様に有利な実施態様の範囲内で、少なくとも99質量%までC5炭化水素とC7炭化水素とからなる混合物G(i)が使用される。シクロペンテンの他に、従って少なくとも1種の他のC5炭化水素又は少なくとも1種のC7炭化水素又は少なくとも1種の他のC5炭化水素と少なくとも1種のC7炭化水素とからなる混合物をG(i)中に含有することができる。
【0034】
従って、本発明は、前記したように、混合物G(i)がC5炭化水素とC7炭化水素とを少なくとも99質量%含有することを特徴とする方法も記載する。
【0035】
7炭化水素として、例えば特に有利にトルエンが挙げられる。
【0036】
本発明の方法の関連する有利な実施態様の範囲内で、出発混合物G(i)として、溶剤としてトルエンの存在でジシクロペンタジエンの分解及び部分水素化から得られかつシクロペンテンを含有する炭化水素混合物が使用される。有利に、この場合、部分水素化のためにジシクロペンタジエンとトルエンとからなる2:1混合物が使用される。この方法は、例えばJP 2000053597 Aに記載されていて、この文献はこれに関して本願明細書の文脈に完全に援用される。
【0037】
このように得られた混合物は、一般にシクロペンテンを25〜75質量%の範囲内で、有利に35〜65質量%の範囲内で、特に有利に40〜60質量%の範囲内で含有する。シクロペンテンの他に、この反応混合物は主にシクロペンタンとトルエンとを含有する。一般に、本発明による方法の範囲内で混合物G(i)として使用することができるジシクロペンタジエンとトルエンとからなる混合物の分解及び部分水素化から得られた混合物は、少なくとも99質量%までシクロペンテン、トルエン及びシクロペンタンからなる。
【0038】
少なくとも99質量%までシクロペンテン、トルエン及びシクロペンタンからなるこの有利な実施態様により得られる混合物は、それ自体使用することができる。
【0039】
さらに有利な実施態様の場合に、ジシクロペンタジエンとトルエンとからなる混合物の分解及び部分水素化から得られた混合物を、本発明による方法において混合物G(i)として使用する前に少なくとも1つの蒸留による分離にかけて、シクロペンテンを一般に60〜95質量%の範囲内で、有利に80〜90質量%の範囲内で、特に有利に75〜85質量%の範囲内で含有する低沸点混合物が得られる。さらに、この低沸点混合物は、トルエンを一般に多くても20質量%、有利に多くても10質量%、特に有利に多くても5質量%の範囲内で含有し、かつシクロペンタンを一般に5〜25質量%の範囲内で、有利に7〜22質量%の範囲内で、特に有利に10〜20質量%の範囲内で含有する。この低沸点混合物を、次に本発明による方法において混合物G(i)として使用する。
【0040】
さらに有利に、本発明による方法の範囲内で使用される混合物G(i)は、混合物G(i)の全質量に対してそれぞれ、シクロペンテンを30〜90質量%の範囲内で、特に有利に40〜90質量%の範囲内で、特に有利に45〜90質量%の範囲内で、殊に有利に50〜85質量%の範囲内で含有する。
【0041】
従って、特に本発明は、シクロペンタノンの製造のための出発物質としてシクロペンテン含有炭化水素混合物の使用において、シクロペンテン含有炭化水素混合物がスチームクラッカー装置のC5カット又はシクロペンタジエンの部分水素化から得られかつシクロペンテンを含有する混合物又はスチームクラッカー装置のC5カットとシクロペンタジエンの部分水素化から得られかつシクロペンテンを含有する混合物との混合物であることを特徴とする、使用に関する。
【0042】
本発明の場合に、段階(iii)による反応のために、少なくとも20体積%までN2Oを含有するガス混合物G(ii)を使用し、その際、一般に、純粋なN2Oを使用することができ、その際、前記ガス混合物G(ii)又はN2Oは、液状又は超臨界状の形で使用され、有利に液状の形で使用される。この場合、圧力及び温度は有利に、ガス混合物が液状又は超臨界状の形で、特に有利に液状の形で存在するように選択する。この場合、本発明により、混合物G(ii)又はN2Oは溶剤中に吸収させることもできる。
【0043】
本発明の範囲内で使用するような「ガス混合物」の概念は、大気圧及び周囲温度でガス状の状態で存在する2種又はそれ以上の化合物からなる混合物を表す。温度が変化した場合又は圧力が変化した場合に、前記ガス混合物は他の状態、例えば液状で存在することもでき、かつ本発明の範囲内ではさらにガス混合物として表される。
【0044】
本発明の場合に、このガス混合物は液化され、次に液状の形で使用される。この場合、一酸化二窒素又は一酸化二窒素を含有するガス混合物は、当業者に公知の全ての方法により、特に圧力及び温度の適切な選択により液化することができる。
【0045】
