説明

シクロペンテン開環重合体の製造方法

【課題】ホットフロー性に優れ、これにより、製造が容易であり、かつ、加工性に優れたシクロペンテン開環重合体を提供すること。
【解決手段】メタセシス重合触媒存在下でシクロペンテンを開環重合するシクロペンテン開環重合体の製造方法であって、前記シクロペンテンに対して、0.001〜1モル%のビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物を、前記シクロペンテンと反応させることを特徴とするシクロペンテン開環重合体の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたホットフロー性を有するシクロペンテン開環重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シクロペンテンは、WClやMoClなどの周期表第6族遷移金属化合物と、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、テトラブチルスズなどの有機金属活性化剤とからなる、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒の存在下で、メタセシス開環重合することで、不飽和の直鎖状の開環重合体を与えることが知られている。
【0003】
このようなシクロペンテン開環重合体は、室温でゴム状ポリマーであるため、ゴム材料として利用しようとする試みが古くからなされている。特に、シクロペンテン開環重合体のなかでも、トランス比率の高いシクロペンテン開環重合体は、ゴムとしての性質が、広く研究されており、トランス比率の高いシクロペンテン開環重合体は、低温で結晶性を有し、グリーン強度や耐摩耗性が高く、タックに優れているが、結晶性を有するため低温時のゴム特性に劣るという問題があることが知られている。
【0004】
また、シクロペンテン開環重合体は、シス/トランス比率に関係なく、分岐構造を有しない直鎖状のポリマーであるため、ホットフロー性に劣り、粘接着性が高いため、製造工程で高温に晒されるとポリマーが凝集して製造が困難であるという課題や、各種配合剤を配合して、ゴム組成物とすることが困難であるという問題があることが知られている。
【0005】
たとえば、特許文献1では、低温下における結晶性を低下させ、これにより、低温時のゴム特性を改善するために、シクロペンテンに、シクロドデカトリエンなどを共重合する方法が提案されている。しかしながら、この特許文献1記載の方法により得られるシクロペンテン開環共重合体は、低温下における結晶性は低下して低温時のゴム特性は改善されるものの、分岐構造を有しない直鎖状のポリマーであるため、ホットフロー性に劣るという問題があった。
【0006】
これに対し、シクロペンテン開環重合体のホットフロー性を改善するものとして、非特許文献1に、Wアルキルデン錯体触媒を用いて重合したリビング重合末端に多官能アルデヒド停止剤を反応させて、シクロペンテン開環重合体に分岐構造を導入する方法が開示されている。しかしながら、この非特許文献1記載の方法においては、リビング重合のカップリング反応を利用することで、シクロペンテン開環重合体に分岐構造を導入するものであるが、ポリマー鎖1本に対して最大でも分岐構造が1個しか導入できないこと、およびカップリング率が約50%程度と低く、そのため、得られる重合体中には、直鎖状のポリマーが多数残存することから、結果として、ホットフロー性の改善効果が十分ではなかった。さらに、この非特許文献1記載の方法においては、リビング重合のカップリング反応を利用するため、得られる重合体に対して高価なリビング重合触媒を多量に使用しなければならないという問題や、得られる重合体中に多量の触媒残渣が残存してしまい、触媒残渣の影響で重合体中にゲル化が発生し、その結果として、カーボンブラックなどの配合剤との分散性が低下してしまい、ゴム材料として使用した場合に、ゴム特性に劣るものとなってしまうという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/048536号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Polymer 37巻、pp2547−2554、1996年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ホットフロー性に優れ、これにより、製造が容易であり、かつ、加工性に優れたシクロペンテン開環重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、メタセシス重合触媒存在下でシクロペンテンを開環重合する際に、シクロペンテンに対して、0.001〜1モル%の、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物を、シクロペンテンと反応させて、ポリマー鎖1本当たり、複数個の分岐構造を導入することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明によれば、メタセシス重合触媒存在下でシクロペンテンを開環重合するシクロペンテン開環重合体の製造方法であって、前記シクロペンテンに対して、0.001〜1モル%の、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物を、前記シクロペンテンと反応させることを特徴とする。
