説明

システムキッチン

【課題】シンク壁面に設置した電波を放射するセンサの受信信号に基づいて吐水口へ給水するバルブの開閉動作を行うシステムキッチンにおいて、吐水中にシンク内において水汲み作業が行われた場合にも、精度よく自動吐水継続制御が行えるシステムキッチンの提供。
【解決手段】吐水口11から吐水される水を受水するシンク20と、電波の送受信を行い被検知体の静止している状態や動いている状態を検知するセンサ部50と、センサ部50から得られた被検知体の検知情報に基づいて開閉し、吐水口11へ水を供給するかしないかを切り替えるバルブとを有するシステムキッチンであって、センサ部50は、水以外の物体と水との識別や、水の飛散状態を識別可能な信号処理部を備えており、バルブが開状態の時、センサ部50が、水以外の物体は静止状態であり、且つ水の飛散状態は所定のレベル以下の状態であることを所定時間検知すると、バルブの開状態を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を放射するセンサの受信信号に基づいて吐水口へ給水するバルブの開閉動作を行うシステムキッチンにおいて、前記バルブが開状態において、水以外の物体の静止、非静止状態や水の飛散状態の有無を検知することでバルブの開状態の保持を行うシステムキッチンに関する。
【背景技術】
【0002】
センサからの送信波が被検知体に当たると反射波を生じる。この反射波を受信することにより人体などの被検知体を検知することができるので、これを検知手段として水栓装置の吐止水の自動制御に使用する技術が知られている。
【0003】
例えば、シンク側壁面に光電スイッチを設け、蛇口に手、または食器を近づけることによって、前記スイッチを動作させて吐水を行うシステムキッチンが記載されている。 (特許文献1)
【0004】
また、筐体内に光スイッチを設け、筐体開放部への手の出し入れに伴って、送水機構の作動有無や温水供給と温風供給との切り替え、及び、温水供給時における石けん液の混入の断続を操作する温水温風供給装置が公開されている。(特許文献2)
【0005】
特許文献1のように、シンク側壁に配置した光電センサによって、蛇口に近づいた手や食器を検知して吐水を行い、さらに特許文献2のように被検知体の出し入れによって止水も自動制御しようとした場合、たとえば吐水中に光電センサの検知範囲内にて手もみなどを行った場合に、使用者は吐水されている水を使用していないのに、バルブが開状態のまま吐水継続してしまい、無駄な水が発生する可能性がある。
【0006】
このような問題を解決する手段として、電波センサを使用して、吐水流に洗浄物が当たらない状態での吐水と、洗浄作業中に吐水流が洗浄物に当たった時に飛散する水を識別する技術が知られている。(特許文献3)
【0007】
特許文献3の技術を利用すれば、センサの検知範囲内において、手もみなどの行為を行った場合でも、手に当たって飛散する水は存在しないため、止水することが出来る。
しかし、キッチン作業においては吐水された水を鍋などに汲むという作業が頻繁に発生する。水を汲む作業では、洗浄物に当たって飛散する水は発生しないため、特許文献3の技術を利用しても止水してしまうという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開昭61−075570
【特許文献2】実公平2−39440
【特許文献3】特願2007−250831
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明が解決しようとする目的は、電波を放射するセンサの受信信号に基づいて吐水口へ給水するバルブの開閉動作を行うシステムキッチンにおいて、バルブ開状態において、シンク内に存在する水以外の物体が静止状態か非静止状態であることを識別し、かつ吐水された水が前記物体に当たって飛散状態にあるか、飛散していないかを識別することで、使用者の水汲みの状況をより的確に判断し、確実に吐水を継続させることで、使用者にとって使い勝手のよいシステムキッチンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の一態様によれば、吐水口を有する水栓と、前記吐水口から吐水される水を受水するシンクと、電波の送受信を行い被検知体の静止している状態や動いている状態を検知するセンサ部と、前記センサ部から得られた被検知体の検知情報に基づいて開閉し、前記吐水口へ水を供給するかしないかを切り替えるバルブとを有するシステムキッチンであって、前記センサ部は、水以外の物体と水の識別や、水の飛散状態を識別可能な信号処理部を備えており、前記センサ部が、前記物体は静止状態であり、且つ水の飛散状態は所定レベル以下の状態であることを所定時間検知すると、前記バルブの開状態を保持することを特徴とするシステムキッチンを提供できる。