有利な実施態様の場合に、N2Oを少なくとも20体積%含有するガス混合物G(ii)を使用し、その際、20〜97体積%の範囲内で、有利に30〜95体積%の範囲内で、さらに有利に40〜94体積%の範囲内で、殊に50〜93体積%の範囲内でN2Oを含有する混合物G(ii)が有利に使用される。
【0046】
本発明の範囲内で、ガス混合物又は液状化されたガス混合物の組成は体積%で示される。この場合、ガス混合物の組成に対する表示は、大気圧及び周囲温度で表される。
【0047】
従って、本発明は、前記したように、混合物G(ii)がN2Oを多くても93体積%含有することを特徴とする方法も記載する。
【0048】
ガス混合物G(ii)を使用する場合に、この混合物はN2Oの他になお少なくとも1種の他のガスを含有することができる。この場合、段階(iii)によるシクロペンテンとN2Oとの反応が可能であることが保証される限りほぼ全てのガスが考えられる。特に、従って、N2Oの他に少なくとも1種の不活性ガスを含有する混合物G(ii)が有利である。本発明の範囲内で使用されるような「不活性ガス」の概念は、N2Oとシクロペンテンとの反応に関して不活性に挙動するガスを表す。不活性ガスとして、例えば窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、アルゴン、メタン、エタン及びプロパンが挙げられる。
【0049】
同様に、混合物G(ii)中に、N2Oとシクロペンテンとの反応において不活性ガスとして挙動しないガスも含むことができる。このようなガスとして、特にNOx又は例えば酸素が挙げられる。本発明の範囲内で解釈されるような「NOx」の概念は、N2Oを除く全ての化合物Nabを表し、その際、aは1又は2であり、bは1〜6の数である。「NOx」の概念の他に、本発明の範囲内で「窒素酸化物」の概念も使用される。この場合に、混合物G(ii)の全質量に対して、ガスの含有量が多くても0.5体積%である混合物G(ii)を使用するのが有利である。
【0050】
従って、本発明は、混合物G(ii)が、混合物G(ii)の全体積に対してそれぞれ、酸素を多くても0.5体積%又は窒素酸化物を0.5体積%又は酸素を多くても0.5体積%並びに窒素酸化物を0.5体積%を含有することを特徴とする、前記したような方法にも関する。例えば0.5体積%の値は、N2Oを除く全ての可能な窒素酸化物の全体の含有量が0.5体積%であることを表す。
【0051】
基本的に、この混合物の組成は、本発明の範囲内で当業者に公知の全ての方法で決定することができる。ガス混合物G(ii)の組成は、本発明の範囲内で、ガスクロマトグラフィーにより決定される。しかしながら、UV分光分析で、IR分光分析で又は湿式化学的に決定することもできる。
【0052】
本発明の場合に、ガス混合物G(ii)は液状又は超臨界状の形で、有利に液状の形で使用される。この場合、本発明において、ガス混合物(ii)は液化の前に処理し、ガス混合物G(ii)中の不活性化合物及び有害な化合物の濃度を低下させることもできる。
【0053】
この処理は、本発明により、ガス混合物から不活性化合物を除去するため、例えば適当な溶剤中でのガス混合物の吸収及び引き続く脱着を有することができる。適当な溶剤は、DT 20 40 219に記載のように、例えば水である。
【0054】
本発明の場合に、ガス混合物の処理は、ガス混合物からNOxを分離するための精製工程も含むことができる。NOxを分離するこの種の方法は、原則として先行技術から公知である。本発明の場合に、NOxを分離する当業者に公知の全ての方法を使用することができる。
【0055】
特に、本発明の範囲内で、大規模工業的方法から得られたガス混合物G(ii)を使用することができる。従ってこのガス混合物G(ii)が酸素及び/又は窒素酸化物を0.5体積%より多く含有する場合に、この混合物は一般に本発明による方法で使用することができる。有利に、この混合物G(ii)は、大規模工業的方法から得られていない類似の組成の混合物G(ii)と同様に、本発明による方法において使用する前に、少なくとも1つの精製工程にさらし、酸素及び/又は窒素酸化物の含有量に多くても0.5体積%に調節する。
【0056】
本発明の有利な実施態様の場合に、ガス混合物G(ii)として、化学プロセスのN2O含有の少なくとも1種の排ガスを使用する。
【0057】
本発明による方法の有利な実施態様の場合に、一酸化二窒素供給源は、化学プロセスの一酸化二窒素を含有する少なくとも1種の排ガスである。本発明の範囲内に、唯一の装置の一酸化窒素を含有する少なくとも2種の排ガスを一酸化二窒素供給源として利用する実施態様も含まれる。同様に、1つの装置の一酸化二窒素を含有する少なくとも1種の排ガスと、少なくとも1つの他の装置の一酸化二窒素を含有する少なくとも1種の他の排ガスとを、一酸化二窒素供給源として利用する実施態様が含まれる。
【0058】