【0012】
本発明の製造方法において、前記メタセシス重合触媒が、周期表第6族遷移金属化合物と下記一般式(1)で示される有機アルミニウム化合物とを含むように構成することができる。
(R3−xAl(OR (1)
(上記一般式(1)中、RおよびR2は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、xは、0<x<3である。)
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、ホットフロー性に優れシクロペンテン開環重合体を製造することができ、これにより、製造が容易であり、かつ、加工性に優れたシクロペンテン開環重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のシクロペンテン開環重合体の製造方法は、メタセシス重合触媒存在下でシクロペンテンを開環重合する際に、前記シクロペンテンに対して、0.001〜1モル%の、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物を、前記シクロペンテンと反応させることを特徴とする。
【0015】
(ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物)
本発明においては、メタセシス重合触媒存在下でシクロペンテンを開環重合する際に、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物を、シクロペンテンと反応させることにより、得られるシクロペンテン開環重合体にポリマー鎖1本当たり、複数個の分岐構造(複数個の長鎖分岐構造)を導入することができ、これにより、シクロペンテン開環重合体をホットフロー性に優れたものとすることができる。
【0016】
ビニル基を含有する環状オレフィンとしては、ビニル基を少なくとも1つ有する環状オレフィンであればよく特に限定されないが、たとえば、4−ビニルシクロペンテン、5−ビニルシクロオクテンなどのビニル基を有するモノ環状オレフィン;5−ビニルノルボルネン、5−プロペニルノルボルネン、5−スチリルノルボルネンなどのビニル基を有するノルボルネン類;などを挙げることができる。
【0017】
また、3個以上のビニル基を含有する化合物としては、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリビニルシクロヘキサンなどのビニル基を3個有する化合物;ジビニルベンゼンオリゴマー、1,2−ポリブタジエンオリゴマーなどの4個以上のビニル基を有する化合物;などを挙げることができる。
【0018】
本発明で用いるビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物の使用量は、シクロペンテンに対して、0.001〜1モル%であり、好ましくは0.002〜0.9モル%、より好ましくは0.005〜0.8モル%である。ここで、本発明により製造されるシクロペンテン開環重合体のホットフロー性は、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物の使用量の他、得られるシクロペンテン開環重合体の分子量にも依存するものであるため、目的とするシクロペンテン開環重合体の分子量、ホットフロー性に応じて、これらビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物の使用量を、上記範囲内にて調整することが望ましい。ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物の使用量が少なすぎると、得られるシクロペンテン開環重合体のホットフロー改善効果が小さくなる傾向にあり、一方、使用量が多すぎると、得られるシクロペンテン開環重合体のゲル化が発生してしまう場合がある。
【0019】
(メタセシス重合触媒)
本発明で用いるメタセシス重合触媒としては、特に限定されず、従来公知のメタセシス重合触媒を用いることができるが、たとえば、Mo,W,Nb,Ta,Ruなどの原子を含有してなる遷移金属化合物が挙げられるが、本発明では、主触媒としての周期表第6族遷移金属化合物と、助触媒としての有機金属化合物とを含有するものが好ましい。
【0020】
主触媒としての周期表第6族遷移金属化合物としては、特に限定されないが、周期表第6族遷移金属原子のハロゲン化物、アルコラート、アリレート、オキシ化物などが挙げられ、これらのなかでも、重合活性が高いという観点より、ハロゲン化物が好ましい。また、周期表(長周期型周期表、以下同じ)第6族遷移金属原子としては、MoまたはWが好ましい。
【0021】
このような周期表第6族遷移金属化合物の具体例としては、モリブデンペンタクロリド、モリブデンオキソテトラクロリド、モリブデン(フェニルイミド)テトラクロリドなどのモリブデン化合物;タングステンヘキサクロリド、タングステンオキソテトラクロリド、タングステン(フェニルイミド)テトラクロリド、モノカテコラートタングステンテトラクロリド、ビス(3,5−ジターシャリブチル)カテコラートタングステンジクロリド、ビス(2−クロロエテレート)テトラクロリド、タングステンオキソテトラフェノレートなどのタングステン化合物;が挙げられる。
【0022】