水以外の物体の静止と水の飛散状態の両方を検知することによって、物体が静止し、かつ水の飛散が小さい水汲み状態と、物体が存在しないもしくは非静止状態で、かつ水の飛散が小さい非使用時の状態を確実に見極めることが可能となるので、水を汲む作業のときに、吐水を継続することが可能となり、使用者にとってストレスなくキッチン作業が行える使い勝手の良いシステムキッチンを提供出来る。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、前記信号処理部は、水以外の物体と水との識別を、前記センサ部から得られる検知信号の周波数の情報によって、識別することを特徴とする請求項1記載のシステムキッチンを提供できる。水以外の物体の一般的な速度は約50Hz前後で、水の速度(100Hz前後)に比べて比較的低いため、周波数情報に差がある。よって被検知体の速度情報を取得することで、より精度よく水と水以外の物体を識別することが可能となり、使用者にとってより使い勝手の良いシステムキッチンを提供できる。
【0012】
前記信号処理部は、物体の静止状態を検知するための直流信号を通過させる第一のフィルタと水の飛散状態を検知するための直流信号を遮断する第二のフィルタと少なくとも2つのフィルタを備えており、第二のフィルタの最大通過周波数は第一のフィルタの最大通過周波数よりも大きいことを特徴とする、請求項1または2いずれか一項に記載のシステムキッチンを提供できる。物体の静止状態の時は0Hz(直流成分)が得られるため、前記第一のフィルタを用いることで、識別が困難な静止状態と略静止状態を精度よく識別することが出来る。水が飛散状態の時には、静止状態とはならないため、必要でない直流信号を遮断した第二のフィルタを用いることで、外乱に影響されず、より精度よくに水の飛散状態を検知出来る。さらに水以外の物体の速度よりも水の飛散状態時の速度の方が比較的高速なため、第一よりも第二のフィルタの最大通過周波数を高く設定することにより、水以外の物体の静止状態や、水以外の物体に当たって飛散する水をより精度よく検知することが可能となり、さらに精度の高い吐水継続制御が可能となる。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、前記信号処理部は、洗い作業中の水の状態と、非使用中の水の状態と、水汲み作業中の水の状態を識別するために、前記第二のフィルタを通過した信号に対して、値の異なる第一と第二の少なくとも2つの閾値を備えており、前記第一の閾値を所定時間超えた場合には洗い作業中の水の状態であると検知し、前記第二の閾値を所定時間超えた場合には非使用中の水の状態であると検知し、前記第二の閾値を所定時間超えなかった場合には鍋などの用に溜まる水の状態であると検知し、さらに第一の閾値は第二の閾値よりも大きいことを特徴とする、請求項3記載のシステムキッチンを提供できる。シンク以外の物体に当たって水が飛散する状態となる洗い作業時は水の飛散方向が広がるため比較的信号強度が大きく、水が前記シンクに直接当たって飛散する水の状態となる非使用状態は比較的信号強度が小さい。さらに鍋などの容器の中に水が溜まる状態となる水汲み作業時は水の飛散が小さくなることにより最も信号が小さくなる。よって前記第二フィルタにおいて閾値による制御を行うことで、水の状態を確実に見極めることが可能となる。これにより、さらに精度の高い自動止水制御および吐水継続制御が可能となる。
【0014】
また、本発明の一態様によれば、前記信号処理部は、所定時間内における前記第一1のフィルタを通過した信号強度に基づいて、シンク内に水以外の静止物体が存在するか、存在しないかを判断することを特徴とする請求項3または4いずれか一項記載のシステムキッチンを提供できる。シンク内に水以外の物体がない状態において、第一フィルタの信号強度は変動しない、もしくは格段に小さいが、シンク内に水以外の静止物体が存在した場合には、設置場所に応じて第一フィルタの信号強度が一定レベルだけ変動するため、第一フィルタにおいて閾値と検知時間を設定することで、シンク内に水以外の静止物体が存在しているかいないかを確実に判断することが可能となる。