従って、本発明は、一酸化二窒素供給源として、少なくとも1つの工業的プロセスの、一酸化二窒素を含有する少なくとも1種の排ガスを利用することを特徴とする前記したような方法にも関する。
【0059】
同様に、本発明による方法の範囲内で、一酸化二窒素は方法において使用するために適切に製造することができる。この場合、特に、例えばUS 3,656,899に記載されているように、NH4NO3の熱分解による製造が有利であり、前記刊行物のこれに関する内容は本願明細書の文脈に完全に援用される。同様に、さらに、例えばUS 5,849,257又はWO 98/25698に記載されているようなアンモニアの接触酸化による製造が有利であり、前記刊行物のこれに関する内容は本願明細書の文脈に完全に援用される。
【0060】
「一酸化二窒素供給源」の概念は、本発明の範囲内で、前記の排ガスが変性されない形でシクロペンテンの本発明による反応に使用される実施形態も、前記排ガスの少なくとも1種が変性される実施形態も表す。
【0061】
この関連で本発明の範囲内で使用されるような「変性」の概念は、排ガスの化学組成を変更する全ての適当な方法を表す。従って、この「変性」の概念は特に、一酸化二窒素を含有する排ガスを一酸化二窒素含有量に関して少なくとも1つの適当な方法により濃縮する実施態様を含む。このような方法は、例えばDE-OS 27 32 267、EP 1 076 217 A2又はWO 00/73202 A1に記載されており、これらの刊行物のこれに関する内容は、本願発明の文脈に完全に援用される。
【0062】
本発明によると、この場合、前記排ガスを適当な溶剤中での吸収及び引き続く脱着を含む処理にさらし、不活性な化合物を除去するのが有利である。適当な溶剤は、DT 20 40 219に記載のように、例えば水である。
【0063】
本発明による方法の例示的な有利な実施態様の場合に、濃縮のために、上記の一酸化二窒素を含有する排ガスを、少なくとも1つの吸着塔に供給し、かつ前記一酸化二窒素を少なくとも1種の有機溶剤中に溶解させることも可能である。溶剤として、このために例えばシクロペンテンが適している。この本発明による方法バリエーションは、シクロペンテン中の一酸化二窒素の生じる溶液を、他の処理なしで本発明による反応に供給することができるという利点を提供する。このシクロペンテン中の一酸化二窒素の溶液は、一酸化二窒素を全体の考えられる濃度から飽和までで含有する。他の実施態様の場合には、少なくとも1種の他の溶剤又はシクロペンテンと少なくとも1種の他の溶剤との混合物を吸着のために使用することができる。このような他の溶剤は、例えば全ての適当な一般的な有機溶剤である。有利な溶剤は、特に、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、プロピレンカルボナート、スルホラン又はN,N−ジメチルアセトアミドである。少なくとも1種の他の溶剤又はシクロペンテンと少なくとも1種の他の溶剤とからなる混合物を使用する場合に、さらに有利な実施態様によると、一酸化二窒素に富んだ溶液から少なくとも1つの適当な脱着工程で一酸化二窒素が少なくとも部分的に、有利にほぼ完全に得られ、本発明による反応に供給される。
【0064】
更なる実施態様の場合に、排ガスの化学組成を、排ガスに純粋な一酸化二窒素を添加することによって変更することもできる。
【0065】
本発明のさらに有利な実施態様の場合に、一酸化二窒素を含有する少なくとも1種の排ガスは、アジピン酸プラント、ドデカン二酸プラント、ヒドロキシルアミンプラント及び/又は硝酸プラントから由来し、その際、後者の硝酸プラントは、アジピン酸プラント、ドデカン二酸プラント又はヒドロキシルアミンプラントの少なくとも1種の排ガス用いて運転するのが有利である。
【0066】
さらに特に有利な実施態様の場合に、ガス混合物G(ii)としてアジピン酸プラントの排ガス流を使用し、その際、硝酸を用いたシクロヘキサノール/シクロヘキサノン混合物の酸化により形成されるアジピン酸1Mol当たり一般に0.8〜10molのN2Oが形成される。例えば、A. Uriate et al.著, Stud. Surf. Sei. Catal. 130, p. 743-748 (2000)に記載されているように、アジピン酸プラントの排ガスは、多様な濃度で他の成分、特に窒素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素酸化物、水及び揮発性有機化合物を含有する。
【0067】
既に前記したように、アジピン酸プラントのこのような排ガス流を直接本発明による方法に使用することができる。有利に排ガス流は精製される。このために、例えば、排ガスの酸素及び/又は窒素酸化物の含有量をそれぞれ多くても0.5体積%に調節することができる全ての方法が考えられる。上記に引用したA. Uriate et al.の文献には、このような排ガス流を接触ベンゼンヒドロキシル化において使用するために精製することができる多様な方法が開示されている。吸収法、例えば圧力スイング吸着、膜分離法、低温蒸留又は酸素の接触分離により行われるアンモニアを用いた選択接触還元との組合せが記載されている。これらの精製方法の全てを、本発明による方法に使用するアジピン酸プラントの排ガス流を精製するために適用することもできる。