周期表第6族遷移金属化合物の使用量は、「重合触媒中の第6族遷移金属原子:シクロペンテン」のモル比で、通常1:100〜1:200,000、好ましくは1:200〜1:150,000、より好ましくは1:500〜1:100,000の範囲である。周期表第6族遷移金属化合物の使用量が少なすぎると、重合反応が十分に進行しない場合がある。一方、多すぎると、得られるシクロペンテン開環重合体からの触媒残渣の除去が困難となり、得られるシクロペンテン開環重合体の耐熱性および耐寒性が低下する場合がある。
【0023】
助触媒としての有機金属化合物としては、炭素数1〜20の炭化水素基を有する周期表第1,2,12,13,14族金属原子の有機金属化合物が挙げられる。なかでも、有機リチウム、有機マグネシウム、有機亜鉛、有機アルミニウム、有機スズが好ましく、有機リチウム、有機スズ、有機アルミニウムがより好ましく、有機アルミニウムが特に好ましい。
【0024】
有機リチウムとしては、n−ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム、ネオペンチルリチウム、ネオフィルリチウム等が挙げられる。
【0025】
有機マグネシウムとしては、ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド、ネオペンチルマグネシウムクロリド、ネオフィルマグネシウムクロリド等が挙げられる。
【0026】
有機亜鉛としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛等が挙げられる。
【0027】
有機スズとしては、テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズ等が挙げられる。
【0028】
有機アルミニウムとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のアルキルアルミニウムハライド;等の他、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
(R3−xAl(OR (1)
(上記一般式(1)中、RおよびR2は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、xは、0<x<3である。)
【0029】
上記一般式(1)において、RおよびR2の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、イソブチル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;フェニル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、ナフチル基などのアリール基;などが挙げることができる。なお、RとR2とは、同じであっても、あるいは異なっていてもよいが、本発明においては、得られるシクロペンテン開環重合体のシス比率を高くできるという点より、RおよびR2のうち、少なくともR2は、炭素原子が4個以上連続して結合してなるアルキル基であることが好ましく、特に、n−ブチル基、2−メチル−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基であることが好ましい。
【0030】
また、上記一般式(1)において、xは、0<x<3である。すなわち、上記一般式(1)においては、RとORとの組成比は、それぞれ0<3−x<3、および0<x<3の各範囲において、任意の値をとることができるが、重合活性を高くでき、しかも、得られるシクロペンテン開環重合体のシス比率を高くできるという点より、xは、0.5<x<1.5であることが好ましい。
【0031】
このような上記一般式(1)で表される有機アルミニウム化合物(B)は、たとえば、下記一般式(2)に示すように、トリアルキルアルミニウムと、アルコールとの反応によって合成することができる。
(RAl + xROH → (R3−xAl(OR + (RH (2)
なお、上記一般式(1)中、xは、上記一般式(2)に示すように、対応するトリアルキルアルミニウムとアルコールの反応比を規定することによって、任意に制御することが可能である。
【0032】
あるいは、有機アルミニウムとして、アルミノキサンを用いてもよい。アルミノキサンは、例えば、下記一般式(3)で表される。
【化1】

(上記一般式(3)において、R〜Rは炭素数1〜20、好ましくは4〜20の炭化水素基を表し、nは、1〜20の整数である。)
【0033】
このようなアルミノキサンとしては、例えば、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン等が挙げられる。
【0034】
なお、本発明の製造方法においては、得られるシクロペンテン開環重合体のシス比率を高めることができ、これにより、シクロペンテン開環重合体を低温下において非晶質であり、コールドフロー性および低温でのゴム特性に優れたものとすることができるという点より、メタセシス重合触媒として、周期表第6族遷移金属化合物と、有機アルミニウムとを組み合わせたものを用いることが好ましく、特に、室温での重合を良好に行なうことができ、かつ、得られるシクロペンテン開環重合体のシス比率を30%以上とすることができるという点より、有機アルミニウムのなかでも、上記一般式(1)で表される化合物または上記一般式(3)で表されるアルミノキサンがより好ましく、上記一般式(1)で表される化合物が特に好ましい。
【0035】