これによりシンク内に水以外の静止物体がない状態において、誤って水以外の物体が静止状態であると検知してしまい、吐水継続してしまう可能性を低減でき、さらに精度のよい止水制御が可能となることで、より使い勝手の良いシステムキッチンを提供できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シンク内に置かれた水以外の物体の静止状態、および洗浄物に吐水が当たって飛散した水の判別を行うことにより、水を汲む作業のときに、吐水を継続することが可能となり、使用者にとってストレスなくキッチン作業が行える使い勝手の良いシステムキッチンを提供出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のシステムキッチンの概略構成図
【図2】センサ部概略構成図
【図3】ドップラー周波数信号の概略図
【図4】シンク内で手が動いた場合の説明図
【図5】シンク内手洗い作業が行われた場合の説明図
【図6】シンク内に水以外の物体が置かれ、水汲み作業が行われている説明図
【図7】水以外の物体の静止状態と飛散水なしの状態を検知することで 止水する方法の説明図
【図8】水以外の物体が静止状態時の検知信号概略図
【図9】シンク壁面に水滴付着時の信号の概略図
【図10】静止物検知方法の説明図
【図11】飛散水による反射波のドップラー周波数信号概略図
【図12】シンク壁面に水滴付着時の信号の概略図
【図13】センサ部の詳細説明図
【図14】手の動きと飛散状態の水の周波数特性概略図
【図15】手を検知するためのフィルタ回路の説明図
【図16】水を検知するためのフィルタ回路の説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1に本発明のシステムキッチンの概略構成図を示す。システムキッチン1は、吐水口11を有する水栓10と、吐水口11から吐水される吐水流12を受水するシンク20と、水栓10へ水を供給するための給水管30と電波の送受信を行うセンサ部50と、センサ部50から得られた被検知体の検知情報に基づいて開閉し、前記吐水口11へ水を供給するかしないかを切り替えるバルブ40とを有するシステムキッチンであって、センサ部50はシンク側壁21の外側に設けられ、シンク20内側に検知エリア51を持つように設置された構成になっている。
【0018】
まず、本実施例におけるシンク20の方向関係について示す。図1において、シンク20に対して使用者が使用する場所、例えば、本実施例においては水栓10と対峙する面を前縁側とし、前縁側と対峙する面を後縁側、シンク開放面方向を上方、シンク底面が存在する方向を下方、図面左側を左側方、図面右側を右側方とする。シンクは、前縁側、後縁側、左側方、右側方に存在する側壁と、底面とによって構成されるものである。
【0019】
なお、各方向に設けられたシンク側壁21と底面22との境界は必ずしも明瞭である必要は無く、例えば、側壁面21同士の接続面が曲面にて形成されていても良い。また、シンク底面22とシンク側壁21とが識別可能な角度、又は形状で形成されていても良い。更に、シンク底面22は水平面で形成されるものに限定されず、傾きを持って形成されたものでも良い。またシンク側壁21は全てが同じ深さ方向にて、同じ長さを有することなく、シンク底面22及びシンク全体の形状に応じて変化しても良い。ここで、シンク20とは、図1のようにカウンタ上面60に対して凹部となり吐水口11から吐水される水を受水するようになったものである。
【0020】
また、吐水流12は、図1のようにシャワー形状である必要はなく、整流やスプレー、滝状等の形状でもよい。
【0021】
図1においては、水栓10はカウンタ上面60に設置されているが、水栓10はシンク側壁面21に設置されても良い。また、水栓10の形状についても図1に記載したものに限らない。
【0022】
本発明において吐水口11から吐水される水は、お湯や熱湯、石鹸水などでも同じ効果を発揮するため、上記液体でもよい。
【0023】
センサ部50に関して、図2に詳細を示す。センサ部50は、外部に放射した送信波58が、被検知体に反射して戻ってきた受信波59を受信し、その受信信号55に基づいて判定信号56を生成する信号処理部52と、信号処理部52から出力された判定信号56によって、バルブ40に対して開閉信号57を送信する制御部53とを有する。なお、信号処理部52は省略しても良い。その場合には制御部53が受信波59に基づいて、バルブ40へ開閉信号57を送信すればよい。信号処理部52を省略することで、信号処理に関わる時間のロスや、部品点数を少なくすることが出来る。