【0068】
本発明の範囲内で、アジピン酸プラントの排ガス流は、酸素及び/又は窒素酸化物がそれぞれ0.5体積%より多く含有する場合に精製するのが特に有利である。この精製は蒸留により行うのが有利である。
【0069】
同様に、有利な実施態様の場合には、ガス混合物G(ii)としてドデカン二酸プラントの排ガス流が使用される。このドデカン二酸プラントは、アジピン酸プラントと比較して、ほぼ同じ装置タイプである。
【0070】
ドデカン二酸プラント又はアジピン酸プラントの排ガスの例示的な典型的な組成を次の表中に記載する:
【表1】

【0071】
ドデカン二酸プラントの排ガス流は、本発明による方法に直接使用することができる。ドデカン二酸プラントの排ガス流を、本発明による方法での使用の前に精製するのが有利である。この場合、例えば、有利に排ガスの酸素及び/又は窒素酸化物の含有量は、それぞれ多くても0.5体積%、つまり0〜0.5体積%の範囲内の含有量に調節される。上記に引用したA. K. Uriarte et al.の文献には、このような排ガス流を接触ベンゼンヒドロキシル化において使用するために精製することができる多様な方法が開示されている。吸収法、例えば圧力スイング吸着、膜分離法、低温蒸留又は酸素の接触分離により行われるアンモニアを用いた選択接触還元との組合せが記載されている。これらの精製方法の全てを、工業的プラント、例えばドデカン二酸プラント又はアジピン酸プラント又は硝酸プラントの一酸化二窒素を含有する排ガスを精製するために適用することもできる。ドデカン二酸プラント又はアジピン酸プラント又は硝酸プラントの排ガス流の蒸留による精製及びそれによる蒸留による濃縮がさらに特に有利である。
【0072】
本発明の範囲内で、ドデカン二酸プラントの排ガス流は、酸素及び/又は窒素酸化物がそれぞれ0.5体積%より多く含有する場合に精製するのが特に有利である。
【0073】
同様に有利な実施態様の場合に、ガス混合物G(ii)として、完全に又は部分的に他の方法から一酸化二窒素と窒素酸化物とを含有する排ガス流が供給される硝酸プラントの排ガスが使用される。この種の硝酸プラントでは、窒素酸化物が吸着され、この大部分が硝酸に変換されるが、一酸化二窒素は変換されない。例えば、この種の硝酸プラントには、アンモニアの適切な燃焼により製造される窒素酸化物が、及びアジピン酸プラントの排ガスが及び/又はドデカン二酸プラントの排ガスが供給される。同様に、この種の硝酸プラントには、単にアジピン酸プラントの排ガス及び/又はドデカン二酸プラントの排ガスを提供することができる。
【0074】
この種の硝酸プラントの排ガスは、基本的に異なる濃度で、なお他の成分、例えば特に窒素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素酸化物、水及び揮発性の有機化合物を含有する。
【0075】
この種の硝酸プラントの排ガスの例示的な典型的な組成を次の表中に記載する:
【表2】

【0076】
硝酸プラントの排ガス流は、本発明による方法に直接使用することができる。硝酸プラントの排ガス流を、本発明による方法での使用の前に精製するのが有利である。この場合、例えば、排ガスの酸素及び/又は窒素酸化物の含有量は、それぞれ多くても0.5体積%、つまり0〜0.5体積%の範囲内の含有量に調節される。この値が調節可能な適当な方法は、前記の、アジピン酸プラント及びドデカン二酸プラントの範囲に記載されている。硝酸プラントの排ガスの範囲内でも、蒸留による精製及びそれによる蒸留による濃縮が特に有利である。
【0077】
本発明の範囲内で、硝酸プラントの排ガス流は、酸素及び/又は窒素酸化物がそれぞれ0.5体積%より多く含有する場合に精製するのが特に有利である。
【0078】
本発明による方法の同様に有利な実施態様の場合に、ガス混合物G(ii)としてヒドロキシルアミンプラントの排ガスが使用され、この場合、例えばまずアンモニアが空気又は酸素で酸化されてNOになり、その際に少量の一酸化二窒素が副生成物として形成される。このNOは、引き続き水素で水素化されたヒドロキシルアミンになる。一酸化二窒素はこの水素化条件下で不活性であるので、これは水素循環において濃縮される。有利な方法実施の場合に、ヒドロキシルアミンプラントのパージ流は水素中に9〜13体積%の範囲内で一酸化二窒素を含有する。この流は本発明による方法に使用する前に、一酸化二窒素に関して適切に濃縮するのが有利である。
【0079】