有機金属化合物の使用量は、用いる有機金属化合物の種類によっても異なるが、周期表第6族遷移金属化合物を構成する周期表第6族遷移金属原子に対して、好ましくは0.1〜100倍モル、より好ましくは0.2〜50倍モル、さらに好ましくは0.5〜20倍モルの割合である。有機金属化合物の使用量が少なすぎると、重合活性が不十分となる場合があり、多すぎると、開環重合時において、副反応が起こりやすくなる傾向にある。
【0036】
また、本発明で用いる重合触媒として、上述した周期表第6族遷移金属化合物および有機金属化合物に加えて、酸素原子含有炭化水素化合物をさらに含有するものを用いてもよい。酸素原子含有炭化水素化合物をさらに含有することにより、重合活性を向上させることができるとともに、得られるシクロペンテン開環重合体の分子量を向上させることができる。酸素原子含有炭化水素化合物としては、酸素原子を有する炭化水素化合物であればよく、特に限定されないが、ハロゲン原子を置換基して有してもよい炭素数2〜30のエステル、ケトンまたはエーテル化合物が好ましく、室温以上における重合活性の向上効果、および高分子量化の効果が高いという点より、炭素数4〜10のエステル、ケトンまたはエーテルが好ましい。なお、このようなエステル、ケトンまたはエーテル化合物としては、環状のエステル、ケトンやエーテルであってもよいし、さらには、1分子中に複数個のエステル結合、ケトン結合やエーテル結合を含有する化合物であってもよい。
【0037】
エステル化合物の具体例としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸オクチル、酢酸2−クロロエチル、アセチルアクリル酸メチル、ε−カプロラクトン、グルタル酸ジメチル、σ−ヘイサノラクトン、ジアセトキシエタンなどが挙げられる。
ケトン化合物の具体例としては、アセトン、エチルメチルケトン、アセチルアセトン、アセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、1’−アセトナフトン、2−アセチル安息香酸メチル、4’ −クロロアセトフェノンなどが挙げられる。
エーテル化合物の具体例としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、1,4−ジオキサンなどが挙げられる。
【0038】
酸素原子含有炭化水素化合物の使用量は、用いる酸素原子含有炭化水素化合物の種類によっても異なるが、周期表第6族遷移金属化合物を構成する周期表第6族遷移金属原子に対して、好ましくは0.1〜100倍モル、より好ましくは0.2〜50倍モル、さらに好ましくは0.5〜20倍モルの割合である。酸素原子含有炭化水素化合物の使用量が少なすぎると、酸素原子含有炭化水素化合物の添加効果が得難くなる傾向にあり、多すぎると、重合活性が不十分となるおそれがある。
【0039】
(シクロペンテン開環重合体の製造方法)
本発明のシクロペンテン開環重合体の製造方法は、メタセシス重合触媒存在下でシクロペンテンを開環重合する際に、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物を用い、シクロペンテンと、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物とを反応させることにより、シクロペンテン開環重合体を得る。
【0040】
本発明において、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物と、シクロペンテンとを反応させる方法としては、特に限定されない。たとえば、重合前のシクロペンテンに、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物とシクロペンテンとを混合した後に、これらにメタセシス重合触媒と接触させることにより、開環重合反応とともに、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物とシクロペンテンとを反応させることができる。あるいは、シクロペンテンとメタセシス重合触媒とを接触させ、開環重合反応を行い、重合体を得た後に、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物を添加して、これらを反応させてもよい。
【0041】
また、本発明のシクロペンテン開環重合体の製造方法においては、シクロペンテン、ならびに、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物に加えて、シクロペンテンと共重合可能なその他の環状オレフィン(ビニル基を有する環状オレフィンを除く)を用いてもよい。ただし、得られるシクロペンテン開環重合体の特性を良好なものとするという観点より、シクロペンテン開環重合体中における、シクロペンテン由来の構造単位を90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは96重量%以上とする。共重合可能なその他の環状オレフィンとしては、たとえば、シクロオクテンやシクロオクタジエンなどのモノ環状オレフィンや、任意の置換基を有してもよいノルボルネン化合物などの多環の環状オレフィンが挙げられる。
【0042】
