説明

システムキッチン

【課題】使用者が天板の左右の方向に正対し易くするとともに、キャビネットの構造が複雑とならないようにして全体として簡単な構成のシステムキッチンを実現し、併せて、天板の下方に開放空間を設けて、収納空間としても利用可能な構成を実現する。
【解決手段】平面視で前面2’〜4’が略同一直線L上にある複数のキャビネット2〜4に天板5を載置するとともに、天板5にシンク8とコンロ9の両方又はいずれかを固定し、平面視で天板5の前縁10が、キャビネット3の前面3’と平行な平行部12と、キャビネット2、4の前面2’、4’と所定の角度θ1を形成した傾斜部11、13で形成され、傾斜部11、13より奥側(背面側)の下方であってキャビネット2、4の前方に、開放空間15が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムキッチン、特に、キャビネット上に、シンクとコンロを固定した天板を備えたシステムキッチンに関する。
【背景技術】
【0002】
システムキッチンについては、キャビネット内の空間を収納空間として最大限活用可能とするとともに、作業動線、手の届く範囲、作業姿勢等の人間工学的な見地から肉体的な負担を低減するような改善の要請がある。
【0003】
従来、キッチンの天板の中央部を凹状に形成し、天板の左右両サイドを中央部より前方側(使用者側)突出させるとともに、キッチンキャビネット及び該キャビネットに設けたシンクやコンロを中央部に向けて斜めに配置した構成は、公知である(特許文献1〜5参照)。
【特許文献1】特開平4−122308号公報
【特許文献2】特開平3−202010号公報
【特許文献3】特許第2532466号公報
【特許文献4】実用新案登録第2560959号公報
【特許文献5】特開平4−279108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシステムキッチンでは、天板の前縁を使用者から見て凹状に形成することで、使用者が天板の左右の方向に正対し易くなるが、天板の前縁とキャビネットの前面が同じ方向(平行)になるような構成としているので、キャビネットの構造が複雑となるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題を解決することを目的とするものであり、天板の前縁の一部に使用者から見て前方に向かって張り出す部分を形成することで、使用者が天板の左右の前縁に向けて正対し易く、作業動線、手の届く範囲、作業姿勢等の人間工学的な観点から疲労の少ない構成とするとともに、キャビネットの構造が複雑とならないようにして全体として簡単な構成のシステムキッチンを実現することを課題とする。併せて、天板の下方に開放空間を設けて、収納空間としても利用可能な構成を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、平面視で前面が略同一直線状にある複数のキャビネットに天板を載置するとともに、天板にシンクとコンロの両方又はいずれかを固定したシステムキッチンであって、平面視で天板の前縁が、前方に張り出した張出縁を含み、該張出縁より奥側の下方であってキャビネットの前方に、開放空間が形成されていることを特徴とするシステムキッチンを提供する。
【0007】
上記システムキッチンは、その張出縁が、平面視で複数のキャビネットの前面に対して所定の角度を形成する傾斜部で形成される構成としてもよい。
【0008】
上記システムキッチンは、その張出縁が、平面視で複数のキャビネットの前面に対して湾曲する湾曲部で形成される構成としてもよい。
【0009】
上記システムキッチンは、キャビネットの外側位置において開放空間の奥行きが最大である構成としてもよい。
【0010】
上記システムキッチンは、平面視でシンクとコンロの前側が、傾斜部又は湾曲部の中央部における接線と略平行である構成とすることが好ましい。
【0011】
上記システムキッチンは、キャビネットの前面に取り付けられた吊り下げ具が、開放空間内に位置し、平面視で張出縁より前方へ突出しない構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るシステムキッチンは、天板の前縁の一部が使用者から見て前方に張り出すように形成され、しかもキャビネットの前面は平面視で一直線状に設けた構成としたので、次のように相乗的な顕著な効果が生じる。
【0013】
(1)使用者はシンクやコンロに向けて、余り動くことなく短い動線で簡単に正対し作業を行うことができる。
(2)このような効果を得ることができるにもかかわらず、従来例のシステムキッチンのようにキャビネット前面を天板前縁に沿って形成する必要がなく、キャビネットの前面は、天板前縁の向きにかかわらず平面視で一直線状に設ければよいので、システムキッチン全体を簡単に形成できる。
(3)天板の前縁の一部を前方に張り出した張出縁を形成する構成と、キャビネットの前面を平面視で一直線状する構成を組み合わせることで、天板の前縁の張出縁より奥側の下方に開放空間が形成され、この開放空間を有効利用可能である。例えば、キャビネットの前面にタオル掛け等の吊り下げ具を設ければ、収納空間として利用でき、この開放空間には使用者が足を入れてリラックスな姿勢をとることもできる 。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るシステムキッチンを実施するための最良の形態を実施例に基づき図面を参照して、以下説明する。
【実施例1】
【0015】