従って、本発明は、ガス混合物G(ii)としてアジピン酸プラントの排ガス及び/又はドデカン二酸プラントの排ガス及び/又はヒドロキシルアミンプラントの排ガス及び/又はアジピン酸プラント及び/又はドデカン二酸及び/又はヒドロキシルアミンプラントの排ガスで運転される硝酸プラントの排ガスを使用することを特徴とする前記のような方法も記載する。
【0080】
従って、本発明は、シクロペンタノンの製造のための出発物質としてシクロペンテン含有炭化水素混合物の使用において、シクロペンテン含有炭化水素混合物が、スチームクラッカー装置のC5カット又はシクロペンタジエンの部分水素化から得られかつシクロペンテンを含有する混合物又はスチームクラッカー装置のC5カットとシクロペンタジエンの部分水素化から得られかつシクロペンテンを含有する混合物との混合物であることを特徴とし、かつさらにアジピン酸プラントの排ガス流及び/又はドデカン二酸プラントの排ガス流及び/又はヒドロキシルアミンプラントの排ガス流及び/又はアジピン酸プラント及び/又はドデカン二酸プラント及び/又はヒドロキシルアミンプラントの排ガスを用いて運転される硝酸プラントの排ガス流を反応のために使用することを特徴とする、シクロペンテン含有炭化水素混合物の使用を記載する。
【0081】
同様に、本発明は、前記のように、アジピン酸プラントの排ガス流及び/又はドデカン二酸プラントの排ガス流及び/又はヒドロキシルアミンプラントの排ガス流及び/又はアジピン酸プラント及び/又はドデカン二酸プラント及び/又はヒドロキシルアミンプラントの排ガスを用いて運転された硝酸プラントの排ガス流の酸素及び/又は窒素酸化物の含有量が、炭化水素混合物との反応の前に、排ガス流の全体積に対してそれぞれ多くても0.5体積%に調節されたことを特徴とする、使用も記載する。
【0082】
段階(iii)によるこの反応は、一般に、混合物G(i)及び混合物G(ii)からシクロペンタノンが生じる全ての方法操作に従って行うことができる。特に、連続的方法操作及びバッチ反応としての反応の運転方法が可能である。
【0083】
有利な実施態様の場合には、段階(iii)による反応はバッチ法で行われる。この場合に、混合物G(i)を適当な反応容器に装入するのが有利である。下記するようにこの反応は有利に大気圧よりも高圧で有利に行われるため、反応容器としてオートクレーブを使用するのが有利である。
【0084】
この混合物G(i)は一般に0〜320℃の範囲内、有利に180〜300℃の範囲内、特に有利に200〜290℃の範囲内の温度で装入される。圧力は、一般に1〜500barの範囲内で、有利に10〜365barの範囲内で、特に有利に25〜250barの範囲内である。
【0085】
混合物G(i)を上記の温度及び圧力で装入した後、混合物G(ii)と接触され、その際反応容器中に存在する空気は接触の前に適当な手段によって少なくとも部分的に除去することができる。反応容器を少なくとも1種のガス又はガス混合物でパージするのが有利であり、その際、例えば窒素又は他の不活性ガスで、又は前記ガスの2種以上のからなる混合物でパージすることができる。パージガスとして窒素が特に有利に使用される。
【0086】
混合物G(i)及び混合物G(ii)或いは純粋なN2Oは、シクロペンテン対N2Oのモル比が一般に0.05〜5の範囲内、有利に0.5〜3の範囲内、特に有利に0.9〜1.5の範囲内であるような量で導入される。
【0087】
混合物G(i)とG(ii)との接触のために、ガス混合物G(ii)は一般に、5〜500barの範囲内、有利に10〜365barの範囲内、特に有利に25〜250barの範囲内の圧力で反応容器に導入される。接触が行われる温度は、この場合に適当な手段によって調節して、混合物G(i)中に含まれるシクロペンテンと、混合物G(ii)中に含まれるN2Oとの反応が有利に液相又は超臨界相で行われる。従って、反応が行われる温度は、一般に150〜320℃の範囲内、有利に180〜300℃の範囲内、特に有利に200〜290℃の範囲内の温度である。
【0088】
本発明による方法の特に有利な実施態様の場合に、まず、混合物G(ii)を上記の圧力で反応容器中に導入し、引き続き反応容器中の温度を一般に1〜10℃/min、有利に1.5〜5℃/min、特に有利に2〜4℃/minの速度で高める。
【0089】
この温度が上記の反応に必要な温度に達するまで高められた場合に、この温度は一般に1〜48hの範囲内、有利に2〜30hの範囲内、特に有利に5〜25hの範囲内の期間にわたり保持される。この場合、温度は一定に保持されず、上記の限界内で適切に変動することも考えられる。
【0090】
従って、本発明は、上記のように、段階(iii)が少なくとも次の工程(a)〜(d)を有することを特徴とする方法にも関する:
(a) 反応容器中に混合物G(i)を0〜320℃の範囲内の温度及び1〜500barの範囲内の圧力で導入する;