【0024】
図4のように吐水口11から吐水中にシンク20内で手もみなどの動作があった場合、例えばセンサ部50に赤外線センサを利用すると、被検知体である手150に反応して吐水し続けてしまう可能性がある。これにより、使用者が意図していない無駄な吐水継続が発生する可能性がある。
【0025】
解決する手段として、例えば図5のように吐水流が被洗浄物に当たった時に発生する飛散水13を検知することで、飛散水13を検知しない場合には止水制御を行うことによって、使用者の意図していない無駄な吐水継続を防ぐことができる。
【0026】
しかし例えば図6のように、キッチン作業において、使用者は吐水口11から吐水中にシンク20内の吐水流12の着水位置付近に鍋などの調理器具150を置き、鍋150の内側に吐水流12が着水するような水汲み作業を行う場合がある。このようなシーンでは、使用者が吐水を継続させたいという意図があると考えられるが、例えば飛散水を検知する方法を適用した場合、飛散水13を検知しないため、止水してしまい、水汲み作業を妨げる可能性がある。
【0027】
解決する手段として、飛散水13の検知だけでなく、例えば図7のように水以外の物体の静止状態も検知する手段も組み合わせた方法がある。水汲み作業においては飛散水13は検知されず、水を汲む調理器具150の静止状態が検知されるため、例えば、飛散水13が検知されない状態でも物体の静止状態を検知することで吐水継続することが可能となり、使用者はストレスなくキッチン作業を行え、使い勝手の良いシステムキッチンを提供できる。
【0028】
そこで本発明の一態様のよれば、吐水口11を有する水栓10と、前記吐水口11から吐水される水を受水するシンク20と、電波の送受信を行い被検知体の静止している状態や動いている状態を検知するセンサ部50と、前記センサ部50から得られた被検知体の検知情報に基づいて開閉し、前記吐水口へ水を供給するかしないかを切り替えるバルブ40とを有するシステムキッチンであって、センサ部50は、水以外の物体と水との識別や、水の飛散状態を識別可能な信号処理部52を備えており、バルブ40が開状態の時にセンサ部50が、水以外の物体150は静止状態であり、シンク20内で飛散する水13が所定レベル以下の状態であることを所定時間検知すると、バルブ40の開状態を保持する。水以外の物体の静止と水の飛散状態の両方を検知することによって、物体が静止し、かつ水の飛散が小さい水汲み状態と、物体が存在しないもしくは非静止状態で、かつ水の飛散が小さい非使用時の状態を確実に見極めることが可能となるので、水汲み作業時に吐水継続が可能となり、使用者はストレスなくキッチン作業が行え、使い勝手の良いシステムキッチンを提供できる。
【0029】
センサ部50による水と水以外の物体とを識別する手段について述べる。前記識別を行う場合には、電波センサのドップラー周波数信号の利用が望まれる。赤外線センサを利用すると、被検知体のあり、なしは識別しやすいが、前記非検知体が何かを識別するのは困難である。一方で電波センサのドップラー周波数信号を利用することで、被検知体の速度情報を取得することが可能となり、速度の特性を用いて被検知体を識別することが可能となる。特に水と水以外の識別について触れると、図14のようにシンク内における水以外の物体とは、主に手や食材や食器や調理器具であり、速度の特性としては手の動きに含まれる。一方で飛散する水については、手の動きよりも高速な速度情報が得られる。具体的には、手の速度は一般的に50Hz前後であり、飛散する水の速度は一般的に100Hz前後である。
【0030】
これらの検知手段を実現する構成として、本発明の一態様によれば、請求項1のシステムキッチンにおいて、信号処理部52は、水以外の物体と水との識別を、センサ部50から得られる検知信号の周波数の情報によって識別する。水以外の物体の一般的な速度は約50Hz前後で、水の速度(100Hz前後)に比べて比較的低いため、周波数情報に差がある。よってより精度よく識別することが可能となり、使い勝手の良いシステムキッチンを提供できる。
【0031】