本発明のシクロペンテン開環重合体の製造方法において、開環重合反応は、無溶媒で行ってもよいし、溶液中で行なってもよい。開環重合反応を溶液中で行う際に用いる溶媒としては、重合反応において不活性であり、開環重合に用いるシクロペンテンやビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物、メタセシス重合触媒を溶解可能な溶媒であればよく、特に限定されないが、たとえば、炭化水素系溶媒またはハロゲン系溶媒などが挙げられる。炭化水素系溶剤の具体例としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;などが挙げられる。また、ハロゲン系溶剤の具体例としては、ジクロロメタン、クロロホルムなどのアルキルハロゲン;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族ハロゲン;などが挙げられる。
【0043】
本発明のシクロペンテン開環重合体の製造方法においては、得られるシクロペンテン開環重合体の分子量を調整するために、オレフィン化合物又はジオレフィン化合物を用い、これを重合反応系に添加してもよい。
【0044】
オレフィン化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する有機化合物であれば特に限定されないが、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエン等のスチレン類;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;エチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、スチリルトリメトキシシラン等のケイ素含有ビニル化合物;2−ブテン、3−ヘキセン等の二置換オレフィン;等が挙げられる。
【0045】
ジオレフィン化合物としては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジオレフィン等が挙げられる。
【0046】
なかでも、重合活性が高く、分子量調整に優れる点において、α−オレフィン類またはスチレン類が好ましい。
【0047】
これらオレフィン化合物およびジオレフィン化合物の添加量は、目的とする分子量に応じて適宜選択すればよいが、重合に用いるシクロペンテンに対して、0.01〜10モル%の範囲とすることが好ましい。
【0048】
本発明のシクロペンテン開環重合体の製造方法において、重合温度は、好ましくは−100℃以上100℃未満であり、より好ましくは−50℃以上90℃未満であり、さらに好ましくは−40℃以上80℃未満であり、特に好ましくは−30℃以上60℃未満である。重合温度が高すぎると、得られるシクロペンテン開環重合体の分子量およびシス比率が低くなる場合があり、重合温度が低すぎると、重合速度が遅くなり、結果として、生産性に劣る場合がある。
【0049】
また、重合反応時間は、好ましくは1分間〜100時間、より好ましくは10分間〜50時間である。
【0050】
本発明のシクロペンテン開環重合体の製造方法においては、開環重合を開始し、重合転化率が所定の値に達した後、公知の重合停止剤を重合系に加えて停止させることにより、シクロペンテン開環重合体を製造することができる。
【0051】
また、本発明においては、所望により、得られた開環重合体に、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤の添加量は、その種類などに応じて適宜決定すればよい。さらに、本発明においては、所望により、伸展油を配合してもよい。
【0052】
さらに、重合反応を行う際に、溶媒を用い、重合反応を溶液中で行なった場合において、重合体溶液から重合体を取得する方法としては、公知の方法を採用すればよく、特に限定されないが、例えば、スチームストリッピングなどで溶媒を分離した後、固体をろ別し、さらにそれを乾燥して固形状ゴムを取得する方法などが採用できる。
【0053】
本発明の製造方法により得られるシクロペンテン開環重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、好ましくは10,000〜1,000,000であり、より好ましくは20,000〜900,000であり、さらに好ましくは40,000〜800,000である。分子量が低すぎると、ゴム特性が低下してしまう場合があり、一方、分子量が高すぎると、製造および取り扱いが困難となる場合がある。
【0054】
また、本発明の製造方法により得られるシクロペンテン開環重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)との比である分子量分布(Mw/Mn)は、2.0〜8.0であることが好ましい。ここで、シクロペンテンを、メタセシス重合触媒の存在下でメタセシス重合すると、開環重合と解重合との平衡反応となるため、重合反応が平衡に達すると、解重合と再重合が起こり、重合体の分子量はある一定値に収束するため、分子量分布は狭くなり、通常、分子量分布(Mw/Mn)が2.0未満の直鎖状ポリマーとなるのが一般的である。これに対して、本発明においては、シクロペンテンを開環重合する際に、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物を用いることにより、ポリマー鎖1本当たり、複数個の分岐構造を導入するものであるため、得られる重合体の分子量分布は比較的広くなる傾向にある。しかしその一方で、分岐構造が多くなりすぎて、分子量分布(Mw/Mn)が大きくなりすぎると、三次元架橋ポリマーが生成して不溶性のゲル分が生じてしまう場合があり、ゲル分が生じると、ゴム特性が低下するため好ましくない。そのため、分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは2.0〜8.0であり、より好ましくは2.2〜7.0、さらに好ましくは2.3〜6.0である。また、本発明の製造方法により得られるシクロペンテン開環重合体は、ゲル含量が、好ましくは1.0重量%以下であり、より好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下である。