図1、2は、本発明に係るシステムキッチンの実施例1の構成を説明する図である。図1(a)は実施例1のシステムキッチン1の平面図であり、図2(a)、(b)は図1(a)のA−A断面、B−B断面及び使用状態をそれぞれ示す。
【0016】
複数(本実施例では3つ)のキャビネット2〜4上に1枚の天板5が載置されている。この実施例1では、左右両側のキャビネット2、4に対応して天板5には開口部6、7が形成され、これらの開口部6、7に、それぞれシンク8、コンロ9が固定されている。なお、本実施例1では、天板5の開口部6、7にシンク8、コンロ9が固定されている例を示したが、それらのいずれか一方でもよい。
【0017】
複数のキャビネット2〜4は、それぞれ引き出しや扉開閉収納部を有しており、複数のキャビネットの前面2’〜4’は、図1(a)に示すように、平面視で略同一直線状に配置されている。即ち、複数のキャビネット2〜4は、それらの前面2’〜4’が、図1(a)の同一直線L上の位置に略揃うように配置されている。換言すると、複数のキャビネットの前面2’〜4’は、水平な直線Lを含む垂直平面上に、略整列されるように形成されている。
【0018】
天板5の前縁10は、平面視で使用者側から見て平行部12より前方に張り出した(突出した)張出縁14を備えている。この実施例1では天板5の前縁10は、中央部がキャビネット2〜4の前面に平行な平行部12と、左右の傾斜部11、13から形成されており、左右の傾斜部11、13は、それぞれ張出縁14を構成している。
【0019】
左右の傾斜部11、13は、平行部12の左右両端から、それぞれ該平行部12、従ってキャビネットの前面2’〜4’に対して所定の角度θ1で傾斜して天板の左右両端に伸びるように形成されている。
【0020】
ここで、所定の角度θ1は、大きすぎるとシンク8やコンロ9がキャビネット前縁10から離れすぎて使用者は使いづらくなり、小さすぎると後記するような張出縁14を設ける意義が希薄となるので、このような意義等を考慮して適宜決められる。
【0021】
天板5の開口部6、7は、その前縁が天板5の天板前縁左右の傾斜部11、13と平行となるように形成されている。即ち、シンク8、コンロ9は、その前縁8’、9’がキャビネットの前面2’〜4’に対して所定の角度θ1を持って固定される。よって、シンク8やコンロ9は、使用者が前縁10の傾斜部11、13に向かって作業する場合は、シンク8やコンロ9が使用者の正面に位置するように配置されることとなる。
【0022】
キャビネット2〜4の前面2’〜4’は平面視で一直線状にあり、天板5の前縁10は傾斜部11、13(張出縁14)を備えているので、天板5の傾斜部11、13(張出縁14)より奥側(背面側)の下方であってキャビネット2、4の前方には、軒下のようなスペース15(本発明では「開放空間」と言う。)が形成されることとなる。この開放空間15は、キャビネット2、4の外側位置において奥行きが最大である。
【0023】
(変形例1)
図1(b)は実施例1の変形例1を示す。この変形例1では、実施例1のように左右両側に張出縁14が形成されていない。即ち、傾斜部11は形成されているが、傾斜部13は形成されておらず、平行部12が天板5の前縁10の右端まで延びている。要するに、本発明での張出縁14は、特に左右両側に形成されている必要はなく、片側でもよい。
【0024】
(変形例2)
図1(c)は実施例1の変形例2を示す。実施例1では、傾斜部11、13の端部11’、13’は、天板5の端部(即ち、キャビネット2、4の外側位置)まで到達し、天板5の前縁10の端部10’、10’と同じである。しかしながら、図1(c)の変形例2では、傾斜部11、13の端部11’、13’は、天板5の前縁10の端部10’、10’まで到達せず、さらに平行部を介して天板5の前縁10の端部10’、10’まで到達している構成である。従って、図1(a)、(b)、(c)の実施例1、変形例1、変形例2ともに、キャビネット2、4の外側位置において、開放空間15の奥行きが最大となっている。
【0025】
(作用)
以上の構成の実施例1では開放空間15が形成されているので、次のように使用者にとって使い勝手がよくなる。図1(a)、図2(b)では、使用者Pが中央のキャビネット3に向って調理作業等をしている状態を示す。
【0026】
この状態から、使用者Pがシンク8又はコンロ9を使用する際には、体を左方又は右方に比較的少し向ければ、シンク8又はコンロ9にすぐ向き合うことができる。しかも、シンク8、コンロ9は、その前縁8’、9’が天板5の傾斜部11、13(張出縁14)に平行になるように配置されているので、使用者Pは、シンク8又はコンロ9に正面で、しかも距離的に遠くなるようなことなく向き合うことができる。
【0027】
そして、シンク8を使用する作業では、図2(a)に示すように、天板5の下方の開放空間15に片足の膝を入れてリラックスし、片足を休ませることできる。コンロ9に向かう作業においても図示はしないが同様に、天板5の下方の開放空間15に片足の膝を入れてリラックスし、片足を休ませることができる。
【0028】
さらに、天板5の下方の開放空間15は、いろいろな収納空間としても利用できる。例えば、図3に実施例1の応用例を示すように、キャビネット4の前面4’に吊り下げ具としてタオル掛け18を取り付けて開放空間15を利用する構成としてもよい。
【0029】
ここで、図3(a)、(b)の応用例では、タオル掛け18を天板5の前縁10と平行にしてキャビネットの前面4’に取り付けた構成を示す。又、図3(c)の応用例では、タオル掛け19をキャビネット4の前面4’と平行にして取り付けた構成を示す。このような構成によれば、タオル掛け18、19を利用者の目に触れず、しかも上方からの塵がタオルに付着することを防ぐことができる。また、吊り下げ具としては、上記のタオル掛けの他、調理具を吊り下げるもの等、その用途は特に限定されない。