センサ部50による水以外の物体の静止状態と非静止状態を識別する手段について述べる。静止している前記物体と動いている前記物体とを識別して検知するためには、前記物体の速度情報を取得する必要がある。その為には、電波センサのドップラー周波数信号の利用が望まれる。たとえば吐水している水から反射した信号や、洗い作業を行っている手のような水以外の洗浄物などから反射した信号は、被検知体である洗浄物が速度成分を持っているため、図3のようにドップラー周波数信号の基準値200に対する電圧の変化202が前記洗浄物がない状態に対して比較的大きな値で得られる。一方で、図6のようにセンサの検知エリア51内に鍋のような洗浄物150が置かれた場合、前記洗浄物が速度成分を持たないため、図8のようにドップラー周波数信号による電圧の基準値200に対する検知信号の変化量201はほぼ0となる。上記ドップラー周波数信号の特性を利用して、前記洗浄物の静止状態と非静止状態との識別を行う。なお、送信する電波の周波数については、例えば10GHz帯などを用いる。
【0032】
本発明における静止状態とは、速度成分を持たない状態を表しており、例えば、シンク内に置かれた鍋などが該当する。手または手に持った物体などがかざされている状態は、手の揺らぎなどにより非常に低速な速度成分を含んでいるため静止状態には含まれない。
【0033】
静止状態の水以外の物体を検知するためのアルゴリズムについては、例えば検知信号の単位時間当たりの基準値200に対する差分の絶対値の最大値や積算値を測定し、任意に設定した閾値と比較することで水以外の物体150が静止状態かどうかを判断してもよい。
具体的には、例えば図8のように、所定の閾値203、204を設定し、電圧202が、203よりも小さく204よりも大きい電圧であることを任意に設定した時間230以上継続した場合に水以外の物体150が静止状態と判定する。
【0034】
水以外の物体が静止状態かどうかをより精度よく判定するために、たとえばディジタルフィルタやフィルタ回路を利用し、検知信号として利用する周波数帯を限定してもよい。
ただし、静止状態を検知するためには、手をかざした時のような静止状態に近い略静止状態(数Hz程度)と静止状態とを識別する必要がある。これは水汲み状態でのシンク内における水以外の物体の静止状態と、キッチン作業を中断した時にシンク内に手が滞在するような、シンク内における水以外の物体の略静止を識別することで、手などの滞在する状態において確実に止水するためである。よって少なくとも0Hzや0Hz近傍の周波数を含む信号を利用するとよい。
【0035】
ドップラー信号においては、静止状態とシンク内に水以外の物体が存在しない場合においてどちらも電圧値の変動がない。そのため、シンク内に前記物体が存在しないにも関わらず静止状態であると誤検知し、吐水を継続させてしまう可能性がある。
【0036】
解決する手段として、センサ部50による検知信号について、直流成分(0Hz)を含んだ信号を利用する。水以外の物体150の静止状態を検知しようとした場合、例えばセンサ部50の近傍に水以外の物体150が静止すると、直流成分が変動する。一方で、センサ部50の近傍に何も存在しない場合には、直流成分が変動しない。
【0037】
そこで例えば図9のように閾値205と206を設定しておき、閾値205を所定時間超える、もしくは閾値206を所定時間下回ることを検知することで、水以外の物体150の存在を検知出来る。さらに信号の所定時間内の平均などから得られる基準値207に対して設定された所定の閾値209よりも小さく、且つ閾値208よりも大きい場合に、前記物体150が静止状態であることを検知することが出来る。逆に、例えば閾値205を所定時間下回り、且つ閾値206を所定時間上回ることを検知し、且つ閾値209よりも小さく、且つ閾値208よりも大きい場合に、前記物体150が存在していないことを検知出来る。これにより、センサの近傍に水以外の物体が存在しない場合と、存在し且つ静止している場合とを識別することが出来る。これにより水以外の物体150が存在しない状態において、誤って水以外の物体150が静止状態であると検知してしまうことを防止でき、さらに精度の高い自動止水制御が可能となり、より使い勝手の良いシステムキッチンを提供できる。
【0038】
これらの検知手段を実現する構成として、請求項3または4記載のシステムキッチンにおいて、信号処理部52は、所定時間内における前記第1のフィルタを通過した信号強度に基づいて、シンク内に水以外の静止物体が存在するか、存在しないかを判断する。水以外の物体150がない状態において、第一フィルタの信号強度は変動しない、もしくは格段に小さいが、シンク内に水以外の静止物体が存在した場合には、設置場所に応じて第一フィルタの信号強度が一定レベルだけ変動するため、第一フィルタにおいて閾値と検知時間を設定することで、シンク内に水以外の静止物体が存在しているかいないかを確実に判断することが可能となる。これによりシンク内に水以外の静止物体がない状態において、誤って水以外の物体150が静止状態であると検知してしまい、吐水を継続してしまう可能性を低減でき、さらに精度のよい止水制御が可能となることで、より使い勝手の良いシステムキッチンを提供できる。