(b) 前記混合物G(i)を反応容器内で、混合物G(ii)と5〜500barの範囲内の圧力で接触させる;
(c) (b)により得られた混合物の温度を1〜10℃/minの範囲内の速度で150〜320℃の範囲内の温度に高める;
(d) (c)により設定された温度を0.1〜48hの範囲内の期間にわたり保持する。
【0091】
シクロペンテンとN2Oとの引き続く反応の後に、反応容器中で加圧下にある混合物を冷却する。その際、反応容器の内部を、同時に又は冷却の後に又は冷却の間並びに冷却の後に放圧する。
【0092】
バッチ反応器中での上記の反応の他に、本発明による方法は、基本的に他のこのために適した反応器中で実施することができる。同様に、2種以上の同じ又は異なる反応器からなる組合せも可能である。特に、(iii)による反応は、例えば少なくとも1つの気泡塔中で実施することができる。有利に、(iii)による反応は、少なくとも1つの連続的な反応器中で実施される。例えば、(iii)による反応はCSTR(連続撹拌槽型反応器、continuous stirred tank reactor)又はCSTRカスケード中で行うことができる。さらに、少なくとも1種の連続的反応器の少なくとも1つが連続的反応器であるのが有利である。
【0093】
従って、本発明は、前記のように、段階(iii)により混合物G(i)とG(ii)とを1つの連続的反応器中で、特に連続的管状反応器中で接触させることを特徴とする方法にも関する。
【0094】
さらに有利な実施態様の場合に、本発明により使用される連続的管状反応器の少なくとも1つが、管束型反応器である。
【0095】
混合物G(i)及びG(ii)は、主にシクロペンテンとN2Oとが反応してシクロペンタノンになることができかつ混合物G(ii)は液状又は超臨界状の形で存在する全ての適当な反応条件下で、連続的反応器中で接触させることができる。この反応条件は、少なくとも1つの連続的反応器中で、(iii)による反応が液相又は超臨界相で行われるように選択されるのが有利である。全ての反応器内容物が液状である反応条件がさらに有利である。「反応器内容物」の概念は、この場合、反応器中に導入された後の混合物G(i)及びG(ii)、並びに前記混合物から生じた混合物であると解釈される。混合物G(i)とG(ii)とは互いに別々に反応器に導入するのが特に有利である。
【0096】
従って、本発明は、前記のように、連続的反応器、特に連続的管状反応器が(iii)による反応の間にほとんど液体によってだけ満たされていることを特徴とする方法にも関する。同様に、本発明は、前記のように、反応内容物が連続的反応器中で、特に連続的管状反応器中で、(iii)による反応の間にほぼ超臨界相で存在することを特徴とする方法に関する。
【0097】
反応条件は、反応器中に存在する混合物が均質でかつ単相であるように選択するのが特に有利である。
【0098】
この混合物G(i)は一般に0〜320℃の範囲内、有利に180〜300℃の範囲内、特に有利に200〜290℃の範囲内の温度で、連続的反応器中に導入され、その際、この圧力は一般に1〜500barの範囲内、有利に10〜365barの範囲内、特に有利に25〜300barの範囲内である。
【0099】
この混合物G(ii)は一般に0〜320℃の範囲内、有利に180〜300℃の範囲内、特に有利に200〜290℃の範囲内の温度で、連続的反応器中に導入され、その際、この圧力は一般に5〜500barの範囲内、有利に10〜365barの範囲内、特に有利に25〜300barの範囲内である。
【0100】
連続的反応器中で、混合物G(i)とG(ii)とが接触される。混合物G(i)及び混合物G(ii)或いは純粋なN2Oは、シクロペンテン対N2Oのモル比が一般に0.05〜10の範囲内、有利に0.5〜7の範囲内、特に有利に1〜5の範囲内であるような比で使用される。
【0101】
同様に、本発明の範囲内では、しかしながら混合物G(ii)と混合物G(i)又は混合物G(i)の一部とを混合し、この混合物を反応器に導入することも可能である。本発明の場合に、混合物G(ii)と混合物G(i)又は混合物G(i)の一部とは、反応が行われない温度で混合される。有利に、この混合は80〜200℃の範囲内、有利に90〜150℃の範囲内、特に100〜120℃の範囲内の温度で行われる。
【0102】
少なくとも1種の連続的反応器中での混合物G(i)中に含まれるシクロペンテンと、混合物G(ii)中に含まれるN2Oとの反応は、一般に150〜320℃の範囲内、有利に180〜300℃の範囲内、特に有利に200〜290℃の範囲内の温度で行われる。連続的反応器中でのこの圧力は、この場合に、一般に5〜500barの範囲内、有利に10〜400barの範囲内、特に有利に100〜365barの範囲内である。
【0103】