【0055】
また、このような製造方法により得られるシクロペンテン開環重合体は、ポリマー鎖1本当たりに含む分岐構造の個数が、好ましくは1.1個〜10個であり、より好ましくは1.2個〜8個であり、さらに好ましくは1.3個〜5個である。分岐構造の個数が少なすぎると、ホットフロー性に劣り、製造工程で高温に晒した際におけるポリマーの凝集が発生したり、各種配合剤を配合した場合における、分散性に劣る場合がある。一方、分岐構造の個数が多すぎると、ゲル化が起こり、製造中に流動性がなくなって製造できなくなったり、各種配合剤を配合した場合に、全く分散しない場合がある。
得られたシクロペンテン開環重合体のポリマー鎖1本当たりの分岐構造の個数は、該重合体の数平均分子量(Mn)とポリマー中に導入されたビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物の量とから求められる。ポリマー中に導入されたビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物の量は、重合反応後の反応液中に残存するビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物の量をガスクロマトグラフィーから決定する方法、あるいはポリマー鎖中に導入されたビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物の量をH−NMRスペクトルから決定する方法により求められる。
【0056】
さらに、本発明の製造方法により得られるシクロペンテン開環重合体は、シス比率が、好ましくは30%以上であり、より好ましくは35%以上、さらに好ましくは40%以上である。シス比率が30%以上であると、シクロペンテン開環重合体は、低温下において非晶性となり、低温でのゴム特性に優れるため、好ましい。
【0057】
本発明によれば、上述したメタセシス重合触媒存在下でシクロペンテンを開環重合する際に、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物を、シクロペンテンと反応させることにより、得られるシクロペンテン開環重合体にポリマー鎖1本当たり、複数個の分岐構造を導入し、これにより、得られるシクロペンテン開環重合体をホットフロー性に優れたものとすることができる。そして、これにより、製造工程で高温に晒した際におけるポリマーの凝集を有効に防止することができ、シクロペンテン開環重合体の製造を容易なものとすることができるとともに、得られるシクロペンテン開環重合体を、各種配合剤やシクロペンテン開環重合体以外のゴムに対する分散性に優れたものとすることができる。
【0058】
(ゴム組成物)
本発明の製造方法により得られるシクロペンテン開環重合体は、各種配合剤やシクロペンテン開環重合体以外のゴムを添加することにより、ゴム組成物とすることができる。配合剤としては、特に限定されないが、たとえば、シリカ、カーボンブラックなどの無機粒子が挙げられる。また、シクロペンテン開環重合体以外のゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)などが挙げられる。特に、本発明の製造方法により得られるシクロペンテン開環重合体は、ポリマー鎖1本当たり、複数個の分岐構造を有し、これにより、ホットフロー性に優れるものでるため、上記配合剤やシクロペンテン開環重合体以外のゴムと混合し易く、そのため、これらを含有するゴム組成物を容易に製造することができる。
【0059】
さらに、本発明のゴム組成物には、上記成分以外に、ゴム加工分野において通常使用されるその他の配合剤、例えば、架橋剤、架橋促進剤、架橋活性化剤、老化防止剤、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤、充填剤などを配合することができる。これらの配合剤の配合量は、配合目的に応じた量を適宜採用することができる。
【0060】
本発明の製造方法により得られるシクロペンテン開環重合体、および該シクロペンテン開環重合体を用いて得られるゴム組成物は、ホットフロー性に優れ、これにより、製造が容易であり、かつ、加工性に優れ、各種配合剤やシクロペンテン開環重合体以外のゴムに対する分散性に優れるものである。そのため、本発明の製造方法により得られるシクロペンテン開環重合体、および該シクロペンテン開環重合体を用いて得られるゴム組成物は、上記特性を活かし、広範な用途に使用することができる。具体的には、シール剤、封止材、接着剤、粘着剤などの粘接着剤用途への利用;熱可塑性エラストマー用途への利用;トレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位への利用;ホース、窓枠、ベルト、靴底、防振ゴム、自動車部品などのゴム製品への利用;耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂などの樹脂強化ゴムとして利用が可能になる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験、評価は下記によった。