【実施例2】
【0030】
図4(a)は、本発明の実施例2を説明する平面図である。この実施例2では、天板5の前縁10は、その中央に実施例1のような平行部12はなく、中央において互いに交叉する左右の傾斜部20、21から形成されている。左右の傾斜部20、21は、キャビネット2〜4の前面2’〜4’(前面2’〜4’に平行な直線S)に対して所定の角度θ2で傾斜して形成され、キャビネット4の前方の使用者側に張り出した張出縁14を形成している。
【0031】
実施例2についても、天板5には左右の傾斜部20、21の前縁10に平行な開口部6、7が形成されており、この開口部6、7にシンク8、コンロ9が固定されている。そして、実施例1同様に天板前縁10の張出縁14を形成する傾斜部20、21より奥側(背面側)下方の左右に開放空間15が形成されており、実施例1と同様の効果が生じる。
【実施例3】
【0032】
図4(b)は、本発明の実施例3を説明する平面図である。この実施例3では、天板5の前縁10は、全体的に一定の曲率の湾曲縁22で形成されている。実施例3についても、天板5には開口部6、7が形成されており、この開口部6、7にシンク8、コンロ9が固定されている。この湾曲縁22の左右の湾曲部23、24はそれぞれ張出縁14を形成している。
【0033】
シンク8、コンロ9の前縁8’、9’は、湾曲縁22の左右の湾曲部23、24の中央部の点P1、P2における接線に略平行に形成され、使用者が左右の縁部23、24に向き合うとシンク8、コンロ9に正対することができる。そして、湾曲縁22の左右の湾曲部23、24(張出縁14)の下方に開放空間15が形成されており、実施例1、2と同様の効果が生じる。
【0034】
以上、本発明に係るシステムキッチンを実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施例があることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上、本発明に係るシステムキッチンついて説明したが、キャビネットの前面は平面視で一直線状とするとともに、天板の前縁の一部を使用者側から見て前方に張り出すように形成し、天板開口に取り付けられるシンク等をこの天板の前縁の一部に正対するように配置する構成は、システムキッチンだけでなく、洗面用のシンクキャビネット等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例1を示し、(a)は平面図であり、(b)、(c)は変形例1、2を示す。
【図2】(a)は図1(a)のA−A断面図を示し、(b)はB−B断面図を示している。
【図3】本発明の実施例1の応用例を示し、(a)は斜視図であり、(b)、(c)は平面図を示している。
【図4】(a)は本発明の実施例2を示し、(b)は本発明の実施例3を示している。
【符号の説明】
【0037】
1 システムキッチン
2、3、4 キャビネット
2’、3’、4’ キャビネットの前面
5 天板
6、7 天板の開口部
8 シンク
8’ シンクの前縁
9 コンロ
9’ コンロの前縁
10 天板の前縁
10’ 天板の前縁の端部
11、13 天板前縁左右の傾斜部
11’、13’ 傾斜部の端部
12 天板前縁中央の平行部
14 張出縁
15 開放空間
18、19 タオル掛け
20、21 左右の傾斜部
22 湾曲縁
23、24 湾曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で前面が略同一直線状にある複数のキャビネットに天板を載置するとともに、天板にシンクとコンロの両方又はいずれかを固定したシステムキッチンであって、平面視で天板の前縁が、前方に張り出した張出縁を含み、該張出縁より奥側の下方であってキャビネットの前方に、開放空間が形成されていることを特徴とするシステムキッチン。
【請求項2】
請求項1記載のシステムキッチンであって、張出縁は、平面視で複数のキャビネットの前面に対して所定の角度を形成する傾斜部で形成されることを特徴とするシステムキッチン。
【請求項3】
請求項1記載のシステムキッチンであって、張出縁は、平面視で複数のキャビネットの前面に対して湾曲する湾曲部で形成されることを特徴とするシステムキッチン。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のシステムキッチンであって、キャビネットの外側位置において開放空間の奥行きが最大であることを特徴とするシステムキッチン。
【請求項5】
請求項2又は3に記載のシステムキッチンであって、平面視でシンクとコンロの前側が、傾斜部又は湾曲部の中央部における接線と略平行であることを特徴とするシステムキッチン。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のシステムキッチンであって、キャビネットの前面に取り付けられた吊り下げ具が、開放空間内に位置し、平面視で張出縁より前方へ突出しないことを特徴とするシステムキッチン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−330552(P2007−330552A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−166585(P2006−166585)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】