連続的反応器中での反応混合物の滞留時間は、一般に0.1〜48hの範囲内、有利に0.2〜5hの範囲内、特に有利に0.3〜2.5hの範囲内である。この場合、温度又は圧力又はその両方は反応器中で一定に保持されず、上記の限界内で適切に変動することも考えられる。
【0104】
従って、本発明は、上記のように、段階(iii)が少なくとも次の工程(aa)〜(dd)を有することを特徴とする方法も記載する:
(aa) 連続的反応器中に混合物G(i)を0〜320℃の範囲内の温度及び1〜500barの範囲内の圧力で導入する;
(bb) 連続的反応器中に混合物G(ii)を0〜320℃の範囲内の温度及び5〜500barの範囲内の圧力で導入する;
(cc) 連続的反応器中で混合物G(i)と混合物G(ii)とを100〜320℃の範囲内の温度及び5〜500barの範囲内の圧力で接触させる;
(dd) 混合物G(i)とG(ii)とを、連続的反応器中で0.1〜48hの範囲内の反応混合物の滞留時間で反応させる。
【0105】
既に説明したように、本発明の範囲内で、混合物G(i)とG(ii)とは反応器中へ導入する前に混合することもできる。従って、別の実施態様による本発明は、上記のように、段階(iii)が少なくとも次の工程(aa′)〜(dd′)を有することを特徴とする方法にも関する:
(aa′) 混合物G(i)又は混合物G(i)の一部と混合物G(ii)とを80〜200℃の温度で混合し;
(bb′) 工程(aa′)により得られた混合物と、場合により更なる混合物G(i)とを、連続的反応器中に0〜320℃の範囲内の温度及び5〜500barの範囲内の圧力で導入し;
(cc′) (bb′)により得られた混合物の温度を100〜320℃の範囲内の温度に高め;
(dd′) (cc′)により設定された温度を0.1〜48hの範囲内の期間にわたり保持する。
【0106】
混合物G(i)とG(ii)との使用下での上記の方法操作による本発明による方法により、一般に少なくとも10%、有利に少なくとも20%、特に少なくとも30%、さらに有利に少なくとも50%のシクロペンテン転化率が達成される。この転化率の上限は、一般に90%、特に有利に98%、有利に99%、特に有利に99.9%である。
【0107】
シクロペンテンに関するこの反応のシクロペンタノン選択率は、この場合に一般に92〜99.5%の範囲内にある。
【0108】
従って、本発明は、前記のように、使用されたシクロペンテンは、使用されたシクロペンテンの全体量に対して10〜99.9%の範囲内で、シクロペンテンに関して92〜99.5%の範囲内のシクロペンタノン選択率で反応さ競ることを特徴とする方法も記載する。
【0109】
段階(iii)により得られかつシクロペンタノンを含有する混合物は、さらに、シクロペンタノンを獲得するための全ての適当な方法により後処理することができる。この場合蒸留による方法が特に有利に挙げられる。
【0110】
次の実施例で本発明を詳説する。
【0111】
実施例
実施例1:シクロペンテン/シクロペンタンのシクロペンタノンへの酸化
相応する貯蔵容器から、シクロペンテン/シクロペンタンの約1:1混合物2000g/h(このうち400g/hが新たな出発材料で、1600g/hが返送された出発材料、シクロペンテン/シクロペンタン1:1)と、N2O 93.5質量%を有する液状混合物140g/hとを、スタティックミキサを介して管状反応器(二重ジャケット管、巻き型、内径6mm、長さ85m)中へポンプ輸送する。この管は、ジャケット中で伝熱オイルのポンプ循環により280℃にサーモスタットで調温される。この反応器内圧は300barに調節される。反応区域を通過した後に、反応混合物を2つのフラッシュ容器中でまず16barに、引き続き5barに放圧し、形成されたN2、未反応のN2O及びN2O中に含まれる不活性物質(主にN2及びCO2)を排出する。
【0112】
この液状生成物を、次いで少なくとも27の理論段を有する塔中で1barで蒸留する(T塔底=79℃、T塔頂=46℃)。塔頂生成物として、平均して1600g/hの未反応のシクロペンテンがシクロペンタンとの混合物(約1:1)で得られ、この混合物を再び反応に戻す。約50%のシクロペンタノン(粗製シクロペンタノン)と約50%のシクロペンタンとを含有する塔底搬出物を、生成物容器に移す。
【0113】
平均して237g/hの粗製シクロペンタノンが得られ、これから更なる蒸留でなおシクロペンタンを分離しなければならない。シクロペンタノンに対する選択性は96%(反応したシクロペンテンに対して)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも次の段階(i)〜(iii):
(i) シクロペンテンを含有する混合物G(i)を準備する段階;
(ii) 液状又は超臨界状のN2O又はガス混合物G(ii)の全体積に対してN2Oを少なくとも20体積%含有する液化された又は超臨界状のガス混合物G(ii)を準備する段階;