【0062】
<分子量>
テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、シクロペンテン開環重合体の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を、ポリスチレン換算値として測定した。
【0063】
<シス/トランス比>
シクロペンテン開環重合体のシス/トランス比を、13C−NMRスペクトル測定から求めた。
【0064】
<ポリマー鎖1本当たりの分岐構造の個数>
重合反応後の重合体溶液について、ガスクロマトグラフィー測定を行い、ポリマー中に導入された、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物の量を求めた。そして、前記方法で求めた、ポリマー中に導入されたビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物の量と、数平均分子量(Mn)から求められるシクロペンテンモノマーユニット数とから、ポリマー鎖1本当たりの分岐構造の個数を算出した。
【0065】
<触媒金属残渣量>
シクロペンテン開環重合体中に残存するメタセシス重合触媒金属量を、ICP−AES法により求めた。
【0066】
<長期保存安定性>
シクロペンテン開環重合体を2mm角に裁断し、80℃のオーブン(送風型)に入れ、240時間後のゲル含有率(%)を測定した。なお、ゲル含有率(%)は、80℃、240時間後のシクロペンテン開環重合体2部をトルエン200部に溶解させた後、200メッシュの金網によりろ過し、次いで、トルエンにて金網を充分洗浄して、金網を80℃、 5時間真空乾燥し、真空乾燥後の金網の重量増加分を算出することで、求めた。
【0067】
<ホットフロー性評価>
シクロペンテン開環重合体を、JIS K6301に準拠して、引張試験片3号形ダンベルに成形し、105℃の高温槽内において、得られた3号形ダンベルの一方の端を固定し、残りの端に重りをつけて吊るし、ダンベルの中心が100mm伸びるまでの時間を測定することで、ホットフロー性の評価を行った。ダンベルの中心が100mm伸びるまでの時間が長いほど(ホットフロー性の値が大きいほど)、ホットフローし難く、好ましい判断できる。
【0068】
<コールドフロー性評価>
シクロペンテン開環重合体を50℃に保ち、内径5.3mmのガラス管で0.005MPaの差圧により10分間吸引し、ガラス管に吸い込まれたポリマー重量を測定し、1分間当たり吸引されたポリマー量(mg/min)を求めることにより、コールドフロー性の評価を行った。吸引されたポリマー量が少ないほど(コールドフロー性の値が小さいほど)、コールドフローし難く、好ましい判断できる。
【0069】
<融点(Tm)>
シクロペンテン開環重合体の融点(Tm)を、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温で測定した。
【0070】
《実施例1》
窒素雰囲気下、攪拌子の入ったガラス容器に2.0重量%のWCl/トルエン溶液10部、および15重量%ジイソブチルアルミニウムモノイソブトキシド/n−ヘキサン溶液2.2部を加え、15分間攪拌し、次いで、1,4−ジオキサン0.044部を加えて触媒溶液を得た。
【0071】
次いで、窒素雰囲気下、攪拌機付き耐圧ガラス反応容器に、シクロペンテン100部、および5−ビニルノルボルネン0.18部(シクロペンテンに対して0.1モル%)を仕込み、次いで、上記にて調製した触媒溶液を加えて、25℃で16時間重合した。そして、耐圧ガラス反応容器に、過剰のイソプロパノールを加えて重合を停止した後、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を含む大過剰のイソプロパノールに注いだ。そして、沈殿したポリマーを回収し、イソプロパノールで洗浄後、40℃で3日間、真空乾燥することにより、シクロペンテン開環重合体75部を得た。そして、得られたシクロペンテン開環重合体について、上記方法に従い、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、シス/トランス比率、ポリマー鎖1本当たりの分岐構造の個数、触媒金属残渣量、長期保存安定性、ホットフロー性、コールドフロー性、および融点(Tm)の各評価、測定を行った。結果を表1に示す。
【0072】
《実施例2》
1,4−ジオキサン0.044部に代えて、酢酸エチル0.085部を用い、かつ、5−ビニルノルボルネンの配合量を0.18部から、0.09部(シクロペンテンに対して0.05モル%)に変更した以外は、実施例1と同様にして重合を行い、シクロペンテン開環重合体54部を得た。そして、得られたシクロペンテン開環重合体について、実施例1と同様に各測定を行った。結果を表1に示す。
【0073】
《実施例3》