【0039】
非静止状態は、静止状態を検知する条件に合致しない場合を言い、本実施例では静止状態を検知する手法について示しているが、実際には非静止状態を検知する手段、もしくは静止状態、非静止状態の両方を検知する手段を用いてもよい。
【0040】
センサ部50による飛散水13を検知する方法について述べる。飛散水13は速度成分を持つため、図11の600のように検知信号に0Hzより高い周波数成分が含まれている。よって、例えば図11のように、所定の閾値601、602を設定し、所定の時間603の間に飛散水13の信号600が閾値601を超えた、もしくは閾値602を下回ったかどうか、または超えた回数、超えた積算時間などを判定条件にすることで、飛散水を検知することが出来る。
【0041】
しかし、センサ部50から得られる直流成分(0Hz)を含んだ信号を使用して、飛散水13を検知しようとした場合、吐水流12を使用中の水はねなどによりシンク側壁面21に水滴などの電波を反射する物体が付着し、検知範囲51内に反射物が現れる可能性がある、その時図12のように基準値として設定していた604に対して検知信号600全体が変動してしまうため、飛散水13が存在していない状態でも、飛散水ありと誤検知してしまう可能性があり、検知精度が低下する。よって、飛散水13を検知する信号では0Hz信号を遮断した信号を使用し、水滴などの影響を防止することが望ましい。
【0042】
ここで、飛散水13を検知しない状態とは、飛散水13を検知する条件に合致しない場合を言い、本実施例では飛散水13を検知する手法について示しているが、実際には飛散水13が存在しない状態を検知する手段、もしくは飛散水13と飛散水13が存在しない状態の両方を検知する手段を用いてもよい。
【0043】
これらの検知手段を実現する構成として、本発明の一態様によれば、請求項1または2記載のシステムキッチンにおいて信号処理部52は、物体の静止状態を検知するための直流信号を通過させる第一のフィルタと、水の飛散状態を検知するための直流信号を遮断する第二のフィルタの少なくとも2つのフィルタを備えており、さらに第二のフィルタの最大通過周波数は第一のフィルタの最大通過周波数よりも大きくする。物体の静止状態は0Hz(直流成分)が得られるため、前記第一のフィルタを用いることで、識別が困難な静止状態と略静止状態を確実に識別することが出来る。水の飛散状態は、静止状態が含まれないため、必要でない直流信号を遮断した第二のフィルタを用いることで、外乱に影響されず、確実に水の飛散状態を検知出来る。さらに水以外の物体の速度よりも水の飛散状態の速度の方が比較的高速なため、第一よりも第二のフィルタの最大通過周波数を高く設定することにより、水以外の物体の静止状態や、水以外の物体に当たって飛散する水をより精度よく検知することが可能となり、さらに精度の高い吐水継続制御が可能となる。
【0044】
このような検知手段を実現する構成として、例えば図13のようにセンサ部50は、センサ60とバルブ40の間にセンサ60からの信号を複数の周波数帯域に分けるフィルタ機能を備えている信号処理部52と、信号処理部52からの信号に基づきバルブ40へ開閉信号を出力する制御部53を備えていてもよい。
【0045】
水以外の物体を検知するために、直流信号を含んだ信号を得るためのフィルタの構成としては、例えば図15のように抵抗900とコンデンサ901を使用したローパスフィルタがある。また水を検知するために、直流信号を含まない信号を得るためのフィルタの構成としては、例えば図16のように抵抗903とコンデンサ902を使用したハイパスフィルタがある。このように電気回路上でフィルタを構成することによって、ほぼ時間的な遅れがなく信号を取得することが可能となり、より信号処理部の判断時間を短く出来るため、使い勝手の良いシステムキッチンを提供できる。
さらに、コンピュータなどによる演算処理やディジタルフィルタ処理を用いてもよい。これにより、より精度よく取得したい周波数を抽出可能となり、さらに検知精度の高い吐水継続制御が可能となる。