(iii) 混合物G(i)を、液状又は超臨界状のN2O又は液化された又は超臨界状の混合物G(ii)と接触させて、シクロペンタノンを含有する混合物G(iii)を得る段階を有するシクロペンタノンの製造方法において、混合物G(i)が、混合物G(i)の全質量に対して少なくとも25質量%及び多くても95質量%のシクロペンテンを含有することを特徴とする、シクロペンタノンの製造方法。
【請求項2】
混合物G(i)は、シクロペンテンに加えて、(iii)による接触の際にN2Oに対して不活性の少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
混合物G(i)は、この混合物の全質量に対して少なくとも99質量%まで炭化水素を含有することを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
混合物G(i)が少なくとも99質量%までC5炭化水素とC6炭化水素又はC5炭化水素とC7炭化水素又はC5炭化水素とC6炭化水素とC7炭化水素とを含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
混合物G(ii)はN2Oを多くても93体積%含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
混合物G(ii)が、混合物G(ii)の全体積に対してそれぞれ、酸素を多くても0.5体積%又は窒素酸化物を多くても0.5体積%又は多くても酸素を0.5体積%並びに窒素酸化物を0.5体積%含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
段階(iii)は少なくとも次の工程(a)〜(d):
(a) 反応容器中に混合物G(i)を0〜320℃の範囲内の温度及び1〜500barの範囲内の圧力で導入する工程;
(b) 前記混合物G(i)を前記反応容器内で、混合物G(ii)と5〜500barの範囲内の圧力で接触させる工程;
(c) (b)により得られた混合物の温度を1〜10℃/minの範囲内の速度で150〜320℃の範囲内の温度に高める工程;
(d) (c)により設定された温度を0.1〜48hの範囲内の期間にわたり保持する工程
を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
段階(iii)により混合物G(i)とG(ii)とを連続的反応器中で接触させることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
段階(iii)は少なくとも次の工程(aa′)〜(dd′):
(aa′) 混合物G(i)又は混合物G(i)の一部と混合物G(ii)とを80〜200℃の温度で混合する工程;
(bb′) 工程(aa′)により得られた混合物と、場合により更なる混合物G(i)とを、連続的反応器中に0〜320℃の範囲内の温度及び5〜500barの範囲内の圧力で導入する工程;
(cc′) (bb′)により得られた混合物の温度を100〜320℃の範囲内の温度に高める工程;
(dd′) (cc′)により設定された温度を0.1〜48hの範囲内の期間にわたり保持する工程を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
連続的反応器は(iii)による反応の間にほとんど液体によってのみ満たされていることを特徴とする、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
連続的反応器中の反応器内容物は、(iii)による反応の間にほぼ超臨界相で存在することを特徴とする、請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
シクロペンテン含有炭化水素混合物がスチームクラッカー装置のC5カット又はシクロペンタジエンの部分水素化から得られかつシクロペンテンを含有する混合物又はスチームクラッカー装置のC5カットとシクロペンタジエンの部分水素化から得られかつシクロペンテンを含有する混合物との混合物であることを特徴とする、シクロペンタノンの製造のための出発物質としてシクロペンテン含有炭化水素混合物の使用。

【公表番号】特表2008−513531(P2008−513531A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532851(P2007−532851)
【出願日】平成17年9月23日(2005.9.23)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010346
【国際公開番号】WO2006/032532
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】