窒素雰囲気下、攪拌機付き耐圧ガラス反応容器に、シクロペンテン100部および5−ビニルノルボルネン0.09部(シクロペンテンに対して0.05モル%)を仕込み、次いで、分子量調整剤として1−ヘキセン0.092部を加え、続いてトリイソブチルアルミニウムと水から調製したジイソブチルアルミノキサン/トルエン溶液(Al換算で3.3×10−2モル/リットル)10.0部、および1.6重量%のWCl/トルエン溶液7部を添加して、25℃で6時間重合した。そして、過剰のイソプロパノールを加えて重合を停止した後、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を含む大過剰のイソプロパノールに注いだ。そして、沈殿したポリマーを回収し、イソプロパノールで洗浄後、40℃で3日間、真空乾燥することにより、シクロペンテン開環重合体58部を得た。そして、得られたシクロペンテン開環重合体について、実施例1と同様に各測定を行った。結果を表1に示す。
【0074】
《実施例4》
5−ビニルノルボルネン0.018部の代わりに、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン0.12部(シクロペンテンに対して0.05モル%)を用いた以外は、実施例3と同様にして重合を行ない、シクロペンテン開環重合体54部を得た。そして、得られたシクロペンテン開環重合体について、実施例1と同様に各測定を行った。結果を表1に示す。
【0075】
《比較例1》
5−ビニルノルボルネンを配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、シクロペンテン開環重合体78部を得た。そして、得られたシクロペンテン開環重合体について、実施例1と同様に各測定を行った。結果を表1に示す。
【0076】
《比較例2》
5−ビニルノルボルネンを配合しなかった以外は、実施例2と同様にして、シクロペンテン開環重合体56部を得た。そして、得られたシクロペンテン開環重合体について、実施例1と同様に各測定を行った。結果を表1に示す。
【0077】
《比較例3》
窒素雰囲気下、攪拌機付き耐圧ガラス反応容器に、シクロペンテン100部およびトルエン100部を仕込み、耐圧ガラス反応容器を−45℃に冷却した後、5重量%の2,6−ジイソプロピルフェニルイミド−ネオフィリデン[ジ(t−ブチル)]モリブデン/トルエン溶液20部を加えて、−45℃で24時間重合した。重合反応液を少量サンプリングして、過剰のイソプロパノールで重合を停止した。得られた重合体は、Mn=57,500、Mw=66,100、Mw/Mn=1.15であった。
次いで、上記にて得られた重合反応液に、トルエン10部に溶解した1,3,5−ベンゼントリカルボキシアルデヒド0.28部(モリブデン原子と当モ量)を加え、カップリング反応を3時間行った。続いて、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)を含む大過剰のイソプロパノールに注いで、沈殿したポリマーを回収し、イソプロパノールで洗浄後、40℃で3日間、真空乾燥することにより、シクロペンテン開環重合体50部を得た。そして、得られたシクロペンテン開環重合体について、実施例1と同様に各測定を行った。結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1に示すように、メタセシス重合触媒存在下でシクロペンテンを開環重合する際に、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物を添加した場合には、得られるシクロペンテン開環重合体は、いずれもポリマー鎖1本当たりに適当個数の分岐構造を含み、ホットフロー性およびコールドフロー性に優れ、かつ、ゴム特性に優れる(長期保存時のゲル含有率が0%であり、ゴム特性を良好に保つことができる)ものであった(実施例1〜4)。
【0080】
これに対して、ビニル基を有する環状オレフィンおよびビニル基を3個以上有する化合物のいずれも用いなかった場合には、得られるシクロペンテン開環重合体は、長鎖分岐構造を有しておらず、ホットフロー性およびコールドフロー性に劣るものであった(比較例1,2)。
また、2,6−ジイソプロピルフェニルイミド−ネオフィリデン[ジ(t−ブチル)]モリブデンを用い、リビング重合のカップリング反応により分岐構造を導入した場合には、得られるシクロペンテン開環重合体は、ポリマー鎖1本当たりに分岐構造の個数が0.35と低く、ホットフロー性およびコールドフロー性が不十分であり、しかも、触媒金属量が多く、触媒金属の影響により長期保存時のゲル含有率が25%と高くなり、ゴム特性に劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタセシス重合触媒存在下でシクロペンテンを開環重合するシクロペンテン開環重合体の製造方法であって、
前記シクロペンテンに対して、0.001〜1モル%の、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物を、前記シクロペンテンと反応させることを特徴とするシクロペンテン開環重合体の製造方法。
【請求項2】
前記メタセシス重合触媒が、周期表第6族遷移金属化合物と下記一般式(1)で示される有機アルミニウム化合物とを含むことを特徴とする請求項1に記載のシクロペンテン開環重合体の製造方法。
(R3−xAl(OR (1)
(上記一般式(1)中、RおよびR2は、炭素数1〜20の炭化水素基を表し、xは、0<x<3である。)

【公開番号】特開2011−126966(P2011−126966A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285226(P2009−285226)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】