【0046】
さらに本発明の一態様によれば、請求項3記載のシステムキッチンにおいて、信号処理部52は、水以外の物体に当たって飛散するような洗い作業中の水の状態と、水が前記シンク20に直接当たって飛散するような非使用時の水の状態と、鍋などの容器の中に溜まるような水汲み作業中の水の状態を識別するために、第二のフィルタを通過した信号に対して、値の異なる第一と第二の少なくとも2つの閾値を備えており、前記第一の閾値を所定時間超えた場合には被洗浄物に当たって飛散する水であると検知し、前記第二の閾値を所定時間超えた場合には水がシンク20に直接に当たって飛散する水であると検知し、前記第二の閾値を所定時間超えなかった場合には鍋などの容器の中に溜まる水であると検知するような構成を持ち、さらに第一の閾値は第二の閾値よりも大きくすることで、水がシンク20に直接当たって飛散する状態も識別することが可能となる。シンク以外の物体に当たって水が飛散する状態となる洗い作業時は比較的信号強度が大きく、水が前記シンクに直接当たって飛散する水の状態となる非使用状態は比較的信号強度が小さく、さらに鍋などの容器の中に水が溜まる状態となる水汲み作業時は最も信号が小さいため、前記第二フィルタにおいて閾値による制御を行うことで、確実に見極めることが可能となる。これにより、さらに精度の高い自動止水制御および吐水継続制御が可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1…システムキッチン
10…水栓
13…飛散水
11…吐水口
20…シンク
21…シンク側壁
22…底面
40…バルブ
50…センサ部
52…信号処理部
53…制御部
900…抵抗
901…コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水口を有する水栓と、
前記吐水口から吐水される水を受水するシンクと、
電波の送受信を行い被検知体の静止している状態や動いている状態を検知するセンサ部と、
前記センサ部から得られた被検知体の検知情報に基づいて開閉し、前記吐水口へ水を供給するかしないかを切り替えるバルブと、
を有するシステムキッチンであって、
前記センサ部は、水以外の物体と水との識別や、水の飛散状態を識別可能な信号処理部を備えており、
前記バルブが開状態の時、
前記センサ部が、
水以外の物体は静止状態であり、且つ水の飛散状態は所定のレベル以下の状態であることを所定時間検知すると、
前記バルブの開状態を保持することを特徴とするシステムキッチン。
【請求項2】
前記信号処理部は、
水以外の物体と水との識別を、
前記センサ部から得られる検知信号の周波数の情報によって、
識別することを特徴とする請求項1記載のシステムキッチン。
【請求項3】
前記信号処理部は、
物体の静止状態を検知するための直流信号を通過させる第一のフィルタと
水の飛散状態を検知するための直流信号を遮断する第二のフィルタと
少なくとも2つのフィルタを備えており、第二のフィルタの最大通過周波数は第一のフィルタの最大通過周波数よりも大きいことを特徴とする、
請求項1または2いずれか一項記載のシステムキッチン。
【請求項4】
前記信号処理部は、
洗い作業中の水の状態と、非使用中の水の状態と、水汲み作業中の水の状態を識別するために、
前記第二のフィルタを通過した信号に対して、値の異なる第一と第二の少なくとも2つの閾値を備えており、
前記第一の閾値を所定時間超えた場合には洗い作業中の水の状態であると検知し、
前記第二の閾値を所定時間超えた場合には非使用中の水の状態であると検知し、
前記第二の閾値を所定時間超えなかった場合には鍋などの容器に溜まる水の状態検知し、
さらに第一の閾値は第二の閾値よりも大きいことを特徴とする、
請求項3記載のシステムキッチン。
【請求項5】
前記信号処理部は、
所定時間内における前記第1のフィルタを通過した信号強度に基づいて、
シンク内に水以外の静止物体が存在するか、
存在しないかを判断することを特徴とする
請求項3または4いずれか一項記載のシステムキッチン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−162940(P2011−162940A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23339(P2010−23339)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】